説明

画像形成装置

【課題】複合機やMFPなどの画像形成装置においてユーザに対して個別に割り当てられた記憶領域に文書データが保存される場合、その文書データをユーザが利用することを承認者が承認できるようにする。
【解決手段】画像形成装置は、複数の記憶領域(BOX1,BOX2)を有する記憶部15と、文書データを入力するデータ入力部21と、入力した文書データを、第1ユーザに割り当てられたBOX1と第2ユーザに割り当てられたBOX2とのそれぞれに記憶して保存する保存処理部25と、BOX1に記憶された文書データ69aと、BOX2に記憶された文書データ69bとのそれぞれに対するアクセスを制御するアクセス制御部26とを備える。アクセス制御部26は、文書データ69bに対する第2ユーザによる操作が行われた後に、文書データ69aに対する第1ユーザによる操作を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザに対して個別に割り当てられた複数の記憶領域を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合機やMFP(Multi Function Peripheral)と呼ばれる画像形成装置は、ハードディスク装置などの不揮発性記憶装置を内蔵するものが普及してきている。このような不揮発性記憶装置には「BOX」などと称される複数の記憶領域が設定されており、各BOXは画像形成装置を利用するユーザごとに割り当てられている。すなわち、不揮発性記憶領域に設けられる各BOXは、各ユーザが使用可能な専用の記憶領域となっている。そのため、各ユーザは画像形成装置にログインすることにより、自身に割り付けられたBOXに対して自由にアクセスし、そのBOXに保存されている文書データなどを閲覧したり、印刷したりすることができる。
【0003】
また近年の画像形成装置は、ネットワーク環境で使用されるようになっており、例えばあるユーザが別のユーザに対して文書データを配布したい場合、その配布したいユーザを指定して画像形成装置に文書データを送信すれば、画像形成装置が配布先のユーザを特定し、そのユーザに割り当てられたBOXに文書データを保存することが可能である。また複数のユーザに対して同じ文書データを同時に配布したい場合には、複数のユーザを指定して画像形成装置に送信すれば、画像形成装置は複数のユーザのそれぞれに割り当てられたBOXに文書データを保存する。
【0004】
このような画像形成装置では、各ユーザに割り当てられたBOXに文書データが保存された時点で、各ユーザは自由に自身のBOXに保存された文書データを閲覧又は印刷することができるようになる。
【0005】
一方、企業や官公庁などの組織では、機密文書の漏洩を防止するため、文書配布の是非を判断する承認者が存在し、その承認者の承認が得られて初めて文書の配布が容認されるケースも少なくない。そのような中、従来はファクシミリ装置に関する技術として、ユーザがファクシミリ送信を指示すると、文書のファクシミリ送信を行う前に、そのファクシミリ送信に対する承認を特定の承認者から取得する処理を行い、承認者から承認が得られた後に指定された送信先にファクシミリ送信を行う装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−295294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の場合には、承認者が承認を行うまで、ユーザによって指定されたファクシミリ送信に関するジョブは待機状態となってしまうため、ユーザはファクシミリ送信が何時頃完了するかを把握することができず、指定した送信先に対するファクシミリ送信が正常に完了したか否かを常に気に掛けながら他の職務を遂行しなければならなくなる。そのため、ファクシミリ送信によって文書を第三者に送信することを指示したユーザが、その後、他の職務に集中できるようにするためには、その指示された送信処理を速やかに実行することが好ましい。
【0008】
一方、上述したように画像形成装置のBOX機能を利用することにより、あるユーザが別のユーザに対して文書データを配布する場合、あるユーザが送信した文書データが配布先のユーザに割り当てられたBOXに保存された時点で、その配布先のユーザは自由に自身のBOXに保存された文書データを閲覧又は印刷することができるので、文書データの中身が機密情報である場合には問題となる。そのため、画像形成装置のBOX機能を利用して文書データを配布する際にも、承認者による承認を取得するようなシステムの構築が必要になる。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決することを目的としてなされたものであり、ユーザに対して割り当てられた記憶領域に文書データが保存された場合、その文書データに対する承認を承認者が行うことができるようにした画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、画像形成装置であって、複数のユーザに対して個別に割り当てられた複数の記憶領域を有する記憶手段と、前記複数のユーザに含まれる第1ユーザと第2ユーザとを宛先に含む文書データを入力する入力手段と、前記入力手段が入力する文書データを、前記記憶手段における前記第1ユーザに割り当てられた第1の記憶領域と、前記第2ユーザに割り当てられた第2の記憶領域とのそれぞれに記憶して保存する保存処理手段と、前記第1の記憶領域に記憶された文書データと、前記第2の記憶領域に記憶された文書データとのそれぞれに対するアクセスを制御するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われた後に、前記第1の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第1ユーザによる操作を許可することを特徴としている。
【0011】
かかる発明によれば、第2ユーザが第2の記憶領域に記憶された文書データに対する操作を行わない限り、アクセス制御手段が、第1の記憶領域に記憶された文書データに対する第1ユーザによる操作を許可することはなく、第1ユーザが文書データの閲覧や印刷などを行うことを禁止することができる。また第2ユーザが第2の記憶領域に記憶された文書データに対する操作を行えば、アクセス制御手段が、第1の記憶領域に記憶された文書データに対する第1ユーザによる操作を許可するので、その後は第1ユーザが第1の記憶領域に記憶されている文書データの閲覧や印刷などを行うことができるようになる。
【0012】
また請求項2にかかる発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記アクセス制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われる前の状態において、前記第1の記憶領域に記憶された文書データの一部のみに対する前記第1ユーザによる操作を許可することを特徴としている。
【0013】
また請求項3にかかる発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記複数のユーザに対して個別にメッセージを送信可能な通知手段をさらに備え、前記通知手段は、前記保存処理手段が前記第2の記憶領域に文書データを記憶したことにより、前記第2ユーザに対して文書データが保存されたことを示すメッセージを送信することを特徴としている。
【0014】
また請求項4にかかる発明は、請求項3記載の画像形成装置において、前記通知手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われたことにより、前記第1の記憶領域に記憶されている文書データが操作可能になったことを示すメッセージを前記第1ユーザに対して送信することを特徴としている。
【0015】
また請求項5にかかる発明は、請求項3又は4記載の画像形成装置において、前記通知手段は、前記保存処理手段が前記第1の記憶領域に文書データを記憶したことにより、前記第1ユーザに対して文書データが保存されたことを示すメッセージを送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1ユーザに対して割り当てられた第1の記憶領域に文書データが保存された時点では、第1ユーザが第1の記憶領域の文書データに対する操作を行うことは許可されず、第2ユーザによって第2の記憶領域に保存された文書データに対する操作が行われた後に、第1ユーザが第1の記憶領域の文書データに対する操作を行うことが許可される。そのため、ユーザに対して割り当てられた記憶領域に文書データが保存される場合、その文書データに対する承認を承認者が行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成装置が接続されたネットワーク構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】記憶部に記憶されるユーザ認証情報およびBOX管理情報の一例を示す図である。
【図4】各ユーザのコンピュータの一構成例を示す図である。
【図5】コンピュータが画像形成装置に対して文書データを送信する際に表示部に表示する画面の一例を示す図である。
【図6】画像形成装置のCPUによって実現される機能を示したブロック図である。
【図7】送信先であるユーザのBOXに保存される属性情報と、承認者であるユーザのBOXに保存される属性情報とを示す図である。
【図8】承認操作を行うために操作パネルの表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図9】承認者による承認操作が行われたことにより書き換えられた属性情報を示す図である。
【図10】画像形成装置が文書データを入力した場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】承認者が承認操作を行う場合の画像形成装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】被承認者が操作を行う場合の画像形成装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】被承認者が画像形成装置にログインした場合の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明するいくつかの実施の形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1が接続されたネットワーク構成を示す図である。画像形成装置1は一般に複合機やMFPなどと呼ばれる装置であり、装置本体の上部に画像読取部2を有し、下部に画像形成部3を有している。画像読取部2は、原稿の画像を読み取るスキャナ部2aと、セットされた複数枚の原稿を1枚ずつスキャナ部2aに自動搬送する自動原稿搬送装置(ADF)2bとを備えている。画像形成部3は、用紙などの印刷媒体に対してトナー像を転写することにより画像形成を行うプリンタ部3aと、プリンタ部3aに対して印刷媒体を1枚ずつ供給する給紙部3bとを備えている。画像形成装置1はこれら各部を動作させることにより、コピー機能、プリンタ機能、FAX機能、スキャナ機能などの各種機能を利用可能とする。
【0020】
また画像形成装置1は、スキャナ部2aの前面側にユーザが操作可能な操作パネル4を備えている。操作パネル4は、ユーザに対して各種情報を表示するための表示部4aと、その表示部4aの周囲に配置された複数の操作キー4bとを備えている。表示部4aは、例えば液晶表示デバイスの表面上にタッチパネルセンサを備えた構成であり、ユーザは表示部4aに表示されるボタン画像などを操作することも可能である。
【0021】
この画像形成装置1は、LANなどのネットワーク9に接続されており、同じくネットワーク9に接続された複数のコンピュータ6とデータ通信を行うことができるようになっている。複数のコンピュータ6のうち、例えば、コンピュータ6aはユーザAが使用するコンピュータであり、コンピュータ6bはユーザBが使用するコンピュータであり、コンピュータ6cはユーザCが使用するコンピュータである。尚、図例では、ネットワーク9に対して3台のコンピュータ6a,6b,6cが接続された場合を示しているが、4台以上のコンピュータが接続されていても良い。またネットワーク9には、画像形成装置1とは異なる複合機やMFPなどが接続されていても良い。
【0022】
図2は、画像形成装置1の内部構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、上述した画像読取部2、画像形成部3および操作パネル4に加え、さらにCPU10、ROM11、RAM12、画像メモリ13、ネットワークインタフェース14、および記憶部15を備えており、これら各部がデータバス8を介して相互にデータの送受信が可能なように接続された構成となっている。CPU10は、ROM11に予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置1における各種の動作を制御する。ROM11は、CPU10によって実行されるプログラムの他、各種制御用パラメータや、操作パネル4の表示部4aに表示するための画面情報などが格納されている。RAM12は、CPU10が各種処理を実行する際の一時的なデータなどを記憶することによりCPU10のワークエリアとして機能するためのものである。画像メモリ13は、画像読取部2が原稿を読み取って取得した画像データや、画像形成部3に出力するための画像データ、或いはネットワーク9を介して受信する文書データなどの各種データを格納するためのメモリである。ネットワークインタフェース14はネットワーク9に接続してコンピュータ6a,6b,6cとデータの送受信を行うためのものである。記憶部15は、例えばハードディスク装置などの不揮発性記憶装置で構成された記憶手段である。
【0023】
記憶部15には、複数のユーザに対して個別に割り当てられた複数の記憶領域(以下、「BOX」という。)が設定されている。図例の場合、BOX1、BOX2、BOX3、…といった複数のBOXが設定されている。本実施形態では、例えばBOX1が図1のユーザAに割り当てられており、BOX2がユーザBに割り当てられており、BOX3がユーザCに割り当てられているものとする。
【0024】
また記憶部15には、ユーザが画像形成装置1にログインする際に参照するユーザ認証情報15aと、ユーザごとに割り当てたBOXを管理するためのBOX管理情報15bとが記憶されている。図3は、記憶部15に記憶されるユーザ認証情報15aおよびBOX管理情報15bの一例を示す図である。図3(a)に示すように、ユーザ認証情報15aには、ユーザと、そのユーザがログインする際に参照するパスワードとが対応付けられて記憶されている。例えばユーザAが画像形成装置1にログインする際、操作パネル4を操作してユーザ名とパスワードとを入力すると、画像形成装置1はユーザ認証情報15aを参照し、入力されたユーザ名とパスワードに一致する組合せが存在すれば、ユーザ認証を成功させ、ユーザAが画像形成装置1にログインした状態となる。そしてユーザAは画像形成装置1の各種機能を使用することができるようになる。これに対し、入力されたユーザ名とパスワードに一致する組合せがユーザ認証情報15aに存在しなければ、ユーザ認証は失敗となり、ユーザAは画像形成装置1にログインできず、画像形成装置1の各種機能を使用することができない。
【0025】
また図3(b)に示すように、BOX管理情報15bは、ユーザと、そのユーザのBOXとを対応付けた情報である。例えばユーザAが画像形成装置1にログインした状態となると、画像形成装置1はBOX管理情報15bを参照することにより、ユーザAに対して割り当てられたBOX1を特定し、該BOX1に保存されている各種データに対して所定の条件下でユーザAによる操作を許可する。また画像形成装置1にログインしたユーザが、他のユーザに割り当てられているBOXにアクセスしようとしても、画像形成装置1はそのような操作を受け付けず、ログインしたユーザに対して割り当てられているBOXにのみアクセスを許可するようになっている。
【0026】
次に図4は、各ユーザのコンピュータ6の一構成例を示す図である。コンピュータ6は、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)と同様の構成である。すなわち、コンピュータ6は、ユーザに各種情報を表示する表示部61と、各種の演算処理を行うCPU62と、ユーザが操作するキーボード63およびマウス64と、ネットワーク9に接続するためのネットワークインタフェース65と、CPU62が演算処理を行う際の一時的なデータを記憶するメモリ66と、ハードディスク装置67とを備えており、これらがデータバス60を介してデータ入出力可能なように接続されている。
【0027】
ハードディスク装置67には、図4に示すようにプリンタドライバなどのプログラム68が保存されている。またハードディスク装置67には必要に応じて他のユーザなどへの配布対象となる文書データ69が保存されている。CPU62は、プログラム68を読み出して実行することにより、ハードディスク装置67に記録されている文書データ69を画像形成装置1に送信する。
【0028】
例えば、図1に示すユーザCが、ユーザAに対して文書データ69を配信したい場合、キーボード63などを操作することによってコンピュータ6cにおいてプログラム68を実行させ、送信先としてユーザAを指定する。また配信する文書データ69が機密情報を含む場合には、ユーザAに文書を公開することの承認を得るため、例えばユーザAの上長であるユーザBを承認者として指定する。
【0029】
図5は、コンピュータ6が画像形成装置1に文書データを送信する際に表示部61に表示される画面の一例を示す図である。上述したように、例えばユーザCが、文書データ69をユーザAに対して配信するためにコンピュータ6cにおいてプログラム68を起動すると、その表示部61には、図5のような画面が表示される。この表示画面には、文書データの部数を指定するための部数指定欄61aと、宛先設定として文書データの送付先(送信先)であるユーザを指定する送付先指定欄61bと、文書データを送付先に送ることに関して承認を得るための承認者指定欄61cとが表示されている。ユーザCはマウス64を操作することによってポインタ画像61fを画面内で移動させて各指定欄61a,61b,61cを指定し、キーボード63を操作することで各種情報を入力する。上述した例の場合、ユーザCは、部数指定欄61aに必要部数を入力し、送付先指定欄61bにユーザAを入力する。また承認者指定欄61cには、ユーザAの上長であるユーザBを承認者として指定する。全ての入力が完了すると、ユーザCは、マウス64を操作することによってポインタ画像61fを画面内で移動させ、印刷ボタン61dをクリック操作することで文書データ69がネットワーク9を介して画像形成装置1に送信される。尚、キャンセルボタン61eは、文書データ69の送信処理をキャンセルするときなどにクリック操作するボタンである。
【0030】
上記のようにして画像形成装置1がネットワーク9を介して文書データを入力すると、画像形成装置1は文書データ69に対して宛先設定が含まれている場合、その宛先として指定されているユーザに対応したBOXに文書データ69を保存する。つまり、画像形成装置1はBOX機能により、ネットワーク9を介して受信する文書データ69を指定されたユーザに配布することができるようになっている。
【0031】
図6は、画像形成装置1のCPU10によって実現される機能を示したブロック図である。尚、図6には主として画像形成装置1のBOX機能に関する処理部のみを示している。図6に示すように、画像形成装置1のCPU10は、データ入力部21、データ解析部22、データ変換部23、データ管理部24、通知処理部27、認証処理部28、および、指定処理実行部29として機能する。またデータ管理部24は、さらに保存処理部25およびアクセス制御部26として機能する。
【0032】
データ入力部21は、文書データ69の入力を受け付ける処理部である。例えばネットワークインタフェース14がネットワーク9を介して文書データ69を受信すると、データ入力部21がその文書データ69の入力を受け付ける。この他にも、例えば画像読取部2が原稿を読み取ったとき、データ入力部21が機能し、画像読取部2が取得した画像データ(文書データ)の入力を受け付ける。
【0033】
データ解析部22は、データ入力部21が入力を受け付けたデータを解析し、特定のユーザに割り当てられたBOXに保存することが指定されているか否か把握する。例えば、上述したようにユーザCが、ユーザAを送付先として指定し、ユーザBを承認者として文書データ69を送信した場合、データ解析部22は、ネットワーク9を介して受信した文書データ69に付加されている情報に基づいて、送付先として指定されたユーザAを特定すると共に、承認者として指定されたユーザBを特定する。また画像読取部2が読み取った画像データを特定のユーザのBOXに保存することが指定されている場合、データ解析部22は、上述したBOX管理情報15bに基づいて、その保存先となるBOXを特定する。
【0034】
データ変換部23は、ネットワーク9を介して入力した文書データ69或いは画像読取部2が読み取った画像データをプリンタ部3aに対して出力可能なデータに変換する処理部である。データ変換部23がデータ変換を行うことにより、画像形成装置1に入力したデータは、プリンタ部3aがそのまま画像形成を行うことが可能な画像データとなる。
【0035】
データ管理部24は、記憶部15の各BOXに文書データを保存して管理する処理部である。例えば上述したように、ユーザCが文書データ69の送付先としてユーザAを指定し、承認者としてユーザBを指定した場合、データ管理部24は保存処理部25として機能し、保存処理部25が、ユーザAに割り当てられたBOX1と、ユーザBに割り当てられたBOX2とを特定する。そして保存処理部25は、データ変換部23によってデータ変換された文書データ69aをユーザAに割り当てられたBOX1に保存し、同様にデータ変換部23によってデータ変換された文書データ69bをユーザBに割り当てられたBOX2に保存する。尚、BOX1に保存される文書データ69aとBOX2に保存される文書データ69bは、同じデータである。
【0036】
また保存処理部25は、ユーザAに割り当てられたBOX1に文書データ69aを保存する際、文書データ69aに対する属性情報70aを生成し、その属性情報70aを文書データ69aと関連づけて保存する。同様に、ユーザBに割り当てられたBOX2に文書データ69bを保存する際、文書データ69bに対する属性情報70bを生成し、その属性情報70bを文書データ69bと関連づけて保存する。ここでBOX1に保存する属性情報70aと、BOX2に保存する属性情報70bとはそれぞれ異なった内容の情報となっている。
【0037】
図7は、送信先であるユーザAのBOX1に保存される属性情報70aと、承認者であるユーザBのBOX2に保存される属性情報70bとを示す図である。ユーザAのBOX1において文書データ69aと関連づけて保存される属性情報70aは、図7(a)に示すように、閲覧可否情報と、印刷可否情報と、承認者情報と、承認者ファイルとの4つの項目から成る情報が記録されている。そして閲覧可否情報は初期状態で「不可」となっており、印刷可否情報も初期状態で「不可」となっている。承認者情報には文書データ69aをユーザAが操作することに関する承認者の情報が記録されており、図例ではユーザCによって指定された「ユーザB」が記録されている。また承認者ファイルにはその承認者用に保存された文書データ69bを対応付けるためのBOX名やファイル名などが記録されている。
【0038】
またユーザBのBOX2において文書データ69bと関連づけて保存される属性情報70bは、図7(b)に示すように、閲覧可否情報と、印刷可否情報と、承認操作の有無と、被承認者情報と、被承認者ファイルとの5つの項目から成る情報が記録されている。そして閲覧可否情報は初期状態で「可」となっており、印刷可否情報も初期状態で「可」となっている。また承認操作の有無は、初期状態で「無」となっている。被承認者情報にはユーザBが承認する被承認者(すなわち、文書データの送付先となるユーザ)の情報が記録されており、図例ではユーザCによって指定された「ユーザA」が記録されている。また被承認者ファイルにはその被承認者用に保存された文書データ69aを対応付けるためのBOX名やファイル名などが記録されている。
【0039】
データ管理部24のアクセス制御部26は、記憶部15のBOXに文書データが保存されているおり、且つ、その文書データに属性情報が関連づけられている場合、その属性情報に基づいて当該BOXを割り当てられたユーザがその文書データに対する操作を制限する処理部である。例えば、BOX1の文書データ69aに対し、図7(a)に示す属性情報70aが関連づけられている場合、閲覧可否情報や印刷可否情報が「不可」となっているため、アクセス制御部26は、ユーザAが文書データ69aの内容を閲覧したり、印刷するための操作を行うことを禁止する。また、BOX2の文書データ69bに対し、図7(b)に示す属性情報70bが関連づけられている場合、閲覧可否情報や印刷可否情報が「可」となっているため、アクセス制御部26は、ユーザBが文書データ69bの内容を閲覧したり、印刷するための操作を行うことは許可する。つまり、アクセス制御部26は、ユーザAおよびユーザBのそれぞれに割り当てられたBOX1,2に文書データ69a,69bが保存されたとき、文書データ69の送信先として指定されたユーザAが自身のBOX1に記録された文書データ69aに対して閲覧や印刷などの操作を行うことを禁止するのに対し、承認者として指定されたユーザBが自身のBOX2に記録された文書データ69bに対して操作を行うことは許可しており、承認者であるユーザBのみが承認のための操作が行うことができる状態となっている。そして承認者として指定されたユーザBが自身のBOX2に保存された文書データ69bに対して所定の操作を行ってユーザAが文書データ69aを操作することを承認すると、アクセス制御部26は、それに伴ってBOX2の属性情報70bと、BOX1の属性情報70aとを書き換える。そしてその結果、ユーザAはBOX1に保存された文書データ69aに対する操作が許可されるようになる。
【0040】
図6に戻り、通知処理部27は、各ユーザに対して各種の通知を行う処理部であり、例えば電子メール送信機能などを利用して各ユーザに対する通知処理を自動で行うように構成されている。例えば通知処理部27は、記憶部15の各BOXに対して文書データが保存されたとき、そのBOXが割り当てられているユーザに対し、文書データが保存された旨を示す電子メールを自動送信する。また承認者が承認する操作を行ったことにより、文書データの送信先として指定されたユーザが文書データに対する操作を行うことができるようになると、通知処理部27は、そのユーザに対し、文書データを操作することが承認された旨を示す電子メールを自動送信する。
【0041】
認証処理部28は、画像形成装置1を使用するユーザを認証する処理部である。例えば操作パネル4を介してユーザ名とパスワードとを入力すると、認証処理部28は、ユーザ認証情報15aを参照することによって認証処理を行う。認証処理部28がユーザの認証に成功すると、その認証されたユーザが画像形成装置1にログインした状態となり、該ユーザは自身に割り当てられたBOXに対してアクセスすることができるようになる。
【0042】
指定処理実行部29は、画像形成装置1にログインしたユーザによって指定される処理を実行する処理部である。例えば画像形成装置1にログインしたユーザ自身に割り当てられたBOXに保存されている文書データの閲覧や印刷が許可されている状態のとき、そのユーザが閲覧指示を行うと、操作パネル4の表示部4aに対して文書データに基づく画像を表示する処理を行う。またそのユーザが印刷指示を行うと、画像形成部3のプリンタ部3aに対してデータ変換された文書データを出力して印刷処理を実行する。一方、画像形成装置1にログインしたユーザ自身に割り当てられたBOXに保存されている文書データの閲覧や印刷が許可されていない状態のとき、そのユーザが閲覧指示や印刷指示を行ったとしてもアクセス制御部26によって文書データへのアクセスが拒否されるので、そのユーザがそれらの指示を行っても指定処理実行部29は指定された処理を実行することはない。
【0043】
例えば上述したようにユーザCがユーザAを送信先に指定し、且つ、ユーザBを承認者として指定した場合、ユーザCの操作に基づいて送信された文書データ69(69a,69b)がユーザAのBOX1とユーザBのBOX2のそれぞれに格納された時点では、ユーザBのみが文書データ69bに対する処理を指定して実行させることができ、ユーザAは文書データ69aに対する処理を指定して実行させることができないようになっている。つまり、この時点では、承認者であるユーザBのみが自身のBOX2に格納された文書データ69bに対する操作を行うことができ、ユーザAが文書データ69aの中身を見る前にユーザBが承認操作を行うことができる。
【0044】
ここで承認者であるユーザBによる承認操作の一例について説明する。図8は、承認操作を行うために操作パネル4の表示部4aに表示される画面の一例を示す図である。ユーザBがユーザ名とパスワードとを入力して画像形成装置1にログインし、自身のBOX2にアクセスすると、そこに保存されている文書データ69bが読み出され、操作パネル4の表示部4aには、例えば図8(a)のような画面が表示される。画面の左側には文書データ69bに基づく文書の中身がプレビュー表示欄PVに表示される。プレビュー表示欄PVには例えば文書の中身が縮小表示されるが、より詳細な中身を表示するために拡大表示を行うようにしても良い。そのプレビュー表示欄PVの左側にはページを前送りするための前ページボタン41が表示され、右側にはページを後送りするための後ページボタン42が表示される。ユーザBが前ページボタン41と後ページボタン42とを適宜操作することにより、プレビュー表示欄PVのページが更新されるので、ユーザBは文書データ69bの全体の中身を確認することができる。
【0045】
また図8(a)に示す画面の右側には、ユーザBが操作可能な承認スタンプ押印ボタン43と、印刷ボタン44と、削除ボタン45と、キャンセルボタン46とが表示される。ユーザBは、プレビュー表示欄PVに表示される文書データ69bの中身を確認した後、文書データ69bに承認スタンプを押下する場合は、承認スタンプ押印ボタン43を操作する。承認スタンプ押印ボタン43が操作されると、指定処理実行部29は、ユーザBのBOX2に格納された文書データ69bに対して承認スタンプのスタンプ画像を合成し、文書データ69bを更新する。またこれに伴い、指定処理実行部29は、文書データ69bに関連づけられた属性情報70bを参照して被承認者(つまり、送信先)であるユーザAのBOX1と文書データ69aとを特定し、その文書データ69aに対して同様のスタンプ画像を合成して文書データ69aを更新する。
【0046】
図8(b)に示す画面は、ユーザBが承認スタンプ押印ボタン43を操作した後のプレビュー表示欄PVに表示される文書データ69bの中身の画像を示している。図8(b)に示すようにユーザBによって承認スタンプが押下されたことにより、文書データ69bにはスタンプ画像SGが合成されている。またこの場合は、文書データ69aに対しても同様のスタンプ画像が合成されている。ユーザBにより、このような承認スタンプを押下する操作が行われると、ユーザAがBOX1に保存されている文書データ69aに対して何らかの操作を行うことが許可される。
【0047】
また本実施形態では、上述した承認スタンプを押印する他にも、ユーザBが例えば文書データ69aの中身を用紙などに印刷するために印刷ボタン44を操作した場合や、或いは文書データ69aをユーザBのBOX2から削除するために削除ボタン45を操作した場合には、ユーザAがBOX1に保存されている文書データ69aに対して何らかの操作を行うことが許可される。つまり、本実施形態では、ユーザBが承認スタンプ押印ボタン43、印刷ボタン44、削除ボタン45のいずれか一つを操作すれば、その操作がユーザAに対して文書データ69aを操作することを承認する承認操作となっている。そしてユーザBによりこれらの操作が行われると、アクセス制御部26がそれに伴い、BOX2の文書データ69bに関連づけられた属性情報70bと、BOX1の文書データ69aに関連づけられた属性情報70aとを書き換える。
【0048】
これに対し、ユーザBがプレビュー表示欄PVに表示される文書データ69bの中身を閲覧してキャンセルボタン46を操作した場合には、承認者であるユーザBによる承認が行われなかったことになる。したがって、この場合はその後も依然として、ユーザAがBOX1に保存されている文書データ69aに対して何らかの操作を行うことが許可されない。
【0049】
図9は、ユーザBによって承認操作が行われた後のユーザBのBOX2に保存される属性情報70bと、ユーザAのBOX1に保存される属性情報70aとを示す図である。ユーザBのBOX2において文書データ69bと関連づけて保存される属性情報70bは、ユーザBによる承認操作が行われると、図9(a)に示すように、承認操作の有無が「有」に書き換えられる。またこれに伴い、ユーザAのBOX1において文書データ69aと関連づけて保存される属性情報70aは、図9(b)に示すように、閲覧可否情報が「可」に書き換えられ、印刷可否情報が「可」に書き換えられる。したがって、この属性情報70a,70bの書き換えにより、ユーザAが自身のBOX1に保存されている文書データ69aの中身を閲覧したり、或いは印刷したりすることが許可されるようになる。
【0050】
次に、上記のような画像形成装置1における処理手順について説明する。図10は、画像形成装置1が文書データを入力した場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は主として画像形成装置1のCPU10によって行われる。画像形成装置1は、まず文書データを入力したか否かを判断する(ステップS10)。ここでは画像形成装置1がネットワーク9を介して文書データを受信した場合や、画像読取部2が原稿を読み取って文書データを入力した場合にYESとなる。これに対し、文書データを入力していない場合はNOとなり処理は終了する。
【0051】
文書データの入力があった場合、画像形成装置1は、入力した文書データのデータ解析を行う(ステップS11)。ここでは、特定のユーザに割り当てられたBOXに保存することが指定されているか否かを把握し、送信先や承認者などが指定されていればそれぞれのBOXに文書データを保存する処理であることを特定する。また送信先や承認者などが指定されていない場合、このデータ解析により、文書データを印刷する処理であることが特定される。そして画像形成装置1は、入力した文書データのデータ変換を行い、文書データを画像形成部3に出力可能なデータ形式に変換する(ステップS12)。尚、入力した文書データが既に画像形成部3に出力可能なデータ形式となっている場合には、ステップS12の処理をスキップさせても良い。
【0052】
そして画像形成装置1は、上述のデータ解析により、文書データを保存する処理であることが特定されたか否かを判断する(ステップS13)。文書データを保存する処理である場合、画像形成装置1は、送信先として指定されたユーザのBOXおよび承認者として指定されたユーザのBOXを特定する(ステップS14)。そして送信先として指定されたユーザのBOXに保存する属性情報(図7(a)参照)を生成すると共に、承認者として指定されたユーザのBOXに保存する属性情報(図7(b)参照)を生成する(ステップS15)。このとき、送信先として指定されたユーザのBOXに保存する属性情報は、閲覧可否情報および印刷可否情報が「不可」となっている。また承認者として指定されたユーザのBOXに保存する属性情報は、閲覧可否情報および印刷可否情報が「可」となっている。そして画像形成装置1は、送信先と承認者のそれぞれに割り当てられたBOXに対して文書データを保存すると共に、それぞれに対して個別に生成した属性情報を文書データに関連づけて保存する(ステップS16)。そして保存処理が終了すると、画像形成装置1は、例えば電子メール送信機能を利用して送信先として指定されたユーザおよび承認者として指定されたユーザのそれぞれに対して文書データを保存した旨を通知するための通知処理を行い(ステップS17)、処理を終了する。
【0053】
一方、ステップS13において、文書データを保存する処理でなかった場合には、画像形成装置1は、データ変換された文書データを画像形成部3に出力し、印刷処理を実行する(ステップS18)。これにより、画像形成部3は、画像形成装置3に入力した文書データに基づく画像形成を行って印刷出力を行う。そして印刷出力が完了すると、処理が終了する。
【0054】
このような処理が行われることにより、例えば、上述したようにユーザCが、ユーザAを送信先として指定し、ユーザBを承認者として文書データ69を送信した場合、画像形成装置1は、送信先として指定されたユーザAが自身のBOX1に保存された文書データ69aを閲覧したり、或いは印刷したりする操作を行うことを禁止することができる一方、承認者として指定されたユーザBが自身のBOX2に保存された文書データ69bを閲覧したり、印刷したり、或いは承認スタンプを押印する操作を行うことは許可することができる。
【0055】
次に、承認者として指定されたユーザが承認操作を行う場合の処理について説明する。図11は、承認者が承認操作を行う場合の画像形成装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理もまた、主として画像形成装置1のCPU10によって行われる。画像形成装置1は、承認者として指定されたユーザがログインしたか否かを判断する(ステップS20)。ここでは、認証処理部28がユーザ認証に成功した場合、その認証ユーザに割り当てられたBOXに、承認者として指定された文書データが保存されているか否かが判断され、認証ユーザのBOXに承認者として指定された文書データが保存されていればYESとなる。これに対し、認証ユーザのBOXに承認者として指定された文書データが保存されていなければNOとなり、この処理は終了する。
【0056】
画像形成装置1に承認者がログインした場合(ステップS20でYES)、画像形成装置1は、その承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を読み出し(ステップS21)、操作パネル4の表示部4aに対してその文書データの中身を閲覧表示させる(ステップS22)。このときの表示画面の詳細は上述の図8(a)に示すような画面となる。これにより、承認者は操作パネル4を操作することによって承認の対象となっている文書データの中身を確認することができる。そして画像形成装置1は、承認者により何らかのボタン操作が行われるまで待機する。承認者により何らかのボタン操作が行われると、画像形成装置1はそのボタン操作に基づいた処理を行う。例えば、承認者が前ページボタン41や後ページボタン42を操作すると、プレビュー表示欄PVに表示されるページを更新して閲覧表示を継続する。また承認者が承認者スタンプ押印ボタン43、印刷ボタン44、削除ボタン45、キャンセルボタン46のいずれかを操作した場合には以下のような処理が行われる。
【0057】
画像形成装置1は、承認者がキャンセルボタン46(図8(a)参照)を操作したか否かを判断する(ステップS23)。承認者がキャンセルボタン46を操作した場合には承認者による承認操作が行われなかったことになるのでそのまま処理を終了する。一方、キャンセルボタン46が操作されなかった場合には、次に承認スタンプ押印ボタン43が操作されたか否かを判断する(ステップS24)。承認者が承認スタンプ押印ボタン43を操作した場合には、ステップS24でYESとなり、画像形成装置1は、承認者のBOXに保存されている文書データに対してスタンプ画像を合成する合成処理を行う(ステップS25)。そして属性情報に基づいて被承認者(つまり、送信先として指定されたユーザ)のBOXを特定し(ステップS26)、その被承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を読み出し(ステップS27)、被承認者のBOXに保存されている文書データに対してもスタンプ画像を合成する合成処理を行う(ステップS28)。その後、承認者と被承認者のそれぞれのBOXに保存されている属性情報の書き換え処理を行い、被承認者が自身のBOXに保存されている文書データを閲覧することや印刷することなどを許可する(ステップS29)。そして属性情報の書き換えを行った後、画像形成装置1は、例えば電子メール送信機能を利用して送信先として指定されたユーザに対し、文書データを利用することに関して承認者の承認が得られた旨を通知するための通知処理を行い(ステップS30)、処理を終了する。
【0058】
また承認スタンプ押印ボタン43が操作されなかった場合(ステップS24でNO)には、次に印刷ボタン44と削除ボタン45のいずれが操作されたか否かを判断する(ステップS31)。承認者が印刷ボタン44を操作した場合には、ステップS32に進み、画像形成装置1は、承認者のBOXに保存されている文書データを画像形成部3に出力して印刷処理を行う(ステップS32)。そして承認者の属性情報に基づいて被承認者のBOXを特定し(ステップS33)、その被承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を読み出し(ステップS34)、承認者と被承認者のそれぞれのBOXに保存されている属性情報の書き換え処理を行い、被承認者が自身のBOXに保存されている文書データを閲覧することや印刷することなどを許可する(ステップS29)。その後、上述したように被承認者に対し、文書データを利用することに関して承認者の承認が得られた旨を通知するための通知処理を行い(ステップS30)、処理を終了する。
【0059】
また承認者が削除ボタン45を操作した場合には、ステップS35に進み、画像形成装置1は、承認者のBOXに保存されている文書データを削除する(ステップS35)。そして承認者の属性情報に基づいて被承認者のBOXを特定し(ステップS36)、その被承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を読み出し(ステップS37)、被承認者のBOXに保存されている属性情報の書き換え処理を行い、被承認者が自身のBOXに保存されている文書データを閲覧することや印刷することなどを許可する(ステップS29)。その後、上述したように被承認者に対し、文書データを利用することに関して承認者の承認が得られた旨を通知するための通知処理を行い(ステップS30)、処理を終了する。
【0060】
このような処理が行われることにより、例えば、上述したように承認者として指定されたユーザBが自身のBOX2に保存された文書データ69bを閲覧した後、その文書データ69bを印刷したり、削除したり、或いは承認スタンプを押印する操作を行うと、送信先として指定されたユーザAは自身のBOX1に保存されている文書データ69aを閲覧したり、或いは印刷したりすることが可能になる。また、承認者が予め定められた承認操作を行うと、画像形成装置1が送信先として指定されたユーザ(被承認者)に対して承認者による承認が得られた旨を通知するので、送信先となっているユーザは自身のBOXに保存されている文書データが利用可能な状態になったことを把握することができる。
【0061】
次に、被承認者(つまり、送信先として指定されたユーザ)が画像形成装置1を操作する場合の処理について説明する。図12は、被承認者が操作を行う場合の画像形成装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理もまた、主として画像形成装置1のCPU10によって行われる。画像形成装置1は、被承認者として指定されたユーザがログインしたか否かを判断する(ステップS40)。ここでは、認証処理部28がユーザ認証に成功した場合、その認証ユーザに割り当てられたBOXに、被承認者として指定された文書データが保存されているか否かが判断され、認証ユーザのBOXに被承認者(送信先)として指定された文書データが保存されていればYESとなる。これに対し、認証ユーザのBOXに被承認者として指定された文書データが保存されていなければNOとなり、この処理は終了する。
【0062】
画像形成装置1に被承認者がログインした場合(ステップS40でYES)、画像形成装置1は、その被承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を読み出し(ステップS41)、読み出した属性情報の判定を行う(ステップS42)。ここでは閲覧可否情報および印刷可否情報の値が「不可」と「可」のいずれであるかが判定される。そして画像形成装置1は、閲覧可否情報の値が「不可」となっている場合(ステップS43でNO)、操作パネル4の表示部4aに対して警告メッセージを表示する(ステップS44)。図13(a)は、この場合の警告メッセージを表示した表示部4aの一例を示す図である。例えば送信先として指定されたユーザAが画像形成装置1にログインしたとき、承認者であるユーザBが未だ上述したような承認操作を行っていない場合には、図13(a)に示すような警告メッセージが表示される。この警告メッセージでは、ユーザAのBOXに保存された文書データが未だ未承認である旨が表示される。尚、このとき、承認者であるユーザBの氏名などを表示するようにしても良い。この画面の下部には、キャンセルボタン46が表示されており、ユーザAはキャンセルボタン46を操作すると、この処理は終了する。
【0063】
一方、ステップS43で閲覧可否情報の値が既に「可」となっている場合(ステップS43でYES)、画像形成装置1は、操作パネル4の表示部4aに対し、読み出した文書データに基づいて閲覧表示を行う(ステップS45)。つまり、この場合は、既に承認者による承認操作が行われていることになるので、被承認者は自身のBOXに保存されている文書データの中身を確認することができる。図13(b)は、この場合の表示部4aにおける表示画面の一例を示す図である。例えば送信先として指定されたユーザAが画像形成装置1にログインしたとき、承認者であるユーザBが既に承認スタンプを押印する操作を行っていた場合には、図13(b)に示すような画面が表示される。この表示画面は、承認者がログインしたときに表示される画面(図8参照)とほぼ同様であり、画面の左側には、プレビュー表示欄PVが表示され、右側には、ユーザAが操作可能な印刷ボタン44と、削除ボタン45と、キャンセルボタン46とが表示される。但し、被承認者がログインしたときの画面には、承認スタンプ押印ボタン43は表示されず、文書データに対して承認スタンプを押印する操作は承認者のみが行う操作となっている。
【0064】
そして画像形成装置1は、被承認者により何らかのボタン操作が行われるまで待機する。被承認者により何らかのボタン操作が行われると、画像形成装置1はそのボタン操作に基づいた処理を行う。例えば、被承認者が前ページボタン41や後ページボタン42を操作すると、プレビュー表示欄PVに表示されるページを更新して閲覧表示を継続する。また被承認者が、印刷ボタン44、削除ボタン45、キャンセルボタン46のいずれかを操作した場合には以下のような処理が行われる。
【0065】
図12のフローチャートに戻り、画像形成装置1は、被承認者がキャンセルボタン46(図13(b)参照)を操作したか否かを判断する(ステップS46)。被承認者がキャンセルボタン46を操作した場合にはそのまま処理を終了する。一方、キャンセルボタン46が操作されなかった場合には、次に印刷ボタン44と削除ボタン45のいずれが操作されたか否かを判断する(ステップS46)。被承認者が印刷ボタン44を操作した場合には、ステップS47に進み、画像形成装置1は、被承認者のBOX(例えばユーザAのBOX1)に保存されている文書データを画像形成部3に出力して印刷処理を行う(ステップS47)。そして被承認者の属性情報に基づいて承認者のBOXを特定し(ステップS48)、その承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を削除する(ステップS49)。
【0066】
また承認者が削除ボタン45を操作した場合には、ステップS50に進み、画像形成装置1は、被承認者のBOXに保存されている文書データを削除する(ステップS50)。そして被承認者の属性情報に基づいて承認者のBOXを特定し(ステップS51)、その承認者のBOXに保存されている保存データ(文書データと属性情報)を削除する(ステップS52)。つまり、本実施形態では、承認者が承認操作を行った後、送信先として指定された被承認者が自身のBOXに保存されている文書データに対して何らかの操作を行えば、承認者のBOXに対して同じ文書データを保存している必要ななくなるため、画像形成装置1は承認者用として保存されている文書データと属性情報とを削除する。
【0067】
このような処理が行われることにより、例えば、上述したように送信先として指定されたユーザAは、承認者であるユーザBが承認操作を行った後、BOX1に保存されている文書データ69aを閲覧したり、印刷したりすることができるようになる。また承認者であるユーザBが承認操作を行っていない場合には、ユーザAのそれらの操作は規制され、操作パネル4には警告メッセージが表示される。
【0068】
以上のように本実施形態の画像形成装置1は、複数のユーザに対して個別に割り当てられた複数のBOX(記憶領域)を有しており、複数のユーザに含まれる第1ユーザと第2ユーザとを宛先に含む文書データを入力すると、その入力した文書データを、第1ユーザに割り当てられた第1のBOXと、第2ユーザに割り当てられた第2のBOXとのそれぞれに記憶して保存する。そしてアクセス制御部26が第1のBOXに記憶された文書データと、第2のBOXに記憶された文書データとのそれぞれに対するアクセスを制御する。このアクセス制御部26は、承認者として指定された第2ユーザにより第2のBOXに記憶された文書データに対する承認操作が行われた後に、送信先として指定された第1ユーザが第1のBOXに記憶された文書データに対する操作を行うことを許可するように構成されている。そのため、この画像形成装置1によれば、あるユーザが送信した文書データが配布先のユーザに割り当てられたBOXに保存された時点でも、その配布先のユーザが自由に自身のBOXに保存された文書データを閲覧又は印刷することはできず、承認者による承認操作が行われて初めて閲覧や印刷を行うことができるようになる。
【0069】
また画像形成装置1は、文書データを入力した時点で送信先と承認者のそれぞれに割り当てられたBOXに文書データを保存するため、文書データを送信したユーザは送信処理が何時頃完了するかを把握することができないという問題を解消することができる。特に、この画像形成装置1は、複数のユーザに対して個別にメッセージを送信可能な通知処理部27を備えており、第1ユーザと第2ユーザのそれぞれのBOXに文書データを保存したときには、それぞれのユーザに対して文書データが保存されたことを示すメッセージを送信するので、それぞれのユーザは自身のBOXに対して文書データが保存されたことを即時に把握することができる。そのため、文書データを送信したユーザは、送信処理を行った後も他の職務に集中することができる。
【0070】
また画像形成装置1は、第2のBOXに記憶された文書データに対する第2ユーザによる操作が行われたことにより、第1のBOXに記憶されている文書データが操作可能になったことを示すメッセージを第1ユーザに対して送信するので、第1ユーザは自身に割り当てられたBOXに保存されている文書データの閲覧や印刷が可能になったことを即時に把握することも可能である。
【0071】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ユーザAとユーザBのそれぞれに割り当てられたBOX1,2に文書データを保存したとき、ユーザAとユーザBの双方に対して文書データを保存したことを示すメッセージを送信する場合を例示したが、保存した時点では承認者であるユーザBに対してのみメッセージを送信するようにし、送信先であるユーザAに対しては承認者であるユーザBによる承認操作が行われた後にメッセージを送信するようにしても良い。
【0072】
また上記実施形態では、送信先として指定されたユーザAは、承認者であるユーザBが承認操作を行うまでは、自身のBOX1に保存された文書データの中身を全く閲覧又は印刷することができない場合を例示したが、承認者による承認操作が行われる前の状態でも送信先として指定されたユーザAが自身のBOX1に保存されている文書データの一部のみに対しては閲覧操作や印刷操作を行うことができるようにしても良い。例えば、文書データが複数ページからなる場合には、承認者が承認操作を行う前であっても、文書の表紙部分や目次部分のみは、ユーザAが閲覧や印刷をできるようにしておいても良い。これにより、ユーザAは自身のBOX1に保存されている文書データがどのような中身であるかを推測することができるようになり、例えば至急の処理を要するような文書であると思われる場合には承認者に対して早期の承認操作を促すこともできるようになる。またこの場合は、機密性の高い文書部分については、承認者であるユーザBの承認後でないと、ユーザAは閲覧や印刷ができないようにしておくことが好ましい。
【0073】
また上記実施形態では、承認者が承認する操作として、承認スタンプを押印する操作や、文書データの印刷を行う操作や、文書データを削除する操作などを例示したが、これら以外の操作を承認操作としても良い。また上記実施形態では、承認スタンプを押印する場合、一例としてスタンプ画像を文書データに合成することを例示したが、この他にも例えば規定のフォーマットのデータを文書データの先頭にバインドすることにおり、承認者が承認したことを示す表紙を追加するようにしても良い。
【0074】
また上記実施形態では、承認者が承認操作を行う際、或いは被承認者が承認された文書データを操作する際、画像形成装置1の操作パネル4を操作する場合を例示したが、これらの操作はネットワーク9を介して各自のコンピュータ6からも行うことが可能である。そのため、承認者であるユーザBはコンピュータ6bを操作することにより画像形成装置1に対してリモートログインし、承認操作を行うことができる。また送信先であるユーザAはコンピュータ6aを操作することにより画像形成装置1に対してリモートログインし、承認された文書データを閲覧したり、印刷したりすることも可能である。
【0075】
また上記実施形態では、ユーザCがユーザAに対して文書データを送信する場合、承認者であるユーザBを指定して送信指示を行う場合を例示したが、文書データを送信するユーザCは必ずしも承認者がユーザBであることを認識していない場合もある。そのため、例えばネットワーク9に対してサーバコンピュータを設置し、ユーザCのコンピュータ6cから送信される文書データがサーバコンピュータを介して画像形成装置1に送信されるように構成しても良い。この場合、サーバコンピュータが各ユーザの上長などを承認者として管理しておくことにより、ユーザCが承認者を指定しない場合であってもサーバコンピュータにおいて承認者を特定し、送信先として指定されたユーザと承認者となるユーザの双方を宛先とする文書データを画像形成装置1に送信することができるようになる。
【0076】
またこのようなサーバコンピュータの機能を画像形成装置1の内部に設けるようにしても良い。この場合、画像形成装置1が各ユーザの上長などを承認者として管理するので、ユーザCが承認者を指定しない場合であっても画像形成装置1において承認者を特定し、送信先として指定されたユーザのBOXと、承認者となるユーザのBOXの双方に対して文書データを保存することができるようになる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置
10 CPU
15 記憶部(記憶手段)
21 データ入力部(入力手段)
24 データ管理部
25 保存処理部(保存処理手段)
26 アクセス制御部(アクセス制御手段)
27 通知処理部(通知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザに対して個別に割り当てられた複数の記憶領域を有する記憶手段と、
前記複数のユーザに含まれる第1ユーザと第2ユーザとを宛先に含む文書データを入力する入力手段と、
前記入力手段が入力する文書データを、前記記憶手段における前記第1ユーザに割り当てられた第1の記憶領域と、前記第2ユーザに割り当てられた第2の記憶領域とのそれぞれに記憶して保存する保存処理手段と、
前記第1の記憶領域に記憶された文書データと、前記第2の記憶領域に記憶された文書データとのそれぞれに対するアクセスを制御するアクセス制御手段と、
を備え、
前記アクセス制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われた後に、前記第1の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第1ユーザによる操作を許可することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記アクセス制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われる前の状態において、前記第1の記憶領域に記憶された文書データの一部のみに対する前記第1ユーザによる操作を許可することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のユーザに対して個別にメッセージを送信可能な通知手段をさらに備え、
前記通知手段は、前記保存処理手段が前記第2の記憶領域に文書データを記憶したことにより、前記第2ユーザに対して文書データが保存されたことを示すメッセージを送信することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記通知手段は、前記第2の記憶領域に記憶された文書データに対する前記第2ユーザによる操作が行われたことにより、前記第1の記憶領域に記憶されている文書データが操作可能になったことを示すメッセージを前記第1ユーザに対して送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記保存処理手段が前記第1の記憶領域に文書データを記憶したことにより、前記第1ユーザに対して文書データが保存されたことを示すメッセージを送信することを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−170444(P2010−170444A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13839(P2009−13839)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】