説明

画像形成装置及び速度制御装置

【課題】無端状ベルトの周回速度、蛇行を精度良く検出し、その結果、色ずれを防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム51に対向して配され、感光体ドラム51上に形成されたトナー像を周回する中間転写ベルト61上に、又は、無端状ベルトに搬送されるシートSに転写する画像形成装置において、無端状ベルトに光を照射する出射部81と、無端状ベルトで反射した光を受光して無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部82と、受像部82と無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部83と、無端状ベルトの周回速度を制御する制御部9を備え、制御部9は、受像部82で取得された連続画像を比較して所定時間内における無端状ベルトの周回方向の移動量の演算と、距離測定部83の測定結果をもとに移動量の補正を行い、補正後の移動量から無端状ベルトの周回速度を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム上に形成されたトナー像を重ね合わせてシートに転写するための手段として周回する無端状ベルトを備えた画像形成装置に関する。また本発明は、周回する無端状ベルトの速度を制御する速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カラー対応の複写機、複合機等の画像形成装置では、中間転写やシート搬送のため無端状ベルトを備える。例えば、タンデム式の画像形成装置では、トナーの色ごとに感光体ドラムを備える(ブラック、イエロー、シアン、マゼンダの4色であれば4本)。この形式では、形成された各色のトナー像は、無端状ベルト上で順次重ね合わされつつ一旦転写された後、シートに2次転写されるか、若しくは、無端状ベルトで搬送されるシートに直接重ね合わされつつ転写される。又、ロータリ式の画像形成装置は、通常、感光体ドラムを1本のみ備え、1つのカラー画像を形成する際は、1つの色ごとにトナー像を形成し、中間転写体としての無端状ベルトを4回周回させ、トナー像を重ね合わせて1つのフルカラーの画像を形成する。
【0003】
そして、無端状ベルトを有する画像形成装置においては、転写の際の色ずれなく、品質の高い画像形成を行うため、周回速度や蛇行状況を正確に測定、検出し、無端状ベルトの周回を適切に制御することが必要である。
【0004】
このような画像形成装置において、無端状ベルトの周回速度を検出し、色ずれを防ぐための構成が特許文献1に記載されている。具体的に特許文献1には、画像と位置検出用の第1パターン画像を形成する第1の画像形成手段と、画像と位置検出用の第2パターン画像を形成する第2の画像形成手段と、各画像形成手段を通過する無端状ベルトと、パターン画像間の距離検出手段とを有し、パターン画像間の距離検出手段は、画像の移動を検出する移動検出手段と、移動検出手段の検出によりパルス信号を発生する第1のパルス信号発生手段と、第1と第2のパターン画像の検出で、パルス信号を発生する第2のパルス信号発生手段と、第2のパルス信号発生手段からの第1パターン画像と第2パターン画像の検出によるパルス発生の時間的間隔において、第1のパルス信号発生手段が発生したパルス数を数える計測手段とを有する画像形成装置が示されている(特許文献1:請求項1、段落0014、図1等参照)。
【特許文献1】特開2001−069282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の発明は、パルス発生手段として駆動ローラにロータリエンコーダを設けているが(特許文献1:段落0028、図3等参照)、無端状ベルトと駆動ローラとの間ですべりが生じると無端状ベルトの移動速度を誤検出する場合があるという問題がある。そして、無端状ベルト及び駆動ローラが摺動によって摩耗すると、駆動ローラの回転角度から得られる移動速度と実際の移動速度との間に誤差が生じるという問題もある。これらにより、無端状ベルトの周回速度の検出精度が低くなるため無端状ベルトの周回速度を高精度に制御できず、周回方向の色ずれを十分防止できない。更に、特許文献1の構成では、無端状ベルトの蛇行状況を検出することはできず、蛇行を検出するための構成が別途必要となるという問題もある。
【0006】
尚、感光ドラムに対向して周回する無端状ベルトによりシートを搬送し、感光ドラムから直接シートにトナー像を転写する画像形成装置においても同様の問題がある。
【0007】
又、画像形成装置だけでなく、製品、貨物を搬送する等のため無端状ベルトを使用した構成においても、高精度に速度、蛇行を検知しなければならない場合がある。
【0008】
本発明は、無端状ベルトの周回速度、蛇行を精度良く検出し、その結果、色ずれを防止できる画像形成装置を提供することを課題とする。また本発明は、無端状ベルトの周回速度、蛇行を高精度に検出できる速度制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に係る発明は、1又は複数の感光体ドラムに対向して配され、前記感光体ドラム上に形成されたトナー像を周回する無端状ベルト上に、又は、前記無端状ベルトに搬送されるシートに転写する画像形成装置において、前記無端状ベルトに光を照射する出射部と、前記無端状ベルトで反射した光を受光して前記無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部と、前記受像部と前記無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部と、前記無端状ベルトの周回速度を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して所定時間内における前記無端状ベルトの周回方向の移動量の演算と、前記距離測定部の測定結果をもとに前記移動量の補正を行い、補正後の前記移動量から前記無端状ベルトの周回速度を演算することとした。
【0010】
この構成によれば、受像部と無端状ベルトの距離が変動しても、正確に無端状ベルトの移動量及び周回速度を演算することができる。即ち、受像部と無端状ベルトの距離が不変であれば、無端状ベルトにおける撮像される範囲も一定であり、演算された無端状ベルトの移動量は正確となり得るが、無端状ベルトに力が加わった場合や振動のため、受像部と無端状ベルトの距離が変動すると、撮像される範囲(高さ、幅)も変動することになる。しかし、本発明は、この受像部と無端状ベルトの距離の変動に対応して、移動量の補正を行って移動量の誤差を低減するから、無端状ベルトの正確な移動量が得られ、その結果、正確な無端状ベルトの周回速度の演算を行うことができる。
【0011】
更に、連続画像を比較して無端状ベルトの周回速度を検出するから、受像部の設置位置に制限はなく、設置の際の自由度が高い。又、無端状ベルトの表面の移動に基づき周回速度を検出するから、無端状ベルトと駆動ローラとの間での滑りや、駆動ローラ及び無端状ベルトに摩耗に影響されず、高精度に周回速度を検出することができる。
【0012】
又、請求項2に係る発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して、前記無端状ベルトの蛇行量を演算するとともに、前記距離測定部の測定結果をもとに前記蛇行量の補正を行い、補正後の蛇行量に基づき前記無端状ベルトの蛇行を修正することとした。
【0013】
この構成によれば、連続画像を比較して蛇行量を算出し、補正を行うから、無端状ベルトの正確な蛇行量が得られ、その結果正確な無端状ベルトの蛇行の修正を行うことができる。又、無端状ベルトの移動量と蛇行量の検出を出射部と受像部からなる1つの検出装置で行うことができ、構成が簡易化され、コスト面でも有利である。
【0014】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記制御部は、前記受像部と前記無端状ベルトとの間の基準距離を記憶する記憶部を有し、前記基準距離と前記距離測定部が測定した距離との差分に、若しくは、前記距離測定部が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を前記移動量及び/又は蛇行量に加算することで、前記移動量及び/又は蛇行量の補正を行うこととした。
【0015】
この構成によれば、所定の係数を用いて移動量、蛇行量の補正値を算出するから、無端状ベルトの変動に対応しつつ、正確な移動量、蛇行量を求めることができる。尚、本発明は、好適な実施の形態の1つである。
【0016】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置において、前記距離測定部は、レーザ光により距離を測定するレーザセンサであることとした。
【0017】
この構成によれば、レーザセンサを用いるから、受像部と無端状ベルトの距離を正確に測定することができる。その結果、的確な補正を行うことができる。
【0018】
又、請求項5に係る発明は、周回する無端状ベルトの速度を検出して周回速度の制御を行う速度制御装置において、前記無端状ベルトに光を照射する出射部と、前記無端状ベルトで反射した光を受光して前記無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部と、前記受像部と前記無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部と、前記無端状ベルトの周回速度を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して所定時間内における前記無端状ベルトの移動量を演算と、前記距離測定部の測定結果をもとに前記移動量の補正を行い、補正後の前記移動量から前記無端状ベルトの周回速度を演算することとした。
【0019】
この構成は、上記の画像形成装置のうち、無端状ベルトの速度制御に関する部分に相当する構成であり、無端状ベルトに力が加わった場合や振動等のため、受像部と無端状ベルトの距離が変動し、撮像される範囲(高さ、幅)が変動しても、受像部と無端状ベルトの距離の変動に対応して、移動量の補正を行って移動量の誤差を低減するから、無端状ベルトの正確な移動量が得られ、その結果、正確な無端状ベルトの周回速度の演算を行うことができる。
【0020】
更に、連続画像を比較して無端状ベルトの周回速度を検出するから、受像部の設置位置に制限はなく、設置の際の自由度が高い。又、表面の移動に基づき周回速度を検出するから、無端状ベルトと駆動ローラとの間での滑りや、駆動ローラ及び無端状ベルトに摩耗に影響されず、高精度に周回速度を検出することができる。
【0021】
又、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の速度制御装置において、前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して、前記無端状ベルトの蛇行量を演算するとともに、前記距離測定部の測定結果をもとに前記蛇行量の補正を行い、補正後の蛇行量に基づき前記無端状ベルトの蛇行を修正することとした。
【0022】
この構成も、上記の画像形成装置のうち、無端状ベルトの速度制御に関する部分に相当する構成であり、連続画像を比較して蛇行量を算出し、蛇行量の補正を行うから、無端状ベルトの正確な蛇行量が得られ、その結果正確な無端状ベルトの蛇行の修正を行うことができる。又、無端状ベルトの移動量と蛇行量の検出を出射部と受像部からなる1つの検出装置で行うことができ、構成が簡易化され、コスト面でも有利である。
【0023】
又、請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の速度制御装置において、前記制御部は、前記受像部と前記無端状ベルトとの間の基準距離を記憶する記憶部を有し、前記基準距離と前記距離測定部が測定した距離との差分に、若しくは、前記距離測定部が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を前記移動量に加算することで、前記移動量の補正を行うこととした。
【0024】
この構成も、上記の画像形成装置のうち、無端状ベルトの速度制御に関する部分に相当する構成であり、所定の係数を用いて移動量、蛇行量の補正値を算出するから、無端状ベルトの変動に対応しつつ、正確な移動量、蛇行量を求めることができる。尚、本発明は、好適な実施の形態の1つである。
【0025】
又、請求項8に係る発明は、請求項5乃至7いずれか1項に記載の速度制御装置において、前記距離測定部は、レーザ光により距離を測定するレーザセンサであることとした。
【0026】
この構成も、上記の画像形成装置のうち、無端状ベルトの速度制御に関する部分に相当する構成であり、レーザセンサを用いるから、受像部と無端状ベルトの距離を正確に測定することができる。その結果、的確な補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
上述したとおり、本発明によれば、無端状ベルトの移動量、蛇行量の検出を高精度に行うことができる。更に、移動量、蛇行量の検出結果に基づき、常に無端状ベルトの周回速度を的確なものとし、又、蛇行を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜7を参照しつつ説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0029】
まず、図1を用いて、本発明の第1の実施形態における電子写真方式のフルカラーの複写機1(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る複写機1の概略構成の一例を示す模型的正面断面図である。
【0030】
複写機1は、複写機1の最上部に原稿を搬送する原稿自動送り装置2が載置され、後方を支点に上下方向に開閉自在である。その原稿自動送り装置2の下方には、画像読取部3が配され、画像読取部33の下部にはシート供給部4、画像形成部5、中間転写部6等が配される。
【0031】
そして、原稿自動送り装置2は、原稿載置トレイ21、原稿排出トレイ22、原稿カバー23を備える。原稿載置トレイ21には、読み取る原稿が載置される。原稿排出トレイ22は、原稿搬送路24から排出される原稿を受け止める。原稿カバー23は、原稿載置面32に載置される原稿を押える。原稿搬送路24は、装置内で原稿を搬送する通路である。
【0032】
又、原稿自動送り装置2内に、図1で実線矢印で示す原稿搬送路24の上流から順に、原稿ピックアップローラ25、複数の原稿搬送ローラ対26が設けられる。原稿ピックアップローラ25は原稿載置トレイ21上の原稿を1枚ずつ原稿搬送路24に送り出す。原稿搬送ローラ対26は原稿載置トレイ21から原稿排出トレイ22まで原稿を搬送する。
【0033】
次に、画像読取部3について説明する。原稿を読み取るための画像読取部3は、上面に原稿通過面31と原稿載置面32が配され、その内部に露光ランプ33、反射板34、第1ミラー35、第2ミラー36、第3ミラー37、集光レンズ38及びイメージセンサ39を備える。
【0034】
原稿通過面31は、原稿自動送り装置2により搬送される原稿が接しつつ通過する面であり、原稿載置面32は、原稿自動送り装置2を持ち上げ、1枚ずつ原稿を読み取る際に原稿を載置する面である。これら原稿通過面31及び原稿載置面32は、透光性の板状部材であり、いわゆるコンタクトガラスである。
【0035】
そして、露光ランプ33は、原稿に向け光を出射する。反射板34は、光を集光し原稿載置面32又は原稿通過面31に照射する。各ミラーは、原稿で反射された光を集光レンズ38にまで導く。集光レンズ38は、CCD等から成るイメージセンサ39に原稿の反射光を集光する。そして、イメージセンサ39は、原稿の反射光を電気信号に変換し、その後、電気信号を増幅、量子化して、原稿の画像を画像データとして読み取る。
【0036】
尚、露光ランプ33、反射板34、第1ミラー35は、1つの移動枠(不図示)に固定され、第2及び第3ミラー37は、別の移動枠(不図示)に固定される。そして、原稿載置面32に載置された原稿を読み取る際は、図1において2つの移動枠が水平に右方向に移動して原稿の読み取りがなされる。一方、原稿通過面31を通過する原稿を読み取る際は、原稿通過面31の下方で移動枠が固定され、原稿の読み取りがなされる。
【0037】
そして、画像読取部3の下方には、シート供給部4、画像形成部5、中間転写部6及び定着装置7が配され、複写機1の左側面に、複写機1から排出されるシートSを受け止めるための排出トレイ11が取り付けられる。
【0038】
シート供給部4は、中間転写部6の下部に配置され、コピー用紙、厚紙、OHPシートS等の各種、各サイズのシートSを収納する複数のカセット41を有する。そして、各カセット41には、シートSを1枚ずつシート搬送路42に送り出すためのピックアップローラ43が配される。又、各カセット41は、画像形成部5よりもシート搬送方向上流でシート搬送路42に接続され(言い換えると、シート搬送路42は、カセット41の数に対応して分岐)、シート搬送路42には、シートSを搬送するため、回転駆動される搬送ローラ対44が複数設けられる。
【0039】
そして、シート搬送路42は、搬送ローラ対44によりシートSを中間転写部6に向けて搬送する。尚、シート搬送路42には、シートSを適切なタイミングで2次転写部に進入させるため、一旦シートSを留めることが可能なレジストローラ対45が、中間転写部6の手前に設けられる。
【0040】
そして、画像形成部5、中間転写部6は、シート搬送路42の上方に配される。画像形成部5は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像又は単色のトナー像を形成する。本実施形態では4色のトナー像をシートSに転写可能であるが、2色以上であれば同様に構成することができる。一方、中間転写部6は、シートSへの転写前に、各色のトナー像を中間転写ベルト61に一旦重ね合わせて1次転写が行われる部分である。尚、画像形成部5、中間転写部6の詳細は、後述する。
【0041】
定着装置7は、中間転写部6よりもシート搬送方向下流に配され、画像形成部5によりシートS上に形成されたトナー像を加熱定着する。そして、定着装置7は、発熱源を内蔵する加熱ローラ71、加圧ローラ72を有し、両ローラは、回転駆動可能かつ圧接されて支持されニップを形成する。このニップにシートSが進入しトナー像がシートSに定着する。
【0042】
次に、図2を用いて、画像形成部5及び中間転写部6の詳細な構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る複写機1の画像形成部5及び中間転写部6の拡大模型的正面断面図である。
【0043】
画像形成部5は、画像形成ユニット50K、50Y、50C、50Mから構成される。画像形成ユニット50K〜Mは、図2の左方からブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の順でタンデム配置され、各色のトナー像を形成する。ブラック、イエロー、マゼンタ及びおよびシアン用の画像形成ユニット50K〜Mは、配列順序を変えてもよい。尚、各画像形成ユニット50はそれぞれ同様の構成であるから、以下では、K、Y、C、Mの符号は、特に説明する場合を除き省略する。
【0044】
各画像形成ユニット50は回転駆動するように支持された感光体ドラム51を有し、感光体ドラム51の周囲に図中、反時計回りに上方から、帯電器52、光走査ユニット53、現像器54、除電器55、クリーニング器56が設けられる。尚、現像器54と除電器55との間で感光体ドラム51が中間転写ベルト61と当接する。
【0045】
感光体ドラム51は、図中、反時計回り(矢印A方向)に回転し、帯電器52は、感光体ドラム51を対向する位置で帯電させる。光走査ユニット53は、光を出射し画像読取部3で(図1参照)で読み取られた画像データに応じて感光体ドラム51表面の電荷を消去し、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。現像器54は、感光体ドラム51上の静電潜像にトナーを供給し静電潜像をトナー像として顕像化する。このトナー像が1次転写器62により中間転写ベルト61に転写される。除電器55は、感光体ドラム51の表面電荷を除去する。クリーニング器56は、感光体ドラム51に接するブレード等から成り、感光体ドラム51上の残留トナー等を除去する。
【0046】
一方、中間転写部6は、中間転写ベルト61、1次転写器62、2次転写器63、及び走行検知部8を備える。中間転写ベルト61は、無端状ベルトから成り、回転可能に支持された駆動ローラ64、支持ローラ65、66により不等辺三角形をなすように張架支持され、駆動ローラ64がモータ、ギア等の駆動装置(不図示)により回転駆動することで、中間転写ベルト61は周回する。
【0047】
1次転写器62は、中間転写ベルト61を挟んで後述する各感光体ドラム51に対向して複数設けられる。各1次転写器62には、感光体ドラム51の表面で帯電するトナーの極性と逆極性の電圧が印加される。2次転写器63は、シートS及び中間転写ベルト61を挟んで駆動ローラ64に対向配置される。2次転写器63には中間転写ベルト61の表面で帯電するトナーの極性と逆極性の電圧が印加される。走行検知部8は、中間転写ベルト61の周回速度、蛇行状況等を検出する(詳細は後述)。
【0048】
次に、上記構成の複写機11における画像形成動作を説明する。カラー原稿が原稿自動送り装置2又は原稿載置面32にセットされ、画像読取部3により原稿の画像が読み取られると、画像データは、画像形成部5に送られる。そして、中間転写部6の駆動ローラ64の回転駆動により中間転写ベルト61が図2の矢印A方向に回転する。又、各感光体ドラム51が図中、反時計回り(矢印A方向)に回転し、帯電器52により感光体ドラム51の表面が帯電する。そして、読み取った画像データを各色に分解して得られた画像データに対応した静電潜像が光走査ユニット53により形成された後、トナーが供給され、各色のトナー像が形成される。
【0049】
感光体ドラム51が更に回転しトナー像が1次転写器62と対向すると、1次転写器62にトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加され、感光体ドラム51表面のトナー像が中間転写ベルト61に1次転写される。その後、感光体ドラム51表面は、次のトナー像形成のため除電器55により除電され、クリーニング器56により清掃される。
【0050】
このように、各画像形成ユニット50は所定のタイミングで駆動し、形成されたトナー像は、周回する中間転写ベルト61に重ねられつつ転写され、最終的に中間転写ベルト61上にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト61が更に周回しトナー像が2次転写器63と対向する位置にくると、レジストローラ対45によりタイミングを合わせて搬送されるシートSが中間転写ベルト61と2次転写器63との間に送り込まれる。この時、2次転写器63にトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト61上のトナー像がシートSに転写される。そして、トナー像が転写されたシートSは、定着装置7に搬送され、トナー像の定着の後、シートSは排出トレイ11に排出される。
【0051】
尚、画像形成部5でモノクロ画像を形成する場合も同様に、駆動ローラ64の駆動により中間転写ベルト61が図2の矢印A方向に周回する。この時、各感光体ドラム51は、矢印A方向に回転するが、ブラックの画像形成ユニット50K以外では、トナー像は形成されない。一方、ブラック用の画像形成ユニット50Kの感光体ドラム51上に形成されたブラックのトナー像は、中間転写ベルト61に1次転写され、シートSに2次転写された後、定着され、モノクロ画像の画像形成が完了する。
【0052】
次に、図3に基づき、走行検知部8の構成について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る走行検知部8を説明するための模型的断面正面図である。
【0053】
図3に示すように、走行検知部8は、出射部81、受像部82、距離測定部83を備え中間転写ベルト61上方に配される(図2参照)。出射部81は半導体レーザ装置から成り、中間転写ベルト61にレーザ光を照射する。レーザ光として例えば波長が850nm±20nmの赤外線レーザを用いることができる。尚、照射する光はレーザ光に限られない。そして、受像部82は、出射部81から出射して中間転写ベルト61で反射した光を受光し、中間転写ベルト61表面の連続画像を取得する(出射光及び反射光を図3中、破線矢印で図示)。受像部82は、例えば30×30画素のCCD等から成り、1200dpiの分解能とできる。尚、受像部82の画素数、分解能は適宜設定可能である。
【0054】
距離測定部83は、レーザ光(図3中、実線矢印で図示)により受像部82と中間転写ベルト61の距離を測定するレーザセンサである。尚、距離測定部83は、距離を測定できればよくレーザセンサに限られない。尚、図3に示すように出射部81、受像部82、距離測定部83は、1つのユニットとして構成され、配線や取り付け作業が容易である。
【0055】
次に、図4に基づき、受像部82の視野84について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61上の受像部82の視野84を示す平面図である。
【0056】
図4に示すように、受像部82の視野84は中間転写ベルト61が図4に示す矢印A方向に移動すると、視野84’、視野84”のように順に移動し、受像部82は、例えば1秒間に5200枚の中間転写ベルト61表面の連続画像を取得する(約0.2ms毎に1画像)。この受像部82で取得した連続画像のデータは制御部9(図5参照)に送られ、後述する制御部9は、連続画像を比較して図中、X方向(周回方向)及びY方向(周回方向と垂直な方向)の画素の移動、変位を検出する。尚、連続画像を比較して移動量、蛇行量を検出するから、走行検知部8の配置位置に特段の制限はなく、自由度が高い。
【0057】
次に、図5に基づき、制御部9について説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係る制御部9の構成の一例を示すブロック図である。
【0058】
複写機1は、各構成を制御するCPU91を有した制御部9を備える。そして、制御部9は、例えば、ROM、HDD、フラッシュメモリ等から構成される不揮発性のメモリや、例えばRAMで構成される揮発性のメモリからなる記憶部92を備える。記憶部92には画像形成装置の各種動作プログラム、各種データ及びCPU91の演算結果等が記憶される。又、受像部82で取得された連続画像や中間転写ベルト61の周回速度、蛇行量の演算結果や、距離測定部83による測定結果等も記憶部92に保存される。
【0059】
そして、CPU91が記憶部92から制御用プログラムを読み出して実行することにより機能を実現し、制御部9は、移動量検出部93、蛇行量検出部94、補正処理部95、速度演算部96等の機能ブロックを有するように構成されるが、各部の詳細は後述する。
【0060】
又、制御部9には走行検知部8、中間転写部6の他、画像読取部3、画像形成部5、蛇行調整部97等の等の複写機1を構成する各構成が接続される。このように複写機1の各部と接続された制御部9は、各構成を制御して、的確に画像形成が行われるように制御する。尚、蛇行調整部97の詳細は後述する。
【0061】
次に、図5及び6に基づき、本発明の実施形態に係る中間転写ベルト61の周回速度の演算と蛇行量の演算について説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61の周回速度及び蛇行量の演算を説明するための説明図である。
【0062】
まず、中間転写ベルト61の周回方向の移動量から中間転写ベルト61の周回速度を演算する点について説明する。周回速度演算のため、図6に示す、所定時間における中間転写ベルト61の周回方向(以下、「X方向」とする。)の移動量(図6においてΔX)を演算するが必要ある。そして、中間転写ベルト61の周回速度を演算するための構成が、図5に示す走行検知部8、移動量検出部93、補正処理部95、速度演算部96である。
【0063】
具体的に、周回速度を演算する際は、受像部82が取得する連続画像における画像データのX方向の移動量に着目する。この移動量を演算し検出するのが制御部9における移動量検出部93である。移動量検出部93は、受像部82が中間転写ベルト61の連続画像を順次取得し、制御部9の記憶部92に記憶、保存された連続画像を比較し、所定時間内における中間転写ベルト61のX方向の移動量を演算する。ここで、所定時間は、比較を行う最初の画像と最後の画像の時間的間隔である。
【0064】
具体的な演算方法としては、画像のうちの特定の画素に注目しその画素の移動を比較してもよいし、複数の画素について一定の領域を形成し領域の移動を比較してもよく、移動量検出部93は、画素のX方向における画素の変位量(単位:dot)を検出する。そして、受像部82の分解能(単位:dpi)は定数であり、所定時間(単位:sec)もX方向の移動量を検出できる範囲で任意に定めることができる一定の時間である。
【0065】
従って、所定時間内での中間転写ベルト61のX方向の移動量は、以下の式(1)のように算出できる。
【0066】
移動量(X方向)=画素の変位量×1/分解能
=画素の変位量/分解能・・・・・(1)
ここで、受像部82と中間転写ベルト61の距離が固定され、不変であれば、移動量検出部93で演算されたX方向の移動量を周回速度の演算にそのまま採用できる。しかし、受像部82と中間転写ベルト61の間の距離は、中間転写ベルト61の張架状態や、中間転写ベルト61に力が加わった場合(例えば、2次転写器63とのニップに厚紙が進入した場合等)や、中間転写ベルト61の駆動開始時や加減速時等の振動等によって変動することがある。
【0067】
当然、受像部82と中間転写ベルト61の距離は、複写機1の製造時や出荷時にX方向における移動量が正確に演算されるような距離、即ち基準距離となるように、調整されつつ、組立・取付される。しかし、複写機1の使用状況では、上述のように受像部82と中間転写ベルト61の距離が変動し得る。そうすると、受像部82の撮像範囲の変動が生ずる。即ち、受像部82と中間転写ベルト61の距離が近くなれば、受像部82の撮像範囲は狭くなり、遠くなれば受像部82の撮像範囲は広くなる。従って、1画素当たりの中間転写ベルト61における幅、高さも変動し、移動量検出部93が演算した移動量と実際の移動量に誤差が生じ得る。
【0068】
そこで、本発明では、制御部9の補正処理部95が、移動量検出部93が演算した移動量の補正を行う。具体的には、補正処理部95は、走行検知部8の距離測定部83の受像部82と中間転写ベルト61との距離の測定結果をもとに移動量の補正を行う。
【0069】
具体的には、制御部9は、記憶部92に記憶された受像部82と無端状ベルトとの間の基準距離と距離測定部83が測定した距離との差分に、若しくは、距離測定部83が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を移動量及び/又は蛇行量に加算することで、移動量及び/又は蛇行量の補正を行う。
【0070】
そこで、補正方法について説明すると、実際の補正方法は種々考えられるが、例えば、受像部82と中間転写ベルト61の距離に比例して補正を行う場合は、以下の式(2)のように、補正処理部95は補正を行う。
【0071】
Xm = X+(k×Z)・・・・・(2)
但し、Xm:補正後のX方向の移動量
X :移動量検出部93で算出された補正前のX方向の移動量
k :係数
Z :距離測定部83が測定した距離、若しくは、基準距離と距離測定部83が
測定した距離との差分
ここで、係数kは、例えば、補正用画像等を用いて、基準距離から受像部82と中間転写ベルト61とを接近させ、若しくは遠ざけ、各距離において実験的に求められ、変動し得るものであり一義的に定めることは困難であって、使用する受像部82の機種や形式等、種々の要因に影響されつつ定まるものである。このように、受像部82と中間転写ベルト61の距離が変動したとしても、補正処理部95は、上記式(2)により、移動量の演算結果が、常に基準距離で受像部82が撮像を行ったように、補正を行うのである。
【0072】
尚、Zは、距離測定部83が測定した距離、若しくは、基準距離と距離測定部83が測定した距離との差分であるとしているのは、係数kを距離測定部83が測定した距離を基準に定めてもよいし、差分を基準に定めてもよいからである。
【0073】
又、他の補正方法では、以下の式(3)のように距離の変化量に比例させ、補正を行うことが考えられる。
【0074】
Xm = X+k(Zn−Zn-1)・・・・・(3)
但し、Xm :補正後のX方向の移動量
X :移動量検出部93で算出された補正前のX方向の移動量
k :係数
n :現時点での距離測定部83が測定した距離、若しくは、基準距離と距離 測定部83が測定した距離との差分
n-1:前時点での距離測定部83が測定した距離、若しくは、基準距離と距離
測定部が測定した距離との差分
ここで、係数kは、ZnとZn-1との差によって実験的に求められ、変動し得るものであり一義的に定めることは困難であって、使用する受像部82の機種や形式等、種々の要因に影響されつつ定まるものである。このような補正を行うことで、受像部82と中間転写ベルト61の距離が変動したとしても、移動量検出部93により演算されたX方向の移動量を実際の移動量に極めて近似させることができる。
【0075】
尚、Zn、Zn-1は、距離測定部83が測定した距離、若しくは、基準距離と距離測定部83が測定した距離との差分であるとしているのは、係数kと乗ずるのは、現時点と前時点での中間転写ベルト61と受像部82の距離の差であり、いずれであっても式(3)のかっこ内の値は同じ値になるからである。
【0076】
次に、乗算のみで、補正を行う場合の補正方法では、以下の式(4)のように行うことが考えられる。
【0077】
Xm = k1×k2×X・・・・・(4)
但し、Xm :補正後のX方向の移動量
X :移動量検出部93で算出された補正前のX方向の移動量
1 :係数
2 :係数
ここで、例えば、係数k1は、距離測定部83が測定した距離、若しくは、距離測定部83が測定した距離と基準距離の差分から実験的に求められ、対応して選択される値であって、変動し得る値であり、係数k2は、受像部82の有する特性や複写機1の中間転写ベルト61、受像部82の取付精度等を加味した、複写機1ごとの微修正用の値とすることができる。このような補正を行うことで、受像部82と中間転写ベルト61の距離が変動したとしても、移動量検出部93により演算されたX方向の移動量を実際の移動量に極めて近似させることができ、又、複写機1ごとの特性を加味できる。
【0078】
移動量の補正がなされれば、周回速度の演算を行うことが可能である。即ち、移動量を時間で割れば、中間転写ベルト61の周回速度が求められるから、周回速度は以下の式(5)により求められる。
【0079】
周回速度=補正後の移動量(X方向)/所定時間・・・・・(5)
そして、この周回速度の演算結果に基づき、制御部9は、駆動ローラ64に接続されるモータを制御し、駆動ローラ64の回転速度を制御し、中間転写ベルト61の周回速度を適切なものとすることで、転写の際の周回方向の色ずれの発生を防ぐ。
【0080】
次に、中間転写ベルト61の周回方向と垂直な方向における移動量から中間転写ベルト61の蛇行量を演算する点について説明する。蛇行量とは、図6に示す所定時間内における中間転写ベルト61の周回方向と垂直な方向(以下、「Y方向」とする。)での、移動した量(図6においてΔY)である。そして、中間転写ベルト61の蛇行量を演算するための構成は、図5に示す走行検知部8、蛇行量検出部94、補正処理部95である。
【0081】
具体的に説明すると、蛇行量を演算する際、受像部82が取得する画像における画像データのY方向の蛇行量に着目する。この蛇行量を演算し検出するのが制御部9における蛇行量検出部94である。蛇行量検出部94は、受像部82によって取得され、制御部9の記憶部92に記憶、保存されたた中間転写ベルト61の連続画像を比較し、所定時間内における中間転写ベルト61のY方向の蛇行量を演算する。ここで、所定時間は、比較を行う最初の画像と最後の画像の時間的間隔である。
【0082】
演算方法としては、画像のうちの特定の画素に注目しその画素の移動を比較してもよいし、複数の画素について一定の領域を形成し領域の移動を比較してもよく、蛇行量検出部94は、画素のY方向における画素の変位量(単位:dot)を検出する。そして、受像部82の分解能(単位:dpi)は定数であり、所定時間(単位:sec)もY方向の蛇行量を検出できる範囲で任意に定めることができる一定の時間である。
【0083】
従って、所定時間内での中間転写ベルト61のY方向の移動量は、式(1)と同様に、
蛇行量=画素の変位量/分解能
で算出できる。
【0084】
そして、X方向と同様に、受像部82と中間転写ベルト61の距離が変動すると、中間転写ベルト61における1画素当たりの幅、高さも変動し、蛇行量検出部94が演算した蛇行量と実際の移動量に誤差が生ずるからその補正を補正処理部95が行う。
【0085】
補正動作もX方向と同様、制御部9の補正処理部95が、例えば、記憶部92に記憶された受像部82と無端状ベルトとの間の基準距離と距離測定部83が測定した距離との差分に、若しくは、距離測定部83が測定した距離に所定の係数を乗じて得られた補正値を蛇行量に加算して補正を行うことができる。
【0086】
補正の具体的な方法は、上述したX方向における補正と同様に行うことができ、例えば式(2)〜(4)を用いることができる。即ち、式(2)〜(4)におけるXmをYm(補正後のY方向の蛇行量)に、XをY(蛇行量検出部94で算出された補正前のY方向の蛇行量)置き換えればよい。従って、蛇行量の演算は、X方向の場合に準じるとして詳細な説明は、省略する。
【0087】
そして、この蛇行量の演算結果に基づき、制御部9は、蛇行調整部97を制御し、中間転写ベルト61の蛇行を修正することができる。ここで、蛇行調整部97は、例えば、中間転写ベルト61の蛇行を調整するため、中間転写部6近傍に設けられ、中間転写ベルト61の周回方向に垂直な方向に押圧する押圧部(不図示)を有し、押圧部の押圧によって中間転写ベルト61の走行位置を修正したり、駆動ローラ64、支持ローラ65、66の傾斜を可変させたりして、蛇行を修正する手段として何らかの蛇行調整を行う。尚、蛇行調整部97はこれらの構成に限られるものではなく、蛇行を修正できればよく、公知の構成を採用できる。
【0088】
次に、図7に基づき、詳細な中間転写ベルト61の周回速度、蛇行量の演算及び修正動作について説明する。図7は、本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61の周回速度、蛇行量の演算及び修正動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0089】
図7において、スタートは、画像形成を行う旨の入力を制御部9が受け付け、制御部9が複写機1を構成する各部に対し画像形成の開始が指示した時点である。画像形成が開始されると、制御部9は、記憶部92から、複写機1の製造時、出荷時等に設定され、保存された受像部82と中間転写ベルト61の基準距離をRAM等に読み出す(ステップ♯1)。そして、次に画像形成のため、駆動ローラ64に接続されるモータが回転し、中間転写ベルト61が回転駆動される(ステップ♯2)。次に、制御部9は、走行検知部8の出射部81及び受像部82を駆動し、中間転写ベルト61上の連続画像を取得し、制御部9の記憶部92に保存する(ステップ♯3)。
【0090】
そして、制御部9は、移動量検出部93、蛇行量検出部94により連続画像を比較し、所定時間(サンプリング時間)内における無端状ベルトの移動量(X方向)、蛇行量(Y方向)を演算する(ステップ♯4)。この移動量、蛇行量の演算に並行して、制御部9は距離測定部83を駆動して、中間転写ベルト61と受像部82の距離の測定を行う(ステップ♯5)。
【0091】
ここで、距離測定部83における中間転写ベルト61と受像部82の距離の測定は、基本的に移動量検出部93、蛇行量検出部94が検出を行う際の、中間転写ベルト61上の原点98(基準点)と受像部82との距離を測定する(図6参照)。即ち、X方向、Y方向及びZ方向の移動量の検出を同じ点を基準として行うのである。
【0092】
又、距離測定部83が行う中間転写ベルト61と受像部82の間の距離取得のタイミングは、例えば移動量検出部93、蛇行量検出部94が移動量、蛇行量の検出を行う所定時間内で行うことができる。尚、距離測定部83が行う距離取得のタイミングは、移動量、蛇行量の画像の比較(サンプリング)を開始するよりも前の時点に行って、あらかじめ受像部82と中間転写ベルト61の間の距離を測定していてもよい。従って、例えば、複写機1の電源投入時に行っておくこともできる。
【0093】
又、距離測定部83が行う距離取得は、中間転写ベルト61の1周に付き1度としてもよい。又、中間転写ベルト61の周長を適宜分割し、各ポイントで距離の測定を行うようにしてもよい。中間転写ベルト61の1周に付き複数のポイントで距離の測定を行えば、中間転写ベルト61の一部における距離の変化を捉えることができ、その変化にあわせ、移動量、蛇行量の補正を行うことができる。
【0094】
そして、制御部9の補正処理部95は距離測定部83による距離の測定の後、必要に応じ、基準距離と測定結果の差分を算出する(ステップ♯6)。尚、距離測定部83の測定距離から補正値を算出する場合は、差分の算出は必要ない。その後、係数を用いて補正値を算出する(ステップ♯7)。尚、係数は、例えば、記憶部92に差分や測定距離と係数を対応させたデータテーブル等の形式で保存され、補正処理部95は係数を参照する。
【0095】
又、補正処理部95は、補正処理を行って、現在の時点での移動量、蛇行量の決定を行う(ステップ♯8)。その後、速度演算部96は、移動量に基づき中間転写ベルト61の周回速度を演算する(ステップ♯9)。
【0096】
最終的に、制御部9は、演算された周回速度に基づき駆動ローラ64の周回を制御し、色ずれの生じない周回速度の目標値に達せしめ、維持する(ステップ♯10)。ここで、望ましい周回速度は、複写機1の機種ごとに異なり、感光体ドラム51の回転速度やシート搬送速度等の要因とのかねあいで定まるが、例えば250mm/secとできる。
【0097】
その後、制御部9は、形成すべき画像形成が完了し、中間転写ベルト61の周回を終了させるか確認を行う(ステップ♯11)。終了であれば(ステップ♯11のYes)、制御部9は、駆動ローラ64や走行検知部8の駆動を停止し、一連の中間転写ベルト61の周回速度、蛇行量の演算及び修正制御を終了する。まだ画像形成を行うのであれば(ステップ♯11のNo)、ステップ♯2に戻り、移動量、蛇行量の補正、修正等を継続する。
【0098】
このようにして、1又は複数の感光体ドラム51に対向して配され、感光体ドラム51上に形成されたトナー像を周回する無端状ベルト上に、又は、無端状ベルト(中間転写ベルト61)に搬送されるシートSに転写する画像形成装置(複写機1)において、無端状ベルトに光を照射する出射部81と、無端状ベルトで反射した光を受光して無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部82と、受像部82と無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部83と、無端状ベルトの周回速度を制御する制御部9を備え、制御部9は、受像部82で取得された連続画像を比較して所定時間内における無端状ベルトの周回方向の移動量の演算と、距離測定部83の測定結果をもとに移動量の補正を行い、補正後の移動量から無端状ベルトの周回速度を演算するようにすれば、受像部82と無端状ベルトの距離が変動しても、正確に無端状ベルトの移動量及び周回速度を演算することができる。即ち、受像部82と無端状ベルトの距離が不変であれば、無端状ベルトにおける撮像される範囲も一定であり、演算された無端状ベルトの移動量は正確となり得るが、無端状ベルトに力が加わった場合や振動のため、受像部82と無端状ベルトの距離が変動すると、撮像される範囲(高さ、幅)も変動することになる。しかし、本発明は、この受像部82と無端状ベルトの距離の変動に対応して、移動量の補正を行って移動量の誤差を低減するから、無端状ベルトの正確な移動量が得られ、その結果、正確な無端状ベルトの周回速度の演算を行うことができる。更に、連続画像を比較して無端状ベルトの周回速度を検出するから、受像部82の設置位置に制限はなく、設置の際の自由度が高い。又、無端状ベルトの表面の移動に基づき周回速度を検出するから、無端状ベルトと駆動ローラ64との間での滑りや、駆動ローラ64及び無端状ベルトに摩耗に影響されず、高精度に周回速度を検出することができる。
【0099】
又、制御部9は、受像部82で取得された連続画像を比較して、無端状ベルトの蛇行量を演算するとともに、距離測定部83の測定結果をもとに蛇行量の補正を行い、補正後の蛇行量に基づき無端状ベルトの蛇行を修正するようにすれば、無端状ベルトの正確な蛇行量が得られ、その結果正確な無端状ベルトの蛇行の修正を行うことができる。又、無端状ベルトの移動量と蛇行量の検出を出射部81と受像部82からなる1つの検出装置で行うことができ、構成が簡易化され、コスト面でも有利である。
【0100】
又、制御部9は、受像部82と無端状ベルトとの間の基準距離を記憶する記憶部92を有し、基準距離と距離測定部83が測定した距離との差分に、若しくは、距離測定部83が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を移動量及び/又は蛇行量に加算することで、移動量及び/又は蛇行量の補正を行うようにすれば、無端状ベルトの変動に対応しつつ、正確な移動量、蛇行量を求めることができる。
【0101】
又、距離測定部83は、レーザ光により距離を測定するレーザセンサで構成すれば、受像部82と無端状ベルトの距離を正確に測定することができる。その結果、的確な補正を行うことができる。
【0102】
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る速度制御装置10を説明するためのブロック図である。
【0103】
この第2の実施形態は、第1の実施形態の複写機11における無端状ベルトの速度、蛇行制御に関する機構を抽出したものであり、第1の実施形態と同様に、無端状ベルトの周回速度、蛇行量の測定・検出及び調整を高精度に行うことができる。例えば、無端状ベルトを用いた搬送装置等の装置に採用することができる。
【0104】
ここで、速度制御装置10は、第1の実施形態において含まれていた制御部9、走行検知部8、駆動ローラ64、蛇行調整部97等を有し、又、上述した第1の実施形態におけるものと同様の機能を有する。従って、速度制御装置10を構成する各部の詳細な説明は省略する。
【0105】
このようにして、速度制御装置10に本発明を適用しても、無端状ベルトに力が加わった場合や振動等のため、受像部82と無端状ベルトの距離が変動し、撮像される範囲(高さ、幅)が変動しても、受像部82と無端状ベルトの距離の変動に対応して、移動量の補正を行って移動量の誤差を低減するから、無端状ベルトの正確な移動量が得られ、その結果、正確な無端状ベルトの周回速度の演算を行うことができる。更に、連続画像を比較して無端状ベルトの周回速度を検出するから、受像部82の設置位置に制限はなく、設置の際の自由度が高い。又、表面の移動に基づき周回速度を検出するから、無端状ベルトと駆動ローラ64との間での滑りや、駆動ローラ64及び無端状ベルトに摩耗に影響されず、高精度に周回速度を検出することができる。
【0106】
又、連続画像を比較して蛇行量を算出し、蛇行量の補正を行うから、無端状ベルトの正確な蛇行量が得られ、その結果正確な無端状ベルトの蛇行の修正を行うことができる。又、無端状ベルトの移動量と蛇行量の検出を出射部81と受像部82からなる1つの検出装置で行うことができ、構成が簡易化され、コスト面でも有利である。
【0107】
又、所定の係数を用いて移動量、蛇行量の補正値を算出するから、無端状ベルトの変動に対応しつつ、正確な移動量、蛇行量を求めることができる。
【0108】
又、レーザセンサを用いるから、受像部82と無端状ベルトの距離を正確に測定することができる。その結果、的確な補正を行うことができる。
【0109】
以下、別実施形態について説明する。
【0110】
上述の実施形態では、中間転写ベルト61を中間転写体として用いたが、無端状ベルト上にシートSを載せつつ搬送し、シートSに直接トナー像を転写する画像形成装置にも本発明を適用してもよい。
【0111】
又、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、トナー像を重ね合わせてシートSに転写するための手段として周回する無端状ベルトを備えた画像形成装置及び周回する無端状ベルトの速度を制御する速度制御装置10に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る複写機1の概略構成の一例を示す模型的正面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る複写機1の画像形成部5及び中間転写部6の拡大模型的正面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る走行検知部8を説明するための模型的断面正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61上の受像部82の視野84を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る制御部9の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61の周回速度及び蛇行量の演算を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る中間転写ベルト61の周回速度、蛇行量の演算及び修正動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る速度制御装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
1 複写機(画像形成装置) 9 制御部
5 画像形成部 92 記憶部
51 感光体ドラム 10 速度制御装置
6 中間転写部 S シート
61 中間転写ベルト(無端状ベルト)
81 出射部
82 受像部
83 距離測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の感光体ドラムに対向して配され、前記感光体ドラム上に形成されたトナー像を周回する無端状ベルト上に、又は、前記無端状ベルトに搬送されるシートに転写する画像形成装置において、
前記無端状ベルトに光を照射する出射部と、
前記無端状ベルトで反射した光を受光して前記無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部と、
前記受像部と前記無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部と、
前記無端状ベルトの周回速度を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して所定時間内における前記無端状ベルトの周回方向の移動量の演算と、前記距離測定部の測定結果をもとに前記移動量の補正を行い、補正後の前記移動量から前記無端状ベルトの周回速度を演算することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して、前記無端状ベルトの蛇行量を演算するとともに、前記距離測定部の測定結果をもとに前記蛇行量の補正を行い、補正後の蛇行量に基づき前記無端状ベルトの蛇行を修正することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記受像部と前記無端状ベルトとの間の基準距離を記憶する記憶部を有し、
前記基準距離と前記距離測定部が測定した距離との差分に、若しくは、前記距離測定部が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を前記移動量及び/又は蛇行量に加算することで、前記移動量及び/又は蛇行量の補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記距離測定部は、レーザ光により距離を測定するレーザセンサであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
周回する無端状ベルトの速度を検出して周回速度の制御を行う速度制御装置において、
前記無端状ベルトに光を照射する出射部と、
前記無端状ベルトで反射した光を受光して前記無端状ベルト表面の連続画像を取得する受像部と、
前記受像部と前記無端状ベルトとの距離を測定するための距離測定部と、
前記無端状ベルトの周回速度を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して所定時間内における前記無端状ベルトの移動量を演算と、前記距離測定部の測定結果をもとに前記移動量の補正を行い、補正後の前記移動量から前記無端状ベルトの周回速度を演算することを特徴とする速度制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記受像部で取得された連続画像を比較して、前記無端状ベルトの蛇行量を演算するとともに、前記距離測定部の測定結果をもとに前記蛇行量の補正を行い、補正後の蛇行量に基づき前記無端状ベルトの蛇行を修正することを特徴とする請求項5に記載の速度制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記受像部と前記無端状ベルトとの間の基準距離を記憶する記憶部を有し、
前記基準距離と前記距離測定部が測定した距離との差分、若しくは、前記距離測定部が測定した距離に、所定の係数を乗じて得られた補正値を前記移動量に加算することで、前記移動量の補正を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の速度制御装置。
【請求項8】
前記距離測定部は、レーザ光により距離を測定するレーザセンサであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の速度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−275809(P2008−275809A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118184(P2007−118184)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】