説明

画像形成装置

【課題】 感光体ユニットが着脱可能なの画像形成装置において、表層の潤滑性を向上した感光ドラムを用いた場合に、プロセスカートリッジが新品状態のときに感光ドラムの一部が転写手段等と接触或いは摺擦すると、摺擦部は部分的に摩擦抵抗μが上昇してしまう。摺擦部がクリーニングブレードに到達すると、クリーニングブレードが引っかかり感光ドラム周期でクリーニング不良(雨降り画像)が発生してしまうことがある。
【解決手段】 画像形成装置本体に装着された感光体ユニットが新品であるか否かを判断し、感光体ユニットが新品である場合、通常の初期回転シーケンスに加えて感光ドラム表面の滑性成分を除去する滑性除去シーケンスを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光体ユニットを着脱可能であって、記録媒体上に画像を形成するための画像形成装置に関するものである。
【0002】
ここで、画像形成装置には、電子写真方式、或いは静電記録方式の複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ、LEDプリンタ)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ、それらの複合機能機等が含まれる。
【背景技術】
【0003】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、プロセスカートリッジ方式が多く採用されている。これは、回転可能な像担持体であるドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラム)と、感光ドラムに作用するプロセス手段とを一体的にカートリッジ化して、画像形成装置の装置本体に着脱可能としているものである。
【0004】
以下、図8を用いて、従来のプロセスカートリッジ方式の画像形成装置の一例を説明する。
【0005】
<画像形成装置>
図8にプロセスカートリッジBを装着した状態の画像形成装置Aを示す。
【0006】
中央部に静電潜像が形成される電子写真感光体である感光ドラム1を配置している。その感光ドラム1の周囲に各種のプロセス手段が配設されている。感光ドラム1を一様に負極性に放電帯電させる帯電手段である帯電ローラ2。帯電された感光ドラム1に印字情報及び画像情報に対応する静電潜像をレーザー露光により形成させる露光装置3。露光装置3から発されたレーザー光を屈折させて感光ドラム1に照射するための、折り返しミラー4。形成された静電潜像に負極性に帯電したトナーを反転現像させることにより可視像化する現像手段である現像装置5。感光ドラム上に可視像化されたトナー像を転写ベルト61を介して、二次転写ローラ66により被転写材である記録メディアPに転写する転写手段である転写装置6。感光ドラム1上の転写残トナーなどを除去するクリーニング手段7。そして、転写された記録メディアP上のトナー像を永久定着させる定着装置8が、備えつけられている。
【0007】
<プロセスカートリッジ>
プロセスカートリッジBは、電子写真感光体である感光ドラム1と、少なくとも1つの感光ドラムに作用するプロセス手段を備えたものである。本従来例におけるプロセスカートリッジBは、感光ドラム1の他に、帯電手段である帯電ローラ2、現像手段である現像装置5、感光ドラム1の清掃手段であるクリーニング手段7を備えている。
【0008】
<プロセスカートリッジの着脱>
次に、プロセスカートリッジBを画像形成装置Aに着脱するための構成について説明する。
【0009】
なお、下記説明において、カートリッジBに関する正面とは装置本体Aに対する挿入先端側の面(図8において左側の面)とは反対側の面(図8において右側の面)である。背面とは正面から見てその反対側の面である。左右とは正面から見て左右である。また、上面とはカートリッジBを装置本体Aに装着した状態で上方に位置する面であり、下面とは下方に位置する面である。また、画像形成装置に関して、正面とは開閉ドア(開閉カバー)17を配設した側である。左右とは正面から見て左右である。
【0010】
図8には未装着状態のカートリッジBを破線で示してある。カートリッジBは、装置本体Aの開閉ドア10を、ヒンジ部11を中心に1点鎖線示のように開いて装置本体Aの内部を大きく開放することで着脱操作される。ドア10を開くと、装置本体A内のカートリッジ装着部が見える。この装着部の左右の壁部には、ドア10が開いた開口から見ると、後下がりのガイドレール(不図示)が見える。破線で示した未装着状態のカートリッジBを、画像形成装置Aに装着する場合、正面側を手で掴み、背面側を先にして、左右側をそれぞれ上記左右のガイドレールに係合させて、ガイドレールに沿って装着部に差し入れる。カートリッジBを十分に挿入すると、カートリッジBは位置決め部材13に受け止められて所定の装着位置に保持されて、上面の露光開口部が、露光装置3の折り返しミラー4に正対する。また、下面から露出した感光ドラム下面が転写ベルト61に正対して当接した状態になる。そして、装置本体Aにドア10を閉じ込む。
【0011】
<画像形成装置と感光体ドラムの駆動伝達>
画像形成装置本体AとプロセスカートリッジB間の駆動伝達手段(以下、カップリングと呼ぶ)の構成を図9に示す。画像形成装置本体Aに設けられた大ギア1AとプロセスカートリッジBに設けられた感光ドラム1に係る詳細図である。大ギア1Aは画像形成装置本体Aに備えた図示されないモータから動力伝達部材を介して駆動される。大ギア1Aと一体成形された回転体であるカップリング凹軸1Bはその先端に破線で示した凹部1Cを有する。凹部1Cはその断面が三角形の捩じれた穴を持つ。一方、感光ドラム1はその端部にドラムフランジ1aが嵌入固定されている。ドラムフランジ1aにはドラムギア1b、カップリング凸軸1c、カップリング凸部1dが一体成形されている。カップリング凸部1cは捩じれた三角柱形状を持ち、画像形成装置本体AにプロセスカートリッジBを挿入した際、大ギア1Aと感光ドラム1は同軸線上にあるため図9のように互いに連結する。この状態でカップリング凹軸1cが回転すると、カップリング凹部1Cの内面とカップリング凸部1dの三角柱の3本の稜線とが当接して回転駆動力が伝達される。そしてこの時、共にカップリング凹部1Cの内面とカップリング凸部1dの稜線とが等しく当接するように、カップリング凸軸1cがカップリング凹軸1Bの中心と一致するように移動し、カップリング凸軸1c及びカップリング凹軸1Bが自動的に調芯される。且つ、回転することにより互いの当接部が引きつけあう様に凸部1dと凹部1Cの捩じれ方向が設定されているため、カップリング凸軸1cとカップリング凹軸1Bが引きつけられる。
【0012】
上記のプロセスカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずユーザー自身で行うことができるので、格段に操作性を向上させることができる。そこで、このプロセスカートリッジ方式は、電子写真画像形成装置において広く用いられている。
【0013】
ところで、プロセスカートリッジ内にある感光ドラムの表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段としては、ブレードクリーニング方式が広く用いられている。これは、クリーニング部材としての弾性を有するクリーニングブレードを用い、感光ドラムの回転方向に対してカウンター方向に配設して感光ドラムと所定領域で当接させてニップ部を形成させ、回転する感光ドラムの表面を拭掃するものである。
【0014】
ブレードクリーニング方式によれば高いクリーニング性能を得ることができる一方、クリーニングブレードと感光ドラムの摩擦抵抗が高いと、クリーニングブレードが変形し、鳴き・めくれ・破損といった問題が生じることがある。
【0015】
これらの問題に対して従来、感光ドラム表面の潤滑性を向上させる表面層を用いる提案がなされている(例えば(特許文献1)参照。)。このように、感光ドラム表面層に高潤滑性をもたせることで、クリーニングブレードの鳴き・めくれ・破損といった問題を解決することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−305770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記構成のプロセスカートリッジ方式の画像形成装置において、表面層の潤滑性を向上させた感光ドラムを用いた場合、感光ドラム周期でクリーニング性能が損なわれてしまうことがあった。以下にその詳細を説明する。
【0018】
プロセスカートリッジの交換等で、画像形成装置にプロセスカートリッジを着脱した際に、プロセスカートリッジに内包される感光ドラムと画像形成装置本体との間のカップリングの位相が合っていない恐れがある。感光ドラムと転写手段が当接配置する画像形成装置において、カップリングの位相が合っていない状態で画像形成装置本体が駆動開始すると、感光ドラムはカップリングの位相が合うまで停止状態を維持するのに対し、転写手段は回転駆動を開始する。その結果、感光ドラムは画像形成装置本体との間のカップリングの位相が合致するまでの間、転写手段と当接する部分が摺擦されてしまうという問題がある。
【0019】
このとき特に、表面層の潤滑性を向上させた感光ドラムの場合、摺擦部では感光ドラム表層の滑性成分が部分的に剥離し、非摺擦部と比較して相対的に摩擦抵抗μが上昇してしまう。図3に前記従来例の画像形成装置Aにおいて、感光ドラム1がベルト61と摺擦した後の感光ドラム1の様子を示す。摺擦部Fでは表面層の滑性成分が剥離し、周囲の非摺擦部よりも摩擦抵抗μが高い状態となっている。このように、感光ドラム1上で局所的に摩擦抵抗μが上昇すると、感光ドラム1が回転して摺擦部Fがクリーニングブレードを通過する度に、クリーニングブレードが摺擦部Fに引っかかる。そして、その後クリーニングブレードが摺擦部Fを通り過ぎると解放されて再び定常状態に戻るという所謂スティックスリップ現象が引き起こされる。
【0020】
このスティックスリップ現象について図4を用いて詳細に説明する。
【0021】
図4−1は、感光ドラム1の非摺擦部をクリーニングブレード7で清掃している様子を示している。感光ドラム1は矢印R1の方向に駆動し、感光ドラム1表面の他の部分よりも摩擦抵抗が高い摺擦部Fがクリーニング部に近づいてきている。感光ドラム1上の転写残トナーTはクリーニングブレード7のエッジ部分でせき止められクリーニングされている。
【0022】
図4−2は、摺擦部Fがクリーニング部であるクリーニングブレード7のエッジ部に到達したときの様子を示している。このとき、クリーニングブレード7は周囲より摩擦抵抗の高い摺擦部Fに引っかかり、図4−1の状態と比較して感光ドラム1に対する当接状態が変化している。
【0023】
図4−3は、上記の摺擦部Fがクリーニング部を通過した後の様子を示している。摺擦部Fを通過し終えると摺擦部に引っかかっていたクリーニングブレード7は再び解放されて図4−1と同様の状態に戻るが、その一瞬、クリーニングブレード7は感光ドラム1に対する当接状態が不安定になり、両者間に僅かな隙間ができてしまう。このとき、クリーニング部にせき止められ堆積していた転写残トナーTの一部tは、クリーニングブレード7をすり抜けてしまっている。この、すり抜けトナーtは、その後、転写材に転写され、感光ドラム1の回転周期で現れる短い縦スジ(以下、雨降りという。)となって画像上に発生してしまう。
【0024】
本提案は上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、
プロセスカートリッジ方式の画像形成装置において、表層の潤滑性を向上した感光ドラムを用いた場合でも、クリーニング性能を損なうことの無い画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
少なくとも、表面層に滑性材料を含み回転可能な像担持体、を有し、画像形成装置本体に着脱可能な感光体ユニットと、
前記像担持体を帯電する帯電手段と、
前記感光体ユニットが未使用であることを検知可能な新品検知手段と、
前記像担持体に接触可能な現像手段と、を有する画像形成装置において、
前記新品検知手段が前記感光体ユニットが新品であることを検知した場合は、
帯電手段で像担持体を帯電しながら像担持体を現像手段で回転摺擦させる滑性除去シーケンスと、画像形成準備シーケンスを行い、
前記新品検知手段が前記感光体ユニットが新品でないと検知した場合は、画像形成準備シーケンスを行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、滑性成分を除去する滑性除去シーケンスを行うことにより、像担持体周期で発生する雨降り画像を抑制することができる。さらには上記、滑性除去シーケンス時の帯電印加バイアスをより高くする、または、現像手段の駆動速度を大きくすることにより、滑性除去シーケンスの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】初期化シーケンスのフローチャート図
【図2】実施例1で用いた画像形成装置の概略構成模式図
【図3】ベルト摺擦後の感光ドラムの模式図
【図4】スティックスリップ現象の説明図
【図5】感光ドラムの層構成の説明図
【図6】現像器5の拡大模式図
【図7】滑性除去シーケンスのフローチャート図
【図8】従来のプロセスカートリッジ方式画像形成装置の一例の概略構成模式図
【図9】画像形成装置の駆動伝達手段の構成図
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例1)
以下、図2を用いて本発名の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0029】
但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法・材質・形状それらの相対的配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0030】
<画像形成装置の概略>
図2は本実施例の画像形成装置の概略構成の模式図である。この画像形成装置Aは、電子写真プロセスを用いた、プロセスカートリッジ方式の4色フルカラーの画像形成装置である。この画像形成装置Aはイメージリーダ(原稿画像読装置)・パソコン・ファクシミリ等のホスト装置200からコントローラ部(制御手段:CPU)100に入力する電気的画像信号に基づいて記録媒体としてのシート状の記録材Pに画像形成を行う。コントローラ部100はホスト装置200や画像形成装置の操作部300との間で各種の電気的な情報の授受をすると共に、画像形成装置Aの画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。操作部300には、メイン電源スイッチ300aが設けられている。
【0031】
本実施例の画像形成装置Aは、表面に静電潜像を担持する像担持体としての、感光ドラム(以下、ドラムと記す)1を有する。さらには、このドラム1に作用するプロセス手段としての、帯電手段2、画像露光手段3、現像手段5(5a・5b・5c・5d)、転写手段6、ドラムクリーニング手段7を有する。
【0032】
ドラム1はドラム軸線を中心に破線矢印R1の反時方向に所定の速度で回転駆動される。
【0033】
帯電手段2はドラム1の表面を所定の極性(本実施例では負極性)・電位に一様に帯電する手段であり、帯電ローラ2と支持部材(不図示)と、バネ部材(不図示)を主要部として備えている。帯電ローラ2は芯金に厚さ約3mmのウレタンゴム等からなる導電性弾性層と、その上に厚さ数μmのウレタンゴムにカーボンブラックを分散させた高抵抗層から構成される。支持部材は導電性で、帯電ローラ2を両端部にて回転自在に支持する。バネ部材は、これら支持部材を介して、帯電ローラをドラム1に対して押し付ける。画像形成装置本体に設けられた帯電バイアス電源(不図示)は、バネ部材及び支持部材を介して帯電ローラ2に電圧を印加する。
【0034】
画像露光手段3はドラム1の表面に静電潜像を形成する手段であり、本実施例ではレーザースキャナユニットを用いている。このユニット3はホスト装置200からコントローラ部100に入力する各色の画像情報に対応して変調したレーザー光Lを出力して反射ミラー4を介してドラム1の帯電処理面を露光部位Eにおいて走査露光する。これにより、ドラム1の面に静電潜像が形成される。本実施例においては、静電潜像形成方式は、帯電したドラム面を画像情報部に対応して露光するイメージ露光方式としている。
【0035】
現像手段5はドラム面に形成された静電潜像を現像剤像(トナー像)として可視化する手段である。本実施例の画像形成装置においては現像手段としての現像器を複数有する。即ち、第1から第4の4つの現像器5(5a・5b・5c・5d:現像カートリッジ)を有する。それぞれの現像器5は、現像剤担持体として現像ローラ53を有する。現像ローラ53はΦ13であり、Φ8の導電性芯金の周囲に、シリコンゴムを基層とし、アクリル・ウレタン系ゴムを表面にコートした構成である。現像ローラ53はドラム1に接触可能に構成される。各現像器5a・5b・5c・5dは現像器保持体(転換手段)としてのロータリ50に保持させてある。ロータリ50は中央軸51を中心に割り出し回転可能であり、各現像器5a・5b・5c・5dはロータリ50の回転方向において互いに90°間隔の割り付けにて予め決められた所定の装着部(現像手段装着部)に取外し可能に装着されている。ロータリ50はコントローラ部100で制御される駆動手段(モータ等:不図示)により破線矢印R2の時計方向に90°間隔で割り出し回転される。これにより、第1から第4の現像器5a・5b・5c・5dがひとつずつ順次、ドラム1に所定に対向した現像位置γに切換え的に移動して、この位置においてドラム1の静電潜像に対して現像を行う。
【0036】
ここで、ロータリ50に装着されている現像器5がドラム1に所定に対向した現像位置γに移動した現像器位置をポジションγとする。
【0037】
本実施例においては、第1から第4の各現像器5a・5b・5c・5dは、それぞれ、現像剤Tとして負帯電性の非磁性トナーを用いた接触現像型の反転現像器である。そして、本実施例においては、第1の現像器5aは現像剤収容室にイエロー(Y)色のトナーを収容したイエロー現像器である。第2の現像器5bは現像剤収容室にマゼンタ(M)色のトナーを収容したマゼンタ現像器である。第3の現像器5cは現像剤収容室にシアン(C)色のトナーを収容したシアン現像器である。第4の現像器5dは現像剤収容室にブラック(Bk)色のトナーを収容したブラック現像器である。
【0038】
転写手段6はドラム1の面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する手段であり、本実施例では中間転写ベルトユニットを用いている。このユニット6は、中間転写体(第1の記録媒体)としての、誘電体製で可撓性を有するエンドレスのポリエチレンナフタレートからなる中間転写ベルト(以下、ベルトと記す)61を有する。そして、このベルト61を懸回張設している、EPDMスポンジからなる1次転写ローラ62、ベルト駆動ローラ63、EMDMスポンジからなる2次転写対向ローラ64、テンションローラ65を有する。1次転写ローラ62はドラム1に対してベルト61を挟んで圧接している。ドラム1とベルト61の接触部が1次転写ニップ部βである。2次転写対向ローラ64のベルト懸回部には2次転写ローラ66が対向配設されている。この2次転写ローラ66は、揺動機構(不図示)により、ベルト61を挟んで2次転写対向ローラ64に当接した作用位置と、ベルト61の表面から離間した非作用位置とに位置移動される。常時は非作用位置に保持されている。そして、所定の制御タイミングにて作用位置に移動される。2次転写ローラ66が作用位置に移動された状態において、2次転写ローラ66とベルト61の接触部が2次転写ニップ部δである。テンションローラ65のベルト懸回部には、ベルト61の表面をクリーニングするベルトクリーニング手段67が配設されている。このベルトクリーニング手段67は揺動機構(不図示)によりクリーニング部材がベルト61の表面に接触した作用位置と、クリーニング部材がベルト61の表面から離間した非作用位置とに位置移動される。常時は非作用位置に保持されている。そして、所定の制御タイミングにて作用位置に移動される。ドラムクリーニング手段7は、ベルト61に対するトナー像の1次転写後のドラム1面から1次転写残トナーを除去する手段であり、ポリウレタンゴムからなるクリーニングブレード71を用いている。ドラム面から除去されたトナーはクリーナー容器72に収容される。
【0039】
本実施例において、プロセスカートリッジとしての感光体ユニットBは上記ドラム1と、帯電手段2、クリーニング手段7を一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体Aに対して着脱可能としたものである。B1は感光体ユニットBの外装カバー(カートリッジ枠体)であり、この外装カバーB1内に上記のドラム1・帯電手段2・クリーニング手段7が所定の相互配置関係をもって組み付けられている。
【0040】
<ドラム1について>
ここで、本実施例における静電潜像像担持体である前記ドラム1について説明する。
【0041】
図5はドラム1の層構成の模式図である。このドラム1は、導電性の支持体1αの上に電子写真感光層(電荷発生層)1βが形成されている。そして、その感光層1βの上に更に表面層(電荷輸送層)1γが形成されている。表面層1γは主として電荷輸送材料とバインダー樹脂と滑性材料を溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。用いられる電荷輸送材料としては各種のトリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物、チアゾール系化合物などがあげられる。
【0042】
また、バインダー樹脂としては以下のようなものが用いられる。例えばポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、塩化ビニリデン・アクリロニトリロコポリマー樹脂、ポリビニルベンザール樹脂などが主として用いられる。
【0043】
なお、本実施例におけるドラム1は、表面に滑性材料の層を持っている。この滑性材料は後述する滑性除去シーケンスにより除去可能となっている。このような滑性材料の層を持っている理由は未使用の感光体ユニットにおいて最初にクリーニングブレード71に転写残トナー等の潤滑物が到達するまでの間、ドラム1表面とクリーニングブレード71間の摩擦係数μを低減するためである。摩擦抵抗μを低減することにより、クリーニングブレード71が感光ドラム1表面にタックして巻き込まれてしまうのを防止することが可能となる。また、このように感光ドラム1表面に滑性材料の層も持つことにより、クリーニングブレード71に潤滑剤を塗布しなくても感光ドラム1表面とクリーニングブレード71間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0044】
そして滑性除去シーケンスを行って滑性材料の層を除去するが、該滑性除去シーケンスの最中には感光ドラム1上にトナーを現像し、クリーニングブレード71には潤滑物たるトナーが供給されるため、滑性材料を除去した後もドラム1表面とクリーニングブレード71間の摩擦係数μは低い状態に保たれる。
【0045】
また、滑性材料には櫛型ポリマーを用いた。市販品としてUS270、US380,US450(東亞合成者製)等があるが、本実施例ではUS270を用いた。
【0046】
<画像形成動作>
次に、画像形成装置Aの画像形成動作について説明する。
【0047】
コントローラ部100は画像形成スタート信号が入力されると、メインモータ(不図示)を駆動させる。これにより、ドラム1が破線矢印R1の反時方向に、ベルト61が破線矢印R3の時計方向に150mm/secのプロセススピードで駆動される。ドラム1の駆動に伴い帯電手段としての帯電ローラ2は従動回転を開始し、帯電バイアスとして約−1000Vの直流電圧が印加され、ドラム1の表面電位を暗電位(VD)−500Vに帯電する。
【0048】
現像手段5においては、第1の現像器5aがポジションγに移動し、現像ローラ53が感光ドラム1と接触状態になるようにロータリ50の割り出し回転がなされるとともに、現像ローラ53に駆動が伝達され現像バイアスとして−300Vの直流電圧が印加される。2次転写ローラ66とベルトクリーニング手段67は、それぞれ、ベルト61から離間した非作用位置に移動されて保持されている。
【0049】
露光装置3からはフルカラー画像のY色成分画像信号に対応して変調されたレーザー光Lが出力されてドラム面が走査露光される。これにより、ドラム面にY色成分画像に対応した静電潜像が形成される。露光された部分の電位は、明電位(VL)−100Vとなる。その静電潜像がポジションγに位置している第1の現像器5aによりY色トナー像(現像剤像)として現像される。
【0050】
ドラム1上に現像されたY色トナー像は1次転写ニップ部βにおいてベルト61上に1次転写される。その際、1次転写ローラ62には所定の制御タイミングでトナーの帯電極性とは逆極性(正極性)の1次転写バイアスが印加される。1次転写時に1次転写ローラに印加される電圧は、画像形成時に定電圧制御される。
【0051】
1次転写後のドラム1上の転写残トナーは、クリーニングブレード71によりドラム1上から取り除かれる。取り除かれたトナーはクリーナー容器72に収容される。その後、ドラム1は次の画像形成に備えるため、再び帯電手段2により帯電が行われる。
【0052】
Y色トナー像のベルト61に対する1次転写が終了すると、ロータリ50が時計方向に90°間欠回転される。これにより、今度は第2の現像器5bがポジションγに移動される。そして、ドラム1に対してフルカラー画像のM色成分画像に対応したM色トナー像を形成する帯電・露光・現像の工程が実行される。そのM色トナー像が1次転写ニップ部γにおいて、ベルト61上にすでに転写されているY色トナー像に所定の位置合わせ状態にて重畳されて1次転写される。
【0053】
M色トナー像のベルト61に対する1次転写が終了すると、ロータリ50が時計方向に更に90°間欠回転される。これにより、今度は第3の現像器5cがポジションγに移動される。そして、ドラム1に対してフルカラー画像のC色成分画像に対応したC色トナー像を形成する帯電・露光・現像の工程が実行される。そのC色トナー像が1次転写ニップ部βにおいて、ベルト61上にすでに転写されているY色+M色のトナー像に所定の位置合わせ状態にて重畳されて1次転写される。
【0054】
C色トナー像のベルト61に対する1次転写が終了すると、ロータリ50が時計方向に更に90°回転される。これにより、今度は第4の現像器5dがポジションγに移動される。そして、ドラム1に対してフルカラー画像のBk色成分画像に対応したBk色トナー像を形成する帯電・露光・現像の工程が実行される。そのBk色トナー像が1次転写ニップ部βにおいて、ベルト61上にすでに転写されているY色+M色+C色のトナー像に所定の位置合わせ状態にて重畳されて1次転写される。
【0055】
このようにして、ベルト61上にはY色+M色+C色+Bk色の4色フルカラーの未定着トナー像が合成形成される。
【0056】
即ち、駆動手段によりロータリ50を割り出し回転させて1つの現像器をドラム1に所定に対向させたポジションγに移動させ、その現像器によってドラム1に形成された静電潜像をトナー像として現像する。この動作を複数の現像器について順次に切換え的に実行させてベルト61に対するフルカラートナー像の形成を実行するのである。
【0057】
なお、ドラム1に対して順次に形成する色トナー像の色順は本実施例のようなY色→M色→C色→Bk色の色順に限られるものではなく、適宜の色順で行うことができる。
【0058】
ベルト61上に形成された4色フルカラーの未定着トナー像の画像先端部がベルト61の移動により2次転写ローラ66の位置に到達する前に、2次転写ローラ66がベルト61に接触した作用位置に移動される。また、ベルトクリーニング手段67もベルト61に対する作用位置に移動される。
【0059】
一方、所定の制御タイミングで記録材給送部(不図示)から第2の記録媒体としてのシート状の記録材Pが一枚分離されて給送される。その記録材Pはレジストローラユニット(不図示)によって所定の制御タイミングにて2次転写ローラ66とベルト61との接触部である2次転写ニップ部δに導入される。2次転写ローラ66にはトナーの帯電極性とは逆極性(正極性)で所定電位の2次転写バイアスが印加される。2次転写ローラ66に印加される電圧は、画像形成時に定電圧制御される。これにより、記録材Pが2次転写ニップ部δを挟持搬送されていく過程で、ベルト61上の4色重畳のトナー像が記録材Pの面に順次に一括2次転写される。
【0060】
記録材Pはベルト61の面から分離されて定着ユニット8へ導入され、定着ニップ部で加熱・加圧される。これにより、各色トナー像の記録材Pへの定着(溶融混色)がなされる。そして、記録材Pは定着ユニット8を出て、フルカラー画像形成物として排出部(不図示)に排出される。
【0061】
記録材分離後のベルト61の表面に残留した2次転写残トナーはベルトクリーニング手段67によって除去される。
【0062】
画像形成ジョブ終了後、コントローラ部100はドラム1、レーザースキャナユニット3、ベルト61等の駆動を停止しするとともに2次転写ローラ66とベルトクリーニング手段67を非作用位置に移動する。そして、次の画像形成スタート信号の入力を待つ待機状態へ移行する。
【0063】
モノクロ画像形成モードの場合は、ブラック用の第4の現像器5dを用いた画像形成だけが行われる。コントローラ部100は1枚或いは連続複数枚のモノクロ画像形成ジョブが終了したら、画像形成装置を待機状態に戻して、次の画像形成スタート信号の入力を待つ。
【0064】
<現像器5の概略構成>
本実施例において、それぞれ現像手段である第1から第4の4つの現像器5a・5b・5c・5dは、収容させている現像剤(トナー)の色が互いに異なるだけで、構成は同一である。
【0065】
図6はポジションγにおける現像器5の拡大模式図である。現像器5は、トナーTを収容させた現像剤収容室として現像剤容器52と、ドラム1に形成された静電潜像を現像するための現像剤担持体としての現像ローラ53と、現像ローラ53に接触してトナーを供給する現像剤供給部材としての塗布ローラ54を有する。また、現像ローラ53上のトナー層を規制する現像剤層厚規制部材としての規制ブレード55と、現像ローラ53と現像剤容器52との隙間からのトナー漏れを防止する漏れ防止シール56を有する。
【0066】
現像剤容器52はドラム1の軸線方向を長手とする横長の容器である。この容器52の下部に容器長手方向に沿ってドラム1に対向する開口部を有する。現像ローラ53はこの開口部に位置させて容器長手方向に並行に配置され、容器長手方向の両側にそれぞれ取り付けられた軸受部材(不図示)を介して回転自在に容器52に支持されている。塗布ローラ54は、現像ローラ53のドラム対向側とは反対側において容器52内に現像ローラ53に並行に配置され、容器長手方向の両側にそれぞれ取り付けられた軸受部材(不図示)を介して回転自在に容器52に支持されている。
【0067】
本実施例において、現像ローラ53はΦ13であり、Φ8の導電性芯金(芯金部)53aの周囲に、シリコンゴムを基層28bとし、アクリル・ウレタン系ゴムを表面にコート28cした構成で、体積抵抗は10〜1012Ω・cmである。
【0068】
また、塗布ローラ54は、Φ6の導電性の芯金(芯金部)54aの周囲に連続気泡体からなるウレタンスポンジ層29bを設けた、Φ15のウレタンスポンジローラである。スポンジ層54bの体積抵抗は10〜1012Ω・cm程度である。塗布ローラ54は連続気泡体で構成されている。
【0069】
現像ローラ53の芯金53aと塗布ローラ54の芯金54a間の距離(中心間距離)は13mmであり、現像ローラ53の表面に対して、塗布ローラ54のウレタンのスポンジ層54bを1.0mm侵入させている。
【0070】
規制ブレード55は、先端部が現像ローラ53に摺擦して、現像ローラ53に塗布されたトナーを薄層にコーティングする、リン青銅、ウレタンゴム等でできた可撓性部材である。規制ブレード55はその基部が前記開口部の上縁部に固定されて容器52に配設されている。
【0071】
漏れ防止シール56は、先端部が現像ローラ53に接し、現像ローラ53の下方部と現像剤容器52との隙間を覆ってトナー漏れ防止する可撓性部材である。規制ブレード55はその基部が前記開口部の下縁部に固定されて容器52に配設されている。
【0072】
ドラム1に形成された静電潜像の現像器による現像は、ロータリ50の割り出し回転制御により所定の現像器5が、図1・図2のように、ドラム1に所定に対向したポジションγに移動されて行なわれる。
【0073】
本実施例においては、ポジションγにおける現像器5は、現像剤容器52の天面側が上向きで底面側が下向きの正立姿勢となってドラム1に対向している。そして、この現像器5aの現像ローラ53がドラム1に接触している。現像ローラ53はドラム1に接触した状態でドラム1に形成された静電潜像を現像する。所謂、接触現像方式を用いている。
【0074】
ポジションγにおける現像器5には、画像形成実行時に画像形成装置本体側の駆動手段(不図示)と電源部から駆動力と現像バイアスが入力される。現像ローラ53は図4において矢印R4の時計方向に所定の速度で回転駆動される。従って、現像ローラ53のドラム接触部における回転方向はドラム1の回転方向R1に対して順方向である。現像ローラ53の回転駆動速度は225mm/secとし、ドラム1の回転速度の1.5倍のスピードで回転駆動するものとする。また、現像ローラ53に接触して現像ローラ53にトナーを供給する塗布ローラ54は矢印R5の時計方向に所定の速度で回転駆動される。従って、塗布ローラ54の現像ローラ接触部における回転方向は現像ローラ53の回転方向R4に対して逆方向(カウンタ方向)である。
【0075】
回転する現像ローラ53の周上には回転する塗布ローラ54によってトナーが塗布され、塗布されたトナーが規制ブレード55により薄層にコーティングされる。そのトナー薄層が現像ローラ53の引き続く回転により現像位置γに搬送されてドラム1の面に適用される。また、現像ローラ53には現像バイアス電源部Vから−300Vの直流電圧が印加される。これにより、現像ローラ53の周上のトナー薄層がドラム面の静電潜像に対応して選択的にドラム面に転移する。これにより静電潜像がトナー像として現像される。静電潜像の現像に供されなかったトナーは現像ローラ53の引き続く回転により現像剤容器52内に戻し搬送される。そして、塗布ローラ54により現像ローラ53の面から除去されるとともに、現像ローラ53の面には再び塗布ローラ54によってトナーが塗布される。この動作が繰り返されて、ドラム面の静電潜像の現像が実行される。
【0076】
<感光体ユニットBの着脱>
次に、図2を用いて画像形成措置Aへの感光体ユニットBの着脱について説明する。
【0077】
なお、以下の説明において、感光体ユニットBに関する正面とは画像形成装置本体Aに対する挿入先端側の面(図2において左側の面)とは反対側の面(図2において右側の面)である。背面とは正面から見てその反対側の面である。左右とは正面から見て左右である。また、上面とは感光体ユニットBを画像形成装置本体Aに装着した状態で上方に位置する面であり、下面とは下方に位置する面である。また、画像形成装置Aに関して、正面とは開閉ドア(開閉カバー)10を配設した側である。左右とは正面から見て左右である。
【0078】
感光体ユニットBは、画像形成装置本体Aの開閉ドア10を、ヒンジ部11を中心に2点鎖線示のように開いて画像形成装置本体Aの内部を大きく開放することで着脱操作される。ドア10を開くと、装置本体A内のカートリッジ装着部12が見える。この装着部12の左右の壁部には、ドア10が開いた開口から見ると、後下がりのガイドレール(不図示)が見える。感光体ユニットBを装置本体Aに装着するときは、正面側を手で掴み、背面側を先にして、左右側をそれぞれ上記左右のガイドレールに係合させて、ガイドレールに沿って装着部12に差し入れる。感光体ユニットBを十分に挿入すると、感光体ユニットBは位置決め部材13に受け止められて所定の装着位置に保持されて、上面の露光開口部が、露光装置としてのレーザースキャナユニット3の折り返しミラー4に正対する。また、下面から露出した感光ドラム下面がベルト61に正対して当接した状態になる。そして、画像形成装置本体Aにドア17を閉じ込む。
【0079】
14は画像形成装置本体Aに配設したドアスイッチ(安全スイッチ、キルスイッチ)である。このドアスイッチ14は、ドア10が閉じられているときはドア10側に設けられた押子15で押されることでONに保持されていて、画像形成装置の電源回路(不図示)を閉成している。また、ドア10が開らかれているときは押子15が逃げることでOFFに保持されて、電源回路を開成している。即ち、ドアスイッチ14は、画像形成装置の開閉ドア10が開かれるとOFFし閉じられるとONする。
【0080】
感光体ユニットBが画像形成装置本体Aの所定位置に装着され、またドア10が閉じられることで、感光体ユニットBは画像形成装置本体A側と機械的・電気的に結合した状態になる。即ち、感光体ユニットB側の被駆動部材(ドラム1・現像手段5等)が装置本体A側の駆動機構(不図示)により駆動可能状態になる。また、感光体ユニットB側の各種センサ類(不図示)が画像形成装置本体A側のコントローラ100と電気的に連絡状態になる。また、感光体ユニットB側の帯電ローラ等に対して画像形成装置本体A側のバイアス印加電源部(不図示)から所定のバイアスを印加することが可能となる。
【0081】
感光体ユニットBの画像形成装置本体Aからの取り出しは、上記の装着の手順とは逆である。即ち、図1において、ドア10を開き、感光体ユニットBを右上方へ引き出すと、感光体ユニットBは前述の左右のガイドレールに案内されて装着部12から画像形成装置本体Aの外に出る。
【0082】
画像形成装置Aは、メイン電源スイッチ300aが投入(電源ON)され、感光体ユニットBが画像形成装置本体Aに装着され、ドアスイッチ14がONである状態になると、下述するシーケンスを経て画像形成可能な待機状態となる。
【0083】
<画像形成装置と感光体ドラムの駆動伝達>
本実施例における画像形成装置本体Aと感光体ユニットB間の駆動伝達手段(以下、カップリングと呼ぶ)の構成は従来技術の項で図9を用いて説明したものと同様の構成となっている。
【0084】
<感光体ユニットの新品検知>
本実施例の画像形成装置Aにおいては、画像形成装置A本体に装着された感光体ユニットBが新品であるか否かの判別を感光体ユニットBに具備した不揮発性の記憶手段(以下メモリとする)B2を用いて行う。感光体ユニットBの上面側(感光体ユニットBを画像形成装置A本体に装着したときの上側)には、メモリB2とメモリB2への情報の読み書きを制御するための感光体ユニットB側伝達部16とを有する。このメモリB2と伝達部16は基板上に一体化されて感光体ユニットBに配設されている。そして、感光体ユニットBが画像形成装置A本体に所定に装着された状態において、感光体ユニット側伝達部16が画像形成装置本体側の伝達部17に所定に対面して接触した状態になる。これにより、電源が投入されている状態(メイン電源スイッチ300a−ONおよびドアスイッチ14−ON状態)において、画像形成装置A本体側のコントローラ部100によるメモリB2のメモリ内容読込みと、メモリB2に対する情報の書き込みが可能となる。メモリB2としては、通常の半導体による電子的なメモリが特に制限なく使用することができる。本実施例においては、感光体ユニットB側伝達部16と画像形成装置A本体側伝達部17が接触してコントローラ100がメモリB2と読み出し/書き込みのデータ通信を行う場合であるが、非接触にしてデータ通信を電磁波によって行う場合もある。以上の構成で、コントローラ100によってメモリB2内の情報の読み出しおよび書き込みを行うための電気的回路が構成される。
【0085】
ここで、感光体ユニットBの個々の特性に応じた感光体ユニット特性値、プロセス条件を変更するためのパラメータ等が、工場出荷時にメモリB2に格納される。本実施例ではメモリB2に格納するパラメータ(記憶情報、検出情報)の一つとして、感光体ユニットBが新品であるかどうかを判断する情報(新品履歴情報)を入れている。そして、この情報を基にコントローラ100が、画像形成装置A本体に装着された感光体ユニットBについてそれが新品であるかどうかを判断する。
【0086】
画像形成装置A本体に装着された感光体ユニットBが新品であるかどうかの新品検知手段(判別手段)は、上記のようにメモリB2を用いた手段に限られるものではなく、新品が検知可能であればよい。例えば、感光体ユニットB内に具備されたヒューズのような電気回路構成でON/OFFを検知することにより新品であるかどうかの判別をする手段もある。
【0087】
<感光体ユニット初期化シーケンス>
画像形成装置Aは、メイン電源スイッチ300aが投入(電源ON)、感光体ユニットBが画像形成装置本体Aに装着され、かつ、ドア10が閉られてドアスイッチ14がONである状態で、電源回路が閉成されて動作可能状態に保持される。このとき、コントローラ部100は、駆動モータ(メインモータ:不図示)を所定の時間T1(例えば3〜4秒間)だけ作動させて初期化処理を行う初期化シーケンスを実効する。初期化シーケンスは、例えばドラム1のクリーニング処理やベルト61の静電的なクリーニング処理を行う。
【0088】
以下、感光体ユニットBの装着時に実行される初期化シーケンスについて図1を用いて説明する。
【0089】
画像形成装置Aは、メイン電源スイッチ300aが投入(電源ON)、感光体ユニットBが画像形成装置本体Aに装着、ドアスイッチ14がONである状態になると、電源回路が閉成されて画像形成装置は動作可能状態に保持される(S1)。このとき、コントローラ部100は、感光体ユニットBのメモリB2を読み出して(S2)、装着されている感光体ユニットBが未使用状態であるか否かを判別する(S3)。感光体ユニットBが未使用ではない(NO)場合、コントローラ部100は通常の初期化回転動作を行う(S4)。当該初期化回転動作は、新品時にも、非新品時にも入るシーケンスであり、画像形成前に行う画像形成準備シーケンスである。即ち、コントローラ部100は駆動モータ(メインモータ:不図示)を所定の時間T1(例えば3〜4秒)だけ作動させて、初期化処理(例えばドラム1のクリーニング処理やベルトの静電的なクリーニング処理)を行う。
【0090】
一方、S3において感光体ユニットBが未使用であると判断された場合(YES)、コントローラ部100は、上記の通常初期回転動作を行った(S4)後、そのまま後述する滑性除去シーケンスに移行する(S5)。この、滑性除去シーケンスにより、画像形成動作を行う前に感光体1表層の滑性成分を除去し、感光体ユニットBを画像形成装置A本体に挿入した際にドラム1上にできてしまった摺擦痕を消失させる。その後、コントローラ部100は、感光体ユニットBのメモリB2に使用が開始されたこと等の使用履歴情報が書き込まれた後(S6)、動作可能な待機状態へと遷移する(S7)。
【0091】
次に、図7を用いて上記の滑性除去シーケンスについて説明する。
【0092】
上記の通常初期回転動作から滑性除去シーケンスに移行する際、コントローラ部100はドラム1、現像ローラ53、ベルト61を駆動状態とする(S1)。帯電ローラ2には所定の帯電バイアスV1を、現像ローラには画像形成時と同様の現像バイアス−300Vを、1次転写ローラ62には通常の画像形成時とは逆極性の−400Vの一次転写バイアスを印加する(S2)。次にロータリー50の割り出し回転によりY色の現像器5aを現像位置γへと移動させ、現像ローラ53をドラム1に当接した状態とし(S3)、この状態を所定時間T2継続する。このとき現像ローラ53からドラム1に転移する現像剤は、1次転写ローラ62に画像形成時と逆極性のバイアス印加されているため、ドラム1に転移することはなく、そのままドラムクリーニング手段7へと回収される。このように、ドラム1に所定の帯電バイアスを印加しながら、現像ローラ53を回転して当接した状態で、所定時間両者を摺擦させる。そうすると、感光ドラム1上の滑性成分は、帯電バイアス印加による放電アタックおよび現像ローラ53との機械的摺擦の重畳作用により徐々に剥離される。その結果、ドラム1上の摺擦部と非摺擦部の摩擦抵抗μの差は緩和されていくのである。ここで、(S1)〜(S3)においてベルトクリーニング手段67はベルト61から退避した状態となっている。
【0093】
なお、本実施例では、滑性除去シーケンス前のドラムの摩擦抵抗μは0.40で、滑性除去シーケンス後の摩擦係数μは0.6〜1.0であった。滑性除去シーケンスの前後で、ドラムの摩擦抵抗μは0.2以上増化している。
【0094】
ここで、動摩擦係数μの測定は、常温常湿(25℃/50%RH)において新東科学(株)製のHEIDON−14を用いて行った。詳しくは、クリーニングブレード91を一定の荷重をかけた状態で感光ドラム6に接触設置する。そして、感光ドラム6を50rpmで回転駆動させたときに、感光ドラム1とクリーニングブレード91との間に働く摩擦力を、クリーニングブレード91側に取り付けた歪みゲージの歪み量として計測し、引っ張り荷重に換算した。
【0095】
動摩擦係数は感光ドラムが動いている時の〔感光ドラムに加わる力(g)〕/〔ブレードに加えた荷重(g)〕から求められる。使用ブレードは長手幅230mmのウレタンブレード(ゴム硬度67°)で、荷重100gでwith方向、角度27°にて測定した。
【0096】
その後、ロータリー50はY色の現像器5aを現像位置γから退避させて現像器5aを感光ドラム1と離間状態とする(S4)。そして、帯電・現像・1次転写バイアスをOFFして(S5)から、ベルトクリーニング手段67をベルト61に当接させて少なくとも1周以上ベルト61を回転させて(S3)においてベルト61に転移してしまったトナーを清掃する(S6)。ベルト清掃終了後、ドラム1、現像ローラ53、転写手段6の駆動を停止する。
【0097】
<実験結果>
次に、この画像形成装置Aを用いて行った実験1〜3の結果について説明する。
【0098】
実験1は未使用状態の感光ドラムユニットを画像形成装置Aに装着し、上記滑性除去シーケンス時間T2を振って初期回転シーケンスを行い、その後に採取したY色の全黒画像上に発生した雨降り画像のレベルを評価したものである。下表1に実験結果を示す。表1においてドラム回転周期の雨降り画像のランクを××、×、△、○の4段階に分けて評価した。それぞれのランクの意味は以下の通りである。
××:長さ1cm以上の縦スジが多数発生
× :長さ1cm以上の縦スジが少数発生
△ :長さ1cm以下の縦スジが少数発生
○ :縦スジ発生なし
【0099】
【表1】

【0100】
未使用感光体ユニットにおいて、滑性除去シーケンスを行わず(T2=0)に採取した画像サンプルでは、××ランクの雨降りが発生していた。しかし、T2時間を延長するに従って雨降りは良化し、T2=90secより長くした場合、雨降り画像が発生することはなかった。
【0101】
また実験2は、滑性除去シーケンス時に印加する帯電バイアスを実験1の値(画像形成時と同様の−1000V)から−100V高くし−1100Vとしたときの、実験1と同様の実験を行った結果である。このとき、雨降りが○となる滑性除去シーケンスの時間が実験1の90secから75secに短縮されている。これは、帯電バイアス印加時のドラム1に対する放電アタック効果が増したことによる効果であると考えられる。この結果、滑性除去シーケンス時の帯電印加バイアスを高くするほど雨降りが○となるまでの時間が短縮されることが分かる。
【0102】
また実験3は、滑性除去シーケンス時の現像ローラの周速を225mm/secから1.5倍速(338mm/sec)としたとき、実験1と同様の実験を行った結果である。このときもまた、雨降りが○となる滑性除去シーケンスの時間が実験1の90secから75secに短縮されている。これは、現像ローラ53がドラム1と摺擦しドラム1表面の滑性成分を機械的に剥離する効果が増したことによる効果であると考えられる。この結果、滑性除去シーケンス時の現像ローラ53の周速を高くするほど雨降りが○となるまでの時間が短縮されることが分かる。
【0103】
実験1〜3の結果より、通常ドラムユニットBが新品状態のときに発生するドラム1の回転周期で発生する雨降りは、上記の滑性除去シーケンスを行うことで抑制されることが分かる。そして、滑性除去シーケンスを行う際の帯電印加バイアスが大きいほどまたは、現像手段の駆動速度が速いほど、滑性除去シーケンスの時間を短縮可能であることが分かる。
【0104】
なお、本実施例では、駆動伝達手段であるカップリングの位相ズレによりドラム1の表面の滑性成分が部分的に剥離することを問題としたがこれに限られるものではない。カップリングの位相ズレ以外にも、ドラム1の表面の滑性成分が部分的に剥がれてしまう畏れがある場合は、本願発明が有効である。
【符号の説明】
【0105】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光手段
4 折り返しミラー
5 現像手段
6 転写手段
7 ドラムクリーニング手段
8 定着ユニット
100 コントローラ部(CPU)
200 ホスト装置
300 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表面層に滑性材料を含み回転可能な像担持体、を有し、画像形成装置本体に着脱可能な感光体ユニットと、
前記像担持体を帯電する帯電手段と、
前記感光体ユニットが未使用であることを検知可能な新品検知手段と、
現像剤を担持する現像剤担持体を前記像担持体に接触可能に設け、像担持体の潜像を現像する現像手段と、を有する画像形成装置において、
前記新品検知手段が前記感光体ユニットが新品であることを検知した場合は、
帯電手段で像担持体を帯電しながら、現像剤担持体を回転させながら前記像担持体に当接させる滑性除去シーケンスと、画像形成準備シーケンスを行い、
前記新品検知手段が前記感光体ユニットが新品でないと検知した場合は、画像形成準備シーケンスを行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記滑性除去シーケンスの時に帯電手段に印加される帯電バイアスは、画像形成時に帯電手段に印加される帯電バイアスよりも大きい値とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記滑性除去シーケンスの時の前記現像手段の回転速度は、
画像形成時の前記現像手段の回転速度よりも大きい値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記滑性除去シーケンスの前後で、前記像担持体の摩擦抵抗μが0.2以上増加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−217546(P2010−217546A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64677(P2009−64677)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】