説明

画像形成装置

【課題】複数の記録体を給送方向に垂直な幅方向に並べて搬送する並列搬送する画像形成装置において、並列搬送される記録体のいずれかに搬送速度の遅れを生じても、これに起因する画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止等の不具合を防止する。
【解決手段】複数の記録体Pa,Pbを給送方向に垂直な幅方向に並列に収容可能な給紙カセットと、複数の記録体をそれぞれ給送するため幅方向に並列に配置される複数の搬送ローラ20a,b、中間ローラ21a,bと、複数の記録体のそれぞれの先端を一旦停止させ、画像形成のタイミングに合わせて再び搬送するレジストローラとを備え、複数の記録体がレジストローラまで搬送される搬送速度を、それぞれ独立して変更する搬送速度変更手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記画像形成装置では、画像データに基づいて感光体上に潜像を形成し、この潜像を現像手段によりトナー像化し、このトナー像を転写手段で記録体に転写し、定着手段で定着することで記録体上に画像形成を行う。このような画像形成装置では、画像形成スピードの高速化の要請から、感光体の回転速度の高速化、記録体を搬送速度を高速化等をおこなって対応していた。しかし、画像形成の精度を維持するうえで感光体の回転速度の高速化には限界があり、記録体のハンドリングの面から搬送速度の高速化にも限界がある。
【0003】
より短時間で多くの記録体に画像形成が可能な構成として、記録体搬送方向に対して垂直な方向に複数枚の記録体を並べて搬送する並列搬送を用いて、並列搬送される記録体に画像を形成する並列搬送型の画像形成装置が知られている。並列搬送型の画像形成装置では、1枚分の画像形成動作で2枚以上の記録体に画像形成が可能であるため、感光体の回転速度や記録体の搬送速度に無理なく、多くの記録体への画像形成が可能となる。
【0004】
並列搬送型の画像形成装置の給紙装置としては、並列搬送に合わせて複数の記録体を1つの給紙カセット内に並列で収納しておき、これを給紙する方式が多く示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0005】
特許文献1では、2つの記録体の束が並列に収容可能で、2つの記録体の束の底面をそれぞれ支持する記録体底面支持部材である2つの複写紙載置台と、2つの複写紙載置台の間で2つの記録体の束を仕切る仕切板とを有し、この仕切板が2つの記録体の束を仕切る位置から、退避する位置に移動可能な給紙装置が開示されている。これは、仕切板が2つの束を仕切る状態で2枚の記録体を並列で給紙することが可能となり、また、仕切板を退避する位置に移動した状態で複写紙載置台2つ分の収容スペースを確保できA3などの大きな記録体1枚を給紙することもできる。
【0006】
また、特許文献2では、記録体の束の底面を支持する記録体底面支持部材を隣り合う記録体底面支持部材に対して連結または連結解除することで、一体で押し上げられる記録体底面支持部材の幅を収容する記録体の幅に適した幅に調節可能であるものを提案している。この画像形成装置では、異なる種々のサイズの記録体を収容することが可能であり、異なるサイズの記録体の並列搬送が可能となる。
【0007】
また、特許文献2には、搬送する記録体のサイズに応じた3つの給送制御が開示されている。1つ目は、通常の給紙装置と同様に記録体を1枚だけ給送する通常給送モードである。2つ目は、2束の記録体Pを並列に収容した状態で、2枚の記録体の先端を揃えて並列に給送する同時並列給送モードである。同時並列給送モードは、2束の記録体を並列に収容した状態で、2枚の記録体を同時のタイミングで給紙し、同時に画像形成することにより高速化を可能とする。しかし、同時並列給送モードはサイズが異なる記録体Pを並列搬送する場合は、搬送方向に長い画像に合わせて画像を形成するので、長さが短い記録体側の画像形成には時間的なロスが生じる。そこで、3つ目としては、2束の記録体を並列に収容した状態で、2枚の記録体を給送するタイミングがお互いに独立して並列に給送する独立並列給送モードである。独立並列給送モードは、サイズが異なる2枚の記録体を収容したとき、それぞれ独立したタイミングで給紙し、画像形成することにより、さらなる高速化が可能である。
【0008】
【特許文献1】特開平10−324429号公報
【特許文献2】特開2006−213488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数の記録体の並列搬送をおこなう画像形成装置においては、給送される複数の記録体の搬送速度がそれぞれ変動してしまう場合がある。例えば、異なるサイズの記録体を給送する場合、給紙カセットから給紙する際にサイズが大きい記録体はサイズが小さい記録体に比べてスリップが大きくなりやすく、これによりサイズの大きい記録体の搬送速度が遅くなってしまう。また、同じサイズの記録体を給送する場合でも、記録体の厚みや表面特性の差によりスリップのレベルが違い、複数の記録体のなかで搬送速度が遅くなってしまうものがでてくる場合もある。
【0010】
また、画像形成装置では、記録体と感光体上に形成されるトナー像との転写位置ズレを防止するために、給紙カセットより給送された記録体がレジストセンサによりレジストローラ位置に達したことを確認してから感光体への画像形成を開始するよう制御するものがある。このような装置では、レジストローラは給送された記録体の先端を一旦停止させた後、感光体上のトナー像と記録体の先端とが所定の位置関係になるよう感光体への画像形成のタイミングに合わせて、停止させた記録体の搬送を再び始めて転写位置に送り出す。ここで、上述のように並列搬送される複数の記録体の搬送速度が変動してレジストローラまで達するまでのタイミングが遅くなった場合は、タイミングの遅くなった記録体に合わせて感光体への画像形成を開始することになり、画像形成スピードが遅くなってしまう。特に、複数の記録体の先端を揃えて並列に給送し、同時に画像形成する同時並列給送モードを採用するものでは、搬送速度が最も遅くなった記録体に合わせて、並列搬送される全ての記録体の画像形成スピードが遅くなってしまう。
【0011】
一方、フルカラー画像形成するために中間転写体を用いる画像形成装置等では、上述のように記録体がレジストローラ位置に達したことを確認してから感光体への画像形成を開始するよう制御すると、画像形成スピードが遅くなってしまうものもある。そこで、記録体がレジストセンサに達するよりも前に、感光体への画像形成を開始することで、画像形成スピードの維持を優先するよう制御するものもある。具体的には、記録体がレジストセンサに達するまでのタイミングに余裕を持たせてあらかじめ感光体への画像形成を開始し、画像形成中に記録体がレジストローラに達したことを確認して一旦停止させた後に、感光体上への画像形成のタイミングに合わせて転写位置への搬送を始める。この場合、記録体の搬送速度が変動してレジストローラまで達するタイミングが遅くなっても、記録体がレジストセンサに達するまでのタイミングに余裕を持たせて画像形成を開始しているので、ある程度の遅れは、一旦停止させた記録体の搬送を再び始めるまでの間に吸収される。しかし、遅れが大きい場合は、レジストローラが記録体を送り出すタイミングに間に合わなくなり、記録体はトナー像に遅れて転写位置に搬送されるようになるので転写位置ズレを発生させてしまう。さらに、遅れが大きい場合は、転写位置に記録体が搬送されないジャムと判断され、並列搬送される全ての記録体の画像形成が停止してしまう。
【0012】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、複数の記録体を幅方向に並列に収容可能で、複数の記録体の並列搬送をおこなう画像形成装置において、並列搬送される記録体のいずれかに搬送速度の遅れを生じても、これに起因する画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止等の不具合を防止する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、積載された複数束の記録体を該記録体の給送方向に垂直な幅方向に並列に収容可能な給紙カセットと、該幅方向に並列に配置され該複数束の記録体の底面をそれぞれ支持する複数の記録体底面支持部材と、該記録体底面支持部材を押し上げ該複数束の記録体の最上部を給紙可能な位置まで上昇させる記録体昇降手段と、該記録体昇降手段により押し上げられた該複数束の記録体の最上位の記録体をそれぞれ給送するため該幅方向に並列に配置される複数の記録体給送部材と、該複数の記録体給送部材によりそれぞれ給送された複数の記録体の先端を一旦停止させ、トナー像を担持した像担持体と転写手段との対向位置である転写部に向けて該像担持体への画像形成のタイミングに合わせて再び搬送するレジストローラとを備え、該複数の記録体を給送方向に垂直な幅方向に並べて搬送する並列搬送する画像形成装置において、上記複数の記録体が上記複数の記録体給送部材により上記レジストローラまで搬送される搬送速度を、それぞれ独立して変更する搬送速度変更手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記複数の記録体が上記複数の記録体給送部材により上記レジストローラまで搬送される搬送路に、該複数の記録体の有無を検知する記録体センサをそれぞれ設け、該記録体センサの検知結果に基づき該複数の記録体の搬送速度の遅れを検出し、該検出結果に基づき上記搬送速度変更手段が該複数の記録体の搬送速度をそれぞれ独立して変更することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、上記並列搬送される複数の記録体を上記レジストローラに突き当ててたるみを形成する突き当て手段をそれぞれ設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の画像形成装置において、上記複数の突き当て手段により上記並列搬送される複数の記録体が形成するたるみ量をそれぞれ独立して変更とするたるみ量変更手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の画像形成装置において、上記複数の記録体を並列に収容した状態で、上記複数の記録体給送部材により複数の記録体の先端を揃えて並列に給紙し、上記レジストローラにより一旦搬送を停止した該複数の記録体の先端を揃えて再び並列に搬送する同時並列給送制御をおこなうことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、上記レジストローラにより上記複数の記録体の先端を揃えて再び並列に搬送し始めるタイミングを、上記記録体センサの検知結果に基づき搬送速度の遅れを検出された記録体に合わせるよう制御することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、上記一体で押し上げられる記録体底面支持部材の幅を、収容する記録体の幅に適した幅に調節可能であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、搬送速度変更手段により、複数の記録体が複数の記録体給送部材によりレジストローラまで搬送される搬送速度をそれぞれ独立して変更することにより、記録体のいずれかに搬送速度の遅れがあっても、この遅れをレジストローラに達するまでに補正することができる。よって、記録体のいずれかに搬送速度の遅れを生じても、これに起因する画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止等を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、複数の記録体を幅方向に並列に収容可能で、複数の記録体の並列搬送をおこなう画像形成装置において、並列搬送される記録体のいずれかに搬送速度の遅れを生じても、これに起因する画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止等の不具合を防止することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を画像形成装置に適用した実施形態について説明する。図1は、本実施形態のフルカラー用の画像形成装置の概略構成図である。図1の画像形成装置は、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の潜像担持体として、ドラム状の感光体24Y,C,M,Kを備えている。感光体24Y,C,M,Kの周囲には、図示しない帯電装置、現像装置及びクリーニング装置が配置されており、周知の電子写真プロセスにより感光体24Y,C,M,K上にイエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの各色トナー像を形成する。また、感光体24Y,C,M,Kの下部に対向するように、転写装置としての中間転写ベルト23が配置されている。中間転写ベルト23は、無端移動して感光体24Y,C,M,K上に形成されたトナー像を1次転写ローラ28Y,C,M,Kにより順次転写され、重ね合わせトナー像を形成する。また、中間転写ベルト23の左側には2次転写ローラ27が配設されており、後述する記録体搬送手段により搬送された記録体Pに中間転写ベルト23上の重ね合わせトナー像を転写する。さらに、2次転写位置の上側には定着装置25、排紙ローラ26が配設されている。これらが画像形成部となっている。
【0017】
また、画像形成部の下方には、記録体Pである普通紙やOHPシートなどの記録体束を積載した記録体収容部としての多段状の給紙カセット1が配置されている。給紙カセット1は、給紙カセット1に揺動可能に支持された載置台としての底板2と、記録体束の最上位の記録体を給紙するピックアップローラ8とを備えている。画像形成部と給紙カセット1との間には、給送装置としての給紙ローラ19、搬送ローラ20、中間ローラ21、レジストローラ22等を備えた搬送路18が設けられている。給紙カセット1では、底板2上に記録体Pの記録体束が積載されている。底板2は、記録体束の最上位の記録体Pがピックアップローラ8に当接可能な位置まで上昇する。
【0018】
また、上述の画像形成装置において、感光体24Y,C,M,K上への画像形成の開始タイミングは目的に応じて規定されるが、ここでは給紙カセット1より給送された記録体Pがレジストセンサによりレジストローラ22位置に達したことを確認してから感光体への画像形成を開始するよう制御するものとして説明する。これは、感光体24Y,C,M,K上に形成され、中間転写ベルト23に転写される重ね合わせトナー像と記録体Pとの転写位置ズレを防止するためのものである。まず、多段の給紙カセット1のうち、選択された給紙カセット1から記録体束の最上位の記録体Pが順次1枚ずつピックアップローラ8の回転により給送されて、給紙ローラ19により1枚に分離され、搬送ローラ20、中間ローラ21の回転により給送され、搬送路18を通って、搬送路18下流側に配置されているレジストローラ22へと搬送される。このように給紙搬送された記録体Pは、レジストローラ22のニップに突き当たることにより搬送が一時止められて待機させられる。また、記録体Pがレジストローラ22に達したことが後述するレジストセンサにより検知されると、これに合わせて所定のタイミングで、周知の電子写真プロセスにより、各感光体24Y,C,M,K上にトナー像が形成され、中間転写ベルト23上に重ね合わせトナー像が形成される。一方、中間ベルト23上へのトナー像形成のタイミングにあわせて、レジストローラ22は、中間転写ベルト23上のトナー像と記録体Pの先端との位置関係が所定の位置になるよう、タイミングをとって回転を開始するように制御される。このレジストローラ22の回転により、待機させられている記録体Pが再び搬送を開始し、中間転写ベルト23と2次転写ローラ27との圧接部である2次転写位置に送り出される。2次転写位置で、記録体Pは2次転写ローラ27により、中間転写ベルト23上に形成された重ね合わせトナー像を転写された後、定着ローラ24まで搬送される。定着装置25ではトナー像を記録体Pに定着した後、排紙ローラ26によって記録体Pが排紙される。
【0019】
この画像形成装置では、記録体Pの搬送方向に対して垂直な幅方向に複数枚の記録体Pを並べて搬送する並列搬送を行うことができる。A2やA3などサイズが大きい記録体Pにも画像形成が可能なプリンタで、使用頻度が高いA4やB5といったサイズを使用いていると、記録体Pの搬送方向の幅方向には使用されないデッドスペースが存在することになる。幅方向に複数枚の記録体Pを並べて搬送し、画像形成が可能であれば、幅方向のデッドスペースを少なくすることができる。さらに、複数枚を同時に画像形成可能であるので、多くの記録体Pに画像形成を行う場合には時間の短縮につながる。
【0020】
このような並列搬送をおこなう給紙カセット1について詳しく説明する。図2は給紙カセット1の斜視図である。図中矢印方向に引き出し、または、装着することで、記録体Pの補給や、収容する記録体Pの変更等ができる。給紙カセット1は、サイドフェンス部材3に仕切られた、記録体底面支持部材として第1底板2a及び第2底板2bを備えている。このサイドフェンス部材3については、後で詳しく説明する。また、載置する記録体Pの後端を規制するエンドフェンス5としては、第1底板2aが第1エンドフェンス5aを、第2底板2bが第2エンドフェンス5bをそれぞれ備えている。この第1エンドフェンス5aおよび第2エンドフェンス5bは積載する記録体Pの長さに応じて位置を調整可能である。また、記録体底面支持部材を押し上げる記録体昇降手段として、不図示の上昇モータより回転する支持棒6a、6bと、支持棒の回転により記録体底面支持部材を押し上げる上昇板7a、7bとを備えている。第1底板2aの昇降手段は第1支持棒6a及び第1上昇板7aからなり、第2底板2bの昇降手段は第2支持棒6b及び第2上昇板7bからなる。また、給紙カセット1の給紙方向側の端部には、第1底板2a及び第2底板2bのそれぞれに載置された記録体Pの束の最上位から一枚ずつ給送する記録体給送部材としての第1ピックアップローラ8aと第2ピックアップローラ8bとを備えている。以下、第1底板2aに載置する記録体Pを第1記録体Pa、第2底板2bに載置する記録体Pを第2記録体Pbとよぶ。
【0021】
昇降制御としては、第1支持棒6a及び第2支持棒6bのそれぞれの上昇モータによって、第1底板2a及び第2底板2bについてそれぞれ制御される。各々の上昇モータに連結した第1支持棒6a及び第2支持棒6bが回転することにより、第1上昇板7a及び第2上昇板7bが第1支持棒6a及び第2支持棒6bを軸に角度がつく。第1上昇板7a及び第2上昇板7bに角度がつくと第1底板2a及び第2底板2bが押し上げられ、上昇する機構となっている。
第1底板2a及び第2底板2bに各サイズの第1記録体Pa及び第2記録体Pbの束を積載したとき、各々の昇降手段によって第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bによって給送される位置までそれぞれの記録体の束を上昇させる。これにより、第1底板2a及び第2底板2bは各々の積載した第1記録体Pa及び第2記録体Pbの束の高さを制御でき、それぞれの記録体Pを各々独立したタイミングで繰り出すことができる。
【0022】
記録体給送手段としての第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bは、不図示のメインモータの駆動力で回転し、その回転制御は給紙クラッチの接続を制御することによってなされる。第1ピックアップローラ8aは第1給紙クラッチ9aによって、第2ピックアップローラ8bは第2給紙クラッチ9bによってそれぞれ回転制御がなされる。第1給紙クラッチ9a及び第2給紙クラッチ9bの接続を制御することによって、給紙カセット1に収容された各々の各サイズの記録体Pとしての第1記録体P1と第2記録体P2とをそれぞれ独立したタイミングで繰り出すことができる。
【0023】
また、第1底板2aと第2底板2bとの間には、3つ目の記録体支持部材である第3底板2cが備わっている。第3底板2cは、第1底板2a及び第2底板2bに対して連結または連結解除が可能であり、連結することにより他の記録体支持部材と一体で押し上げられる構成である。図2では第3底板2cは第1底板2aと連結しており、第1上昇板7aに第1底板2aが押し上げられると第3底板2cは連結している第1底板2aと一体で押し上げられる。
【0024】
なお、詳細は後述するが給紙カセット1は、収容する記録体Pの大きさを変更可能な構成である。給紙カセット1に収納された各々の各サイズの記録体Pをそれぞれ繰り出す際、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bからの給紙方向の力が働く位置が各サイズの記録体Pの中央部分でなく、中央部からずれた位置に力が働くと記録体Pを繰り出すときの左右の圧の違いにより、記録体Pはスキュー方向に回転し、斜め送りに搬送されてしまうおそれがある。その様な斜め送りを防止し、記録体Pを確実に搬送する為に、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bが回転軸の方向に、つまり記録体Pの幅方向に平行移動可能な機構が備えられている。第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bの位置を各サイズの記録体Pの中央部分付近まで平行移動することで、各サイズの転写紙中央部分からピックアップできる様になる。
【0025】
また、第1底板2a、第2底板2b及び第3底板2cの全てを連結して載置するような、サイズが大きい記録体Pを給送する場合には、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bのそれぞれの位置が記録紙Pの幅方向の中央部分から等距離になるように設定する。
【0026】
次に、収容する記録体Pの大きさに合わせた第1底板2a、第2底板2b及び第3底板2cの幅調整およびサイドフェンス部材3について詳しく説明する。
図3は、収容する記録体PがA2サイズであるときの給紙カセット1を示す。
給紙カセット1では、各底板は隣り合う底板と対向する幅方向端部にサイドフェンス部材3を備えている。具体的には、第1底板2aは第3底板2cと対向する幅方向端部に第1サイドフェンス3a1、3a2を備えている。第2底板2bは、第3底板2cと対向する幅方向端部に第2サイドフェンス3b1、3b2を備えている。また、第3底板2cは第1底板2aと対向する幅方向端部に第3サイドフェンス3c1、3c2を備え、第2底板2bと対向する幅方向端部に第4サイドフェンス3d1、3d2、3d3を備えている。これらのサイドフェンス部材3は、後で詳しく説明するように、底板と水平な状態になるように閉めて退避させ、底板と垂直な状態となるよう開くことで規制部材としてのサイドフェンスとしての機能を果たすことができる。
【0027】
また、第3底板2cには第1底板2aとの間を連結または連結解除する2つの第1仕切りロック4a1、4a2を備えており、第2底板2bとの間を連結または連結解除する2つの第2仕切りロック4b1、4b2を備えている。
【0028】
A2サイズを載置する場合は、第1仕切りロック4a1、4a2および第2仕切りロック4b1、4b2の全ての仕切りロックを連結状態にする。そして、第1サイドフェンス3a1、3a2、第2サイドフェンス3b1、3b2、第3サイドフェンス3c1、3c2および第4サイドフェンス3d1、3d2の全てを底板と水平な状態となるよう閉めることで退避する。さらに、第1エンドフェンス5a及び第2エンドフェンス5bはA2サイズの後端の位置に合わせる。そして、A2サイズの給紙を行う際には第1底板2a、第2底板2b及び第3底板2cを全て連結した状態で上昇させる。昇降制御としては、全て繋げた状態の底板を均一に上昇させる為、第1底板2a及び第2底板2bが同じ角度となるように第1上昇板7a及び第2上昇板7bの上昇角度を各々の上昇モータで調整して上昇させる。このとき、第3底板2cは、第1底板2a及び第2底板2bに連結されており、第1底板2a及び第2底板2bとともに上昇する。
【0029】
このように、A2サイズを載置する場合は、第1サイドフェンス3a1、3a2、第2サイドフェンス3b1、3b2、第3サイドフェンス3c1、3c2および第4サイドフェンス3d1、3d2の全てを底板と水平な状態となるよう閉める。また、第1エンドフェンス5a及び第2エンドフェンス5bはA2サイズの後端の位置に合わせる。各サイズの転写紙をセットした時に、このようなサイドフェンス部材を検知してすることで転写紙の横幅を検知し、エンドフェンス部材の位置を検知することで転写紙の縦幅を検知する。これにより、各サイズの転写紙をセットした時に、自動的に載置した転写紙のサイズがA2であることを検知することができる。
【0030】
さらに、転写紙のサイズを自動検知し、検知した転写紙のサイズに基づき第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bはそれぞれの位置が、A2サイズの記録紙Pの幅方向の中央部分から等距離になるように軸方向に平行移動する。そして、第1給紙クラッチ9aと第2給紙クラッチ9bとを同じタイミングで接続し、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bを同じタイミングで回転させることでA2サイズの転写紙を繰り出す。
【0031】
図4は、2束のA4サイズを第1記録体Pa及び第2記録体Pbとして載置するときの給紙カセット1の概略図である。
2束のA4サイズを載置する場合は、第1仕切りロック3a1、3a2は解除して第1底板2aと第3底板2cとの連結を解除する。第2仕切りロック4b1、4b2は連結状態にしてあり第2底板2bと第3底板2cとを連結させる。サイドフェンスについては、第1サイドフェンス3a1、3a2と第3サイドフェンス3c1、3c2を開いて第1底板2aと第3底板2cと垂直な状態とする。そして、第1底板3a上のA4サイズの第1記録体Paと第2底板2b及び第3底板2cの上に載置されるA4サイズの第2記録体Pbとの間を仕切り、端部を規制する。第2サイドフェンス3b1、3b2及び第4サイドフェンス3d1、3d2、3d3は閉めた状態にして、第2底板2bと第3底板2cとの上面にA2サイズの第2記録体Pbを載せることができる載置面を形成する。また、第1エンドフェンス5a及び第2エンドフェンス5bはA4サイズの後端の位置に合わせるように設置する。
【0032】
このような2束のA4サイズを収容する際の昇降制御としては、第1記録体Paと第2記録体Pbとの消費量の違いによって、第1記録体Paの束の底面を持ち上げる高さと、第2記録体Pbの束の底面を持ち上げる高さとは異なる。よって、各々の底板に対して第1上昇板7aと第2上昇板7bとの上昇角度を各々の上昇モータを別々制御する。このとき、第3底板2cは第2底板2bに連結されており、第2底板2bと一体的に上昇する。第1上昇板7aを備えた昇降手段は第1底板2aを昇降制御し、第2上昇板7bを備えた昇降手段は第2底板2bと第3底板2cとを昇降制御している。このように。第3底板2cを昇降制御する昇降手段を設けなくても、3枚の底板を用いて載置する記録体Pのサイズにあわせたレイアウトにする給紙カセットの昇降制御を底板の数よりも少ない2つの昇降手段で行うことができる。
【0033】
このように、2束のA4サイズを載置する場合は、第1サイドフェンス3a1、3a2および第3サイドフェンス3c1、3c2を底板2a、2cと垂直な状態となるよう開くことで規制部材としての機能を果たすようにする。また、第2サイドフェンス3b1、3b2および第4サイドフェンス3d1、3d2の全てを底板と水平な状態となるよう閉める。また、第1エンドフェンス5a及び第2エンドフェンス5bはA4サイズの後端の位置に合わせる。各サイズの転写紙をセットした時に、このようなサイドフェンス部材を検知してすることで転写紙の横幅を検知し、エンドフェンス部材の位置を検知することで転写紙の縦幅を検知する。これにより、各サイズの転写紙をセットした時に、自動的に載置した転写紙のサイズが2束のA4であることを検知することができる。
【0034】
さらに、検知した転写紙のサイズに基づき第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bの軸方向の位置を、A4サイズの第1記録体Pa及び第2記録体Pbの幅方向の中心をピックアップするように軸方向に平行移動する。そして、第1給紙クラッチ9aと第2給紙クラッチ9bとを接続し、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bを回転させる。これにより、2枚のA4サイズの転写紙を繰り出し、画像形成をおこなう。このような並列搬送により画像形成スピードをアップする。
【0035】
図5は、第1記録体PaとしてA3サイズを収容し、第2記録体PbとしてA5サイズを収容するときの給紙カセット1の概略図である。
A3サイズの第1記録体Paを収容するために第1仕切りロック4a1、4a2を連結状態にして、第1底板2aと第3底板2cとを連結させる。第2仕切りロック4b1、4b2は解除して第2底板2bと第3底板2cとの連結を解除する。サイドフェンスについては、第1サイドフェンス3a1、3b2及び第3サイドフェンス3c1、3c2は閉じた状態にして、第1底板2aと第3底板2cとの上面にA3サイズに第1記録体Paを載せることができる載置面を形成する。また、第2サイドフェンス3b1、3b2及び第4サイドフェンス3d1、3d2、3d3は開いて第2底板2bと第3底板2cと垂直な状態とする。そして、第2底板2b上のA5サイズの第2記録体Pbと第1底板2a及び第3底板2cの上に載置されるA3サイズの第1記録体Paとの間を仕切る規制部材とする。また、第1エンドフェンス5aはA3サイズの後端の位置に合わせ、第2エンドフェンス5bはA5サイズの後端の位置に合わせるように設置する。
【0036】
A3サイズとA5サイズとを収容する際の昇降制御としては、第1記録体Paと第2記録体Pbとの消費量の違いによって、第1記録体Paの束の底面を持ち上げる高さと、第2記録体Pbの束の底面を持ち上げる高さとは異なる。よって、各々の底板に対して第1上昇板7aと第2上昇板7bとの上昇角度を各々の上昇モータを別々制御する。このとき、第3底板2cは第1底板2aに連結されており、第1底板2aと一体的に上昇する。第2上昇板7bを備えた昇降手段は第2底板2bを昇降制御し、第1上昇板7aを備えた昇降手段は第1底板2aと第3底板2cとを昇降制御している。
【0037】
このようにA3サイズとA5サイズとを載置する場合は、第2サイドフェンス3b1、3b2および第4サイドフェンス3d1、3d2、3d3を、第2底板2bと第3底板2cと垂直な状態となるよう開くことで規制部材としての機能を果たすようにする。また、第1サイドフェンス3a1、3a2および第3サイドフェンス3c1、3c2の全てを底板と水平な状態となるよう閉める。また、第1エンドフェンス5aはA3サイズの後端の位置に、第2エンドフェンス5bはA5サイズの後端の位置に合わせる。各サイズの転写紙をセットした時に、このようなサイドフェンス部材を検知してすることで転写紙の横幅を検知し、エンドフェンス部材の位置を検知することで転写紙の縦幅を検知する。これにより、各サイズの転写紙をセットした時に、自動的に載置した転写紙のサイズがA3およびA5であることを検知することができる。
【0038】
さらに、検知した転写紙のサイズに基づき、第1ピックアップローラ8aはA3サイズの第1記録体Paの幅方向の中心をピックアップするように軸方向に平行移動する。また、検知した転写紙のサイズに基づき、第2ピックアップローラ8bはA5サイズの第2記録体Pbの幅方向の中心をピックアップするように軸方向に平行移動する。そして、第1給紙クラッチ9aと第2給紙クラッチ9bとを接続して、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8bを回転させる。これにより、A5サイズ、A3サイズの2枚の転写紙を給紙し、画像形成を行う。このような並列搬送により画像形成スピードをアップする。
【0039】
このような画像形成装置において、並列搬送される第1記録体Paまたは第2記録体Pbの搬送速度が変動してしまう場合がある。例えば、給紙カセット1から給紙される際に、サイズが大きい紙はサイズが小さい紙に比べスリップが大きくなり、サイズの大きい紙は搬送速度が遅くなりやすい。このような搬送速度の遅れにより、画像形成の開始が遅れ、画像形成スピ−ドが遅くなってしまう場合がある。そこで、本実施形態の画像形成装置では、レジストローラ22よりも上流において、第1記録体Paまたは第2記録体Pbの搬送速度を独立して変更できるようにしている。
【0040】
図6は、レジストローラ22よりも上流の搬送路18の概略構成をしめす側面図である。図8、9は、レジストローラ22よりも上流の搬送路18中を並列搬送される第1記録体Paと第2記録体Pbとの様子をあらわす正面図である。図6に示すように、搬送路18には、搬送ローラ20の直前に搬送センサ30、中間ローラ21の直前に中間センサ31、レジストローラ22の直前にレジストセンサ32を備えている。また、図8、9、10、11の搬送路18の正面図で示すように、搬送ローラ20は第1記録体Paを搬送する第1搬送ローラ20aと、第2記録体Pbを搬送する第2搬送ローラ20bとから構成される。また、中間ローラ21は、第1記録体Paを搬送する第1中間ローラ21aと、第2記録体Pbを搬送する第2中間ローラ21bとから構成される。第1搬送ローラ20aと第1中間ローラ21aとは、第1ピックアップローラ8aの機構と同様に、検知した第1記録体Paのサイズに基づき、第1記録体Paの幅方向の中心に軸方向に平行移動する。また、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ21bとは、第2ピックアップローラ8bの機構と同様に、検知した第2記録体Pbのサイズに基づき、第2記録体Pbの幅方向の中心に軸方向に平行移動する。そして、不図示のモータの駆動力で回転し、その回転制御は独立しておこなわれる。
【0041】
また、搬送センサ30、中間センサ31、レジストセンサ32も、第1搬送ローラ20aと第1中間ローラ21aに搬送される第1記録体Paの有無を検知する第1搬送センサ30a、第1中間センサ31a、第1レジストセンサ32aと、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ21bに搬送される第2記録体Pbの有無を検知する第2搬送センサ30b、第2中間センサ31a、第2レジストセンサ32aとからそれぞれ構成される。これらのセンサにて、第1記録体Paと第2記録体Pbの搬送速度を検知して、この検知結果に基づき第1記録体Paまたは第2記録体Pbの搬送速度に遅れが生じていると判断される場合は、送れている第1記録体Paまたは第2記録体Pbの搬送速度を変更する。
【0042】
以下、並列搬送される第1記録体Paと第2記録体Pbとの先端を揃えて並列に給送する同時並列給送モードを用いて詳しく説明する。同時並列給送モードは、並列搬送される第1記録体Paまたは第2記録体Pbとの先端を揃えて並列に給紙し、同じ搬送速度で先端がレジストローラ22のニップに突き当たるまで搬送する。レジストローラ22では、第1記録体Paと第2記録体Pbとの搬送は一時止められて待機させられる。そして、中間転写ベルト23上のトナー像と第1記録体Paと第2記録体Pbの先端との位置関係が所定の位置になるようタイミングをとって回転を開始するように制御される。このレジストローラ22の回転により、待機させられている第1記録体Paと第2記録体Pbとの先端を揃えて再び搬送を開始し、中間転写ベルト23と2次転写ローラ27との圧接部である2次転写位置に送り出される。このとき、第1記録体Paと第2記録体Pbとのどちらかの搬送速度が遅くなった場合、この遅れを取り戻すように補正する。
【0043】
図7は、同時並列給送モードで、第1記録体PaとしてA3サイズ、第2記録体PaとしてのA5サイズの異なるサイズの記録体を並列搬送した場合の各センサのタイミングチャートの一例である。図7において、上半分がA5サイズの第1記録体Paが各センサを通過するタイミングを示すものであり、下半分がA3サイズの第2記録体Pbが各センサを通過するタイミングを示すものである。図7から、A3サイズとA5サイズの記録体は、同時タイミングで給紙カセット1から給紙されるように制御されるが、A3サイズとA5サイズの通過タイミングを見ると、搬送センサ30aと搬送センサ30bでの遅れ差Aと、中間センサ30bと中間センサ30bでの遅れ差Bが発生している。すなわち、A3サイズとA5サイズの記録体は、同時タイミングで給紙カセット1から給紙されるように制御されたにもかかわらず、第1搬送ローラ20aと、第2搬送ローラ20bの位置で、A3サイズが遅れ差Aを生じている。そこで、遅れ差Aを埋めるように、第1記録体Paを搬送する第1搬送ローラ20aの回転速度を上げ、第1記録体Paの搬送速度を上げる。また、第1中間ローラ21aと、第2中間ローラ21bの位置では、まだA3サイズが遅れ差Bを生じている。そこで、遅れ差Bを埋めるように、第1記録体Paを搬送する第1中間ローラ21aの回転速度を上げ、第1記録体Paの搬送速度を上げる。この結果、レジストローラ22の位置では、A3サイズとA5サイズとの先端の差はほとんどなくなった状態となる。第2記録体Pbに関しては、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ21bの回転速度はそのままとする。このように、並列搬送される記録体の搬送速度を独立して変更可能とする。これにより、図8に示すように、A3サイズは第1搬送ローラ20a、第1中間ローラ21a突入時遅れを取っていたが、第1搬送ローラ20a、第1中間ローラ21aの回転速度を上げることで、図9に示すように、レジストローラ22に至るまでの間に徐々に遅れを取り戻す。そして、図11に示すようにレジストローラ22に突き当たって待機した状態では、遅れのない状態となるようにする。
【0044】
また、上述のように、第1ピックアップローラ8a及び第2ピックアップローラ8b、第1搬送ローラ20a及び第2搬送ローラ20b、第1中間ローラ21a及び第2中間ローラ21bとは、検知した記録体Pのサイズに基づき、記録体Pの幅方向の中心に軸方向に平行移動する。このように、記録体を給紙搬送するローラ部材は、各サイズの転写紙中央部分付近まで平行移動させるようにしているが、その僅かなズレによって記録体は斜め送りされてスキューしてしまう場合がある。このままの先端が傾斜した状態で転写位置に送り出されると、用紙先端画像ズレをおこす場合がある。そこで、図12に示すように、記録体Pを搬送ローラ20または中間ローラ21によりレジストローラ22に突き当てた後、数ミリのたるみを形成する。このたるみにより用紙先端のスキューによる傾斜を補正して、図11に示すように先端を揃える。すなわち、記録体Pを搬送する搬送ローラ20、中間ローラ21は、記録体をレジストローラ22に突き当てたるみを形成する突き当て手段としての機能を備えている。
【0045】
並列搬送される第1記録体Paおよび第2記録体Pbでは、図10に示すように斜め送りされた用紙は、レジストローラ22に突き当てその傾斜を補正することにより、図11にしめすように先端が揃う。これにより、用紙先端画像ズレを防ぐ。また、並列搬送される第1記録体Paおよび第2記録体Pbはサイズの大きさ等によりそのスキューのレベルが異なるため、それぞれのたるみ量を独立して変更するように、搬送ローラ20または中間ローラ21の駆動タイミングを調整する。
【0046】
さらに、レジストローラ22により記録体の先端を揃えて再び搬送を開始するタイミングを、遅れて搬送されたA3サイズの記録体にあわせたものとする。これにより、A5サイズとA3サイズの先端を確実に補正した後、再び搬送を開始して転写位置における画像先端ズレを防止することができる。
【0047】
以上、本実施形態では、本発明を第1記録体Paと第2記録体Pbとの先端を揃えて並列に給送し、同時に画像形成をおこなう同時並列給送モードを用いて説明したが、第1記録体Paと第2記録体Pbとを独立したタイミングで給送する独立並列給送モードにも適用可能である。この場合、レジストローラ22は、第1底板2a、第2底板2b、第3底板2cに対応するような、第1レジストローラ22a、第2レジストローラ22b、第3レジストローラ22cとに分割して構成されている。そして、第1底板2a、第2底板2b、第3底板2cの連結解除に伴い、搬送される記録体のサイズに合わせて第1レジストローラ22a、第2レジストローラ22b、第3レジストローラ22cが連動または独立して回転するように駆動される。このような独立並列給送モードでも、レジストローラ22前の記録体の搬送速度に遅れがある場合、第1搬送ローラ20aと第1中間ローラ20b、または、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ20bの回転速度は変更することで、並列搬送される記録体の搬送速度を独立して変更可能とする。これにより、画像形成スピードの遅れを防止することができる。
【0048】
また、本実施形態では、トナー像と記録体Pとの転写位置ズレを防止するために、記録体Pがレジストセンサ31によりレジストローラ22位置に達したことを確認してから感光体24Y,C,M,Kへの画像形成を開始するよう制御するもので、画像形成スピードの遅れを防止するものとして説明した。本発明は、これに限らず、画像形成スピードを優先し、記録体Pがレジストセンサ31に達するよりも前に、レジストローラ22に達するタイミングを予想して、感光体24Y,C,M,Kへの画像形成を開始することで、画像形成スピードの維持を優先するよう制御するものにも適用できる。この場合、並列搬送される第1記録体Pa及び第2記録体Pbのいずれかの搬送速度が変動してレジストローラ22まで達するタイミングが遅くなると、転写位置ズレや画像形成が停止を引き起こしてしまう。このような場合においても、第1搬送ローラ20aと第1中間ローラ21aとによりレジストローラ22まで搬送される第1記録体Paの搬送速度と、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ21bとによりレジストローラ22まで搬送される第2記録体Pbの搬送速度とをそれぞれ独立して変更可能とする。これにより、第1記録体Paまたは第2記録体Pbのいずれかに搬送速度の遅れがあっても、この遅れをレジストローラ22に達するまでに補正することができる。そこで、搬送速度の遅れに起因する転写位置ズレ画像形成が停止を防止することができる。
【0049】
以上、本実施形態によれば、第1搬送ローラ20aと第1中間ローラ21aとによりレジストローラ22まで搬送される第1記録体Paの搬送速度と、第2搬送ローラ20bと第2中間ローラ21bとによりレジストローラ22まで搬送される第2記録体Pbの搬送速度とをそれぞれ独立して変更可能とする。これにより、第1記録体Paまたは第2記録体Pbのいずれかに搬送速度の遅れがあっても、この遅れをレジストローラ22に達するまでに補正することができる。そこで、搬送速度の遅れに起因する画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止を防止することができる。
また、第1記録体Paと第2記録体Pbとが並列搬送される搬送路18に、第1記録体Paの有無を検知する第1搬送センサ30a、第1中間センサ31a、第1レジストセンサ32aと、第2記録体Pbの有無を検知する第2搬送センサ30b、第2中間センサ31a、第2レジストセンサ32aとをそれぞれ設け、これらのセンサの検知結果に基づき第1記録体Paと第2記録体Pbの搬送速度の遅れを検出し、検出結果に基づき各記録体の搬送速度をそれぞれ独立して変更する。これにより、実際の遅れに基づく補正が可能となり、レジストローラ22に達するまでの効果的に補正することができる。よって、画像形成スピードの遅れ、転写位置ズレ、画像形成停止を効果的に防止できる。
また、第1記録体Paを第1搬送ローラ20a、第1中間ローラ21aにより、第2記録体Pbを第2搬送ローラ20b、第2中間ローラ21bにより、レジストローラ22に突き当ててたるみを形成する。これにより、第1記録体Paと第2記録体Pbのスキューによる傾斜を補正し、用紙先端画像ズレを防止する。
また、第1搬送ローラ20a、第1中間ローラ21a、第2記録体Pbを第2搬送ローラ20b、第2中間ローラ21bの駆動タイミングを調整し、第1記録体Pa、第2記録体Pbのたるみ量がそれぞれ独立して変更可能とする。これは、並列搬送される第1記録体Paおよび第2記録体Pbはサイズの大きさ等によりそのスキューのレベルが異なるため、それぞれのたるみ量を独立して変更するように、傾斜を効率よく補正する。
また、給紙カセット1から第1記録体Paと第2記録体Pbとの先端を揃えて並列に給送し、レジストローラ22にて第1記録体Paと第2記録体Pbとの先端を揃えて再び搬送を開始し、中間転写ベルト23と2次転写ローラ27との圧接部である2次転写位置に送り出す同時並列給送制御を行う。この同時並列給送制御では、搬送速度が最も遅くなった記録体に合わせて、並列搬送される全ての記録体の画像形成スピードが遅くなってしまう。そこで、第1記録体Paまたは第2記録体Pbのいずれかに搬送速度の遅れがあっても、この遅れをレジストローラ22に達するまでに補正することができ、画像形成スピード全体が遅くなることを防止できる。
また、レジストローラ22により第1記録体Paと第2記録体Pbの先端を揃えて再び並列に搬送し始めるタイミングを、第1搬送センサ30a、第1中間センサ31a、第1レジストセンサ32aと、第2搬送センサ30b、第2中間センサ31a、第2レジストセンサ32aとの検知結果に基づき搬送速度の遅れを検出された記録体に合わせるよう制御する。これにより、搬送速度の遅れを検出された方の先端を確実に補正した後、再び搬送を開始して転写位置における画像先端ズレを防止することができる。
また、一体で押し上げられる記録体底面支持部材の幅を、収容する記録体の幅に適した幅に調節可能とする。これにより、容易に異サイズの記録体の並列搬送を可能とできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略図。
【図2】給紙カセットの斜視図。
【図3】収容する記録体がA2サイズである時の給紙カセットの概略図。
【図4】収容する記録体が2束のA4サイズである時の給紙カセットの概略図。
【図5】収容する記録体がA3サイズとA5サイズである時の給紙カセットの概略図。
【図6】レジストローラよりも上流の搬送路の概略構成をしめす側面図。
【図7】同時並列給送モードで記録体を並列搬送した時の各センサのタイミングチャートの一例を示す図。
【図8】レジストローラよりも上流の搬送路中を並列搬送される第1記録体Paと第2記録体Pbとの様子をあらわす正面図。
【図9】レジストローラよりも上流の搬送路中を並列搬送される第1記録体Paと第2記録体Pbとの様子をあらわす正面図。
【図10】レジストローラ部でのスキューによる傾斜の説明図。
【図11】レジストローラ部でのスキューによる傾斜が補正されたものの説明図。
【図12】記録体Pをレジストローラに突き当ててたるみを形成する説明図。
【符号の説明】
【0051】
1 給紙カセット
2 底板
2a 第1底板
2b 第2底板
2c 第3底板
3 サイドフェンス部材
3a1、3a2 第1サイドフェンス
3b1、3b2 第2サイドフェンス
3c1、3c2 第3サイドフェンス
3d1、3d2、3d3 第4サイドフェンス
4a1、4a2 第1仕切りロック
4b1、4b2 第2仕切りロック
5a 第1エンドフェンス
5b 第2エンドフェンス
6a 第1支持棒
6b 第2支持棒
7a 第1上昇板
7b 第2上昇板
8 ピックアップローラ
8a 第1ピックアップローラ
8b 第2ピックアップローラ
9a 第1給紙クラッチ
9b 第2給紙クラッチ
10 ロックピン
18 搬送路
20 搬送ローラ
20a 第1搬送ローラ
20b 第2搬送ローラ
21 中間ローラ
21a 第1中間ローラ
21b 第2中間ローラ
22 レジストローラ
23 中間転写ベルト
24Y,C,M,K 感光体
25 定着装置
26 排紙ローラ
27 2次転写ローラ
28Y,C,M,K 1次転写ローラ
30 搬送センサ
30a 第1搬送センサ
30b 第2搬送センサ
31 中間センサ
31a 第1中間センサ
31b 第2センサセンサ
32 レジストセンサ
32a 第1レジストセンサ
32b 第2レジストセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載された複数束の記録体を該記録体の給送方向に垂直な幅方向に並列に収容可能な給紙カセットと、該幅方向に並列に配置され該複数束の記録体の底面をそれぞれ支持する複数の記録体底面支持部材と、該記録体底面支持部材を押し上げ該複数束の記録体の最上部を給紙可能な位置まで上昇させる記録体昇降手段と、該記録体昇降手段により押し上げられた該複数束の記録体の最上位の記録体をそれぞれ給送するため該幅方向に並列に配置される複数の記録体給送部材と、該複数の記録体給送部材によりそれぞれ給送された複数の記録体の先端を一旦停止させ、トナー像を担持した像担持体と転写手段との対向位置である転写部に向けて該像担持体への画像形成のタイミングに合わせて再び搬送するレジストローラとを備え、該複数の記録体を給送方向に垂直な幅方向に並べて搬送する並列搬送する画像形成装置において、
上記複数の記録体が上記複数の記録体給送部材により上記レジストローラまで搬送される搬送速度を、それぞれ独立して変更する搬送速度変更手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、上記複数の記録体が上記複数の記録体給送部材により上記レジストローラまで搬送される搬送路に、該複数の記録体の有無を検知する記録体センサをそれぞれ設け、該記録体センサの検知結果に基づき該複数の記録体の搬送速度の遅れを検出し、該検出結果に基づき上記搬送速度変更手段が該複数の記録体の搬送速度をそれぞれ独立して変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、上記並列搬送される複数の記録体を上記レジストローラに突き当ててたるみを形成する突き当て手段をそれぞれ設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の画像形成装置において、上記複数の突き当て手段により上記並列搬送される複数の記録体が形成するたるみ量をそれぞれ独立して変更とするたるみ量変更手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の画像形成装置において、上記複数の記録体を並列に収容した状態で、上記複数の記録体給送部材により複数の記録体の先端を揃えて並列に給紙し、上記レジストローラにより一旦搬送を停止した該複数の記録体の先端を揃えて再び並列に搬送する同時並列給送制御をおこなうことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、上記レジストローラにより上記複数の記録体の先端を揃えて再び並列に搬送し始めるタイミングを、上記記録体センサの検知結果に基づき搬送速度の遅れを検出された記録体に合わせるよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、上記一体で押し上げられる記録体底面支持部材の幅を、収容する記録体の幅に適した幅に調節可能であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−105796(P2008−105796A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289434(P2006−289434)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】