説明

画像形成装置

【課題】転写ローラの抵抗値変化に伴う転写性の変化が無く、常に最適な転写が行われ、画像濃度変化の少ない画像形成装置を提供すること。
【解決手段】トナー像を担持する像担持体と、該像担持体に担持されたトナー像が転写される側の転写ベルトと、像担持体に担持されたトナー像を転写バイアスの印加により転写ベルト側に転写する転写ローラと、転写ローラと異なる位置で転写ベルトと当接する検知ローラと、検知ローラの電気的特性を検知する検知手段と、該検知手段により検知した電気的特性に基づいて転写ローラに印加する転写バイアスを制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に感光体や転写ベルトなどの像担持体上に形成されたトナー像を転写バイアスの印加により転写ベルトに転写する転写ローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンデム方式のカラー画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を作像する4つの作像部を備え、これらの作像部で作像された各色のトナー像が、無端状の中間転写ベルトに重ねて転写(一次転写)され、中間転写ベルト上で重ねられてなるフルカラーのトナー像が、中間転写ベルトと二次転写ローラとのニップ部において用紙等の媒体に転写(二次転写)される。
【0003】
各作像部は、中間転写ベルトに接触して配置された静電潜像担持体と、該静電潜像担持体にトナーを供給してトナー像を形成する現像剤担持体と、中間転写ベルトを挟んで静電潜像担持体に対向配置された一次転写ローラとを備える。一次転写ローラには所定の電圧が印加され、これにより一次転写ローラと静電潜像担持体との間に電流が流れることで、静電潜像担持体の表面に形成されたトナー像が、一次転写ローラとの対向部において中間転写ベルトに転写(一次転写)される。各色の作像部の一次転写ローラには、転写時に一定の電圧が印加される電源が接続される。
【0004】
しかし、一次転写ローラなどに用いられる導電性の転写ローラは、装置内部の温湿環境の変化によって電気抵抗値が変化しやすく、また、継続して定電圧を印加され続けると、ローラの抵抗値が上昇する。そのため、転写性が変動し、画像濃度が変化するという問題が発生する。そのため、あるタイミング毎に転写ローラに印加する最適な転写電圧の大きさを、ローラの電気抵抗値の変化に応じて制御する必要がある。
【0005】
なお、中間転写ベルトを用いずシートに直接トナー像を転写するための転写ベルト内に転写ローラを有するものもあるが、この場合の転写ローラも上記と同様に抵抗値の問題を有する。
【0006】
転写電圧を制御する方法の一つとして、ATVC(Auto Transfer Voltage Control)制御が提案されている。このATVC制御は、転写ローラの抵抗を正確に検知し、最適な転写バイアスの印加電圧値を決定するために、画像形成工程における前回転工程において、転写ローラの転写バイアスを定電流制御し、この時の転写電圧Vを検知する。この検知した転写電圧Vと、予め設定されたテーブルおよび演算式とに基づき、最適な転写電圧Vを決定するものである。
【0007】
特許文献1においては、転写ローラの転写バイアス補正に関し、一枚目の転写ローラに印加するバイアス電圧を画像形成工程の前回転工程での定電流制御による電圧検知結果に基づいて決定し、複数の画像を連続して転写する場合は、用紙間の非画像部(前の用紙の後端と後の用紙の先端との間)で定電圧印加時の電流検知を複数回行い、検出電流の平均値の、所定電流に対する比率に応じて、転写ローラの抵抗値検知結果を補正し、補正値に基づいて転写バイアスを決定する方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2においては、転写ローラの同軸上で、像担持体の非画像領域に対応する位置に抵抗検知ローラを配置し、画像形成中でも抵抗検知ローラに流れる電流値を検知して、その検知結果を基に転写ローラに与える電圧値を制御する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−45877号公報
【特許文献2】特開2006−133475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしこのATVC制御では、前回転工程が必要なため、予備動作時間がかかり、連続して複数枚の画像形成を行う場合、その都度、前回転工程を行うと、生産性が低下するという問題があった。特許文献1の方法においても、非画像部での電流検出の結果から抵抗値を補正する場合、電流検出期間が短く、正確な抵抗値の検出が困難であり、十分に安定した画像濃度が得られないという問題があった。特に、近年の高速化に伴い、複数枚連続印刷時の用紙間の非画像部がより短くなり、更に、正確な抵抗値の検出が困難となっている。また、特許文献2の方法においても、抵抗検知ローラと転写ローラとが同一軸上に配置されているため、ローラ構成が複雑となり、生産性が低下すると共に、装置の幅が大きくなる。また、1枚のプリントを行う場合は、やはり最適電圧決定のための前回転工程が必要であった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、像担持体に担持されたトナー像を転写バイアスにより転写ベルト側に転写する転写ローラを有する画像形成装置において、転写ローラの抵抗値変化に伴う転写性の変化が無く、常に最適な転写が行われ、連続して複数枚の画像形成を行う場合でも画像濃度変化が少なく、かつ、生産性の低下しない画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は下記の手段のいずれかにより達成される。
【0012】
1.トナー像を担持する像担持体と、
該像担持体に担持された前記トナー像が転写される側の転写ベルトと、
前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルト側に転写する転写ローラと、
前記転写ローラと異なる位置で前記転写ベルトと当接する検知ローラと、
前記検知ローラの電気的特性を検知する検知手段と、
該検知手段により検知した前記電気的特性に基づいて前記転写ローラに印加する前記転写バイアスを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【0013】
2.前記転写ローラは、前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルトの表面に転写することを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0014】
3.前記転写ローラは、前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルト上に搬送される記録媒体に転写することを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0015】
4.前記検知手段は、前記検知ローラと、該検知ローラに対向して配置された対向部材との間の電気的特性を検知することを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0016】
5.前記対向部材がローラ形状であることを特徴とする前記4に記載の画像形成装置。
【0017】
6.前記対向部材は、前記転写ベルトを挟んで前記検知ローラと対向して配置されていることを特徴とする前記4又は5に記載の画像形成装置。
【0018】
7.前記検知ローラの断面形状及び材質は、前記転写ローラの断面形状及び材質と同じであることを特徴とする前記1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0019】
8.前記転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を有し、
該クリーニング手段より前記転写ベルトの進行方向下流側であって、前記転写ローラより前記転写ベルトの進行方向上流側に、前記検知ローラが配置されていることを特徴とする前記1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、転写ローラの抵抗値の変化を検知ローラで代用して検知することできるので、最適な転写バイアスを決定するための予備回転を行わなくても、常に最適な転写バイアスを設定することができる。よって、連続して複数枚の画像形成を行う場合でも、最適な転写性を常に確保しながら、生産性を低下させることのない画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、該像担持体に担持されたトナー像が転写される側の転写ベルトと、像担持体に担持されたトナー像を転写バイアスの印加により転写ベルト側に転写する転写ローラと、転写ベルトと当接する検知ローラと、転写ベルトを挟んで検知ローラと対向して配置された対向ローラと、検知ローラと対向ローラとの間の電気的特性を検知する検知手段と、該検知手段により検知した電気的特性に基づいて転写ローラに印加する転写バイアスを制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0022】
本発明の画像形成装置について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置は、像担持体1Y、1M、1C、1Kに担持されたトナー像が転写される転写ベルト6と、像担持体1Y、1M、1C、1Kに担持されたトナー像を転写バイアスの印加により転写ベルト6に転写する転写ローラ7Y,7M,7C、7Kと、転写ローラ7Y,7M,7C、7Kに印加する転写バイアスを制御する制御手段とを有している。像担持体1Y、1M、1C、1K上に形成されたトナー像は、転写バイアスを印加された転写ローラ7Y,7M,7C、7Kにより、転写ベルト6上に重ね合わせて一次転写し、重ね合わせたトナー像を一括して二次転写する。このような画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと、中間転写ユニットUと、給紙搬送手段及び定着手段24とから成る。画像形成装置本体(以下、装置本体ともいう)GHの上部には、原稿画像読み取り装置YSが配置されている。
【0024】
イエロー色の画像を形成する画像形成手段10Yは、像担持体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、転写ローラ7Y、クリーニング手段8Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成手段10Mは、像担持体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、転写ローラ7M、クリーニング手段8Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成手段10Cは、像担持体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、転写ローラ7C、クリーニング手段8Cを有する。さらに黒色画像を形成する画像形成手段10Kは、像担持体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、転写ローラ7K、クリーニング手段8Kを有する。
【0025】
各画像形成手段10Y、10M、10C、10Kでは帯電、露光、現像が行われて、像担持体上に各色の画像が形成される。
【0026】
中間転写ユニットUは、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性の中間転写体である転写ベルト6を有する。
【0027】
画像形成手段10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写手段である転写ローラ7Y、7M、7C、7Kにより、回動する転写ベルト6上に同期がとられて逐次重ね合わせて転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体(転写紙ともいう)Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段7Aに搬送され、重ね合わされたカラー画像が転写紙P上に一括転写される。カラー画像が転写された転写紙Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0028】
一方、二次転写手段7Aにより転写紙Pにカラー画像を転写した後、転写紙Pを曲率分離した転写ベルト6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0029】
本発明に係る中間転写ユニットUには、クリーニング手段8Aの転写ベルト回転方向下流側に、転写ベルト6と当接する検知ローラ7Dと、転写ベルト6を挟んで検知ローラ7Dと対向して配置された対向部材である対向ローラ1Dを有している。検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとは、転写ベルト6を挟んで押圧状態で接触している。また、検知ローラ7Dと対向ローラ1Dには、検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとの間の抵抗値を検知する検知手段が接続されている。
【0030】
この検知手段により検知した検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとの間の電気的特性に基づいて、転写ローラ7Y、7M、7C、7Kに印加する転写バイアスを制御手段により制御している。
【0031】
また、検知ローラ7Dは、転写ローラ7Y、7M、7C、7Kと同じ断面形状及び材質あることが好ましい。断面形状(芯金の外径及びゴム層の構成、厚さ)及び材質が同じであるとは、転写ローラを検知ローラとして用いることであり、このようにすることで、環境変動や耐刷枚数による転写ローラの抵抗値変化を検知ローラの抵抗変化として代用して検出することができるので好ましい。対向ローラ1Dは、SUS等の金属材料からなる導電性ローラが好ましいが、導電性の樹脂材料を用いても良い。転写ローラと像担持体との接触圧力と検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとの接触圧力は、ほぼ同じにするのが好ましい。
【0032】
図2に検知ローラ7Dと転写ベルト6、対向ローラ1D、検知手段73Dの配置を模式的に示す。検知手段73Dは検知ローラ7Dの芯金71Dと対向ローラ1Dに接続され、検知ローラ7Dの導電性ゴム層72Dを対向ローラ1D側に圧接した状態で、定電流制御された電源から電圧を印加し、検知ローラ7Dと対向ローラ1D間の電気的特性を検知している。実際の検出値としては、出力電圧を検出している。この時、転写ベルトの回動は、プロセススピードで行われ、検知ローラ7Dと対向ローラ1Dは、転写ベルトにより従動回転している。
【0033】
本実施形態における画像形成装置においては、画像形成動作における一次転写ローラである転写ローラ7Y、7M、7C、7Kに印加する転写バイアスを、検知手段73Dが検知した出力電圧に連動して、決定する。
【0034】
このような構成を取ることにより、搬送方向に長い転写ベルトの利点を生かし、転写ローラの環境変化や耐刷枚数の変化による電気的特性の変化を、検知ローラの電気的特性を検出することで、より正確に、且つ、生産性を落とさずに検知することができる。よって、画像形成動作に影響を与えずに、転写ローラの抵抗値変化を知ることができ、この検出値を基に、転写ローラの転写バイアスを制御することで常に最適な転写状態にすることができる。
【0035】
また、転写ベルト6と当接する検知ローラ7Dと、転写ベルト6を挟んで検知ローラ7Dと対向して配置された対向ローラ1Dを配置することで、転写ローラの配置と同じ条件で電気的特性を検出でき、この検出結果から直接、転写バイアスの補正値を求めることができるので、より転写ローラと像担持体との間の転写バイアスの制御が容易になり好ましい。更に、クリーニング手段8Aの転写ベルト回転方向下流側に検知ローラを配置することで、転写ベルト6上にトナーが残留していない状態で検知手段により抵抗変化を検知することができ、検知ローラの抵抗変化をより正確に転写ローラの転写バイアスに反映できるので好ましいといえる。
【0036】
使用する現像剤は、現像装置に応じて1成分現像剤または2成分現像剤を用いることができる。例えば、トナーとキャリアよりなる2成分現像剤を用いる場合、色トナーはイエロー、マゼンタ、シアンである。トナーとしては、質量平均粒径が3〜8μmの重合トナーが好ましい。重合トナーを用いることにより、高解像力であり、濃度が安定しかぶりの発生が極めて少ない画像形成が可能となる。重合トナーは、トナー用バインダー樹脂の生成とトナー形状とがバインダー樹脂の原料モノマー又はプレポリマーの重合及びその後の化学的処理により形成されて得られる。質量平均粒径は、質量基準の平均粒径であって、湿式分散機を備えた「コールターカウンターTA−II」又は「コールターマルチサイザー」(いずれもコールター社製)により測定した値である。キャリアとしては、質量平均粒径が30〜65μmで磁化量が20〜70emu/gの磁性粒子からなるキャリアが好ましい。
【0037】
像担持体としての感光体は、有機感光体、無機感光体のどちらでも用いることができる。また、転写ローラ7Y、7M、7C、7Kは、導電性の芯金に導電性のゴム材を被覆した導電性ゴムローラを用いることができ、例えば、NBR半導電スポンジゴム等を用いることができる。導電性ゴムの抵抗値としては、1×10〜1×10Ωのものが好ましく用いられる。
【0038】
ここで、画像形成装置の制御関係について説明する。図3は本実施形態に係わる制御関係のブロックを示す図である。図3に示すように、制御手段9は各ブロックを制御している。特に検知手段73Dの検知結果に基づいて、制御手段9が転写ローラ7Y、7M、7C、7Kに印加する転写バイアスの値を演算し、その演算結果に基づいたバイアスの印加を制御している。
【0039】
この転写バイアスの値の算出方法について説明する。一次転写の工程における転写ローラ7Y、7M、7C、7Kには定電圧制御された電圧を印加して一次転写をする。この定電圧を印加する手順を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、ステップ1でプリント信号を受信する。受信後、ステップ2として検知ローラ7Dに定電流電源により、所定の定電流Iを印加する。次に、ステップ3として検知手段73Dにより検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとの間の電気的特性として、そのときの定電流電源に印加される出力電圧値Vを検出する。次に、ステップ4として、検出したVに予め決めてある演算式により演算し、最適な転写バイアスVを決定する。次に、ステップ5として、演算結果である転写バイアスVを転写ローラ7Y、7M、7C、7Kに印加して、像担持体上のトナー像を転写ベルト6に順次転写する。この時、演算式は、1次式でも良く、また2次式以上の演算式であっても良い。また、演算式は、各転写ローラ毎に違っていても良いし、同じでも良い。次に、ステップ6として、プリント信号の終わりかどうかを判断し、続いてプリント信号がある場合は、ステップ2に戻る。プリント信号がない場合は、ステップ7として、終了する。
【0041】
以上のように連続するプリント枚数がたくさんあっても、転写ローラと同構成の検知ローラと、転写ベルトを挟んだ導電性の対向ローラとの間の電気的特性を、画像形成動作を中断することなく、常に検知することができる。また、その検知結果に基づいて、転写ローラに印加する転写バイアスを最適な値に、連動して制御することができるので、システム速度が高速になっても、最適な転写バイアスを転写ローラに印加することができる。
【0042】
本実施形態では、画像形成動作中、常に検知手段により検知した出力電圧に基づく最適な転写バイアスを印加するようにしたが、一定枚数毎に、出力電圧を検知して最適なバイアスを設定をするようにしても良い。
【0043】
このように転写ローラの抵抗値が変化しても、常にその変化状態を把握することができ、リアルタイムで転写ローラの抵抗値変化に伴った最適な転写バイアスを転写ローラに印加することでき、濃度変化の少ない画像を形成することができる。
【0044】
次に、図5に本発明の第2の実施形態を示す。第1の実施形態では、請求項1における像担持体として感光体、転写ベルトとして中間転写ベルト、転写ローラとして一次転写ローラを用いた場合について説明したが、第2の実施形態においては、像担持体として一次転写ベルト、転写ベルトとして二次転写ベルト、転写ローラとして二次転写ローラを用いた場合である。図5に示す第2の実施形態は、図1の第1の実施形態と相違する部分の要部を模式的に示している。第1の実施形態で用いた同じ機能を示す部品については、同じ符号を付している。図2の70Aは二次転写ベルトであり、像担持体である一次の転写ベルト6上のトナー画像を二次転写ベルト70A上に搬送する転写紙P上に、二次転写ローラ71Aに印加した転写バイアスにより転写する。
【0045】
この時の転写バイアスは、図2における検知ローラ7Dと二次転写ベルト70Aを挟んで対向配置された対向ローラ1Dとの間の電気的特性を検知する検知手段73Dの検知結果に基づいて演算される。二次転写ベルト70Aは、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性の転写ベルトである。また、二次転写ローラ71Aは、導電性の芯金に導電性のゴム材を被覆した導電性ゴムローラを用いることができ、例えば、NBR半導電スポンジゴム等を用いることができる。導電性ゴムの抵抗値としては、1×10〜1×10Ωのものが好ましく用いられる。
【0046】
また、検知ローラ7Dは、二次転写ローラ71Aと同じ断面形状及び材質あることが好ましい。断面形状(芯金の外径及びゴム層の構成、厚さ)及び材質が同じであるとは、二次転写ローラを検知ローラとして用いることであり、このようにすることで、環境変動や耐刷枚数による転写ローラの抵抗値変化を検知ローラの抵抗変化として代用して検出することができるので好ましい。対向ローラ1Dは、SUS等の金属材料からなる導電性ローラが好ましいが、導電性の樹脂材料を用いても良い。二次転写ローラ71Aと一次の転写ベルト6との接触圧力と検知ローラ7Dと対向ローラ1Dとの接触圧力は、ほぼ同じにするのが好ましい。他の構成部材及び、検知手段73Dにより検知した値を二次転写ローラ71Aに印加する転写バイアス値に演算する方法や制御方法は、第1の実施形態と同様であるので説明は省く。
【0047】
このように第2の実施形態においても、二次転写ローラ71Aの抵抗値が環境変動や耐刷枚数により変化しても、常に最適な二次転写用の転写バイアスを二次転写ローラ71Aに印加することができる。
【0048】
更に、図6に本発明の第3の実施形態を示す。図6は、第2の実施形態における転写ベルト6を感光体としての像担持体1Kに変えた構成を取っている。即ち、1色のみの画像形成手段10Kで作成した像担持体1K上の画像を、転写ベルト70A上に搬送する転写紙P上に、転写ローラ72Aにより転写する画像形成装置である。その他の構成部材及び、検知手段73Dにより検知した値を転写ローラ72Aに印加する転写バイアス値に演算する方法や制御方法は、第1及び第2の実施形態と同様であるので説明は省く。
【0049】
このように第3の実施形態においても、転写ローラ72Aの抵抗値が環境変動や耐刷枚数により変化しても、常に最適な転写バイアスを転写ローラ72Aに印加することができる。
【0050】
なお、上記第1〜第3の実施形態以外であっても、該像担持体に担持されたトナー像が転写される側の転写ベルトと、像担持体に担持されたトナー像を転写バイアスの印加により転写ベルト側に転写する転写ローラとを有する画像形成装置であれば、本発明に係る検知ローラ、対向ローラ、検知手段によって、最適な転写バイアスを設定することができることはいうまでもない。
【実施例】
【0051】
ここで本発明の画像形成装置の実施例について説明する。
(実施例1)
(実験装置)
図1に示す画像形成装置を使用した。プロセス速度は300mm/secとした。転写ベルトは、ポリイミド製半導電ベルトで、ベルト厚さは80μm、周長は861mm、幅は362mm、抵抗率は1×1011Ω/□を用いた。一次転写用の転写ローラは、芯金10mmのSUSにNBRイオン導電性スポンジゴムを単層で被覆したφ22の導電性ゴムローラを用いた。抵抗値は、2×10Ω(20℃、40%の環境、金属平板に乗せてゴムローラの芯金と金属平板に1kV印加時)、硬度40°(Asker−C)であった。検知ローラは、転写ローラと同じものを使用した。対向ローラはAl製のφ30mmのローラを用いた。
【0052】
検知ローラと対向ローラとの間に印加した定電流電源からの電流値は、50μAとした。
【0053】
検知手段による出力電圧Vの検知は、感光体1Y上に形成された1枚目の画像の先端が、転写ベルト6と接触する直前に行った。この出力電圧Vを基に、各色のトナー画像に対応した転写ローラ7Y、7M、7C、7Kへ印加する最適転写電圧値Vは、以下の演算式により演算し、1枚分の転写が終了するまで各転写ローラに定電圧制御して印加した。2枚目以降も同様にして演算し、定電圧制御で最適な転写バイアスを印加した。
【0054】
が875v以下のとき、
転写ローラ7Y、7Kへは、V=0.32×V+478(v)
転写ローラ7Mへは、V=0.32×V+528(v)
転写ローラ7Cへは、V=0.32×V+578(v)
が875vを越えるとき、
転写ローラ7Y、7Kへは、V=0.73×V+160(v)
転写ローラ7Mへは、V=0.73×V+210(v)
転写ローラ7Cへは、V=0.73×V+260(v)
(評価方法)
転写性の評価としては、1000枚の連続プリントを行い、単色ベタ画像(Yellow,Magenta、Cyan,Black)と2色を重ね合わせたベタ画像(Blue、Red、Green)の濃度変化を観察した。画像濃度測定は反射濃度測定器(GretagMacbeth社製Spectolino)を用いた。
【0055】
濃度変化幅ΔIDが、0.05の範囲に入っているものを良好とし、0.05の範囲を超えるものを不良とした。ΔIDが0.05を越えると目視により明らかに変化が認められ、画像品質として問題である。
【0056】
(評価結果)
評価結果を図7、図8に示す。
【0057】
図7、図8の評価結果から、1000枚プリント中の画像濃度変化ΔIDは、単色画像及び2色を重ね合わせた画像ともに0.05以下であり、良好な転写性を示している。このことから、実施例1においては、常に最適な転写電圧を印加することができていることがわかる。
(比較例1)
(実験装置、評価方法)
図1に示す実施例1の画像形成装置において、検知ローラ7Dと対向ローラ1D及び検知手段を省いた他は、実施例1と同様の画像形成装置を用いた。
【0058】
また、各転写ローラへは定電圧制御された電圧V1を印加した。電圧V1の値は、1枚目のプリントをする前の予備回転時に、各転写ローラに定電流制御された電源から電圧を印加し、そのときの出力電圧の平均値V1に基づいて演算した値を用いた。複数枚のプリント時にも、最初に設定したV1を継続して使用した。
【0059】
予備回転時のV1の測定結果を以下の演算式により算出してV1の値を決定した。
【0060】
演算式
が875v以下のとき、
V1=0.32×V+496(v)
が875vを越えるとき、
V1=0.73×V+138(v)
V1の測定結果
転写ローラ7Y:2750v
転写ローラ7M:2896v
転写ローラ7C:2979v
転写ローラ7K:2979v
V1を基に算出したV1の値
転写ローラ7Y:2146v
転写ローラ7M:2252v
転写ローラ7C:2313v
転写ローラ7K:2313v
その他は、実施例1と同様に行い、1000枚プリント中の画像濃度変化を評価した。
【0061】
(評価結果)
評価結果を図9、図10に示す。
【0062】
図9、図10の評価結果から、BlackとBlueの画像濃度変化ΔIDが0.05ではあるが、他の単色画像及び2色を重ね合わせた画像の画像濃度変化ΔIDは0.08〜0.12あり、濃度変化が大きく、最適な転写電圧で転写が行われていないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る検知手段の概略構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係わる制御関係のブロックを示す図である。
【図4】本実施形態に係わる転写出力制御の動作フローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る画像形成装置の要部を示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る画像形成装置の要部を示す断面図である。
【図7】実施例1における単色画像の濃度変化を表す図である。
【図8】実施例1における2色を重ねた画像の濃度変化を表す図である。
【図9】比較例1における単色画像の濃度変化を表す図である。
【図10】比較例1における2色を重ねた画像の濃度変化を表す図である。
【符号の説明】
【0064】
1Y、1M、1C、1K 像担持体
1D 対向ローラ
6、70A 転写ベルト
7Y、7M、7C、7K、72A 転写ローラ
7D 検知ローラ
71D 芯金
72D 導電性ゴム層
73D 検知手段
7A 二次転写手段、
71A 二次転写ローラ
9 制御手段
P 記録媒体(転写紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
該像担持体に担持された前記トナー像が転写される側の転写ベルトと、
前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルト側に転写する転写ローラと、
前記転写ローラと異なる位置で前記転写ベルトと当接する検知ローラと、
前記検知ローラの電気的特性を検知する検知手段と、
該検知手段により検知した前記電気的特性に基づいて前記転写ローラに印加する前記転写バイアスを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ローラは、前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルトの表面に転写することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写ローラは、前記像担持体に担持された前記トナー像を転写バイアスの印加により前記転写ベルト上に搬送される記録媒体に転写することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記検知ローラと、該検知ローラに対向して配置された対向部材との間の電気的特性を検知することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記対向部材がローラ形状であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記対向部材は、前記転写ベルトを挟んで前記検知ローラと対向して配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記検知ローラの断面形状及び材質は、前記転写ローラの断面形状及び材質と同じであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を有し、
該クリーニング手段より前記転写ベルトの進行方向下流側であって、前記転写ローラより前記転写ベルトの進行方向上流側に、前記検知ローラが配置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145472(P2010−145472A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319490(P2008−319490)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】