説明

画像形成装置、省エネ管理方法、及び省エネ管理プログラム

【課題】補助記憶装置にアクセスすることなくログや状態履歴の蓄積し、省エネモードからの復帰の回数を減らすことにより、より省エネ効果を向上させる。
【解決手段】所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像処理装置において、予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、省エネモード移行時に、メモリ領域に所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム制御手段と、補助記憶装置と仮想ファイルシステムに対するアクセスを制御するファイルアクセス制御手段と、上述した制御手段を用いて、省エネモード時のメモリ領域の使用内容を管理する管理制御手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、省エネ管理方法、及び省エネ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザのエネルギー志向の高まりに起因して、複合機等の画像形成装置においても消費電力量の低減化が求められている。ユーザによっては、例えば製品カタログ等に記載されている消費電力によって購入製品を決定する場合も多くなっている。
【0003】
各国においても、省エネルギー化が推奨され、様々な規制や規格が制定され、消費電力量の低減に向けた取り組みがなされている。例えば、国内では省エネ法が改正され、海外ではエナジースター、ブルーエンジェル等の規格が制定されており、例えば一定の条件を満たす製品には環境を重視した製品であることを示すログマークを付すことが許可される等が行われている。
【0004】
このような規制や規格等に対応するため、各製品には、例えばスリープモード、スタンバイモード、低電力モード等の省エネルギー動作モード(以下、「省エネモード」という。)が導入されている。
【0005】
なお、従来では省エネモード状況を管理することを目的として、例えば省エネモードから復帰する際に、実行する動作に基づいてどの部品・コンポーネントに電源を入れるか制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、各アプリケーション及び各起動モードの実行頻度等に基づいて省エネ制御を必要とするデバイスの省エネ制御方法を決定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2等の従来の省エネモード管理方法では、例えば機器本体のエンジン部を始めとする周辺機器の電力制御が行われ、メカ駆動するHDD等の補助記憶装置も省エネモードの管理対象とされている。したがって、例えば省エネモード時に補助記憶装置にアクセスすると、省エネモードから通常モードに復帰してしまうため、省エネモード時には補助記憶装置にアクセスすることができなかった。そのため、省エネモード時に発生するログや状態履歴等を保持することができないという問題が生じた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、補助記憶装置にアクセスすることなくログや状態履歴を保持することにより、省エネモードを維持して、より省エネ効果を向上させる画像形成装置、省エネ管理方法、省エネ管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像処理装置において、予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム制御手段と、前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム制御手段により構築された前記仮想ファイルシステムとに対するアクセスを制御するファイルアクセス制御手段と、前記ファイルシステム制御手段と前記ファイルアクセス制御手段とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像形成装置において実行される省エネ管理方法であって、予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム構築手順と、前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム構築手順で構築された仮想ファイルシステムとに対するアクセスの制御を行うファイルアクセス手順と、前記ファイルシステム構築手順と前記ファイルアクセス手順とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理手順とを有する。
【0010】
また、所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像形成装置における省エネ管理プログラムであって、コンピュータを、予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム構築手段、前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム構築手段により構築された仮想ファイルシステムとに対するアクセスを制御するファイルアクセス手段、前記ファイルシステム構築手段と前記ファイルアクセス手段とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理制御手段として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補助記憶装置にアクセスすることなくログや状態履歴を保持することにより、省エネモードを維持して、より省エネ効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る省エネ管理制御手段の機能ブロック図である。
【図4】通常動作時におけるメモリ領域の割り当てを説明するための図である。
【図5】省エネモード時におけるメモリ領域の割り当てを説明するための図である。
【図6】省エネモード移行時及び移行後の動作例を説明するための図である。
【図7】省エネモードから通常モード復帰時及び復帰後の動作例を示す図である。
【図8】省エネモード移行時及び移行後の他の動作例を説明するための図である。
【図9】省エネモードから通常モード復帰時及び復帰後の他の動作例を示す図である。
【図10】図6に示す省エネモード移行時の省エネ管理制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図7に示す通常モード復帰時の省エネ管理制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
<画像形成装置1のハードウェア構成>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ部10としてCPU(Central Processing Unit)11と、チップセット(Chipset)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ROM(Read Only Memory)14と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)−A15と、ASIC−B16と、I/F群17とを備え、更にエンジン部18と、操作部19と、HDD(Hard Disk Drive)20と、SDカード21とを備えている。
【0015】
コントローラ部10は、ソフトウェアプログラムが実行されるマザーボードであり、CPU11が、チップセット12を介して、RAM13と、ROM14と、ASIC−A15と、ASIC−B16等と接続されている。
【0016】
CPU11は、コントローラ部10の主要部であって、ROM14及びHDD20に記憶したソフトウェアプログラムを実行することにより各部を集中的に制御する。RAM13は、CPU11がソフトウェアプログラムを実行するためのメモリ領域を有する記憶媒体である。ROM14は、OS(Operating System)等を記憶した読み出し専用のメモリである。ASIC−A15及びASIC−B16は、エンジン部18及び操作部19との通信制御を行う。
【0017】
I/F群17は、コントローラ部10と、HDD20とを接続するものであって、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ネットワーク、S−ATA(Serial Advanced Technology Attachment)等である。また、I/F群17には、SDカード21等も接続することができる。
【0018】
エンジン部18は、電子写真を出力するためのプリンタ等のエンジンを制御する。操作部19は、タッチパネルやハードキー等を備え、ユーザインターフェースとして機能する。
【0019】
HDD20は、各種のソフトウェアプログラム等を格納するものであり、補助記憶装置としての機能を備えている。また、SDカード21は、増設拡張可能な補助記憶装置である。
【0020】
上述した構成を有する画像形成装置1は、予め設定された省エネモード時には、消費電力を極力抑えるために、例えばエンジン部18、操作部19、HDD20等の電源を切ることによって省エネ化を図ることが行われている。また、ASIC−A15やASIC−B16の一部の電源を切ったり、チップセット12の管理下でCPU11の電力モードで下げたりする等の対応もなされている。
【0021】
<画像形成装置1のソフトウェア構成例>
図2は、本実施形態に係る画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。図2に示すように、画像形成装置1は、組み込み用のOS30と、JVM(Java(登録商標)Virtual Machine)31と、JAVA(登録商標)制御処理プログラム32と、アプリケーション群33と、ネイティブ制御処理プログラム40と、省エネ管理制御手段50とを有するように構成される。
【0022】
OS30は、複数の機能を実現する、例えばマルチタスク系であるUNIX(登録商標)ベースのOSである。JVM31は、JavaバイトコードをOS30上で動作可能なネイティブコードに変換して実行する。
【0023】
Java制御処理プログラム32は、JVM31上で、1又は複数のプラグインJavaアプリケーション(図2の例では、プラグインJavaアプリケーション33A〜33C。以下、必要に応じて「アプリケーション」とする。)を起動する。なお、JAVA制御処理プログラム32は、マルチVMと称されるものであり、JVM31に含まれていても良い。
【0024】
アプリケーション33A〜33Cは、JVM31上でマルチスレッドとしてマルチ動作を実現し、このマルチ動作は、Java環境下で管理されている。なお、アプリケーション33A〜33Cは、プラグインされるアプリケーションであり、追加や削除が可能である。
【0025】
ネイティブ制御処理プログラム40は、ハードウェアの制御を行い、画像形成装置1のリソースを制御・管理する。ネイティブ制御処理プログラム40には、例えばネットワーク制御プログラムや画像データ処理プログラム等も含まれる。
【0026】
上述したJava動作環境(JVM31、JAVA制御処理プログラム32、アプリケーション33A〜33C)とネイティブ制御処理プログラム40は、OS30からみると、マルチタスクとしてマルチ動作を実現している。
【0027】
省エネ管理制御手段50は、省エネモードへの移行時、動作時、省エネモードから通常モードの復帰時において各種機能を実現する。省エネ管理制御手段50の具体的な機能については後述する。なお、省エネ管理制御手段50は、例えばOS30内のデバイス制御ドライブ内に組み込んでも良い。
【0028】
<省エネ管理制御手段50の機能ブロック>
次に、図3を用いて、上述した本実施形態に係る省エネ管理制御手段50の機能ブロックについて説明する。図3は、本実施形態に係る省エネ管理制御手段の機能ブロック図である。
【0029】
図3に示すように、本実施形態に係る省エネ管理制御手段50は、ファイルシステム制御手段51と、ファイルアクセス制御手段52と、省エネモード移行制御手段53と、通常モード復帰制御手段54とを有するように構成されている。
【0030】
省エネ管理制御手段50は、図3に示す各機能ブロック(ファイルシステム制御手段51、ファイルアクセス制御手段52、省エネモード移行制御手段53、通常モード復帰制御手段54)が実行する処理全体を制御する。これにより、省エネ管理制御手段50は、例えば省エネモード時にRAM13のメモリ領域の使用内容を管理し、RAM13のメモリ領域のうち省エネモード時に利用されないメモリ領域を有効利用するよう制御する。
【0031】
例えば、省エネ管理制御手段50は、このメモリ領域にHDD20のファイルシステムに対応する仮想(新規)ファイルシステムを構築して、仮想ファイルシステムにアクセスすることで省エネモード時に発生するログや状態履歴等を蓄積し、HDD20にはアクセスしないよう制御する。これにより、省エネモード時にHDD20にアクセスすることにより、省エネモードから通常モードへ復帰する回数を減らし、省エネ効果を向上させる。
【0032】
具体的には、ファイルシステム制御手段51は、省エネモード時に利用されないメモリ領域に、仮想ファイルシステムを構築する。ファイルシステム制御手段51は、例えば、省エネモード時に利用されないメモリ領域として通常モード時に画像処理が実行される画像処理領域を用いる。なお、ファイルシステム制御手段51は、仮想ファイルシステムの構築だけではなく、例えば通常モードに復帰する際にメモリ領域に構築した仮想ファイルシステムを削除する。
【0033】
ここで、仮想ファイルシステムとは、例えば画像形成装置1の複数の機能や画像処理を実行するためのデータ等の情報を格納するHDD20に構築されている所定のファイルシステムに対応させて構築したものである。また、仮想ファイルシステムは、上述したメモリ領域に構築され、例えばRAM13をディスク装置として利用するRAM(メモリ)ディスクのような使い方で管理される。なお、RAMディスクとは、画像形成装置1に搭載されたOS30の機能により実現され、OS30が管理する物理メモリ領域をディスク装置のように見せるものである。
【0034】
実際には、上述したRAM13のメモリ領域の変更は、OS動作環境の変更となるため、メモリ管理自体の制御、管理等は、OS30の管理下となる。
【0035】
ファイルアクセス制御手段52は、HDD20と、ファイルシステム制御手段51により構築される仮想ファイルシステムとに対するアクセスを制御する。例えば、ファイルアクセス制御手段52は、HDD20に対してアクセスするのか、仮想ファイルシステムに対してアクセスするのかを判断する。
【0036】
具体的には、ファイルアクセス制御手段52は、省エネモードに移行する場合、HDD20へのファイルアクセスを中断する。ファイルアクセス制御手段52は、ファイルシステム制御手段51によって構築された仮想ファイルシステムに、HDD20から省エネモード時に用いられるプログラム、データ、及び省エネモード時に使用されるログ、状態履歴等を転送し、仮想ファイルシステムへファイルアクセスするように制御する。
【0037】
また、ファイルアクセス制御手段52は、省エネモードから通常モードへ復帰する場合、仮想ファイルシステムで蓄積したログ、状態履歴等をHDD20に転送し、蓄積されていたログ、状態履歴等と結合させる。
【0038】
省エネモード移行制御手段53は、省エネモード移行時の制御全般を管理する。また、省エネモード移行制御手段53は、通常モード時に画像処理が実行される画像処理領域を省エネモード時に仮想ファイルシステムを構築する領域として使用できるように、メモリ領域を管理する。
【0039】
通常モード復帰制御手段54は、省エネモードから通常モードへ復帰する場合の制御全般を管理する。また、通常モード復帰制御手段54は、省エネモード時に仮想ファイルシステムが構築されたメモリ領域を、通常モード時に画像処理領域として使用できるようにメモリ領域を管理する。
【0040】
なお、省エネモード移行時の省エネ管理制御処理、及び通常モードへ復帰する省エネ管理制御処理については後述する。
【0041】
<通常動作時におけるメモリ領域の割り当て>
次に、図4を用いて、画像形成装置1における通常動作(通常モード)時におけるメモリの割り当て、すなわちメモリの配置について説明する。図4は、通常動作時におけるメモリ領域の割り当てを説明するための図である。
【0042】
図4に示すように、画像形成装置1におけるRAM13のメモリ領域60は、通常動作時において例えばOS制御領域61と、Java動作領域62と、ヒープ領域63と、ネイティブプログラム領域64と、画像処理用領域65とを有するように構成される。
【0043】
OS制御領域61は、OS30が制御する領域である。Java動作領域62は、JVM31、JAVA制御処理プログラム32、アプリケーション33A〜33C等が動作するために用いるJava関連の動作領域である。ヒープ領域63は、JAVA制御処理プログラム32を実行するために用いる領域である。ネイティブプログラム領域64は、ネイティブ制御処理プログラム40が実行するために用いる領域である。
【0044】
画像処理用領域65は、画像形成装置1の画像形成のために画像データ等が扱われる領域である。すなわち、画像処理用領域65は、画像形成装置1の通常動作時においては、例えばコピー、スキャナ、ファックス、プリンタ等による画像処理等で利用される。
【0045】
<省エネモード時におけるメモリ領域の割り当て>
次に、図5を用いて、画像形成装置1における省エネモード時におけるメモリの割り当てについて説明する。図5は、省エネモード時におけるメモリ領域の割り当てを説明するための図である。
【0046】
図5に示すように、画像形成装置1におけるRAM13のメモリ領域60は、省エネモード時は、通常動作時に割り当てられていた画像処理用領域65が、仮想ファイルシステムを構築するための仮想ファイルシステム領域66として割り当てられ、通常動作時のメモリ配置が変更される。
【0047】
なお、その他のメモリ領域60は、OS制御領域61と、Java動作領域62と、ヒープ領域63と、ネイティブプログラム領域64がそのまま割り当てられる。
【0048】
省エネモード時は、仮想ファイルシステム領域66が上述したRAMディスクのような扱いをされることにより、仮想ファイルシステムを構築する。また、仮想ファイルシステム領域66に構築された仮想ファイルシステムに、省エネモード時のファイルアクセスが実行される。
【0049】
なお、省エネモード時には、コピー、スキャナ、ファックス、プリンタ等の画像処理は実施されず、HDD20へのアクセスは発生しない。一方、画像処理を実施する場合には、エンジンを動作させるか、HDD20へのアクセスにより、省エネモードから復帰する。
【0050】
このような省エネモードから通常モードへ復帰する際、仮想ファイルシステム領域66は削除され、通常動作時の画像処理用領域65に戻されることにより、画像処理用領域65を利用して、コピー、スキャナ、ファックス、プリンタ等の画像処理が実施される。
【0051】
<省エネモード移行時及び移行後の動作例>
次に、図6を用いて、省エネモード移行時及び移行後の動作例について説明する。図6は、省エネモード移行時及び移行後の動作例を説明するための図である。
【0052】
図6に示すように、省エネモードへの移行時、メモリ領域60には仮想ファイルシステムが構築される。矢印Aに示すように、HDD20に格納された情報のうち、省エネモード時に利用されるログ、状態履歴、プログラム、データ等は仮想ファイルシステムに転送され、例えば仮想ファイルシステムが構築されている領域71に蓄積される。また、転送された領域71のログ、状態履歴、プログラム、データ等は、仮想ファイルシステムに常駐する。
【0053】
その後、ファイルアクセス制御手段52は、例えばヒープ領域63やネイティブプログラム領域64からHDD20へアクセスするような場合、矢印Bに示すように、HDDにアクセスせずに、メモリ領域60に構築した仮想ファイルシステム領域66にアクセスするよう制御する。
【0054】
これにより、省エネモード時において発生するログ、状態履歴等を仮想ファイルシステムに蓄積することが可能となる。
【0055】
<省エネモードから通常モードへの復帰時及び復帰後の動作例>
次に、図7を用いて、省エネモードから通常モードへの復帰時及び復帰後の動作例について説明する。図7は、省エネモードから通常モードへの復帰時及び復帰後の動作例を示す図である。
【0056】
図7に示すように、省エネモードから通常モードへ復帰する場合、矢印Cに示すように、仮想ファイルシステムにおいて省エネモード時に蓄積されたログや状態履歴、省エネモード時に使用されたデータやプログラム等(例えば、領域71)を、HDD20に書き戻す。これにより、HDD20にアクセス可能な状態とする。
【0057】
また、省エネモード時に構築された仮想ファイルシステムを削除、消滅することにより通常モード時における画像処理用領域65として利用する。また、通常モードへの復帰時には、矢印Dに示すように、通常モード時と同様にHDD20にアクセスすることが可能となる。
【0058】
<省エネモード移行時及び移行後の他の動作例>
次に、図8を用いて、省エネモード移行時及び移行後の他の動作例を説明する。図8は、省エネモード移行時及び移行後の他の動作例を説明するための図である。なお、図8に示す省エネモード移行時及び移行後の他の動作例は、図6に示す動作例と比較すると、プログラムにアクセス制限をかけている点で異なる。
【0059】
すなわち、図6に示す動作例ではプログラム全体が省エネモードを意識しない作りで、プログラムにアクセス制限がかけられていないが、図8に示す他の動作例では、プログラム全体が省エネモードを意識した作りで、省エネモード時は必要なプログラム以外動作させない。したがって、図8では、矢印Eに示すように、HDD20からメモリ領域60へのデータ転送時にアクセス制限がかけられ、省エネモード時にログ、状態履歴等の逐次、履歴を残すもののみ動作する。
【0060】
具体的には、図8に示すように、省エネモードへの移行時に、メモリ領域60に構築された仮想ファイルシステムに、省エネモード時に利用されるログ、状態履歴等が転送され、例えば仮想ファイルシステムが構築されている領域72に蓄積される。その後、HDD20の電力は、即座に切ることが可能となる。
【0061】
また、ファイルアクセス制御手段52は、例えばヒープ領域63やネイティブプログラム領域64から、矢印Fに示すように、仮想ファイルシステムにアクセスするように制御する。これにより、省エネモード時において発生するログ、状態履歴等を仮想ファイルシステムに蓄積することが可能となる。
【0062】
<省エネモードから通常モードへの復帰時及び復帰後の他の動作例>
次に、図9を用いて、省エネモードから通常モードへの復帰時及び復帰後の他の動作例について説明する。図9は、省エネモードから通常モード復帰時及び復帰後の他の動作例を示す図である。
【0063】
なお、図9に示す通常モードへの復帰時及び復帰後の他の動作例は、図7に示す動作例と比較すると、プログラムにアクセス制限をかけている点で異なる。すなわち、図9の動作例は、省エネモード時に必要なプログラム以外動作させない例であり、ログ、状態履歴等の逐次履歴を残すもののみ動作している例を示している。
【0064】
具体的には、図9に示すように、省エネモードから通常モードへの復帰時に、仮想ファイルシステムにおいて省エネモード時に蓄積されたログや状態履歴等(例えば領域72)を、矢印Gに示すように、HDD20に追記する。これにより、HDD20にアクセス可能な状態とする。
【0065】
また、省エネモード時に構築された仮想ファイルシステムを削除、消滅することにより通常モード時における画像処理用領域65として利用する。通常モードへの復帰時には、矢印Hに示すように、通常モード時と同様に、HDD20にアクセスすることが可能となる。
【0066】
<省エネモード移行時の省エネ管理制御処理>
次に、図10を用いて、図6に示す省エネモード移行時の省エネ管理制御処理について説明する。図10は、図6に示す省エネモード移行時の省エネ管理制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、破線内が省エネ管理制御手段50の制御処理内容となる。
【0067】
図10に示すように、画像形成装置1の操作により、例えば省エネモード移行制御手段53が省エネモード移行通知を受け取ると(S10)、ファイルアクセス制御手段52は、HDD20へのアクセスを停止して、ファイルアクセスを中断させる(S11)。なお、ファイルアクセス中断中の状態は、ファイルアクセス制御手段52が保持している。
【0068】
次に、ファイルシステム制御手段51は、例えばメモリ領域60の画像処理用領域65を仮想ファイルシステム用の領域とし、画像処理用領域65に仮想ファイルシステムを構築する(S12)。
【0069】
次に、ファイルアクセス制御手段52は、省エネモード動作中にアクセスするログ、状態履歴、プログラム、データ等をHDD20から仮想ファイルシステムへ転送する(S13)。
【0070】
その後、ファイルアクセス制御手段52は、ファイルシステムへのパスを変更して、仮想ファイルシステムにアクセスするようアクセス制御を切り換える(S14)。
【0071】
次に、ファイルアクセス制御手段52は、HDD20の電源を切り、ファイルアクセス中断中の状態を解除して、ファイルアクセスを再開し、仮想ファイルシステムを稼動させ、処理を終了する。なお、上述した省エネ移行時における処理全体は、省エネモード移行制御手段53が掌る。
【0072】
<通常モードへの復帰時の省エネ管理制御処理>
次に、図11を用いて、図7に示す通常モードへの復帰時の省エネ管理制御処理について説明する。図11は、図7に示す通常モードへの復帰時の省エネ管理制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、破線内が省エネ管理制御手段50の制御処理内容となる。
【0073】
図11に示すように、画像形成装置1の操作により、通常モード復帰制御手段54が省エネモードから通常モードへの復帰通知を受け取ると(S20)、ファイルアクセス制御手段52は、仮想ファイルシステムへのアクセスを停止して、ファイルアクセスを中断させる(S21)。なお、ファイルアクセス中断中の状態は、ファイルアクセス制御手段52が保持している。
【0074】
次に、ファイルアクセス制御手段52は、省エネモード時に発生したログ、状態履歴、省エネモード時に使用されたプログラム、データ等を仮想ファイルシステムからHDD20へ書き戻す(転送する)(S22)。
【0075】
次に、ファイルアクセス制御手段52は、ファイルシステムへのパスを変更して、HDD20にアクセスするようアクセス制御を切り換える(S23)。
【0076】
その後、ファイルシステム制御手段51は、仮想ファイルシステムを削除、消滅させる(S24)。
【0077】
次に、ファイルアクセス制御手段52は、ファイルアクセス中断中の状態を解除して、HDD20へのアクセスを再開し、ファイルアクセスを再開して、通常動作に戻し(S25)、処理を終了する。なお、上述した通常モードへの復帰時における処理全体は、通常モード復帰制御手段54が掌る。
【0078】
上述したように、本実施形態によれば、補助記憶装置にアクセスすることなくログや状態履歴を蓄積し、省エネモードからの復帰の回数を減らすことにより、より省エネ効果を向上させることを可能とする。
【0079】
具体的には、省エネモード時に利用されないメモリ領域に補助記憶装置のファイルシステムに対応する仮想ファイルシステムを構築し、仮想ファイルシステムにアクセスすることで省エネモード時に発生するログや状態履歴等を蓄積し、補助記憶装置にはアクセスしないよう制御する。このように、本実施形態では、省エネモード時に仮想ファイルシステムにアクセスすることで、省エネモードから通常モードへ復帰する回数を減らし、省エネ効果を向上させる。
【0080】
なお、本実施形態では、上述した省エネモード時に利用されないメモリ領域の他、USBメモリ、メモリカード(SDカード)等の外付けのメディアである外部記憶装置を利用してログや状態履歴等を蓄積させても良い。
【0081】
また、通常モード時に装置全体を制御するメインシステムと、省エネモード時に装置の一部を制御するサブシステムとを備える画像形成装置において、例えば通常モード時は印刷用のバッファとして用いるメモリを利用して、省エネモード時に使用するデータ等を蓄積する場合等に、上述した実施形態を適用することが可能である。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
10 コントローラ部
11 CPU
12 チップセット
13 RAM
14 ROM
15 ASIC−A
16 ASIC−B
17 I/F群
18 エンジン部
19 操作部
20 HDD
21 SD
30 OS
31 JVM
32 JAVA制御処理プログラム
33 プラグインJavaアプリケーション
40 ネイティブ制御処理プログラム
50 省エネ管理制御手段
51 ファイルシステム制御手段
52 ファイルアクセス制御手段
53 省エネモード移行制御手段
54 通常モード復帰制御手段
60 メモリ領域
61 OS制御領域
62 JAVA動作領域
63 ヒープ領域
64 ネイティブプログラム領域
65 画像処理領域
66 仮想ファイルシステム領域
71,72 領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2008−160413号公報
【特許文献2】特開2001−285543号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像形成装置において、
予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム制御手段と、
前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム制御手段により構築された前記仮想ファイルシステムとに対するアクセスを制御するファイルアクセス制御手段と、
前記ファイルシステム制御手段と前記ファイルアクセス制御手段とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ファイルシステム制御手段は、前記メモリ領域のうち、前記画像処理が実行される画像処理領域に前記仮想ファイルシステムを構築することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ファイルアクセス制御手段は、前記省エネモード移行時に、前記補助記憶装置から、前記省エネモード時に用いられるプログラム、データ、及び前記省エネモード時に使用されるログ、状態履歴を前記仮想ファイルシステムに転送することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ファイルアクセス制御手段は、前記省エネモードから通常モードへの復帰時に、前記仮想ファイルシステムで発生したログ、状態履歴を前記補助記憶装置に蓄積されていたログ、状態履歴と結合させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ファイルシステム制御手段は、前記省エネモードから前記通常モードへの復帰時に、前記仮想ファイルシステムを削除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像形成装置において実行される省エネ管理方法であって、
予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム構築手順と、
前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム構築手順で構築された仮想ファイルシステムとに対するアクセスの制御を行うファイルアクセス手順と、
前記ファイルシステム構築手順と前記ファイルアクセス手順とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理手順とを有することを特徴とする省エネ管理方法。
【請求項7】
所定のファイルシステムが構築されている補助記憶装置と、予め複数の機能及び画像処理を実行するための情報を前記補助記憶装置にアクセスして読み出し、読み出した情報を格納するメモリ領域とを備えた画像形成装置における省エネ管理プログラムであって、
コンピュータを、
予め設定された通常モード及び省エネモードのうち、前記省エネモード移行時に、前記メモリ領域に前記所定のファイルシステムに対応させた仮想ファイルシステムを構築するファイルシステム構築手段、
前記補助記憶装置と、前記ファイルシステム構築手段により構築された仮想ファイルシステムとに対するアクセスを制御するファイルアクセス手段、
前記ファイルシステム構築手段と前記ファイルアクセス手段とを用いて、前記省エネモード時の前記メモリ領域の使用内容を管理する管理制御手段として機能させるための省エネ管理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−58930(P2012−58930A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200286(P2010−200286)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】