説明

画像形成装置

【課題】 像担持体上に飛散現像剤が蓄積した場合においても、帯電手段や補助帯電手段による放電を大幅に減らし、異常放電による像担持体の削れ推移を大幅に減らすことのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 ここで、感光体、帯電手段、現像手段、転写帯電手段、補助帯電手段の、感光体の軸線方向における有効幅をそれぞれW(感光体)、W(帯電手段)、W(現像手段)、W(転写帯電手段)、W(補助帯電手段)とする。このとき、画像形成に関わる各要素の有効幅が、W(感光体)>W(帯電手段)>W(補助帯電手段)≧W(転写帯電手段)>W(現像手段)の関係を満足する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現像装置によって感光体上の静電像を現像すると同時に感光体上の転写残トナーを回収することによってクリーニングするクリーナレスシステムの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、感光体上の転写残トナーを現像器に回収して再利用するクリーナレスシステムが知られている。具体的には、現像器は感光体上に形成された静電像を現像すると同時に感光体上に付着している転写残トナーを回収する。これにより、感光体上の転写残トナーを現像器によってクリーニングしている。クリーナレスシステムのメリットは廃トナーの処理が不要であることである。そのため、画像形成装置のメンテンナンス性が向上し、更に、廃トナーを収納する容器のスペース分だけ画像形成装置をコンパクトにすることができる。
【0003】
このようなクリーナレスシステムにおいて、感光体上の転写残トナーを現像器で効率的に回収するために、転写残トナーへの電荷制御を行う補助帯電器を用いている。さらに、転写残トナーの回収率を向上させるために、感光体上に付着した転写残トナーの分布を均一にするために感光体の長手方向に往復移動させるようなレシプロ機構が採用されている。
【0004】
具体例を挙げて説明する。図2の(a)は従来のクリーナレスシステムの画像形成に関わる各要素の感光体回転軸方向の長さ関係を説明するための図である(従来例1)。図2の(a)に示すプロセスカートリッジにおいて、感光体の領域(2)の削れ量は他の領域よりも多くなっていた(図2の(b)参照)。
【0005】
原因は以下の通りである。画像形成を行う際に、トナーを担持するスリーブの端部からトナーが飛散してしまう。飛散したトナー(以下、飛散トナー)は感光体の領域(1)〜(3)に付着する。感光体の領域(3)に付着した飛散トナーは補助帯電器によって電荷を調整されて転写帯電器によって中間転写体等に転写されるため蓄積(堆積)し難い。しかしながら、領域(1)、(2)に付着した飛散トナーは補助帯電器によって電荷が調整されず、感光体に蓄積(堆積)されていく(飛散トナー蓄積領域)。ここで、飛散トナーが蓄積された領域が帯電器と接触すると、異常放電が発生する。そのため、感光体の領域(2)は削れ量が多くなってしまう。なお、感光体が削れて表面層が薄くなると、感光体リークが発生する。また、感光体は一部分でも導電層に達してしまうと、帯電ローラからの電流がその部分に集中してしまい(リークが発生する)画像形成ができなくなってしまう。つまり、領域(1)〜(3)の何れかが所定の削れ量(例えば、削れNGライン12μm)を超えるとドラムカートリッジの寿命となる。具体的には、従来の構成において、領域(2)は30000枚(以下、30K枚と略す)ほどで導電層に達するほど削れてしまう。
【0006】
そこで、飛散トナーが堆積する領域(2)の削れを抑えることによってドラムカートリッジの寿命を延ばすための構成が特許文献1(特開2001−215799号公報)に開示されている。特許文献1に開示されている画像形成に関わる各要素は図3の(a)のような関係を満たしている。具体的には、補助帯電器の幅を転写帯電器と同じ長さにすることによって、領域(2)、(3)に付着した飛散トナーの電荷を制御する。また、荷電制御した飛散トナーを転写帯電器によって中間転写ベルト16へ転写する。これにより、飛散トナーが堆積するために生じる異常放電を抑制することができる(図3の(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−215799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の構成を採用すると、同じ画像形成領域(Wm:例えばA4サイズ等)を確保しようとすると、ドラムカートリッジの幅(Wctg)が極端に大きくなってしまう。つまり、レシプロする補助帯電器が長くなったため、前述の構成(従来例1)よりもカートリッジの幅が大きくなってしまう。
【0009】
つまり、感光体の寿命を延ばしてカートリッジの交換回数を低くしつつ、カートリッジのサイズをコンパクトにすることによって、カートリッジ交換の頻度を少なくしつつ、コンパクトな画像形成装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明の目的は、具体的には「回転可能な感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された感光体上に形成された静電像をトナーで現像する現像手段と、前記感光体上に形成されたトナー像を受像部材へ転写する転写手段と、前記帯電手段による帯電処理の前に前記感光体上の転写残トナーを正規の帯電極性に帯電する補助帯電手段と、を有し、前記感光体と、前記帯電手段と、前記現像手段と、前記転写手段と、前記補助帯電手段と、の有効幅をそれぞれW(感光体)、W(帯電手段)、W(現像手段)、W(転写手段)、W(補助帯電手段)としたとき、W(感光体)>W(帯電手段)>W(補助帯電手段)≧W(転写帯電手段)>W(現像手段)の関係となることを特徴とする画像形成装置を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
感光体の寿命を延ばしてカートリッジの交換回数を低くしつつ、カートリッジのサイズをコンパクトにすることによって、カートリッジ交換の頻度を少なくしつつ、コンパクトな画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】補助帯電器が短い従来構成における各画像形成要素の長手方向の長さとその構成における感光体ドラム削れ量を説明するための図である(従来例1)。
【図3】補助帯電器が長い従来構成における各画像形成要素の長手方向の長さとその構成における感光体ドラム削れ量を説明するための図である(従来例2)。
【図4】クリーナレスシステムにおけるトナー回収について説明するための図である。
【図5】本発明における各画像形成要素の長手方向の長さと本構成における感光体ドラム削れ量を説明するための図である。
【図6】本構成において帯電ローラにDCバイアスを印加した場合における感光体ドラム削れ量を説明するための図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の他の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して詳しく説明する。まず、画像形成装置の構成と各要素の材質及び有効幅について説明する(§1−3)。続いて、クリーナレスシステムにおける画像形成プロセスについて説明する(§4―5)。その後、本願構成と従来構成を比較して説明する(§6−9)。
【0014】
§1.{画像形成装置の全体構成について}
図1の(a)は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写体の回転方向に沿って4個の画像形成部を並べて配設したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。なお、特に限定的な記載が無い限り発明の適用範囲を限定するものではない。各画像形成部S(Sa、Sb、Sc、Sd)はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像をそれぞれ形成する。構成については略同等なため、画像形成部Saの構成について詳しく説明する。画像形成部Saは像担持体(感光体)としてのドラム状の電子写真感光体(以下感光ドラム)11aを備える。感光ドラム11aの回りには画像形成に関わる要素が配置され、一体としてカートリッジ化されている。このように、電子写真プロセス手段がカートリッジ化されたものをドラムカートリッジ(プロセスカートリッジ)と呼ぶ。ドラムカートリッジは、装着手段(図示せず)によって、画像形成装置本体に着脱自在に装着されている。なお、感光ドラム11aは、中空円筒状の導電性基材の上に感光層が形成された構造となっている。
【0015】
感光ドラム11にはドラムの回転方向に沿って、帯電処理を行う帯電器としての帯電ローラ12a、現像装置としての現像器13a(現像スリーブ130aを備える)が配置されている。更に、現像器13aのドラム回転方向下流に回転方向に沿って、1次転写帯電器としての1次転写ローラ14a、補助帯電装置としての帯電ブラシ15aが配置されている。また、補助帯電ブラシ15はレシプロ駆動機構(ギア列)によって感光ドラムの回転軸方向にレシプロ移動するように設けられている(図1の(b)参照)。本実施例においては、ドラムカートリッジは感光ドラム11、帯電ローラ12、現像器13及び補助帯電器15から成る。なお、感光体ドラムよりも寿命が長いものを画像形成装置本体に備えても良い。例えば、現像器13の寿命が感光体ドラムと比べて十分に長い場合、現像器13をドラムカートリッジとは別に設けてもよい。感光ドラム11の斜め上方には、露光手段としてのレーザ露光装置23が配置されており、画像露光、即ち、画像情報により変調されたレーザビームを感光ドラム11の表面に照射するように構成されている。このように感光ドラム上に形成された静電像がトナーで現像されることによって、像担持体としての感光ドラム上にトナー像が担持される。他の画像形成部に関しても同様に、帯電装置12a〜12d、露光手段23a〜23d、現像装置13a〜13d、1次転写装置14a〜14d、補助帯電15a〜15dが配置される。また、各現像装置13a〜13dはトナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体としてのスリーブ130a〜130dを備える。
【0016】
各感光ドラム(11a,11b,11c,11d)と各1次転写帯電器(14a,14b,14c,14d)との間には受像部材である中間転写体としての中間転写ベルト16が配置されている。中間転写ベルト16は、ローラ31、32、33に張架されて矢印方向に走行可能とされる。ここで、各感光ドラム上に形成された各色のトナー像は各1次転写部において中間転写ベルトに転写される。また、2次転写帯電器を構成する二次転写ローラ17は、対向ローラ33と対向して配置されて2次転写部を形成する。二次転写ローラ17に隣接して紙分離手段18が配置されている。また、中間転写ベルト16を張設するローラ32に対向してクリーニング手段としての中間転写ベルトクリーニング手段19が配置されている。また、画像形成装置の下方には記録材Pを2次転写帯電器17に向けて給紙する給紙装置20が配置され、また、分離装置18で分離された記録材Pの搬送方向下流側には、定着装置21及び排紙トレイ(不図示)が配置されている。
【0017】
§2.{各要素の材質及び有効幅について}
以下に、各画像形成に関わる感光ドラム、帯電装置、現像装置、転写装置及び中間転写ベルトについて詳しく説明する。なお、従来例1及び従来例2の各材質は比較のため本実施例は同一のものを用いた。
【0018】
■感光ドラムの材質及び有効幅について
本実施例において、像担持体(感光体)としての感光ドラム11は、アルミシリンダの外周面に光電導体としての有機感光体(OPC)を塗布して形成した。なお、光電導体としてはA−Si、CdS、Se等であってもよい。なお、感光ドラム表層が放電や磨耗によって10μmほど削れると感光体リークが発生してしまう。ここで、感光ドラムの感光層の長手方向の幅を有効幅と呼び、W(感光体)と略記する。ここで、図2の(a)、図3の(a)、図5の(a)に記載のW(感光体)は感光ドラムの有効幅を表している(以下同様)。
【0019】
■帯電ローラの材質及び有効幅について
本実施例において、帯電装置としての帯電ローラ12はエピクロルヒドリンゴムで形成された単層ゴム構造を有する。この単層ゴム層の体積抵抗率は10^5〜10^6Ω・cmである。なお、帯電ローラ12を構成する材料として、EPDM、NBRなどのイオン導電性あるいは電子導電性材料、レーヨン、ナイロン系、フッ素系のものを使用してもよい。また、帯電ローラの形状はスポンジローラやブラシローラであっても良い。ここで、ローラの抵抗値(常温常湿の初期抵抗)は1.0×10^5〜1.0×10^7Ωのものであればよい。ここで、帯電ローラのゴム層の長さ(幅)を有効幅と呼び、W(帯電器)と略記する。言い換えると、W(帯電器)は帯電ローラ12が感光ドラム11と接触している領域の幅を指す。
【0020】
■現像器の材質及び有効幅について
本実施例において、現像器13の現像ローラ130は中空のアルミローラを用いた。また、現像ローラの内部にはマグネットが配設されている。なお、各現像器内のトナーの帯電量は、−25〜35μC/mgとなるように調整され、トナーの流動性を上げ過ぎないよう、20nmのオイル処理シリカの含有率は30%以下となっている。ここで、現像ローラ内部のマグネットの幅を現像有効幅と呼び、W(現像器)と略記する。言い換えると、W(現像器)はマグネットにより現像剤(トナー)が現像ローラにコートされるトナーコート幅を指す。
【0021】
■転写ローラの材質及び有効幅について
本実施例において、一次転写ローラ14はNBRから成る厚み4mmの単層構造の発泡スポンジを用いた。また、発泡スポンジは体積抵抗率が10^5〜10^6Ω・cmのものを用いた。ここで、転写ローラのスポンジ層の長さ(幅)を転写有効幅と呼び、W(転写帯電器)と略記する。言い換えると、W(転写帯電器)は転写ローラのスポンジ層が中間転写ベルト16と接触する領域の幅(一次転写ニップの幅)を指す。
【0022】
■補助帯電器の材質及び有効幅について
本実施例において、補助帯電器15は、板金に繊維が植毛される固定ブラシを用いた。板金に植毛された繊維は導電性のレーヨン繊維を使用し、繊維の太さは6デニール、パイル長は5mm、繊維密度は100KFのものを使用した。なお、他の繊維としてはナイロン繊維やポリエステル繊維などでも良く、繊維の太さは2〜10デニール、パイル長は3〜8mm、繊維密度は50〜500KFの範囲のものが望ましい。ここで、補助帯電器の繊維が植毛された幅を補助帯電有効幅と呼び、W(補助帯電)と略記する。言い換えると、W(補助帯電)は繊維が植毛されたブラシが感光ドラム11に接触する領域の幅を指す。
【0023】
■中間転写ベルトの材質及び有効幅について
本実施例において、中間転写ベルト16はPI(ポリイミド樹脂)から成る厚さ5μmのベルトを用いた。また、ポリイミド樹脂から成るベルトは表面抵抗率が10^11〜10^13Ω/cm、体積抵抗率が10^9〜10^10Ω・cmのものを用いた。なお、中間転写ベルトの材料として、PVDF、PET、PBT、EPDM、NBR、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどを用いてもよい。ここで、中間転写ベルトの一方の端部から他方の端部までの長さを転写ベルト有効幅と呼び、W(中間転写ベルト)と略記する。
【0024】
§3.{補助帯電ブラシの往復移動機構について}
感光ドラムの長手方向の一部に画像比率の高い画像が連続して形成された場合、補助帯電器15を通過した転写残トナーは帯電ローラ12上に蓄積する。帯電ローラに転写残トナーが蓄積の量が一定量を超えた場合、帯電ローラ12により感光ドラム11上を所定電位に安定して帯電出来なくなる。とりわけ、帯電ローラ12に局所的に転写残トナーが蓄積すると、感光ドラムを均一に帯電することができない。そのため、帯電斑に起因する画像不良が発生してしまう。
【0025】
また、感光ドラムと中間転写ベルトを接触させ感光体上に形成したトナー像を転写する接触転写方式を用いる場合、転写時の押圧力のために感光ドラム11上に付着する転写残トナーの機械的な付着力は大きい。特に、中間転写ベルト上に複数色のトナーを重ねたライン画像が感光ドラムに付着した場合、感光ドラム上の転写残トナーの量は多く、機械的付着力は大きい。そのため、現像器13の電気的かつ機械的な回収力で感光体上の転写残トナーを回収することが困難である。ここで、現像器によって回収されなかった転写残トナーは、再度中間転写ベルトと接触してシート上に画像として形成されるという画像不良の原因となる。
【0026】
そのため、クリーナレスシステムにおいては、感光体ドラム上の転写残トナーを感光ドラムの回転軸方向に機械的に分布させるようにレシプロ機構50が採用される。本実施例において、レシプロ機構50は周知のカムスライダ機構を用い、細長形状の補助帯電器15の長手方向に沿って往復運動させている。このレシプロ機構によって、帯電ローラ12へ付着する転写残トナーがある一部分だけに付着するのを防ぐことで帯電ムラを軽減せることができる。また、補助帯電器15の摺擦力により転写残トナーの機械的付着力を軽減することで現像器13での回収率を向上させることができる。しかし、補助帯電器15を往復移動させるレシプロ機構50は、ドラムカートリッジを小型化するに際して、大きな障害となっていた。具体的には、図2の(a)、図3の(a)からも明らかなように、カートリッジサイズ(Wctg)は補助帯電ブラシが往復移動することによって大きくなっている。
【0027】
■往復移動機構と補助帯電ブラシの有効幅について
W(補助帯電器)はブラシの植毛幅である。しかし、補助帯電ブラシが往復移動すると、その補助帯電ブラシが影響を与える幅というのが実質的に広がる。そのため、補助帯電ブラシが移動可能な幅を最大有効幅と呼び、Wmax(補助帯電器)と略記する(又はW(レシプロ機構)。
【0028】
§4.{転写残トナーの回収効率について}
以下にクリーナレスシステムにおける転写残トナーの回収に説明について説明する。図4の(a)はトナーの持つ電荷Qに対して働く力Fの関係を表したグラフである。また、図4の(b)は現像部において形成される電界を説明するための模式図である。図4の(b)、Vd、VLは、それぞれ、感光ドラム11の暗部電位、明部電位であり、Vdcは、現像バイアス電圧である。図4の(b)において、Vbackはカブリ取りバイアス電位差である。また、Vcontは濃度を示す電位差である。図4の(c)は、実験に基づくデータであり、帯電ローラ12と補助帯電器15との設定により現像器13へ到達したトナー電荷を変化させたときの、現像器13において転写残トナーを回収する効率を表したグラフである。
【0029】
図4の(a)の「鏡映力<現像回収力」となる範囲において、現像回収効率がおよそ100%と高くなっている。逆に、図4の(a)の「鏡映力>現像回収力」となる範囲において、現像回収効率がおよそ40%と低くなる。そのため、クリーナレスシステムにおいて、「鏡映力<現像回収力」となるように転写残トナーの電荷を調節することが転写残トナーを現像器で効率的に回収するために望ましい。
【0030】
§5.{画像形成プロセスについての説明}
上述の構成の画像形成装置において、画像形成を行うモード(画像形成モード)について簡単に説明する。画像形成装置は電源(高圧電源)と各部を制御する制御手段としてのコントローラ(不図示)を備える。電源が投入されると、メインモータ(不図示)により感光ドラム11及び帯電ローラ12は、所定の回転速度で回転を開始する。画像形成動作の実行が指令されると、バイアス印加手段である高圧電源120(120a、120b、120c、120d)からバイアス電圧として、交番電圧を重畳した直流電圧が帯電ローラ12に印加される。これにより、感光ドラム11(11a−11d)の表面は所定の電位に帯電される。本実施例の帯電ローラに印加する帯電バイアスは直流(DC)バイアス:−700Vと交流(AC)バイアス:1800Vppが重畳されたものである。
【0031】
レーザ露光装置23から、画像露光、即ち、画像情報により変調されたレーザビームが感光ドラム11の表面に投射され、感光ドラム11の表面に静電像(画像潜像)が形成される。形成された画像潜像は、感光ドラム11の回転により現像器13の位置にくる。潜像は、現像剤(トナー)を収容した現像器13の現像剤担持体である現像ローラ130(130a、130b、130c、130d)にて搬送される現像剤にて顕像化され、感光ドラム11の上にトナー像が形成される。本実施例の現像器13に印加される現像バイアスは直流(DC)バイアス:−550Vと交流(AC)バイアス:1500Vppが重畳されたものである。また、感光ドラム11と現像ローラ130との距離(いわゆるS−Dギャップ)dは400μmとした。
【0032】
続いて、1次転写帯電器14にトナーと逆極性のバイアスをバイアス印加手段である高圧電源140(140a、140b、140c、140d)から印加する。これにより、感光ドラム11上に現像されたトナー像は中間転写ベルト16上に転写される。
【0033】
このように、各感光ドラム(11a〜11d)上に形成されたトナー像は順次中間転写ベルト16上に転写される。記録材Pは給紙装置20からは中間転写ベルト16上に転写されたトナー像が2次転写帯電器17によって転写される部分(2次転写部)に来るタイミングで給紙される。これにより、中間転写ベルト上に重ねられたトナー像は2次転写帯電器としての転写ローラ17によってシート状の記録材Pに転写される。トナー像が転写された記録材Pは分離装置18において中間転写ベルト16から分離された後、定着装置21において定着処理される。定着装置によってトナー像が定着されたシートは排紙トレイ(図示せず)に排出される。なお、2次転写部において記録材Pに転写されずに中間転写ベルト16上に残留したトナーは、中間転写ベルトをクリーニングする中間転写ベルトクリーニング手段19によって回収される。
【0034】
■転写残トナーの電荷調整について
転写されずに感光ドラム11上に残留するトナー(転写残トナー)の多くは、通常のトナーの正規極性(ここでは負帯電極性)をほとんど持たない場合が多い。そのため、転写残トナーの極性は反転トナー成分(ここでは、正帯電極性)が支配的な状態となっている。つまり、一次転写帯電器14によりトナー像を中間転写ベルト16に転写した後に転写されずに感光ドラム11上に残留する転写残トナーは反転トナーが多い。
【0035】
そこで、バイアス印加手段である高圧電源150(150a〜150d)からバイアス加が印加されることによって補助帯電器15は転写残トナーの電荷を調整する。具体的には、補助帯電ブラシは反転トナー(転写残トナー)に対して正規トナーと同極性の負電荷の付与を行う。反転トナーが感光ドラム11と補助帯電器15との接触部を通過する際、補助帯電器15に正規トナーと同極性のバイアスを印加し、ある一定以上の放電を発生させる。これにより、感光体上の反転トナー(転写残トナー)に対して正規トナーと同極性の負電荷の付与が行われる。つまり、バイアス印加手段150は、正規トナーと同極性の直流バイアスを補助帯電器15に印加する。つまり、感光ドラム11と補助帯電器15との接触部を通過する際に、転写残トナーは正規極性に電荷が調整される。
【0036】
本実施例においては補助帯電器15には−900Vが印加され、反転トナーに電荷が付与され−125μC/mgとなる。しかし、トナー電荷が−125μC/mgでは現像器13による回収効率が非常に悪い(図4の(a)参照)。実際は、帯電バイアス(DC−700V、AC1800Vpp)が印加された帯電ローラ12によって、トナー電荷は−50μC/mgとなる。このように、図4の(a)において「鏡映力(F1)<現像回収力(F2)」の関係が成り立つようにトナーの電荷を調整している。これにより現像部での高い回収効率を達成している(図4の(c)を参照)。
【0037】
§6.{ドラムカートリッジの幅関係について}
各画像形成に関わる要素の感光体回転軸方向の幅は画像形成領域の幅(Wm)によって決まる。具体的には、画像形成領域の幅をA4縦サイズ(210mm)確保する場合、例えば、現像スリーブの幅は240mm、帯電ローラの幅は270mm、感光ドラムの感光層幅は280mmとする。これらの長さ関係はある程度の余裕をもって順に「感光ドラムの感光層>帯電ローラ>現像スリーブ>画像形成領域」にすることが望ましい。以下に理由を簡単に説明する。
【0038】
■現像スリーブを画像形成領域より長くする理由
現像スリーブ端部の磁束は現像スリーブ中央部の磁束と比べて均一性が低い。つまり、現像スリーブ端部に担持されたトナーはスリーブ中央部に担持されたトナーと比べて均一に担持され難い。そのため、画像形成を行う領域はトナーが均一にコートされている現像スリーブの中央部を用いる。
【0039】
■帯電ローラのスポンジ層を現像スリーブより長くする理由
帯電ローラの端部の帯電均一性はと帯電ローラの中央部の帯電均一性よりも劣る。そのため、帯電均一性の高い帯電ローラの中央部を用いるために現像スリーブよりも長くする。更に、感光体を帯電させることによって、スリーブ端部から感光ドラムに飛散するトナーの付着を抑制することができる。
【0040】
■感光体ドラムの感光層を帯電ローラより長くする理由
製造の精度の関係で、感光ドラムの感光層は端部まで層厚を一定にすることは難しい。そのため、感光層の幅を帯電ローラの幅と略同程度にすると、感光層が薄くなった部分で感光体リークが起ってしまい、ドラムを帯電する事が出来なくなる。そのため、感光ドラムの中央部を帯電ローラで帯電する。
【0041】
§7.{従来例のカートリッジ幅とドラム寿命について}
続いて、従来のクリーナレスカートリッジの長手方向の関係について説明する。
【0042】
(従来例1について)
■長手方向の有効幅の関係
従来例1の長手方向の幅関係は図2の(a)に示す関係が成り立つ。
W(感光体)>W(転写帯電器)>W(帯電器)>W(補助帯電器)>W(現像器)
W(感光体):感光ドラム11の感光層の幅
W(転写帯電器):1次転写ローラ14のスポンジ幅
W(帯電器):帯電ローラ12のゴム幅
W(補助帯電器):補助帯電器15のブラシ植毛幅
W(現像器):現像器13のトナーコート幅
なお、各部材は、長手中央基準で設置されているものとする。
【0043】
■削れの量について
図2の(b)は従来例1における感光体ドラムの削れ量に関するグラフである。耐久30K枚ほどで領域(2)が削れてしまい感光体リークが発生する。そのため、ドラムカートリッジが使用出来ない状態となる。これは、領域(2)に付着した飛散トナーは補助帯電器によって電荷が調整されず、感光体に蓄積(堆積)されていく(飛散トナー蓄積領域)。そのため、飛散トナーが蓄積された領域が帯電器と接触すると、異常放電が生じ、領域(2)は削れ量が多くなってしまう。
【0044】
■カートリッジ幅について
WctgはWmax(補助帯電器)の長さに依存して決まる。従来例1のレシプロ駆動させるための駆動列等を含んだカートリッジの幅(Wctg)は320mmとなる。
【0045】
(従来例2について)
■長手方向の有効幅の関係
従来例2の長手方向の幅関係は図3の(a)に示す関係が成り立つ。
W(感光体)>W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)>W(帯電器)>W(現像器)
■削れの量について
図3の(b)は従来例2における感光体ドラムの削れ量に関するグラフである。グラフから明らかなように、ドラム削れが低減し、ドラム寿命が延びている。これは、帯電器を通過する領域のすべてが補助帯電器と転写帯電器と接触しているため、トナーの蓄積及び過剰な放電が発生し難いためである。
【0046】
■カートリッジ幅について
WctgはWmax(補助帯電器)の長さに応じて決まる。従来例1のレシプロ駆動させるための駆動列等を含んだカートリッジの幅(Wctg)は360mmとなる。なお、従来例1と同等の転写残トナーの回収性能を得るために、補助帯電ブラシをレシプロさせる幅は従来例1と同じ幅とする。
【0047】
§8.{本実施例のカートリッジ幅とドラム寿命について}
本実施例は、従来例1及び従来例2と比べて、補助帯電器15の幅を短くした。具体的には「W(感光体)>W(帯電器)>W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)>W(現像器)」の関係を満たすため、以下の領域(1)から(3)において、削れの原因となる飛散トナーの蓄積を抑えることができた。なお、異常放電の原因となる飛散トナーの発生領域を条件ごとに3つに分割したものが、本実施例の領域(1)〜(3)である。
領域(1):飛散トナー発生領域で、かつ、帯電ローラ12、補助帯電器15、1次転写帯電器14のない領域。
領域(2):飛散トナー発生領域で、かつ、補助帯電器15、1次転写帯電器14のない領域。
領域(3):飛散トナー発生領域。
【0048】
■長手方向の有効幅の関係
本実施例の長手構成(左側領域のみ)は図5の(a)に示すように以下の関係が成り立つ。
W(感光体)>W(帯電器)>W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)>W(現像器)
画像形成に関わる各要素の長手方向の幅をこのような関係にすることによって、領域(1)、領域(2)、領域(3)はそれぞれ上述の関係となる。
【0049】
特徴的な部分について更に説明する。ドラム削れ量を低減するとともに、カートリッジをコンパクトにするためには、「W(帯電器)>W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)」の関係を満たす必要がある。まず、「W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)」の関係を満たすことによって、感光ドラム上の飛散トナーの蓄積を抑制することができる。更に「W(帯電器)>W(補助帯電器)」の関係を満たすことによって、従来例1及び従来例2のカートリッジよりもカートリッジサイズ(Wctg)を短くすることができる。前述の通り、飛散トナーの蓄積が削れ量増加の原因(つまりドラム寿命を短くする原因)である。
【0050】
上述の構成を採用すると、感光ドラム上の飛散トナーは現像器及び転写帯電器によって感光ドラムから除去される。具体的に説明すると、感光ドラムの現像器と対向する部分の補助帯電器によって正規極性に電荷が調整されたトナーは現像器に回収される。また、感光ドラムの現像器と対向しない、かつ、転写帯電器と対向する領域に付着した補助帯電器によって正規極性に電荷が調整されたトナーは転写帯電器によって中間転写ベルトに転写される。
【0051】
ここで、感光ドラムの領域(1)、(2)の飛散トナーは転写帯電器が無いため、正規極性とは逆の反転極性に電荷が偏り難い。そのため、感光ドラムの領域(2)に付着する飛散トナーは補助帯電器によって電荷が正規極性となるように調整され、補助帯電器がレシプロすることによって、Wmax(補助帯電器)の幅に散らされる。このため、領域(2)の飛散トナーは転写帯電器又は現像器によって感光ドラムから除去される。なお、領域(1)は帯電ローラと接触しないため、飛散トナーがあったとしても異常放電を引き起こさない。ここで、領域(2)の幅(W(帯電器)−W(補助帯電器))は補助帯電器がレシプロ機構によって動く幅(Wmax(補助帯電器)−W(補助帯電器))よりも短くなっている。なお、飛散トナーの蓄積量が多くなることによって、転写帯電器によって帯電されなくとも総放電量が多く場合が多い。そのため、本構成においては飛散トナーの影響を受け易い領域(2)の幅を転写帯電器によって再帯電が生じる領域(3)よりも領域の幅を広くすることによって、放電によるダメージを調整している。更に、領域(2)の飛散トナーをレシプロ機構によって効率的に散らすためには、領域(2)の幅が領域(1)と領域(3)の幅と略同等になるのが好ましい。
【0052】
■削れの量について
図5の(b)は従来例2における感光体ドラムの削れ量に関するグラフである。グラフから明らかなように、従来例1と比べて領域(2)のドラム削れが低減し、ドラム寿命が延びている。これは、補助帯電器の幅を転写帯電器と同じ長さにすることによって、領域(2)、(3)に付着した飛散トナーの電荷を制御しているためである。また、荷電制御した飛散トナーを転写帯電器によって中間転写ベルト16へ転写することによって飛散トナーの堆積より生じる異常放電を抑制している。更に、領域(2)の幅を領域(3)の幅よりも十分広く確保することによって、感光体の領域(2)の削れ量を低減している。詳しい説明は§9に記載する。
【0053】
■カートリッジ幅について
WctgはW(感光体)の長さに応じて決まる。本実施例のカートリッジ幅は300mmとなる。なお、従来例1と同等の転写残トナーの回収性能を得るために、レシプロ幅は従来例1と同じ幅にした。また、本実施例では、補助帯電器15は、図2の(a)に示す従来例1の構成より約20mm短い構成を取っている。そのため、補助帯電を20mm短くすることによって生じたカートリッジのスペースにレシプロ駆動列を配置して、Wctgを従来例1の構成よりも20mm短くすることができた。
【0054】
§9.{本構成において削れ量の低減する理由について}
前述の通り、感光ドラムは感光ドラムとの間に生じる放電量が多くなると、感光ドラムの削れ量が多くなる。とりわけ、飛散トナーが感光ドラム上に蓄積することによって、異常放電が生じると感光ドラムの削れ量が著しく多くなる。そのため、異常放電を抑制することによって感光ドラムの寿命が長くなる。そこで、本実施例の画像形成装置は画像形成に関わる各要素の感光ドラム回転軸方向(長手方向)の長さ関係を前述の関係を満たすようにした。これにより、飛散トナーの蓄積によって生じる異常放電を抑制した。
【0055】
補助帯電器15の長手方向の最小幅(W(補助帯電器))は、現像器13から発生する飛散トナーに対して帯電制御可能な幅で決まっており、それによって中間転写ベルト16上へ1次転写することで感光ドラム11上へ飛散トナーの蓄積を抑制していた。
【0056】
飛散トナーが感光ドラム上に蓄積されると、感光ドラム11と帯電ローラ12との接触するニップ近傍の放電領域において異常放電を引き起こす。異常放電が発生する領域(例えば、従来例1の領域(b))のドラム削れ量は画像形成領域(Wm)に比べて大きい。感光ドラムの削れ量は感光ドラム上に飛散トナーが蓄積した領域(異常放電が生じる領域)で多くなる。
【0057】
ここで、本実施例の感光ドラムの領域(1)〜(3)の電位がどのように変動するかと、電位変動に伴い発生する帯電(放電)について説明する。
【0058】
領域(1)の電位は、感光ドラム11に対する帯電手段や除電手段(転写帯電器)が無いため、感光ドラム表面の電位は略0Vを推移する。
【0059】
領域(2)の電位は、感光ドラム11に対して帯電ローラ12が存在する領域である。そのため、領域(2)の電位は帯電電位(VD)になる。その後、感光ドラム11の自己減衰能力によって、次第に0V電位へ向かって推移していく。ここで、感光ドラムが1周すると再度帯電ローラ12によって帯電電位(VD)に帯電される。そのため、感光ドラムの自己減衰量が小さければ帯電ローラ12の再帯電に伴う放電量は小さくなる。言い換えると、感光ドラム11の自己減衰能力によって除電するまでは、感光ドラム11と帯電ローラ12とが接触するニップ近傍の放電領域において放電が行われることはない。
【0060】
領域(3)の電位は、感光ドラム11に対して帯電ローラ12と補助帯電器15と1次転写帯電器14が存在する領域である。感光体は帯電ローラによって帯電電位(VD)に帯電される。その後、感光ドラム表面の電位は転写帯電器によって一旦低下する。その後、補助帯電器15によって再び(負)帯電される。感光ドラムは補助帯電器によって再度帯電されるため、帯電ローラの再帯電に伴う放電量は比較的少なくなる。
【0061】
ここで、領域(2)の飛散トナーはレシプロ機構によって散らされるのみで飛散トナーを除去能力は高くない。しかしながら、前述の通り、領域(2)は再帯電に伴う放電量が小さいため、感光ドラムの削れ量を抑えることが出来る。また、領域(3)は補助帯電器によって正規極性に電荷を調整して転写帯電器によって飛散トナーを中間転写ベルトに転写している。そのため、領域(3)は飛散トナーの蓄積によって異常放電が発生することが無い。しかしながら、帯電器によって帯電された箇所を転写帯電器によって除電した後、補助帯電器で再度帯電するため、放電量は比較的大きくなっている。ここで、感光ドラムの削れ量を抑制するためには、飛散トナーの蓄積を抑える方法と、再帯電を抑える方法があり、何れか一方の方法を用いることによって感光ドラムの寿命を十分に長くすることができる。
【0062】
領域(1)〜(3)において、飛散トナーの蓄積を抑制することができる。そのため、飛散トナーの蓄積に起因する異常放電が抑制され、耐久による感光ドラムの削れ量が少なくなる。これにより、従来達成することのできなかったドラム長寿命かつコンパクトを達成することができる。具体的には、図5の(b)の領域(1)〜(3)の削れ推移からも分かるように、本実施例では、従来例1と比べて削れ量を大幅に抑制される(図2の(b)参照)。
【0063】
感光ドラムの削れ量は、感光ドラムに対する放電量の抑制及び/又は飛散トナーの蓄積を抑制によって低減させることができる。本実施例の領域(2)では、転写帯電器と対向させないことによってドラムへ総放電量を少なくしている。また、本実施例の領域(3)では、補助帯電器で正規極性に電荷を調整した飛散トナーを転写帯電器で中間転写ベルトに転写するため、飛散トナーの蓄積を防止している。つまり、「W(帯電器)>W(補助帯電器)≧W(転写帯電器)」の関係を満たすようにカートリッジを構成することによって、従来例1の領域(2)のような、感光体ドラムに対する放電量が多く且つ飛散トナーが蓄積する領域をなくすことができる。更に、「W(感光体)>Wmax(補助帯電器)>W(帯電器)>W(補助帯電器)」を満たすようにカートリッジを構成することによって、本実施例の領域(2)の飛散トナーは補助帯電器が移動する幅(Wmax(補助帯電器)又はW(レシプロ機構))に散らされる。そのため、領域(2)の飛散トナーはWmax(補助帯電器)の幅に散らされて、補助帯電器によって正規極性の電荷に調整されて現像器に回収される又は転写帯電器によって中間転写ベルトに転写される。本実施例において、領域(2)の幅(W(帯電器)−W(補助帯電器))は補助帯電器がレシプロ機構によって移動する幅(Wmax(補助帯電)−W(補助帯電))よりも長い。これにより、領域(2)のトナーは領域(2)に隣接する領域(1)及び領域(3)に散らされることによって少なくなる。
【0064】
このように、画像形成に関わる各要素の長手方向の関係を本実施例で説明した関係を満たすようにすることによって、耐久によって飛散トナーが生じた場合においても、帯電ローラ12や補助帯電器15による放電を大幅に減らすことができる。その結果、異常放電による感光ドラム11の削れ推移を大幅に減らし、ドラムカートリッジの寿命を長くすることができる。
【0065】
[有効幅について]
前述のとおり、感光ドラムの削れ量は画像形成に関わる各要素が感光ドラム表面の電位変化と関係する。前述の有効幅の測定は以下の測定方法を用いても良い。例えば、帯電ンバイアスを印加した帯電ローラを用いて感光ドラムを帯電させ、帯電電位に帯電した幅を帯電有効幅としてもよい。この帯電電位に帯電した幅は感光ドラムの電位を計測するために用いる電位センサを用いる。同様に、転写バイアスを印加した転写帯電器によって感光ドラムの表面電位は変化する。そのため、転写帯電器によって感光体の電位が変化した領域を転写帯電器の有効幅としてもよい。
【0066】
(実施例2)
本実施例の画像形成装置は実施例1において説明した画像形成装置と略同様の構成である。そのため、同一部分に関しては同一符号を付すことで説明を省略する。なお、各画像形成に関わる要素の有効長さの関係は実施例1の関係と同一である。
【0067】
実施例1においては帯電ローラに印加する帯電バイアスは直流バイアスに交流バイアスが重畳したものを印加していた。しかしながら、本実施例において、帯電ローラ12に印加されるバイアスは直流バイアスのみとする。
【0068】
直流電圧のみを使用することで、実施例1よりも感光ドラム11の削れ量を大幅に低減を大きく低減することができる。また、この構成を取ること、感光ドラム11の初期膜厚を減らせることや交流電源を使用しないことでの低コスト化も同時に実現している。図6は帯電ローラに直流バイアスのみを印加した場合における耐久試験結果を示すグラフである。図6からも明らかなように、領域(2)及び領域(3)の削れ量は実施例1と比べて大幅に低減している。つまり、帯電ローラにACバイアスを印加しないことによって感光体ドラムの寿命を更に延ばすことができる。なお、カートリッジサイズに関しても実施例1と同様に短くでき、画像形成装置を短くすることができる。
【0069】
(その他の実施例)
実施例1において、シートに転写するトナー像を中間転写体としての中間転写ベルトに転写する中間転写方式を、補助帯電装置として固定ブラシを用いたの画像形成装置について説明した。しかしながら、このような構成に限られるものではない。以下に例を挙げる。
【0070】
§1.{補助帯電器としてファーブラシを用いた構成}
実施例1では固定ブラシを用いたが、回転可能なファーブラシを用いても良い。図7の(a)は補助帯電器としてファーブラシを用いた画像形成装置の概略構成を説明するための図である。なお、各画像形成に関わる要素の有効長さの関係は実施例1の関係と同一である。
【0071】
補助帯電器15としての回転形状のファーブラシは、感光ドラム11との接触部において、感光ドラム11の回転に対して順方向に回転駆動される。もちろん、ファーブラシは、感光ドラム11に対して逆方向に回転駆動する構成を用いてもよい。ファーブラシには、金属軸上に導電性のレーヨン繊維が植毛され、繊維の太さは6デニール、パイル長は5mm、繊維密度は100KFのものを使用した。実施例1同様に繊維の植毛幅を帯電補助有効幅と呼ぶ。なお、ナイロン繊維やポリエステル繊維などでも良く、繊維の太さは2〜10デニール、パイル長は3〜8mm、繊維密度は50〜500KFの範囲のものが望ましい。
【0072】
補助帯電器15としてファーブラシを使用するメリットは、使用するトナーの粒径や凝集度などの性質によらず、耐久をとおして安定して転写残トナーへ帯電制御することができる点である。また、感光ドラム11上を摺擦する摺擦力を、感光ドラム11と補助帯電器15の硬さに応じて最適化することができる点である。このようにファーブラシを用いる構成において、補助帯電器として固定ブラシを用いる場合に比べて、耐久時に感光ドラム表面に発生する融着物を効率よく解消することができる。
【0073】
§2.{直接転写方式を用いた構成}
実施例1では、本発明は、中間転写方式のカラー画像形成装置であるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7の(b)に示すような直接転写方式の画像形成装置であってもよい。直接転写方式においては、各画像形成部へと記録材担持体にて搬送される受像部材としての記録材P(シート)に対して、それぞれ感光ドラム11の表面に形成されたトナー画像が順次直接転写される。直接転写方式においては、各カートリッジ(Sa、Sb、Sc、Sd)は記録材を搬送する記録材担持体としての搬送ベルト16Aに沿って配置される。また、搬送ベルト16Aは、支持ローラ31、32、33に張架され、矢印方向に回動可能とされる。
上記構成のほかに、モノクロ画像形成装置に適用しても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
11 感光ドラム(感光体)
12 帯電ローラ
13 現像器
130 現像スリーブ
14 転写ローラ
15 補助帯電ブラシ
16 中間転写ベルト
23 露光手段
50 レシプロ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な感光体と、
前記感光体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電された感光体上に形成された静電像をトナーで現像する現像手段と、
前記感光体上に形成されたトナー像を受像部材へ転写する転写手段と、
前記帯電手段による帯電処理の前に前記感光体上の転写残トナーを正規の帯電極性に帯電する補助帯電手段と、を有する画像形成装置において、
前記感光体と、前記帯電手段と、前記現像手段と、前記転写手段と、前記補助帯電手段と、の有効幅をそれぞれW(感光体)、W(帯電手段)、W(現像手段)、W(転写手段)、W(補助帯電手段)としたとき、W(感光体)>W(帯電手段)>W(補助帯電手段)≧W(転写帯電手段)>W(現像手段)の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補助帯電手段を前記感光体の回転軸方向に往復移動させる往復移動手段を備え、前記往復移動手段によって前記補助帯電手段が移動する幅をW(往復移動手段)としたとき、W(感光体)>W(往復移動手段)>W(帯電手段)>W(補助帯電手段)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
W(帯電手段)−W(補助帯電手段)>W(転写帯電手段)−W(現像手段)の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−152333(P2010−152333A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253073(P2009−253073)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】