説明

画像形成装置及び転写方法

【課題】1枚目の印字時にも安定した高画質画像を再現することができ、低コスト化を図ることが可能な画像形成装置及び転写方法を提供しようとするものである。
【解決手段】静電潜像を担持する像担持体1と、像担持体1の静電潜像に対してトナーを供給してトナー像を形成する現像手段6と、転写ニップを形成する転写手段とを備え、転写ニップおいて電界を作用させて像担持体上のトナー像を記録媒体Sに静電的に転移させるように構成した画像形成装置である。機内温度を検出する温度センサ42と、機内の温度を調節するためのファン41と、温度センサ42の検出値に基づいてファン42の動作を制御する制御手段44とを設ける。温度センサ42が低温領域を検知し、かつ、記録媒体Sが厚紙の場合に、制御手段44がファン41の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多種類の記録媒体上にトナー画像を転写する2次転写部(感光体、中間転写ベルト、駆動ローラ及び従動ローラ、2次転写ローラ、クリーニングブレード等)において、記録媒体にトナー像を転写させる方法として、2次転写ローラに2次転写電圧が印加されるものがある(特許文献1)。すなわち特許文献1のものは、中間転写ベルト上に搬送されてきたトナーを、2次転写ローラに印加された2次転写電圧によって記録媒体に転写する。この場合、定電流方式を採用している。定電流方式とは、一定の電流値を、記録媒体の用紙種や環境ごとに設定し、2次転写ローラに電圧を印加する方式である。定電流方式は、電流を一定制御しているため、用紙幅及び用紙厚み等を変更することによる用紙抵抗の変化や、トナーの有無及び放置環境等の環境が変化することによる機能材料(2次転写ローラや転写ベルト)の抵抗の変化が生じた場合に電圧が変動する。このように、電圧値は、記録媒体の用紙種、2次転写ローラの抵抗、転写ベルトの抵抗等によって変動するため、トナー転写に必要な電圧は、抵抗に追従することになる。
【0003】
前記のように、定電流方式にて2次転写を行う方法では、例えば厚紙印字要求があった場合、転写性と画質が確保できるような最適電流値を任意に設定する。このようにして、最適な画像が得られ、画像品質を高画質に保っている。
【0004】
また、機内環境を調節するものとして、機内温度を調節するためのファンが設けられており、機内温度の上昇を防止してトナーの融着(固着)や結露の発生を防ぐものが提案されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような装置がLL環境(10℃15%RH)に置かれ、機内が冷え切った状態から印字を開始する場合、図7に示すように、通紙の初期の段階(特に1枚目の印字時)では機内温度が低い状態となっている。このため、2次転写部の機能材料(転写ベルトや転写ローラ)が冷えており抵抗値が高くなるため、図8に示すように、普通紙であっても厚紙であっても1枚目の印字時では2次転写電圧が高くなる。特に、厚紙の用紙抵抗は、普通紙の用紙抵抗よりも高く、厚紙の2次転写電圧Aは、普通紙の2次転写電圧Bよりもはるかに高い2次転写電圧を示す。その後、2枚目、3枚目と複数枚印字を行うと、定着ヒーターが作動し、機内温度が上昇すること等によって、図7に示すように機内温度が徐々に高くなる。これにより、2次転写部の機能材料の温度が高くなって、印字につれて機能材料の抵抗値が低くなるため、図8に示すように、普通紙であっても厚紙であっても2次転写電圧は徐々に低下する。
【0006】
このように、一定の2次転写電流で印字を行う場合、特に低温時の厚紙印字に際しては、1枚目の印字時にかかる2次転写電圧の負荷が最も高く、機内温度が暖まるまでと、暖まった後とでは、負荷となる2字転写電圧が大きく異なる。このため、このような低温環境時の1枚目の厚紙印字時における電圧上昇が生じることにより、電源の電圧リミッターを高めに設定する必要があった。高圧電源のリミッターとは、電源に対する負荷が大きくなると「異常」と判定し、本体動作を停止させるもので、一般的には高圧が印加される経路での断線/接触不良検知のため等に設けられている。高圧電源リミッターを低電圧に設定できるほど、安価な構成の電源となる。
【0007】
すなわち、厚紙の場合、電圧リミッターがAより小さいと、1枚目の印字時に異常と判定されてしまい、動作が停止してしまう。このため、電圧リミッターを、最大の2次転写電圧であるAに設定することにより、1枚目の印字時に異常と判定されずに本体動作を継続させることができる。しかしながら、高圧の電源リミッターを高く設定することは、コストが上がり、安価な構成ができなかった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、1枚目の印字時にも安定した高画質画像を再現することができ、低コスト化を図ることが可能な画像形成装置及び転写方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の静電潜像に対してトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、転写ニップを形成する転写手段とを備え、前記転写ニップおいて電界を作用させて像担持体上のトナー像を記録媒体に静電的に転移させるように構成した画像形成装置において、
機内温度を検出する温度センサと、機内の温度を調節するためのファンと、前記温度センサの検出値に基づいて前記ファンの動作を制御する制御手段とを設け、前記温度センサが低温領域を検知し、かつ、記録媒体が厚紙の場合に、前記制御手段が前記ファンの動作を停止させるものである。
【0010】
本発明の画像形成装置は、厚紙に印字する際、機内が低温領域である場合は、制御手段が前記ファンの動作を停止させる。これにより、1枚目の印字開始前に機内温度を上げることができ、2次転写部の部材抵抗を下げることができるため、1枚目の印字時に2次転写電圧負荷を下げることができる。このため、高圧電源のリミッター値を高くする必要がなくなって、高圧電源のリミッター値を低くすることができる。ここで、厚紙とは通常動作で行う普通紙よりも厚みの厚いものをいい、坪量100[g/m2]以上の記録用紙のことである。
【0011】
厚紙の印字開始前に、前記温度センサが予め設定された所定温度未満を検出した場合、前記制御手段は、温度センサが所定温度以上を検出するまで前記ファンの動作を停止させて、温度センサが所定温度以上を検出した場合に印字を開始するものとできる。これにより、厚紙の種類や環境によって、ファンの動作を停止させるための温度条件を変更することができる。
【0012】
前記制御手段は、厚紙の印字後にファンの動作を再開するように制御するようにできる。また、前記制御手段は、複数枚の厚紙の印字後にファンの動作を再開するように制御するようにできる。すなわち、機内温度が低温時のみにファンの動作を止めて、高温時ではファンを作動させることにより、機内温度を安定に保つことができる。また、ファンの役割は、機内温度を低温化もしくは一定環境に保つことが目的であり、高温になるとトナーホッパー内の固着や融着が発生する。しかしながら、機内温度が低温時のみにファンの動作を止めるため、高温時ではファンが作動し、トナーホッパー内の固着や融着を防止するという本来の機能を発揮させることができる。
【0013】
本発明の転写方法は、静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の静電潜像に対してトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、転写ニップを形成する転写手段とを備え、前記転写ニップおいて電界を作用させて像担持体上のトナー像を記録媒体に静電的に転移させるように構成した画像形成装置の転写方法において、印字開始前に前記画像形成装置内の温度を検出し、画像形成装置内の温度が所定温度未満、かつ、記録媒体が厚紙である場合には、所定温度以上となるまで画像形成装置内の温度を上げ、画像形成装置内が所定温度以上となった場合に印字を開始するものである。
【0014】
厚紙の印字後に画像形成装置内の温度を低下させるようにできる。また、複数枚の厚紙の印字後に画像形成装置内の温度を低下させるようにできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置及び転写方法によれば、1枚目の印字時に2次転写電圧負荷を下げることができるため、1枚目の印字時に安定した高画質画像を再現することができる。また、高圧電源のリミッター値を低くすることができるため、安価な高圧電源を採用することができ、低コスト化を図ることができる。
【0016】
厚紙の種類や環境によって、ファンの動作を停止させるための温度条件を変更することができるようにすると、種々の厚紙や環境に適応することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0017】
厚紙の印字後にファンの動作を再開させることによって、機内温度を安定に保つことができ、また、高温時ではファンが作動し、トナーホッパー内の固着や融着を防止するという本来の機能を発揮させることができるため、安定した画像品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のカラー画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】前記図1の画像形成装置を示す要部拡大概略図である。
【図3】本発明の画像形成装置のファンの制御機構を示すブロック図である。
【図4】前記図2の画像形成装置の要部拡大概略図である。
【図5】本発明の転写方法を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の画像形成装置装置により印字する際における2次転写ローラに印加される電圧を示すグラフ図である。
【図7】従来の画像形成装置における機内温度の変化を示すグラフ図である。
【図8】従来の転写装置により普通紙及び厚紙に印字する際における2次転写ローラに印加される電圧を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示す実施例による本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明に係る画像形成装置の概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、画像形成装置本体12に対して着脱可能に構成された4つのプロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkを備えている。各プロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。そこで、1つのプロセスユニット11Yを例にその構成を説明する。
【0021】
プロセスユニット11Yは、像担持体としての感光体1と、感光体1の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ13と、感光体1の表面にトナー(現像剤)を供給する現像手段としての現像装置6と、感光体1の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング部材(クリーニングブレード)14を備えている。
【0022】
図1において、各プロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkの上方には、感光体1の表面を露光する露光手段としての露光装置15が配設されている。一方、各プロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkの下方には、転写手段16が配設されている。中間転写ユニット16は、無端状のベルトから構成される像担持体としての中間転写体(中間転写ベルト)17を有する。中間転写ベルト17は、駆動ローラ18及び従動ローラ19に張架され、図の矢印の方向に周回走行可能に構成されている。
【0023】
4つの感光体1に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ20が配設されている。各一次転写ローラ20は中間転写ベルト17を介して感光体1に圧接されており、各感光体1と中間転写ベルト17との間に一次転写ニップを形成している。また、駆動ローラ18に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ21が配設されている。この二次転写ローラ21は、中間転写ベルト17を介して駆動ローラ18に圧接されており、二次転写ローラ21と中間転写ベルト17との間に二次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルト17の外周面には、クリーニングブレード3等から構成されるベルトクリーニング装置22が配設されている。中間転写ベルト17の材料としては、TPE(サーモプラスチックエラストマーアロイ)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PAA(ポリアミドアロイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料が上げられる。2次転写ローラ110の材質としては、弾性を有するローラが適しており、その材料はイオン導電性ローラ(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリン)や電子導電タイプのローラ(EPD)等が有力である。
【0024】
図2に示すように、中間転写ベルト17と、従動ローラ19と、2次転写ローラ21ととで2次転写部40を構成する。
【0025】
画像形成装置本体12の下部には、紙やOHPシート等の記録媒体Sを収容した記録媒体収容部24や、記録媒体収容部24から記録媒体Sを搬出する給紙ローラ25等が設けてある。また、画像形成装置本体12内には、記録媒体Sを画像形成装置本体12の上面に設けたストック部26へと搬送するための搬送経路Rが形成されている。この搬送経路Rにおいて、給紙ローラ25と二次転写ローラ21との間には、一対のレジストローラ27a,27bが配設されている。また、二次転写ローラ21よりも、搬送経路Rの搬送方向下流側(図の上方)には、記録媒体S上の画像を定着させるための定着装置28が配設されている。定着装置28は、定着ローラ29と加圧ローラ30等を有する。定着ローラ29と加圧ローラ30は互いに圧接されており、それらの間に定着ニップを形成している。また、搬送経路Rの搬送方向下流端部には、記録媒体Sを装置外に排出するための一対の排出ローラ31a,31bが配設されている。
【0026】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkの感光体1が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体1の表面が帯電ローラ13によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体1の表面には、露光装置15からレーザ光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体1の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体1に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体1上に形成された静電潜像に、各現像装置(図示省略)によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として可視像化される。
【0027】
中間転写ベルト17を張架する駆動ローラ18が図示しない駆動装置によって図の反時計回りに回転駆動される。これにより、中間転写ベルト17が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ20に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ20と各感光体1との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkの感光体1に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト17上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト17はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0028】
トナー画像が転写された後の各感光体1の表面に付着する残留トナーは、各クリーニングブレード14によって感光体1の表面から除去され、次いで、その表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0029】
記録媒体収容部24に収容された記録媒体Sは、給紙ローラ25が回転することによって、搬送経路Rに送り出される。搬送経路Rに送り出された記録媒体Sは、レジストローラ27a,27bによってタイミングを計られて、二次転写ローラ21とそれに対向する駆動ローラ18との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ21に、中問転写ベルト17上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、二次転写ニップに転写電界が形成される。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト17上のトナー画像が記録媒体S上に一括して転写される。トナー画像が転写された記録媒体Sは定着装置28へと搬送され、その記録媒体Sが定着ローラ29と加圧ローラ30との間の定着ニップを通過する際に熱と圧が加えられてトナー画像が熔融されて定着される。トナー画像が定着された記録媒体Sは、排出ローラ31a、31bによってストック部26へと排出される。転写後に中間転写ベルト17上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置22によって除去される。
【0030】
以上の説明は、記録媒体S上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット11Y,11C,11M,11Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0031】
次に、図2〜図6に基づいて、本発明の特徴部分である2次転写部40の構成について詳しく説明する。なお、図2〜図6において、同一の符号は同一の部材を示す。
【0032】
図2は、図1に示す画像形成装置の2次転写部40の基本的な構成を示す図である。図2は基本構成を示すための図であり、図1とは若干構成が異なるかのように描いてあるが、基本的には同一である。2次転写部40近傍には、図2に示すように、ファン41及び温度センサ42が設けられている。また、図3に示すように、温度センサ42の検出値に基づいて、ファン41の動作を制御する制御手段44が設けられている。なお、本実施形態の画像形成装置は、ユーザーの操作によって普通紙モードと厚紙モードとの設定が切り替え可能となるように構成されている。
【0033】
温度センサ42は、例えば測温抵抗体、熱電対、サーミスタ等から構成され、機内の温度を監視するものである。本実施例では、温度センサ42は、中間転写ベルト17の駆動ローラ側の近傍に設けられており、2次転写部40乃至この周辺の温度を検出する。
【0034】
ファン41は、定着装置28の定着ローラ29近傍に設けられている。ファン41が作動することにより、部品に送風して機内全体の温度を低下させる。ファン41は、図3に示すように制御手段44に接続されている。
【0035】
制御手段44は、温度センサ42の検出値に基づいて、ファン41の動作を制御するものである。すなわち、温度センサ42が、予め設定された所定温度未満を検出し、かつ、記録媒体Sが厚紙である場合、前記ファン41の動作を停止させるように制御する。また、制御手段44は、記録媒体Sに印字された後、ファン41の動作を再開するように制御する。
【0036】
二次転写ローラ21は、図4に示すように、高圧電源45に接続されるとともにアースされており、図示しない電源制御部によって、定電流制御される。電流値iは、用紙種や環境に応じて任意に設定できるようになっている。電圧値は記録媒体Sの用紙種、2次転写ローラ21の抵抗、中間転写ベルト17の抵抗等によって変動するため、トナー転写に必要な電圧は、抵抗に追従することになる。また、高圧電源45からの出力電圧を検出する検出手段(図示省略)を備え、この検出手段による検出電圧が所定の限界値(リミッター)を超えると、「異常」と判定し、画像形成装置の画像形成動作を緊急停止させるように構成している。
【0037】
次に、2次転写部40にて記録媒体SにトナーTを転写する方法について説明する。この場合、予め制御手段44に、低温を示す所定温度(本実施例では10℃)を設定する。また、本実施例では、説明を簡単にするため、1枚の記録媒体(厚紙)SにトナーTを転写する方法について説明する。
【0038】
図5に示すように、まず、本体が印字要求を受けた場合(ステップS1)、定着装置28に設けられたヒーターがオン状態となり、定着装置28のウォーミングアップが始まる。それと同時に、中間転写ベルト17が回転し始める(ステップS2)。
【0039】
次に、印字開始前に、温度センサ42が機内温度をセンシングする(ステップS3)。このとき、温度センサ42が、所定温度である10℃よりも低温を検知した場合(ステップS4)、さらにユーザーが例えばハガキ等の厚紙印字要求をしている場合(ステップS5)、制御手段44は、ファン41の動作を停止させるように制御する(ステップS6)。
【0040】
このように、ファン41の動作を停止させ、定着をONにした状態で、ウォーミングアップ動作を続ける。これにより、機内温度を上げて、2次転写部40の2次転写ローラ21や中間転写ベルト17の抵抗を下げる。そして、機内温度のセンシングを継続し(ステップS3)、温度センサ42が10℃以上を検知した場合(ステップS4)に印字を開始する(ステップS7)。
【0041】
このようにして、1枚目の印字前に機内温度を上げることができるため、2次転写部40の部材抵抗を下げることができ、図6に示すように、1枚目の印字時に2次転写電圧負荷は電圧Aから電圧A´に下がる。従って、高圧電源のリミッターを、電圧Aから電圧A´に下げることが可能となる。
【0042】
印字が終了すると(ステップS8)、制御手段44は、ファン41の動作を再開するように制御する(ステップS9)。このようにすると、機内温度が低温時のみにファン41の動作を止めて、高温時ではファン41を作動させることにより、機内温度を安定に保つことができる。また、ファン41の役割は、機内温度を低温化もしくは一定環境に保つことが目的であり、高温になるとトナーがトナーホッパー内に固着したり融着したりする。しかしながら、機内温度が低温時のみ、ファン41の動作を止めるようにしているため、高温時ではファン41が作動し、トナーホッパー内の固着や融着を防止するという本来の機能を発揮させることができる。
【0043】
このように、本発明では厚紙Sに印字する際、機内が低温領域である場合は、制御手段44がファン41の動作を停止させる。これにより、1枚目の印字開始前に機内温度を上げることができ、2次転写部40の部材抵抗を下げることができる。これにより、1枚目の印字時に2次転写電圧負荷を下げることができるため、1枚目の印字時に安定した高画質画像を再現することができる。また、1枚目の印字時に2次転写電圧負荷を下げることができると、高圧電源45のリミッター値を低くすることができるため、安価な高圧電源を採用することができ、低コスト化を図ることができる。
【0044】
厚紙Sの印字開始前に、温度センサ42が予め設定された所定温度未満を検出した場合、制御手段44は、温度センサ42が所定温度以上を検出するまでファン41の動作を停止させて、温度センサ42が所定温度以上を検出した場合に印字を開始するようにしている。これにより、厚紙の種類や環境によって、ファン41の動作を停止させるための温度条件を変更することができるため、種々の厚紙や環境に適応することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0045】
制御手段44は、厚紙Sの印字後にファン41の動作を再開するように制御するようにしている。すなわち、機内温度が低温時のみにファン41の動作を止めて、高温時ではファン41を作動させることにより、機内温度を安定に保つことができ、また、ファン41の本来の機能を発揮させることができる。これにより、安定した画像品質が得られる。
【0046】
前記実施例では、1枚の記録媒体Sに印字する場合について説明したが、複数枚の厚紙Sに連続印字する場合であっても、前記と同様の方法を採用することができる。この場合、複数枚の厚紙の印字後にファン41の動作を再開するように制御する。これにより、機内温度を安定に保つことができ、また、高温時ではファン41が作動し、トナーホッパー内の固着や融着を防止するという本来の機能を発揮させることができるため、安定した画像品質が得られる。
【0047】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、所定温度は前記実施例に限られず、採用する2次転写構成部材や高圧電源のリミッターによって種々設定することができる。実施形態では、複数の像担持体としての感光体上にそれぞれ形成したトナー像を、一旦中間転写ベルト上に順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成し、そのカラー画像を一括して記録媒体Sに転写する間接転写方式としたが、トナー像を、搬送ベルト等により搬送される記録媒体上に直接順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成する直接転写方式としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 像担持体
6 現像手段
40 2次転写部
41 ファン
42 温度センサ
44 制御手段
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2009−186504号公報
【特許文献2】特開2006−285253号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の静電潜像に対してトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、転写ニップを形成する転写手段とを備え、前記転写ニップおいて電界を作用させて像担持体上のトナー像を記録媒体に静電的に転移させるように構成した画像形成装置において、
機内温度を検出する温度センサと、機内の温度を調節するためのファンと、前記温度センサの検出値に基づいて前記ファンの動作を制御する制御手段とを設け、
前記温度センサが低温領域を検知し、かつ、記録媒体が厚紙の場合に、前記制御手段が前記ファンの動作を停止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
厚紙の印字開始前に、前記温度センサが予め設定された所定温度未満を検出した場合、前記制御手段は、温度センサが所定温度以上を検出するまで前記ファンの動作を停止させて、温度センサが所定温度以上を検出した場合に印字を開始することを特徴とする請求項1の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、厚紙の印字後にファンの動作を再開するように制御することを特徴とする請求項1又は請求項2の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、複数枚の厚紙の印字後にファンの動作を再開するように制御することを特徴とする請求項1又は請求項2の画像形成装置。
【請求項5】
静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の静電潜像に対してトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、転写ニップを形成する転写手段とを備え、前記転写ニップおいて電界を作用させて像担持体上のトナー像を記録媒体に静電的に転移させるように構成した画像形成装置の転写方法において、
印字開始前に前記画像形成装置内の温度を検出し、
画像形成装置内の温度が所定温度未満、かつ、記録媒体が厚紙である場合には、所定温度以上となるまで画像形成装置内の温度を上げ、
画像形成装置内が所定温度以上となった場合に印字を開始することを特徴とする転写方法。
【請求項6】
厚紙の印字後に画像形成装置内の温度を低下させることを特徴とする請求項5の転写方法。
【請求項7】
複数枚の厚紙の印字後に画像形成装置内の温度を低下させることを特徴とする請求項5の転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−186408(P2011−186408A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54635(P2010−54635)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】