説明

画像形成装置

【課題】廃液タンクの構成を複雑にせず、廃液タンクの寿命を長くすることを可能とする。
【解決手段】ラック215を廃液タンク221のレール部222で直動可能に配置し、廃液タンク211には、維持ユニット内の吸引ポンプを通った廃液が排出され、廃液タンク211の入り口223を通り、廃液タンク211内に粘度の高いインクを蓄積する。この粘度の高いインク101は廃液タンク211の中で柱状に堆積される。搬送ベルト52を印字時と逆方向に回転させると、インクかき取り部材216が動き、柱状に積層した増粘インクを廃液タンクで倒し、奥へ移動させる。廃液タンク211に入った廃液インクは、時間と共に増粘し、かき取りにくくなるので、インクかき取り部材216を移動させるタイミングは、メンテナンス直後またはソフトカウントであらかじめ設定した閾値を超えたときが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、液体の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行うものがある。
【0003】
なお、本発明においては、「画像形成装置」とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(液体を媒体に付着させる)ことをも意味する。また、「インク」とは、厳密な意味でのインクに限るものではなく、インクと称されるもの、レジスト、DNA試料など、上記の意味での画像形成を行うことができる液体の総称として用いる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、インクを記録ヘッドに供給するためにインクカートリッジがよく用いられている。こうしたインクカートリッジの交換の手間を減らすためにカートリッジ装着部に着脱自在に装着され、供給チューブを介して記録ヘッド側のサブタンクへインクを供給することができるようにされている。
【0005】
また、記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良の状態となり、記録不良を起こすという問題を抱えている。
【0006】
そこで、非記録時に記録ヘッドのノズルを封止するためのキャッピング手段と、必要に応じてノズル形成面を清掃するワイピング部材が備えられ、また、記録に寄与しない空吐出を行なう空吐出受けを備えている。キャッピング手段は、ノズルのインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズルに目詰まりなどが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズルからインクを吸引排出(ヘッド吸引)させてノズルの目詰まりを解消する機能をも備えている。
【0007】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行なうインクの強制的な吸引排出処理は、クリーニング動作と呼ばれており、例えば記録装置の長時間の休止後に記録を再開する場合や、記録中の所定間隔ごとや、ユーザーが記録状態の不良を認識してクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、記録ヘッドからインクを排出させた後にゴムなどの弾性部材からなるワイピング部材により、記録ヘッドのノズル面(ノズルが形成された面)を払拭する清浄化動作が伴われる。また、記録中には所要のタイミングで空吐出が行なわれる。
【0008】
そして、上述したクリーニング動作に伴ってキャッピング手段内に排出された記録ヘッドからの廃液は、吸引ポンプの駆動により廃液タンク(廃液収容容器などとも称する。)に廃棄することができるように構成されている。この廃液タンクには、一般に多孔質材料により構成された廃液吸収材(吸収体)が収納されており、この廃液吸収材によって廃液を吸収した形で保持するようになされている。
【0009】
しかしながら、記録速度の高速化によってインクには速乾燥性などが求められることから、高粘度(5cP以上を高粘度と定義する。)の顔料系インクが使用されるようになっている。このような顔料濃度が高い高粘度インクなど、インクの増粘が著しい廃インクを収容する廃液タンクにおいては、廃液タンク内に投入された廃インクが半固形化し、堆積物として堆積する現象が発生している。
【0010】
この場合、一度インクの増粘層ができると、その上に導入される廃インクは増粘、固着が生じやすくなり、山形状の堆積物が形成され、吸収体として、画像形成装置の寿命にわたって発生しうる廃インクを吸収できるだけの大きさを備えていても、廃液投入口付近の吸収体自体がインクの吸収能力を失ってしまい、あるいは、山形状で形成されていく堆積物が、維持回復機構からの廃液投入口から突き出してしまうといった問題が生ずる。
【0011】
このような問題に対処するために、特許文献1に記載されているように、廃液タンク内で廃液による堆積物が所要の高さになったことを検知する満タン検知手段を備え、堆積物が廃液投入口から突出するまでに交換を促せるようにしたものがある。また、特許文献2に記載されているように、廃インク貯蔵庫の中に導入したインクを、被記録材収納庫の出し入れを駆動源として掻き取るインクかきとり手段を備えるものがある。この場合、給紙カセットと廃液タンクのかきとり手段との間の動力伝達は磁石と磁性体によって行う構成としているものがある。さらに、特許文献3に記載されているように、記録手段をシリアル移動するためのキャリッジを有し、該キャリッジの移動によりインク除去手段を作動させて増粘インクをかき取る構成としているものもある。
【0012】
さらに、本願発明者は、装置本体に対して少なくとも進入及び退出される進退部材と、廃液タンクの廃液投入口内から内部に進入された状態で廃液の堆積物を崩す部材と、進退部材の進入及び退出に連動して移動する連結部材と、を備え、進退部材の進入及び退出に連動して堆積物を崩す部材による崩し動作を行わせる構成としているものがある。
【0013】
【特許文献1】特開2007−076339号公報
【特許文献2】特開2007−152738号公報
【特許文献3】特願2001−293887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1に構成では堆積物の満タン検知は可能になるが、廃液タンクの寿命そのものを伸ばすことができない。また、特許文献2の装置のように給紙カセットと廃液タンク間の動力伝達として磁石と磁性体を配置し、磁力で誘導させる構成では、給紙カセット内に磁性体又は磁石を配置し、廃液タンク内に磁石又は磁性体を配置することになり、次のような課題がある。つまり、磁石と磁性体の間には、少なくとも10mm以上の隙間ができることから、パーミアンス係数が小さく、十分な力の伝達ができないか、高価な強力な磁石が必要となる。このような強力な磁石を使用するとなると、外部への漏洩磁束の影響も大きくなる。さらに、給紙カセットと廃液タンクの間には、鉄板等の磁性材料の構造材をレイアウトすることができなくなるという制約もある。また、インクかき取り機構が廃液タンク内の部品として配置されているため、廃液タンク交換時に一緒に交換されてしまうことになり、交換部品である廃液タンクのコストが高くなる。
【0015】
また、特許文献3の装置等のようにキャリッジの移動もしくは、装置本体に対して少なくとも進入及び退出される進退部材と連動して増粘インクをかき取るとなると、増粘インクをかき取るタイミングに制限がある為、メンテナンス動作(特にヘッド吸引動作)直後等の粘度が低い状態で、増粘インクをかき取ることが不可能であり、十分にかき取ることが困難となる場合がある。
【0016】
本発明は上記の課題にかんがみてなしたものであり、廃液タンクの構成を複雑にすることなく、廃液タンク内で廃液の堆積物を崩して廃液タンクの寿命を長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の画像形成装置は、印刷用紙等の被記録部材に対してインクを吐出するための記録ヘッド、該記録ヘッドから排出された前記インクの廃液を収容する廃液タンク、印刷用紙等の被記録部材を搬送する副走査駆動源とを備えた画像形成装置において、前記廃液タンク内の増粘インクをかき取るかき取り部材を備え、前記副走査駆動源が被記録部材を搬送する方向と逆方向に駆動したときに、前記副走査駆動源で前記かき取り部材に動力を伝達することにより前記かき取り部材によって前記廃液タンク内の増粘インクをかき取ることを特徴とする。
【0018】
請求項2に係るものは、印刷用紙等の非記録部材にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから排出された前記インクの廃液を収容する廃液タンクとを備えた画像形成装置において、前記廃液タンク内の増粘インクをかき取るかき取り部材を備え、独立したモータにより前記かき取り部材を駆動することにより前記かき取り部材によって前記廃液タンク内の増粘インクをかき取ることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記記録ヘッドのノズルから記録液を吸引するための維持回復機構を備え、該維持回復機構の維持回復動作中は被記録部材の搬送を行わず、該維持回復機構の維持回復のタイミングで前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする。すなわち、維持回復動作中は被記録部材の搬送はしないから可能であり、キャリッジは動かせないのでキャリッジ連動では不可能であるようにする。
【0020】
請求項4に係るものは、請求項3に記載の画像形成装置において、前記維持回復機構は、前記記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピングして前記ノズルから記録液を吸引するものであり、該ヘッド吸引動作完了後の指定時間内に前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする。
【0021】
請求項5に係るものは、請求項3に記載の画像形成装置において、前記維持回復機構は、前記記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピングして前記ノズルから記録液を吸引するものであり、該吸引動作完了直後に前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする。
【0022】
請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記インクの廃液の量をソフトウェアを用いてカウントし、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで前記増粘インクのかき取り動作を実施することを特徴とする。
【0023】
請求項7に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記廃液タンク内の増粘インクの状態をセンサにて読み取り、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで前記増粘インクのかき取り動作を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、廃液タンクの構成を複雑にすることなく、廃液タンク内で廃液の堆積物を崩して廃液タンクの寿命を長くすることを可能とし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明に係る画像形成装置の一実施例について説明する。図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)は第1の実施例における廃液タンク周辺の模式図で、図3は画像形成装置全体の斜視図である。
【0027】
図3の画像形成装置50において、用紙カセット56に入れた用紙等の被記録部材は、搬送ベルト52によって搬送される。搬送ベルトは駆動源(DCモータ)55によって軸54を回転させ、搬送ベルト52を回転させる。用紙等の被記録部材に印字させる時は、軸54を矢印57方向に回転させる事によって、用紙等の被記録部材を搬送させながら、キャリッジ51内のヘッドによってインクを吐出する事によって印字が行なわれる。通常の印字状態では、軸54は矢印57の方向にしか回転させない。
【0028】
図3のキャリッジ51の位置はホームポジションであり、この状態でのキャリッジ51の下には維持ユニット(メンテナンスユニット)が配置されており、さらにその下に廃液タンクが配置されている。
【0029】
図1において、図3の軸54の動力は、ギヤ等で図1の軸100に伝達される(軸54=軸100でも可)。軸100の回転力は、ギヤ付きワンウエイクラッチ210によって、矢印1方向に回転した時のみ、動力が伝達するワンウエイクラッチが内蔵されている。図3で、軸54が矢印57とは逆方向に回転させた時に、軸100時点で、回転方向が矢印1の方向に回転する事となるので、印字時に、用紙等の被記録部材が搬送ベルト52によって搬送される方向と逆方向に回転させた時に、軸100の回転方向が1の方向となり、ギヤ211以降に動力が伝達されるようになっている。この様にして伝達された動力によって、1周のうちにギヤ部と相手ギヤから逃げる形状部があるギヤ213に回転力が伝達される。
【0030】
ラック215は廃液タンク221のレール部222によって、直動可能に配置されており、ギヤ213によって、ラック215が矢印10方向へと移動される。ラック215はかき取り部材216が付けられており、廃液タンク221のラック215のレール部222には上面に横長の穴224が空いており、穴224を通って、ラック215からかき取り部材216まで繋がっている。ラック215が矢印10方向へ移動すると、圧縮コイルバネ217が圧縮されていく(図2状態)。ラック215及びかき取り部材216が矢印10方向へ行ききると、ギヤ216のギヤ部とラック215が離れ、今度はバネ217の反力によって、ラック215及びかき取り部材216によって、つまり、搬送ベルト52を印字時と逆方向(矢印57と逆方向)に回転させると、インクかき取り部材216が矢印10方向に直動し、矢印10方向に行ききったら、(図2の状態)、バネ217の反力で図1の状態に戻される。
【0031】
ところで、廃液タンク211には、維持ユニット(メンテナンスユニット)内の吸引ポンプを通った廃液が排出され、廃液タンク211の入り口223を通り、廃液タンク211内に粘度の高いインクを蓄積する。この粘度の高いインクは廃液タンク211の中で柱状に堆積される。図中101は粘度の高いインクを示す。搬送ベルト52を印字時と逆方向(矢印57と逆方向)に回転させると、インクかき取り部材216が動き、柱状に積層した増粘インクを廃液タンクで倒し、奥へ移動させる。廃液タンク211に入った廃液インクは、時間と共に増粘し、書き取りにくくなるので、インクかき取り部材216を移動させるタイミングは、メンテナンス直後が好ましい。また、ソフトカウントで、あらかじめ設定した閾値を超えたら、インクかき取り部材216を移動させるという方法も好ましい。
【0032】
また、特許文献1に記載のセンサによって、増粘インクの柱の高さを検知し、あらかじめ設定した高さ制限を越えたら、インクかき取り部材216を移動させる方法も良い。
【実施例2】
【0033】
第1の実施例に記載した廃液タンク周辺の構成に対して、ラック215を直動させるためのギヤ213を回転する動力として、独立したモータ(例えばDCモータやステッピングモータ)を使用し、ギヤ210やギヤ211の無い構成とする。その他の構成や動き、かき取り部材216を移動させるタイミングは、第1の実施例と同様である。
【0034】
上述の二つの実施例では、副走査駆動元でかき取り部材に動力を伝達するため、安価で且つ所望のタイミングでインクをかき落し可能であり、増粘インクが更に増粘する前に、かき取ることが可能なので廃液タンクの寿命を長くすることができる。また、維持回復のタイミングで廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施するので、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。また、ヘッド吸引動作完了後指定時間内に廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施するので、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。また、吸引動作完了直後に廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施するので、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。そして、廃液量をソフト的にカウントし、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで、増粘インクをかき取る動作を実施するので、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。増粘インクの状態をセンサにて読み取り、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで増粘インクをかき取る動作を実施してもよく、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。さらに、独立したモータにより、かき取り部材を駆動させるので、増粘インクが更に増粘する前に、かき取る事が可能なので廃液タンクの寿命を長くする事ができる。
【0035】
なお本発明に用いられる記録液は色材として、顔料、染料のいずれでも用いることができ、混合して用いることもできる。
<顔料>
本発明の記録液に用いる顔料として特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これら顔料は複数種類を混合して用いても良い。
【0036】
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
【0037】
無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0038】
これらの顔料の粒子径は0.01〜0.30μmで用いることが好ましく、0.01μm以下では粒子径が染料に近づくため、耐光性、フェザリングが悪化してしまう。また、0.30μm以上では、吐出口の目詰まりやプリンタ内のフィルターでの目詰まりが発生し、吐出安定性を得ることができない。
【0039】
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学製)、Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(以上、コロンビア製)、Regal400R、同330R、同660R、MogulL、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(以上、キャボット製)、カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(以上、デグッサ製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
カラー顔料の具体例を以下に挙げる。
有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。
【0041】
色別により具体的には以下のものが挙げられる。
イエローインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0042】
マゼンタインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0043】
シアンインクに使用できる顔料の例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0044】
又、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0045】
以上に挙げた顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることでインクジェット用記録液とすることができる。このような有機顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
【0046】
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用記録液に用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
【0047】
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得られるため好ましい組み合わせである。その理由は明かでないが、以下のように考えられる。
【0048】
高分子分散剤を含有することで記録紙への浸透が抑制される。その一方で、高分子分散剤を含有することで自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができる。そのため、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
【0049】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0050】
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
【0051】
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、従来公知のすべての方法を用いることが可能である。従来公知の方法として、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などが挙げられる。具体的には、
・界面重合法(2種のモノマーもしくは2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法);
・in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法);
・液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法);
・コアセルベーション(相分離)法(芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法);
・液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法);
・融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法);
・気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法);
・スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法);
・酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し色材と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性または酸性にし、有機化合物類を析出させ色材に固着せしめた後に中和し分散させる方法);
・転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と色材とを含有する混合体を有機溶媒相とし、前記有機溶媒相に水を投入するかもしくは、水に前記有機溶媒相を投入する方法)、などが挙げられる。
【0052】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
【0053】
これらの中ではカルボン酸基またはスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0054】
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料またはカーボンブラックなどの水不溶性の色材に対して1重量%以上20重量%以下である。有機高分子類の量を上記の範囲にすることによって、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の色材に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。
【0055】
すなわち、色材の一部が実質的に被覆されずに露出しているために発色性の低下を抑制することが可能となり、また、逆に、色材の一部が露出せずに実質的に被覆されているために顔料が被覆されている効果を同時に発揮することが可能となるのである。また、本発明に用いる有機高分子類の数平均分子量としては、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。ここで「実質的に露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味するものである。
【0056】
さらに、色材として自己分散性の顔料である有機顔料または自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するために、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので本発明にはより好ましい。
【0057】
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
【0058】
マイクロカプセル化の方法として転相法または酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能または溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材との複合物または複合体、あるいは自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材、硬化剤およびアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0059】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料または自己分散型カーボンブラックなどの色材と、水性媒体中で混練する工程および酸性化合物でpHを中性または酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部または全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
【0060】
また、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離または濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水および必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とする本発明に用いることができる記録液を得る。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
【0061】
このように樹脂被覆することによって顔料が印刷物にしっかりと付着することにより、印刷物の擦過性を向上させることができる。
<染料>
本発明の記録液に用いられる染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色材と混合して用いても良い。これら着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112

C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17 C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97 C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
【0062】
<染料・顔料共通の添加剤、物性>
本発明の記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
【0063】
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0064】
前記化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0065】
本発明の記録液の表面張力は、20〜60dyne/cmであることが好ましく、被記録材との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50dyne/cmであることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の記録液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることがさらに好ましい。
【0067】
本発明の記録液のpHは3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることがさらに好ましい。
【0068】
本発明の記録液は防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としてはベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0069】
本発明の記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
【0070】
本発明の記録液は酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。
【0071】
本発明の記録液はpH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施例における廃液タンク周辺の模式図
【図2】第1の実施例における廃液タンク周辺の模式図
【図3】画像形成装置全体の斜視図
【符号の説明】
【0073】
50 画像形成装置
51 キャリッジ
52 搬送ベルト
54 軸
55 駆動源(DCモータ)
56 用紙カセット
100 軸
210 ギヤ付きワンウエイクラッチ
211、213 ギヤ
215 ラック
216 かき取り部材
217 圧縮コイルバネ
221 廃液タンク
222 レール部
223 廃液タンクの入り口
224 横長の穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙等の被記録部材に対してインクを吐出するための記録ヘッド、該記録ヘッドから排出された前記インクの廃液を収容する廃液タンク、印刷用紙等の被記録部材を搬送する副走査駆動源とを備えた画像形成装置において、
前記廃液タンク内の増粘インクをかき取るかき取り部材を備え、
前記副走査駆動源が被記録部材を搬送する方向と逆方向に駆動したときに、前記副走査駆動源で前記かき取り部材に動力を伝達することにより前記かき取り部材によって前記廃液タンク内の増粘インクをかき取ることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
印刷用紙等の非記録部材にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから排出された前記インクの廃液を収容する廃液タンクと
を備えた画像形成装置において、
前記廃液タンク内の増粘インクをかき取るかき取り部材を備え、
独立したモータにより前記かき取り部材を駆動することにより前記かき取り部材によって前記廃液タンク内の増粘インクをかき取ることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記記録ヘッドのノズルから記録液を吸引するための維持回復機構を備え、
該維持回復機構の維持回復動作中は被記録部材の搬送を行わず、
該維持回復機構の維持回復のタイミングで前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記維持回復機構は、前記記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピングして前記ノズルから記録液を吸引するものであり、
該ヘッド吸引動作完了後の指定時間内に前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記維持回復機構は、前記記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピングして前記ノズルから記録液を吸引するものであり、
該吸引動作完了直後に前記廃液タンク内の増粘インクをかき取る動作を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記インクの廃液の量をソフトウェアを用いてカウントし、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで前記増粘インクのかき取り動作を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記廃液タンク内の増粘インクの状態をセンサにて読み取り、あらかじめ設定した閾値を超えるタイミングで前記増粘インクのかき取り動作を実施することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−154465(P2009−154465A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337096(P2007−337096)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】