説明

画像形成装置、色ずれ補正方法およびプログラム

【課題】像担持体上にノイズ源が存在することにより像担持体上にパターン全長の領域が確保できない場合でも色ずれ補正の精度を維持して色ずれ補正を実行すること。
【解決手段】画像形成装置は、搬送される中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定部509と、中間転写ベルト16に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成する手段であって、特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成部501と、中間転写ベルト16に形成されたパターンを検知する反射型センサ24と、検知された各色のパターンに基づいて色ずれ補正を行う色ずれ補正部503と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、色ずれ補正方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルトなどの像担持体に、色ごとの補正パターンを描画して色ずれを補正する技術において、像担持体上に存在する傷や汚れなどのノイズ源を避けて補正パターンを描画することで、ノイズの影響を受けない補正パターン読み取りデータを得る技術が従来から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像形成装置において、中間転写体上に傷や汚れ等のノイズ源が存在する場合のノイズを回避するために、中間転写体上にホームポジションマークと、このホームポジションを読み取るホームポジション検知センサを設け、中間転写体上のノイズ源の位置を記憶し、ノイズ源を回避して補正パターンを描画することで、ノイズに影響されないパターン読み取りデータを得る技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術では、像担持体上にノイズがあることで補正パターン全長の領域が確保できない場合、色ずれ補正を実行できなかったり、あるいは色ずれ補正の精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、像担持体上にノイズ源が存在することにより像担持体上にパターン全長の領域が確保できない場合でも色ずれ補正の精度を維持して色ずれ補正を実行することができる画像形成装置、色ずれ補正方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像形成装置は、搬送される像担持体と、前記像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定手段と、前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成する手段であって、特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成手段と、前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知手段と、検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる色ずれ補正方法は、画像形成装置で実行される色ずれ補正方法であって、前記像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定ステップと、前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成するステップであって、位置が特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成ステップと、前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知ステップと、検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるプログラムは、像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定ステップと、前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成するステップであって、位置が特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成ステップと、前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知ステップと、検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、像担持体上にノイズ源が存在することにより像担持体上にパターン全長の領域が確保できない場合でも色ずれ補正の精度を維持して色ずれ補正を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、電子写真方式のカラー画像形成装置の画像形成部の一例を示す構成図である。
【図2】図2は、転写紙に直接転写する方式の画像形成装置の画像形成部の一例を示す構成図である。
【図3】図3は、反射型センサの構成の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、本実施の形態にかかるカラー画像形成装置のハードウェア構成図である。
【図5】図5は、本実施の形態の色ずれ補正に関する機能的構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、色ずれ補正制御におけるトナーパターンの説明図である。
【図7】図7は、トナーパターンの検知時に、傷等のノイズ源を検知した場合の説明図である。
【図8】図8は、本実施の形態におけるトナーパターンとノイズ源との関係を示す説明図である。
【図9】図9は、第1地肌検出データの一例を示す説明図である。
【図10】図10は、第2地肌検出データの一例を示す説明図である。
【図11】図11は、第1地肌検出データと第2地肌検出データとから相関を求めたデータの例を示す説明図である。
【図12】図12は、本実施の形態の一連の色ずれ補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、中間転写ベルト上にノイズ源が複数存在する場合のトナーパターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置、色ずれ補正方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本実施の形態にかかるカラー画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機と称されるものであって、原稿を読み取り画像データに変換する画像読取部と、画像読取部で原稿を読み取って得られた画像データに対して画像処理を施す画像処理部と、画像処理された画像データに基づき紙面に画像を形成する画像形成部とを有する。
【0013】
図1は、電子写真方式のカラー画像形成装置の画像形成部の一例を示す構成図である。図1は中間転写体を採用したタンデム方式のカラー画像形成装置の一例を示している。
【0014】
まず、画像形成部は、4つの感光体ドラム10Y,10M,10C,10Kと、その各感光体ドラム上に形成した潜像を互いに異なる色のトナー像にそれぞれ現像する複数の現像装置11Y,11M,11C,11Kと、異なる色のトナー像がそれぞれ重ね合わせ状態に一次転写される矢印A方向に回転する像担持体としての中間転写ベルト16とを備えている。
【0015】
中間転写ベルト16は、無端状のベルトであり、この本実施の形態では、その中間転写ベルト16の上部側に、その中間転写ベルト16の回動方向Aに沿って、ブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色用の4個の上述した感光体ドラム10を並列にそれぞれ配置している。感光体ドラム10の周回には、帯電装置12と、前述した現像装置11と、一次転写装置を構成する一次転写ローラ14と、クリーニング装置13がそれぞれ配設されている。
【0016】
感光体ドラム10は、回転方向Bに回転駆動され、このとき帯電装置12によって感光体ドラム10の表面が所定の極性に帯電される。次いで、その帯電面に、露光装置15から出射されるレーザ光が照射され、これによって感光体ドラム10に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像装置11によって各色のトナー像として可視像化される。
【0017】
各感光体ドラム10には、一次転写ローラ14がそれぞれ対向配置されていて、その各一次転写ローラ14と感光体ドラム10との間には中間転写ベルト16が挟まれた状態で回動するようになっている。
【0018】
中間転写ベルト16は、駆動ローラ17とテンションローラ19の2軸によって支持されている。複数のローラによって張架しても良いが、出来る限り小型化とするため、本実施の形態では2軸によって張架し本ユニットの高さを抑制している。
【0019】
次に、その中間転写ベルト16の表面に、各感光体ドラム10に可視像化されたトナー像が、一次転写ローラ14の作用によって転写される。このようにして、ブラック,シアン,マゼンタ,イエローのトナー像が、中間転写ベルト16に正確に順次重ね合わせた状態で転写されていき、フルカラーの合成カラー画像が形成される。
【0020】
一方、中間転写ベルト16を挟んで、駆動ローラ17(二次転写対向ローラ)に対向して二次転写ローラ18が配設され、給紙ユニット21から記録媒体である転写紙Pが給紙されると、それがレジストローラ対22の回転によって所定のタイミングで、駆動ローラ17と二次転写ローラ18の間に送り込まれる。すると、中間転写ベルト16に担持されている合成カラー画像が二次転写ローラ18の作用により転写紙Pに一括して転写される。
【0021】
そして、その転写紙P上のトナー像が、定着装置23により熱と圧力によって定着され、図示しない排紙トレイ上に排出される。トナー像二次転写後の中間転写ベルト16の表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置20によって除去される。
【0022】
なお、図1では、2次転写ローラを介して転写紙に転写する方式の例を示したが、図2に示すような、転写紙に直接転写する方式の画像形成装置を用いてもよい。
【0023】
また、本実施の形態にかかるカラー画像形成装置では、検知部としての反射型センサ24が、中間転写ベルト16に向けて一定の決められた距離を置いて配設されている。タンデム方式のカラー画像形成装置においては、高画質のフルカラー画像を得るためには、各色の画像濃度がそれぞれ適正に安定していることが要求される。このため、中間転写ベルト16(あるいは搬送ベルト)等の像担持体上に濃度の基準となるトナーパターンを形成し、このトナーパッチの濃度を光学的な上記反射型センサ24により検出し、検出された濃度に基づいて、帯電電位,露光強度,現像バイアス電圧,転写電圧,およびトナー補給量等の画像濃度に影響を与える画像形成条件に対しフィードバックする。
【0024】
また、タンデム方式のカラー画像形成装置においては、画像形成部の各々の取り付け誤差、露光装置の調整誤差/ひずみ/環境および経時変化、感光体ドラムの回転ムラ、像担持体の搬送ムラ/転写紙などの外乱による変動などにより、形成された画像において色ずれが発生する。このため、本実施の形態では、像担持体上に各色のマークとなるトナーパターンを形成し、このトナーパターンの各色の位置を光学的な上記反射型センサ24により検出し、その検出結果から各色の色ずれ量を算出して、露光タイミングの調整などをフィードバックする。
【0025】
図3は、反射型センサ24の構成の一例を示す模式図である。反射型センサ24は、像担持体としての中間転写ベルト16に対向配置されており、中間転写ベルト16の表面上に形成されたトナーパターン25の濃度および各色の位置を検知する。
【0026】
本実施の形態の反射型センサ24は、赤外発光ダイオードなどの発光素子241と、フォトトランジスタ/フォトダイオードの受光素子242,243と、これらを収容するホルダ244とを備え、出力電圧信号により各色のトナー濃度および位置を測る。
【0027】
受光素子242は、トナーパターン25からの正反射光を検知し、受光素子243は、トナーパターン25からの拡散反射光を検知する。このように、正反射光と拡散反射光の双方を検知することにより、ブラック(K)とカラー(C,M,Y)の低濃度から高濃度を検知することが可能となる。一方、各色の位置検出においては、正反射光を検知する受光素子242のみで検知する。ここで、正反射光は、中間転写ベルト16等の像担持体の変形により検出値が極端に変動する。
【0028】
図4は、本実施の形態にかかるカラー画像形成装置のハードウェア構成図である。図4に示すように、本実施の形態にかかるカラー画像形成装置は、CPU(Central Processor Unit)26と、I/O部32と、I/F部29と、RAM(Random Access Memory)28と、ROM(Read Only Memory)27と、カウンタ31と、記憶部としてのフラッシュメモリ35と、書込部30とを備えている。
【0029】
ROM27は、各種制御プログラムが記憶された記憶媒体である。CPU26は、ROM27に記憶された各種制御プログラムに従って本実施形態のカラー画像形成装置の全体を制御する。
【0030】
フラッシュメモリ35は、トナー濃度および色ずれパラメータやトナーパターンテーブル、さらに各種制御に必要なパラメータを保存する記憶媒体である。RAM28は、本実施の形態のカラー画像形成装置の全体制御のワークエリア領域が確保される記憶媒体である。
【0031】
I/F部29は、有線LAN,無線LAN,USB等のインタフェースであり、I/F部29により外部装置と接続される。書込部30は、I/F部29が外部装置から画像データを受信すると、受信した画像データをY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色の画像信号の分離を行い、分離された画像デジタル信号をフラッシュメモリ35に格納されたトナー濃度および色ずれパラメータに従い露光装置15に送出する。
【0032】
カウンタ31は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー濃度および色ずれ検出用のトナーパターンの数及び色ずれ検出用のトナーパターン間時間をカウントするためのカウンタである。
【0033】
トナー濃度制御および色ずれ制御においては、まず、書込部30,露光装置15を介してトナー濃度および色ずれ検出用のトナーパターン25を、中間転写ベルト16を一定速度で動かしながらフラッシュメモリ35に格納されたタイミングで中間転写ベルト16上に形成し、反射型センサ24より検出されたトナー濃度および色ずれ情報がI/O部32に入力され、その情報に基づきCPU26により演算し、その補正パラメータがフラッシュメモリ35に格納され、次の画像形成動作に受け継がれる。
【0034】
次に、本実施の形態のカラー画像形成装置において色ずれ補正に関する機能的構成について説明する。図5は、本実施の形態の色ずれ補正に関する機能的構成を示すブロック図である。
【0035】
本実施の形態のカラー画像形成装置は、図5に示すように、パターン形成部501と、色ずれ補正部503と、地肌データ取得部505と、基準位置算出部507と、ノイズ位置特定部509とを主に備えている。
【0036】
パターン形成部501は、中間転写ベルト16に、Y,M,C,Kの各色ごとの色ずれ補正用のトナーパターンを予め定められた順序で形成する。なお、パターン形成部501は、Y,M,C,Kの各色ごとにトナーパターンを形成する指令を書込部30に送出し、書込部30が当該指令を受けて中間転写ベルト16にトナーパターンを書き込む。
【0037】
色ずれ補正部503は、反射型センサ24によって検知された各色のトナーパターンに基づいて色ずれ補正を行う。
【0038】
以下、本実施の形態のトナーパターンの形成および色ずれ補正について詳細に説明する。図6は、色ずれ補正制御におけるトナーパターンの説明図である。パターン形成部501は、中間転写ベルト16上の3つの位置において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色において8セットのトナーパターンを描画し、色ずれ補正部503は、Kに対するカラー色(C,M,Y)の位置ずれ(色ずれ)を求める。色ずれ補正部503による色ずれ補正の具体的手法は、特開2003−98793号公報に開示された手法を用いる。
【0039】
図7は、トナーパターンの検知時に、傷等のノイズ源を検知した場合の説明図である。中間転写ベルト16上に傷等のノイズ源701が存在する場合、反射型センサ24がノイズ源701を誤ってトナーパターンと認識してしまい、色ずれ補正部503が、本来の色ずれ量と異なる色ずれ量を算出してしまい、この結果、誤った補正量を算出してしまう場合がある。
【0040】
このため、本実施の形態では、パターン形成部501が、ノイズ源701の中間転写ベルト16上での位置を特定し、ノイズ源701を覆うようにトナーパターンを形成している。図8は、本実施の形態におけるトナーパターンとノイズ源との関係を示す説明図である。
【0041】
図8に示すように、中間転写ベルト16上に傷等のノイズ源701が存在する場合、パターン形成部501が、中間転写ベルト16のノイズ源701を覆うようにしてトナーパターンを描画することで、反射型センサ24によるノイズ源701に起因する誤検知を防止し、色ずれ補正部503により、精度に影響なく色ずれ補正を実行することが可能となる。
【0042】
本実施の形態では、パターン形成部501は、主走査方向に平行な方向で、ノイズ源を覆うトナーパターンを形成している。例えば、図8に示す例では、中間転写ベルト16のノイズ源701上に斜めのトナーパターンを描画しようとした場合、反射型センサ24が斜めのトナーパターンを読み取る位置は斜めのトナーパターンの主走査方向および副走査方向の両方のずれに対して影響がある。これに対して、主走査方向と平行なトナーパターンについては、副走査方向の色ずれのみしか影響しない。この点を考慮すると、パターン形成部501は、傷等のノイズ源を覆う場合には、主走査方向と平行なトナーパターンで覆うことが好ましい。
【0043】
本実施の形態では、上記のように、パターン形成部501がノイズ源701を覆うようにトナーパターンを中間転写ベルト16上に形成するため、中間転写ベルト16上におけるノイズ源701の位置を求める必要がある。本実施の形態では、地肌データ取得部505、基準位置算出部507、ノイズ位置特定部509により、中間転写ベルト16上でのノイズ源の位置の特定を行っている。
【0044】
図5に戻り、フラッシュメモリ35は、予め、ノイズ源を含む中間転写ベルト16上の地肌データである第1地肌検出データを記憶する。この第1地肌検出データは、事前に、地肌データ取得部505によって、中間転写ベルト16を走査して反射型センサ24による中間転写ベルト16の一周分の地肌計測で得られたデータである。図9は、第1地肌検出データの一例を示す説明図である。図9において、縦軸が反射型センサ24からの出力であり、横軸は時間である。この例では、中間転写ベルト16の一周にかかる時間を10[sec]としている。図9に示す第1地肌検出データでは、7.1[sec]付近と9.0[sec]付近で反射型センサ24のセンサ出力のピーク値が確認される。これは、中間転写ベルト16上の地肌の検出を開始してから7.1[sec]経過した位置と、9.0[sec]経過した位置に傷等のノイズ源が存在することを示している。
【0045】
地肌データ取得部505は、反射型センサ24に接続されており、中間転写ベルト16の基準位置(ホームポジション)を求める際に、中間転写ベルト16を任意の位置から走査して反射型センサ24による中間転写ベルト16の一周分の地肌計測で得られるデータである第2地肌検出データを取得する。図10は、第2地肌検出データの一例を示す説明図である。図10の例では、4.6[sec]付近と7.2[sec]付近に反射型センサ24のセンサ出力のピーク値が確認される。これは、中間転写ベルト16上の地肌の検出を開始してから4.6[sec]経過した位置と、7.2[sec]経過した位置に傷等のノイズ源が存在することを示している。
【0046】
基準位置算出部507は、第1地肌検出データと第2地肌検出データとの位相差を求め、位相差に基づいて中間転写ベルト16の基準位置(ホームポジション)を算出する。ここで、基準位置とは、中間転写ベルト16上に存在するノイズ源の位置を把握するための基準点である。
【0047】
基準位置算出部507は、第1地肌検出データと、第2地肌検出データの畳み込みデータとの積を求める相互相関関数に入力し、相互相関関数の関数値が最大値(相関ピーク値)となる入力値を位相差として算出する。ここで、相互相関関数は、(1)式で示される関数であり、二つの信号の類似性を調べるために用いられる。
【0048】
【数1】


(1)式では、一つ目の信号fと二つ目の信号gの畳み込みを行う。この関数の結果として得られる(f*g)(m)の相関ピーク値が、2つの信号の重なりが最も大きい箇所となるため、(f*g)(m)の相関ピーク値に対応するmの値が2つの信号の位相のずれ量となる。
【0049】
図11は、図9で示す事前に求めた第1地肌検出データと、図10で示した計測値である第2地肌検出データとを、(1)式に入力して相関を求めたデータの例を示す説明図である。図11の例では、2.5[sec]付近に相関ピーク値が確認される。このことは、図9における事前に判明している第1地肌検出データと、図10で示した第2地肌検出データとの間に、2.5[sec]の位相差が存在することを示している。
【0050】
すなわち、基準位置算出部507は、図9で示す第1地肌検出データにおける時間0[sec]を基準位置(ホームポジション)と仮定した場合、図10で示す第2地肌検出データにおいて、測定開始時点の中間転写ベルト16の位相から−2.5[sec]、若しくは、中間転写ベルト16の一周にかかる時間が10[sec]であるから、測定開始時点の中間転写ベルト16の位相から10−2.5=7.5[sec]経過した時点を、中間転写ベルト16の基準位置(ホームポジション)として求める。
【0051】
従って、基準位置が上記のとおりわかるため、ノイズ位置特定部509は、図10の地肌検出データから、基準位置算出部507で求めた中間転写ベルト16上の基準位置からのノイズ源の位置を特定することができる。
【0052】
そして、本実施の形態では、上述したパターン形成部501が、ノイズ位置特定部509で特定されたノイズ源の位置で、ノイズ源を覆うようにトナーパターンを形成する。
【0053】
具体的には、色ずれ補正部503は、色ずれ補正を次のように行う。色ずれ補正部503は、トナーパターンの検知により得られたデータと理想的なレイアウトから得られるデータとを比較して色ずれ量を求め、色ずれ量に対する色ずれ補正の補正量を決定する。この場合、色ずれ補正部503は、理想的なレイアウトが変更になるため、レイアウト変更にあわせて色ずれ量を決定する必要がある。
【0054】
例えば、図6のKパッチとYパッチ間の間隔をLとする。レイアウト変更前の理想的なKパッチとYパッチ間の間隔をL_ib、レイアウト変更前の色ずれパターン検知結果としてのKパッチとYパッチ間の間隔をL_mbとすると、色ずれ補正部503は、色ずれ量L_gbを、次の(2)式で求める。
【0055】
L_gb=L_ib−L_mb ・・・(2)
ここで、レイアウト変更を行い、KパッチとYパッチ間の間隔をL_ia=L_ib+ΔLと変更したとする。レイアウト変更後のトナーパターンの検知結果としてのKパッチとYパッチ間の間隔をL_maとすると、色ずれ補正部503は、色ずれ量L_gaを次の以(3)式で求める。
【0056】
L_ga=L_ia−L_ma=L_ib+ΔL−L_ma ・・・(3)
L_ibとΔLは既知であり、L_maは測定して得られた結果なので、色ずれ補正部503は、レイアウト変更後の色ずれ量L_gaも決定することができる。
【0057】
次に、以上のように構成された本実施の形態の画像形成装置による一連の色ずれ補正処理について説明する。図12は、本実施の形態の一連の色ずれ補正処理の手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、地肌データ取得部505は、中間転写ベルト16上の任意の位置から、中間転写ベルト16の一周分の地肌計測を行い(ステップS11)、第2地肌検出データを取得する。
【0059】
次に、基準位置算出部507は、フラッシュメモリ35から、予め記憶された第1地肌検出データを読み出す(ステップS13)。そして、第1地肌検出データと、計測された第2地肌検出データとを(1)式の相互相関関数に入力して関数値を演算する(ステップS15)。次に、基準位置算出部507は、演算した関数値の相関ピーク値を求め、求めた相関ピーク値を位相差とし、基準位置を求める(ステップS17)。
【0060】
次に、ノイズ位置特定部509は、中間転写ベルト16の基準位置からノイズ源の位置を特定する(ステップS19)。
【0061】
そして、パターン形成部501は、ノイズ源の位置でトナーパターンを形成する(ステップS21)。これにより、ノイズ源を覆うようにトナーパターンが形成される。
【0062】
そして、反射型センサ24でトナーパターンを検知し(ステップS23)、色ずれ補正部503は、検知したトナーパターンに基づいて色ずれ量を求め、この色ずれ量に基づいて色ずれ補正を行う(ステップS25)。
【0063】
このように本実施の形態では、色ずれ補正制御において、中間転写ベルト16のノイズ源を覆うようにトナーパターンを形成して、色ずれ補正を行っているので、ノイズ源の存在により中間転写ベルト16上にトナーパターン全長の領域が確保できない場合でも色ずれ補正の精度を維持して色ずれ補正を実行することができる。
【0064】
なお、図9,10,11で示した例はノイズ源が単一である場合の例であるが、中間転写ベルト16上に存在するノイズ源は複数の場合においても、予め検出した第1地肌検出データと、地肌計測により得られる第2地肌検出データの相関を求めることにより、同様の手法で、複雑化することなく、中間転写ベルト16の基準位置を求めることができる。
【0065】
図13は、中間転写ベルト16上にノイズ源が複数存在する場合のトナーパターンの説明図である。このように、中間転写ベルト16上に傷等のノイズ源701,702が複数存在する場合には、図13の上段に示すように、一つのノイズ源701をトナーパターンによって覆っても、その他のノイズ源702がトナーパターンに覆われないような場合がある。この場合、中間転写ベルト16上のノイズ源の位置は図9,10,11を用いて説明した方法により判明するため、図13の下段に示すように、ノイズ源701,702に合わせてトナーパターンのレイアウトを変更することで、複数のノイズ源701,702をトナーパターンで覆い、ノイズ源701,702を検知しないようにすることが可能となる。
【0066】
なお、本実施の形態の画像形成装置で実行される色ずれ補正プログラムは、ROM27等に予め組み込まれて提供される。
【0067】
本実施の形態の画像形成装置で実行される色ずれ補正プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0068】
さらに、本実施の形態の画像形成装置で実行される色ずれ補正プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置で実行される色ずれ補正プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0069】
本実施の形態の画像形成装置で実行される色ずれ補正プログラムは、上述した各部(地肌データ取得部505、基準位置算出部507、ノイズ位置特定部509、パターン形成部501、色ずれ補正部503)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROM27から色ずれ補正プログラムを読み出して実行することにより上記各部がRAM28等の主記憶装置上にロードされ、地肌データ取得部505、基準位置算出部507、ノイズ位置特定部509、パターン形成部501、色ずれ補正部503が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0070】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明したが、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の印刷機能を備えた画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
24 反射型センサ
26 CPU
32 I/O部
29 I/F部
27 ROM
28 RAM
30 書込部
35 フラッシュメモリ
501 パターン形成部
503 色ずれ補正部
505 地肌データ取得部
507 基準位置算出部
509 ノイズ位置特定部
701,702 ノイズ源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2007−156281号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される像担持体と、
前記像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定手段と、
前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成する手段であって、特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成手段と、
前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知手段と、
検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
予め、前記ノイズ源を含む前記像担持体上のデータである第1地肌検出データを記憶する記憶手段と、
前記検知手段によって前記像担持体上を走査して、前記像担持体のデータである第2地肌検出データを取得する地肌データ取得手段と、をさらに備え、
前記ノイズ位置特定手段は、前記第1地肌検出データと、前記第2地肌検出データとに基づいて、前記ノイズ源の位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1地肌検出データと前記第2地肌検出データとの位相差を求め、前記位相差に基づいて前記像担持体の基準位置を算出する基準位置算出手段と、をさらに備え、
前記ノイズ位置特定手段は、前記基準位置からの前記ノイズ源の位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準位置算出手段は、前記第1地肌検出データと、前記第2地肌検出データの畳み込みデータとの積を求める相互相関関数に入力し、前記相互相関関数の関数値が最大になる入力値を前記位相差として算出することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記パターン形成手段は、前記ノイズ源が前記像担持体に複数存在する場合に、前記パターンを、前記ノイズ源の間隔に合わせて変更して形成し、
前記補正手段は、変更量に応じて前記色ずれ補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置で実行される色ずれ補正方法であって、
前記像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定ステップと、
前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成するステップであって、位置が特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成ステップと、
前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知ステップと、
検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正ステップと、
を含むことを特徴とする色ずれ補正方法。
【請求項7】
像担持体上のノイズ源の位置を特定するノイズ位置特定ステップと、
前記像担持体に各色ごとの色ずれ補正用のパターンを形成するステップであって、位置が特定されたノイズ源を覆う前記パターンを形成するパターン形成ステップと、
前記像担持体に形成された前記パターンを検知する検知ステップと、
検知された各色の前記パターンに基づいて色ずれ補正を行う補正ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145719(P2012−145719A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3494(P2011−3494)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】