画像形成装置
【課題】スキャナを搭載した画像形成装置において生産性を下げずに高品質な画像読み取りが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】キャリッジの動作中に既知のテストチャートをスキャナユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段と、を有し、キャリッジの動作中にスキャナユニットで原稿を読み取るとき、画像処理手段は、前記キャリッジの動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行う。
【解決手段】キャリッジの動作中に既知のテストチャートをスキャナユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段と、を有し、キャリッジの動作中にスキャナユニットで原稿を読み取るとき、画像処理手段は、前記キャリッジの動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナを搭載したインクジェット記録装置である画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スキャナプリンタ複合機での画像読み取りにおいて、装置が振動している状態だと装置の歪みにより光学系の位置関係が乱れて、読み取り画像が歪む問題がある。振動源がスキャナ内の読取装置の走査や、プリンタ内の印刷機構の走査によるものであれば、走査を一時的に停止したり、加速度を低く制御したりすることで振動を抑制し、画像品質を向上させる技術が既に知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、振動による画像品質低下を防ぐ目的で、スキャナ内の光学読み取り機構の走査を行うステッピングモーターの制御を、ユーザーが指示したモードが振動の影響を受けやすい場合には速度が遅い低振動の制御モードで制御する制御方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、今までの画像形成装置のように装置内の機構を一時停止したり加速度を低く制御したりする方法では、スキャナの読み取り速度やコピー速度を抑制することとなり、生産性を下げてしまう問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005-234357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、スキャナを搭載した画像形成装置において生産性を下げずに高品質な画像読み取りが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 画像形成手段(キャリッジ141)を動作させて記録媒体に画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット140)と、読取手段(光学読み取りユニット131)をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニット(スキャナユニット130)と、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段(イメージプロセッサ203)と、を備える画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)において、前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段(CPU204)と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段(RAM205)と、を有し、前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする画像形成装置(図1,図4,図15)。
〔2〕 前記テストチャートは、記録媒体上に複数のドットが所定のパターンで配列されたドットチャートであり、前記歪み量検出手段は、該テストチャートの正常座標のドット位置と前記スキャン画像データにおけるドット位置とを比較して画像歪み量を検出することを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔3〕 前記テストチャートの正常座標のドット位置は、該テストチャートの読取時に前記画像形成手段の動作の読み取りへの影響を排除して読み取った所定の2点のドットを基準点として予測されるものであることを特徴とする前記〔2〕に記載の画像形成装置。
〔4〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の動作条件ごとに作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔5〕 前記画像形成手段の動作条件は、該画像形成手段の走査動作における走査方向の加減速位置、加減速パターン、走査の向き、定速走査時の狙い速度の少なくともいずれか1つで区別されるものであることを特徴とする前記〔4〕に記載の画像形成装置。
〔6〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作におけるサーボ制御モードごとに作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔7〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関係を示すテーブルであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔8〕 前記歪み補正テーブルを用いて求められる画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関数から、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データにおける歪み補正量を算出し、前記画像処理手段は、該歪み補正量を用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする前記〔7〕に記載の画像形成装置。
〔9〕 前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置の設計工程段階または生産工程段階、あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像読取ユニット(スキャナ)や画像形成ユニット(プリンタ)の生産性を下げずに、振動やスキャン走査駆動によるスキャン画像の品質低下を抑制することができる。すなわち、振動の発生を抑制するのではなく、印刷とともに画像読み取り(スキャン)が行われるときのスキャン画像の歪みを予測して補正することで、装置の生産性を損なわずに画像品質の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置に一態様であるインクジェットプリンタ・スキャナ一体型複合機の構成例を示す。
プリンタスキャナ複合機100は、セットされた読取対象の原稿を画像読取ユニット130に送る自動原稿送り装置(ADF)120と、ADF120から送られてきた原稿を画像として読み取る画像読取ユニット(スキャナユニット)130と、画像読取ユニット130で読み取られた画像データまたは外部から入力される画像データに基づいて画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット)140と、を備える(図1(a))。
【0010】
ここで、プリンタユニット140は、キャリッジ支持ロッド142にキャリッジ141を摺動可能に保持し、主走査モーター144でキャリッジ141を用紙の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に移動させる。このキャリッジ141には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔を配列した液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(プリンタヘッド)を搭載している。プリンタユニット140による画像形成(印字)は、用紙搬送機構143によって搬送されてきた記録媒体である用紙Pの上を、キャリッジ141がキャリッジ支持ロッド142に沿って往復走査しながらインク滴を吐出することで行われる。
【0011】
また、画像読み取り(スキャン)は、スキャナユニット130内の光学読取手段(光学読み取りユニット)131が原稿読み取りガラス133の下を走査モーター132の駆動により移動するか、停止した光学読み取りユニット131の上をADF120によって原稿を搬送しながら、原稿の反射光に基づく画像データを取り込むことで行われる。
【0012】
印字動作ではキャリッジ141が高速で往復走査するため、キャリッジ141の動きに同期して画像形成装置100本体マシンに振動が発生する。このため、コピー印刷のように印字動作とスキャン動作を同時に要求され、それを実行した場合、マシンが振動している状態でスキャナユニット130は画像の読み取りを行うことになる。このとき、装置の歪みや光学読み取りユニット131の走査速度変動により、意図した座標の画像が取り込めずにスキャン画像に歪みが発生する。
【0013】
図2は、スキャナユニットの構成を示す外観斜視図である。
スキャナユニット130は、原稿読み取りガラス133の下に光学読取ユニット131が配置されており、光学読み取りユニット131の画像入力スリット131aから入力された原稿の反射光を取り込んで画像入力スリット131a分の原稿を読み取る。また光学読み取りユニット131は、ガイドロッド134に支持されており、駆動ベルト135を介して走査モーター132で走査されることにより、原稿全体を読み取ることができる。
【0014】
図3は、光学読み取りユニットの構成例を示す断面図である。
例えば、光学読み取りのためのイメージセンサとしてCCD(電荷結合素子(Charge
Coupled Device))を用いる場合、照射ランプの光による原稿の反射光をCCDイメージセンサに入射させて画像データを得ているが、CCDイメージセンサのサイズを原稿の幅に対して小さくするため、原稿の反射光についてミラー(図中、ミラー1,ミラー2,ミラー3,ミラー4)によってその光路を延長し、レンズによってその集光を行っている。また原稿画像の読み取りは、光学読み取りユニット131を走査モーター132の駆動により一定速度で走査しながら、光学読み取りユニット131内のCCDイメージセンサに入力された原稿の反射光に基づく情報を一定の時間周期で取り込むことで、原稿のスキャン対象画像を一定間隔の画素(スキャン画像データ)に分解して読み取っている。
【0015】
図4にプリンタスキャナ複合機100の制御ブロック図を示す。
プリンタスキャナ複合機100は、スキャナユニット130のイメージセンサ201で取り込まれた画像データ(スキャン画像データ)であるアナログ読み取り信号をデジタル画像データに変換するセンサドライバ202と、デジタル画像データについて画像処理を行うイメージプロセッサ203と、装置全体の制御を司るCPU204と、画像データ等を一時格納するRAM205と、CPU204が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM206と、各種のセンサ209を有し、主走査モーター144、走査モーター132、プリンタヘッド211の液滴吐出機構などのアクチュエータ208の駆動を制御するメカ制御I/O207と、プリンタヘッド211にスキャナユニット130で得られた画像データあるいはホストから入力された画像データに基づいて画像形成するための信号を出力する画像出力制御部210と、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であるホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F212と、を備えている。
【0016】
ここで、プリンタスキャナ複合機100においてCPU204は、スキャナユニット130のイメージセンサ201で読み取られた画像データについて所定の画像処理(後述)を行なわせ、印刷画像データを得る。ついで、CPU204は、印刷指示を受けた印刷画像データを解析し、データの並び替え処理等を行って画像出力制御部210に画像データを転送する。なお、画像出力するための画像データのビットマップデータへの変換は、例えばROM206にフォントデータを格納して行っても良い。
【0017】
画像出力制御部210は、プリンタヘッド211の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータをクロック信号に同期させてシリアルデータで送出する。ついでキャリッジ141は主走査モーター144の駆動により走査され、プリンタヘッド211から前記ドットパターンデータに基づいてインクが用紙P上に吐出される。このインク吐出動作は用紙Pが副走査方向に搬送されるごとに繰り返され画像形成が行われる。
【0018】
図5に、プリンタスキャナ複合機100における一般的なスキャンデータ処理のフローチャートを示す。
(S11) まずスキャナユニット130のイメージセンサで画像データ(スキャン画像データ)が読み取られる。
(S12) ついで、センサドライバ202でスキャン画像データであるアナログ読み取り信号をデジタルデータ(生画像データ)に変換された後、該デジタルデータはRAM205に格納される。
(S13) つぎに、RAM205に格納された生画像データは、イメージプロセッサ203によりノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を施される。
(S14) さらに出力先の要求に応じて解像度変更、誤差拡散処理、データ圧縮などの画像補正(画像処理)を施される。
(S15) 最後に、印刷画像データとして所定の出力先(ホストPCまたは画像出力制御部210)に出力される。
【0019】
ここで、光学読み取りユニット131の走査を一定速度に維持する制御は、走査モーター(ステッピングモーター)132を一定周波数でステップさせる方法が一般的であり、光学読み取りユニット131の走査速度は該走査モーター132の駆動周波数に比例する。このとき、この方法ではエンコーダなどによる速度のフィードバック制御は行われない。
【0020】
また、プリンタユニット140の印刷動作などによる振動によってスキャナユニット130が揺らされると、駆動ベルト135の伸張などにより光学読み取りユニット131の走査速度に速度ムラが発生し目標位置からのズレが生じてしまい、イメージセンサにはスキャン対象画像の意図した座標とは異なる座標の情報が入力されるため、読み取り画像が歪む結果となる。なお、当該プリンタスキャナ複合機100では、このような速度変動の発生及びズレ量は検知することができない。
【0021】
図6に、スキャナユニット130を側面から見た断面図を示す。
図6(b)には、振動がなく、光学読み取りユニット131がF方向(図中左方向)に速さvで走査されながら、座標x1で原稿の画素を取り込み、t時間後に座標x2の原稿の画素を正常に取り込む場合を示している。
【0022】
これに対して、図6(c)のように、振動によりスキャン走査速度が減速されてv’ になると、座標x2より手前の座標x2’の原稿の画像をx2の画素として取り込んでしまう。この場合、取り込まれた画像は、前述の画像処理の段階でx1−x2間の画像として処理されるため、x1-x2’間の本来の間隔よりも長く引き伸ばされた画像となってしまう(図7)。すなわち、実際のスキャン距離がx1-x2’間距離=v’ tであるところ、スキャン距離がx1−x2間距離=v
tとして処理されてしまう。
【0023】
このような取り込み画像の歪みは、イメージセンサを含む光学読み取りユニット131が想定している位置からズレた位置にあることが原因である。そのため、取り込み画像の歪みは、上記のようなスキャン走査方向のみのズレに限られるものではなく、スキャナユニット130の筐体の歪みに起因してスキャン走査方向と垂直方向のズレも発生しうる(図8)。なお図8は、座標x2の位置でスキャン走査と垂直方向のズレが発生した場合のスキャン画像である。
【0024】
あるいは、軸回転のズレ(図9)も発生しうる。これは、図10に示すように、光学読み取りユニット131を支持するガイドロッド134と、走査駆動するための駆動ベルト135が同軸上にないために、ガイドロッド支持部を回転中心としたヨーモーメントが発生して光学読み取りユニット131が「首振り」する現象を引き起こすためである。この現象は、スキャン走査の加減速時に一時的に発生する場合もあるし、走査中に継続して発生する場合もある。角度θは速度や加速度が大きいほど大きくなる。なお、図9は、軸回転ズレが角度θで発生し続けた場合のスキャン画像である。
【0025】
この問題に対して、これまで知られている対策は以下のものが挙げられる。
・キャリッジ動作中はスキャン動作を行わないで、キャリッジ停止中にスキャンを行う。
・スキャナ内の光学ユニットの走査による振動に対して、駆動モーターの制御を必要に応じて低振動のモードに切替えて制御する。
しかしながら、これらの方法ではスキャン画像の歪みは低減できるが、印字やスキャンの生産性が下がるデメリットがあった。
【0026】
そのため、本発明では、予め記憶したキャリッジ走査及びスキャン走査と画像歪みの関係を用い、スキャン画像データに所定の画像処理を施すことで歪みを補正するものである。この方法であれば印字やスキャンの生産性を下げずにスキャン画像の品質低下を低減することができる。以下、本発明の根幹をなす部分について説明する。
【0027】
本発明に係る画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)は、画像形成手段(キャリッジ141)を動作させて記録媒体(用紙P)に画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット140)と、読取手段(光学読み取りユニット131)をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニット(スキャンユニット130)と、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段(イメージプロセッサ203)と、を備える画像形成装置において、前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段(CPU204)と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段(RAM205)と、を有し、前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とするものである。
【0028】
ここで、まず歪み検出用の前記テストチャートは、例えば一定間隔でドットが格子状に配列されたチャートであり、該テストチャートをスキャナユニット130にセットし、キャリッジ141を往復走査させながらスキャンを行い、テストチャートの画像を読み取ることを行う。
【0029】
図11に、歪み検出用テストチャートのドットパターン例を示す。
テストチャートTは、記録媒体上に、複数のドットSが所定のパターンで印刷などにより形成されたものであり、X方向に間隔a、Y方向に間隔bとなるように二次元格子状に形成されている。また、テストチャートTのドットパターンの図中左端の上下(テストチャートTの先頭行の両端)に2つのドットを形成しており、一方を基準点R1、他方を基準点R2としている。
【0030】
歪み検出に際しては、まず図11に示したテストチャートTをスキャンユニット130においてスキャンしてスキャン画像データを得て、CPU204が該スキャン画像データにおける各ドットSの座標を検出し、該スキャン画像データにおけるドット位置と予め装置が記憶しているテストチャートの正常座標のドット位置とを比較して画像歪み量を検出する。振動等の影響を受けずに正常にスキャンが行われれば、どのドットも予め装置が記憶している正常座標と一致し、画像歪みなしと判断される。
【0031】
ただし、テストチャートTがスキャナユニット130に斜めに配置されていると、振動の影響がなくとも座標ズレが検出されてしまう。そこで、最初にスキャンユニット130において振動の影響のない状態でテストチャートTの2点の基準点(R1,R2)を検出し、これを基準として他のドットの正常座標を算出し、その後スキャンしたドットの座標と比較することでテストチャートTの斜め配置の影響を除去することが好ましい。なお、検出した斜め角度が大きく、正常な歪み検出ができない場合(予め設定された閾値を超える場合)には測定を中止することが望ましい。
【0032】
なお、振動の影響のない状態での基準点(R1,R2)の検出とは、図9のような軸回転による回転ズレ角度θを極力小さくするため、例えばテストチャートTのスキャン時に、キャリッジを停止した状態で読み取ること、あるいはスキャン走査速度を低速にして読み取ることである。さらにはテストチャートTのスキャン時に、スキャン走査を微小走査ごとに停止して、読み取りは停止状態で基準点(R1,R2)を読み取ってもよい。
【0033】
図12は、テストチャートのスキャン画像データに画像歪みが発生している場合の歪み検出状態を示す図である。
振動によって画像歪みが発生した場合には、スキャン画像上ではドットが正常座標S2からずれた位置S2’に検出される。このとき、基準点R1を基準とした座標は、検出点S2’(a’,b’)、正常座標S2(a,b)であり、この場合の画像歪み量(ズレ量)は正常座標S2と検出点S2’の座標の差(x=a’−a、y=b’−b)として、それぞれ記憶される。
【0034】
ここで、光学読み取りユニット131の速度変動と、検出点のX・Y方向へのズレだけを想定する場合、テストチャートはX方向に一列に並ぶチャートで十分だが、軸回転による歪みは上記の2次元格子チャート(図11)でなければ検出できない。すなわち、スキャナユニット130の構造では、ガイドロッド134と駆動ベルト135が光学読み取りユニット131の重心から離れた位置に接続されることが一般的であり、ガイドロッド134と駆動ベルト取り付け位置は同軸とならないため、ガイドロッド134を回転中心とした軸回転ズレを誘発する。このため、二次元格子のテストチャートで歪み補正を行えれば、このような構造上の原因による歪みも補正できる。
【0035】
ところで、このようなズレの発生量は、プリンタユニット140のキャリッジ141の動作条件に依存する。そこで本発明では、画像形成手段であるキャリッジ141の動作条件ごとに前記歪み補正テーブルを作成する。すなわち、キャリッジ141の動作条件を変更して、それぞれの条件下でテストチャートの測定を行い、それぞれで前述した画像歪み量を求め、データ取得時のキャリッジ141の加速度で整理しテーブル化し、歪み補正テーブルとしてRAM205に保存する。
【0036】
また、加速度は、プリンタユニット140において計測されるキャリッジ141の位置情報(例えば、キャリッジ支持ロッド142に沿って設けられたエンコーダで読み取ったキャリッジ141の位置情報)の時間当たりの変化量から計算するとよい。例えば、ある時間に図13に示すテストチャートTのドットS11〜S19(S1xの一行)を読み取った場合には、その時間の加速度をプリンタユニット130のキャリッジ位置カウンタから計算する。そして、このときの画像歪み量(ズレ量)をその加速度に紐づけてテーブル化する。
【0037】
なお、キャリッジ141の速度が収束(減速動作であれば停止、加速動作であれば目標速度到達)しても歪みが収束しない場合には、速度収束後はズレ量を時間の関数としてテーブル化するとよい。また、ズレ量との相関関係が加速度よりも明確であれば加速度以外に速度のような変数を用いても良い。
【0038】
ここで、歪み補正テーブルにおけるキャリッジ141の動作条件は、キャリッジ141の走査動作における種々のパラメータである。表1にキャリッジ走査の動作パラメータ例を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
ここでは、キャリッジ141の走査動作における加減速パターン(停止状態から加速、減速して停止、減速して反転加速など)、走査の向き(移動方向/往路方向、復路方向)、定速走査時の狙い速度(キャリッジ速度/高速、低速など)、走査方向の加減速位置(ホームポジション、右用紙端、左用紙端、空吐出位置など)があり、これらのうち少なくともいずれか1つで歪み補正テーブルが区別される。なお、キャリッジ速度や加減速位置は、実際のプリンタ100の印字モードで使用される値を用いるとよい。
【0041】
表2に、ある動作条件における歪み補正テーブルを示す。ここでは、キャリッジ141の走査動作における加減速パターン(停止から加速)、キャリッジ速度(高速)、加減速位置(ホームポジション)を固定し、テストチャートの各行でキャリッジ加速度を変化させた場合の画像歪み量を求めている。
【0042】
【表2】
【0043】
また、歪み補正テーブルにおいて、キャリッジ141の動作条件としてパラメータの設定値を記録せずに、サーボ制御の制御モード名で記録してもよい。これによれば、記録データを削減することができる。表3にキャリッジ走査のサーボ制御モードと設定パラメータの関係を示す。この場合、歪み補正テーブルは、サーボ制御モードごとで区別されるようになる。
【0044】
【表3】
【0045】
なお、上記のようにテストチャートのドットのズレ量の実測値のみで歪み補正を行おうとすると、テーブルデータ全てを実測するための膨大なサンプルが必要になり実現は困難である。高精度な歪み補正テーブルを用意しようとすればするほど、測定工数の増大とデータ容量の増大を招く。
【0046】
そこで、前記歪み補正テーブルを用いて、キャリッジ141の走査動作における走査加速度と画像歪み量(ズレ量)との関数を求め、該関数から必要な加速度における画像歪み量(ズレ量)を算出するようにするとよい。このような関数は、2点の実測データ間を直線で結んだ一次関数でも良いし(図14(a))、複数の実測データにフィッティングさせた高次のフィッティング関数でも良い(図14(b))。図14(a)のように直線補間であれば比較的容易に計算できるメリットがあり、図14(b)のように高次のフィッティング関数であれば、より高精度の補完と実測範囲よりも広い範囲でも歪み量を予測できるメリットがある。
【0047】
なお、前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)の設計工程段階に作成するようにするとよい。すなわち、設計者が測定したデータを出荷プログラムに盛り込んで機種共通のデータ(歪み補正テーブル)とすれば、測定工数を最小限に抑えることができる。また、画像形成装置マシンごとのバラツキを考慮して、生産工程段階で各マシン個別に歪み補正テーブルを作成しても良い。マシンごとに歪み補正テーブルを作成する場合には、工場出荷時に行えばユーザーに負荷を与えずに機能を達成できる。
あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に歪み補正テーブルを作成するようにしてもよい。これにより経時変化に対応することもできる。
【0048】
つぎに、この歪み補正テーブルを用いた、スキャン画像データについて振動に伴う画像歪みを補正する画像処理について説明する。
【0049】
図15は、プリンタスキャナ複合機100において歪み補正を行う場合のスキャン画像の処理フローである。
(S21) まずスキャナユニット130のイメージセンサで画像データ(スキャン画像データ)を読み取る。
(S22) ついで、センサドライバ202でスキャン画像データであるアナログ読み取り信号をデジタルデータ(生画像データ)に変換した後、該デジタルデータをRAM205に格納する。
(S23) スキャナユニット130の画像読み取りの際にプリンタユニット140においてキャリッジ141が動作中であるか否かを確認する。
(S24) キャリッジ動作中にスキャンを行っている場合(ステップS23のYes)、イメージセンサで画像を取り込んだ時点のキャリッジ141の動作条件(動作モードと加速度)を取得する。
(S25) ついで、取得したキャリッジ141の動作条件に対応する歪み補正テーブルをRAM205から読み出し、該歪み補正テーブルを利用して、イメージプロセッサ203においてRAM205に格納された生画像データの画像歪み補正を行う。また、合わせてノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を行う。
【0050】
(S26) キャリッジ動作中にスキャンを行っていない場合(ステップS23のNo)、RAM205に格納された生画像データについて、イメージプロセッサ203によりノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を行う。
(S27) さらに前記画像処理後の画像データについて出力先の要求に応じて解像度変更、誤差拡散処理、データ圧縮などの画像補正(画像処理)を行い、印刷画像データとする。
(S28) 最後に、印刷画像データを所定の出力先(ホストPCまたは画像出力制御部210)に出力する。
【0051】
図16,図17に、ステップS25において行われる歪み補正の実施例を示す。
図16では、例として一次元で並んだドット(ここでは、S11〜S19の一行分のドット)を、全ての同じ解像度空間で補正する場合を説明する。
まず、図16(b)は、スキャン画像データが原稿(図16(a))のドット位置からずれた座標で取り込まれた画素(ドットデータ)を示している。ここで、歪み補正テーブルを用いて、ずれた画素を正常な座標位置に移動させる座標変換処理を行う(図16(c))。図16(b)ではS11,S12,S13,S18,S19のドット位置に相当する画素はそのままで、S14,S15,S16,S17のドット位置に相当する画素を図16(c)ではそれぞれ1つずつ左隣のドット位置に移動させている。
【0052】
次に、画素合成処理を行う(図16(d))。このステップでは、複数の画素が重なった場合(S18のドット位置で重なった2つの画素)にはこれらを平均した画素を合成して置き換える。また、抜けが発生した座標N(S14のドット位置)には、隣接する画素L、Mを平均したものを合成して補完し、補正後のスキャン画像データとする。
【0053】
図17では、一次元で並んだドット(ここでは、S21〜S29の一行分のドット)を、座標変換をスキャン解像度よりも高解像度の空間で行って補正する場合を説明する。スキャン画像よりも高解像度で歪み補正テーブルが作成された場合、また歪み補正テーブルから関数を作成して任意の加速度で歪み量を算出できる場合は、この方法で高精度な歪み補正が可能である。
【0054】
まず、図17(b)は、スキャン画像データが原稿(図17(a))のドット位置からずれた座標で取り込まれた画素(ドットデータ)を示している。ここで、歪み補正テーブルを用いて、ずれた画素を正常な座標位置に移動させる座標変換処理を行う(図17(c))。スキャン画像データは座標変換時に、高解像度の空間(図17(c)で実線で囲んだ部分)で座標変換が行われる。
【0055】
つぎに、図17(c)において要求されている座標の画素が存在しない場合(原稿のドット位置に対応する画素が存在しない場合)には、目的の座標に隣接している画素の平均として新しい画素データを合成する(図17(d))。このとき、目的の座標との空間距離で重み付けを行って平均化を行う。例えば、合成する画素Rと、2つの隣接画素P、Qとの距離が、P−R=60、Q−R=40であれば、画素Rは画素Pと画素Qを40:60の重み付けでマージして生成される。これを補正後のスキャン画像データとする。
【0056】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る画像形成装置に一態様であるインクジェットプリンタ・スキャナ一体型複合機(プリンタスキャナ複合機)の構成例を示す概略図である。
【図2】スキャナユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図3】光学読み取りユニットの構成例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置に一態様であるプリンタスキャナ複合機の制御ブロック図である。
【図5】プリンタスキャナ複合機における一般的なスキャンデータ処理のフローチャートである。
【図6】スキャナユニットを側面から見た断面図である。
【図7】スキャン画像データにおいて画素の間隔が本来の間隔よりもスキャン走査方向に長く引き伸ばされた状態を示す概略図である。
【図8】スキャン画像データにおいて画素の間隔が本来の間隔よりもスキャン走査に対して垂直方向に長く引き伸ばされた状態を示す概略図である。
【図9】スキャン画像データにおいて画素の配置として軸回転ずれが発生した状態を示す概略図である。
【図10】スキャン画像データの軸回転ずれの発生原因としてスキャナユニットの構成を説明する概略図である。
【図11】本発明で用いるテストチャートの構成例を示す平面図である。
【図12】テストチャートのスキャン画像データに画像歪みが発生している場合の歪み検出状態を示す図である。
【図13】テストチャートにおけるドット位置の説明図である。
【図14】歪み補正テーブルから得られる関数に基づく加速度−ズレ量曲線を示す図である。
【図15】本発明のプリンタスキャナ複合機おいて歪み補正を行う場合のスキャン画像の処理フローである。
【図16】全ての同じ解像度空間で補正する歪み補正の説明図である。
【図17】座標変換をスキャン解像度よりも高解像度の空間で行って補正する歪み補正の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
100 プリンタスキャナ複合機
120 ADF(自動原稿送り装置)
130 スキャナユニット
131 光学読み取りユニット
131a 画像入力スリット
132 走査モーター
133 原稿読み取りガラス
134 ガイドロッド
135 駆動ベルト
136 蓋
137 制御回路
140 プリンタユニット
141 キャリッジ
142 キャリッジ支持ロッド
143 用紙搬送機構
144 主走査モーター
201 イメージセンサ(CCD)
202 センサドライバ
203 イメージプロセッサ
204 CPU
205 RAM
206 ROM
207 メカ制御I/O
208 アクチュエータ
209 センサ
210 画像出力制御部
211 プリンタヘッド
212 ホストI/F
R1,R2 基準点
S ドット
T テストチャート
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナを搭載したインクジェット記録装置である画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スキャナプリンタ複合機での画像読み取りにおいて、装置が振動している状態だと装置の歪みにより光学系の位置関係が乱れて、読み取り画像が歪む問題がある。振動源がスキャナ内の読取装置の走査や、プリンタ内の印刷機構の走査によるものであれば、走査を一時的に停止したり、加速度を低く制御したりすることで振動を抑制し、画像品質を向上させる技術が既に知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、振動による画像品質低下を防ぐ目的で、スキャナ内の光学読み取り機構の走査を行うステッピングモーターの制御を、ユーザーが指示したモードが振動の影響を受けやすい場合には速度が遅い低振動の制御モードで制御する制御方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、今までの画像形成装置のように装置内の機構を一時停止したり加速度を低く制御したりする方法では、スキャナの読み取り速度やコピー速度を抑制することとなり、生産性を下げてしまう問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005-234357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、スキャナを搭載した画像形成装置において生産性を下げずに高品質な画像読み取りが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 画像形成手段(キャリッジ141)を動作させて記録媒体に画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット140)と、読取手段(光学読み取りユニット131)をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニット(スキャナユニット130)と、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段(イメージプロセッサ203)と、を備える画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)において、前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段(CPU204)と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段(RAM205)と、を有し、前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする画像形成装置(図1,図4,図15)。
〔2〕 前記テストチャートは、記録媒体上に複数のドットが所定のパターンで配列されたドットチャートであり、前記歪み量検出手段は、該テストチャートの正常座標のドット位置と前記スキャン画像データにおけるドット位置とを比較して画像歪み量を検出することを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔3〕 前記テストチャートの正常座標のドット位置は、該テストチャートの読取時に前記画像形成手段の動作の読み取りへの影響を排除して読み取った所定の2点のドットを基準点として予測されるものであることを特徴とする前記〔2〕に記載の画像形成装置。
〔4〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の動作条件ごとに作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔5〕 前記画像形成手段の動作条件は、該画像形成手段の走査動作における走査方向の加減速位置、加減速パターン、走査の向き、定速走査時の狙い速度の少なくともいずれか1つで区別されるものであることを特徴とする前記〔4〕に記載の画像形成装置。
〔6〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作におけるサーボ制御モードごとに作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔7〕 前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関係を示すテーブルであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔8〕 前記歪み補正テーブルを用いて求められる画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関数から、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データにおける歪み補正量を算出し、前記画像処理手段は、該歪み補正量を用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする前記〔7〕に記載の画像形成装置。
〔9〕 前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置の設計工程段階または生産工程段階、あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に作成されることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像読取ユニット(スキャナ)や画像形成ユニット(プリンタ)の生産性を下げずに、振動やスキャン走査駆動によるスキャン画像の品質低下を抑制することができる。すなわち、振動の発生を抑制するのではなく、印刷とともに画像読み取り(スキャン)が行われるときのスキャン画像の歪みを予測して補正することで、装置の生産性を損なわずに画像品質の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置に一態様であるインクジェットプリンタ・スキャナ一体型複合機の構成例を示す。
プリンタスキャナ複合機100は、セットされた読取対象の原稿を画像読取ユニット130に送る自動原稿送り装置(ADF)120と、ADF120から送られてきた原稿を画像として読み取る画像読取ユニット(スキャナユニット)130と、画像読取ユニット130で読み取られた画像データまたは外部から入力される画像データに基づいて画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット)140と、を備える(図1(a))。
【0010】
ここで、プリンタユニット140は、キャリッジ支持ロッド142にキャリッジ141を摺動可能に保持し、主走査モーター144でキャリッジ141を用紙の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に移動させる。このキャリッジ141には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔を配列した液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(プリンタヘッド)を搭載している。プリンタユニット140による画像形成(印字)は、用紙搬送機構143によって搬送されてきた記録媒体である用紙Pの上を、キャリッジ141がキャリッジ支持ロッド142に沿って往復走査しながらインク滴を吐出することで行われる。
【0011】
また、画像読み取り(スキャン)は、スキャナユニット130内の光学読取手段(光学読み取りユニット)131が原稿読み取りガラス133の下を走査モーター132の駆動により移動するか、停止した光学読み取りユニット131の上をADF120によって原稿を搬送しながら、原稿の反射光に基づく画像データを取り込むことで行われる。
【0012】
印字動作ではキャリッジ141が高速で往復走査するため、キャリッジ141の動きに同期して画像形成装置100本体マシンに振動が発生する。このため、コピー印刷のように印字動作とスキャン動作を同時に要求され、それを実行した場合、マシンが振動している状態でスキャナユニット130は画像の読み取りを行うことになる。このとき、装置の歪みや光学読み取りユニット131の走査速度変動により、意図した座標の画像が取り込めずにスキャン画像に歪みが発生する。
【0013】
図2は、スキャナユニットの構成を示す外観斜視図である。
スキャナユニット130は、原稿読み取りガラス133の下に光学読取ユニット131が配置されており、光学読み取りユニット131の画像入力スリット131aから入力された原稿の反射光を取り込んで画像入力スリット131a分の原稿を読み取る。また光学読み取りユニット131は、ガイドロッド134に支持されており、駆動ベルト135を介して走査モーター132で走査されることにより、原稿全体を読み取ることができる。
【0014】
図3は、光学読み取りユニットの構成例を示す断面図である。
例えば、光学読み取りのためのイメージセンサとしてCCD(電荷結合素子(Charge
Coupled Device))を用いる場合、照射ランプの光による原稿の反射光をCCDイメージセンサに入射させて画像データを得ているが、CCDイメージセンサのサイズを原稿の幅に対して小さくするため、原稿の反射光についてミラー(図中、ミラー1,ミラー2,ミラー3,ミラー4)によってその光路を延長し、レンズによってその集光を行っている。また原稿画像の読み取りは、光学読み取りユニット131を走査モーター132の駆動により一定速度で走査しながら、光学読み取りユニット131内のCCDイメージセンサに入力された原稿の反射光に基づく情報を一定の時間周期で取り込むことで、原稿のスキャン対象画像を一定間隔の画素(スキャン画像データ)に分解して読み取っている。
【0015】
図4にプリンタスキャナ複合機100の制御ブロック図を示す。
プリンタスキャナ複合機100は、スキャナユニット130のイメージセンサ201で取り込まれた画像データ(スキャン画像データ)であるアナログ読み取り信号をデジタル画像データに変換するセンサドライバ202と、デジタル画像データについて画像処理を行うイメージプロセッサ203と、装置全体の制御を司るCPU204と、画像データ等を一時格納するRAM205と、CPU204が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM206と、各種のセンサ209を有し、主走査モーター144、走査モーター132、プリンタヘッド211の液滴吐出機構などのアクチュエータ208の駆動を制御するメカ制御I/O207と、プリンタヘッド211にスキャナユニット130で得られた画像データあるいはホストから入力された画像データに基づいて画像形成するための信号を出力する画像出力制御部210と、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であるホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F212と、を備えている。
【0016】
ここで、プリンタスキャナ複合機100においてCPU204は、スキャナユニット130のイメージセンサ201で読み取られた画像データについて所定の画像処理(後述)を行なわせ、印刷画像データを得る。ついで、CPU204は、印刷指示を受けた印刷画像データを解析し、データの並び替え処理等を行って画像出力制御部210に画像データを転送する。なお、画像出力するための画像データのビットマップデータへの変換は、例えばROM206にフォントデータを格納して行っても良い。
【0017】
画像出力制御部210は、プリンタヘッド211の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータをクロック信号に同期させてシリアルデータで送出する。ついでキャリッジ141は主走査モーター144の駆動により走査され、プリンタヘッド211から前記ドットパターンデータに基づいてインクが用紙P上に吐出される。このインク吐出動作は用紙Pが副走査方向に搬送されるごとに繰り返され画像形成が行われる。
【0018】
図5に、プリンタスキャナ複合機100における一般的なスキャンデータ処理のフローチャートを示す。
(S11) まずスキャナユニット130のイメージセンサで画像データ(スキャン画像データ)が読み取られる。
(S12) ついで、センサドライバ202でスキャン画像データであるアナログ読み取り信号をデジタルデータ(生画像データ)に変換された後、該デジタルデータはRAM205に格納される。
(S13) つぎに、RAM205に格納された生画像データは、イメージプロセッサ203によりノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を施される。
(S14) さらに出力先の要求に応じて解像度変更、誤差拡散処理、データ圧縮などの画像補正(画像処理)を施される。
(S15) 最後に、印刷画像データとして所定の出力先(ホストPCまたは画像出力制御部210)に出力される。
【0019】
ここで、光学読み取りユニット131の走査を一定速度に維持する制御は、走査モーター(ステッピングモーター)132を一定周波数でステップさせる方法が一般的であり、光学読み取りユニット131の走査速度は該走査モーター132の駆動周波数に比例する。このとき、この方法ではエンコーダなどによる速度のフィードバック制御は行われない。
【0020】
また、プリンタユニット140の印刷動作などによる振動によってスキャナユニット130が揺らされると、駆動ベルト135の伸張などにより光学読み取りユニット131の走査速度に速度ムラが発生し目標位置からのズレが生じてしまい、イメージセンサにはスキャン対象画像の意図した座標とは異なる座標の情報が入力されるため、読み取り画像が歪む結果となる。なお、当該プリンタスキャナ複合機100では、このような速度変動の発生及びズレ量は検知することができない。
【0021】
図6に、スキャナユニット130を側面から見た断面図を示す。
図6(b)には、振動がなく、光学読み取りユニット131がF方向(図中左方向)に速さvで走査されながら、座標x1で原稿の画素を取り込み、t時間後に座標x2の原稿の画素を正常に取り込む場合を示している。
【0022】
これに対して、図6(c)のように、振動によりスキャン走査速度が減速されてv’ になると、座標x2より手前の座標x2’の原稿の画像をx2の画素として取り込んでしまう。この場合、取り込まれた画像は、前述の画像処理の段階でx1−x2間の画像として処理されるため、x1-x2’間の本来の間隔よりも長く引き伸ばされた画像となってしまう(図7)。すなわち、実際のスキャン距離がx1-x2’間距離=v’ tであるところ、スキャン距離がx1−x2間距離=v
tとして処理されてしまう。
【0023】
このような取り込み画像の歪みは、イメージセンサを含む光学読み取りユニット131が想定している位置からズレた位置にあることが原因である。そのため、取り込み画像の歪みは、上記のようなスキャン走査方向のみのズレに限られるものではなく、スキャナユニット130の筐体の歪みに起因してスキャン走査方向と垂直方向のズレも発生しうる(図8)。なお図8は、座標x2の位置でスキャン走査と垂直方向のズレが発生した場合のスキャン画像である。
【0024】
あるいは、軸回転のズレ(図9)も発生しうる。これは、図10に示すように、光学読み取りユニット131を支持するガイドロッド134と、走査駆動するための駆動ベルト135が同軸上にないために、ガイドロッド支持部を回転中心としたヨーモーメントが発生して光学読み取りユニット131が「首振り」する現象を引き起こすためである。この現象は、スキャン走査の加減速時に一時的に発生する場合もあるし、走査中に継続して発生する場合もある。角度θは速度や加速度が大きいほど大きくなる。なお、図9は、軸回転ズレが角度θで発生し続けた場合のスキャン画像である。
【0025】
この問題に対して、これまで知られている対策は以下のものが挙げられる。
・キャリッジ動作中はスキャン動作を行わないで、キャリッジ停止中にスキャンを行う。
・スキャナ内の光学ユニットの走査による振動に対して、駆動モーターの制御を必要に応じて低振動のモードに切替えて制御する。
しかしながら、これらの方法ではスキャン画像の歪みは低減できるが、印字やスキャンの生産性が下がるデメリットがあった。
【0026】
そのため、本発明では、予め記憶したキャリッジ走査及びスキャン走査と画像歪みの関係を用い、スキャン画像データに所定の画像処理を施すことで歪みを補正するものである。この方法であれば印字やスキャンの生産性を下げずにスキャン画像の品質低下を低減することができる。以下、本発明の根幹をなす部分について説明する。
【0027】
本発明に係る画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)は、画像形成手段(キャリッジ141)を動作させて記録媒体(用紙P)に画像を形成する画像形成ユニット(プリンタユニット140)と、読取手段(光学読み取りユニット131)をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニット(スキャンユニット130)と、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段(イメージプロセッサ203)と、を備える画像形成装置において、前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段(CPU204)と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段(RAM205)と、を有し、前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とするものである。
【0028】
ここで、まず歪み検出用の前記テストチャートは、例えば一定間隔でドットが格子状に配列されたチャートであり、該テストチャートをスキャナユニット130にセットし、キャリッジ141を往復走査させながらスキャンを行い、テストチャートの画像を読み取ることを行う。
【0029】
図11に、歪み検出用テストチャートのドットパターン例を示す。
テストチャートTは、記録媒体上に、複数のドットSが所定のパターンで印刷などにより形成されたものであり、X方向に間隔a、Y方向に間隔bとなるように二次元格子状に形成されている。また、テストチャートTのドットパターンの図中左端の上下(テストチャートTの先頭行の両端)に2つのドットを形成しており、一方を基準点R1、他方を基準点R2としている。
【0030】
歪み検出に際しては、まず図11に示したテストチャートTをスキャンユニット130においてスキャンしてスキャン画像データを得て、CPU204が該スキャン画像データにおける各ドットSの座標を検出し、該スキャン画像データにおけるドット位置と予め装置が記憶しているテストチャートの正常座標のドット位置とを比較して画像歪み量を検出する。振動等の影響を受けずに正常にスキャンが行われれば、どのドットも予め装置が記憶している正常座標と一致し、画像歪みなしと判断される。
【0031】
ただし、テストチャートTがスキャナユニット130に斜めに配置されていると、振動の影響がなくとも座標ズレが検出されてしまう。そこで、最初にスキャンユニット130において振動の影響のない状態でテストチャートTの2点の基準点(R1,R2)を検出し、これを基準として他のドットの正常座標を算出し、その後スキャンしたドットの座標と比較することでテストチャートTの斜め配置の影響を除去することが好ましい。なお、検出した斜め角度が大きく、正常な歪み検出ができない場合(予め設定された閾値を超える場合)には測定を中止することが望ましい。
【0032】
なお、振動の影響のない状態での基準点(R1,R2)の検出とは、図9のような軸回転による回転ズレ角度θを極力小さくするため、例えばテストチャートTのスキャン時に、キャリッジを停止した状態で読み取ること、あるいはスキャン走査速度を低速にして読み取ることである。さらにはテストチャートTのスキャン時に、スキャン走査を微小走査ごとに停止して、読み取りは停止状態で基準点(R1,R2)を読み取ってもよい。
【0033】
図12は、テストチャートのスキャン画像データに画像歪みが発生している場合の歪み検出状態を示す図である。
振動によって画像歪みが発生した場合には、スキャン画像上ではドットが正常座標S2からずれた位置S2’に検出される。このとき、基準点R1を基準とした座標は、検出点S2’(a’,b’)、正常座標S2(a,b)であり、この場合の画像歪み量(ズレ量)は正常座標S2と検出点S2’の座標の差(x=a’−a、y=b’−b)として、それぞれ記憶される。
【0034】
ここで、光学読み取りユニット131の速度変動と、検出点のX・Y方向へのズレだけを想定する場合、テストチャートはX方向に一列に並ぶチャートで十分だが、軸回転による歪みは上記の2次元格子チャート(図11)でなければ検出できない。すなわち、スキャナユニット130の構造では、ガイドロッド134と駆動ベルト135が光学読み取りユニット131の重心から離れた位置に接続されることが一般的であり、ガイドロッド134と駆動ベルト取り付け位置は同軸とならないため、ガイドロッド134を回転中心とした軸回転ズレを誘発する。このため、二次元格子のテストチャートで歪み補正を行えれば、このような構造上の原因による歪みも補正できる。
【0035】
ところで、このようなズレの発生量は、プリンタユニット140のキャリッジ141の動作条件に依存する。そこで本発明では、画像形成手段であるキャリッジ141の動作条件ごとに前記歪み補正テーブルを作成する。すなわち、キャリッジ141の動作条件を変更して、それぞれの条件下でテストチャートの測定を行い、それぞれで前述した画像歪み量を求め、データ取得時のキャリッジ141の加速度で整理しテーブル化し、歪み補正テーブルとしてRAM205に保存する。
【0036】
また、加速度は、プリンタユニット140において計測されるキャリッジ141の位置情報(例えば、キャリッジ支持ロッド142に沿って設けられたエンコーダで読み取ったキャリッジ141の位置情報)の時間当たりの変化量から計算するとよい。例えば、ある時間に図13に示すテストチャートTのドットS11〜S19(S1xの一行)を読み取った場合には、その時間の加速度をプリンタユニット130のキャリッジ位置カウンタから計算する。そして、このときの画像歪み量(ズレ量)をその加速度に紐づけてテーブル化する。
【0037】
なお、キャリッジ141の速度が収束(減速動作であれば停止、加速動作であれば目標速度到達)しても歪みが収束しない場合には、速度収束後はズレ量を時間の関数としてテーブル化するとよい。また、ズレ量との相関関係が加速度よりも明確であれば加速度以外に速度のような変数を用いても良い。
【0038】
ここで、歪み補正テーブルにおけるキャリッジ141の動作条件は、キャリッジ141の走査動作における種々のパラメータである。表1にキャリッジ走査の動作パラメータ例を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
ここでは、キャリッジ141の走査動作における加減速パターン(停止状態から加速、減速して停止、減速して反転加速など)、走査の向き(移動方向/往路方向、復路方向)、定速走査時の狙い速度(キャリッジ速度/高速、低速など)、走査方向の加減速位置(ホームポジション、右用紙端、左用紙端、空吐出位置など)があり、これらのうち少なくともいずれか1つで歪み補正テーブルが区別される。なお、キャリッジ速度や加減速位置は、実際のプリンタ100の印字モードで使用される値を用いるとよい。
【0041】
表2に、ある動作条件における歪み補正テーブルを示す。ここでは、キャリッジ141の走査動作における加減速パターン(停止から加速)、キャリッジ速度(高速)、加減速位置(ホームポジション)を固定し、テストチャートの各行でキャリッジ加速度を変化させた場合の画像歪み量を求めている。
【0042】
【表2】
【0043】
また、歪み補正テーブルにおいて、キャリッジ141の動作条件としてパラメータの設定値を記録せずに、サーボ制御の制御モード名で記録してもよい。これによれば、記録データを削減することができる。表3にキャリッジ走査のサーボ制御モードと設定パラメータの関係を示す。この場合、歪み補正テーブルは、サーボ制御モードごとで区別されるようになる。
【0044】
【表3】
【0045】
なお、上記のようにテストチャートのドットのズレ量の実測値のみで歪み補正を行おうとすると、テーブルデータ全てを実測するための膨大なサンプルが必要になり実現は困難である。高精度な歪み補正テーブルを用意しようとすればするほど、測定工数の増大とデータ容量の増大を招く。
【0046】
そこで、前記歪み補正テーブルを用いて、キャリッジ141の走査動作における走査加速度と画像歪み量(ズレ量)との関数を求め、該関数から必要な加速度における画像歪み量(ズレ量)を算出するようにするとよい。このような関数は、2点の実測データ間を直線で結んだ一次関数でも良いし(図14(a))、複数の実測データにフィッティングさせた高次のフィッティング関数でも良い(図14(b))。図14(a)のように直線補間であれば比較的容易に計算できるメリットがあり、図14(b)のように高次のフィッティング関数であれば、より高精度の補完と実測範囲よりも広い範囲でも歪み量を予測できるメリットがある。
【0047】
なお、前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置(プリンタスキャナ複合機100)の設計工程段階に作成するようにするとよい。すなわち、設計者が測定したデータを出荷プログラムに盛り込んで機種共通のデータ(歪み補正テーブル)とすれば、測定工数を最小限に抑えることができる。また、画像形成装置マシンごとのバラツキを考慮して、生産工程段階で各マシン個別に歪み補正テーブルを作成しても良い。マシンごとに歪み補正テーブルを作成する場合には、工場出荷時に行えばユーザーに負荷を与えずに機能を達成できる。
あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に歪み補正テーブルを作成するようにしてもよい。これにより経時変化に対応することもできる。
【0048】
つぎに、この歪み補正テーブルを用いた、スキャン画像データについて振動に伴う画像歪みを補正する画像処理について説明する。
【0049】
図15は、プリンタスキャナ複合機100において歪み補正を行う場合のスキャン画像の処理フローである。
(S21) まずスキャナユニット130のイメージセンサで画像データ(スキャン画像データ)を読み取る。
(S22) ついで、センサドライバ202でスキャン画像データであるアナログ読み取り信号をデジタルデータ(生画像データ)に変換した後、該デジタルデータをRAM205に格納する。
(S23) スキャナユニット130の画像読み取りの際にプリンタユニット140においてキャリッジ141が動作中であるか否かを確認する。
(S24) キャリッジ動作中にスキャンを行っている場合(ステップS23のYes)、イメージセンサで画像を取り込んだ時点のキャリッジ141の動作条件(動作モードと加速度)を取得する。
(S25) ついで、取得したキャリッジ141の動作条件に対応する歪み補正テーブルをRAM205から読み出し、該歪み補正テーブルを利用して、イメージプロセッサ203においてRAM205に格納された生画像データの画像歪み補正を行う。また、合わせてノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を行う。
【0050】
(S26) キャリッジ動作中にスキャンを行っていない場合(ステップS23のNo)、RAM205に格納された生画像データについて、イメージプロセッサ203によりノイズ除去や色調補正などの画像補正(画像処理)を行う。
(S27) さらに前記画像処理後の画像データについて出力先の要求に応じて解像度変更、誤差拡散処理、データ圧縮などの画像補正(画像処理)を行い、印刷画像データとする。
(S28) 最後に、印刷画像データを所定の出力先(ホストPCまたは画像出力制御部210)に出力する。
【0051】
図16,図17に、ステップS25において行われる歪み補正の実施例を示す。
図16では、例として一次元で並んだドット(ここでは、S11〜S19の一行分のドット)を、全ての同じ解像度空間で補正する場合を説明する。
まず、図16(b)は、スキャン画像データが原稿(図16(a))のドット位置からずれた座標で取り込まれた画素(ドットデータ)を示している。ここで、歪み補正テーブルを用いて、ずれた画素を正常な座標位置に移動させる座標変換処理を行う(図16(c))。図16(b)ではS11,S12,S13,S18,S19のドット位置に相当する画素はそのままで、S14,S15,S16,S17のドット位置に相当する画素を図16(c)ではそれぞれ1つずつ左隣のドット位置に移動させている。
【0052】
次に、画素合成処理を行う(図16(d))。このステップでは、複数の画素が重なった場合(S18のドット位置で重なった2つの画素)にはこれらを平均した画素を合成して置き換える。また、抜けが発生した座標N(S14のドット位置)には、隣接する画素L、Mを平均したものを合成して補完し、補正後のスキャン画像データとする。
【0053】
図17では、一次元で並んだドット(ここでは、S21〜S29の一行分のドット)を、座標変換をスキャン解像度よりも高解像度の空間で行って補正する場合を説明する。スキャン画像よりも高解像度で歪み補正テーブルが作成された場合、また歪み補正テーブルから関数を作成して任意の加速度で歪み量を算出できる場合は、この方法で高精度な歪み補正が可能である。
【0054】
まず、図17(b)は、スキャン画像データが原稿(図17(a))のドット位置からずれた座標で取り込まれた画素(ドットデータ)を示している。ここで、歪み補正テーブルを用いて、ずれた画素を正常な座標位置に移動させる座標変換処理を行う(図17(c))。スキャン画像データは座標変換時に、高解像度の空間(図17(c)で実線で囲んだ部分)で座標変換が行われる。
【0055】
つぎに、図17(c)において要求されている座標の画素が存在しない場合(原稿のドット位置に対応する画素が存在しない場合)には、目的の座標に隣接している画素の平均として新しい画素データを合成する(図17(d))。このとき、目的の座標との空間距離で重み付けを行って平均化を行う。例えば、合成する画素Rと、2つの隣接画素P、Qとの距離が、P−R=60、Q−R=40であれば、画素Rは画素Pと画素Qを40:60の重み付けでマージして生成される。これを補正後のスキャン画像データとする。
【0056】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る画像形成装置に一態様であるインクジェットプリンタ・スキャナ一体型複合機(プリンタスキャナ複合機)の構成例を示す概略図である。
【図2】スキャナユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図3】光学読み取りユニットの構成例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置に一態様であるプリンタスキャナ複合機の制御ブロック図である。
【図5】プリンタスキャナ複合機における一般的なスキャンデータ処理のフローチャートである。
【図6】スキャナユニットを側面から見た断面図である。
【図7】スキャン画像データにおいて画素の間隔が本来の間隔よりもスキャン走査方向に長く引き伸ばされた状態を示す概略図である。
【図8】スキャン画像データにおいて画素の間隔が本来の間隔よりもスキャン走査に対して垂直方向に長く引き伸ばされた状態を示す概略図である。
【図9】スキャン画像データにおいて画素の配置として軸回転ずれが発生した状態を示す概略図である。
【図10】スキャン画像データの軸回転ずれの発生原因としてスキャナユニットの構成を説明する概略図である。
【図11】本発明で用いるテストチャートの構成例を示す平面図である。
【図12】テストチャートのスキャン画像データに画像歪みが発生している場合の歪み検出状態を示す図である。
【図13】テストチャートにおけるドット位置の説明図である。
【図14】歪み補正テーブルから得られる関数に基づく加速度−ズレ量曲線を示す図である。
【図15】本発明のプリンタスキャナ複合機おいて歪み補正を行う場合のスキャン画像の処理フローである。
【図16】全ての同じ解像度空間で補正する歪み補正の説明図である。
【図17】座標変換をスキャン解像度よりも高解像度の空間で行って補正する歪み補正の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
100 プリンタスキャナ複合機
120 ADF(自動原稿送り装置)
130 スキャナユニット
131 光学読み取りユニット
131a 画像入力スリット
132 走査モーター
133 原稿読み取りガラス
134 ガイドロッド
135 駆動ベルト
136 蓋
137 制御回路
140 プリンタユニット
141 キャリッジ
142 キャリッジ支持ロッド
143 用紙搬送機構
144 主走査モーター
201 イメージセンサ(CCD)
202 センサドライバ
203 イメージプロセッサ
204 CPU
205 RAM
206 ROM
207 メカ制御I/O
208 アクチュエータ
209 センサ
210 画像出力制御部
211 プリンタヘッド
212 ホストI/F
R1,R2 基準点
S ドット
T テストチャート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成手段を動作させて記録媒体に画像を形成する画像形成ユニットと、読取手段をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニットと、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段と、を備える画像形成装置において、
前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段と、を有し、
前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、
前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記テストチャートは、記録媒体上に複数のドットが所定のパターンで配列されたドットチャートであり、
前記歪み量検出手段は、該テストチャートの正常座標のドット位置と前記スキャン画像データにおけるドット位置とを比較して画像歪み量を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テストチャートの正常座標のドット位置は、該テストチャートの読取時に前記画像形成手段の動作の読み取りへの影響を排除して読み取った所定の2点のドットを基準点として予測されるものであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の動作条件ごとに作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段の動作条件は、該画像形成手段の走査動作における走査方向の加減速位置、加減速パターン、走査の向き、定速走査時の狙い速度の少なくともいずれか1つで区別されるものであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作におけるサーボ制御モードごとに作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関係を示すテーブルであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記歪み補正テーブルを用いて求められる画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関数から、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データにおける歪み補正量を算出し、
前記画像処理手段は、該歪み補正量を用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置の設計工程段階または生産工程段階、あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
画像形成手段を動作させて記録媒体に画像を形成する画像形成ユニットと、読取手段をスキャンさせることにより原稿を読み取ってスキャン画像データを得る画像読取ユニットと、前記スキャン画像データについて画像処理を行う画像処理手段と、を備える画像形成装置において、
前記画像形成手段の動作中に既知のテストチャートを前記画像読取ユニットで読み取って得られたスキャン画像データから画像歪み量を検出する歪み量検出手段と、前記画像歪み量から作成される歪み補正テーブルを記憶する記憶手段と、を有し、
前記画像形成手段の動作中に前記画像読取ユニットで原稿を読み取るとき、
前記画像処理手段は、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データについて、前記歪み補正テーブルを用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記テストチャートは、記録媒体上に複数のドットが所定のパターンで配列されたドットチャートであり、
前記歪み量検出手段は、該テストチャートの正常座標のドット位置と前記スキャン画像データにおけるドット位置とを比較して画像歪み量を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テストチャートの正常座標のドット位置は、該テストチャートの読取時に前記画像形成手段の動作の読み取りへの影響を排除して読み取った所定の2点のドットを基準点として予測されるものであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の動作条件ごとに作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段の動作条件は、該画像形成手段の走査動作における走査方向の加減速位置、加減速パターン、走査の向き、定速走査時の狙い速度の少なくともいずれか1つで区別されるものであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作におけるサーボ制御モードごとに作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記歪み補正テーブルは、画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関係を示すテーブルであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記歪み補正テーブルを用いて求められる画像形成手段の走査動作における走査加速度と画像歪み量との関数から、前記画像形成手段の動作中に得られた原稿のスキャン画像データにおける歪み補正量を算出し、
前記画像処理手段は、該歪み補正量を用いて画像歪みを補正する画像処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記歪み補正テーブルは、当該画像形成装置の設計工程段階または生産工程段階、あるいは当該画像形成装置のユーザー操作時に作成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【図4】
【図5】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図16】
【図17】
【図5】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−218867(P2009−218867A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60573(P2008−60573)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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