説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】複数の画像形成部で形成される画像をそれぞれ像担持体に転写してカラー画像を形成する装置において、各画像の書き出し位置を高精度に調整して高品質なカラー画像を形成する。
【解決手段】第1画像形成ステーションでは、色別垂直同期信号Vsyncが与えられたときの回転位置に応じた待機時間だけVsyncタイミングから遅延したタイミングで感光体ドラム21の露光が開始される。また、第2画像形成ステーションでは、色別垂直同期信号Vsyncが与えられたときの回転位置に応じた待機時間だけVsyncタイミングから遅延したタイミングで感光体ドラム21の露光が開始される。このため、回転ムラが発生しているにもかかわらず、第1画像形成ステーションで形成される画像の先端部に対して第2画像形成ステーションで形成される画像の先端部を高精度に重ねることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の画像形成部で形成される画像をそれぞれ像担持体に転写してカラー画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によりカラー画像を形成する画像形成装置として、例えば特許文献1〜3に記載された、いわゆるタンデム装置が知られている。これらのうち特許文献1に記載の画像形成装置では、4つの画像形成ステーションが設けられている。各画像形成ステーションでは、感光体ドラムなどの潜像担持体が副走査方向に回転駆動されるとともに、感光体ドラムに対向してラインヘッドが配置されている。各ラインヘッドでは、複数の発光素子が副走査方向とほぼ直交する主走査方向に列状に配列されており、水平同期信号に基づきビデオデータに応じたON/OFF制御が実行される。これによりビデオデータに対応したライン潜像が感光体ドラムに形成される。
【0003】
このように感光体ドラムを回転させながらビデオデータに対応して発光素子を駆動制御してライン潜像を書き込む。これによって、感光体ドラム上に2次元潜像が形成される。したがって、感光体ドラム表面の移動速度が変動すると、潜像の形成位置が副走査方向にずれてしまい、良好な潜像形成が実行できない場合があった。そこで、特許文献1に記載の装置では、感光体ドラムの表面の移動速度(周速)を検出するとともに、該検出結果に基づいて発光素子の発光タイミングを調整することで、感光体ドラム表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制している。そして、該2次元潜像がトナーにより現像されて画像が形成されるとともに、各画像形成ステーションで形成された画像が中間転写ベルト上で重ね合わされてカラー画像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−160917号公報(段落0081〜0083)
【特許文献2】特開2002−108041号公報
【特許文献3】特開2006−349847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置では、感光体ドラム表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれ、いわゆる画像のピッチムラについては調整されているものの、露光開始タイミングについては特段の考慮が払われていない。そのため、色毎に画像全体が副走査方向にずれるという問題があった。
【0006】
この問題を解消するために、例えば特許文献2や特許文献3などに記載された補正技術を特許文献1に記載の装置に適用することが考えられる。すなわち、特許文献2や特許文献3などに記載された装置では、転写ベルト上の基準画像を検出し、その検出結果に基づいて露光開始タイミングを決定している。しかしながら、基準画像の検出誤差により露光開始タイミングが乱れて色ズレが発生することがあった。つまり、高精度な画像の書き出しを行うことができず、画像品質の低下は避けられなかった。
【0007】
この発明にかかるいくつかの態様は、複数の画像形成部で形成される画像をそれぞれ像担持体に転写してカラー画像を形成する装置において、各画像の書き出し位置を高精度に調整して高品質なカラー画像を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記課題を解決するため、画像を担持する像担持体と、第1方向に回転駆動される第1潜像担持体を露光して第1潜像を形成するとともに第1潜像を現像して第1画像を形成し、像担持体に転写する第1画像形成部と、第1方向に回転駆動される第2潜像担持体を露光して第2潜像を形成するとともに第2潜像を現像して第2画像を形成し、像担持体に転写された第1画像に重ねて転写する第2画像形成部と、第1画像の書き出しを指令する第1信号を出力するとともに、第2画像の書き出しを指令する第2信号を出力する書出指令部と、第1信号が出力されたときの第1潜像担持体の回転位置に応じた第1遅延時間だけ第1信号の出力から遅延したタイミングで第1画像形成部による第1潜像担持体の露光を開始させるとともに、第2信号が出力されたときの第2潜像担持体の回転位置に応じた第2遅延時間だけ第2信号の出力から遅延したタイミングで第2画像形成部による第2潜像担持体の露光を開始させる露光制御部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記課題を解決するため、第1信号が与えられると、第1方向に回転駆動される第1潜像担持体を露光して第1潜像を形成するとともに第1潜像を現像して第1画像を形成し、像担持体に転写する第1工程と、第1信号と異なる第2信号が与えられると、第1方向に回転駆動される第2潜像担持体を露光して第2潜像を形成するとともに第2潜像を現像して第2画像を形成し、像担持体に転写された第1画像に重ねて転写する第2工程と、を備え、第1工程では、第1信号が与えられたときの第1潜像担持体の回転位置に応じた第1遅延時間だけ第1信号の出力から遅延したタイミングで第1潜像担持体の露光を開始し、第2工程では、第2信号が与えられたときの第2潜像担持体の回転位置に応じた第2遅延時間だけ第2信号の出力から遅延したタイミングで第2潜像担持体の露光を開始することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(画像形成装置および画像形成方法)では、第1信号に基づき第1画像形成部が第1画像を形成して像担持体に転写する一方、第2信号に基づき第2画像形成部が第2画像を形成して像担持体に転写された第1画像に重ねて転写する。したがって、第1信号の受信から第1潜像担持体の露光開始までの時間を固定化すると、第1画像形成部により形成される第1画像の先端が像担持体の表面に転写される位置は、後で詳述するように第1潜像担持体の表面速度が変動するのに応じて第1方向に変動する。この点に関しては、第2画像形成部においても同様である。このように第1画像および第2画像が第1方向にずれる主たる要因は潜像担持体の回転ムラであり、潜像担持体の回転位置により表面速度が異なるために像担持体上での第1画像および第2画像の転写位置が第1方向に変動する。
【0011】
そこで、本発明では、第1画像形成部および第2画像形成部のいずれにおいても、上記信号が与えられた時点での潜像担持体の回転位置に応じて露光開始タイミングが調整される。つまり、第1画像形成部では、第1信号が与えられたときの回転位置に応じた第1遅延時間だけ第1信号の出力から遅延したタイミングで第1潜像担持体の露光が開始される。また、第2画像形成部では、第2信号が与えられたときの回転位置に応じた第2遅延時間だけ第2信号の出力から遅延したタイミングで第2潜像担持体の露光が開始される。このため、回転ムラが発生しているにもかかわらず、第1画像の先端部に対して第2画像の先端部を高精度に重ねることができ、画像先端色ズレが効果的に防止されて高品質なカラー画像が得られる。
【0012】
また、第1画像形成部が、第1方向と異なる第2方向に配設された複数の第1発光素子を有し、露光制御部から与えられる第3信号に応じて第1発光素子を発光させて第1潜像担持体を露光する第1露光ヘッドを備えるように構成してもよい。この場合、露光制御部が第1潜像担持体の表面速度の変動に応じて第3信号の出力タイミングを制御して第1発光素子の発光間隔を調整することで、第1発光素子から発光された光により第1潜像担持体に形成される露光スポットの第1方向でのピッチは均一化される。その結果、第1潜像担持体の回転ムラが発生していたとしても、第1画像のピッチムラを抑制することができ、さらに高品質な画像を形成することができる。なお、第1潜像担持体が1周する間に第3信号がN1(≧4)回出力されるときには、第3信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、第3信号がN1回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、第1遅延時間を設定するのが望ましい。
【0013】
さらに、第2画像形成部が、第2方向に配設された複数の第2発光素子を有し、露光制御部から与えられる第4信号に応じて第2発光素子を発光させて第2潜像担持体を露光する第2露光ヘッドを備えるように構成してもよい。この場合、露光制御部が第2潜像担持体の表面速度の変動に応じて第4信号の出力タイミングを制御して第2発光素子の発光間隔を調整することで、第2発光素子から発光された光により第2潜像担持体に形成される露光スポットの第1方向でのピッチは均一化される。その結果、第2潜像担持体の回転ムラが発生していたとしても、第2画像のピッチムラを抑制することができ、さらに高品質な画像を形成することができる。なお、第2潜像担持体が1周する間に第4信号をN2(≧4)回出力するときには、第4信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、第4信号がN2回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、第2遅延時間を設定するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】水平同期信号生成部の構成を示すブロック図。
【図4】感光体ドラムの回転ムラと画像先端位置との関係を示す模式図。
【図5】画像先端での位置誤差や色ズレの発生を示す模式図。
【図6】紙送り方向画像位置と画像位置誤差との関係を示す図。
【図7】露光開始タイミング制御の概要を模式的に示す図。
【図8】露光開始タイミング制御を示すフローチャート。
【図9】露光開始タイミング制御の動作を示すグラフ。
【図10】LUTの記憶内容の一例を示す図。
【図11】LUTの記憶内容の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印刷情報)が画像処理部81を有するメインコントローラー(図示省略)に与えられると、このメインコントローラーからの制御信号に基づきメカ制御部82が装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材RMたるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0017】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される、感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向(本発明の「第1方向」に相当)に所定速度で回転駆動される。また、感光体ドラム21の回転位置や回転状態などを検出するために、本実施形態では、感光体ドラム21の回転軸(図示省略)に感光体エンコーダー211(図2)が取り付けられており、感光体ドラム21の回転に応じてエンコーダー信号を出力する。したがって、感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号に基づき感光体ドラム21の表面移動速度(周速)や回転位置などを正確に求めることができる。
【0018】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成する露光ヘッド23と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像ユニット24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、該トナー像を転写ユニット3の中間転写ベルト31に一次転写する一次転写ユニットと、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットと、クリーナーブレードとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0019】
帯電器22は感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、この帯電器22には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤにはワイヤ電流が流されるとともに、グリッドには直流(DC)のグリッド帯電バイアスが印加される。帯電器22によるコロナ放電で感光体ドラム21が帯電されることで、感光体ドラム21の表面の電位が略均一の電位に設定される。
【0020】
露光ヘッド23は後述するようにヘッドコントローラーHCから与えられるビデオデータに基づき光ビームを発生させて光ビームにより感光体ドラム21表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成するものである。この実施形態では、露光ヘッド23は、主走査方向と平行な長手方向に配列された複数の発光素子を備えており、露光ヘッド23の幅方向が回転方向D21、つまり副走査方向に平行もしくは略平行となるように感光体ドラム21に対向配置されている。また、発光素子に対してレンズアレイが対向して配置されている。したがって、発光素子の発光面から射出した光ビームはレンズアレイにより結像されて感光体ドラム21表面にスポットが照射される。なお、ヘッドコントローラーHCの構成、ならびにヘッドコントローラーHCによる露光ヘッド23の露光制御については、後で詳述する。
【0021】
上記のように構成された露光ヘッド23により感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像に対して現像ユニット24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。なお、この画像形成装置1の現像ユニット24では、キャリア液内にトナーを概略重量比20%程度に分散させた液体現像剤を用いてトナー現像が行われる。この画像形成装置1では、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリア液とした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性の樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形粒子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0022】
第1スクイーズ部25および第2スクイーズ部26にはスクイーズローラーがそれぞれ設けられている。そして、各スクイーズローラーが感光体ドラム21の表面と当接してトナー像の余剰キャリア液やカブリトナーを除去する。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26により余剰キャリア液やカブリトナーを除去しているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0023】
スクイーズ部25、26を通過してきたトナー像は一次転写ユニットにより中間転写ベルト31に一次転写される。この中間転写ベルト31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34および35に掛け渡されている。このうちローラー32はベルト駆動モーターM3に機械的に接続されて、中間転写ベルト31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、中間転写ベルト31を掛け渡されたローラー32ないし35のうち、モーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33、34および35は駆動源を有しない従動ローラーである。
【0024】
一次転写ユニットは一次転写バックアップローラー271を有しており、一次転写バックアップローラー271は中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写ベルト31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写ベルト31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写ベルト31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写ベルト31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写ベルト31へのトナー像転写が行われる。
【0025】
こうして中間転写ベルト31に転写されたトナー像は二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写ベルト31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写ローラー4が中間転写ベルト31を挟んで対向配置されており、中間転写ベルト31表面と転写ローラー4表面とが互いに当接して転写ニップNPを形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。二次転写ローラー4の回転シャフト421は、例えばバネのような弾性部材である押圧部45によって弾性的に、かつ中間転写ベルト31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0026】
二次転写位置TR2においては、中間転写ベルト31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録材RMに転写される。なお、この実施形態では、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式現像方式でトナー像を形成しているので、良好な転写特性を得るために、転写ニップにおいては中間転写ベルト31に対し記録材RMが高い押圧力で押圧されることが望まれる。また、液体現像剤を介在させるため、記録材RMが中間転写ベルト31に貼り付きジャムとなる可能性が高い。そこで、この画像形成装置1では、把持部を有する二次転写ローラー4が用いられている。
【0027】
二次転写ローラー4は、円筒の外周面の一部を切り欠いてなる凹部41が設けられたローラー基材42を有している。このローラー基材42では、回転軸中心に方向D4に回転自在の回転シャフト421が二次転写バックアップローラー34の回転軸と平行または略平行に配置されるとともに、押圧部45により二次転写バックアップローラー34側に付勢されて所定の荷重(この実施形態では60kgf)が付加されている。そして、図示を省略するモーターから回転駆動力が回転シャフト421に与えられると、二次転写ローラー4は回転方向D4に回転する。また、この二次転写ローラー4には、垂直同期センサー46が設けられており(図2)、二次転写ローラー4が所定の基準位置を通過する際に垂直同期信号Vsyncが出力される。この実施形態では、こうして得られる垂直同期信号Vsyncに基づき画像形成(印字)を開始するが、中間転写ベルト31の周回動作に基づき垂直同期信号Vsyncを発生させたり、基準クロックに基づきメカ制御部82等で垂直同期信号Vsyncを発生させるように構成してもよい。
【0028】
また、ローラー基材42の外周面、つまり凹部41の内部に相当する領域を除く表面領域にゴムや樹脂などの弾性層(図示省略)が形成されている。この弾性層はバックアップローラー34に巻き掛けられた中間転写ベルト31と対向して転写ニップNPを形成する。また、凹部41の内部には、記録材RMを把持するための把持部44が配設されている。この把持部44は、凹部41の内底部からローラー基材42の外周面に立設されたグリッパ支持部材と、グリッパ支持部材の先端部に対して接離自在に支持されたグリッパ部材とを有している。そして、グリッパ部材を駆動制御することで記録材RMの把持や把持開放を行うことが可能となっている。
【0029】
なお、トナー像が二次転写された記録材RMは、二次転写ローラー4から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録材RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録材RMへのトナー像の定着が行われる。このように本実施形態では、中間転写ベルト31の移動方向D31が後述する「紙送り方向」に相当している。
【0030】
次に、上記のように構成された画像形成装置において露光ヘッド23を制御するヘッドコントローラーHCの構成および動作を中心に説明する。本実施形態にかかる画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印刷情報)が与えられると、メインコントローラーに設けられた画像処理部81が画像形成指令に含まれる画像データに対してスクリーン処理などのデータ処理を行い、各トナー色のビデオデータを生成する。そして、これらのビデオデータが画像処理部81からヘッドコントローラーHCのビデオデータ制御部83にそれぞれ転送される。
【0031】
ヘッドコントローラーHCは、上記したビデオデータ制御部83以外に、ビデオデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)84、水平同期信号生成部85、LUT(ルックアップテーブル)86およびヘッド制御信号生成部87を備えている。なお、これらのうち水平同期信号生成部85、LUT86およびヘッド制御信号生成部87については、図2に示すように、トナー色毎に設けられている。
【0032】
図3は水平同期信号生成部の構成を示すブロック図である。各水平同期信号生成部85は、水平同期信号出力制御回路851、動的水平同期信号生成回路852、動的水平同期回数カウンター853、クロック発生回路854および標準水平同期回数カウンター855を有し、当該トナー色に対応する色別垂直同期信号Vsync、感光体エンコーダー211からのエンコーダー信号およびLUT86内のHsync回数に基づき水平同期信号Hsyncを出力する。
【0033】
本実施形態では、上記したように垂直同期センサー46に基づき垂直同期信号Vsyncが出力されるが、この垂直同期信号Vsyncに基づきメカ制御部82が4つの色別垂直同期信号Vsyncを生成し、各水平同期信号生成部85の水平同期信号出力制御回路851に出力する。このように4つの色別垂直同期信号を生成する理由は、4つの画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが互いに離間して配置されて一次転写位置TR1が互いに異なっていることに起因するものであり、各色の画像形成ステーション間距離を基に4種類の色別垂直同期信号Vsyncを生成し、対応する色の水平同期信号出力制御回路851へ送信する。
【0034】
また、動的水平同期信号生成回路852はHsync信号を出力する回路であるが、次に説明するように感光体ドラム21の回転ムラに応じてHsync信号の周期を可変可能となっている。すなわち、動的水平同期信号生成回路852は感光体エンコーダー211およびLUT86に対して電気的に接続されており、感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号を受信し、そのエンコーダー信号のエンコーダー番号(つまり感光体ドラム21の回転位置を示す情報)に対応するHsync回数をLUT86から読み出す。より詳しくは、LUT86内では、後の具体例(図10、図11)で示すように、感光体ドラム21の回転位置を示すエンコーダー番号とHsync回数との相対関係を示すデータが記憶されている。そして、動的水平同期信号生成回路852は、エンコーダー信号に同期して当該エンコーダー信号のエンコーダー番号に対応したHsync回数と、動的水平同期信号生成回路852から出力されたHsync信号のカウント値(以下「動的水平同期回数」という)とを比較する。なお、この動的水平同期回数を求めるために、本実施形態では動的水平同期回数カウンター853が設けられており、動的水平同期信号生成回路852から出力されるHsync信号をカウントアップするとともにエンコーダー信号に同期してカウント値を動的水平同期回数として水平同期信号出力制御回路851および動的水平同期信号生成回路852に出力する。
【0035】
この動的水平同期回数を受けて動的水平同期信号生成回路852はHsync信号の周期をフィードバック制御して当該周期を感光体ドラム21の回転ムラに対応した値に調整する。すなわち、感光体ドラム21の回転ムラにより感光体ドラム21の表面速度が変動すると、動的水平同期回数がHsync回数と不一致となる。そこで、エンコーダー信号を受信する毎に動的水平同期回数がHsync回数と一致するようにHsync信号の周期を制御しながら可変周期のHsync信号を水平同期信号出力制御回路851に与える。
【0036】
また本実施形態では、感光体ドラム21の回転ムラが発生しない、いわゆる理想状態で感光体ドラム21が回転する場合のHsync信号の出力状態(後で説明する図8の「標準水平同期回数」)を把握するために、クロック発生回路854および標準水平同期回数カウンター855が設けられている。すなわち、標準水平同期回数カウンター855は、クロック発生回路854で発生する基準クロックに基づき理想状態でのHsync信号の出力回数をカウントし、そのカウント値(以下「標準水平同期回数」という)をエンコーダー信号に同期して水平同期信号出力制御回路851に与える。
【0037】
そして、水平同期信号出力制御回路851は色別垂直同期信号Vsync、動的水平同期信号生成回路852からのHsync信号、動的水平同期回数および標準水平同期回数に基づき次のようにしてヘッド制御信号生成部87に与えるべき水平同期信号Hsyncを生成する。以下、図4ないし図11を参照しつつヘッドコントローラーHCの動作について説明する。なお本実施形態では、水平同期信号Hsyncの周期を可変制御して画像のピッチムラを抑制する制御(以下「動的水平同期制御」という)と、標準水平同期回数と動的水平同期回数とに基づき水平同期信号Hsyncの出力開始を制御して露光開始タイミングを調整する制御(以下「露光開始タイミング制御」という)とを実行するが、それらの理解を深めるために、画像先端での位置誤差や色ズレが発生する理由について説明した後、動的水平同期制御および露光開始タイミング制御をともに実行しない場合、動的水平同期制御のみを実行する場合、ならびに動的水平同期制御および露光開始タイミング制御をともに実行する場合を比較しながら説明する。
【0038】
図4は感光体ドラムの回転ムラと画像先端位置との関係を示す模式図である。また、図5は画像先端での位置誤差や色ズレの発生を示す模式図である。例えば画像形成ステーション2Yで、色別垂直同期信号Vsyncを受信すると同時に露光ヘッド23による露光を開始すると、図4に示すように、画像形成ステーション2Yで形成される画像の先端位置(同図中の黒丸印参照)は感光体ドラム21の回転ムラの影響を受けて紙送り方向、つまり中間転写ベルト31の移動方向D31において変動する。一方、回転ムラが発生しない理想状態では、画像先端位置は露光開始から所定時間経過後に一次転写位置TR1に移動されて中間転写ベルト31の理想位置(同図中のハッチングされた丸印参照)に転写される。
【0039】
しかしながら、感光体ドラム21の表面速度(周速)が遅くなると、感光体ドラム21に形成される画像の先端は露光開始から所定時間経過した時点においても、未だ一次転写位置TR1に到達しておらず、それより遅れて上記画像は中間転写ベルト31に一次転写される。その結果、画像形成ステーション2Yで形成される画像I(y)は図5(a)に示すように理想状態での画像の一次転写位置(同図中の破線位置)から紙送り方向D31の上流側にずれて一次転写され、先端位置誤差が発生する。また、逆に感光体ドラム21の表面速度(周速)が早くなると、感光体ドラム21に形成される画像の先端は露光開始から所定時間経過した時点よりも前に、一次転写位置TR1に到達して中間転写ベルト31に一次転写される。その結果、図5(a)への図示を省略しているが、画像形成ステーション2Yで形成される画像I(y)は理想状態での画像の一次転写位置(同図中の破線位置)から紙送り方向D31の下流側にずれて一次転写され、先端位置誤差が発生する。このような先端位置誤差はイエロー色に限定されるものではなく、他のトナー色についてもイエロー色と同様に感光体ドラム21の回転ムラにより画像先端誤差が発生する。
【0040】
また、図1の画像形成装置ではイエロー色の画像I(y)に他色の画像を重ね合わせてカラー画像を形成するため、各色での感光体ドラム21の回転ムラの影響は画像先端の色ズレを招くことがある。例えば図5(b)に示すようにイエロー色の画像I(y)とマゼンタ色の画像I(m)の画像先端が紙送り方向D31において画像先端色ズレ量ΔYだけ相互にずれて色ズレが発生することがあり、これによって画像品質が劣化することがある。
【0041】
また、感光体ドラム21の回転ムラは単に画像の先端位置誤差や画像先端色ズレを生じさせるのみならず、画像のピッチムラの要因ともなる。つまり、感光体ドラム21の回転ムラが生じているにもかかわらず、水平同期信号Hsyncを一定周期で出力して露光処理を実行すると、例えば図6(a)に示すように、紙送り方向D31での画像位置誤差は紙送り方向D31における画像位置に応じて大きく変動する。なお、図6中の符号P0は、感光体ドラム21の回転ムラが発生しない理想状態における、紙送り方向D31の画像位置と画像位置誤差との関係を示しており、画像位置誤差は一定であり、本実施形態ではこれを基準状態として画像位置誤差をゼロとしている。つまり、同図中の「紙送り方向画像位置誤差」とは、理想状態での画像位置からのズレ量を意味しており、各プロファイルP(y)、P(m)の振幅が紙送り方向での画像ピッチムラの大きさを示している。
【0042】
そこで、本実施形態では動的水平同期制御を実行することでピッチムラを抑制している。すなわち、感光体エンコーダー211は感光体ドラム21の基準位置を検出すると、これに対応する信号を出力する(Z相検出)。また、Z相検出後に感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号に対応するエンコーダー番号に基づきHsync回数がLUT86から読み出される。そして、そのHsync回数と動的水平同期信号生成回路852から出力される動的水平同期回数とを比較してHsync信号の周期を制御しながらHsync信号を水平同期信号出力制御回路851に与える。より具体的には、感光体ドラム21の表面速度(周速)が遅くなると、Hsync信号の周期は短くなる一方、感光体ドラム21の表面速度(周速)が早くなると、Hsync信号の周期は長くなる。これによって、感光体ドラム21の回転ムラに起因する画像のピッチムラを抑制することができる。その結果、図6に記載されたプロファイルP(y)同士を比較したり、プロファイルP(m)同士を比較することで明らかなように、紙送り方向D31での画像位置誤差の変動量が抑制されて各色の画像ピッチムラが少なくなり、画像品質を高めることができる。
【0043】
しかしながら、画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは互いに独立して作動するため、露光開始タイミングでの感光体ドラム21の表面速度は色毎に相違していることがあり、図4に基づき説明したように画像先端での画像位置誤差が色毎に大きく相違することがある。このことは、画像先端色ズレ量ΔY(図5(b)参照)が大きく、ピッチムラが抑制されているにもかかわらず画像先端部での色ズレがより顕著になって画質低下を招くことを意味している。また、図6(b)および(c)の比較から明らかなように、画像先端色ズレ量ΔYは印刷枚数毎に変動する。そこで、本実施形態では、動的水平同期制御に加えて露光開始タイミング制御を実行して例えば図6(d)に示すように画像先端色ズレ量ΔYを常に抑制している。
【0044】
図7は露光開始タイミング制御の概要を模式的に示す図である。また、図8は露光開始タイミング制御を示すフローチャートである。また、図9は露光開始タイミング制御の動作を示すグラフである。さらに、図10および図11はLUTの記憶内容を例示した図である。ここでは、まず露光開始タイミング制御の概要について図7を参照しつつ説明した後で、露光開始タイミング制御の動作について図8ないし図11を参照しつつ説明する。
【0045】
本実施形態における露光開始タイミング制御は色別垂直同期信号Vsyncから遅れて露光を開始するものであり、色別垂直同期信号Vsyncからの遅延時間(待機時間DT)を調整するものである。本実施形態では、感光体ドラム21の回転ムラが生じていない理想状態では、図7の上段に示すように、色別垂直同期信号Vsyncを受信した「Vsyncタイミング」では露光ヘッド23による露光を開始せず、所定の標準待機時間DT0だけ待機した後に露光を開始する(露光開始タイミング)。そして、画像形成ステーションで形成される画像の先端位置(同図中の黒丸印参照)は、Vsyncタイミングから所定の移動時間(以下「標準移動時間」という)が経過後に一次転写位置TR1に移動されて中間転写ベルト31の理想位置(同図中のハッチングされた丸印参照)に転写される。なお、同図中の破線丸印はVsyncタイミングに露光ヘッド23と対向する感光体ドラム21の表面位置を示している。
【0046】
ここで、感光体ドラム21に回転ムラが発生すると、感光体ドラム21の表面速度(周速)が変動し、画像先端位置が一次転写位置TR1に達するまでに要する時間が変動する。そこで、その時間変動を考慮して本実施形態では、その変動時間分だけ待機時間を調整する。すなわち、色別垂直同期信号Vsyncが与えられたVsyncタイミングでの感光体ドラム21の表面速度が理想状態での表面速度よりも遅い場合、同図の中段に示すように、標準待機時間DT0よりも短い待機時間DTsだけVsyncタイミングから待機した後で露光を開始する。その結果、Vsyncタイミングから標準移動時間経過したタイミングで、画像形成ステーションにより形成される画像の先端位置は一次転写位置TR1に移動されて中間転写ベルト31の理想位置に転写される。逆に、色別垂直同期信号Vsyncが与えられたVsyncタイミングでの感光体ドラム21の表面速度が理想状態での表面速度よりも早い場合、同図の下段に示すように、標準待機時間DT0よりも長い待機時間DTfだけVsyncタイミングから待機した後で露光を開始する。その結果、Vsyncタイミングから標準移動時間経過したタイミングで、画像形成ステーションにより形成される画像の先端位置は一次転写位置TR1に移動されて中間転写ベルト31の理想位置に転写される。
【0047】
このように、感光体ドラム21に回転ムラが発生することで色別垂直同期信号Vsyncが与えられた時点での感光体ドラム21の回転位置によって感光体ドラム21の表面速度が変動するが、それに応じて露光開始タイミングを調整している。その結果、いずれの画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kにおいても、画像先端位置は中間転写ベルト31の理想位置に一致し、画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの各々で形成される画像を中間転写ベルト31上で高精度に重ね合わせることができ、高品質なカラー画像が得られる。
【0048】
次に、露光開始タイミング制御の動作について図8ないし図11を参照しつつ説明する。なお、図9においては、動的水平同期回数および標準水平同期回数の変化を示すプロファイル(同図中の左側グラフ)と、中間転写ベルト31上での画像転写位置を示すプロファイル(同図中の右側グラフ)とが記載されている。また、同図の左側縦軸は上記した動的水平同期回数および標準水平同期回数を示すのみならず、感光体ドラム21の回転位置を指標するHsync回数を示している。
【0049】
本実施形態では、直径40mmの感光体ドラム21を用いるとともに副走査方向(Y方向)の解像度を1200dpiに設定した場合、次のように構成している。感光体ドラム21の1周を5937分割している。つまり、感光体ドラム21の基準回転位置(Z相検出時点での回転位置)から0.06゜(=360゜/5937)だけ回転した位置をHsync回数=1としている。つまり、感光体ドラム21が1周する間における感光体ドラム21の回転位置をHsync回数により指標しており、Hsync回数がMのときの感光体ドラム21の回転位置は基準位置から(0.06゜×M)だけ回転した位置となっている。また、感光体ドラム21が1周する間に感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号の数を1024に設定している、つまり感光体エンコーダー211のパルス数を1024(Plus/rev)に設定している。このため、感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号のエンコーダー番号とHsync回数との相関関係は図10に示す通りであり、この相関関係がLUT86に記憶されている。また、標準待機時間DT0に対応するオフセット回数として「20」が設定されている。
【0050】
また、直径80mmの感光体ドラム21を用いるとともに副走査方向(Y方向)の解像度を2400dpiに設定した場合、次のように構成している。感光体ドラム21の1周を23747分割している。つまり、感光体ドラム21の基準回転位置(Z相検出時点での回転位置)から0.015゜(=360゜/23747)だけ回転した位置をHsync回数=1としている。したがって、Hsync回数がMのときの感光体ドラム21の回転位置は基準位置から(0.015゜×M)だけ回転した位置となっている。また、感光体ドラム21が1周する間に感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号の数を3600に設定している、つまり感光体エンコーダー211のパルス数を3600(Plus/rev)に設定している。このため、感光体エンコーダー211から出力されるエンコーダー信号のエンコーダー番号とHsync回数との相関関係は図10に示す通りであり、この相関関係がLUT86に記憶されている。また、標準待機時間DT0に対応するオフセット回数として「40」が設定されている。
【0051】
水平同期信号出力制御回路851は色別垂直同期信号Vsyncを検出する(ステップS1)と、色別垂直同期信号Vsyncを検出したVsyncタイミングT1での標準水平同期回数にオフセット回数を加算し、その演算結果を露光開始回数としてメモリー(図示省略)に記憶する(ステップS2)。すなわち、本実施形態では、標準水平同期回数カウンター855が設けられており、クロック発生回路854で発生する基準クロックに基づき標準水平同期回数がカウントして水平同期信号出力制御回路851に与えられるとともに、その標準水平同期回数にオフセット回数が加算されて露光開始回数が算出される。
【0052】
そして、水平同期信号出力制御回路851は動的水平同期回数カウンター853から出力される動的水平同期回数を露光開始回数と比較し(ステップS3)、動的水平同期回数が露光開始回数以上となったタイミングT2で動的水平同期信号生成回路852から出力されるHsync信号を水平同期信号Hsyncとし、ヘッド制御信号生成部87への出力を開始する(ステップS4)。これにより、色別垂直同期信号Vsyncから遅れて露光が開始される。
【0053】
ここで、注目すべき点は、標準水平同期回数は感光体ドラム21の回転ムラの有無にかかわらず図9中のプロファイルCrに示すように時間経過に伴ってリニアに増加するのに対し、動的水平同期回数は感光体ドラム21の回転ムラによって同図中のプロファイルCdに示すように時間経過に伴って非リニアに増加する点である。なお、プロファイルCdが生じる理由はHsync信号の周期を感光体ドラム21の回転ムラに対応して変動させること(動的水平同期制御)に起因するものである。例えばタイミングT1において、例えば図7の中段に示したように感光体ドラム21の表面速度が理想状態に比べて遅くなっている場合、動的水平同期制御を行って画像のピッチムラを抑制するためにHsync信号の周期は理想状態よりも短くなっており、その結果、動的水平同期回数は標準水平同期回数を上回った状態でカウントアップされていく。そのため、Hsync信号の周期が理想状態よりも短くなっている分だけ動的水平同期回数は短時間で露光開始回数を超える。つまり、回転ムラがない理想状態で感光体ドラム21が回転している(換言すれば、感光体ドラム21の表面速度が平均表面速度で感光体ドラム21が回転している)場合の露光開始タイミングT20よりも早いタイミングT2sで露光が開始される。
【0054】
一方、図9への図示を省略しているが、タイミングT1において、例えば図7の下段に示したように感光体ドラム21の表面速度が理想状態に比べて早くなっている場合、動的水平同期制御を行って画像のピッチムラを抑制するためにHsync信号の周期は理想状態よりも長くなっており、その結果、動的水平同期回数は標準水平同期回数を下回った状態でカウントアップされていく。そのため、Hsync信号の周期が理想状態よりも長くなっている分だけ動的水平同期回数は長時間かかって露光開始回数を超える。つまり、上記露光開始タイミングT20よりも遅いタイミングで露光が開始される。なお、タイミングT1において感光体ドラム21の表面速度が理想状態と同じである場合、動的水平同期回数はタイミングT20で露光開始回数となり、露光が開始される。
【0055】
以上のように、本実施形態では、動的水平同期回数を露光開始回数と対比してヘッド制御信号生成部87への水平同期信号Hsyncの出力開始を制御しているので、VsyncタイミングT1から一次転写開始タイミングT3までの時間を、回転ムラの影響を受けることなく、一定にすることができる。その結果、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成される画像の先端位置を相互に一致させることができ、画像先端色ズレを効果的に抑制することができる。また、上記のように画像先端色ズレを抑制しつつ、動的水平同期制御を実行することで各画像のピッチムラを抑制することができ、高品質なカラー画像が得られる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の画像形成部に相当する画像形成ステーションを4つ設けた画像形成装置に対して本発明を適用しているが、本発明は2つ以上の画像形成ステーション(画像形成部)を有するタンデム方式の画像形成装置全般に対して適用することができる。すなわち、複数の画像形成ステーションのうち紙送り方向D31、つまり副走査方向Yにおいて上流側に位置する画像形成ステーションが本発明の「第1画像形成部」に相当する一方、下流側の画像形成ステーションが本発明の「第2画像形成部」に相当する。
【0057】
また、上記実施形態では、各画像形成ステーションの感光体ドラム21が1周する間に本発明の「第3信号」や「第4信号」に相当するHsync信号を5937回または23747回出力しているが、感光体ドラム21が1周する間でのHsync信号の出力回数はこれらに限定されるものではなく、4回以上出力するように構成してもよく、この場合、待機時間DTを次のように設定することができる。すなわち、待機時間DTsについては、Hsync信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く設定することができる。待機時間DTfについてはHsync信号がN1(またはN2)回出力されるのに対応する時間よりも短い時間に設定することができる。すなわち、本発明の「第1画像形成部」に相当する画像形成ステーションでは、感光体ドラム21が1周する間にHsync信号をN1(≧4)回出力するとき、Hsync信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、Hsync信号がN1回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、待機時間DTを設定することができる。また、本発明の「第2画像形成部」に相当する画像形成ステーションでは、感光体ドラム21が1周する間にHsync信号をN2(≧4)回出力するとき、Hsync信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、Hsync信号がN2回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、待機時間DTを設定することができる。このように設定することで上記実施形態と同様の作用効果が確実に得られる。
【符号の説明】
【0058】
1…画像形成装置、 2Y、2M、2C、2K…画像形成ステーション(画像形成部)、 21…感光体ドラム(潜像担持体)、 23…露光ヘッド、 31…中間転写ベルト(像担持体)、 46…垂直同期センサー、 81…画像処理部、 82…メカ制御部(書出指令部)、 85…水平同期信号生成部(露光制御部)、 87…ヘッド制御信号生成部(露光制御部)、 D31…紙送り方向、 DT0、DTf、DTs…待機時間(遅延時間)、 Hsync…水平同期信号(第3信号、第4信号)、 HC…ヘッドコントローラー(露光制御部)、 Vsync…色別垂直同期信号(第1信号、第2信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持する像担持体と、
第1方向に回転駆動される第1潜像担持体を露光して第1潜像を形成するとともに前記第1潜像を現像して第1画像を形成し、前記像担持体に転写する第1画像形成部と、
前記第1方向に回転駆動される第2潜像担持体を露光して第2潜像を形成するとともに前記第2潜像を現像して第2画像を形成し、前記像担持体に転写された前記第1画像に重ねて転写する第2画像形成部と、
前記第1画像の書き出しを指令する第1信号を出力するとともに、前記第2画像の書き出しを指令する第2信号を出力する書出指令部と、
前記第1信号が出力されたときの前記第1潜像担持体の回転位置に応じた第1遅延時間だけ前記第1信号の出力から遅延したタイミングで前記第1画像形成部による前記第1潜像担持体の露光を開始させるとともに、前記第2信号が出力されたときの前記第2潜像担持体の回転位置に応じた第2遅延時間だけ前記第2信号の出力から遅延したタイミングで前記第2画像形成部による前記第2潜像担持体の露光を開始させる露光制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1画像形成部は、前記第1方向と異なる第2方向に配設された複数の第1発光素子を有し、前記露光制御部から与えられる第3信号に応じて前記第1発光素子を発光させて前記第1潜像担持体を露光する第1露光ヘッドを備え、
前記露光制御部は、前記第1潜像担持体の表面速度の変動に応じて前記第3信号の出力タイミングを制御して前記第1発光素子の発光間隔を調整する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記露光制御部は、前記第1潜像担持体が1周する間に前記第3信号をN1(≧4)回出力するとき、前記第3信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、前記第3信号がN1回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、前記第1遅延時間を設定する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2画像形成部は、前記第2方向に配設された複数の第2発光素子を有し、前記露光制御部から与えられる第4信号に応じて前記第2発光素子を発光させて前記第2潜像担持体を露光する第2露光ヘッドを備え、
前記露光制御部は、前記第2潜像担持体の表面速度の変動に応じて前記第4信号の出力タイミングを制御して前記第2発光素子の発光間隔を調整する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記露光制御部は、前記第2潜像担持体が1周する間に前記第4信号をN2(≧4)回出力するとき、前記第4信号が2回出力されるのに対応する時間よりも長く、前記第4信号がN2回出力されるのに対応する時間よりも短い時間の範囲内で、前記第2遅延時間を設定する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1信号が与えられると、第1方向に回転駆動される第1潜像担持体を露光して第1潜像を形成するとともに前記第1潜像を現像して第1画像を形成し、像担持体に転写する第1工程と、
前記第1信号と異なる第2信号が与えられると、前記第1方向に回転駆動される第2潜像担持体を露光して第2潜像を形成するとともに前記第2潜像を現像して第2画像を形成し、前記像担持体に転写された前記第1画像に重ねて転写する第2工程と、を備え、
前記第1工程では、前記第1信号が与えられたときの前記第1潜像担持体の回転位置に応じた第1遅延時間だけ前記第1信号の出力から遅延したタイミングで前記第1潜像担持体の露光を開始し、
前記第2工程では、前記第2信号が与えられたときの前記第2潜像担持体の回転位置に応じた第2遅延時間だけ前記第2信号の出力から遅延したタイミングで前記第2潜像担持体の露光を開始することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−227123(P2011−227123A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93890(P2010−93890)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】