説明

画像形成装置用ベルト

【課題】画像形成装置用のベルトとして必要な屈曲性や延伸性を損うことなく、従来のベルトに比べて遥に優れた耐引裂き性をベルトに与える。ポリアミドを焼成してベルトを製作する時に皺が生じない様にする。
【解決手段】端部に繊維が取付けられていることを特徴とする画像形成装置用ベルト。前記繊維の引張弾性率が、前記画像形成装置用ベルトの基材よりも高く、10〜1000Paである画像形成装置用ベルト。前記繊維は、多数のフィラメントを束ね込んで形成した糸状のものであって、複数本並んだ状態で取付けられている画像形成装置用ベルト。前記繊維は、ポリベンザゾール繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維のいずれかである画像形成装置用ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置用のベルトに関し、特に端部を繊維で補強したポリイミドを基材とする画像形成装置用のベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の画像形成装置、特にカラー画像の形成装置における画像の転写や定着等の方式は、感光ドラム上に形成されたトナー像をベルト(エンドレスベルト)を用いて転写材(紙)等に転写したり、定着したりする方式が標準的になりつつある。
【0003】
この際用いられるベルトは、適度な弾性率、耐熱性、機械的強度等の面からポリイミドあるいはポリアミドイミド等(以下、「ポリイミド等」と略記する)をベース樹脂とし、さらに良好な画像を形成するのに必要な熱伝導率、離トナー性、耐磨耗性等の各種の性質を向上させるため、導電剤等の添加物を配合したり、さらにはベース樹脂層を基材としてその表面側(用紙等の転写、定着材側)にウレタンゴム系の樹脂からなる弾性層やフッ素樹脂からなる表層を形成した多層構造のベルトとしたりすることがなされている。
【0004】
かかるベルトの製造は、高速回転する金属製円筒の内周面にポリイミドワニスを流し込み、遠心成形しつつ380℃で焼成したり、あるいは粘度を調節したポリイミドワニスを金型の外周面にディスペンサー塗布し、380℃程度で焼成したりして製造されている。
また、多層ベルトの場合には、そのようにして作製(製造)したポリイミド製等の基材の外周面(用紙等の転写、定着材側の面)に弾性層を形成し、さらにその表面を別途製作した表層の内周面(用紙等の転写、定着材の反対側となる面)に接着したりして製造されている。
【0005】
しかし、ポリイミド等の高弾性率フィルムは、引張強度が極めて優れている反面、ノッチ等の欠陥があると、一気に裂けてしまう弱点がある。本用途のベルトは、間欠的な回転、停止が繰返し行なわれることから、ベルトの寿命は、ベルト端部からの裂けで決まることが多い。
このため、ベルトの端部(ベルト面の、ベルトが動く方向に沿った両側面側)あるいはベルトの基材の両端側に幅5mm程度のポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と言う)製フィルムを粘着テープで貼付けて補強すること等が行われている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、段落0030〜0031)。
【特許文献1】実開平1−164461号公報
【特許文献2】特開平5−26314号公報
【特許文献3】特開2006−78848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、印刷速度を大幅に高められること等により近年のユーザのベルトの各種の性能に対する要求は益々厳しくなってきている。このため、従来以上に長期の使用や多数の通紙に耐えて充分な画像形成機能を発揮するだけでなく、極めて長期の使用によりベルトの端部にノッチが生じたりした場合でも、ノッチからベルトが裂けたりすることがないよう、充分な耐引裂き性を有することが要求される様になっている。
【0007】
このため、前記の如くPET製フィルムを貼って補強するだけでは、近年のユーザの厳しい要求を充たすには必ずしも充分とは言い難くなってきている。
その対策として、単にPET以上に強度が大きい材料、例えばピアノ線、を貼り付けたりすれば、今度は画像形成装置のベルトに必要な屈曲性や延伸が損われかねない。
【0008】
このため、画像形成装置用のベルトとして必要な屈曲性や延伸性を損うことなく、従来のベルトに比べて遥に優れた耐引裂き性をベルトに与えることが可能な技術の開発が望まれていた。
【0009】
次に、ベルトの成膜時に金型の外側にポリイミドやポリイミドアミドを塗布した場合、そのまま焼成すれば、焼成時にポリイミドやポリイミドアミドは、縦横両方向に収縮しようとするが、実際には、横方向は金型により拘束されるため収縮せず、縦方向のみが両端がフリーであるため収縮する。その結果、ベルトに横方向に皺が発生することがある。その対策として、ベルトの両端をメタルバンド等で拘束すると、今度は、焼成時のイミド化反応で発生したガスがベルトの裏側(ポリイミドやポリイミドアミドと金型との間)に溜まり、ベルトが風船状に膨らんでしまうことがある。
このため、また、ポリアミドやポリイミドアミドを焼成してベルトを製造する時に、ベルトに皺が生じない様に、かつガスが溜まらない様にする技術の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、以上の課題を解決することを目的として鋭意研究した結果、PETに換えてスーパー繊維を補強材として使用することにより、画像形成装置用のベルトとして必要な屈曲性や延伸性を損うことなく、充分な耐引裂き性をベルトに与えられることを見出し、またベルトのベース樹脂やベルトの基材の樹脂を焼成してベルトを製造する時に、スーパー繊維でベルトの両端を金型に固定しておくことにより樹脂が縦方向に縮むのを拘束し、ベルトに皺が発生するのが防止されることを見出し、本発明を完成させたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、
端部に繊維が取付けられていることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0012】
本請求項の発明の画像形成装置用ベルトは、ベルトの端部に繊維が取付けられているため、画像形成装置用のベルトとして必要な屈曲性や延伸性を損なうことなく、従来のベルトに比較して遥に優れた耐引裂き性を有しているベルトとなる。また、ポリアミドを焼成してベルトを製造する時に、ベルトに皺が生じない。
【0013】
また、耐引裂き性が優れているため、長期間の高速印刷やそれに伴う急回転や急停止の繰返し等でベルトの端部にノッチが発生することが少なくなり、たとえノッチが発生したとしても、繊維が引裂きにストッパとして作用するため、ノッチからベルトが裂けるようなことが少なくなる。
【0014】
また、ベルトの耐引裂き性を向上させるものであるため、本発明の出願時点ではPETによる補強の様に薄い布(フィルム)状の物を貼り付けたり、FRPのごとく短繊維をフィラーとしてベルトのベース樹脂中に分散させたりしたものではなく、ベルトに沿って装着された糸状である。ただし、将来の技術の進歩の下で、布状、フィラー状等の物が実用化された場合には、本発明に含まれる。
なお、糸状とは、一本の糸、多数の非常に細い繊維(フィラメント)を織り込んだり巻き込んだりしてなる糸等を問わない。
【0015】
また、「画像形成装置」とは、複写機、レーザープリンター等の電子写真方式を用いた画像形成装置を指し、カラー、単色を問わない。
また、「ベルト」とは、転写ベルト、定着ベルト、転写定着ベルト等の純粋なベルトのみならず、金属製の円筒に嵌め込まれて転写ローラ等の外周に使用されるベルト状の物を含み、画像形成装置の画像形成の手段(プリンターの方式等)は問わない。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記繊維の引張弾性率が、前記画像形成装置用ベルトの基材よりも高いことを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0017】
本請求項の発明においては、繊維の引張弾性率が画像形成装置用ベルトの基材よりも高いため、外力、例えば引張力が作用したときに繊維がベルトやその基材ほどには伸びず、このためベルトやその基材が過度に伸びるのを防止する。その結果、ベルトの耐引裂き強度、耐引張特性が向上する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記繊維の引張弾性率が、10〜1000GPaであることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0019】
本請求項の発明においては、繊維の引張弾性率が10GPa以上であるため、外力による繊維の変形が少なく、このためベルトに引張荷重や引き裂く力が作用した際に、繊維がその荷重を受持ち、また引張弾性率が1000GPa以下であるためベルトの製造時に適度の巻付け力を与えたり、完成したベルトを画像形成装置のベルトを駆動するローラに嵌め込んだりする際には、高強度ではあるが適度に伸張するため、それらのための作業が困難となることがない。
このような繊維としては、いわゆるスーパー繊維を挙げることができる。
繊維の引張弾性率は、100GPa以上であるとより好ましく、また引張強度は1.5GPa、即ち現在使用されているPETの2.5倍以上ある樹脂製、ガラス製あるいはセラミック製の繊維が好ましく、引張強度は2.5GPa以上あるのが好ましく、3.0GPa以上であるのがさらに好ましい。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記繊維は、多数のフィラメントを束ね込んで形成した糸状のものであることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0021】
本請求項の発明においては、繊維は多数のフィラメントを束ね込んで形成した糸状のものであるため、補強する対象のベルトやベルトの基材の材料であるポリイミドワニスやポリイミドアミドワニスを焼成するために金型に塗布した際に、ワニスが繊維の糸を構成するフィラメントに浸み込み、あるいは繊維の外周面に形成される凹凸に入り込むため、ポリイミド層やポリイミドアミド樹脂層と繊維の良好な接着がなされ、ひいては繊維の補強効果が充分に発揮されることとなる。
【0022】
また、個々のフィラメントは直径が小さいだけでなく、糸を形成するために概念的にはスプリングのように折り曲げられているため、繊維の糸は全体としても小さな力で屈曲し易いだけでなく、発生する応力も小さくなるため屈曲疲労に対する耐性も向上し、ひいては良好な屈曲性を有することとなる。
なお、多数のフィラメントを束ね込んで糸を形成する方法は、織り込み、結合用の樹脂を使用する等の手段を問わない。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記繊維は、前記糸状のものを複数本並んだ状態で取付けられていることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0024】
本請求項の発明においては、ベルトの両端の補強用の繊維は、糸状のものを複数本並んだ状態で取付けられているため、全体の引張強度が増加するだけでなく、金型の外周面との接着面積が増加するため、金型の外周面への固定性も強固となり、ひいてはポリイミドあるいはポリイミドアミド層を焼成する際にこれらの樹脂が縦方向に収縮するのを防止し、横方向の皺が発生することが一層少なくなり、製品の歩留まりの向上、コストダウンにつながる。
なお、ベルトやベルトの基材層の厚さと市販あるいは実用化されている繊維の糸の直径の如何にもよるが、糸は上下方向(ベルトの厚さ方向)には重ねない方が、柔軟な屈曲性を確保する等の面からは好ましい。
【0025】
請求項6に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記繊維は、ポリベンザゾール繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維のいずれかであることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0026】
本請求項の発明に関わる画像形成装置用ベルトが使用する繊維は、何れも現在実用化され、市販されているスーパー繊維であるため、製品の強度等の信頼性が高く、またコスト的に有利となる。
なお、ポリベンザゾール繊維とは、ポリベンゾオキサゾール(PBO)やポリベンゾチアサゾール(PBT)で示されるポリベンザゾールポリマーよりなる繊維である。ポリベンザゾール繊維の一例としては、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールを液晶紡糸した繊維が挙げられる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記ベルトは、ポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデンをベース樹脂としていることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0028】
本請求項の発明に関わる画像形成装置用ベルトは、適度な弾性率、耐熱性、機械的強度等の面からポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデン(PVDF)をベース樹脂としているため、優れた画像形成能力を有し、さらにスーパー繊維で耐引裂き性を改善されているため、長期の使用に耐える。
ここに、「ベース樹脂」とは、ベルト本来の形状、寸法、強度等を保持する主材料の樹脂という意味であり、適度な導電性を有するように導電剤等の性能改善材等が配合されている場合を含む。
【0029】
請求項8に記載の発明は、前記の画像形成装置用ベルトであって、
前記ベルトは、多層ベルトであり、
さらにベルトの基材は、ポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデンをベース樹脂としていることを特徴とする画像形成装置用ベルトである。
【0030】
本請求項の発明に関わる画像形成装置用ベルトは多層からなり、適度な弾性率、耐熱性、機械的強度等の面からポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデンを基材のベース樹脂としているため、優れた画像形成能力を有し、さらに繊維、特にスーパー繊維で、基材の、ひいてはベルト全体の耐引裂き性を改善されているため、長期の使用に耐える。
ここに、「基材」とは、ベルト本来の構造と強度を保持する役を担う層という意味であり、他の層としては、ベルトに適度な弾性を担保する弾性層、トナーとの離型性を担保する表層等を挙げられる。
なお、繊維は、糸の直径や各層の厚さの如何によっては、基材からはみ出て弾性層や表層に入り込んでいても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明においては、画像形成装置のポリイミド等をベース樹脂とするベルトの端部や、ポリイミド等を基材とするベルトの基材の端部に繊維を取付けて補強しているため、屈曲性や延伸性を損うことなく、従来のベルトに比べて遥に優れた耐引裂き性を有しているベルトとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
[第1の実施の形態]
(ベルトの製造)
以下、第1の実施の形態のべルトの製造について説明する。
宇部興産社製ポリイミド(登録商標名「UワニスS」)にアセチレンブラックを練り込んで、体積抵抗率が1.0e10Ωcm近くになる様に調整したポリイミドワニスを作製した。
一方で、円筒状の金型の両端に繊維としてPBO製スーパー繊維{東洋紡社製、登録商標名「ザイロンHM」(ハイモデュラス、高弾性率)、273dtx(1万メートルの重量が273g)、単糸(フィラメント)dtex1.7、密度1.56g/cm、引張強度5.8GPa、弾性率270GPa、破断伸度2.5%}を、約5mm幅で一重に巻付けた。
この際、スーパー繊維の両端は、結びつけにより金型表面に固定し、巻付け時には多少の張力を持たせて締め付けた。
【0034】
次いで、スーパー繊維を巻付けた状態の金型に、前記のポリイミドワニスを85μmの厚さにディスペンサー塗布し、乾燥後380℃で焼成してベルトを作製した。
【0035】
金型の外周面にベルトが作製された状態を、図1に概念的に示す。図1の上の図は、スーパー樹脂を巻付けた位置における金型を軸方向に切断した面を示し、下の図は金型の軸に直交する方向(側面)から見た図であり、上半分は切断図であり、下半分は側面図である。図1において、10はPBO製のスーパー繊維の糸であり、20は樹脂層であり、30は金型である。
図1に示す様に、ベルトの下側(金型側、転写用紙の反対側)の両端近くには、耐引裂き強度を補強するためのスーパー繊維の糸が、複数本平行に並んで配列されている。
【0036】
(試験結果)
以下に、以上の方法で製造したベルトの試験結果を、説明する。
(外観観察)
スーパー繊維は、1本の糸が多数のフィラメントを織り込んで製造されているため、スーパー繊維のフィラメント間にポリイミドが入り込み、スーパー繊維と焼成したポリイミド層とは、しっかりと固着していた。
また、ベルトには、横方向の皺の発生が全く見受けられなかった。スーパー繊維は、金型に巻付けているため、焼成中にポリイミドが縦方向に縮もうとするのを阻止することによる。
さらに、ベルトの膨れも見受けられなかった。焼成時には溶剤であるピロリドンの揮発、イミド化で生じた縮合水の蒸発等によるガスが発生するが、スーパー繊維の締め付け力が適切であるので、発生したガスはベルトと金型間に溜まることなく、端部から外部へ逃げてしまうことによる。
【0037】
(屈曲性、延伸性試験)
画像形成装置のベルトとして、充分な屈曲性や延伸性を有していた。補強用のスーパー繊維の糸は、より細い多数のフィラメントを織り込んで作製されているため、引張り強度等が高いにも関わらず充分な屈曲性や延伸性を有していることによる。
【0038】
(引裂き強度)
JIS K7128に準拠して引裂き強度を測定した。3点平均で125.2kgfであり、従来のPETで補強したベルトの40.1kgfを大幅に上回っていることが確認できた。
【0039】
[第2の実施の形態]
(ベルトの製造)
以下、第2の実施の形態のべルトの製造について説明する。
第1の実施の形態と同じく、体積抵抗率を調整したポリイミドワニスを作製した。
一方で、円筒状の金型の両端に繊維として、スーパー繊維の一種である炭素繊維{直径60μm、引張強度2.5GPa、弾性率350GPa、破断伸度2.0%}を、約5mm幅で一重に巻付けた。
【0040】
次いで、スーパー繊維を巻付けた状態の金型に、前記のポリイミドワニスを80μmの厚さにディスペンサー塗布し、乾燥後380℃で焼成し、多層ベルトの基材を作製した。
さらに、基材の上に、水性ウレタン{ADEKA社製、登録商標「HUX1230」}を塗布し、乾燥させて厚さ200μmの弾性層を形成した。
【0041】
また、内面を鏡面加工したステンレス(熱膨張率は、1.76×10−5/℃)製の外筒の内周面へ、表層としてデュポン社製のPFAモルフォロジー改良品(商品名945HP plus、融点は295℃)を約300℃で焼付けた。さらに、表層の内面には、接着性改善処理として、THV(住友3M社製THV220、融点は120℃)からなるバインダー層を、約350℃で溶着させることにより形成した。
【0042】
次いで、基材の上に弾性層が形成された半製品のベルトを金型から取り外し、ナイロン6(熱膨張率は、8.0×10−5/℃)製の冷却した中子に嵌め込み、さらにその状態の中子を、内面に表層とバインダー層が形成されているステンレス製の円筒の内部に挿入した。
【0043】
そして、真空中で全体を10分間130℃に保持してバインダー層を一旦溶融させ、その後冷却してバインダー層を固化させ、表層の内周面と弾性層の外周面をバインダー層を介して強固に接着し、3層(バインダー層を含めれば、4層)からなり、両端をスーパー繊維で補強された定着ベルトを完成させた。
この状態のベルトの動く方向に直交する切断面を、図2に概念的に示す。図2において、11は炭素繊維製のスーパー繊維の糸であり、21は基材であり、22は弾性層であり、23は表層である。
【0044】
(試験結果)
以下に、以上の方法で製造したベルトの試験結果を、説明する。
外観観察、屈曲性、延伸性とも第1の実施の形態と同様に良好であった。
また、引裂き強度は、従来のPETで補強したベルトの倍ほどあった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態の画像形成装置用のベルトが、金型の外周面に作製された状態を概念的に示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の画像形成装置用のベルトの切断面を、概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 PBO製のスーパー繊維の糸
11 炭素繊維製のスーパー繊維の糸
20 樹脂層
21 基材
22 弾性層
23 表層
30 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に繊維が取付けられていることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
【請求項2】
前記繊維の引張弾性率が、前記画像形成装置用ベルトの基材よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項3】
前記繊維の引張弾性率が、10〜1000GPaであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項4】
前記繊維は、多数のフィラメントを束ね込んで形成した糸状のものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項5】
前記繊維は、前記糸状のものを複数本並んだ状態で取付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項6】
前記繊維は、ポリベンザゾール繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項7】
前記ベルトは、ポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデンをベース樹脂としていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。
【請求項8】
前記ベルトは、多層ベルトであり、
さらにベルトの基材は、ポリイミド、ポリイミドアミドまたはポリフッ化ビニリデンをベース樹脂としていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像形成装置用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−116700(P2008−116700A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299987(P2006−299987)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】