説明

画像形成装置

【課題】放電をやむを得ず生じさせる、放電が始まるピーク間電圧の検出時、通信線が放電によるノイズの影響を受けても、確実に通信を行う。
【解決手段】画像形成装置は、感光体ドラムと、感光体ドラムにトナーを供給する現像ローラと、現像ローラに対し電圧を印加する現像バイアス印加部と、現像ローラと感光体ドラム間での放電発生を検出するための検出部と、現像バイアス印加部の出力すべき電圧の指示を与える主制御部と、主制御部と通信を行って指示を受け、現像バイアス印加部が出力する電圧を制御する高圧制御部と、主制御部と高圧制御部とを通信可能に接続するための第1通信線と、を有し、感光体ドラムと現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部と高圧制御部は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複合機、プリンタ等のトナーを用いる画像形成装置には、感光体ドラムと、これに対向する現像ローラとが、ギャップを設けて配されるものがある。そして、例えば直流と交流が重畳された、いわゆる現像バイアスが現像ローラに印加され、帯電したトナーが現像ローラから感光体ドラムに飛翔し、感光体ドラム上の静電潜像が現像され、現像されたトナー像が用紙に転写、定着されることで、印刷が行われる。
【0003】
そして、十分に帯電したトナーを感光体ドラムに供給し、形成される画像の濃度を確保し、現像効率を高めるには、現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク)を大きくすればよいが、大きくしすぎると感光体ドラムと現像ローラ間のギャップで放電が発生する。印刷中に放電が発生すると、感光体ドラム表面の電位変化により静電潜像が乱れ、形成される画像の品質が劣化する。従って、ピーク間電圧を大きくするにしても、放電が生じない範囲に留めなければならない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に、像担持体と現像領域において所要間隔を介して対向するトナー担持体を設け、このトナー担持体と像担持体との間に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアス電圧を印加させ、トナーを像担持体に供給して静電潜像を現像する現像装置において、像担持体とトナー担持体との間に印加させるリーク検知電圧を変化させるリーク発生手段と、リークを検知するリーク検知手段とを設け、リーク検知電圧と像担持体の表面電位との最大の電位差ΔVmaxを徐々に増加させて、像担持体とトナー担持体との間に流れる電流が連続して増加した場合、リーク検知手段によってリークと判断する現像装置が記載されている(特許文献1:請求項1等参照)。
【特許文献1】特許第3815356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、画像形成装置では、装置全体の制御を司る主制御部を設けた基板と、現像ローラ等に印加する数百〜数kVの高圧電圧を発生させる高圧基板が位置的に離されて設けられることがある。そして、高圧基板には、出力制御用の制御部(以下、「高圧制御部」という)が設けられ、主制御部と高圧制御部は通信線で接続され、主制御部の指示に応じ、高圧制御部は高圧基板からの出力電圧を制御する。例えば、主制御部は、高圧制御部に出力すべき電圧の大きさの指示や出力タイミング等を指示し、高圧制御部は主制御部の指示に応じ、現像ローラ等に印加する電圧を可変させる。又、高圧制御部から主制御部に対し応答や電圧印加完了等を知らせるデータが送信される場合もあり、主制御部と高圧制御部間では、各種データのやり取りが行われる。
【0006】
そして、特許文献1記載のように、画像形成装置には、放電が始まるピーク間電圧を検出のため、あえて放電を生じさせることがある。しかし、放電が生ずれば、画像形成装置内の各種通信線の電位に影響を与え、通信データ内容を認識できないといった通信エラーが生じるという問題がある。特に、放電が始まるピーク間電圧を検出する際、ピーク間電圧の変更指示及び応答等、主制御部と高圧制御部間の通信は必須で、通信を停止させて通信エラー発生を回避できず、主制御部と高圧制御部間の通信はノイズの影響を受けざるを得ない。更に、画像形成装置には、通信エラー状態が続けば、主制御部や高圧制御部の故障等との誤判断で装置自体が停止してしまうものも存在する。
【0007】
尚、特許文献1をみると、放電検出動作で現像ローラに印加する電圧の制御を高圧制御部としての制御装置(特許文献1:段落[0025]等参照)が行う。しかし、制御を司る主制御部の記載はなく、放電発生によるノイズのために主制御部と高圧制御部間の通信で通信エラーが頻繁に発生し得る点についても一切言及が無い。従って、特許文献1の記載内容では、上記の放電ノイズによる弊害は解決されない。更に、特許文献1記載の構成では、正確なデータの送受信を行うには、高性能なノイズ対策部品が多数設け、ノイズの影響を軽減する必要があり、製造コスト上好ましくない。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、放電をやむを得ず生じさせる、放電が始まるピーク間電圧の検出時、通信線が放電によるノイズの影響を受けても、確実に通信を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に係る画像形成装置は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムへのトナーの供給のため、前記感光体ドラムにギャップが設けられつつ対向し、画像形成時にトナーを担持する現像ローラと、トナーを飛翔させるため、前記現像ローラに対し直流と交流を重畳させた電圧を印加する現像バイアス印加部と、前記現像ローラと前記感光体ドラム間での放電発生を検出するための検出部と、前記現像バイアス印加部の出力すべき電圧の指示を与える主制御部と、前記主制御部と通信を行って指示を受け、前記現像バイアス印加部が出力する電圧を制御する高圧制御部と、前記主制御部と前記高圧制御部とを通信可能に接続するための第1通信線と、を有し、前記現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の検出時、前記主制御部と前記高圧制御部は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やすこととした。
【0010】
この構成によれば、性質上、意図的に放電を生じさせる、放電が始まるピーク間電圧の検出時に、印刷時よりもリトライ回数を増やすので、放電によるノイズ影響を受け、通信データ内容を認識できない通信エラーが頻繁に生じても、正確にデータの送受信が行え、確実に主制御部と高圧制御部間で通信がなされ、放電が始まるピーク間電圧の検出を円滑に実行することができる。又、通信エラー状態が継続しても、容易に画像形成装置が停止することもなくなる。更に、正確なデータの送受信のために、高性能なノイズ対策部品を多数設ける必要もなくなる。
【0011】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、放電が始まるピーク間電圧の検出時、前記主制御部と前記高圧制御部との間で通信エラー状態が続く場合、前記主制御部又は前記高圧制御部は、前記現像バイアス印加部を出力停止状態とし、通信を実行して通信エラーを解消した後、前記現像バイアス印加部の出力を再開させることとした。
【0012】
この構成によれば、リトライ回数を増やしても通信エラー状態が続く場合、通信エラーの発生原因を除くため、一旦現像ローラへの現像バイアスの印加を一時的に中断し、放電を発生させないようにする。これにより、確実に主制御部と高圧制御部間で通信がなされる。又、通信エラー状態の継続により、画像形成装置が停止することもなくなる。
【0013】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、装置内には、前記感光体ドラムや前記現像ローラを回転させるためのモータを1又は複数有し、前記主制御部の指示を受け前記モータの回転を制御するためのモータ制御部と、前記主制御部と前記モータ制御部を通信可能に接続するための第2通信線が設けられ、放電が始まるピーク間電圧の検出時、前記主制御部と前記モータ制御部は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やすこととした。
【0014】
感光体ドラム等を回転させる制御を行うモータ制御部と主制御部間の通信でも放電の影響を受ける場合があるが、この構成によれば、放電が始まるピーク間電圧の検出時、印刷時よりもリトライ回数を増やすので、放電によるノイズの影響を受け、通信データ内容を認識できない通信エラーが頻繁に生じても正確にデータの送受信が行え、確実に主制御部とモータ制御部間で通信がなされ、各種モータを正確に動作させることができる。又、通信エラー状態が継続しても、容易に画像形成装置が停止することもない。更に、正確なデータの送受信のために、高性能なノイズ対策部品を多数設ける必要もなくなる。
【0015】
又、請求項4に係る発明は、請求項3の発明において、放電が始まるピーク間電圧の検出時、前記主制御部とモータ制御部との間で通信エラー状態が続く場合、前記主制御部は前記現像バイアス印加部を出力停止状態とし、通信を実行して通信エラーを解消した後、前記現像バイアス印加部の出力を再開させることとした。
【0016】
この構成によれば、リトライ回数を増やしても通信エラー状態が続く場合、通信エラーの発生原因を除くため、一旦現像ローラへの現像バイアスの印加を一時的に中断し、放電を発生させないようにする。従って、確実に、主制御部とモータ制御部間で通信がなされる。又、通信エラー状態の継続により、画像形成装置が停止することもなくなる。
【0017】
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の発明において、前記第1通信線は、データの送受信を行うためのデータ通信線と、前記現像バイアス印加部の出力のON/OFFを指示するためのリモート通信線で構成されることとした。
【0018】
この構成によれば、データ通信線の他、現像バイアス印加部の出力のON/OFFを指示するためのリモート通信線も有するので、放電でノイズが発生しても、主制御部は、確実に現像バイアス印加部を停止させる指示を高圧制御部に与えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放電が始まるピーク間電圧の検出時、通信線が放電によって生じたノイズの影響を受けても、確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンタの概略構成を示す模型的断面図である。
【図2】1つの画像形成部の拡大断面図である。
【図3】プリンタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図4】現像バイアス印加と放電検出に関する概略構成を示す説明図である。
【図5】高圧基板の一例の詳細を説明するためのブロック図である。
【図6】現像ローラに印加する電圧の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】放電が始まるピーク間電圧の検出動作の概略を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】プリンタでの放電が始まるピーク間電圧の検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】放電が始まるピーク間電圧の検出動作時の主制御部と高圧制御部間の通信制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に基づき説明する。電子写真方式でタンデム型のカラーのプリンタ1(画像形成装置に相当)を例に挙げ説明する。但し、本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
【0022】
(画像形成装置の概略構成)
まず、図1及び2を用いて、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す模型的断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る1つの画像形成部3の拡大断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態にかかるプリンタ1は、正面上部に操作パネル1a(図1において破線で図示)が、本体内に、給紙部2a、搬送路2b、画像形成部3、中間転写部4、定着部5等が設けられる。
【0024】
操作パネル1aは、液晶表示部や、各種キーを備え、プリンタ1の状態(例えば、エラーやモード)の表示や、ユーザからの各種の入力を受け付ける。給紙部2aは、中間転写部4等に向け、例えば、コピー用紙、OHPシート、ラベル用紙等の各種、各サイズの用紙を収容し、モータ等の駆動機構(不図示)により回転する給紙ローラ21で搬送路2bに送り出す。そして、搬送路2bは、プリンタ1内で用紙を搬送し、給紙部2aから供給された用紙を、中間転写部4、定着部5を経て排出トレイ22まで導く。搬送路2bには搬送ローラ対23やガイド24及び搬送される用紙を中間転写部4の手前で待機させ、タイミングをあわせて送り出すレジストローラ対25等が設けられる。
【0025】
図1に示すように、プリンタ1は、形成すべき画像の画像データに基づき、トナー像を形成する部分として、4色分の画像形成部3を備える。具体的に、プリンタ1は、図1の右側から、ブラックの画像を形成する画像形成部3kと、イエローの画像を形成する画像形成部3yと、シアンの画像を形成する画像形成部3cと、マゼンタの画像を形成する画像形成部3mと、その他、1つの露光装置31等を備える。
【0026】
ここで、図2に基づき、各画像形成部3k〜3mについて詳述する。尚、各画像形成部3k〜3mは、形成するトナー像の色が異なるだけで、いずれも基本的に同様の構成であり、同様に説明できる。そこで、図2、及び、下の説明では、各画像形成部3の識別用の符号であるk、y、c、mの符号は、特に説明する場合を除き省略する。
【0027】
まず、各感光体ドラム32は、周面にトナー像を担持し、例えば、アルミニウム製のドラムの外周面上に正帯電のアモルファスシリコン等の感光層を有し、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで紙面反時計方向に回転駆動される。尚、本実施形態の各感光体ドラム32は、正帯電型である。
【0028】
各画像形成部3の下方の露光装置31は、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光(破線で図示)を出力し、帯電後の感光体ドラム32の走査露光を行って、静電潜像を形成する。各帯電装置33は、帯電ローラ33aを有し、感光体ドラム32を一定の電位で正帯電させる。各帯電ローラ33aは、各感光体ドラム32に接し、感光体ドラム32に合わせ回転する。又、各帯電ローラ33aには、帯電電圧印加部98(図3参照)により直流と交流が重畳された電圧が印加され、各感光体ドラム32の表面が所定の正極性の電位(例えば、100V〜300V程度)に均一に帯電される。尚、帯電装置33は、コロナ放電式や、ブラシ等を用いたものでも良い。
【0029】
各現像装置34は、トナーと磁性体キャリアからなる現像剤(いわゆる2成分現像剤)を収納する(画像形成部3kの現像装置34はブラック、画像形成部3yの現像装置34はイエロー、画像形成部3cの現像装置34はシアン、画像形成部3mの現像装置34はマゼンタの現像剤を収納する)。尚、本実施形態では、トナーは正帯電のものを用いる。
【0030】
各現像装置34は、現像ローラ6(ブラック用は現像ローラ6k、イエロー用は現像ローラ6y、シアン用は現像ローラ6c、マゼンタ用は現像ローラ6m、図5参照)と、磁気ローラ7(ブラック用は磁気ローラ7k、イエロー用は磁気ローラ7y、シアン用は磁気ローラ7c、マゼンタ用は磁気ローラ7m、図5参照)と、搬送部材35とを有する。各現像ローラ6は、感光体ドラム32へのトナーの供給のため画像形成時にトナーを担持し、感光体ドラム32に対向し、所定のギャップ(例えば、1mm以下)を設けて配される。各磁気ローラ7は各現像ローラ6の斜下方で対向し所定の隙間を設けて配される。
【0031】
又、各搬送部材35は、各磁気ローラ7の下方に設けられる。各現像ローラ6には直流電圧及び交流電圧が重畳した現像バイアスが、各磁気ローラ7にはトナーを各現像ローラ6に移動させるため、磁気ローラバイアスが印加される。尚、正帯電トナーを用いるので本実施形態の現像バイアスでは、直流電圧成分は正極性とされ、トナーを飛翔しやすい状態とし、現像バイアスの交流電圧成分の印加でトナーの飛翔と、一定のトナーの引き戻しを行う。又、磁気ローラバイアスも極性は同様である。
【0032】
現像プロセスを説明すると、正帯電された感光体ドラム32に対し、画像データに応じ露光装置31のレーザ光によって、トナーをのせるべき部分(画素)の露光が行われ、静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム32において、露光された領域は、正電荷がキャンセルされ、電位が低くなる。そうすると、現像バイアスによって飛翔した正帯電トナーは、電位が低い露光された領域に付着し、静電潜像がトナー像として現像される。
【0033】
そして、各現像ローラ6と各磁気ローラ7の各ローラ軸61、71は固定される。そして、各現像ローラ6と各磁気ローラ7の内部の各ローラ軸61、71には、軸線方向にのびる磁石63、73が、それぞれ取り付けられる。そして、各現像ローラ6と各磁気ローラ7は、それぞれ、磁石63、73を覆う円筒状のスリーブ62、72をそれぞれ有し、画像形成時は、モータM(図3参照)等から供給される駆動力を受け、スリーブ62、72を回転させることができる(尚、スリーブ回転用のモータを設けても良い)。そして、磁石63と磁石73は、現像ローラ6と磁気ローラ7の対向位置で異極が向かい合う。
【0034】
これにより、各現像ローラ6と、各磁気ローラ7間には、磁性体キャリアで磁気ブラシが形成される。そして、磁気ブラシと磁気ローラ7のスリーブ72の回転や磁気ローラバイアス印加(磁気ローラバイアス部9c、図3参照)等で、現像ローラ6にトナーが供給され、スリーブ62の表面にトナーの薄層が形成される。又、現像後に残留したトナーは、磁気ブラシで現像ローラ6から引き剥がされる。各搬送部材35は、例えば、軸に対しスクリューが螺旋状に設けられ、現像剤を各現像装置34内で搬送、撹拌し、トナーとキャリアの摩擦等でトナーを所定の電圧(本実施形態では、正極性)に帯電させる。
【0035】
各清掃装置36は、感光体ドラム32の清掃を行い、例えば、弾性を有する円筒状の清掃部材37を有し、清掃部材37は、各感光体ドラム32を摺擦しドラム表面の転写残トナーを除去、回収する。更に、感光体ドラム32に当接させる樹脂製の平板状のブレードを追加して設けても良い。又、各清掃装置36の下方に、感光体ドラム32に対し光を照射して除電を行う除電装置38(例えば、アレイ状のLED)が設けられる。
【0036】
図1に戻り、中間転写部4は、感光体ドラム32からトナー像の1次転写を受け、用紙に2次転写を行い、感光体ドラム32の1本に付き、1本設けられる各1次転写ローラ41(41k〜41mの計4本)、中間転写ベルト42、駆動ローラ43、従動ローラ44〜46、2次転写ローラ47、ベルト清掃装置48等で構成される。各1次転写ローラ41は、各感光体ドラム32と無端状の中間転写ベルト42を挟み込むように中間転写ベルト42に当接し、交流及び直流が重畳された転写用の電圧を印加する転写バイアス印加部(不図示)に接続され、トナー像を中間転写ベルト42に転写する。
【0037】
中間転写ベルト42は、駆動ローラ43、従動ローラ44〜46に張架され、モータ等の駆動機構(不図示)に接続される駆動ローラ43の回転駆動により図1の紙面時計方向に周回する。又、駆動ローラ43は、中間転写ベルト42を介して2次転写ローラ47と当接し2次転写部を形成する。用紙へのトナー像転写を説明すると、各画像形成部3で形成されたトナー像(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色)の転写では、各1次転写ローラ41に転写バイアスが印加され、タイミングを取られ、順次、ずれなく重畳されつつ、中間転写ベルト42に1次転写される。そして、各色重ね合わされたトナー像は所定の電圧を印加された2次転写ローラ47で、用紙に転写される。尚、2次転写後の中間転写ベルト42上の残トナー等は、ベルト清掃装置48で除去されて回収される。
【0038】
定着部5は、用紙搬送方向の下流側に配され、用紙に2次転写されたトナー像を加熱・加圧して定着させる。そして、定着部5は主として、発熱源を内蔵する定着ローラ51と、これに圧接される加圧ローラ52とで構成され、ニップが形成される。そして、トナー像の転写された用紙は、ニップを通過すると加熱・加圧され、その結果、トナー像が用紙に定着する。尚、定着後の用紙は、排出トレイ22に排出され画像形成処理が完了する。
【0039】
(プリンタ1のハードウェア構成)
次に、図3に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成を説明する。図3は、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、内部の制御基板上に主制御部8を有する。主制御部8は、プリンタ1の各部を制御を司る中心となるメインの制御部であって、現像バイアス印加部9aの出力すべき電圧の指示を与え、例えば、CPU81、記憶部82等で構成される。
【0041】
そして、CPU81は、中央演算処理装置であり、記憶部82に格納され、展開される制御プログラムやデータに基づきプリンタ1の各部の制御や演算を行う。記憶部82はROM、RAM、フラッシュROM等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される。例えば、記憶部82は、プリンタ1の制御プログラム、データ等を記憶する。尚、本発明に関し、放電が始まるピーク間電圧の検出プログラムや、現像バイアス印加部9aの出力電圧の値を定めたデータ等も記憶する。
【0042】
そして、主制御部8は、給紙部2a、搬送路2b、画像形成部3、露光装置31、中間転写部4、定着部5、帯電電圧印加部98等と接続され、記憶部82の制御プログラムやデータに基づき、適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。又、主制御部8には、I/F部18を介し印刷を行う画像データの送信元となるユーザ端末100(パーソナルコンピュータ等)等が接続され、主制御部8は、受信した画像データを画像処理し、露光装置31に送信し、露光装置31はその画像データに基づき、感光体ドラム32に静電潜像を形成する。更に、帯電電圧印加部98は、帯電ローラ33aに帯電用電圧を印加する電源回路であり、主制御部8は、帯電電圧印加部98や、1次転写ローラ41や2次転写ローラ47に転写バイアスを印加するための転写バイアス印加部(不図示)等に接続され、出力電圧値や電圧印加タイミング等の制御を行う。
【0043】
又、主制御部8は、モータ制御部10(モータ制御基板)と第2通信線L2で接続される。モータMは、感光体ドラム32、現像ローラ6のスリーブ62等を回転させる回転駆動力を供給し、主制御部8は、モータ制御部10に対しモータMへの電力供給のON/OFFや回転速度等を指示し、モータ制御部10はこの指示を受け、モータMの動作を制御する。即ち、装置内には、感光体ドラム32や現像ローラ6を回転させるためのモータMが1又は複数設けられ、主制御部8の指示を受けモータMの回転を制御するためのモータ制御部10と、主制御部8とモータ制御部10を通信可能に接続するための第2通信線L2が設けられる。
【0044】
(現像バイアス印加と放電検出用の構成)
次に、図3及び図4に基づき、現像バイアス印加と放電検出に関する構成を説明する。図4は、本発明の実施形態に係る現像バイアス印加と放電検出に関する概略構成を示す説明図である。尚、放電検出は、現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させて、放電の発生の有無を確認し、感光体ドラム32と現像ローラ6間で放電が始まるピーク間電圧を検出する際に行われる。ここで、図4は1つの画像形成部3についてのみ示し、画像形成部3ごとに検出部14、アンプ15等が設けられるが、各画像形成部3に対し同様のものが設けられるので、記載の煩雑さの回避のため、図3及び図4の説明では、k、y、c、mの符号は省略して説明する。
【0045】
図4に示すように、感光体ドラム32にギャップが設けられつつ対向する現像ローラ6は、ローラ軸61、キャップ64、トナーを担持するスリーブ62を有する。ローラ軸61はスリーブ62を挿通され、スリーブ62の両端に円形のキャップ64が嵌入される。又、現像ローラ6のローラ軸61は、高圧基板9に設けられる現像バイアス印加部9aと接続される。現像バイアス印加部9aは、トナーを飛翔させるため、現像ローラ6に対し直流と交流を重畳させた電圧を印加する。
【0046】
そして、図3に示すように、現像バイアス印加部9aの制御を実際に行う高圧制御部9bと主制御部8は第1通信線L1で接続され、主制御部8は、高圧制御部9bに対し、出力すべき現像バイアスを指示し、高圧制御部9bは、主制御部8が指示した電圧で現像バイアス印加部9aに現像バイアスを現像ローラ6に対し印加させる。即ち、第1通信線L1は、主制御部8と高圧制御部9bとを通信可能に接続する。その結果、現像ローラ6から帯電したトナーが感光体ドラム32に飛翔する。尚、放電が始まるピーク間電圧の検出時等にも現像バイアスが印加される。
【0047】
更に、図3及び図4に示すように、現像ローラ6と現像バイアス印加部9aとの間には、現像ローラ6と感光体ドラム32間での放電発生を検出するための検出部14が接続される。尚、検出部14は、画像形成部3ごとに設けられる。検出部14は、現像ローラ6と感光体ドラム32間での放電発生を検出するための回路であり、放電発生時に現像ローラ6に流れる電流を電圧信号に変換する。そして、検出部14は電圧信号をアンプ15に出力する(尚、アンプ15も画像形成部3ごとに設けることができる)。アンプ15は検出部14からの電圧信号を増幅しCPU81に向けて出力する。尚、CPU81が増幅回路を有していれば、アンプ15は不要である。
【0048】
A/D変換器17は、アンプ15のアナログ出力をデジタル変換してCPU81に入力する回路である(尚、A/D変換器17も画像形成部3ごとに設けることができる)。このA/D変換された検出部14(アンプ15)の出力から、CPU81は、放電の発生や発生した放電の大きさ(現像ローラ6と感光体ドラム32間に流れた電流の大きさ)を認識できる。尚、CPU81がA/D変換機能を有せば、A/D変換器17は不要である。これらの検出部14、アンプ15、A/D変換器17等によって、主制御部8は、各画像形成部3で放電が発生したか否か、及び、発生した放電の大きさを認識できる。
【0049】
次に、磁気ローラ7に電圧を印加する構成を説明する。上述したように、所定の隙間(この隙間に磁気ブラシが形成される)を設けつつ、現像ローラ6に対向して、互いの軸線方向が平行となるように、磁気ローラ7が配される。磁気ローラ7は、ローラ軸71、トナーとキャリアを担持するスリーブ72、キャップ74を有する。ローラ軸71はスリーブ72を挿通され、スリーブ72の両端に円形のキャップ74が嵌入される。
【0050】
又、磁気ローラ7のローラ軸71は、高圧基板9に設けられる磁気ローラバイアス部9cと接続される。主制御部8は、高圧制御部9bに対し、出力すべき磁気ローラバイアスを指示し、高圧制御部9bは、主制御部8が指示した電圧で磁気ローラバイアス部9cに磁気ローラバイアスを磁気ローラ7に対し印加させる。その結果、帯電したトナーが静電気力で現像ローラ6に供給される。
【0051】
(高圧基板9の構成)
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係る高圧基板9の一例の詳細を説明する。図5は、本発明の実施形態に係る高圧基板9の一例の詳細を説明するためのブロック図である。そして、図5に示すように高圧基板9には、高圧制御部9b、現像バイアス印加部9a、磁気ローラバイアス部9c等が設けられる。
【0052】
高圧制御部9bは、主制御部8との通信を行って、主制御部8の指示を受け、現像バイアス印加部9aや磁気ローラバイアス部9cが出力電圧や動作の制御を実際に行う部分である。そして、高圧制御部9bには、演算処理装置としてCPU91が設けられる。このCPU91は、第1通信線L1で主制御部8のCPU81と接続され、位置的に離れた2つのCPUは、通信可能に接続される。
【0053】
第1通信線L1は、少なくとも2種類あり、1本はCPU81とCPU91間でデータ通信を行うためのデータ通信線L1dである。例えば、主制御部8のCPU81は、データ通信線L1dを用いても高圧制御部9bのCPU91に対し、交流電圧のピーク間電圧を指定し、どの画像形成部3、どの現像ローラ6、どの磁気ローラ7に、どれくらいのピーク間電圧で現像バイアスや磁気ローラバイアスを印加すべきかを指示するデータを送信する。現像バイアスや磁気ローラバイアスの出力値を指示するデータを受け、高圧制御部9bは、現像バイアス印加部9aや磁気ローラバイアス部9cの出力電圧を制御する。更に、例えば、高圧制御部9bのCPU91は、主制御部8のCPU81に向け、現像バイアスや磁気ローラバイアスの出力値を指示するデータを正確に受け取った旨の返信や、指示どおりの現像バイアス等を出力可能となった旨等を示すデータを送信する。
【0054】
一方、第1通信線L1としてのリモート通信線L1rは、実際に各ローラに電圧を印加する現像バイアス印加部9aと磁気ローラバイアス部9cの出力のON/OFFをCPU81がリモート制御するための信号線である。例えば、CPU81はリモート通信線L1rのHigh、Lowの状態を切り替え、高圧制御部9bはリモート通信線L1rの状態に応じ、現像ローラ6等への電圧印加のON/OFFを切り替える。即ち、第1通信線L1は、データの送受信を行うためのデータ通信線L1dと、現像バイアス印加部9aの出力のON/OFFを指示するためのリモート通信線L1rで構成される。
【0055】
現像バイアス印加部9aは、直流電圧印加部92と交流電圧印加部93で構成することができ、現像ローラ6に接続され、実際に現像ローラ6に現像バイアスを印加する回路である。そして、現像バイアス印加部9aは、高圧制御部9bの制御、指示に基づいた現像バイアスを出力する。
【0056】
直流電圧印加部92は、現像ローラ6に印加する直流成分を発生させ、その出力は交流電圧印加部93に入力される。尚、直流電圧印加部92は、高圧制御部9bの駆動用直流電力を供給できる。例えば、直流電圧印加部92は、出力制御部94を有し、出力制御部94は、直流電圧印加部92が出力する電圧値をCPU81の指示に応じて制御する。
【0057】
直流電圧印加部92は、主制御部8からの直流電力の供給を受け(プリンタ1内の電源装置16からでもよい等、図3参照)、CPU81の指示に応じ、出力制御部94の制御により出力電圧が可変な回路である(例えば、DC−DCコンバータ等)。これにより、現像ローラ6に印加する交流電圧をバイアスさせることができる。尚、レギュレータを別途備え、固定された電圧値も直流電圧印加部92から出力できるようにしてもよい。
【0058】
又、交流電圧印加部93は、例えば、矩形波状(パルス状)であり、直流電圧印加部92が出力する直流電圧を平均値とする交流電圧を出力し、現像ローラ6に電圧を印加する回路である。そして、交流電圧印加部93はVpp制御部95およびデューティ比/周波数制御部96を有する。Vpp制御部95は、交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク)の制御を行う。又、デューティ比/周波数制御部96は、交流電圧のデューティ比および周波数の制御を行う。昇圧部97は現像ローラ6に接続するための接続端子の前段に配され、Vpp制御部95等が生成した波形(電圧)の昇圧を行う部分である。高圧制御部9bは、出力制御部94、Vpp制御部95、デューティ比/周波数制御部96、昇圧部97を駆使して、現像バイアス印加部9bの出力電圧を制御し、例えば、現像ローラ6に数百〜数kVのピーク間電圧を有する交流電圧を現像ローラ6等に印加できる。
【0059】
例えば、交流電圧印加部93は、複数のスイッチング素子等を備える電源回路であり、出力の正負をスイッチングで反転させ、交流電圧を出力する。そして、デューティ比/周波数制御部96は、例えば、交流電圧印加部93の出力の正負のスイッチングのタイミングを制御することで、交流電圧のデューティ比や周波数を制御できる。又、Vpp制御部95は、現像ローラ6に印加すべき交流電圧のピーク間電圧とデューティ比とに基づき、電源装置16(図3参照)からの入力直流電圧の昇降圧等で、交流電圧における正側のピーク値と負側のピーク値を可変させる。又、例えば、昇圧部97を複数種のトランス等で構成し昇圧比を可変としても良い。尚、交流電圧印加部93の構成は、ピーク間電圧、デューティ比、周波数を変化できればよい。
【0060】
このように、高圧制御部9bが、主制御部8の指示を受け、現像バイアス印加部9aに指示を与え制御することで、図5に示すように、最終的に交流電圧印加部93から、各現像ローラ6ごとに、任意の直流と昇圧後の交流の重畳された現像バイアスや磁気ローラバイアスを印加することができる。これにより、例えば、現像ローラ6のローラ軸61に電圧が印加され、その結果、スリーブ62にも現像バイアスが印加され、スリーブ62に担持される帯電トナーが飛翔する。尚、図5では、交流電圧印加部93を1つ設け、交流電圧印加部93から各現像ローラ6に向けて複数種の電圧を出力する例を示すが、各画像形成部3ごとに現像バイアス印加部9aや交流電圧印加部93を設けてもよい。
【0061】
磁気ローラバイアス部9cは、磁気ローラ7に接続され、実際に磁気ローラ7に磁気ローラバイアスを印加する回路である。そして、磁気ローラバイアス部9cは、高圧制御部9bの指示に基づいた磁気ローラバイアスを出力する。尚、磁気ローラバイアス部9cの構成は、例えば、現像バイアス印加部9aと同様でもよいし、磁気ローラバイアスを固定値で出力させる構成でも良く、磁気ローラ7に適切な電圧を印加できればよい。
【0062】
尚、主制御部8とモータ制御部10の接続も説明する。主制御部8は、モータ制御部10と第2通信線L2で接続される。モータ制御部10には、演算処理装置としてCPU10aが設けられ、CPU81とCPU10a間で通信が行われる。尚、通信線をバス形態とし、例えば、CPU81をマスタとし、CPU91及びCPU10aをスレーブとする場合は、第1通信線L1と第2通信線L2はつなげられ、若しくは、同一のものとなる。
【0063】
そして、印刷時や放電が始まるピーク間電圧の検出時、感光体ドラム32や各スリーブは回転させられる。そして、主制御部8は、感光体ドラム32等の回転速度をモータ制御部10に指示するデータを送信し、モータ制御部10は、主制御部8の指示に応じて、エンコーダ(不図示)等により感光体ドラム32等の回転速度(周速度)を監視し、指示された回転速度で感光体ドラム32等を回転させる。又、例えば、モータ制御部10は、主制御部8に対し、指示を受けた際の応答や、現在の感光体ドラム32等の回転状況(速度や異常発生等)を示すデータ等を送信し、知らせることができる。従って、印刷時や放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部8とモータ制御部10間で、通信が行われる。
【0064】
(印刷時及び放電検出時に現像ローラ6に印加する現像バイアス)
次に、図6及び図7に示すタイミングチャートで、感光体ドラム32と現像ローラ6間での放電の発生検出動作の一例を説明する。図6は、本発明の実施形態に係る現像ローラ6に印加する電圧の一例を示すタイミングチャートである。図7は、本発明の実施形態に係る放電が始まるピーク間電圧の検出動作の概略を説明するためのタイミングチャートである。尚、この放電検出は、放電が始まるピーク間電圧を検出するために行われるものであり、各画像形成部3について、1つずつ順に行われる。
【0065】
まず、図6に基づき、印刷時と放電検出状態での現像ローラ6への電圧の印加について説明する。尚、図6では、上段に印刷時のタイミングチャートを、下段に放電検出状態のタイミングチャートを示している。
【0066】
まず、印刷時のタイミングチャートにおける矩形波は、現像ローラ6に印加される現像バイアス(交流+直流)の波形の一例である。そして、「Vdc1」は、直流電圧印加部92の印刷時のバイアスの電位を示す。「V0」は、露光装置31による露光後の感光体ドラム32の電位(ほぼ0V=明電位)を示す。「V1」は、感光体ドラム32の帯電後の電位(露光しない部分の電位。例えば、200〜300V程度)を示す。「V+1」は、V0と、印刷時の現像バイアスの正のピーク値との電位差を示す。「V-」は、V1と現像バイアスの負のピーク値との電位差を示す。「Vpp1」は、印刷時の現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。又、「T1」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T01」は、矩形波の周期を示す。
【0067】
一方、放電検出状態でのタイミングチャートにおける矩形波は、放電検出時(放電が始まるピーク間電圧の検出のため、実際に現像バイアスを現像ローラ6に印加する時)の、現像ローラ6に印加される現像バイアスの波形を示す。「Vdc2」は、検出時の直流電圧印加部92のバイアスの電位を示す。又、「V0」は、図6上段と同様、露光装置31による露光後の感光体ドラム32の電位(ほぼ0V)を示す。「V+2」は、検出時の現像バイアスの正のピーク値とV0との電位差を示す。「Vpp2」は、検出時の現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。「T2」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T02」は、矩形波の周期である。
【0068】
まず、放電検出時、CPU81の指示を受け、高圧制御部9bは、出力制御部94を利用して直流電圧印加部92の出力を、放電発生検出用の設定値Vdc2(例えば、100V〜200V)となるように設定する。又、CPU81の指示を受け、高圧制御部9bはVpp制御部95を利用して、交流電圧印加部93の出力する交流電圧のVpp2を設定する(尚、Vpp2は、条件変更状態ごとに値が変化する。詳細は後述)。又、CPU81の指示を受け、高圧制御部9bは、デューティ比/周波数制御部96を利用して、交流電圧印加部93の出力する交流電圧のデューティ比D2(周期T02に対するHighの時間T2の比、T2/T02)と周波数f2(=1/T02)を放電が始まるピーク間電圧検出用の設定値に設定する(図6下段)。
【0069】
ここで、デューティ比D2は、印刷時のデューティ比D1(周期T01に対するHighの時間T1の比、T1/T01)より小さく設定される(例えば、D1=40%、D2=30%)。このように、デューティ比D2を設定するのは、本実施形態の感光体ドラム32は正帯電であって、現像ローラ6の電位が低い時(負側のピーク時)に放電が生ずると、感光体ドラム32には、大電流が流れる特性(ダイオード的特性)を有するため、できるだけ、負側のピークの電圧の絶対値を小さくするためである。従って、本実施形態のプリンタ1では、現像ローラ6の+側の電位が高いときに放電が発生する。そして、周波数f2は、交流電圧のプラス側時間が印刷時と放電発生検出時で同じとなるよう設定される(即ち、T1=T2。例えば、D1=40%、D2=30%の場合、印刷時の周波数f1=4kHzであれば、f2=3kHz)。これにより、印刷時と同じ時間、正極性の電圧が現像ローラ6に印加される。
【0070】
次に、図7に基づき、放電が始まるピーク間電圧の検出動作の概略を説明する。尚、図7での、「現像ローラ(交流)」は、交流電圧印加部93が現像ローラ6に交流電圧を印加するタイミングを示す。「Vpp」は、現像ローラ6への交流電圧のピーク間電圧の大きさの変化を示す。「現像ローラ(直流)」は、直流電圧印加部92が現像ローラ6に直流電圧を印加するタイミングを示す。「磁気ローラ(交流)」は、磁気ローラバイアス部9c(図3参照)が磁気ローラ7に交流電圧を印加するタイミングを示す。「磁気ローラ(直流)」は磁気ローラバイアス部9cが磁気ローラ7に直流電圧を印加するタイミングを示す。又、「帯電ローラ」は、帯電装置33が感光体ドラム32を帯電させるタイミングを示す。「同期信号」は、露光装置31の受光素子が出力する同期用信号である。「露光」は、露光装置31での感光体ドラム32の露光(レーザ光照射)タイミングを示す。「放電検出(検出部出力)」は、検出部14による放電発生検出タイミングを示す。
【0071】
〈初期動作〉
本発明に係る放電が始まるピーク間電圧の検出動作が開始されると、主制御部8はモータ制御部10に指示し、感光体ドラム32、現像ローラ6、中間転写ベルト42等の回転を開始させた後、初期動作では、現像ローラ6と磁気ローラ7にそれぞれ、交流と直流の電圧が印加される。この初期動作での磁気ローラ7への電圧印加により、少量のトナーが磁気ローラ7から現像ローラ6に供給される。この初期動作の後、準備状態に移行する。
【0072】
〈準備状態〉と〈デフォルト測定〉
準備状態では、帯電装置33による感光体ドラム32への帯電が開始される。尚、放電が始まるピーク間電圧の検出動作が終了するまで、帯電装置33に印加される電圧はONのままである。又、現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧が、デフォルト測定でのピーク間電圧にまで高められる。尚、デフォルト測定での現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧は、例えば、設定可能な最小値とされる。次に、デフォルト測定に移行し、放電の検出有無を確かめる。尚、デフォルト測定は、放電が起こりえない状態での放電発生を確かめるものであり、検出部14等、部材設置位置や回路等の異常発見のため行われる。デフォルト測定の後、条件変更状態(1回目)に移行する。
【0073】
〈条件変更状態〉
条件変更状態となった場合、現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧は、段階的に変化される(例えば、上昇)。そして、条件変更状態の途中で、露光装置31の露光の開始の目安となる同期信号がHighとなる。同期信号のHigh後に、放電検出状態(1回目)に移行する。
【0074】
〈放電検出状態〉
放電検出状態では、現像ローラ6に対し現像バイアスが印加され、露光装置31が露光を継続して行う(感光体ドラム32全面の露光)。尚、本実施形態のプリンタ1では、トナーと感光体ドラム32の帯電極性が正極性であり、露光部分にトナーがのるので、継続した露光は、ベタ塗り画像の静電潜像形成と同じである。従って、放電検出状態では、例えば、主制御部8から露光装置31に、ベタ塗りの画像データが送り込まれる(ベタ塗りの画像データは、例えば、記憶部82が記憶)。
【0075】
放電検出状態は、一定時間(例えば、1秒〜数秒間)続き、その間、感光体ドラム32や現像ローラ6は複数回、回転する。そして、CPU81へのアンプ15の入力から放電発生を検出しない場合等、一定の場合、条件変更状態に移行する。条件変更状態では、再び主制御部8は、高圧制御部9bに交流のピーク間電圧の変更指示を出す。これにより、次回以降の放電検出状態では、基本的に、前回よりも現像ローラ6に印加される交流電圧のピーク間電圧が高い状態で、放電の有無が確認される。言い換えると、放電が始まるピーク間電圧の認定まで、条件変更状態と放電検出状態が繰り返され、繰り返しの間、基本的に、段階的に一定の刻み幅で現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧が高められる。尚、図7ではn回目の放電検出状態で、放電が検出されたことを示す。
【0076】
(放電が始まるピーク間電圧の検出の制御の流れ)
次に、図8に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1での放電が始まるピーク間電圧の検出動作の制御の流れの一例を説明する。図8は、本発明の実施形態に係るプリンタ1での放電が始まるピーク間電圧の検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。尚、このフローチャートは、1つの画像形成部3に対する制御であり、全色行う場合、本実施形態では、4回繰り返される。
【0077】
尚、放電が始まるピーク間電圧の検出は、例えば、初期不良発見や初期設定として製造時や、プリンタ1の設置時、現像装置34や感光体ドラム32の交換時に行われる。又、プリンタ1の設置時に行うのは、設置環境の標高によって気圧が変化し(例えば、日本国内とメキシコの高地との差)、放電が発生する電圧に差があるためである。現像装置34等の交換時に行うのは、感光体ドラム32と現像ローラ6とのギャップが交換前と変わるためである。尚、上記の例に限られず、例えば、プリンタ1が一定枚数を印刷するごとに行っても良いし、実施タイミングは、適宜設定することが可能である。
【0078】
まず、プリンタ1に所定操作がなされ、放電が始まるピーク間電圧の検出動作が開始されると(スタート)、主制御部8(CPU81)からモータ制御部10(CPU10a)への指示で、モータMや不図示の駆動機構により、感光体ドラム32、現像ローラ6、磁気ローラ7、中間転写ベルト42等の画像形成部3と中間転写部4での各種回転体の回転が開始される(ステップS1)。この各回転体の駆動は、放電が始まるピーク間電圧の検出動作が終了するまで継続する。次に、図7で説明した初期動作が行われる(ステップS2)。次に、図7で説明した準備状態に移行し(ステップS3)、例えば、CPU81の指示により、帯電電圧印加部98が、帯電装置33に電圧印加を開始する。
【0079】
次に、図7で説明したデフォルト測定が行われる(ステップS4)。この時、主制御部8は、放電発生を検出したかを確認する(ステップS5)。このデフォルト測定は、放電が到底発生しないという状態で行われ、デフォルト測定で放電発生を検出すれば(ステップS5のYes)、ギャップ長の異常や検出部14等の異常が考えられる。この場合、操作パネル1aやユーザ端末100のディスプレイ等にエラー表示(ステップS6)を行って、放電が始まるピーク間電圧の検出動作は終了する(エンド)。
【0080】
一方、CPU81に放電が発生した旨の信号が入力されなければ(ステップS5のNo)、図6で説明した条件変更状態に移行し、主制御部8(CPU81)は、高圧制御部9bに対し、次の放電検出状態が1回目ならば、交流電圧印加部93の出力する交流電圧のピーク間電圧を1回目用の設定値(例えば、記憶部82に記憶)とし、2回目以降の放電検出状態ならば、直前の値よりも所定の刻み幅ΔVa(例えば、30〜100Vなど)だけ増加させる指示を行う(ステップS7)。
【0081】
その後、放電検出状態に移行し、高圧制御部9bの制御のもと、現像バイアス印加部9aは、現像ローラ6に現像バイアスを印加する。具体的には、主制御部8に指示された大きさの交流電圧等を現像ローラ6に印加し、CPU81の指示により露光が行われ、その間、CPU81はアンプ15の出力電圧が所定の閾値を越えた回数をカウントする(ステップS8)。
【0082】
そして、主制御部8は、カウント数が0回かを確認し(ステップS9)、0回であれば(ステップS9のYes)、放電発生なしとして、ステップS7に戻る。このように、放電が始まるピーク間電圧を得るため、刻み幅ΔVaで、放電が検出されるまで、放電検出状態と条件変更状態とが繰り返される。一方、カウント数が1回以上ならば(ステップS9のNo)、ステップS10に移行する。
【0083】
次に、ステップS10について詳述する。放電の発生を検出した時(ステップS9のNo)、CPU81は、放電が発生すると認めたピーク間電圧Vpp2、周波数f2、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2から、図6に示す電位差V+2(放電検出時のVpp2印加時の感光体ドラム32と現像ローラ6の電位差)を求める(ステップS10)。
【0084】
ここで、V+2は容易に求めることができる。主制御部8(CPU81)は、ピーク間電圧の大きさを指定して高圧制御部9bに指示を出す。従って、主制御部8は、放電発生を検出した場合、その時のVpp2を把握している。そして、設定値としてのデューティ比D2と、Vdc2を基準として、正側の面積と負側の面積を等しくすることに基づき、Vpp2の正側のピーク値とVdc2の電位差が求められる。この電位差に、Vdc2とV0との電位差(V0は、ほぼ0Vなので、Vdc2と扱える)を加えれば、V+2が求められる。
【0085】
具体的には、放電が始まるピーク間電圧の検出動作時のVpp2は、段階的に変更されるので、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2を一定とすれば、各Vpp2の大きさに応じ、予めV+2を算出しておき、ルックアップテーブルとしてデータ化し、CPU81がそのテーブルを参照し、V+2が求められても良い。尚、このテーブルは、例えば、記憶部82に記憶しておけばよい。
【0086】
次に、求められたV+2に基づき、CPU81は、図6に示したV+1と、V-がいずれも求められたV+2よりも、小さくなるように、印刷時に現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧Vpp1を設定する(ステップS11)。具体的に、Vpp1の決定方法は多様であるが、例えば、V+1とV-をV+2よりも、どれほど小さくすれば放電が発生しないか(マージンをどれほどとるべきか)は、使用トナー等を考慮して、開発時の実験に基づき、例えば、求められたV+2に対し、印刷時に放電が発生しないと認められるVpp1の値をテーブル化し、CPU81がそのテーブルを参照し、Vpp1が定められても良い。尚、このテーブルも記憶部82に記憶しておけばよい。これにより、印刷時、放電が発生しないできるだけ大きな交流電圧を印加できる。そして、このVpp1の設定が完了すれば、1つの画像形成部3について、放電発生検出と印刷時のVpp1の設定は終了する(エンド)。
【0087】
(放電が始まるピーク間電圧の検出時の通信)
次に、図5、図8等を参照して、本発明の実施形態に係るプリンタ1での放電が始まるピーク間電圧の検出時の通信について説明する。尚、放電が始まるピーク間電圧の検出ではトナーを磁気ローラ7から現像ローラ6に供給しないので、磁気ローラ7には基本的に交流電圧を印加しなくてよい。このように、放電が始まるピーク間電圧の検出時、磁気ローラバイアスに関しての通信をほとんど行う必要がないので、以下では主制御部8と高圧制御部9b間での現像バイアス印加に関する通信を主として説明する。
【0088】
そして、図8でのステップS4、S7等のように、主制御部8(CPU81)から高圧制御部9b(CPU91)に向けて、現像バイアス印加部9aが出力すべき電圧が指示される。又、高圧制御部9bから主制御部8に向けて、指示を正確に受けた旨の返信や、「現像バイアスの変更が完了した」等の状況報告を行うことも考えられる。更に、指示や状況報告だけではなく、主制御部8は、高圧制御部9bが稼働しているか(生きているか)を確認するための信号を送信し、これに対し応答するアクノリッジ信号を高圧制御部9bが返答する場合もある。このように、放電が始まるピーク間電圧の検出では、絶えず主制御部8と高圧制御部9b間で通信が行われる。
【0089】
ここで、放電が始まるピーク間電圧の検出ではやむを得ず放電を発生させる。しかし、放電を発生させると電磁波が生じて送信中のデータ内容に影響を与える場合がある。又、放電電流がグランドに流れ込み、グランドの電位を揺らす場合もある。即ち、放電は、主制御部8と高圧制御部9b間の通信におけるノイズとなる。
【0090】
特に、これらの主制御部8と高圧制御部9b間の通信は、図5に示した第1通信線L1としてのデータ通信線L1dを用いた、シリアル通信等で行われる。データ通信線L1dは、位置的に離れた主制御部8と高圧制御部9bを繋ぐため機内をかけ回されるので、信号の波形の崩れ等によりノイズの影響を受けやすい側面がある。
【0091】
従って、放電が始まるピーク間電圧の検出時では、放電によるノイズの影響により、主制御部8や高圧制御部9bは、受け取ったデータが破損している場合や、データの内容を認識(理解)できない場合が生ずる。即ち、通信エラーが生ずる場合がある。ここで、通信を行う必要が無ければ、無通信とすることで放電によるノイズの影響を避けることができるが、放電が始まるピーク間電圧の検出動作中は、主制御部8と高圧制御部9b間の通信を完全に止めることができない。
【0092】
このように、通信エラーが生じやすい、放電が始まるピーク間電圧の検出動作中に、何ら対策を施さなければ、例えば、主制御部8や高圧制御部9bは、正確、適切にデータの送信、受信が行えず、主制御部8は次の指示を与えることができない等の問題が生ずる。又、通信エラー状態が続けば、制御停止や、故障発生の誤判断等によってプリンタ1自体の動作が全て停止してしまう場合も生じ得る。
【0093】
そこで、本実施形態のプリンタ1では、放電が始まるピーク間電圧の検出時では、印刷時よりも、通信におけるリトライ回数増やす等の特徴を有する。そこで、以下、図9を用いて、本発明の実施形態に係る放電が始まるピーク間電圧の検出動作時の通信制御の一例を示す。図9は、本発明の実施形態に係る放電が始まるピーク間電圧の検出動作時の主制御部8と高圧制御部9b間の通信制御の一例を示すフローチャートである。
【0094】
(放電が始まるピーク間電圧の検出時の通信制御の一例)
まず、図9におけるスタートは、図8のスタートと同様、放電が始まるピーク間電圧の検出動作が始まった時点である。そして、現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧の指示や、指示に対する応答など、主制御部8と高圧制御部9b間でデータ通信が行われる(ステップS21)。
【0095】
次に、送信側(主制御部8又は高圧制御部9b)は、受信側(主制御部8又は高圧制御部9b)からの異常なくデータを受信した旨の応答の有無を確認する(ステップS22)。言い換えると、送信側はデータを正確に受信した旨のアクノリッジの返信を確認する。具体的に、定められた時間帯又は一定時間内に応答があるかを確認する(後述のステップS25、ステップS29でも同様)。もし、定められた時間帯時点又は一定時間内に応答があれば(ステップS22のYes)、通信は異常無しに行われたので、放電が始まるピーク間電圧の検出が完了したかを確認する(ステップS23)。完了していれば(ステップS23のYes)、放電が始まるピーク間電圧の検出動作時における通信制御は完了してよいので、処理を完了する。一方、完了していなければ、主制御部8と高圧制御部9b間でのデータ送信は続けられるので、ステップS21に戻る。
【0096】
一方、定められた時間帯又は一定時間内に応答がなければ(ステップS22のNo)、送信側は、先に送信したデータの再送信を行う。即ち、リトライを行う(ステップS24)。リトライ後、再度、送信側は、受信側から異常なくデータを受信した旨の応答の有無を確認する(ステップS25)。もし、応答があれば(ステップS25のYes)、通信は異常無しに行われたのでステップS23に移行する。もし、応答が無ければ(ステップS25のNo)、リトライ回数が、放電が始まるピーク間電圧の検出時の上限回数に到ったかを確認する(ステップS26)。
【0097】
ここで、放電が始まるピーク間電圧の検出時は、印刷時よりもリトライ回数が多い。現像バイアス印加部9aは高圧の電圧を発生させる等により放電発生がなくても、主制御部8と高圧制御部9b間の通信が適切に行われない場合がある。そのため、印刷時でもリトライは実行される。しかし、例えば、印刷時のリトライ回数を3〜5回とすれば、放電が始まるピーク間電圧の検出時には、リトライ回数を6〜10回、或いは、十数回として、印刷時よりも放電が始まるピーク間電圧の検出時のリトライ回数を2倍以上(例えば2〜5倍程度)に増やす(リトライ回数の設定は、記憶部82や高圧制御部9b内に記憶させておく)。即ち、現像ローラ6に印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、感光体ドラム32と現像ローラ6間で放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部8と高圧制御部9bは、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やす。このようにリトライ回数を増やすことで、リトライ中に主制御部8と高圧制御部9b間の通信が適切に行われる確率が高くなる。
【0098】
もし、上限回数に至っていなければ(ステップS26のNo)、ステップS24に戻りリトライが実行される。一方、上限回数に至れば(ステップS26のYes)、送信側(主制御部8又は高圧制御部9b)は、現像バイアス印加部9aの出力を停止させる(ステップS27)。主制御部8が送信側である場合、主制御部8は、図5で示したリモート通信線L1rの状態を変化させ、高圧制御部9bに現像バイアス印加部9aの出力を停止させる指示を出す。リモート通信線L1rはパルス信号ではなく、時間的に継続した状態変化(High、Low)が現れるので、放電ノイズの影響を受けない。一方で高圧制御部9bが送信側である場合、単に、現像バイアス印加部9aの出力を停止させればよい。
【0099】
その後、データの再送信が行われ(ステップS28)、送信側は、受信側から異常なくデータを受信した旨の応答の有無を確認する(ステップS29)。尚、この時、複数回(例えば、3〜5回)のリトライが行われても良い。もし、応答が無ければ(ステップS29のNo)、放電が無い状態でも適切に通信を行うことができないので、故障や主制御部8や高圧制御部9bの通信ポートの異常が考えられ、例えば、主制御部8は放電が始まるピーク間電圧の検出動作を中断し、操作パネル1a等にエラーメッセージを表示させる(ステップS30→エンド)。
【0100】
一方、応答があれば(ステップS29のYes)、主制御部8又は高圧制御部9bは、現像バイアス印加部9aの出力停止状態を解除する(ステップS31)。具体的には、例えば、主制御部8がリモート通信線L1rの状態を変え、現像バイアス印加部9aを出力可能とする。即ち、放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部8と高圧制御部9bとの間で通信エラー状態が続く場合、主制御部8又は高圧制御部9bは、現像バイアス印加部9aを出力停止状態とし、通信を実行して通信エラーを解消した後、現像バイアス印加部9aの出力を再開させる。その後、ステップS23に移行して、放電が始まるピーク間電圧の検出動作と主制御部8と高圧制御部9b間の通信が継続される。
【0101】
尚、図5を用いて説明したように、放電が始まるピーク間電圧の検出時には、主制御部8とモータ制御部10間でも通信が行われるので、主制御部8とモータ制御部10間の通信でも通信エラーが生ずる場合がある。そこで、図9に示した通信制御を、主制御部8とモータ制御部10間の通信制御に適用することができる。例えば、図9及び、図9に関する説明での「高圧制御部9b」を「モータ制御部10」に置き換えればよい。
【0102】
即ち、放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部8とモータ制御部10は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やす。更に、放電が始まるピーク間電圧の検出時、主制御部8とモータ制御部10との間で通信エラー状態が続く場合、主制御部8は、現像バイアス印加部9aに出力停止を指示し、通信を実行して通信エラーを解消した後、現像バイアス印加部9aに出力再開を指示する。
【0103】
このようにして、本実施形態の構成によれば、主制御部8と高圧制御部9b間の通信に関し、性質上、意図的に放電を生じさせる、放電が始まるピーク間電圧の検出時に、印刷時よりもリトライ回数を増やすので、放電によるノイズ影響を受け、通信データ内容を認識できない通信エラーが頻繁に生じても、正確にデータの送受信が行え、確実に主制御部8と高圧制御部9b間で通信がなされ、放電が始まるピーク間電圧の検出を円滑に実行することができる。又、リトライ回数を増やしても通信エラー状態が続く場合、通信エラーの発生原因を除くため、一旦現像ローラ6への現像バイアスの印加を一時的に中断し、放電を発生させないようにする。これにより、確実に主制御部8と高圧制御部9b間で通信がなされる。又、通信エラー状態の継続により、画像形成装置が停止することもなくなる。更に、正確なデータの送受信のために、高性能なノイズ対策部品を多数設ける必要もなくなる。
【0104】
又、主制御部8とモータ制御部10間の通信に関しても、放電の影響を受ける場合があるが、本実施形態の構成によれば、印刷時よりもリトライ回数を増やすので、放電によるノイズ影響を受け、主制御部8とモータ制御部10間の通信で通信データ内容を認識できない通信エラーが頻繁に生じても正確にデータの送受信が行え、確実に主制御部8とモータ制御部10間で通信がなされ、各種モータを正確に動作させることができる。又、リトライ回数を増やしても通信エラーが続く場合、通信エラーの発生原因を除くため、一旦現像ローラ6への現像バイアスの印加を一時的に中断し、放電を発生させないようにする。従って、確実に主制御部8とモータ制御部10間で通信がなされる。又、通信エラー状態の継続により、画像形成装置が停止することもなくなる。更に、データ通信線L1dの他、現像バイアス印加部9aの出力のON/OFFを指示するためのリモート通信線L1rも有するので、放電でノイズが発生しても、主制御部8は、確実に現像バイアス印加部9aを停止させる指示を高圧制御部9bに与えることができる。更に、正確なデータの送受信のために、高性能なノイズ対策部品を多数設ける必要もなくなる。
【0105】
ここで、他の実施形態について説明する。上述の実施形態では、感光体ドラム32、トナーが正帯電であり、現像バイアス等で正極性の直流バイアスを印加する正帯電方式の画像形成装置を説明したが、本発明は、負帯電方式の画像形成装置にも適用できる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、感光体ドラムと現像ローラを有し、現像ローラ等に電圧(直流+交流)を印加する画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 プリンタ(画像形成装置) 32 感光体ドラム
6(6k、6y、6c、6m) 現像ローラ
8 主制御部 9a 現像バイアス印加部
9b 高圧制御部 10 モータ制御部
14 検出部 L1 第1通信線
L1d データ通信線 L1r リモート通信線
L2 第2通信線 M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムへのトナーの供給のため、前記感光体ドラムにギャップが設けられつつ対向し、画像形成時にトナーを担持する現像ローラと、
トナーを飛翔させるため、前記現像ローラに対し直流と交流を重畳させた電圧を印加する現像バイアス印加部と、
前記現像ローラと前記感光体ドラム間での放電発生を検出するための検出部と、
前記現像バイアス印加部の出力すべき電圧の指示を与える主制御部と、
前記主制御部と通信を行って指示を受け、前記現像バイアス印加部が出力する電圧を制御する高圧制御部と、
前記主制御部と前記高圧制御部とを通信可能に接続するための第1通信線と、を有し、
前記現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の検出時、
前記主制御部と前記高圧制御部は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
放電が始まるピーク間電圧の検出時、
前記主制御部と前記高圧制御部との間で通信エラー状態が続く場合、
前記主制御部又は前記高圧制御部は、前記現像バイアス印加部を出力停止状態とし、通信を実行して通信エラーを解消した後、前記現像バイアス印加部の出力を再開させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
装置内には、前記感光体ドラムや前記現像ローラを回転させるためのモータを1又は複数有し、
前記主制御部の指示を受け前記モータの回転を制御するためのモータ制御部と、
前記主制御部と前記モータ制御部を通信可能に接続するための第2通信線が設けられ、
放電が始まるピーク間電圧の検出時、
前記主制御部と前記モータ制御部は、同じデータを再度送信するリトライの回数を印刷時よりも増やすことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
放電が始まるピーク間電圧の検出時、
前記主制御部とモータ制御部との間で通信エラー状態が続く場合、
前記主制御部は、前記現像バイアス印加部を出力停止状態とし、通信を実行して通信エラーを解消した後、前記現像バイアス印加部の出力を再開させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1通信線は、データの送受信を行うためのデータ通信線と、前記現像バイアス印加部の出力のON/OFFを指示するためのリモート通信線で構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−197790(P2010−197790A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43619(P2009−43619)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】