説明

画像形成装置

【課題】 原稿上で視認されにくく秘匿性が確保されるとともに、原稿読取り時に容易に検出可能であるように地紋を埋め込み、原稿の作成者が意図した地紋の効果を確実にまた簡単に実現し得る画像形成装置を提供する。
【解決手段】 原稿の複写に際し、作成された複写物上では視認不可能である一方、該複写物の複写時に視認可能にあらわれる潜像パターンを埋め込む地紋埋込み機能を備えた画像形成装置において、地紋埋込み機能として、所定の装置における上記複写物の複写に際し、該装置に読み取られそれに基づく特定の処理を実行させるための指示情報をあらわす所定形状をなすパターンを、上記潜像パターンの少なくとも一部として含ませる。更に、上記指示情報を複数格納する指示情報格納手段と、該指示情報格納手段により格納される各指示情報を、所定形状をなすパターンとしてパターン化する情報パターン化手段と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を複写する機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,多機能複合機(MFP:Multifunction Peripheral)等の複写可能な機器に採用される技術の1つとして、機密文書の不正な複写を抑止するために、原稿に対して、例えば文字列や模様等の潜像パターンとそれ以外の背景パターンとで構成される地紋を、ユーザが視認できないように埋め込む地紋埋込み技術が知られている。複写可能な機器では、地紋が埋め込まれた原稿の複写に際し、下地除去処理等により潜像パターンのみが読み取られ、これによって、新たに作成される複写物上で潜像パターンが視認可能に浮かび上がり、複写を実行したユーザに対して警告を行うことができる。
【0003】
ところで、このような地紋は原稿上で視認できないように埋め込まれるため、原稿に特定の情報が含まれていることがユーザに知られがたく、秘匿性に優れているものの、走査された原稿に基づき作成された画像データから地紋を検出し、潜像パターンを抽出するには、複雑なアルゴリズムが実装されたハードウェアや特別な検出手段を用意する、若しくは、別のアプローチとして、例えば潜像パターンを繰り返し組み込む等の、精度を確保するための工夫を行う必要があった。
【0004】
原稿に特定の情報を容易に検出可能に付加する技術として、例えば特開2001−103305号公報では、グリフコードが視認可能に背景全面に付加されることが提案されているが、ここでは、背景全面に視認可能に付加されたグリフコードを検出し易いというメリットがある一方、グリフコードが原稿上で視認可能にあらわれるため、秘匿性を確保し得ず、また、原稿の実質的な情報が見えにくくなるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−103305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
更に、地紋の検出を容易化する方法としては、単に、地紋を構成する潜像パターンと背景パターンとの濃度差を大きく設定することが考えられるが、この場合にも、地紋の検出が容易化される反面、原稿上で視覚的に認知され易くなり、秘匿性に乏しくなる。
【0007】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、原稿上で視認されにくく秘匿性が確保されるとともに、原稿の複写時に容易に検出可能であるように地紋を埋め込み、原稿の作成者が意図した地紋の効果を確実にまた簡単に実現し得る画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、原稿の複写に際し、作成された複写物上では視認不可能である一方、該複写物の複写時に視認可能にあらわれる潜像パターンを埋め込む地紋埋込み機能を備えた画像形成装置において、該地紋埋込み機能として、所定の装置における上記複写物の複写に際し、該装置に読み取られそれに基づく特定の処理を実行させるための指示情報をあらわす所定形状をなすパターンを、上記潜像パターンの少なくとも一部として含ませることを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、更に、上記装置に読み取られそれに基づく特定の処理を実行させるための複数の指示情報を格納する指示情報格納手段と、該指示情報格納手段により格納される各指示情報を、所定形状をなすパターンとしてパターン化する情報パターン化手段と、を有していることを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、更に、上記複写物に埋め込まれた潜像パターンを検出し、該潜像パターンによりあわらわされる指示情報を読み取る指示情報読取り手段と、該指示情報読取り手段により読み取られた指示情報に基づき、特定の処理を実行する処理実行手段と、を有していることを特徴としたものである。
【0011】
また、更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3に係る発明のいずれかにおいて、上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、新たに作成する複写物に対して黒ベタ処理を実行させる情報であることを特徴としたものである。
【0012】
また、更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1〜4に係る発明のいずれかにおいて、上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、元の複写物の実質的な情報から警告情報への置換処理を実行させる情報であることを特徴としたものである。
【0013】
また、更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る発明のいずれかにおいて、上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、該装置による複写出力が不可能である機能停止を実行させることを特徴としたものである。
【0014】
また、更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1〜3に係る発明のいずれかにおいて、上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、該指示情報をあらわす所定形状をなすパターンが視認不可能に埋め込まれる複写物の再生処理を実行させる情報であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に係る発明によれば、所定の装置に特定の処理を実行させるための指示情報をあらわす潜像パターンが、作成された複写物上では視認不可能であるため、秘匿性を確保することができ、また、潜像パターンが、複写物の複写時に容易に検出可能である所定形状をなすパターンとして埋め込まれるため、原稿の作成者が意図した地紋の効果を確実にまた簡単に実現することができる。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、複数の指示情報を有することで、所定の装置に様々な処理を実行させることができ、原稿の作成者が意図する地紋効果をより効果的に実現することができる。
【0017】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、本機で指示情報が含まれるように作成された複写物の複写に際し、指示情報を読み取り、特定の処理を実行することができる。
【0018】
また、更に、本願の請求項4に係る発明によれば、上記複写物の複写を行う装置に黒ベタ処理を実行させ、原稿の作成者が意図した不正コピーの防止をより確実に実現することができる。
【0019】
また、更に、本願の請求項5に係る発明によれば、上記複写物の複写を行う装置に元の複写物の実質的な情報から警告情報への置換処理を実行させ、原稿の作成者が意図した不正コピーの防止をより確実に実現することができる。
【0020】
また、更に、本願の請求項6に係る発明によれば、上記複写物の複写を行う装置に、該装置による複写出力が不可能である機能停止を実行させ、原稿の作成者が意図した不正コピーの防止をより確実に実現することができる。
【0021】
また、更に、本願の請求項7に係る発明によれば、上記複写物の複写を行う装置に、示情報をあらわす所定形状をなすパターンが視認不可能に埋め込まれる複写物の再生処理を実行させ、原稿の作成者が意図した原稿の再生をより確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態では、特許請求の範囲に記載の情報処理装置として、多機能複合機(以下、MFPと表記)を取り上げる。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るMFPの基本構成を概略的に示す図である。このMFP10は、所定のプログラムに基づき各種の命令を実行させるなどして、MFP10内の各構成を制御するCPU1と、CPU1による制御の基になるプログラムを格納するROM2と、該プログラムの実行に必要なワークエリアとして機能しつつ,外部から送信されてきたジョブデータ等の各種ファイル又はデータを一時的に格納するRAM3と、画像データ又は文書データ等のジョブデータを蓄積するハードディスクドライブ(HDD)4と、外部より入力された若しくは本機で作成された画像データに対する色変換,色補正,解像度変換,領域判別,下地除去等の処理を行う一方、プリント出力前の画像データに対するスクリーン制御,スムージング処理,パルス幅変調(PWM)制御等の処理を行う画像処理部5と、を有している。
【0024】
また、MFP10は、ユーザによる装置の操作及び各種の設定操作を可能とするタッチパネル式の表示パネルを備えた操作部6と、原稿を読み取り例えばビットマップ形式の画像データを取得する走査部7と、画像データに基づき印刷媒体(用紙等)に対してプリントを実行する印刷部8と、印刷部8に対して給紙を行なう給紙部9と、各種データの送受信を外部と行なうためのネットワークインターフェースカード(図中の「NIC」)11と、を有している。これらの構成は、バス12を介して互いにデータ送受信可能に接続されている。
【0025】
以上の構成を備えたMFP10では、機密文書等の不正コピーを抑止する機能として、原稿に対し、例えば文字列や模様等の潜像パターンとそれ以外の背景パターンとで構成される地紋を、ユーザが視認できないように埋め込む地紋埋込み機能が設定されている。地紋に含まれる潜像パターンは、地紋が埋め込まれた原稿上ではあらわれず、この原稿の複写物上でユーザが視認できるようにあらわれ、これにより、複写を実行したユーザに対して不正コピー禁止の警告を行うことができる。
【0026】
特に、本実施形態に係るMFP10では、かかる地紋埋込み機能に関して、地紋が、文字列や模様等の潜像パターンに加え、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理をMFP10に実行させるための処理指示情報をあらわすバーコード形式の潜像パターンを含みつつ、原稿に埋め込まれるようになっている。かかる地紋の埋込みが可能である原稿の複写処理については、図6を参照しながら詳しく後述する。なお、このMFP10においては、原稿の作成者が地紋埋込みの要否を選択することができ、地紋埋込みを要求するモード(以下、地紋埋込みモードという)がユーザにより選択されると、ROM2又はハードディスクドライブ4に格納されたプログラムに基づき、CPU1が画像処理部5に所定の処理を実行させ、上記の地紋埋込み機能が実現される。
【0027】
また、本実施形態に係るMFP10では、上記地紋が埋め込まれた原稿が複写されると、まず、下地除去処理等により背景パターンが削除されて、文字列や模様等の潜像パターン及び処理指示情報をあらわすバーコード形式の潜像パターンが視認できるように含まれる画像データが作成される。その後、画像データに含まれるバーコード形式の潜像パターンが読み取られることで処理指示情報が取得され、その処理指示情報に基づき、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理が実行される。かかる処理指示情報に基づく特定の処理を伴う原稿の複写処理については、図7を参照しながら詳しく後述する。
【0028】
以下、図2〜5を参照しながら、原稿に含まれる処理指示情報に基づき実行される各種処理について、第1〜4の具体例を挙げて説明する。なお、これらの具体例は、MFP10において、単独で設定されても若しくは一部又は全部の複数で設定されてもよい。
【0029】
まず、図2に示す第1の具体例では、原稿P1(図2の(a)参照)において、文字列「コピー厳禁」の潜像パターンが中央に配置されるとともに、文字列の潜像パターンと同じ階調レベルであらわされる第1の処理指示情報に対応したバーコード形式の潜像パターンが、上余白左に配置され、これらの潜像パターンと背景パターン(ハッチングが付された部分)とが、地紋として埋め込まれている。なお、図2の(a)では、各種潜像パターンや背景パターンが、原稿P1の実質的な情報(ABCDE,abcde等)と同様に視認可能に図示されているが、実際には、これらのパターンは視認できないように原稿P1に埋め込まれる。
【0030】
原稿P1の複写時には、まず、下地除去処理等により背景パターンが削除されて、に示すような、文字列や模様等の潜像パターン及び第1の処理指示情報をあらわすバーコード形式の潜像パターンが視認できるように含まれる画像データQ1(図2の(b)参照)が作成される。その後、画像データQ1に含まれ、上余白左に配置されるバーコード形式の潜像パターンが読み取られることで第1の処理指示情報が取得され、その処理指示情報に基づき、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理が実行される。この第1の具体例では、第1の処理指示情報がMFP10に黒ベタ処理を実行させるものである。これにより、画像データQ1は、黒ベタ処理を含む画像処理が施された上でプリント出力され、図2の(c)に示すように、原稿の実質的な情報が隠れた(厳密には含まない)黒ベタのプリント出力結果Xが得られる。このようにして、原稿の作成者が意図した不正コピーの抑止という地紋の効果が実現される。
【0031】
また、図3には、第2の具体例を示すが、図3の(a)及び(b)でそれぞれ示される原稿P2及び画像データQ2は、第1の処理指示情報と異なる第2の処理情報をあらわす潜像パターンが埋め込まれる点のみで異なる以外は、前述した第1の具体例における原稿P1及び画像データQ1と同様であるため、それ以上の説明を省略する。
【0032】
原稿P2の複写時に、画像データQ2の作成後、画像データQ2に含まれ、上余白左に配置されるバーコード形式の潜像パターンが読み取られることで第2の処理指示情報が取得され、その処理指示情報に基づき、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理が実行される。この第2の具体例では、第2の処理指示情報が原稿P2の実質的な情報を警告文へ置換する処理をMFP10に実行させるものである。これにより、画像データQ2は、警告文への置換処理を含む画像処理が施された上でプリント出力され、図3の(c)に示すように、警告文「あなたはコピー禁止文書を違法に・・・」がプリントされてなるプリント出力結果Yが得られる。このようにして、原稿の作成者が意図した不正コピーの抑止という地紋の効果が実現される。
【0033】
また、図4には、第3の具体例を示すが、図4の(a)及び(b)でそれぞれ示される原稿P3及び画像データQ3は、第1の処理指示情報と異なる第3の処理情報をあらわす潜像パターンが埋め込まれる点のみで異なる以外は、前述した第1の具体例における原稿P1及び画像データQ1と同様であるため、それ以上の説明を省略する。
【0034】
原稿P3の複写時に、画像データQ3の作成後、画像データQ3に含まれ、上余白左に配置されるバーコード形式の潜像パターンが読み取られることで第3の処理指示情報が取得され、その処理指示情報に基づき、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理が実行される。この第3の具体例では、第3の処理指示情報が管理者への通知処理及びMFP本体の停止処理をMFP10に実行させるものであり、これにより、画像データQ3から第3の処理指示情報が取得された後、MFP10は、その管理者へ不正コピーの要求があったことを通知し、プリント出力を不可とすべく本体を停止させる。このようにして、原稿の作成者が意図した不正コピーの抑止という地紋の効果が実現される。
【0035】
また、図5には、第4の具体例を示すが、図5の(a)及び(b)でそれぞれ示される原稿P4及び画像データQ4は、第1の処理指示情報と異なる第4の処理情報をあらわす潜像パターンが埋め込まれる点のみで異なる以外は、前述した第1の具体例における原稿P1及び画像データQ1と同様であるため、それ以上の説明を省略する。
【0036】
原稿P4の複写時に、画像データQ4の作成後、画像データQ4に含まれ、上余白左に配置されるバーコード形式の潜像パターンが読み取られることで第4の処理指示情報が取得され、その処理指示情報に基づき、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現するための特定の処理が実行される。この第4の具体例では、第4の処理指示情報が原稿P4の再生処理をMFP10に実行させるものである。これにより、画像データQ4は、原稿P4の再生処理が施された上でプリント出力され、図5の(c)に示すように、原稿P4と同様に地紋が埋め込まれたプリント出力結果Zが得られる。このようにして、原稿の作成者が意図した原稿の再生という更なる地紋の効果が実現される。
【0037】
図6は、MFP10により実行される、処理指示情報に対応した潜像パターンを含む地紋の埋込みが可能である原稿の複写処理についてのフローチャートである。この処理では、まず、ユーザから原稿の複写が実行指示されたか否かが判断される(#11)。その結果、原稿の複写の実行指示を受けていない場合には、再度ステップ#11が繰り返され、他方、原稿の複写の実行指示を受けた場合には、原稿が読み取られる(#12)。
【0038】
その後、ユーザにより地紋埋込みが要求されたか否かが判断され(#13)、その結果、地紋埋込みが要求されていないと判断された場合には、ステップ#18へ進み、他方、地紋埋込みが要求されたと判断された場合には、続いて、地紋を構成する要素の1つとして、例えば文字列「コピー厳禁」に対応した潜像パターンが読み出される(#14)。
【0039】
更に、ステップ#14の後、今回作成された複写物が不正コピーされた場合にMFP10に所定の処理を実行させるコマンド情報としての処理指示情報が取得され(#15)、続いて、取得された処理指示情報の潜像パターン化が行われる(#16)。その後、(画像データに対して、ステップ#14及び#16で取得された潜像パターンと、それ以外の背景パターンとにより構成される地紋が埋め込まれる(#17)。なお、ここで、処理指示情報に対応する潜像パターンは、図2〜5に示すように、バーコードとして形成され、原稿における実質的な情報に重なることなく、例えば上余白において埋め込まれることが望ましい。これにより、この複写処理により作成された複写物が複写された場合に、このバーコードが容易に読み取り可能となり、バーコードに含まれる処理指定情報に基づき、特定の処理が正確に実行される。
【0040】
ステップ#18では、画像処理部2により、画像データに対する色変換,色補正,解像度変換,領域判別,スクリーン制御,スムージング処理,パルス幅変調(PWM)制御等、地紋埋込み以外の画像処理が実行される(#18)。最後に、ステップ#18後の画像データに基づき、プリント出力が実行され(#19)、これにより、処理が終了される。
【0041】
また、図7は、MFP10により実行される、処理指示情報に基づく処理を伴う原稿の複写処理についてのフローチャートである。この処理では、まず、ユーザから原稿の複写が実行指示されたか否かが判断される(#21)。その結果、原稿の複写の実行指示を受けていない場合には、再度ステップ#21が繰り返され、他方、原稿の複写の実行指示を受けた場合には、原稿が読み取られる(#22)。
【0042】
その後、処理指示情報に対応した潜像パターン(バーコード)が含まれるか否かが判断され(#23)、その結果、処理指示情報に対応した潜像パターンが含まれないと判断された場合には、ステップ#26へ直接に進み、他方、処理指示情報に対応した潜像パターンが含まれると判断された場合には、その潜像パターンから処理指示情報が読み取られ取得される(#24)。そして、取得された処理指示情報に基づき、図2〜5を参照して説明したような黒ベタ処理,警告文への置換処理,MFP本体の停止処理等の、原稿の作成者が意図した地紋の効果を実現する特定の処理が実行される(#25)。
【0043】
その後、画像処理部2により、画像データに対する色変換,色補正,解像度変換,領域判別,スクリーン制御,スムージング処理,パルス幅変調(PWM)制御等の画像処理が実行される(#26)。最後に、ステップ#26後の画像データに基づき、プリント出力が実行され(#27)、これにより、処理が終了される。
【0044】
なお、図6及び7にあらわされるような原稿の複写処理は、MFP10のROM2又はハードディスクドライブ4に格納されるプログラムが読み出されることで実行されるが、かかるプログラムは、MFP10のCPU1による制御の基になるプログラムの一部として予め組み込まれるものであっても、あるいは、複写処理プログラムとして、例えば図1に示すCD−ROM,DVD−ROM等のROMディスク18又はフロッピー(登録商標)ディスク19等の外部記録媒体を用いて若しくはネットワーク経由でダウンロードすることで、MFP10にインストールされ、ハードディスクドライブ4に追加的に格納されるものであってもよい。
【0045】
このように、本実施形態に係るMFP10は、文字列や模様等の潜像パターンに加え、処理指示情報をあらわす潜像パターンを含む地紋を、原稿上で視認できないように、また、原稿複写時に容易に検出可能であるように、それらの潜像パターンを同じ階調レベルとして埋め込み、その後、原稿の複写に際して、処理指示情報をあらわす潜像パターンを読み取り処理指示情報を取得し、更に、その処理指示情報に基づき特定の処理を実行することで、原稿の作成者が意図した地紋の効果を確実にまた簡単に実現することができる。
【0046】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、前述した実施形態では、各処理指示情報をあらわす潜像パターンがバーコード形式で表現されたが、これに限定されることなく、例えばQRコード等、所定の情報を含み得る形式であれば、いかなる表現形式が採用されてもよい。
また、前述した実施形態では、地紋が、文字列や模様等の潜像パターン及び処理指示情報をあらわす潜像パターン並びに背景パターンにより構成されたが、潜像パターンとして、少なくとも処理指示情報をあらわす潜像パターンを含ませるようにすれば、本発明の効果は十分に期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置(MFP)の基本構成をあらわすブロック図である。
【図2】(a)文字列及び第1の処理指示情報に対応する潜像パターンを含む地紋が視認できないように埋め込まれた原稿を示す図である。 (b)図2の(a)に示される原稿に基づき作成され、文字列及び第1の指示情報に対応する潜像パターンが視認可能にあらわれた画像データを示す図である。 (c)図2の(b)に示される画像データが、第1の処理指示情報に基づき黒ベタ処理されてなるプリント出力結果を示す図である。
【図3】(a)文字列及び第2の処理指示情報に対応する潜像パターンを含む地紋が視認できないように埋め込まれた原稿を示す図である。 (b)図3の(a)に示される原稿に基づき作成され、文字列及び第2の処理指示情報に対応する潜像パターンが視認可能にあらわれた画像データを示す図である。 (c)図3の(b)に示される画像データが、第2の処理指示情報に基づき警告文に置換されてなるプリント出力結果を示す図である。
【図4】(a)文字列及び第3の処理指示情報に対応する潜像パターンを含む地紋が視認できないように埋め込まれた原稿を示す図である。 (b)図4の(a)に示される原稿に基づき作成され、文字列及び第3の処理指示情報に対応する潜像パターンが視認可能にあらわれた画像データを示す図である。
【図5】(a)文字列及び第4の処理指示情報に対応する潜像パターンを含む地紋が視認できないように埋め込まれた原稿を示す図である。 (b)図5の(a)に示される原稿に基づき作成され、文字列及び第4の処理指示情報に対応する潜像パターンが視認可能にあらわれた画像データを示す図である。 (c)図5の(b)に示される画像データから、第4の処理指示情報に基づく処理が施されたプリント出力結果を示す図である。
【図6】上記MFPにより実行される、処理指示情報に対応した潜像パターンを含む地紋の埋込みが可能である原稿の複写処理についてのフローチャートである。
【図7】上記MFPにより実行される、処理指示情報に基づき実行される処理を伴う原稿の複写処理についてのフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1…CPU,2…ROM,3…RAM,4…ハードディスクドライブ,5…画像処理部,6…操作部,7…走査部,8…印刷部,9…給紙部,10…MFP,11…NIC,18…ROMディスク,19…フロッピーディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の複写に際し、作成された複写物上では視認不可能である一方、該複写物の複写時に視認可能にあらわれる潜像パターンを埋め込む地紋埋込み機能を備えた画像形成装置において、
上記地紋埋込み機能として、所定の装置における上記複写物の複写に際し、該装置に読み取られそれに基づく特定の処理を実行させるための指示情報をあらわす所定形状をなすパターンを、上記潜像パターンの少なくとも一部として含ませる、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
更に、上記装置に読み取られそれに基づく特定の処理を実行させるための複数の指示情報を格納する指示情報格納手段と、
上記指示情報格納手段により格納される各指示情報を、所定形状をなすパターンとしてパターン化する情報パターン化手段と、を有していることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
更に、上記複写物に埋め込まれた潜像パターンを検出し、該潜像パターンによりあわらわされる指示情報を読み取る指示情報読取り手段と、
上記指示情報読取り手段により読み取られた指示情報に基づき、特定の処理を実行する処理実行手段と、を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、新たに作成する複写物に対して黒ベタ処理を実行させる情報であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、元の複写物の実質的な情報から警告情報への置換処理を実行させる情報であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、該装置による複写出力が不可能である機能停止を実行させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項7】
上記指示情報は、上記複写物の複写を行う装置に、該指示情報をあらわす所定形状をなすパターンが視認不可能に埋め込まれる複写物の再生処理を実行させる情報であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−20067(P2007−20067A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201598(P2005−201598)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】