説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置側で画像形成動作を中止した場合に、中止対象のプリントデータの次に受信した新たな別個のプリントデータの画像形成のための処理を早期に開始する。
【解決手段】ユーザによりストップクキーにキャンセル指示が入力された場合、キャンセル対象設定部2081が、この時点で通信部が受信中のプリントデータのポート番号を、キャンセル対象とするプリントデータのポート番号として設定し、上書き対象設定部2082は、データ受信バッファ201aに格納されるプリントデータであって、キャンセル対象のポート番号を有するプリントデータを上書き対象のプリントデータとして設定する。一方、メモリアクセス制御部2083は、受信したプリントデータを、第1バッファにおいて、上書き対象に設定されたプリントデータが格納された上書き対象領域に上書きして格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピュータから受信したプリントデータについての画像形成動作を、画像形成装置側でキャンセルするときの画像形成装置における当該プリントデータの取り扱いに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホストコンピュータと画像形成装置とが通信可能に構成され、ホストコンピュータから送信されるプリントデータを画像形成装置が受信し、当該画像形成装置が前記プリントデータに基づき画像形成動作を行うシステムが広く知られている(例えば下記特許文献1参照)。また、例えば下記特許文献2,3には、この種のシステムにおいて、前記画像形成装置による画像形成動作をその途中で中止(キャンセル)する場合の技術が提案されている。
【0003】
下記特許文献2には、プリンタに備えられているパネルスイッチでのスイッチの押下に応答して、プリンタがステータス情報にデータキャンセル要求を付加してホストに送信(通知)し、ホストは、プリンタからのキャンセル要求に応じてデータを削除する技術が開示されている。
【0004】
また、従来では、前記通知後に、ホストコンピュータが画像形成動作(ジョブ)の中止命令を示す中止データを生成して、該中止データを付加したプリントデータを画像形成装置に送信し、画像形成装置は前記中止データが付加されたプリントデータを破棄する技術も知られている。
【0005】
さらに、下記特許文献3には、複数のプリントデータを連続或いは同時並行に受信したプリントデータをHDD等の記憶媒体上に格納して順次プリント出力していくスプール機能を有し、スプールされたプリントデータを受信開始順或いは受信終了順にスプールジョブとして管理する画像形成装置において、プリントデータがスプールされたままの状態で電源をオフすると、次回電源オン後に前回電源オフ時のスプールジョブを継続して実行するスプールジョブ保存機能を備えたものが開示されている。また、同公報には、「プリントデータの多くはページ記述言語(PDL)や電子文書フォーマットによるものであることが多く、ページ記述言語データや電子文書を解釈しビットマップデータに変換するRIP処理を行う必要がある。このとき、プリントデータによっては不正な命令あるいはフォーマットが含まれているためにRIP処理を行うプログラムが応答しない状態に陥り、永遠に出力がされないといった状況が生まれることがある。RIP処理のキャンセル手段を備えた画像形成装置では、当該ジョブをキャンセルできる場合もあるが、RIP処理を行うプログラムの実行状態によってはキャンセルさえもできないことがある。こうなってしまった場合の復帰手段として、電源OFF/ON動作を行うことが一般的な慣習として認知されている。しかし、前述のスプールジョブ保存機能を備えた画像形成装置では、電源OFF/ON後に再度同じプリントデータのRIP処理が再開される為に、また同じ状態に陥ってしまう。」と記載されている。
【特許文献1】特開2001−347731号公報
【特許文献2】特開2004−130784号公報
【特許文献3】特開2006−150891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置側で画像形成動作の中止指示が入力された旨の通知をホストコンピュータが受け取っても、その通知を画像形成装置から受けるまでに送信準備を行ったプリントデータについては、ホストコンピュータが画像形成装置に送信する。このとき、画像形成装置は、ホストコンピュータから送信されるプリントデータを複数回に分けて分割受信する。このホストコンピュータが、前記中止データを、上記送信準備済みのプリントデータの最後に付加して画像形成装置に送信する場合、ホストコンピュータから複数回に分けて送信するプリントデータのうち、最後に送信されるプリントデータに前記中止データが付加されるが、この最後に送信されたプリントデータを画像形成装置が受信してはじめて画像形成動作の中止処理がなされる。
【0007】
このため、上記プリントデータを分割受信する場合の該プリントデータの分割数が多くなると、前記中止処理が開始されるまでに比較的長い時間を要し、特に、中止対象のプリントデータの次に、画像形成動作すべきプリントデータが存在する場合には、そのプリントデータに係る処理に移行するのに比較的長い時間を要することになる。
【0008】
この場合、前記引用文献3に記載されているように、画像形成動作を中止させる手段として画像形成装置の電源をオフする手段が考えられるが、前述のスプールジョブ保存機能を備えた画像形成装置では、次回の電源オン後に、前回の電源オフで中断された画像形成動作が継続して実行されることとなり、前記画像形成動作を中止させることができない。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、画像形成装置側で画像形成動作を中止した場合に、中止対象のプリントデータの次に受信した新たな別個のプリントデータについての画像形成のための処理を早期に開始することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、送信装置から送信されるプリントデータを受信する通信部と、
前記通信部により受信したプリントデータに基づいて画像形成動作を実行する画像形成部と、
前記通信部により受信したプリントデータを一時的に格納する第1バッファと、
前記画像形成部による画像形成動作を中止するキャンセル指示がユーザから入力される入力操作部と、
前記入力操作部に前記キャンセル指示が入力された場合、当該キャンセル指示が入力された時点で前記通信部が前記送信装置から受信しているプリントデータのポート番号を、キャンセル対象とするプリントデータのポート番号として設定するキャンセル対象設定部と、
前記第1バッファに格納されるプリントデータであって、前記キャンセル対象設定部により設定されたポート番号を有するプリントデータを、上書き対象に設定する上書き対象設定部と、
前記通信部に受信されたプリントデータを、前記第1バッファにおいて、前記上書き対象に設定されたプリントデータが格納された上書き対象領域に上書きするメモリアクセス制御部と
を備える画像形成装置である。
【0011】
この発明によれば、ユーザにより入力操作部にキャンセル指示が入力された場合、キャンセル対象設定部が、この時点で通信部が受信中のプリントデータのポート番号を、キャンセル対象とするプリントデータのポート番号として設定し、上書き対象設定部は、第1バッファに格納されるプリントデータであって、前記キャンセル対象のポート番号を有するプリントデータを上書き対象のプリントデータとして設定する。一方、メモリアクセス制御部は、受信したプリントデータを、第1バッファにおいて、上書き対象に設定されたプリントデータが格納された上書き対象領域に上書きして格納する。これにより、第1バッファに格納されているキャンセル対象のプリントデータは、新たに受信されたプリントデータ(更なるキャンセル対象のプリントデータ、又はキャンセル対象ではない別個のプリントデータ)で上書きにより消去されていくので、当該キャンセル対象のプリントデータが画像形成のための処理に用いられることがなく、画像形成の対象となる別個のプリントデータを受信した場合に、当該画像形成の対象となるプリントデータの画像形成のための処理を早期に開始できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、当該画像形成装置の全体的な動作制御を司る制御部を備え、
前記メモリアクセス制御部は、前記キャンセル対象のポート番号とは異なるポート番号を有して前記上書き対象設定部により上書き対象に設定されることなく前記第1バッファに格納されているプリントデータのみについて、前記制御部に読み出し要求を出し、
前記上書き対象設定部は、前記制御部による前記読み出し要求に基づいた前記プリントデータの読み出しが終了すると、前記第1バッファにおける当該プリントデータが格納されていた領域を前記上書き対象領域に設定するものである。
【0013】
この発明によれば、メモリアクセス制御部が、制御部に対して、上書き対象とされずに第1バッファに格納されているプリントデータのみ(すなわち、画像形成の対象として通信部に受信された、上記キャンセル対象のプリントデータとは別個のプリントデータのみ)の読み出し要求を出すので、当該上書き対象ではないプリントデータのみを画像形成の対象として処理することが可能になり、上書き対象のプリントデータは読み出されることなく第1バッファに格納されたままとして、次に受信されるキャンセル対象となるプリントデータ、又はキャンセル対象ではない別個のプリントデータによって上書きして消去することが可能になる。更に、上書き対象設定部は、上記上書き対象ではないプリントデータの読み出しが終了すると、当該プリントデータが格納されていた領域を上書き領域に設定するので、第1バッファ内に、新たに受信したプリントデータを格納可能な領域が確保される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置であって、前記入力操作部に前記キャンセル指示が入力されると、当該画像形成装置へのプリントデータの送信中止を要求する指示を前記送信装置に送信する送信中止要求部を更に備えるものである。
【0015】
この発明では、前記入力操作部が操作されると、送信装置に対して、当該画像形成装置へのプリントデータの送信中止を要求する指示を送信するので、送信装置に、前記中止対象のプリントデータに対する送信準備処理や送信中止を送信装置に行わせて、前記中止対象のプリントデータをできるだけ画像形成装置に送信させないことが可能になる。これにより、送信装置から当該画像形成装置に送信されるプリントデータのデータ量を削減でき、画像形成装置は、キャンセル対象のプリントデータの受信を速やかに完了できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記キャンセル対象設定部は、前記送信装置から前記キャンセル対象として設定したポート番号を有するプリントデータの受信が完了してから、予め定められた時間が経過した後は、当該ポート番号をキャンセル対象とする設定を解除するものである。
【0017】
プリントデータに付随するポート番号は、同じ番号が別のプリントデータにも用いられるため、上記キャンセル対象のプリントデータが有するポート番号は、後に別のプリントデータにも用いられるが、この発明によれば、上記キャンセル対象のプリントデータのポート番号と同じポート番号を有するプリントデータであって、画像形成の対象となる別個のプリントデータが後に受信された場合に、当該画像形成の対象となる別個のプリントデータを上書き対象とせず、制御部による上記読み出しの対象となるように扱うことが可能になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記第1バッファとは異なる処理に用いられる第2バッファと、
前記入力操作部に上記キャンセル指示が入力されると、前記第2バッファの記憶領域の一部を利用して前記第1バッファの記憶領域を拡大させる記憶領域変換処理部とを備えるものである。
【0019】
この発明によれば、入力操作部に上記キャンセル指示が入力されると、記憶領域変換理部が、第2バッファの記憶領域の一部を利用して第1バッファの記憶領域を拡大させるので、プリントデータの受信に要する時間を短縮化することができる。すなわち、前記画像形成動作を中止する指示が入力された旨の通知を送信装置が受信しても、その通知を当該画像形成装置から受けるまでに送信準備完了したプリントデータは画像形成装置に送信されてしまう場合であっても、第1バッファの記憶領域を拡大させることで当該キャンセル対象となるプリントデータを短時間で受信し切ることができる。これにより、キャンセル対象のプリントデータ受信に要する時間を短縮でき、その結果、画像形成動作の中止処理に要する時間を短縮できる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成装置であって、前記記憶領域変換処理部は、前記プリントデータの読み出しが終了した前記第1バッファの上書き対象領域を、逐次前記第2バッファの領域に変換することで、前記第1及び第2バッファの記憶領域を前記拡大処理前の状態に復元するものである。
【0021】
この発明によれば、第1バッファの記憶領域の拡大によるキャンセル対象のプリントデータを短時間で受信し切る効果、及び、画像形成の対象となる別個のプリントデータの処理を迅速に行う効果を維持しつつ、第2バッファを、本来の処理が可能な状態に復元することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の画像形成装置であって、前記第2バッファは、前記第1バッファに格納されたプリントデータを、前記画像形成部による画像形成動作に必要な処理を行うために用いられるバッファである。
【0023】
この発明によれば、第2バッファとして、画像形成装置に標準的に備えられている画像形成動作に必要な処理を行うために用いられるバッファを用いて、第1バッファの記憶領域を拡大するので、第2バッファを新たに設ける場合に生じるコストアップを回避できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、画像形成装置側で画像形成動作を中止した場合に、中止対象のプリントデータの次に受信した新たな別個のプリントデータについての画像形成のための処理を早期に開始することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、画像形成システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、画像形成システム1は、複合機2と例えばパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータ3とが、例えば通信ケーブル4を介して、例えばLAN(Local Area Network)等によって通信可能に構成されてなり、ホストコンピュータ3から送信したプリントデータを複合機2が受信し、該複合機2が前記プリントデータに基づいて画像形成動作を実行する。なお、本件は、本実施形態では、複合機2とホストコンピュータ3とが有線により通信可能に構成されているが、無線により通信可能に構成されてもよい。
【0026】
図2は、複合機2の内部構成を概略的に示す側面図である。図2に示すように、複合機2は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の機能を兼ね備えたものであり、本体部2aと、本体部2aの左方に配設されたスタックトレイ2bと、本体部2aの上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを有している。
【0027】
また、複合機2のフロント部には、操作部7が設けられている。この操作部7には、ユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー71と、印刷部数等を入力するためのテンキー72と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部73と、表示部73で設定された設定内容等をリセットするリセットキー74と、実行中の印刷(画像形成)動作を中止させるキャンセル指示がユーザから入力されるストップキー75(前記入力操作部の一例)と、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を切り換えるための機能切換キー76が備えられている。
【0028】
原稿読取部5は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53とを備える。スキャナ部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得したプリントデータを後述する制御ユニット21へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、そのプリントデータを上記制御ユニット21へ出力する。
【0029】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出するための給紙ローラ(図略)、搬送ローラ(図略)等からなる原稿搬送機構63を備える。
【0030】
また、原稿給送部6は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2aに対して回動自在に設けられている。原稿給送部6の前面側を上方に移動させて原稿台52上面を開放することにより、原稿台52の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0031】
本体部2aは、複数の給紙カセット81と、給紙カセット81から用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部9へ搬送する給紙ローラ82と、給紙カセット81から搬送されてきた用紙に画像を形成する画像形成部9とを備える。
【0032】
画像形成部9は、感光体ドラム91の表面を帯電する帯電部90と、スキャナ部51等で取得されたプリントデータに基づきレーザ等を出力して帯電後の感光体ドラム91を露光し、該感光体ドラム91の表面に静電潜像を形成する光学ユニット92と、静電潜像が形成された感光体ドラム91の表面にトナーを付着させることによりトナー像を形成する現像部93と、感光体ドラム91上のトナー像を用紙に転写する転写部94と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着部95と、画像形成部9内の用紙搬送路中に設けられ、用紙をスタックトレイ2b又は排出トレイ2cまで搬送する搬送ローラ96,97等とを備える。
【0033】
用紙の両面に画像を形成する場合は、画像形成部9で用紙の一方の面に画像を形成した後、この用紙を排出トレイ2c側の搬送ローラ96にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ96を反転させて用紙をスイッチバックさせ、用紙を用紙搬送路Lに送って画像形成部9の上流域に再度搬送し、画像形成部9により他方の面に画像を形成した後、用紙をスタックトレイ2b又は排出トレイ2cに排出する。
【0034】
図3は、複合機2の電気的な構成を示すブロック図である。図4は、ホストコンピュータ3のメモリ304(図7参照)から送信されるプリントデータを複合機2が受信し、受信したプリントデータをデータ受信バッファ201aに格納している状態を示している。図5は、画像処理バッファ201bの記憶領域の一部をデータ受信バッファ201aの記憶領域に割り当てた状態を示す図である。図6は、画像処理バッファ201b及びデータ受信バッファ201aの領域を初期状態に復元した状態を示す図である。図7は、データ受信バッファ201aへのプリントデータ書き込み時におけるディスクリプタの有効又は無効の設定を仮想的に示す図である。
【0035】
複合機2は、原稿読取部5、画像形成部9、DRAM(Dynamic Random Access Memory)201、データメモリ202、制御ユニット21、操作部7、ファクシミリ通信部203、ネットワークI/F部204、パラレルI/F部205、シリアルI/F部206、HDD(ハードディスクドライブ)207、及びDMA(Direct Memory Access)制御回路208を備えて構成されている。
【0036】
原稿読取部5は、図1に示す原稿読取部5に相当するものであり、原稿の画像を光電変換処理により取得してプリントデータを生成するものである。
【0037】
画像形成部9は、前述の画像形成部9に相当するものであり、原稿読取部5によって読み取られた原稿のプリントデータ、ネットワークI/F部204を介して外部のパーソナルコンピュータ等から受信したプリントデータ及びファクシミリ通信部203によって外部のファクシミリ装置から受信したファックスデータ等のプリントデータに対する画像を所定の用紙に印刷するものである。
【0038】
DRAM201は、図3、図4に示すように、ファクシミリ通信部203、ネットワークI/F部204、パラレルI/F部205、又はシリアルI/F部206を介して受信したプリントデータを一時的に格納するデータ受信バッファ201a(第1バッファの一例)と、データ受信バッファ201aに格納されたプリントデータに対して画像形成動作に必要な画像処理を行うための動作領域として用いられる画像処理バッファ201b(第2バッファの一例)とを備える。
【0039】
データメモリ202は、ファクシミリ通信を行う時の短縮釦登録の相手先名称やファクシミリ番号を予め記憶している記憶手段であり、また、ネットワークスキャナとして使用される際の送信相手先のIPアドレスなども予め記憶している。
【0040】
操作部7は、図1に示す操作部7に相当するものであり、ユーザがコピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能及びスキャナ機能等に関する操作を行うために使用され、ユーザによる操作命令(コマンド)等を制御ユニット21に与えるものである。操作部7は、タッチパネル等を有する表示部73と、前述のスタートキー71やテンキー72等を含む操作キー部とを含む。操作キー部は、ユーザによるコピー実行開始指令、あるいはファクシミリ送信開始指令といった種々の指示入力を行うために用いられる。
【0041】
ファクシミリ通信部203は、符号化/復号化部(図示せず)、変復調部(図示せず)及びNCU(Network Control Unit:図示せず)を含み、原稿読取部5によって読み取られた原稿のプリントデータを電話回線やインターネット回線を介して他のファクシミリ装置へ送信したり、他のファクシミリ装置から送信されてきたプリントデータを受信したりするものである。前記符号化/復号化部は、送信するプリントデータを圧縮・復号化し、受信したプリントデータを伸張・復号化するものであり、変復調部は、圧縮・復号化されたプリントデータを音声信号に変調したり、受信した信号(音声信号)をプリントデータに復調したりするものである。また、NCUは、送信先となるファクシミリ装置との電話回線による接続を制御するものである。
【0042】
ネットワークI/F部204は、ネットワークインターフェース(例えば10/100base-TX)等を用い、ネットワークを介して接続されたユーザ側端末との間での種々のデータの送受信を制御するものである。また、ネットワークに前記ホストコンピュータ3等が接続されている場合に、ネットワークI/F部204は前記ホストコンピュータ3との間での種々のデータの送受信を制御する。例えば、ネットワークI/F部204は、画像形成部9で印刷するためにホストコンピュータ3から送られたプリントデータを受信したり、原稿読取部5によって読み取られた原稿のプリントデータを端末装置へ送信したりする。
【0043】
パラレルI/F部205は、高速双方向パラレルインターフェイス(例えばIEEE1284準拠)等を用いて、複数の信号線を用いて複数ビット単位でデータを送信するパラレル伝送によって、外部機器等から印刷データ等を受信するものである。シリアルI/F部206は、シリアルインターフェイス(例えばRS−232C)等を用い、単一の信号線を用いて1ビットずつ順次データを送るシリアル伝送によって、外部機器等から種々のデータ等を受信するものである。
【0044】
HDD207は、原稿読取部5によって読み取られたプリントデータやネットワークを介して送信されてきたプリントデータ等を記憶するものである。HDD207に記憶されているプリントデータは、該複合機2で使用されるだけでなく、ネットワークI/F部204を介して端末装置によって確認されたり、端末装置の所定のフォルダへ転送されることによって、該端末装置での使用に供されたりする。
【0045】
複合機2では、上述の各機能を組み合わせて種々の機能が実現される。例えば、スキャナ機能として、PC送信機能、E−mail送信機能、FAX送信機能等が実現されてもよい。ここで、PC送信機能とは、原稿から読み取ったプリントデータを、ネットワークを介して任意の端末装置等へ直接送信する機能であり、複合機2が該機能を発揮するときのモードが前記ネットワークスキャナモードである。E−mail送信機能とは、原稿から読み取ったプリントデータを電子メールの添付ファイルとして、ネットワークを介して例えば図略のSMTPサーバへ直接送信し、さらにこのSMTPサーバからネットワークを介して任意の外部端末装置等へ当該電子メールを送信することによって、原稿から読み取ったプリントデータを電子メールの添付ファイルとして送信する機能である。FAX送信機能とは、原稿から読み取ったプリントデータを、電話回線等を介して任意のファクシミリ装置等へ直接送信する機能である。
【0046】
制御ユニット21は、図略のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理部)に、そのCPUの動作を規定するプログラムを格納するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、並びに一時的にデータを保管するRAM等の内部メモリ(図示せず)を有している。制御ユニット21は、当該プログラムに従って動作することで、制御部210と、画像処理部211と、記憶領域割り当て処理部212と、送信中止要求部213とを機能的に備える。
【0047】
制御部210は、操作部7等で受け付けられた指示情報や、複合機2の各所に設けられているセンサからの検出信号に応じて、該複合機2全体の制御を行う。より具体的には、制御部210は、スキャナ機能を実現するために用いられる各部の動作を制御するスキャナコントローラ、ファクシミリ機能を実現するために用いられる各部の動作を制御するファクシミリコントローラ、プリンタ機能を実現するために用いられる各部の動作を制御するプリンタコントローラ、及びコピー機能を実現するために用いられる各部の動作を制御するコピーコントローラとして機能する。
【0048】
CPUの動作を規定して上述の各機能を実現する上記プログラムは、HDD207等の不揮発性且つ大容量の外部記憶装置に格納しておき、前記RAM等の主記憶装置に適宜転送することで、CPUによる実行に供することも可能である。前記プログラムは、ROM或いはCD−ROM等の記録媒体を通じて供給することも、ネットワークI/F部204に接続されるネットワーク等の伝送媒体を通じて当該複合機2に供給すことも可能とされている。伝送媒体は、有線の伝送媒体に限らず無線の伝送媒体であってもよい。また、伝送媒体には、通信線路のみでなく、通信線路を中継する中継装置、例えばルータ等の通信リンクをも含む。
【0049】
プログラムがROMを通じて供給される場合には、当該プログラムが記録されたROMを制御ユニット21に搭載することによって、CPUによる実行に供することができる。プログラムがCD−ROMを通じて供給される場合には、CD−ROM読み取り装置を、例えばパラレルI/F部205へ接続し、当該プログラムをRAM或いはHDD207へ転送することによって、CPUによる実行に供することができる。また、プログラムが伝送媒体を通じて供給される場合には、ネットワークI/F部204を通じて受信したプログラムをRAM或いはHDD207へ転送することによって、CPUによる実行に供することができる。
【0050】
画像処理部211は、プリントデータに対する各種画像処理、例えば、原稿読取部5による読取動作によって得られたプリントデータに対して、レベル補正、γ補正等の所定の補正処理、プリントデータの圧縮または伸張処理、拡大または縮小処理等、画像形成のために必要な種々の画像処理(加工処理)を行う。画像処理部211は、プリントデータを画像バッファ201bの領域を使用して当該画像処理を行い、画像形成部9、ファクシミリ通信部203又はネットワークI/F部204等へ出力する。
【0051】
記憶領域割り当て処理部212は、ストップキー75により実行中の画像形成動作を中止する指示が入力されると、画像処理バッファ201bの記憶領域の一部をデータ受信バッファ201aの記憶領域に割り当てる拡大処理を行うものである。図4に示すように、通常(画像形成部9により画像形成動作を行っているときも含む)、複合機2におけるバッファ201のデータ受信バッファ201aの記憶領域及び画像処理バッファ201bの記憶領域の大きさは予め設定されている。この状態でストップキー75が操作されると、図5に示すように、記憶領域割り当て処理部212は、前記画像処理バッファ201bの記憶領域の一部を前記データ受信バッファ201aの記憶領域に割り当てることで、データ受信バッファ201aの記憶領域を拡大する。図5の矢印Xで示す枠は、データ受信バッファ201aの記憶容量と画像処理バッファ201bの記憶容量との和を表しているとともに、実線で表されたデータ受信バッファ201aと画像処理バッファ201bとの境界線は、その時点でのデータ受信バッファ201aの記憶容量と画像処理バッファ201bの記憶容量との比率を定義するものである。なお、図5に示す点線は、前記拡大処理前におけるデータ受信バッファ201aと画像処理バッファ201bとの境界線(図4における実線で表されたデータ受信バッファ201aと画像処理バッファ201bとの境界線と同一)である。
【0052】
これにより、データ受信バッファ201aは、上記拡大処理前の状態に比して、該プリントデータをより短時間で受信することができる。すなわち、ホストコンピュータ3が、後述する送信中止指示を複合機2から受信しても既に送信準備を完了しているプリントデータを複合機2に送信する場合、前記拡大処理を行う前の状態では、そのプリントデータを例えば5回に分けて受信していたところ(すなわち、既に送信準備を完了しているプリントデータの受信に、データ受信バッファ201aの全領域を5回用いる)、前記拡大処理後の状態では、前記プリントデータを例えば1回とか2回とかで受信し切ることができ(すなわち、既に送信準備を完了しているプリントデータの受信に、データ受信バッファ201aの全領域を1回とか2回とか用いるだけで足りる)、前記拡大処理を行う前の状態に比して、該プリントデータをより短時間で受信することができる。その結果、複合機2による画像形成動作の中止に要する時間を短縮化することができる。
【0053】
なお、記憶領域割り当て処理部212は、図6に示すように、データ受信バッファ201a及び画像処理バッファ201bの記憶領域を記憶領域の変換前の状態に復元する処理も行う。
【0054】
送信中止要求部213は、ストップキー75が操作されると、当該複合機2へのプリントデータの送信を中止する要求を行う送信中止指示を生成し、該送信中止指示をホストコンピュータ3に送信する。
【0055】
DMA制御回路208は、上記CPUでなる制御ユニット21を介さずに、前記ファクシミリ通信部203、ネットワークI/F部204、パラレルI/F部205、又はシリアルI/F部206(通信部の一例。以下、これら各部を総称して通信部という)を介して受信したプリントデータを、直接にDRAM201に書き込むために必要なデータのアクセス制御を司る回路である。DMA制御回路208は、キャンセル対象設定部2081と、上書き対象設定部2082と、メモリアクセス制御部2083とを備える。
【0056】
キャンセル対象設定部2081は、ユーザによるストップキー75の操作で、実行中の画像形成動作を中止するキャンセル指示が入力された場合に、当該キャンセル指示が入力された時点で上記通信部がホストコンピュータ3から受信しているプリントデータに付随するポート番号を、画像形成動作をキャンセルするプリントデータ(キャンセル対象とするプリントデータ)のポート番号として設定して、記憶しておく。
【0057】
上書き対象設定部2082は、上記通信部により受信されてデータ受信バッファ201aに格納されるプリントデータであって、キャンセル対象設定部2081によりキャンセル対象として記憶されているポート番号を有するプリントデータを、上書き対象に設定する。すなわち、上書き対象設定部2082は、DRAM201内バッファ領域が、図5に示す状態である場合において、上記通信部が受信したプリントデータのTCP(Transmission Control Protocol)のポート番号を参照し、キャンセル対象設定部2081によりキャンセル対象として記憶されているポート番号と同じポート番号が付されたプリントデータ(以下、当該プリントデータをキャンセル対象のプリントデータという)を受信すると、データ受信バッファ201aに当該プリントデータを書き込む際に、ディスクリプタが有効か無効かのbitを有効(書き込み及び上書き可能)に設定する(本実施形態では、ディスクリプタのbit1が有効、ディスクリプタのbit0が無効とする)。つまり、上書き対象設定部2082は、次に入ってくるデータを上書きできるようにし、その部分には何も書かれていないと判断するように、ソフトウェア(プログラム)でDMA制御回路208のレジスタを設定する。
【0058】
例えば、図7に示すように、データ受信バッファ201aは、複数の領域に分けて、プリントデータの格納に用いられる。上書き対象設定部2082は、キャンセル対象のプリントデータと同じポート番号のデータが通信部により受信された場合には、当該プリントデータが格納される領域のディスクリプタのbitを1にして、当該受信されたプリントデータが、次に新たに受信されたプリントデータによって上書きされるようにする。一方、上書き対象設定部2082は、キャンセル対象ではないプリントデータが通信部により受信された場合には、ディスクリプタのbitを0とし、そこには、画像形成の対象となるプリントデータがあるとして、次に新たに受信されたプリントデータによって上書きされないようにする。
【0059】
メモリアクセス制御部2083は、上記通信部により受信されたプリントデータを書き込む際のDRAM201へのアクセスを制御する。メモリアクセス制御部2083は、データ受信バッファ201aにおいて、上書き対象に設定されたプリントデータ(キャンセル対象のプリントデータ)が格納された上書き対象領域があれば、当該上書き対象領域に上書きし、上書き対象領域がなければ空き領域に格納する。メモリアクセス制御部2083は、上記ディスクリプタのbit が0の場合には、制御ユニット21に割り込み要求を入れて、画像形成のために必要な処理を行うために、データ受信バッファ201aに記憶されているプリントデータを制御ユニット21に読み取らせるようにする。当該プリントデータが読み取られた後は、上書き対象設定部2082が、当該ディスクリプタのbitを1に戻し、当該ディスクリプタがメモリアクセス制御部2083によって空き領域と同様に扱われるようにする。
【0060】
なお、ディスクリプタのメモリアドレスは数に限りがあるため、メモリアクセス制御部2083は、一度データ受信バッファ201aの全領域にプリントデータの書き込みが行われると、もう一度ローテートして書き込みを行う。このときも、メモリアクセス制御部2083は、上記ディスクリプタのbitが1の領域には上書きを行うが、上記ディスクリプタの0の領域には書き込みを行わない。
【0061】
図8は、ホストコンピュータの概略構成を示す図である。ホストコンピュータ3は、例えば、図1、図8に示すように、キーボード及びマウス等からなる入力部301と、各種画面を表示する液晶ディスプレイ等の表示部302と、前記複合機2との間で通信を行うデータ送受信部303と、メモリ304と、制御部305とを備えて構成されている。
【0062】
メモリ304は、複合機2に送信すべきプリントデータを始めとする各種のデータを格納するものである。
【0063】
制御部305は、それぞれ制御プログラム等を記憶するROM及び一時的にデータを格納するRAMを含むメモリと、制御プログラム等をROMから読み出して実行する中央演算処理装置とを備えて構成されており、特に本実施形態では、複合機2から前記送信中止要求情報を受信すると、中止対象であるプリントデータの送信準備処理を中止する機能と、送信中止要求情報を受信すると、複合機2に対して画像形成動作の中止を指示する中止指示情報を、画像形成動作の中止対象のプリントデータの最後に付加して複合機2に送信する機能とを備える。
【0064】
複合機2におけるホストコンピュータ3からの通常のプリントデータ受信時の処理(すなわち、画像形成動作のキャンセル指示が入力されていない場合のプリントデータ受信処理)を説明する。図9は、複合機2におけるホストコンピュータ3からの通常時のプリントデータ受信時の処理を示すフローチャートである。
【0065】
複合機2において、ユーザによってストップキー75が操作されず、画像形成動作のキャンセル指示が入力されていない状態で、ホストコンピュータ3からプリントデータを受信する場合、ホストコンピュータ3からは、1つのプリントジョブでの画像形成動作を行わせる1つのプリントデータは、上述したように複数に分割されて複合機2に送信されてくる。複合機2は、ホストコンピュータ3から、当該分割された各プリントデータを受信すると、複合機2のDMA制御回路208のメモリアクセス制御部2083が、受信毎のプリントデータを、DRAM201のデータ受信バッファ201aにおける書き込み可能な領域(ディスクリプタのbitが1の領域)を探し、各領域に分けて書き込んでいく。
【0066】
DRAM201のバッファ領域は、図4に示したように、データ受信バッファ201a及び画像処理バッファ201bにより構成されている。データ受信バッファ201a及び画像処理バッファ201bは、それぞれの領域の初期時における大きさが設定されており、この状態でなるデータ受信バッファ201a内に設けられた複数の領域に、メモリアクセス制御部2083が、受信した各プリントデータを順次異なるアドレスの領域に書き込んでいく。データ受信バッファ201aの各領域には、格納されているプリントデータについてのディスクリプタを記憶するbitが設けられている。メモリアクセス制御部2083は、データ受信バッファ201aの各領域のディスクリプタのbitが1となっている領域に、受信した各プリントデータを書き込むことになる。
【0067】
このとき、DMA制御回路208の上書き対象設定部2082は、受信した各プリントデータを、上記書き込んだ各プリントデータのディスクリプタのbitを0として、上記データ受信バッファ201aに格納する(S1)。このディスクリプタのbit「0」は、当該プリントデータが画像形成の対象となる(キャンセル対象ではない)ことを示す。
【0068】
続いて、メモリアクセス制御部2083は、上記ディスクリプタのbit「0」とされてデータ受信バッファ201aに記憶されている各プリントデータについて、制御ユニット21(すなわち、CPU)に割り込み要求を出し、当該プリントデータの読み出しを要求する(S2)。
【0069】
上記割り込み要求を受けて、制御ユニット21の画像処理部211が上記プリントデータを読み出すと(S3でYES)、上書き対象設定部2082は、当該読み出しが終了したプリントデータのディスクリプタのbitを1にする(S4)。このディスクリプタのbit1は、上述したように、当該プリントデータが画像形成の対象ではなく、当該プリントデータが格納されている領域に、別のプリントデータを上書きしても良いことを示すものである。
【0070】
メモリアクセス制御部2083は、ディスクリプタのbitが1であるプリントデータが格納されている領域への、受信したプリントデータの書き込みを繰り返すことで、ホストコンピュータ3からのプリントデータの受信と、制御ユニット21の画像処理部211によるプリントデータの読み出しとが可能となるようにしている。なお、画像処理部211は、上記各プリントデータを、画像処理バッファ201bを使用して画像処理を行ってから読み出す。
【0071】
複合機2におけるホストコンピュータ3からのプリントデータ受信時に、実行中の画像形成動作を中止するキャンセル指示が入力された場合の複合機2及びホストコンピュータ3の処理を説明する。図9は、実行中の画像形成動作を中止する指示が入力された場合の複合機2及びホストコンピュータ3の処理を示すフローチャートである。
【0072】
ユーザによる操作でストップキー75がONとされ、実行中の画像形成動作を中止するキャンセル指示が入力されると(S11でYES)、DMA制御回路208のキャンセル対象設定部2081は、当該ストップキー75がONとされた時点で受信中のプリントデータに付随するポート番号を、キャンセル対象とするプリントデータのポート番号(すなわち、キャンセル対象のポート番号)として記憶する(S12)。同時に、制御ユニット21の送信中止要求部213は、当該複合機2へのプリントデータの送信中止を要求する送信中止指示を、ホストコンピュータ3に送信する(S13)。さらに、制御ユニット21の記憶領域割り当て処理部212は、図5に示したように、画像処理バッファ201bの記憶領域の一部をデータ受信バッファ201aの記憶領域に割り当て、データ受信バッファ201aの記憶領域を拡大する(S14)。
【0073】
一方、ホストコンピュータ3において、制御部305は、複合機2から上記送信中止指示を受信すると(♯11でYES)、中止対象であるプリントデータのうち、送信準備処理が完了していないプリントデータに対する送信準備処理を中止する(♯12)。
【0074】
複合機2において、次に新たなプリントデータが通信部により受信されると(S15でYES)、メモリアクセス制御部2083は、上記ディスクリプタのbitが1とされているプリントデータ格納領域に、当該新たなプリントデータを上書きする(S16)。なお、次に新たなプリントデータが通信部により受信されない場合は(S15でNO)、処理はS19に移る。
【0075】
上記S16の後、DMA制御回路208の上書き対象設定部2082は、当該新たに受信したプリントデータに付随しているポート番号が、上記キャンセル対象としてキャンセル対象設定部2081が記憶しているポート番号と一致するか否かを判断する(S17)。ホストコンピュータ3からは、上記送信中止指示受信前に既に送信準備処理を完了しているプリントデータと、画像形成の対象とする別個のプリントデータの両方が送られてくる場合が想定されるので、複合機2で受信した各プリントデータが、キャンセル対象のプリントデータであるか、又は画像形成の対象となるプリントデータであるかを、それぞれのポート番号に基づいて判別する。
【0076】
ここで、上書き対象設定部2082が、次に受信した新たなプリントデータに付随しているポート番号が、上記キャンセル対象として記憶されているポート番号と一致すると判断した場合は(S17でYES)、当該プリントデータの格納時に、当該新たなプリントデータのディスクリプタのbitを1にしておく(S18)。一方、上書き対象設定部2082によって、次に受信した新たなプリントデータに付随しているポート番号が、上記キャンセル対象として記憶されているポート番号と一致しないと判断された場合は(S17でNO)、図9で示した画像形成の対象とするプリントデータについての処理を行う(S21)。
【0077】
上記S15乃至S18とS21の処理を繰り返し、制御ユニット21の記憶領域割り当て処理部212が、データ受信バッファ201aに格納されている各プリントデータのポート番号等に基づいて、データ受信バッファ201aに格納されていたキャンセル対象のプリントデータが上書き処理によって全て削除され、画像形成の対象とするプリントデータのみが格納されている状態となったと判断した場合(S19でNO)、データ受信バッファ201a及び画像処理バッファ201bの記憶領域を、上記S14で拡大処理する前の状態に復元する処理を開始する(S20)。
【0078】
すなわち、上記のようにデータ受信バッファ201aに画像形成の対象とするプリントデータのみが格納されている状態となっても、データ受信バッファ201aの全領域に画像形成の対象とするプリントデータが格納されており、制御ユニット21の画像処理部211によるデータ読み出しが完了していなければ、データ受信バッファ201aの領域を狭めて画像処理バッファ201bの領域を拡大することはできない。このため、画像処理部211は、当該縮小された状態の画像処理バッファ201bを使用して上記画像処理及びデータ読み出しを行い、記憶領域割り当て処理部212は、画像形成の対象とするプリントデータについての画像処理部211によるデータ読み出しが完了し、ディスクリプタのbitが1に変更されたプリントデータ格納領域ができる度に、当該ディスクリプタのbitが1に変更された領域を画像処理バッファ201bに戻す。記憶領域割り当て処理部212は、データ受信バッファ201a及び画像処理バッファ201bの記憶領域が、図4に示した初期状態に復元した時点で、当該領域変更処理を終了する。
【0079】
なお、キャンセル対象設定部2081は、記憶領域割り当て処理部212によって、上記のようにデータ受信バッファ201aに画像形成の対象とするプリントデータのみが格納されている状態となった時点から、予め定められた時間が経過したときに、それまでキャンセル対象として記憶していたポート番号をキャンセル対象とポート番号として扱わないようにする。プリントデータに付されるポート番号の数には限りがあり、同じポート番号は何度も用いられるため、このように予め定められた時間の経過後は、それまでキャンセル対象として記憶していたポート番号をキャンセル対象とポート番号として扱わないことで、当該ポート番号を、画像形成の対象とする新たな別個のプリントデータについて用いることができるようにする。
【0080】
或いは、キャンセル対象設定部2081は、例えば、上記S17の処理で、上書き対象設定部2082によって、受信されたプリントデータのポート番号が上記キャンセル対象として記憶されているポート番号と一致すると判定されてから、予め定められた時間(例えば、1分間)が経過するまでに、受信されたプリントデータのポート番号について、当該キャンセル対象のポート番号との一致が判定されなかった場合には、それまでキャンセル対象として記憶していたポート番号を消去する。すなわち、キャンセル対象設定部2081は、それまでキャンセル対象として記憶していたポート番号をキャンセル対象とポート番号として扱わないようにしてもよい。
【0081】
以上のように、本実施形態では、前記ストップキー75により実行中の画像形成動作を中止する指示が入力されると、前記画像処理バッファ201bの記憶領域の一部を前記データ受信バッファ201aの記憶領域に割り当てる拡大処理を行うようにしたので、前記拡大処理前の状態に比して、該プリントデータをより短時間で受信することができる。その結果、ホストコンピュータ3からのキャンセル対象のプリントデータの受信を速やかに完了することができるため、複合機2は、迅速に、画像形成の対象となる別個のプリントデータの処理に移行することができる。また、ユーザが画像形成の中止指示を入力したタイミングと画像形成動作の中止処理完了タイミングとの間の時間差が短時間となることで、中止指示を入力したユーザを比較的長い時間待機させたり、中止指示が複合機2に受付けられたのかについてユーザに不安を与えたりするという問題の発生も防止又は抑制される。
【0082】
また、本実施形態では、データ受信バッファ201aに格納されているキャンセル対象のプリントデータは、新たに受信されたプリントデータ(更なるキャンセル対象のプリントデータ、又はキャンセル対象ではない別個のプリントデータ)で上書きにより消去されていくので、当該キャンセル対象のプリントデータが画像形成のための処理に用いられることがなく、画像形成の対象となる別個のプリントデータを受信した場合に、当該画像形成の対象となるプリントデータの画像形成のための処理を早期に開始できる。
【0083】
また、複合機2側で画像形成動作のキャンセルを行った際に、上記ホストコンピュータ3から複合機2側に送られてくるキャンセル対象のプリントデータを構成する各データがデータ受信バッファ201a内に順番通りに配列されない場合や、別の用途でデータ受信バッファ201aの領域が使用されていて上記各データの最終データが格納される領域が変わり、キャンセル対象のプリントデータがどこからどこまでなのか一様に判断できない場合であっても、的確にキャンセル対象のプリントデータが格納されているデータ受信バッファ201aの領域を特定して、上記上書き処理(すなわち画像形成動作の中止処理)を行うことができる。すなわち、キャンセル対象となるプリントデータとキャンセル対象とならないプリントデータという2つのデータが混在して複合機2に送られてきた場合であっても、キャンセル対象となるプリントデータのみを的確に上書き処理することができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、複合機2にプリントデータを送信する装置はホストコンピュータとされているが、これに限られるものではない。また、本発明に係る画像形成装置は、複合機2に限られず、プリンタや複写機などの他の画像形成装置であっても構わない。
【0085】
また、データ受信バッファ201aの記憶領域を拡大するために用いるバッファは前記画像処理バッファ201bに限られるものではなく、他のバッファでもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ユーザによる操作でストップキー75がONとされ、実行中の画像形成動作を中止するキャンセル指示が入力されると(S11でYES)、制御ユニット21の送信中止要求部213は、当該複合機2へのプリントデータの送信中止を要求する送信中止指示を、ホストコンピュータ3に送信し(S13)、記憶領域割り当て処理部212はデータ受信バッファ201aの記憶領域を拡大するが(S14)、これらS13又はS14の処理を行わずに、キャンセル対象のプリントデータについての処理を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る画像形成装置とホストコンピュータとを用いて構成された画像形成システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る画像処理装置の一例である複合機の内部構成を概略的に示す側面図である。
【図3】複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】ホストコンピュータから送信されるプリントデータを複合機が受信し、受信したプリントデータをデータ受信バッファに格納している状態を示す図である。本発明における記憶領域拡大処理の説明図である。
【図5】画像処理バッファの記憶領域の一部をデータ受信バッファの記憶領域に割り当てた状態を示す図である。
【図6】画像処理バッファ及びデータ受信バッファの領域を初期状態に復元した状態を示す図である。
【図7】データ受信バッファへのプリントデータ書き込み時におけるディスクリプタの有効又は無効の設定を仮想的に示す図である。
【図8】ホストコンピュータの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】複合機におけるホストコンピュータからの通常時のプリントデータ受信時の処理を示すフローチャートである。
【図10】実行中の画像形成動作を中止する指示が入力された場合の複合機及びホストコンピュータの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成システム
3 ホストコンピュータ
2 複合機
21 制御ユニット
210 制御部
211 画像処理部
212 記憶領域割り当て処理部
213 送信中止要求部
201 DRAM
201a データ受信バッファ
201b 画像処理バッファ
204 ネットワークI/F部
205 パラレルI/F部
206 シリアルI/F部
208 DMA制御回路
2081 キャンセル対象設定部
2082 対象設定部
2083 メモリアクセス制御部
7 操作部
75 ストップキー
9 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から送信されるプリントデータを受信する通信部と、
前記通信部により受信したプリントデータに基づいて画像形成動作を実行する画像形成部と、
前記通信部により受信したプリントデータを一時的に格納する第1バッファと、
前記画像形成部による画像形成動作を中止するキャンセル指示がユーザから入力される入力操作部と、
前記入力操作部に前記キャンセル指示が入力された場合、当該キャンセル指示が入力された時点で前記通信部が前記送信装置から受信しているプリントデータのポート番号を、キャンセル対象とするプリントデータのポート番号として設定するキャンセル対象設定部と、
前記第1バッファに格納されるプリントデータであって、前記キャンセル対象設定部により設定されたポート番号を有するプリントデータを、上書き対象に設定する上書き対象設定部と、
前記通信部に受信されたプリントデータを、前記第1バッファにおいて、前記上書き対象に設定されたプリントデータが格納された上書き対象領域に上書きするメモリアクセス制御部と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
当該画像形成装置の全体的な動作制御を司る制御部を備え、
前記メモリアクセス制御部は、前記キャンセル対象のポート番号とは異なるポート番号を有して前記上書き対象設定部により上書き対象に設定されることなく前記第1バッファに格納されているプリントデータのみについて、前記制御部に読み出し要求を出し、
前記上書き対象設定部は、前記制御部による前記読み出し要求に基づいた前記プリントデータの読み出しが終了すると、前記第1バッファにおける当該プリントデータが格納されていた領域を前記上書き対象領域に設定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記入力操作部に前記キャンセル指示が入力されると、当該画像形成装置へのプリントデータの送信中止を要求する指示を前記送信装置に送信する送信中止要求部を更に備える請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記キャンセル対象設定部は、前記送信装置から前記キャンセル対象として設定したポート番号を有するプリントデータの受信が完了してから、予め定められた時間が経過した後は、当該ポート番号をキャンセル対象とする設定を解除する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1バッファとは異なる処理に用いられる第2バッファと、
前記入力操作部に上記キャンセル指示が入力されると、前記第2バッファの記憶領域の一部を利用して前記第1バッファの記憶領域を拡大させる記憶領域変換処理部とを備える請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶領域変換処理部は、前記プリントデータの読み出しが終了した前記第1バッファの上書き対象領域を、逐次前記第2バッファの領域に変換することで、前記第1及び第2バッファの記憶領域を前記拡大処理前の状態に復元する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2バッファは、前記第1バッファに格納されたプリントデータを、前記画像形成部による画像形成動作に必要な処理を行うために用いられるバッファである請求項5又は請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−160835(P2009−160835A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1087(P2008−1087)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】