画像形成装置
【課題】像担持体表面に均一塗付された潤滑剤を、使用条件に応じた、適切な潤滑剤入替え量とする事でクリーニングブレードの負荷を適正に維持することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】被清掃体である像担持体と、交流バイアスが印加される帯電手段と、該像担持体の表面を清掃する弾性ブレードからなるクリーニング手段を有する画像形成装置に於いて、像担持体には潤滑剤が供給され、潤滑剤の供給量が、帯電手段の放電電流量Idisと像担持体の面速度Vとから規定された量で供給されることを特徴とする画像形成装置。
【解決手段】被清掃体である像担持体と、交流バイアスが印加される帯電手段と、該像担持体の表面を清掃する弾性ブレードからなるクリーニング手段を有する画像形成装置に於いて、像担持体には潤滑剤が供給され、潤滑剤の供給量が、帯電手段の放電電流量Idisと像担持体の面速度Vとから規定された量で供給されることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な画像形成装置に於いては、帯電ローラー等の帯電手段により像担持体である電子写真感光体(感光体)を一様に帯電し、これに、像露光、例えば、レーザービームを照射して静電潜像を得ている。この潜像は、現像手段により、トナー像として反転現像又は正規現像されて顕像化される。このトナー像は転写ローラーなどの転写手段により静電的に記録媒体に転写された後に、加熱定着装置等の定着手段により熱と圧力が加えられて記録媒体に定着される。記録媒体に対するトナー像転写後の感光体の表面は、残留したトナーがクリーニング装置によって除去・清掃され、次の画像形成工程に備えられる。
トナー像転写後の感光体の表面から転写残トナーを除去するクリーニング方法としては、ポリウレタン等からなる弾性ブレード(クリーニングブレード)によるクリーニングが多く採用されている。
【0003】
市場に於いては、高画質、長寿命の画像形成装置が求められており、長寿命の観点から、安定した帯電付与のために、帯電手段に交流バイアスを印加するなどの手法が取られている。一方、像担持体である感光体は上記交流バイアスや、接触する部材による機械的な損耗を抑制する為に、アモルファスシリコン感光体(a−Si)や、表面保護層(OCL)を有する有機感光体(OCL−OPC)などの、耐磨耗性に優れた感光体が使用されている。
しかしながら、特に交流バイアスを印加する帯電方式は、帯電生成物が多量に発生して該像担持体に付着し、特に高湿環境下で画像がぼける、いわゆる画像流れが生じやすい。
画像流れを抑止し、また、像担持体の寿命も長期に維持する技術として、潤滑剤を像担持体に事前に塗付し、更にその単位面積あたりの塗布量や被覆率を規定する技術が提案されている(特許文献1、及び2)。
【0004】
また、弾性変形率が規定された被帯電体を使用し、帯電手段に付加するACバイアスの振幅(ピーク間電圧)Vpp、周波数f、像担持体の面速度v、及び放電閾値電圧Vthとしたときに、脂肪酸金属塩を、該脂肪酸金属塩の金属元素の検出量が1.52×10−4×(Vpp−2×Vth)×f/v以上となる量を供給する技術が提案されている(特許文献3)。
画像流れを抑制し、像担持体の寿命を長期に維持し、更にクリーニング手段の損耗も抑制する技術として、粒径が30〜500[nm]の無機微粒子を使用し、脂肪酸金属塩を、像担持体の表面粗さから規定される量以上で、該像担持体表面に供給する技術が提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、クリーニングブレードの接触角と100[%]モジュラスを規定し、該クリーニングブレードと像担持体の摩擦の上昇を抑制する技術が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、これらの画像形成装置に於いても、帯電均一性を向上させるために帯電手段に印加するVppを増加したり、生産性向上のために高速化したりすると、クリーニング不良やトナー固着といった画像欠陥が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−122870号広報
【特許文献2】特開2008−139804号広報
【特許文献3】特開2005−249901号広報
【特許文献4】特開2008−129401号広報
【特許文献5】特開2006−267299号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脂肪酸金属塩などの潤滑剤を像担持体表面に均一塗付する系では、該潤滑剤が、帯電手段などの放電を受ける事により劣化する。このため、摩擦が増加し、クリーニングブレード乃至は像担持体が損耗する場合がある。
従って、像担持体表面に塗付された潤滑剤は、放電被爆による劣化に応じて入替えを行い、劣化が過剰に進まないようにする事が重要である。
また、像担持体表面が同じ状態でも、面速度によりクリーニングブレードの負荷が異なり、ブレード寿命に影響が生じる。
本発明は、上述のごとき問題点を解決した画像形成装置を提供することを目的とする。即ち、像担持体表面に均一塗付された潤滑剤を、使用条件に応じた、適切な潤滑剤入替え量とする事でクリーニングブレードの負荷を適正に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き手段で達成される。
すなわち、像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置に於いて、該像担持体表面には、潤滑剤が供給され、下記の如き構成を有する。
(1) 該潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
であることを特徴とする。
(2) 前記像担持体表面には、更に無機微粒子が供給され、該無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下式を満たすことを特徴とする。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
(3) 前記像担持体の回転方向の、前記転写手段より下流で、且つ前記クリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を有することを特徴とする。
(4) 前記潤滑剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする。
(5) 前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする。
(6) 前記無機微粒子の個数平均一次粒径が、50[nm]以上300[nm]以下であることを特徴とする。
(7) 前記無機微粒子の比重の、前記潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])が、2以上5以下であることを特徴とする。
(8) 前記潤滑剤供給手段が、固形化された潤滑剤と、回動可能なブラシ状部材を備えた潤滑剤供給手段であることを特徴とする。
(9) 前記像担持体の磨耗速度が、0.3[μm/100k回転]以下であることを特徴とする。
(10)前記像担持体表面のRzが0.1[μm]以上1.0[μm]以下であることを特徴とする。
(11)前記弾性ブレードを構成する弾性部材の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下(すなわち、30[kgf/cm2]以上60[kgf/cm2]以下)であり、破断伸びが300[%]以上であることを特徴とする。
(12)前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧が可変であることを特徴とする。
(13)前記無機微粒子の供給手段が現像手段であることを特徴とする。
(14)前記像担持体の面速度が、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成により、簡易、小型な構成で、像担持体の表面に均一塗付される潤滑剤の過度の劣化を防止することができる。これによりクリーニングブレードが受ける負荷の増加や、クリーニングブレードの損耗を防止し、長期にわたって、安定した良好なクリーニング性が維持されて、画像流れ、トナー固着等の画像欠陥の発生が防止され、安定した画像特性が高水準に維持される。また、これらにより、メンテナンスの負荷を低減する事ができる。
具体的には、
(1)の構成により、潤滑剤の供給量を放電電流及び感光体の面速度から規定される好適な範囲とする事で、該潤滑剤の過剰な劣化の蓄積を押さえ、クリーニングブレードの損耗を防止し、良好なクリーニング性を維持する事ができる。
(2)の構成により、更に無機微粒子を、放電電流及び感光体の面速度から規定される好適な供給量で供給する事により、クリーニングブレード損耗やすり抜けが向上する。
(3)の構成によれば、転写手段より下流でクリーニング手段より上流の位置に潤滑剤供給手段を有する事で、フィルミングや依存が低減される。
(4)の構成によれば、潤滑剤が脂肪酸金属塩であると、塗延ばしや掻き取り性に優れ、また、表面層としての透明性も高く好適である。
(5)の構成により、潤滑剤をステアリン酸亜鉛とする事で、更にクリーニングブレードの損耗を抑制する事ができる。
(6)の構成により、無機微粒子の粒径を規定する事で、異音・すり抜けが抑制される。(7)の構成により、潤滑剤と無機微粒子の比重が規定された組合せで使用することで、クリーニングブレードの損耗が抑制される。
(8)の構成により、長期に安定して潤滑剤の供給制御をすることができる他、装置の小型化に有利である。
(9)の構成により、感光体の表面形状の変化が抑制され、すり抜けやフィルミングが向上する。
(10)の構成により、異音・振動が向上する。
(11)の構成により、異常な変形をし難くく、また変形をしても損耗に至り難いクリーニングブレードとする事で、該クリーニングブレードの損耗が抑制される。
(12)の構成により、すり抜けが向上する。
(13)の構成により、フィルミングや異音が抑制される。
(14)の構成により、上記の各構成で安定して摩擦特性を調整でき、クリーニングブレードの損耗を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図2】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図3】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図4】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図5】本発明のクリーニング装置の、設置状態の一例を示す図。
【図6】クリーニングブレードと像担持体の当接部の摩擦力を測定する装置の一例。
【図7】本発明にかかる、Idis×Vと潤滑剤量の好適な範囲を示す図。
【図8】本発明にかかる、Idis×Vと潤滑剤量の好適な範囲を示す図。
【図9】クリーニングブレードと像担持体の当接状態を説明する為のモデル図。
【図10】クリーニングブレードの損耗形状のモデル、及び評価の対象位置を説明する為の図。図10(a)はクリーニングブレードの損耗状態の一例、図10(b)は(a)の状態の時の、ブレード断面モデル図、図10(c)はクリーニングブレードの損耗状態の、別の例、図10(d)は(c)の状態の時の、ブレード断面モデル図。
【図11】帯電部位に於ける、帯電手段と像担持体の等価回路図。
【図12】交流電圧と放電電流の関係を示すモデル図。
【図13】本発明に掛る、無機微粒子の一例の電子顕微鏡(SEM)観察図。
【図14】本発明に掛る、像担持体の層構成を示すモデル図。
【図15】本発明の実施例で使用した原稿チャートの、説明の為の図。図15(a)は耐久で使用した原稿チャートの、説明の為の図。図15(b)は過酷運転で使用した原稿チャートの、説明の為の図。
【図16】本発明に掛る、感光体の面速度と動摩擦力の標準偏差の評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の画像形成装置は、像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置である。
(1)画像形成装置構成
図1に、本発明に掛る画像形成装置の概略を示す。
像担持体101は、回動可能なドラム型の電子写真感光体(以下、感光体と記す)であり、駆動機構(不図示)により、所定の面速度で矢印X方向に回転駆動される。感光体101は、OPC等の感光層をシリンダ状の導電性基体表面に塗布して形成される。
感光体101の周囲に、該像担持体を帯電する帯電手段102、不図示の潜像形成手段により付加される潜像形成信号103、現像手段104、転写手段105、弾性ブレードであるクリーニングブレード107からなるクリーニング手段106が配される。
なお、必要に応じて転写手段105より下流側、且つ帯電手段102より上流側で、除電手段(不図示)を配してもよい。該除電手段により、感光体101の画像形成時の電気的メモリーが消去される。また、該除電手段がクリーニング手段106より上流側に配される場合は、更に、転写残現像剤等の感光体101への静電付着力が低減される。
【0012】
(2)帯電手段
感光体101は、感光体101に接触、乃至は近接配置される帯電手段102により、一様に帯電される。帯電手段102には不図示のバイアス印加手段が付与され、帯電バイアスとして所定の交流電圧に所定の直流電圧を重畳した振動電圧が印加される(AC方式)。
帯電手段102はローラー型帯電部材(帯電ローラー102とも称する)として、感光体101の母線方向にほぼ並行に接触配置した。該帯電ローラー102は感光体101の回転に伴い、従動して回転する。帯電ロ−ラー102は、鉄、ステンレス鋼等の円筒或は円
柱状の導電性部材(芯金)と、この導電性部材の外回りにローラー状に形成した、体積固有抵抗1×104〜1×1012[Ω・cm]の抵抗層より構成される。また、抵抗層の表面を覆うようにして体積固有抵抗1×104〜1×1012[Ω・cm]の表面保護層を備えても良い。
帯電手段102は、上記のようなローラー型に限られず、ブレード型、ファーブラシ型、磁気ブラシ型であってもよい。また、接触帯電手段に限られず、帯電部材を感光体101の表面に対して数10〜数100[μm]程度の僅少な空隙部を存在させて非接触に対向配置する近接帯電手段であってもよい。
なお、本例に於いては、後述する現像手段104に対向する位置で、感光体101の暗部電位VDとして−700[V]となる様に帯電がなされる。
帯電ローラー102に印加する振動電圧のうち、交流電圧の周波数fは帯電によるスジ状画像(帯電モアレ)が生じないように、ピーク間電圧Vppは帯電安定性を向上させるために、また直流電圧は上記の暗部電位になるように、感光体101の面速度や除電手段の条件になどに応じて適宜調整される。
該Vppは、絶縁破壊が生じないレベルで、上記の条件に応じた閾値以上となる様に設定されるのが一般的である。
【0013】
(3)潜像形成信号
感光体101は、帯電手段102により均一帯電された後、画像情報に応じて潜像形成信号103により、潜像が形成される。潜像形成信号としてはレーザー光、LED光など、周知の信号を使用できる。
一般に、イメージ部を露光する、イメージ露光方式と反転現像とを組み合わせて使用されることが多く、本例に於いてもイメージ露光方式としている。また、後述する現像手段104の対向位置で、感光体101の明部電位VLとして−200[V]となるように潜像形成がなされる。
【0014】
(4)現像手段
現像手段104は、本例では、現像方式として現像剤は非磁性のネガトナーと磁性キャリアを混合したもの用いる、いわゆる非磁性2成分現像方式を用いる。
現像手段104内には、初期現像剤として非磁性トナーと磁性キャリアを、該トナーが8[質量%]となるように混合して投入している。
現像スリーブは非磁性で、固定のマグネットローラーを内包している。該現像スリーブにより搬送される現像剤は感光体101と所定の現像ニップで接触する。該現像スリーブは感光体101に対して150[%]の面速度で駆動し、現像バイアス電源(不図示)により所定の現像バイアスが印加される。本例では、現像バイアスは−450[V]の直流電圧とピーク間電圧1.5[kV]の交流電圧が印加される。周波数は感光体101の面速度に応じて適宜調整される。
【0015】
(5)転写手段
感光体101上のトナー像は、転写手段105で転写材Pに転写される。転写手段105にはトナーと反対極性のバイアスが印加され、本例ではポジ極性のバイアスが印加される。本例では、転写材Pとして、ベルト状の1次転写材(転写ベルト)を使用している。転写材Pは1次転写ベルトに限らず、転写ドラムなどであってもよいし、紙などの最終転写材でもよい。
【0016】
(6)クリーニング手段
転写後の感光体101表面はクリーニング手段106で、転写残現像剤や紙粉などの残留物が除去されて、次の画像形成工程に供される。
クリーニング手段106は、ポリウレタンゴムなどの弾性部材からなるクリーニングブレード107を有している。
クリーニングブレード107はポリウレタンゴムからなり、クリーニングブレード保持手段(不図示)により保持され、感光体101に所定の当接圧或いは進入量、及び設定角θで当接される。クリーニングブレード107のゴム硬度としては50〜85[°](JIS A)が好ましい、より好ましくは、60〜80[°]である。
上記当接圧は、9.8〜78.4[N/m](10〜80[g/cm])が好ましい。クリーニングブレード107の当接圧が9.8[N/m]未満である場合、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生しやすくなり、また、78.4[N/m]を超える場合、クリーニングブレード107が振動したり、異音(びびり音)が生じたり、クリーニングブレード107乃至は感光体101の損耗により満足な耐久性が得られにくくなる。
上記設定角θは20〜40[°]が好ましい。設定角θが20[°]未満であるとトナーのすり抜けが生じやすくなり、40[°]を超える場合、クリーニングブレード107の捲れなどが生じ易くなる。
本例では、クリーニングブレード107は、厚さ2[mm]の板状ブレードを板金に固定し、該板金を感光体101にバネ加圧で当接させる方式とした。クリーニングブレード、及びその保持方法はこれに限らず、板金の先端部に一体的に保持された、いわゆるチップブレードでもよいし、所定の侵入量で固定して当接しても良い。また、必要に応じてイコライズ機構やレシプロ機構などを付加してもよい。
【0017】
また、潤滑剤は主にクリーニングブレード107と感光体101の当接部で塗り伸ばされる。また、一部は該クリーニングブレード107により掻き取られる。そのため、クリーニングブレード107は形状変化が少なく、掻き取り能力が高いことが好ましい。
一方、クリーニングブレードの損耗は、局所的な摩擦の増加、或いは異物や異常な負荷により、クリーニングブレードが感光体との当接部で急激に引っ張られて生じると考えられる。特に、本発明の如く潤滑剤の量を制御し、放電等で劣化した潤滑剤と新しい潤滑剤の入替えを行う場合や、更に無機微粒子を供給して、該潤滑剤を攪拌、掻き取するなどして、入替えを行う場合、長手方向で局所的に摩擦特性が不均一になる場合がある。従って、該クリーニングブレードは変形しにくく、仮に変形しても裂けたり切断されたりなどといった破断に対する強度を有していることが好ましい。但し、クリーニング性を阻害しない範囲である事はいうまでも無い。
【0018】
ここで、前記弾性ブレード(クリーニングブレード)を構成する弾性部材(ゴム)の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下(すなわち、30≦100%モジュラス≦60[kgf/cm2])であり、弾性部材(ゴム)の破断伸びが、300[%]以上420[%]以下の範囲とする事で、潤滑剤による被服膜の状態を好適に維持すると共に、該クリーニングブレードの損耗を抑制でき好ましい。
上記100%モジュラスは、弾性部材(ゴム)を100%伸ばすのに必要な力で、クリーニングブレード107を感光体101に当接したときの、加圧による変形に対する耐性の指標である。100%モジュラスが2940kN/m2(30kgf/cm2)以上であることで、クリーニングブレードの当接部形状の変化や、局所的な負荷が生じた場合の極端な変形や、捲れを抑制できる。一方、5880kN/m2(60kgf/cm2)を超える場合、感光体101の表面形状などへの追従性が低下し、クリーニング不良が生じ易くなる場合がある。
一方、破断伸びは、ゴムを引っ張り伸ばしたときの引き裂きが生じるまでに伸びる長さである。破断伸びが300[%]以上のゴム物性を有することで、局所的な変形が生じても、損耗に到らず、クリーニング性を維持するのに有効である。破断伸びが大きい場合は、感光体に対する追従性、即ち密着性が増すことで摩擦カが増大し、結果としてクリーニングブレードの磨耗が増大し易くなる場合がある。このため、破断伸びは450[%]以下が好ましい。更には420[%]以下であると、該クリーニングブレードと感光体が当接する部位の先端くさび形状が維持され、結果として潤滑剤による被服膜の状態を好適に維持でき好ましい。
上記弾性部材(ゴム)の100%モジュラス、及び破断伸びは、JIS K6251に準じて測定される値である。JIS規格に準拠する市販の装置で測定できるが、具体的にはオートグラフ(島津製作所製)で、試験片はダンベル状試験片の3号形を用いて測定した。
【0019】
クリーニング手段106には、クリーニングブレード107の他に、回動可能なブラシ状部材(以下、クリーニングブラシと称する)108、固形化された潤滑剤または潤滑剤溜まり109、フリッカー111、廃トナー搬送手段112を有してもよい。すなわち、クリーニング手段106は、該固形化された潤滑剤または潤滑剤溜まり、及び該回動可能なブラシ状部材を備えた、潤滑剤を供給するための潤滑剤供給手段を備えてもよい。該潤滑剤供給手段は、クリーニング手段106内に設けられても、クリーニング手段106とは別に設けられてもよい。しかしながら、当該潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段は、像担持体の回転方向の、転写手段より下流で、且つクリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に設けられることが好ましい。また、上記潤滑剤は、固形化された潤滑剤であることが好ましい。
【0020】
一方、クリーニングブラシ108は、感光体101の進行方向で、転写手段105より下流側に配設する。ブラシ繊維としては、レーヨン、アクリル、ポリエステル等が好適に用いられ、カーボンや金属粉を含ませる等して導電性を付与してもよい。ブラシ部は、感光体表面及び転写残トナーに均一に接触できるように、太さとしては3.33[Tex](30[デニール])以下、密度としては1550〜77500[本/cm2](1〜50[万本/inch2])程度が好ましい。またクリーニングブラシ108は駆動手段(不図示)により感光体101と相対速度差を持って駆動され、後述する潤滑剤を感光体101に塗布する他、クリーニングブレード107によるクリーニングの補助としても寄与する。
該クリーニングブラシ108が感光体101に当接する際の侵入量や駆動速度は、該クリーニングブラシ108の繊維の条件や、感光体101の条件などにもよるが、侵入量は3[mm]以下が好ましく使用される。侵入量が大きすぎると、感光体101若しくはクリーニングブラシ108の繊維が損耗しやすくなる場合がある。更に、0.5[mm]以上であると、感光体101との接触により異物除去にも寄与し好ましい。
駆動速度は、感光体との相対速度の差が、感光体101の面速度に対して5〜20[%]程度が好ましい。5[%]未満の速度差がほとんどない状態では、クリーニングブラシ108による摺擦や、潤滑剤109の供給が不均一になりやすくなる。一方、20[%]を越える場合にはクリーニングブラシ108と感光体101の当接部での負荷が過剰になり、クリーニングブラシ108乃至は感光体101の損耗が生じやすくなる場合がある。
クリーニングブラシ108には、固形潤滑剤(固形化された潤滑剤のブロック体)109を接触させて配設してある。110は固形潤滑剤109をクリーニングブラシ108に対して常時所定の押圧力で接触させる付勢手段である。
前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧を可変とすることで、ブラシ部材の当接圧による潤滑剤の供給量の制御が可能となり、潤滑剤を安定して長期に供給することが可能になるため、クリーニング性を長期に維持する上で好ましい。
【0021】
固形化された潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛を鉛筆硬度HB〜B相当で、ブロック状に成型したものを使用した。軟らかすぎると供給手段の当接状態などにより、局所的に供給過多になったり、粉体塊で感光体101表面に供給されたりして、クリーニング不良が生じる場合がある。また固形化した潤滑剤の消費量が増大し、ユニットとしての満足な耐久性が得られなくなる。一方、固すぎると均一な供給がされにくく、均一な皮膜形成がされ難くなる。また削り取るためのブラシも硬くする必要が生じ、感光体101の損耗につながる場合がある。
【0022】
フリッカー111はクリーニングブラシ108に付着した異物の除去を行うものである。また、設置する位置や角度により、固形化された潤滑剤を書き取るための先端力の付与にも寄与する。該フリッカー111としては、公知のものを使用できる。
クリーニングブレード107やクリーニングブラシ108等で除去された異物や、過剰な潤滑剤などは、必要に応じて設けられる廃トナー搬送手段112により、廃トナー容器(不図示)へと排出される。本例では廃トナーを排出する機構を示しているが、これに限らず廃トナーをクリーニング手段106内に収容し、クリーニング手段ごと交換するカートリッジ方式でもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
クリーニングブレード107の損耗は、一般に図10(a)の斜線部ように、クリーニングブレードの断面方法に於いてえぐれた形状や、図10(c)の様にエッジ部が欠けた形状などになる事が多い。いわゆる欠けも、断面は上記のいずれかに大別できる。図10(b)、図10(d)の様に、クリーニングブレード損耗の深さD[μm]、巾W[μm]とした。D、及びWを測定し、その積DW[μm2]を損耗の指標とした。
該D、及びWは3Dレーザ顕微鏡(VK−8700:(株)キーエンス製)を用いてクリーニングブレード107の107a方向、107b方向から観測、及び測定を行って求めた。対物レンズは損耗の大きさにも拠るが50乃至は20[倍]、深度0.1[μm]ステップで観測を行った。
【0024】
(7)潤滑剤
潤滑剤は、クリーニングブレード107と感光帯101とのニップ部で容易に引き伸ばされて感光体上に薄い膜を成形して、クリーニングブレードによるクリーニング性能を向上させる。また、トナー外添剤によるフィルミングやトナー固着を防止する。さらに、感光体表面を放電ダメージから守るなどにより、画像流れ防止に効果がある。
潤滑剤は、クリーニングブレードによるクリーニング性能を向上させると共に、帯電手段で発生する帯電生成物が感光体表面に直接付着するのを防止するため、感光体表面に実質的に全域に塗り伸ばされる必要がある。また、潤滑剤は帯電生成物が付着し、高湿環境下では、感光体の表面と同様に低抵抗化するため、適宜除去される必要がある。更に感光体の最表面に塗布されることから、像露光や除電光などの光を透過させる透光性、また、帯電、現像、転写、クリーニングの各行程を阻害しないことも必要である。よって、潤滑剤には、いわゆる使い捨ての表面層として、容易に被膜を生成できること(柔らかくて塗り伸ばしやすい)、掻き取り易さ、被膜の透明性、及び適宜な抵抗を有することが求められる。
これらの物性から、潤滑剤としては、粉末状、粉末状潤滑剤が固形化されたブロック体、或いは液状である、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂、シリコーンオイル等があげられる。中でも、高級脂肪酸金属塩(いわゆる金属石鹸)、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等が好適に用いられる。特にステアリン酸亜鉛は、上記の各特性に優れ、またブロック体への加工容易性も優れて好ましい。
また、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルを主成分とするワックスも好適に用いられる。
潤滑剤を感光体101表面に供給する手段としては、上述のクリーニング装置内に潤滑剤供給手段を設ける方法の他、所定の粒径の潤滑剤を現像剤に外添する等の方法も用いることが可能である。その際にも、潤滑剤は紛体状のみならず、所定形状に成形して使用してもよい。
【0025】
(8)無機微粒子(研磨剤)
上記潤滑剤に、無機微粒子を併用すると、該無機微粒子が被爆した潤滑剤被膜を摺擦研磨するとともに、新しく供給される潤滑剤を撹拌する等して、潤滑剤の均一塗布、入れ替えが好適に促進され好ましい。
無機微粒子は硬度が高く優れた研磨性能を持つ物が好ましく、例えばチタン酸ストロンチ
ウム、チタン酸バリウム、及びチタン酸カルシウム等が用いられる。
なかでも、該無機微粒子を、粒子形状が立方体状及び/又は直方体状にすることで、特に優れた研磨作用を発揮する。これは、粒子形状が立方体状及び/又は直方体状であることで、対象物との接触面積を大きくすることができ、また立方体状又は直方体状の稜線が対象物に当接することで、良好な掻き取り性を得ることができるためだと考えられる。
【0026】
更に、上記無機微粒子の1次粒子の個数平均粒径(すなわち、無機微粒子の個数平均一次粒径)が、50[nm]以上300[nm]以下であることが、上記研磨効果に優れることから好ましい。また、この個数平均1次粒径の無機微粒子は上記当接部を微量ずつすり抜け、クリーニングブレード107と感光体101の当接部に潤滑効果をも寄与する。 上記無機微粒子の個数平均一次粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定して、その平均を求めた。当該粒径は、1次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2として求めた。
上記個数平均一次粒径が30[nm]未満では当該無機微粒子の研磨効果が不十分であり、一方、300[nm]を超えると感光体のキズが生じたり、或いはクリーニングブレードの損耗が増加する場合がある。
感光体101の表面に対する上記の無機微粒子を供給する手段としては、クリーニング手段106内に無機微粉体供給手段を設ける方法以外にも、例えば現像剤に外添する方法(すなわち、無機微粒子の供給手段が現像手段である。)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
無機微粒子を現像剤に添加する場合は、現像濃度や転写性などの,いわゆる現像剤としての機能の観点から、トナー粒子に対する遊離率は20[体積%]以下となるような量、及び/又は強度で添加されていることが好ましく、15[体積%]以下が更に好ましい。ここで遊離率とは、トナー粒子から遊離したペロブスカイト型結晶無機微粒子の割合を体積%で求めたものであり、パーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)により公知の原理(例えば、Japan Hardcopy 97論文集 65〜68頁
(発行者:電子写真学会、発行日:1997年7月9日))で測定されたものである。
また、必要に応じて無機微粒子の抵抗を調整することも好ましい。抵抗調整は製造した該無機微粒子のコア粒子に、酸化度が制御された酸化錫をコートするなどの、公知の方法により制御する事ができる。該無機微粒子の抵抗は、錠剤法により測定し正規化することにより求めることができる。例えば、底面積2.26[cm2]の円筒内に0.5[g]の粉体試料を入れ、上下電極に147N(15[kgf])の加圧を行うと同時に100[V]及び500[V]の電圧を印加して、各々の抵抗値を計測、その後正規化することにより体積抵抗率を算出することができる。
なお、無機微粒子の比重の、潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])は、2以上5以下であることが好ましい。当該比の値を特定の範囲とすることで、無機微粒子が潤滑剤の微粒子の集合体或いは被膜を好適に押しのけ、クリーニングブレード107と感光体101の当接部まで達し、潤滑剤の掻き取りに好適に作用するものと考えられる。
【0027】
(9)像担持体
像担持体101は、周知の感光体を使用することができるが、磨耗量が少ないと、その表面形状が長期に渡り維持され、上記各種無機微粒子などの、すり抜け状態の耐久変動が少なくなるので好ましい。
磨耗量の制御は、クリーニング設定や、帯電手段の設定、上述の潤滑剤の使用などといった、画像形成装置のシステムで行う事もできる。また、耐磨耗性に優れた像担持体を使用すると、同じシステムでも表面形状がより好適に維持され有効である。
耐磨耗性に優れた像担持体として、公知の電子線や光、熱等により硬化された、硬化型表面保護層を有する有機感光体(OCL−OPCと称する)や、アモルファスシリコン系(
a−Siと称する)の感光体等が好ましく使用できる。
また、感光体101の表面形状のRzが大きすぎると、潤滑剤の塗布・被膜化が不均一になったり、クリーニングブレード、無機微粒子やクリーニングブラシによる劣化した潤滑剤の掻き取りや摺擦が不均一になりやすくなったりする場合がある。一方、Rzが小さすぎるとトナー粒子や外添剤が像担持体に付着しフィルミングなどが生じ易くなる場合がある。更にトナーが固着し、画像欠陥になる場合がある。クリーニング手段の構成や使用条件などにもよるが、上記観点より、像担持体の表面粗さRzは0.1[μm]以上1.0[μm]以下が好ましい。該Rzは初期から耐久を通じて上記範囲にあることが好ましい。
像担持体101の表面形状は、成膜後の感光体表面を周方向に市販の研磨テープを使用して研磨処理を施して調整した。
尚、像担持体101の磨耗速度は、0.3[μm/100k回転]以下であると、像担持体の表面形状Rzの変化を抑え、すり抜けやフィルミングの向上を図れることから好ましい。当該像担持体101の磨耗速度[μm/100k回転]は、後述する実施例の耐久の前後で渦電流式の膜厚計(Ficherscope GROUNDEINHEIT MMS 3AM:Ficher製)にて膜厚を測定し、100k回転当りの磨耗量[μm]を算出した。
像担持体101の表面形状Rzは、JISB0601:1994で規定されるRzである。測定は表面粗さ測定器(SURFPAK−SV4000S4:ミツトヨ製)を用い、測定長2.50[mm]、測定回数5[回]、高さ方向フルスケールで8[μm]、フィルターはGaussian、λc=0.25、λs=0.008、測定速度=0.1[mm/sec]で、JIS1994 RLS_JISモードで、長手方向にスキャンして測定した。膜厚、表面形状共に、周方向8点、長手5点の、計40点について測定を行い、平均値をもって各々の値とした。
なお、像担持体101の表面形状は、上述したような周方向の研磨処理の他にも、研磨の方向を変えたり、ブラスト処理する等の公知の方法で調整することもできる。その場合は長手方向だけでなく周方向にも表面形状の測定を行い、Rzが上記の範囲であることが好ましい。
【0028】
(10)現像剤
現像剤は、少なくともトナー粒子と外添剤を含む。更に、本例のごとく2成分現像剤の場合には、外添剤を付与されたトナー粒子(以下、単にトナーと称する)と、キャリア粒子を有する。これらトナー及びキャリア粒子には、公知のものを用いることができる。
トナー粒子は、高画質化、及びクリーニング性などの観点から、質量平均粒径が4乃至12[μm]が好ましく使用される。また、転写性などの画質面から、該トナー粒子の平均円形度は0.930以上が好ましい。一方、0.980以下であると、クリーニングされやすい。また、トナー粒子ごとに異なる方向へ回転負荷を受けやすく、クリーニング部でトナー粒子が拡散されやすい。潤滑剤、乃至は無機微粒子をトナー粒子に外添して使用する際には、トナー粒子の拡散に伴いこれらの粒子も拡散が促進され、長手方向での均一性も向上するので好ましい。
【0029】
(11)クリーニングブレード損耗
ここで、本発明の定性的な説明を行う。
本発明者らは検討の結果、該クリーニングブレード107が動作時に受ける負荷のばらつきが、クリーニング不良、特にびびりや、めくれ、またクリーニングブレード107の損耗に相関があることを見出した。
図9を用いて説明する。クリーニングブレード107は、感光体101に所定の当接圧で当接する(a)。クリーニング動作中、すなわち感光体101が駆動されると、該クリーニングブレード107は、感光体101との当接部で、感光体101の表面に引きずられるようにX方向に負荷を受けて歪む(b)。ある程度歪が生じると、クリーニングブレー
ド107の弾性により元の状態(a)に戻ろうする。この繰返しでクリーニングブレード107はエッジ部、乃至は感光体進行方向で上流側に対抗する面に負荷を受け、えぐれやエッジ部欠けなどの、いわゆるクリーニングブレード損耗が生じる。
また、転写残留物や感光体101の表面状態などにより、不均一に局所的な負荷がかかる場合がある。この場合、当接部位が局所的・瞬間的に感光体101に引きずられるように変形し、スティックスリップなどで復元する動作が繰り返される。この時のクリーニングブレードの受ける負荷は、感光体表面の潤滑剤の状態で変化する。
前述のごとく、感光体表面に保護膜として潤滑剤膜を形成した系において、放電を伴う帯電により、感光体表面に供給される潤滑剤は消失しないレベルであっても、摩擦が増加する。これは潤滑剤が感光体101の保護膜として放電被爆することで劣化するためと考えられる。そして摩擦が増加した状態では、クリーニング不良が生じたり、クリーニングブレード107の損耗が生じやすくなる。この劣化度合いは放電電流Idisに依存し、Idisが大きいほど潤滑剤被膜の劣化も促進される。そのためIdisに応じて、放電被爆し劣化した潤滑剤を、未劣化の新しい潤滑剤に入れ替える必要がある。
【0030】
また、上記のようなクリーニングブレードの挙動は感光体101の面速度Vにも依存し、感光体101の表面の表面状態やクリーニングブレード107の当接条件が同じであっても、感光体面速度Vが増加すると、クリーニングブレード107と感光体101の、動摩擦力の標準偏差が増加する。すなわち、局所的、或いは瞬間的に、異常に大きい摩擦力がクリーニングブレード107乃至は感光体101にかかる。
そのため、感光体面速度Vに応じて、よりクリーニングブレード107の負荷を低減する必要がある。即ち、感光体面速度Vが大きいほど、劣化がより少ない状態で潤滑剤の入れ替えを行う必要がある。
クリーニングブレード107の物性などにもよるが、IdisやVが大きくなり、その結果、動摩擦力の標準偏差がある程度上大きくなると、急激にクリーニング不良やクリーニングブレードの損耗が増大する。
【0031】
本発明者らの検討の結果、Idis×Vが0.1以下のときと、0.1を越えるときで、クリーニングブレードの損耗の傾向が変化し、潤滑剤や無機微粒子の供給に必要な量が異なることを見出した。
すなわち、潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすことことで、使用条件に応じた、適切な潤滑剤入替え量に調整が可能となる。結果、クリーニングブレードの負荷を適正に維持でき、クリーニング不良やクリーニングブレードの損耗の低減が可能となることを見出した。
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
また、Idis×Vの範囲は、0.1以上0.7以下が好ましい。より好ましくは0.125以上0.625以下である。
Idis×Vが0.7より大きいと、潤滑剤の放電被爆劣化が早く、入れ替えに要する量が増加し、装置の大型化、複雑化を招く場合がある。また、現像剤に外添する場合も多量となり、現像手段内で遊離したりして、現像剤の帯電特性などの現像性が低下する場合がある。一方、0.1より小さい場合は、帯電が不均一になる場合がある。
なお、潤滑剤の供給量は、固形化潤滑剤を部材で供給する場合は、耐刷試験前後の該潤滑剤の重量を測定し、像担持体の総回転量から、単位面積当たりの使用量を算出し、供給量Mzとした。
また、現像剤に外添して供給する場合は、転写効率、及びクリーニング装置内の現像剤の
潤滑剤含有率を測定し、耐刷に於いて現像された現像剤量から、供給された潤滑剤の質量を算出し、像担持体の総回転量からMzを求めた。
上記の転写効率は、像担持体上の現像剤の質量を、転写前後で測定し、その比から求めた。また、潤滑剤の含有率は蛍光X線で測定した。
像担持体の面速度は、像担持体の外径と、回転速度を測定して求めた。
一方、放電電流量Idis[mA/m]の算出方法は後述する。
また、無機微粒子は、潤滑剤の攪拌、劣化した潤滑剤の除去、クリーニングブレードの潤滑に寄与しクリーニングブレードの負荷を低減することができる。該無機微粒子はクリーニングブレードを微量ずつすり抜けたり、クリーニング部などで感光体表面から離脱したりするため、やはり同じように放電電流Idisや感光体面速度Vに応じて供給することが必要である。
すなわち、無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(3)及び(4)を満たすことで、クリーニングブレードの損耗の低減、及びクリーニングブレードのすり抜けの低減が可能となることを見出した。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
また、Idis×Vは、0.1以上0.7以下が好ましい。より好ましくは0.125以上0.625以下である。Idis×Vが0.7より大きいと、潤滑剤の放電被爆劣化が早く、入れ替えに要する量が増加し、装置の大型化、複雑化を招く場合がある。また、現像剤に外添する場合も多量となり、現像手段内で遊離したりして、現像剤の帯電特性などの現像性が低下する場合がある。一方、0.1より小さい場合は、帯電が不均一になる場合がある。
なお、上記無機微粒子の供給量(Ms[mg/m2])は上述のMzと同様の方法で測定される。
ここで、上記式(1)〜(4)を定性的に説明する。
上記式(1)は、クリーニングブレードが受ける負荷を抑制し、振動や異音、クリーニングブレードの損耗などを防止するための好適な範囲を示すものである。また上記式(3)は潤滑剤の攪拌、入れ替え促進するための無機微粒子の好適な量を示す。
Idis×Vに対して変局点を有する理由は定かではないが、放電被爆が増加し、潤滑剤の摩擦特性が悪化する他、クリーニングブレードと像担持体との当接部が、該像担持体に引きずられて大きくなり、相乗的にクリーニングブレードの負荷が増大するためと考えられる。
一方、上記式(2)により、多量の潤滑剤が常時供給されることで該潤滑剤の量が過剰になり擦り抜けが生じるのを、抑止できる。また上記式(4)により、無機微粒子の供給を所定量以下に抑制することで、更にすり抜けを改善できる。
該無機微粒子が局在的に過多になったり、潤滑剤皮膜の掻き取りのムラが大きくなったりすることによる、クリーニングブレード長手方向での負荷のムラを抑制し、均一な掻き取りや攪拌が促進されるためと考えられる。
【0032】
(12)放電電流Idis
帯電ローラー102から感光体101に流れる放電電流Idisについて説明する。
前述のように、帯電ローラー102には正弦波交流バイアスに直流バイアスを重畳したAC方式の帯電バイアスが印加されている。
帯電ローラー102と感光体101と間のインピーダンスZcは、図11の等価回路によって表されると考えてよい。Rcは帯電ローラー102の抵抗、Ccは帯電ローラー102の静電容量、Cdは感光体101の静電容量、Cairは帯電ローラー102と感光体
101と間の微小エアギャップ(放電ギャップ)の静電容量である。
放電が起きていない場合は、インピーダンスZcに従って、印加交流電圧Vac(振幅;Vpp)と帯電交流電流Iacの間には以下の関係が成立している。
Iac=Iz ; Iz=α・Vac、 α=1/(√2・Zc)・・・(5)
しかしながら、放電が起きているとき、即ち、
Vac(Vpp)≧2×Vth(V) Vth:放電開始電圧 ・・・(6)
のときは、図12のグラフに示すように、上記の関係からはずれ、Iac≧Izとなる(Izは図12の放電領域での破線部)。本例の説明では、このIacとIzの差Idisを放電電流量と規定する。
放電が起きているときには電気的な過渡現象を含むため、理論的に放電電流量Idisを求めることは難しい。更には、放電電流量Idisは、温湿度や帯電ローラー102の当接条件、物性、現像剤等による汚れなどに影響されやすく常に一定ではない。よって、放電電流量Idisは印字動作毎に、もしくは一定時間毎に求める必要がある。
放電電流量Idisは、以下の式(1)によって算出する。
Idis=Iac−α・Vac ・・・(7)
上記の比例定数αは未放電状態のIac、Vacから求める。放電開始電圧Vth×2(V)未満のピーク間電圧Vppに対して電流Iacの比をαとしたとき、放電による電流以外の、接触部へ流れる電流(以下、ニップ電流)などの交流電流はα・Vppとなる。そして、放電開始電圧Vth×2(V)以上の電圧印加時に測定されるIacと、このα・Vppの差分が放電電流である。
本実施形態では、放電電流量Idisが一定となるように制御している。以下にこの制御方法を述べる。
放電電流量Idisは、一定電圧又は一定電流での制御下で帯電を行った場合、環境、耐久を進めるにつれ変化する。これは、Vppと放電電流量Idisの関係、交流電流値と放電電流量Idisとの関係が変動しているからである。
AC定電流制御方式では帯電ローラー102から被帯電体である感光体101に流れる総電流Iacで、AC定電圧制御方式では帯電ローラー102に印加するAC電圧(Vpp)で、おのおの制御している。そのため、実際に、放電電流量は制御できていない。たとえば帯電ローラー102の材質の環境変動によって、ニップ電流が多くなれば当然放電電流量は減り、ニップ電流が減れば放電電流量は増える。そのため、上記の制御方式でも完全に放電電流量の増減を抑制することは不可能であった。
本発明者らは、所望の放電電流値Idisを常時得るために、以下の要領で制御を行う。本発明の画像形成装置はコントローラ(不図示)及び電流検出手段(不図示)を有している。これらと電源(不図示)により、非画像形成時(紙間、或いはプリント前回転時、プリント後回転時)に、未放電領域の交流電圧(Vpp)を1点、放電領域では交流電圧を2点以上印加し、そのときの総電流Iacを測定する。
該コントローラは、未放電領域として交流電圧0の点(Vpp=0ではIacもIdisも0)と、放電領域の複数の交流電圧で、電流Iacを測定し、各電圧と電流値から近似処理を行い、所望の放電電流Idisに対応する印加電圧Vppを算出し、電源から帯電ローラー102に印加される。電流制御方式の場合には、電流検出手段の替りに電圧検出手段として、未放電領域、及び放電領域のIacを各々印加し、上述の要領で所望のIdisに対応するIacを求めて、印加するようにすればよい。
連続で画像形成を行う場合には、画像形成間で上記の動作を行うことで、安定したIdisを得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明するが、本発明は本実験例に何ら制限されるものではなく、本発明の構成要素を満たす物であれば、他の手段を用いても良い。また、特に示していないが、像担持体である感光体やクリーニングブレードなどの各ユニットが個別に画像形成装置本体に設置されるものであっても良いし、感光体、帯電手段、現像手
段、クリーニング手段の2つ以上が一体化されたカートリッジであってもよい。
【0034】
<無機微粒子の製造例>
酸化アルミニウム(アルミナ)は、公知の気相酸化法や、遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を用いて、所定のガス中で焼成する方法によって得る事ができる。ここでは、気相酸化法でアルミナ微粒子を作成し、該微粒子を電子顕微鏡(SEM)で観測し、個数平均一次粒径を測定した。個数平均一次粒径は400[nm]であった。該粒子を機械式粉砕の条件を変更して、50〜300[nm]の、粒径の異なるアルミナ微粒子を得た。その他、バイヤー法(湿式アルカリ法)等によっても得る事ができる。
また、チタン酸ストロンチウムは、四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加することにより加水分解して得られた含水酸化チタンを純水で洗浄し、該含水酸化チタンのスラリーに含水酸化チタンに対するSO3として0.26[%]の硫酸を添加した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.58に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを5.0に調整し、上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで洗浄を繰り返した。該含水酸化チタンに対し、0.9倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製の反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、SrTiO3換算で0.6[mol/リットル]になるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを60℃まで6.7[℃/時間]で昇温し、60[℃]に到達してから6時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後、純水で洗浄を繰り返し、その後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを乾燥し、焼結工程を経由していないチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
これらの微粒子を電子顕微鏡(SEM)で観測し、個数平均一次粒径を測定した。SEM観測例を図13に示す。当該微粒子は、立方体状乃至は直方体状の結晶構造を有し、個数平均一次粒径が150[nm]であった。
上記製造条件の、pH、Sr(OH)2・8H2Oの量、昇温条件等を調整することで異なる粒径のチタン酸ストロンチウムを得る事ができる。
この他に、シリカ微粒子も周知の製造方法にて平均粒径50[nm]のシリカ微粒子を得た。
【0035】
<像担持体製造例>
図14は本例における像担持体である感光体101の層構成模型図である。この感光体101は、支持体101aの上に、感光層として電荷発生層101dと電荷輸送層101eが順に設けており、更に磨耗レートの小さい(機械的強度が高い)感光体には最表面に表面保護層101fを設けている。また、支持体101aと電荷発生層101dの間に、結着層101b、更には干渉縞防止などを目的とする下引き層101cを設けてもよい。
支持体101aとしては、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレスなどの、支持体自身が導電性を持つものや、アルミニウム、アルミニウム合金又は酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって被膜形成された層を有する前記支持体やプラスチックを用いることができる。また、導電性微粒子(例えば、カーボンブラック、酸化スズ、酸化チタン及び銀粒子など)を適当な結着樹脂と共にプラスチックや紙に含浸した支持体、導電性結着樹脂を有するプラスチックなどを用いることができる。
また、支持体101aと感光層101d及び101eの間には、バリアー機能と接着機能を持つ結着層(接着層)101bを設けることができる。結着層101bは、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体101aの欠陥の被覆、支持体101aからの電荷注入性改良及び感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。結着層101bは、カゼイン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、変性ポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン又は酸化アルミニウムなどによって形成できる。結着層101bの膜厚は、5[μm]以下が好ましく、特には0.1〜3[μm]が好ましい。
【0036】
電荷発生層101dに用いる電荷発生物質としては、(1)モノアゾ、ジスアゾ及びトリスアゾなどのアゾ系顔料、(2)金属フタロシアニン及び非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料料が挙げられる。また、(3)インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、(4)ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミドなどのペリレン系顔料が挙げられる。また、(5)アンスラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、(6)スクワリリウム色素が挙げられる。また、(7)ピリリウム塩及びチアピリリウム塩類、(8)トリフェニルメタン系色素が挙げられる。また、(9)セレン、セレン−テルル及びアモルファスシリコンなどの無機物質、(10)キナクリドン顔料、(11)アズレニウム塩顔料、(12)シアニン染料が挙げられる。また、(13)キサンテン色素、(14)キノンイミン色素、(15)スチリル色素、(16)硫化カドミウム及び(17)酸化亜鉛などが挙げられる。
電荷発生層101dに用いる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。また、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂及び塩過ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。これらは、単独・混合或いは共重合体ポリマーとして1種又は2種以上用いることができる。
電荷発生層用塗料に用いる溶剤は、使用する樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、アルコール類、スルホキシド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類又は芳香族化合物などを用いることができる。
電荷発生層101dは、前記の電荷発生物質を質量基準で0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミルなどの方法でよく分散し、塗布、乾燥されて形成される。その厚みは、5[μm]以下が好ましく、特には0.01〜1[μm]の範囲が好ましい。
また、電荷発生層101dには、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び公知の電荷発生物質を必要に応じて添加することもできる。
【0037】
電荷輸送層101eに用いられる電荷輸送物質としては、各種トリアリールアミン系化合物、各種ヒドラゾン系化合物、各種スチリル系化合物、各種スチルベン系化合物が挙げられる。また、各種ピラゾリン系化合物、各種オキサゾール系化合物、各種チアゾール系化合物及び各種トリアリールメタン系化合物などが挙げられる。
電荷輸送層101eを形成するのに用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂が好ましい。また、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンオキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及び不飽和樹脂などから選ばれる樹脂が好ましい。特に好ましい樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。
電荷輸送層101eは、一般的には前記の電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解し、塗布して形成する。電荷輸送物質と結着樹脂との混合割合(質量比)は、2:1〜1:2程度である。溶剤としては、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル類が用いられる。また、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルム及び四塩化炭素などの塩素系炭化水素類、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル類などが用いられる。
この溶液を塗布する際には、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法及びスピンナーコーティング法などのコーティング法を用いることができる。乾燥は10℃〜200[℃]が好ましく、より好ましくは20〜150[℃]の範囲の温度で、5分〜5
時間が好ましく、より好ましくは10[min]〜2[時間]の時間で送風乾燥又は静止乾燥下で行うことができる。
電荷輸送層101eは、上述の電荷発生層101dと電気的に接続されており、電界の存在下で電荷発生層101dから注入された電荷キャリアを受け取ると共に、これらの電荷キャリアを保護層101fとの界面まで輸送する機能を有している。この電荷輸送層101eは、電荷キャリアを輸送する限界があるので必要以上に膜厚を厚くすることができないが、5〜40[μm]が好ましく、特には7〜30[μm]の範囲が好ましい。
更に、電荷輸送層101e中には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び公知の電荷輸送物質を必要に応じて添加することもできる。
【0038】
更に、この電荷輸送層101eの上に前記表面保護層101fを塗布、硬化させて成膜することで、磨耗速度が異なる感光体101を作成することができる。
(1)表面保護層101fの形成方法[1]
上記条件を満足させる電子写真感光体の表面保護層101fとして、下記の化学式1で示すような、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物を含有する保護層がある。
【0039】
【化1】
【0040】
化学式1中、Aは正孔輸送性基を示す。P1及びP2は連鎖重合性官能基を示す。P1とP2は同一でも異なってもよい。Zは置換基を有してもよい有機残基を示す。a、b及びdは0又は1以上の整数を示し、a+b×dは2以上の整数を示す。また、aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく、dが2以上の場合P2は同一でも異なってもよく、またbが2以上の場合、Z及びP2は同一でも異なってもよい。
【0041】
前記同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合させることで、その表面保護層101f中において、正孔輸送能を有する化合物は少なくとも二つ以上の架橋点をもって3次元架橋構造の中に共有結合を介して取り込まれる。前記正孔輸送性化合物はそれのみを重合させる、又は他の連鎖重合性基を有する化合物と混合させることのいずれもが可能であり、その種類/比率はすべて任意である。ここでいう他の連鎖重合性基を有する化合物とは、連鎖重合性基を有する単量体、オリゴマー又はポリマーのいずれもが含まれる。正孔輸送性化合物の官能基とその他の連鎖重合性化合物の官能基が同一の基又は互いに重合可能な基である場合には、両者は共有結合を介した共重合3次元架橋構造をとることが可能である。両者の官能基が互いに重合しない官能基である場合には、感光層は少なくとも二つ以上の3次元硬化物の混合物又は主成分の3次元硬化物中に他の連鎖重合性化合物単量体又はその硬化物を含んだ物として構成される。その配合比率/製膜方法をうまくコントロールすることで、IPN(Inter Penetrating Network)すなわち相互進入網目構造を形成することも可能である。
表面保護層101fには、潤滑材として、フッ素原子含有樹脂、フッ化カーボン、ポリオレフィン樹脂からなる群のなかから選ばれた少なくとも一種を含有させることができる。その好ましい化合物としては以下の物が挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
フッ素原子含有樹脂として好ましいものは、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオロライド、クロロトリフルオロエチレンより選ばれる化合物の重合体もしくは共重合体樹脂及び樹脂微粒子が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン
、パーフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルより選ばれる化合物の重合体もしくは共重合体樹脂及び樹脂微粒子が挙げられる。フッ化カーボンは(CF)n、(C2F)nで表される化合物が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂として好ましいものは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等のホモポリマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のコポリマー樹脂及び樹脂粉体が挙げられる。
これらの潤滑材はそれぞれ単独でも2種以上を任意の割合で用いることも可能である。また、表面保護層101fには前記潤滑材の分散剤、分散助剤、その他の各種添加剤、界面活性剤等を含有してもよい。
表面保護層101fに潤滑材としてフッ素原子含有樹脂、フッ化カーボン、ポリオレフィン系樹脂のうち少なくとも1種を含有させることにより、感光体の表面の滑り性、撥水性を高めることができる。これにより、更に表面保護層101fの磨耗や形状の変化を抑制することができる。そして、繰り返し使用時の帯電、現像、転写等による表面保護層101fの化学的劣化に伴う転写効率や滑り性の低下、更には感度低下、電位低下などの電気特性の劣化を防ぐことができる。特に好ましくはフッ素含有樹脂であると更に好適な結果が得られる。
表面保護層101fに含有させる潤滑材の割合は、表面保護層101fとなる層の全重量に対し、1〜70[%]が好ましく、より好ましくは5〜50[%]である。潤滑材が70[%]より多いと表面保護層101fとなる層の機械的強度が低下しやすく、1[%]より少ないと表面保護層101fとなる層の撥水性、滑り性が充分ではなくなることがある。
前記連鎖重合性基を有する正孔輸送性化合物の硬化物を含有する表面保護層101fに、電荷輸送物質を含有させることも可能である。
前記表面保護層101fの形成方法は、前記正孔輸送性化合物を含有する溶液を塗布後、重合反応をさせるのが一般的である。前もって該正孔輸送性化合物を含む溶液を反応させて硬化物を得た後に、再度溶剤中に分散又は溶解させて、表面保護層を形成することも可能である。これらの溶液を塗布する方法は、例えば、浸漬コーティング法、スプレ−コーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法などが知られている。効率性及び生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。
前記連鎖重合性基を有する正孔輸送性化合物は、放射線により重合させることが好ましい。放射線による重合の最大の利点は重合開始剤を必要としない点であり、これにより非常に高純度な三次元感光層の作製が可能となり、良好な電子写真特性が確保される点である。また、短時間でかつ効率的な重合反応であるがゆえに生産性も高く、更には放射線の透過性のよさから、厚膜時や添加剤などの遮蔽物質が膜中に存在する際の硬化阻害の影響が非常に小さいことなどが挙げられる。ただし、連鎖重合性基の種類や中心骨格の種類によっては重合反応が進行しにくい場合があり、その際には影響のない範囲内での重合開始剤の添加は可能である。この際使用する放射線とは電子線及びγ線である。電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型などいずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、電気特性及び耐久性能を発現させる上で、照射条件が非常に重要である。加速電圧は250[kV]以下が好ましく、最適には150[kV]以下である。また線量は好ましくは10〜1000[kGy]の範囲である。加速電圧が上記を越えると、感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、線量が上記範囲よりも少ない場合には硬化が不十分となりやすく、線量が多い場合には感光体特性の劣化がおこりやすい。
【0042】
(2)表面保護層101fの形成方法[2]
更に、表面保護層101fとして、硬化性フェノール樹脂及び、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基又は置換基を有してもよいヒドロキシフェニル基からなる群より選択される基の少なくとも一つを有する電荷輸送物質を含有する表面保護層がある。
前記表面保護層に用いる結着樹脂である硬化性フェノール樹脂は、一般的にフェノール類とホルムアルデヒドの反応によって得られる樹脂である。フェノール樹脂には2つのタイプがあり、フェノール類に対してホルムアルデヒドを過剰にしてアルカリ触媒で反応させて得られるレゾール型と、ホルムアルデヒドに対しフェノール類を過剰にして酸触媒で反応させて得られるノボラック型にわけられる。
レゾール型は、アルコール類及びケトン類の溶媒にも可溶であり、加熱することで3次元的に架橋重合して硬化物となる。一方、ノボラック型は、一般にそのまま加熱しても硬化はしないが、パラホルムアルデヒドやヘキサメチレンテトラミンなどのホルムアルデヒド源を加えて加熱することで硬化物を生成する。一般的に工業的には、レゾール型は塗料、接着剤、注型品及び積層品用のワニスとして利用され、ノボラック型は主として成形材料や結合剤として利用されている。
結着樹脂として利用されるフェノール樹脂は、上記のレゾール型及びノボラック型のどちらでも利用可能であるが、硬化剤を加えることなく硬化することや、塗料としての操作性などからレゾール型を用いることが好ましい。これらのフェノール樹脂を1種類又は2種類以上混合して用いることができ、また、レゾール型とノボラック型を混合して用いることも可能である。
例えば、ヒドロキシメチル基2個以上を有するポリヒドロキシメチル化されたビスフェノール化合物を用いて表面保護層101fを形成させることができる。
上述のビスフェノール化合物の骨格は、下記の化学式2で示される構造を有する。
【0043】
【化2】
【0044】
化学式2中、Xは単結合若しくは2価の結合基を表す。R1及びR2は夫々置換基としてハロゲン原子、アリール基、ビニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい環状アルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を表す。
【0045】
このポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物は、加熱処理を施すことにより、ヒドロキシメチル基同士の縮合反応によりエーテル結合、若しくは更に縮合反応が進みメチレン結合を形成する。或いはヒドロキシメチル基とフェノール性水酸基のオルト位やパラ位の水素原子との縮合反応によりメチレン結合を形成する。これらの縮合反応が種々の分子間で起こることにより、架橋密度の高い三次元硬化膜を得ることができる。これらの縮合反応は、本質的に空気中の水分や酸素により阻害されることもなく、また電荷輸送材料を添加した系においても十分に進行する反応である。ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物の加熱処理による架橋反応においては、熱硬化性に一般的に用いられるような硬化触媒を特に添加する必要が無いという特徴を有する。従って、このような化合物を電子写真感光体の表面保護層101fとして用いる場合には、残留硬化触媒に起因する残留電位の上昇や表面保護層101fの抵抗低下といった問題も発生しない。
また、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物は、硬化触媒を加える必要が無いことや、ヒドロキシメチル基自体が、イソシアネートやシリコーン樹脂とは異なり水分に対す
る安定性も十分にあるため、塗工液の安定性においても優れている。
表面保護層101fは、硬化性フェノール樹脂を溶剤などで溶解又は希釈して得た塗料を感光層上に塗工して成形するが、塗工後に重合反応が起こり硬化層を形成する。重合の形態として、熱による付加及び縮合反応により進行し、表面保護層を塗工後、加熱することで重合反応を起こし高分子硬化層を生成する。
また、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基又は置換基を有してもよいヒドロキシフェニル基を有する電荷輸送物質は、トリフェニルアミン誘導体であることが好ましい。なお、上記ヒドロキシフェニル基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などのアルキル基が挙げられる。また、置換基を有してもよいメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基などのアルコキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基などのアリール基が挙げられる。又は置換基を有してもよいピリジル基、チエニル基、フリル基及びキノリル基などの複素環基が挙げられる。
前記電荷輸送物質のうち、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシ基を有する電荷輸送物質は、下記の化学式3で表される特定の構造を有する化合物であることが好ましい。
【0046】
【化3】
【0047】
化学式3中、R11、R12及びR13はそれぞれ炭素数1〜8の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。α、β及びγはそれぞれ置換基としてハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基を1つ以上有してもよいベンゼン環を表す。a1、b1及びc1は1又は0であり、m1及びn1は0又は1である。
【0048】
また、電荷輸送物質は、該表面保護層101fを作製するための塗料中に均一に溶解又は分散させ、塗布して形成する。電荷輸送物質と硬化性フェノール樹脂の混合割合は、質量比で、電荷輸送物質/硬化性フェノール樹脂=0.1/10〜20/10が好ましく、特には0.5/10〜10/10が好ましい。硬化性フェノール樹脂に対して電荷輸送物質が少なすぎると残留電位低下の効果が小さくなり、多すぎると表面保護層の強度を弱める可能性がある。
表面保護層101fは、本質的に抵抗体としてではなく、表面保護層中に含有させた電荷輸送物質により電荷を移動させて、表面保護層を施した電子写真感光体の感度を維持し、残留電位を低下させるものである。従って、抵抗体としての体積抵抗率は低く設定する必要はなく、その体積抵抗率として、1×1012[Ω・cm]以上にすることにより、形成された静電潜像の流れなどを高い次元で抑制することができる。
上記の表面保護層101fを有する電子写真感光体において、更にフッ素原子含有樹脂微粒子を含有させることによって、電子写真感光体表面の離型性の向上をより高い次元で達成できる。
フッ素原子含有樹脂微粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂などが好ましい。及びこれらの共重合体の中から1種或いは2種以上を適宜選択するのが好ましい。特に、四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。樹脂粒子の分子量分布や粒径は、適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
表面保護層101fの塗工液を作製する溶剤としては、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物並びに電荷輸送材料を十分に溶解し、更に、表面保護層101fの塗工液と接触する下層の電荷輸送層若しくは電荷発生層等に悪影響を与えない溶剤が好ましい。
従って、溶剤としては、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル類が使用可能である。また、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン及びジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類等が使用可能である。また、更にこれらを混合して用いてもよい。これらの中でも最も好適な溶剤は、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類である。
従来、公知の電荷輸送材料は一般的にアルコール類の溶剤には不溶又は難溶であり、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物への均一な溶解は困難である。しかし、電荷輸送材料としてヒドロキシ基を含有する場合には、アルコール類を主成分とする溶剤に可溶であり、電荷輸送層等の下層に対する影響も少ない。
表面保護層101fの塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法及びブレードコーティング法等の一般的な塗工方法を用いることができる。前記表面保護層101f中に、帯電時に発生するオゾンやNOx等の活性物質の付着による表面保護層101fの劣化等を防止する目的で、酸化防止剤の添加材を加えてもよい。
【0049】
本例では、2種類の表面保護層101fを形成させた感光体と、表面保護層を設けない感光体の計3種類の感光体を得た。
【0050】
[感光体製造例1(電子写真感光体A)]
長さ260.5[mm]、直径60[mm]のアルミニウムシリンダー(JIS A3003アルミニウム合金)を支持体101aとした。この上に、ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ製)の5質量%メタノール溶液を浸漬法で塗布し、膜厚が0.5[μm]の下引き層101cを形成した。
次に、下記の電荷発生層用塗料(a〜c)を、1[mmφ]ガラスビーズを用いたサンドミルで1[時間]分散し、これにメチルエチルケトン100[質量部;以下、単に[部]と称する]を加えて希釈調製し、これを上記の下引き層101c上に浸漬塗布し、90[℃]で10[分間]乾燥して、膜厚0.17[μm]の電荷発生層101dを形成した。a:電荷発生材料としてCuKαのX線回折における回折角2θ±0.2が28.1°に最も強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶・・・3[部]
b:ポリビニルブチラール・・・2[部]
c:シクロヘキサノン・・・100[部]
次に下記の電荷輸送層用塗料(d〜g)を調製し、これを上記の電荷発生層101d上に浸漬塗布し、110℃で1[時間]熱風乾燥し、膜厚が13[μm]の電荷輸送層101eを形成した。
d:下記の化学式4の電荷輸送材料化合物・・・7[部]
【0051】
【化4】
【0052】
e:ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製)・・・10[部]
f:モノクロロベンゼン・・・105[部]
g:ジクロロメタン・・・35[部]
【0053】
更に保護層101fを、下記の要領で形成した。
本例では反転現像を用いており、表面保護層101fとして下記の化学式5の正孔輸送性化合物を電子線照射により重合させた化合物を含有する表面層を塗工し硬化させた有機感光体とした。
下記の化学式5の正孔輸送性化合物40部をn−プロピルアルコール60[部]に溶解する。
【0054】
【化5】
【0055】
更に、テトラフルオロエチレン微粒子を10[部]添加して、高圧分散機(マイクロフルイタイザー、Microfluidics社製)にて分散させた表面保護層用塗料を調整した。
この塗料を前記4層101a+101c+101d+101eの感光体上に塗布したのち、加速電圧150[KV]、線量40[kGy]の条件で電子線を照射し、膜厚3[μm]の保護層101fを形成し、電子写真感光体Aを得た。
【0056】
[感光体製造例2(電子写真感光体B)]
下記の表面保護層用塗工液を作製した。
・表面保護層用塗料
a:結着樹脂である硬化性フェノール樹脂として、下記の化学式6で示されるビスフェノールのフェノール性水酸基のオルト位水素原子が全てヒドロキシメチル基で置換されたテトラキスヒドロキシメチル−ビスフェノール化合物・・・100[部]
【0057】
【化6】
b:下記の化学式7で表される電荷輸送材料・・・70[部]
【0058】
【化7】
【0059】
c:テトラフルオロエチレン微粒子・・・42[部]
d:エタノール・・・150[部]
を混合し、高圧分散機(マイクロフルイタイザー、Microfluidics社製)にて分散させた溶剤に溶解させたもの。
上記表面保護層用塗工液を、感光体製造例1と同じ101a+101c+101d+101eの感光体上に浸漬塗布し、145[℃]で1[時間]熱風乾燥し、膜厚が3[μm]の表面保護層101fを設けて、電子写真感光体Bを得た。
ここで、表面保護層101fの膜厚は、干渉膜厚計(大塚電子(株)製)を用いて行った。
【0060】
[感光体製造例3(電子写真感光体C)]
感光体製造例1と同じ4層101a+101c+101d+101eの構成で、表面保護層を設けない電子写真感光体Cを得た。替りに電荷輸送層1eを16[μm]として、感光体A及びBと同じ総膜厚とした。
得られた感光体は、表面形状調整のため、必要に応じてラッピングテープを使用して表面研磨処理を施した。
【0061】
<現像剤製造例>
周知の製造方法で、非磁性トナー粒子(質量平均粒径5.5[μm]、平均円形度0.918)を得た。該非磁性トナー粒子100[部]に対して、平均粒径0.02[μm]のシリカ粒子を1.2[部]、及び必要に応じて潤滑剤、乃至は無機微粒子を外添してトナー(T)を得た。
キャリア(C)は、imagePRESS C1用のキャリアを使用し、トナー(T)/現像剤(T+C)の質量比が8[%]となる様に混合して現像剤を得た。
【0062】
<評価装置>
評価用の画像形成装置として、図1乃至図4の如き画像形成装置を用意した。
図1を用いて、評価装置の説明をする。
クリーニングブレード107は図5の如く、厚さTが2[mm]の板状のものを、クリーニングブレード付勢手段(バネ)107Sに接続しているクリーニングブレード板金(基材)107Bに固定した。クリーニングブレード107は、感光体101に当接圧=24.5[N/m](25[g/cm])、設定角θ=23[°]で当接される。また、クリーニングブラシ108には、転写残トナー等を除去するフリッカーバー111を付与した。該フリッカーバー111の位置は、クリーニングブラシ108の駆動方向や速度に応じて向きや位置などの設定条件を調整すればよい。
クリーニングブラシ108は、導電性の繊維を基布に織りこみ、それを直径6[mm]の芯金上に巻き付けて直径16[mm]のロールブラシ状に構成している。導電性繊維として、太さ0.67[Tex](6[デニール])のアクリルの導電糸を用い、繊維密度が10[万本/inch2]となるようにW織りで基布に植え込んだものをシート状に形成し、芯金との導電性を確保するようにして巻き付けている。ブラシの抵抗は6×103[Ω・cm]とした。そして、感光体101に対する侵入量=1[mm]で、当接幅=7[mm]をもって接している。
感光体101は、上述の像担持体製造例で作成した感光体を使用し、矢印Xの方向に所定の面速度で回転駆動させた。
帯電手段102にはiRC5185(キヤノン株式会社製)用の帯電ローラーを、実効長(帯電可能部位の長さ)を0.32[m]としたものを使用し、潜像形成信号103付与手段には1200[dpi]のレーザー露光装置を付与した。帯電ローラー102に印加するバイアス、及び潜像形成信号103は、潜像露光非照射時の現像手段104位置での感光体101の表面電位(Vd)の絶対値が600[V]、潜像露光照射部電位(Vl)の絶対値が150[V]になる様に調整される。
更に、現像手段104として非磁性2成分現像手段、転写手段105はベルト状の中間転写体を付与した。転写ベルトや現像器等の駆動条件、バイアス条件を調整した。これら各々の駆動速度や印加するバイアス条件は、感光体101の面速度に応じて適宜調整される。
【0063】
<実施例1>
上述の評価装置を用い、像担持体(感光体101)の面速度は0.25[m/sec]とした。また、クリーニングブラシ108は感光体101との当接部において同方向(図中で反時計方向)に、感光体101の面速度の120[%]で駆動される様に調整した。
放電電流は100[μA]、すなわち単位長さ当りの放電電流Idisが0.313[mA/m]となるように、ACバイアスを調整している。クリーニングブレード107は、ゴム硬度73[°]、100%モジュラス=3920[kN/m2](40[kgf/cm2])、破断伸び=420[%]のポリウレタンゴムを使用した。潤滑剤109は直方体状に形成したステアリン酸亜鉛を不図示の板金に固定し、板金ごと付勢部材であるバネ110で、クリーニング手段106に当接させた。なお、不図示の圧検出手段を付与し、一定圧で当接する様にしてある。無機微粒子としては、上述の現像剤製造例の外添に際し、個数平均一次粒径150[nm]のチタン酸ストロンチウム0.8[部]を、シリカ粒子と共に外添してトナーを作成した。感光体101は前記感光体Aを使用し、評価前の表面形状をRziniが0.3584[μm]となるように表面研磨処理した。
耐久は、図15(a)の如き、300[μm]線を5[mm]間隔にした横罫線で形成される画像比率6[%]の画像を原稿として使用し、常温/常湿(23[℃]/50[%];N/Nと称する)環境下で、A4用紙、片面2枚間欠で10[時間/日]の耐久印刷を行い、100[k枚]の耐久を行った。次に、高温/高湿(30[℃]/80[%];H/Hと称する)環境下、更に低温/低湿(15[℃]/10[%];L/Lと称する)環境下で、N/N環境同様に、各々100[k枚]、合計300[k枚]の耐久を行った。各耐久印刷日とも、夜間は電源を完全OFFとした。
各環境で、初期、及び朝一番の印刷、晩のラスト印刷については、評価用画像形成を行っ
たのち、下記の過酷運転を行い、その後もう一度評価用画像形成を行った。また、異音、振動(ビビリ)等の有無を評価した。
過酷運転は下記の様に行った。図15(b)の如く、長手方向で局在化した、画像比率6[%]の画像形成を1[分間](本例では60[枚])の画像形成をした。その後、現像器と転写手段を解除し、非通紙とした以外は通常の耐刷状態で1[分間]の空回転を5回、計5[分間]の空回転を行った。
尚、評価画像としては1ドット1スペースのハーフトーン画像(1D1Sと記する)、5[mm]間隔の格子画像、1D1S、1D2S、ベタ、白、前半はベタで後半が白のツートーン画像、17階調画像、更に再度1D1Sを、この順番で画像形成した。
上記の各環境での耐久、過酷運転評価、画像評価を行った後に、クリーニングブレードのエッジ部の損耗測定と像担持体の観測、測定を行った。
各評価項目と評価基準は下記のとおりである。○は非常に良好、△は良好、乃至は実用上問題無し、×は従来並、乃至は特性上不足となる場合がある
なお、各評価条件を表1〜2に、評価結果を下表3に示す。
【0064】
<異音、振動>
上記過酷運転中の画像形成装置から生じる音、振動から評価した
◎; 異音、振動無し
○; 過酷運転中の異音あり(小音)。振動無し
□; 過酷運転中の異音有り(大音)。振動無し
△; 通常運転中の異音有り(少音)。振動無し
×; 通常耐久時の異音あり(大音) または、振動乃至クリーニングブレード捲れ
【0065】
<すり抜け>
主に罫線、ツートーン、ハーフトーンの各画像の目視評価と、感光体表面観察結果から評価した
◎; 画像上すり抜け無し。像担持体表面も清浄
○; 画像上すり抜け無し。像担持体表面をテーピングですり抜けが検出できる程度で、クリーニングブレードの裏側(感光体進行方向で下流側)のトナー汚れ無し。
□; 画像上すり抜け無し。クリーニングブレードの裏側(感光体進行方向で下流側)のトナー汚れ有り
△; 像担持体上にはすり抜け見られるが、画像上には出ていない
×; 画像上すり抜け発生
【0066】
<フィルミング・トナー固着>
ハーフトーン、ベタ、白、17階調の画像と、それに対応する感光体表面観測結果から評価した。
◎; 画像上フィルミング、トナー固着共に無し。像担持体表面も清浄
○; 像担持体上には局所的な付着物見られるが、画像上フィルミング、トナー固着共に無し
□; 像担持体上には局所的なトナー固着見られるが、画像上フィルミング、トナー固着共に無し
△; 像担持体上には中〜広範囲に付着物見られるが、画像上フィルミング無し
×; 画像上フィルミング、或いはトナー固着起因の画像不良あり
【0067】
<クリーニングブレードの損耗>
◎; DWが 75[μm2] 以下
○; DWが 75超 150[μm2] 以下
□; DWが150超 225[μm2] 以下
△; DWが225超 300[μm2] 以下
×; DWが 300[μm2] 超
【0068】
<感光体の損耗>
耐久前後の感光体の膜厚測定から、該感光体100[k回転]当りの磨耗量[μm/100k回転]を算出した。また、耐久後の表面粗さRzlast[μm]を測定した。
なお、耐久を通じてのRzの最大値として、RziniとRzlastの大きい方を大Rzとして表示した。
【0069】
<実施例2>
実施例1に対して、感光体101は感光体Aを、Rziniが0.3213[μm]となるようにした。該感光体101の面速度を0.50[m/sec]としたほか、バネ110を変更し、潤滑剤109がクリーニングブラシ108に当接する圧を高くなる様にした。また、トナー製造の外添に際し、平均粒径150[nm]のチタン酸ストロンチウム1.6[部]外添してトナーを得た。
諸条件を表1〜2に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表3に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
実施例1、2何れも異音などの不具合も無く、クリーニングブレード欠けが非常に小さく、又、耐久を通じて良好な画像を得られた。
【0074】
<実施例3〜20、実施例74>
評価装置として、図4の如き装置を使用した。
感光体101は、感光体Cを使用した。また、現像剤製造例でいう無機微粒子は本例では添加せず、トナー製造の際にステアリン酸カルシウムの微粒子を、添加量を振りながら外添してトナーを得た。感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。
諸条件を表4〜5に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表6に示す。
【0075】
<比較例1〜8>
評価装置として、図4の如き装置を使用した。
感光体101は、感光体B、及び感光体Cを使用した。また、現像剤製造例でいう無機微粒子は本例では添加せず、トナー製造の際にステアリン酸カルシウムの微粒子を、添加量を振りながら外添してトナーを得た。
感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。諸条件を表4〜5に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表6に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
実施例3〜20、及び実施例74と、比較例1〜8の結果をIdis×Vを横軸に、
潤滑剤供給量Mzを縦軸にして、実施例(△以上の評価)を○、比較例(評価結果に×が含まれる)を×として表記した物を図7及び図8に示す。
表4〜6、及び図7及び8より、
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
且つ、Mz≦5 ・・・(2)
ただし、
Idis×V≦0.1の時は Az=0.66、 Bz=0.004
Idis×V>0.1の時は Az=2.72、 Bz=−0.202
の時に、良好な結果が得られた。
【0080】
<実施例21〜50>
評価装置として、図2の如く無機微粒子溜りを有する装置を用いた。潤滑剤はステアリン酸カルシウムを実施例3〜20、実施例74と同様に外添した。無機微粒子として剤溜り109’に保持された、平均粒径400[nm]のアルミナ粒子を、クリーニングブラシ109’を用いて感光体101表面に塗布するようにした。なお、塗布量はクリーニングブラシ109’の回転速度と、フリッカーバー111の設定条件を調整して制御した。
これらについて、感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。諸条件を表7〜8に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表9に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
表7〜9より、無機微粒子を付与した中でも特に、下式の無機微粒子の供給量Ms[mg/m2]が、範囲を満たす実施例23〜25、実施例28〜30、実施例33〜35、実施例38〜40、実施例43〜45、実施例48〜50においてクリーニングブレード損耗やすり抜けが向上した。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
且つ、 Ms≦15 ・・・(4)
ただし、
Idis×V≦0.1の時は As=1.00、 Bs=0.100
Idis×V>0.1の時は As=2.48、 Bs=−0.048
【0085】
詳細なメカニズムは不明だが、無機微粒子が適量存在する事で、クリーニング手段に於ける潤滑剤の塗延ばしや、掻き取りに有効に作用しているのではないかと思われる。また、該無機微粒子はクリーニングブレード107と感光体101の当接部でコロのような滑剤としての作用も推察される。
さらに、潤滑剤のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの比重は、各々1.1、0.9である。一方、無機微粒子のチタン酸ストロンチウム、アルミナ、シリカの比重は各々5.13、3乃至4、1.9乃至2.1であり、無機微粒子の比重が、潤滑剤の比重の概ね2乃至6[倍]となっている。この比重の差により、無機微粒子が潤滑剤の微粒子の集合体或いは被膜を好適に押しのけ、クリーニングブレード107と感光体101の当接部まで達し、掻き取りに作用していると考えられる。
【0086】
<実施例51〜58>
評価装置として、図3の如く、剤溜りとクリーニングブラシを各々複数有する装置を用いた。クリーニングブラシは、前述の製造例に対して、太さを5[mm]の芯金に0.5[mm]厚の基布、及び繊維長は3[mm]としたパイルを巻き付け直径12[mm]のロールブラシ状にした。剤溜り109’に無機微粒子を、剤溜り109に潤滑剤を、各々保持し、上記ブラシで感光体表面に塗布した。いずれも、塗布量の制御はクリーニングブラシ108、108’の回転速度とフリッカーバー111、111’の設定条件を調整して行った。
これら各々の耐久評価を行った。諸条件を表10〜11に、評価結果を表12に、夫々示す。
【0087】
【表10】
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
表10〜12より、潤滑剤供給手段を設けることで、フィルミングや異音が低減された。また、表10〜12の実施例51と実施例52〜58の比較より、潤滑剤にステアリン酸亜鉛を使用すると、DWが低減した。
また、無機微粒子の粒径が50[nm]以上300[nm]以下である実施例54〜58は、異音・すり抜けが抑制された。更に、無機微粒子をチタン酸ストロンチウムとした実施例58はDWが更に低減していた。
【0091】
<実施例59〜66>
感光体として、感光体A、及び感光体Bを使用し、更に研磨工程で初期の表面形状Rziniを調整した。評価機は図3の潤滑剤供給手段であった潤滑剤溜り109を、図1、実施例1の如く固体状で使用した。該評価機を用いて、実施例51〜58と同様の耐久評価を行った。実施例64〜66に関しては、一部クリーニングブレードのゴム物性の異なる物を使用した。
諸条件を表13〜14に、耐久評価結果を表15に、各々示す。
【0092】
【表13】
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
実施例58と実施例59の比較から分るように、固形化潤滑剤とブラシ部材による潤滑剤供給手段を使用すると、特性上の弊害無く、画像形成装置の小型化に有利である。また、後述するような、ブラシ部材の当接圧による制御も可能であり、潤滑剤を安定して長期に供給するのに有利で、クリーニング性を長期に維持するのに好ましい。
また、実施例59と実施例60以降の比較で、磨耗速度が0.3[μm/100k回転]以下の実施例は感光体の表面形状Rzの変化が少なく、すり抜けやフィルミングが向上していた。
特に表面形状の最大値「大Rz」が0.1〜1.0[μm]以下である実施例62〜66では更に、異音・振動が向上していた。表面形状が好適に維持され、滑りすぎたり、異常な摩擦が抑制されたためと考えられる。
【0096】
<実施例67〜73>
クリーニングブレードの特性が異なる物を使用した。
評価機は実施例59〜66と同様の評価機を使用した。潤滑剤の供給量制御は、実施例67〜69は実施例59〜66同様にクリーニングブラシの回転速度を調整して制御した。また、実施例70〜73に関しては、実施例1と同様に潤滑剤とクリーニングブラシの当接圧を調整して制御するようにした。その際、クリーニングブラシの回転速度も実施例1と同様にした。
諸条件を表16〜17に、耐久評価結果を表18に、それぞれ示す。
【0097】
【表16】
【0098】
【表17】
【0099】
【表18】
【0100】
表13〜15と、上記表16〜18の実施例67〜68の結果の比較から、2940≦100%モジュラス≦5880[kN/m2](30≦100%モジュラス≦60[kgf/cm2])、破断伸びが300[%]以上の時に、クリーニングブレード損耗DWが更に向上した。
また、潤滑剤の供給を当接圧制御にした実施例70〜73ではすり抜けが向上した。理由は定かではないが、当接圧制御方式にする事で、ファーブラシの繊維の変形(毛倒れ)などによる塗布量の変化が抑制されているか、或いは、固形化潤滑剤もフリッカーバーのような働きもして、クリーニングブラシが感光体表面を摺擦する力が強化されているのではないかと考えられる。
【0101】
なお、感光体の面速度Vが0.5[m/sec]を超える実施例73では、実施例67〜72と比較するとDWが若干増加していた。
上記の結果について、別の視点から評価を行った。
図6に示すような装置を作成した。感光体101は不図示の駆動手段により矢印Xの方向に任意の速度で駆動される。感光体101の鉛直上方にはクリーニングブレード107が保持された荷重検出手段113が設けられており、感光体101の回転方向でクリーニングブレード107が受ける負荷、すなわち摩擦力を検出できる様になっている。なお、荷重検出手段113は、その上に分銅を載せる上皿があり、該クリーニングブレード107が感光体101に当接する圧力を調整できる。該荷重検出手段113は、更に、天秤状の保持手段で保持されており、支点Oをはさんで反対側には不図示のバランス錘があり、で水平に保たれている。この他、帯電手段102、現像手段104、クリーニングブラシ108、潤滑剤109、該潤滑剤109を該クリーニングブラシ108の当接する圧力調整のための付勢手段110が配されている。
これらは、各速度においてクリーニングブレード107が感光体101に当接する圧(CLN圧)、周波数fと感光体面速度Vの比(f/V)、及び該感光体101への放電電流値Idisが同等になる様に調整してある。この装置で、感光体Aを用い、面速度Vを変化させて摩擦評価を行った。
感光体101の回転開始後、定常状態に於ける、動摩擦力の標準偏差を、面速度Vに対してプロットした結果を図16に示す。
図16より、感光体面速度Vが0.5[m/sec](500[mm/sec])以下では、動摩擦の標準偏差は感光体101の面速度に、ほぼ1次的に相関して増加傾向が見られる。しかし、0.5[m/sec]を超えるような高速では該面速度Vに対しての動摩
擦の標準偏差が、速度依存の直線性から外れて増大する場合があった。
これにより、0.5[m/sec]を超える実施例73のクリーニングブレード損耗DWが若干増加したものと考えられる。
上述の摩擦評価は、これに限らず、例えば図1〜図4の如き画像形成装置において、クリーニングブレード107にかかる摩擦力を測定できるように歪ゲージを設置するなどして測定しても良い。
なお、0.08[m/sec](80[mm/sec])の実施例72は、良好な結果が得られたが、0.1[m/sec](100[mm/sec])以下の面速度、はA4で20[ppm]以下相当の低速機であり、本例のような構成は逆にコストアップとなる場合がある。
すなわち、感光体(像担持体)の面速度は、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることが好ましい。
【0102】
本実施例の本実施例の構成を用いれば、クリーニングブレードの損耗や、クリーニング不良、及びそれに掛る画像欠陥が低減できるので、長期的に良好な画像が得られる。更に、放電電流量と感光体面速度に応じて潤滑剤の供給量を制御している為、潤滑剤の過剰な供給或いは供給不足を防ぎ、適正量の潤滑剤を終始安定して行える。
また、固形化した潤滑剤と無機微粒子の外添供給とを併用することで、装置の小型化/長寿命化が達成され、長期にわたるクリーニング性能を保証できる画像形成装置の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0103】
101 ;像担持体
101a ;支持体
101b ;結着層
101c ;下引き層
101d ;電荷発生層
101e ;電荷輸送層
101f ;表面保護層
102 ;帯電手段
103 ;潜像形成信号
104 ;現像手段
105 ;転写手段
106 ;クリーニング手段
107 ;クリーニングブレード
107a ;クリーニングブレード損耗を観測する時の視野方向
107b ;クリーニングブレード損耗を観測する時の視野方向
107B ;クリーニングブレード板金
107S ;クリーニングブレード付勢手段
108、108’ ;クリーニングブラシ
109 ;潤滑剤、潤滑剤溜り
109’ ;無機微粒子溜り
110 ;潤滑剤付勢手段(バネ)
111、111’ ;フリッカーバー
112 ;廃トナー搬送手段
113 ;荷重検出手段
X ;像担持体の駆動方向の例
θ ;クリーニングブレードの、像担持体への設定角
O ;摩擦力測定装置の、保持部の支点
P ;転写材
T ;クリーニングブレードの厚さ
W ;クリーニングブレード損耗の巾
D ;クリーニングブレード損耗の深さ
S1 ;電源
Cc ;帯電手段の静電容量
Rc ;帯電手段の抵抗
Cair ;放電ギャップの静電容量
Cd ;像担持体の静電容量
Zc ;帯電手段と像担持体間のインピーダンス
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な画像形成装置に於いては、帯電ローラー等の帯電手段により像担持体である電子写真感光体(感光体)を一様に帯電し、これに、像露光、例えば、レーザービームを照射して静電潜像を得ている。この潜像は、現像手段により、トナー像として反転現像又は正規現像されて顕像化される。このトナー像は転写ローラーなどの転写手段により静電的に記録媒体に転写された後に、加熱定着装置等の定着手段により熱と圧力が加えられて記録媒体に定着される。記録媒体に対するトナー像転写後の感光体の表面は、残留したトナーがクリーニング装置によって除去・清掃され、次の画像形成工程に備えられる。
トナー像転写後の感光体の表面から転写残トナーを除去するクリーニング方法としては、ポリウレタン等からなる弾性ブレード(クリーニングブレード)によるクリーニングが多く採用されている。
【0003】
市場に於いては、高画質、長寿命の画像形成装置が求められており、長寿命の観点から、安定した帯電付与のために、帯電手段に交流バイアスを印加するなどの手法が取られている。一方、像担持体である感光体は上記交流バイアスや、接触する部材による機械的な損耗を抑制する為に、アモルファスシリコン感光体(a−Si)や、表面保護層(OCL)を有する有機感光体(OCL−OPC)などの、耐磨耗性に優れた感光体が使用されている。
しかしながら、特に交流バイアスを印加する帯電方式は、帯電生成物が多量に発生して該像担持体に付着し、特に高湿環境下で画像がぼける、いわゆる画像流れが生じやすい。
画像流れを抑止し、また、像担持体の寿命も長期に維持する技術として、潤滑剤を像担持体に事前に塗付し、更にその単位面積あたりの塗布量や被覆率を規定する技術が提案されている(特許文献1、及び2)。
【0004】
また、弾性変形率が規定された被帯電体を使用し、帯電手段に付加するACバイアスの振幅(ピーク間電圧)Vpp、周波数f、像担持体の面速度v、及び放電閾値電圧Vthとしたときに、脂肪酸金属塩を、該脂肪酸金属塩の金属元素の検出量が1.52×10−4×(Vpp−2×Vth)×f/v以上となる量を供給する技術が提案されている(特許文献3)。
画像流れを抑制し、像担持体の寿命を長期に維持し、更にクリーニング手段の損耗も抑制する技術として、粒径が30〜500[nm]の無機微粒子を使用し、脂肪酸金属塩を、像担持体の表面粗さから規定される量以上で、該像担持体表面に供給する技術が提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、クリーニングブレードの接触角と100[%]モジュラスを規定し、該クリーニングブレードと像担持体の摩擦の上昇を抑制する技術が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、これらの画像形成装置に於いても、帯電均一性を向上させるために帯電手段に印加するVppを増加したり、生産性向上のために高速化したりすると、クリーニング不良やトナー固着といった画像欠陥が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−122870号広報
【特許文献2】特開2008−139804号広報
【特許文献3】特開2005−249901号広報
【特許文献4】特開2008−129401号広報
【特許文献5】特開2006−267299号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脂肪酸金属塩などの潤滑剤を像担持体表面に均一塗付する系では、該潤滑剤が、帯電手段などの放電を受ける事により劣化する。このため、摩擦が増加し、クリーニングブレード乃至は像担持体が損耗する場合がある。
従って、像担持体表面に塗付された潤滑剤は、放電被爆による劣化に応じて入替えを行い、劣化が過剰に進まないようにする事が重要である。
また、像担持体表面が同じ状態でも、面速度によりクリーニングブレードの負荷が異なり、ブレード寿命に影響が生じる。
本発明は、上述のごとき問題点を解決した画像形成装置を提供することを目的とする。即ち、像担持体表面に均一塗付された潤滑剤を、使用条件に応じた、適切な潤滑剤入替え量とする事でクリーニングブレードの負荷を適正に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き手段で達成される。
すなわち、像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置に於いて、該像担持体表面には、潤滑剤が供給され、下記の如き構成を有する。
(1) 該潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
であることを特徴とする。
(2) 前記像担持体表面には、更に無機微粒子が供給され、該無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下式を満たすことを特徴とする。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
(3) 前記像担持体の回転方向の、前記転写手段より下流で、且つ前記クリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を有することを特徴とする。
(4) 前記潤滑剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする。
(5) 前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする。
(6) 前記無機微粒子の個数平均一次粒径が、50[nm]以上300[nm]以下であることを特徴とする。
(7) 前記無機微粒子の比重の、前記潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])が、2以上5以下であることを特徴とする。
(8) 前記潤滑剤供給手段が、固形化された潤滑剤と、回動可能なブラシ状部材を備えた潤滑剤供給手段であることを特徴とする。
(9) 前記像担持体の磨耗速度が、0.3[μm/100k回転]以下であることを特徴とする。
(10)前記像担持体表面のRzが0.1[μm]以上1.0[μm]以下であることを特徴とする。
(11)前記弾性ブレードを構成する弾性部材の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下(すなわち、30[kgf/cm2]以上60[kgf/cm2]以下)であり、破断伸びが300[%]以上であることを特徴とする。
(12)前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧が可変であることを特徴とする。
(13)前記無機微粒子の供給手段が現像手段であることを特徴とする。
(14)前記像担持体の面速度が、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成により、簡易、小型な構成で、像担持体の表面に均一塗付される潤滑剤の過度の劣化を防止することができる。これによりクリーニングブレードが受ける負荷の増加や、クリーニングブレードの損耗を防止し、長期にわたって、安定した良好なクリーニング性が維持されて、画像流れ、トナー固着等の画像欠陥の発生が防止され、安定した画像特性が高水準に維持される。また、これらにより、メンテナンスの負荷を低減する事ができる。
具体的には、
(1)の構成により、潤滑剤の供給量を放電電流及び感光体の面速度から規定される好適な範囲とする事で、該潤滑剤の過剰な劣化の蓄積を押さえ、クリーニングブレードの損耗を防止し、良好なクリーニング性を維持する事ができる。
(2)の構成により、更に無機微粒子を、放電電流及び感光体の面速度から規定される好適な供給量で供給する事により、クリーニングブレード損耗やすり抜けが向上する。
(3)の構成によれば、転写手段より下流でクリーニング手段より上流の位置に潤滑剤供給手段を有する事で、フィルミングや依存が低減される。
(4)の構成によれば、潤滑剤が脂肪酸金属塩であると、塗延ばしや掻き取り性に優れ、また、表面層としての透明性も高く好適である。
(5)の構成により、潤滑剤をステアリン酸亜鉛とする事で、更にクリーニングブレードの損耗を抑制する事ができる。
(6)の構成により、無機微粒子の粒径を規定する事で、異音・すり抜けが抑制される。(7)の構成により、潤滑剤と無機微粒子の比重が規定された組合せで使用することで、クリーニングブレードの損耗が抑制される。
(8)の構成により、長期に安定して潤滑剤の供給制御をすることができる他、装置の小型化に有利である。
(9)の構成により、感光体の表面形状の変化が抑制され、すり抜けやフィルミングが向上する。
(10)の構成により、異音・振動が向上する。
(11)の構成により、異常な変形をし難くく、また変形をしても損耗に至り難いクリーニングブレードとする事で、該クリーニングブレードの損耗が抑制される。
(12)の構成により、すり抜けが向上する。
(13)の構成により、フィルミングや異音が抑制される。
(14)の構成により、上記の各構成で安定して摩擦特性を調整でき、クリーニングブレードの損耗を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図2】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図3】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図4】本発明にかかる画像形成装置の、実施態様の一例。
【図5】本発明のクリーニング装置の、設置状態の一例を示す図。
【図6】クリーニングブレードと像担持体の当接部の摩擦力を測定する装置の一例。
【図7】本発明にかかる、Idis×Vと潤滑剤量の好適な範囲を示す図。
【図8】本発明にかかる、Idis×Vと潤滑剤量の好適な範囲を示す図。
【図9】クリーニングブレードと像担持体の当接状態を説明する為のモデル図。
【図10】クリーニングブレードの損耗形状のモデル、及び評価の対象位置を説明する為の図。図10(a)はクリーニングブレードの損耗状態の一例、図10(b)は(a)の状態の時の、ブレード断面モデル図、図10(c)はクリーニングブレードの損耗状態の、別の例、図10(d)は(c)の状態の時の、ブレード断面モデル図。
【図11】帯電部位に於ける、帯電手段と像担持体の等価回路図。
【図12】交流電圧と放電電流の関係を示すモデル図。
【図13】本発明に掛る、無機微粒子の一例の電子顕微鏡(SEM)観察図。
【図14】本発明に掛る、像担持体の層構成を示すモデル図。
【図15】本発明の実施例で使用した原稿チャートの、説明の為の図。図15(a)は耐久で使用した原稿チャートの、説明の為の図。図15(b)は過酷運転で使用した原稿チャートの、説明の為の図。
【図16】本発明に掛る、感光体の面速度と動摩擦力の標準偏差の評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の画像形成装置は、像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置である。
(1)画像形成装置構成
図1に、本発明に掛る画像形成装置の概略を示す。
像担持体101は、回動可能なドラム型の電子写真感光体(以下、感光体と記す)であり、駆動機構(不図示)により、所定の面速度で矢印X方向に回転駆動される。感光体101は、OPC等の感光層をシリンダ状の導電性基体表面に塗布して形成される。
感光体101の周囲に、該像担持体を帯電する帯電手段102、不図示の潜像形成手段により付加される潜像形成信号103、現像手段104、転写手段105、弾性ブレードであるクリーニングブレード107からなるクリーニング手段106が配される。
なお、必要に応じて転写手段105より下流側、且つ帯電手段102より上流側で、除電手段(不図示)を配してもよい。該除電手段により、感光体101の画像形成時の電気的メモリーが消去される。また、該除電手段がクリーニング手段106より上流側に配される場合は、更に、転写残現像剤等の感光体101への静電付着力が低減される。
【0012】
(2)帯電手段
感光体101は、感光体101に接触、乃至は近接配置される帯電手段102により、一様に帯電される。帯電手段102には不図示のバイアス印加手段が付与され、帯電バイアスとして所定の交流電圧に所定の直流電圧を重畳した振動電圧が印加される(AC方式)。
帯電手段102はローラー型帯電部材(帯電ローラー102とも称する)として、感光体101の母線方向にほぼ並行に接触配置した。該帯電ローラー102は感光体101の回転に伴い、従動して回転する。帯電ロ−ラー102は、鉄、ステンレス鋼等の円筒或は円
柱状の導電性部材(芯金)と、この導電性部材の外回りにローラー状に形成した、体積固有抵抗1×104〜1×1012[Ω・cm]の抵抗層より構成される。また、抵抗層の表面を覆うようにして体積固有抵抗1×104〜1×1012[Ω・cm]の表面保護層を備えても良い。
帯電手段102は、上記のようなローラー型に限られず、ブレード型、ファーブラシ型、磁気ブラシ型であってもよい。また、接触帯電手段に限られず、帯電部材を感光体101の表面に対して数10〜数100[μm]程度の僅少な空隙部を存在させて非接触に対向配置する近接帯電手段であってもよい。
なお、本例に於いては、後述する現像手段104に対向する位置で、感光体101の暗部電位VDとして−700[V]となる様に帯電がなされる。
帯電ローラー102に印加する振動電圧のうち、交流電圧の周波数fは帯電によるスジ状画像(帯電モアレ)が生じないように、ピーク間電圧Vppは帯電安定性を向上させるために、また直流電圧は上記の暗部電位になるように、感光体101の面速度や除電手段の条件になどに応じて適宜調整される。
該Vppは、絶縁破壊が生じないレベルで、上記の条件に応じた閾値以上となる様に設定されるのが一般的である。
【0013】
(3)潜像形成信号
感光体101は、帯電手段102により均一帯電された後、画像情報に応じて潜像形成信号103により、潜像が形成される。潜像形成信号としてはレーザー光、LED光など、周知の信号を使用できる。
一般に、イメージ部を露光する、イメージ露光方式と反転現像とを組み合わせて使用されることが多く、本例に於いてもイメージ露光方式としている。また、後述する現像手段104の対向位置で、感光体101の明部電位VLとして−200[V]となるように潜像形成がなされる。
【0014】
(4)現像手段
現像手段104は、本例では、現像方式として現像剤は非磁性のネガトナーと磁性キャリアを混合したもの用いる、いわゆる非磁性2成分現像方式を用いる。
現像手段104内には、初期現像剤として非磁性トナーと磁性キャリアを、該トナーが8[質量%]となるように混合して投入している。
現像スリーブは非磁性で、固定のマグネットローラーを内包している。該現像スリーブにより搬送される現像剤は感光体101と所定の現像ニップで接触する。該現像スリーブは感光体101に対して150[%]の面速度で駆動し、現像バイアス電源(不図示)により所定の現像バイアスが印加される。本例では、現像バイアスは−450[V]の直流電圧とピーク間電圧1.5[kV]の交流電圧が印加される。周波数は感光体101の面速度に応じて適宜調整される。
【0015】
(5)転写手段
感光体101上のトナー像は、転写手段105で転写材Pに転写される。転写手段105にはトナーと反対極性のバイアスが印加され、本例ではポジ極性のバイアスが印加される。本例では、転写材Pとして、ベルト状の1次転写材(転写ベルト)を使用している。転写材Pは1次転写ベルトに限らず、転写ドラムなどであってもよいし、紙などの最終転写材でもよい。
【0016】
(6)クリーニング手段
転写後の感光体101表面はクリーニング手段106で、転写残現像剤や紙粉などの残留物が除去されて、次の画像形成工程に供される。
クリーニング手段106は、ポリウレタンゴムなどの弾性部材からなるクリーニングブレード107を有している。
クリーニングブレード107はポリウレタンゴムからなり、クリーニングブレード保持手段(不図示)により保持され、感光体101に所定の当接圧或いは進入量、及び設定角θで当接される。クリーニングブレード107のゴム硬度としては50〜85[°](JIS A)が好ましい、より好ましくは、60〜80[°]である。
上記当接圧は、9.8〜78.4[N/m](10〜80[g/cm])が好ましい。クリーニングブレード107の当接圧が9.8[N/m]未満である場合、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生しやすくなり、また、78.4[N/m]を超える場合、クリーニングブレード107が振動したり、異音(びびり音)が生じたり、クリーニングブレード107乃至は感光体101の損耗により満足な耐久性が得られにくくなる。
上記設定角θは20〜40[°]が好ましい。設定角θが20[°]未満であるとトナーのすり抜けが生じやすくなり、40[°]を超える場合、クリーニングブレード107の捲れなどが生じ易くなる。
本例では、クリーニングブレード107は、厚さ2[mm]の板状ブレードを板金に固定し、該板金を感光体101にバネ加圧で当接させる方式とした。クリーニングブレード、及びその保持方法はこれに限らず、板金の先端部に一体的に保持された、いわゆるチップブレードでもよいし、所定の侵入量で固定して当接しても良い。また、必要に応じてイコライズ機構やレシプロ機構などを付加してもよい。
【0017】
また、潤滑剤は主にクリーニングブレード107と感光体101の当接部で塗り伸ばされる。また、一部は該クリーニングブレード107により掻き取られる。そのため、クリーニングブレード107は形状変化が少なく、掻き取り能力が高いことが好ましい。
一方、クリーニングブレードの損耗は、局所的な摩擦の増加、或いは異物や異常な負荷により、クリーニングブレードが感光体との当接部で急激に引っ張られて生じると考えられる。特に、本発明の如く潤滑剤の量を制御し、放電等で劣化した潤滑剤と新しい潤滑剤の入替えを行う場合や、更に無機微粒子を供給して、該潤滑剤を攪拌、掻き取するなどして、入替えを行う場合、長手方向で局所的に摩擦特性が不均一になる場合がある。従って、該クリーニングブレードは変形しにくく、仮に変形しても裂けたり切断されたりなどといった破断に対する強度を有していることが好ましい。但し、クリーニング性を阻害しない範囲である事はいうまでも無い。
【0018】
ここで、前記弾性ブレード(クリーニングブレード)を構成する弾性部材(ゴム)の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下(すなわち、30≦100%モジュラス≦60[kgf/cm2])であり、弾性部材(ゴム)の破断伸びが、300[%]以上420[%]以下の範囲とする事で、潤滑剤による被服膜の状態を好適に維持すると共に、該クリーニングブレードの損耗を抑制でき好ましい。
上記100%モジュラスは、弾性部材(ゴム)を100%伸ばすのに必要な力で、クリーニングブレード107を感光体101に当接したときの、加圧による変形に対する耐性の指標である。100%モジュラスが2940kN/m2(30kgf/cm2)以上であることで、クリーニングブレードの当接部形状の変化や、局所的な負荷が生じた場合の極端な変形や、捲れを抑制できる。一方、5880kN/m2(60kgf/cm2)を超える場合、感光体101の表面形状などへの追従性が低下し、クリーニング不良が生じ易くなる場合がある。
一方、破断伸びは、ゴムを引っ張り伸ばしたときの引き裂きが生じるまでに伸びる長さである。破断伸びが300[%]以上のゴム物性を有することで、局所的な変形が生じても、損耗に到らず、クリーニング性を維持するのに有効である。破断伸びが大きい場合は、感光体に対する追従性、即ち密着性が増すことで摩擦カが増大し、結果としてクリーニングブレードの磨耗が増大し易くなる場合がある。このため、破断伸びは450[%]以下が好ましい。更には420[%]以下であると、該クリーニングブレードと感光体が当接する部位の先端くさび形状が維持され、結果として潤滑剤による被服膜の状態を好適に維持でき好ましい。
上記弾性部材(ゴム)の100%モジュラス、及び破断伸びは、JIS K6251に準じて測定される値である。JIS規格に準拠する市販の装置で測定できるが、具体的にはオートグラフ(島津製作所製)で、試験片はダンベル状試験片の3号形を用いて測定した。
【0019】
クリーニング手段106には、クリーニングブレード107の他に、回動可能なブラシ状部材(以下、クリーニングブラシと称する)108、固形化された潤滑剤または潤滑剤溜まり109、フリッカー111、廃トナー搬送手段112を有してもよい。すなわち、クリーニング手段106は、該固形化された潤滑剤または潤滑剤溜まり、及び該回動可能なブラシ状部材を備えた、潤滑剤を供給するための潤滑剤供給手段を備えてもよい。該潤滑剤供給手段は、クリーニング手段106内に設けられても、クリーニング手段106とは別に設けられてもよい。しかしながら、当該潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段は、像担持体の回転方向の、転写手段より下流で、且つクリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に設けられることが好ましい。また、上記潤滑剤は、固形化された潤滑剤であることが好ましい。
【0020】
一方、クリーニングブラシ108は、感光体101の進行方向で、転写手段105より下流側に配設する。ブラシ繊維としては、レーヨン、アクリル、ポリエステル等が好適に用いられ、カーボンや金属粉を含ませる等して導電性を付与してもよい。ブラシ部は、感光体表面及び転写残トナーに均一に接触できるように、太さとしては3.33[Tex](30[デニール])以下、密度としては1550〜77500[本/cm2](1〜50[万本/inch2])程度が好ましい。またクリーニングブラシ108は駆動手段(不図示)により感光体101と相対速度差を持って駆動され、後述する潤滑剤を感光体101に塗布する他、クリーニングブレード107によるクリーニングの補助としても寄与する。
該クリーニングブラシ108が感光体101に当接する際の侵入量や駆動速度は、該クリーニングブラシ108の繊維の条件や、感光体101の条件などにもよるが、侵入量は3[mm]以下が好ましく使用される。侵入量が大きすぎると、感光体101若しくはクリーニングブラシ108の繊維が損耗しやすくなる場合がある。更に、0.5[mm]以上であると、感光体101との接触により異物除去にも寄与し好ましい。
駆動速度は、感光体との相対速度の差が、感光体101の面速度に対して5〜20[%]程度が好ましい。5[%]未満の速度差がほとんどない状態では、クリーニングブラシ108による摺擦や、潤滑剤109の供給が不均一になりやすくなる。一方、20[%]を越える場合にはクリーニングブラシ108と感光体101の当接部での負荷が過剰になり、クリーニングブラシ108乃至は感光体101の損耗が生じやすくなる場合がある。
クリーニングブラシ108には、固形潤滑剤(固形化された潤滑剤のブロック体)109を接触させて配設してある。110は固形潤滑剤109をクリーニングブラシ108に対して常時所定の押圧力で接触させる付勢手段である。
前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧を可変とすることで、ブラシ部材の当接圧による潤滑剤の供給量の制御が可能となり、潤滑剤を安定して長期に供給することが可能になるため、クリーニング性を長期に維持する上で好ましい。
【0021】
固形化された潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛を鉛筆硬度HB〜B相当で、ブロック状に成型したものを使用した。軟らかすぎると供給手段の当接状態などにより、局所的に供給過多になったり、粉体塊で感光体101表面に供給されたりして、クリーニング不良が生じる場合がある。また固形化した潤滑剤の消費量が増大し、ユニットとしての満足な耐久性が得られなくなる。一方、固すぎると均一な供給がされにくく、均一な皮膜形成がされ難くなる。また削り取るためのブラシも硬くする必要が生じ、感光体101の損耗につながる場合がある。
【0022】
フリッカー111はクリーニングブラシ108に付着した異物の除去を行うものである。また、設置する位置や角度により、固形化された潤滑剤を書き取るための先端力の付与にも寄与する。該フリッカー111としては、公知のものを使用できる。
クリーニングブレード107やクリーニングブラシ108等で除去された異物や、過剰な潤滑剤などは、必要に応じて設けられる廃トナー搬送手段112により、廃トナー容器(不図示)へと排出される。本例では廃トナーを排出する機構を示しているが、これに限らず廃トナーをクリーニング手段106内に収容し、クリーニング手段ごと交換するカートリッジ方式でもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
クリーニングブレード107の損耗は、一般に図10(a)の斜線部ように、クリーニングブレードの断面方法に於いてえぐれた形状や、図10(c)の様にエッジ部が欠けた形状などになる事が多い。いわゆる欠けも、断面は上記のいずれかに大別できる。図10(b)、図10(d)の様に、クリーニングブレード損耗の深さD[μm]、巾W[μm]とした。D、及びWを測定し、その積DW[μm2]を損耗の指標とした。
該D、及びWは3Dレーザ顕微鏡(VK−8700:(株)キーエンス製)を用いてクリーニングブレード107の107a方向、107b方向から観測、及び測定を行って求めた。対物レンズは損耗の大きさにも拠るが50乃至は20[倍]、深度0.1[μm]ステップで観測を行った。
【0024】
(7)潤滑剤
潤滑剤は、クリーニングブレード107と感光帯101とのニップ部で容易に引き伸ばされて感光体上に薄い膜を成形して、クリーニングブレードによるクリーニング性能を向上させる。また、トナー外添剤によるフィルミングやトナー固着を防止する。さらに、感光体表面を放電ダメージから守るなどにより、画像流れ防止に効果がある。
潤滑剤は、クリーニングブレードによるクリーニング性能を向上させると共に、帯電手段で発生する帯電生成物が感光体表面に直接付着するのを防止するため、感光体表面に実質的に全域に塗り伸ばされる必要がある。また、潤滑剤は帯電生成物が付着し、高湿環境下では、感光体の表面と同様に低抵抗化するため、適宜除去される必要がある。更に感光体の最表面に塗布されることから、像露光や除電光などの光を透過させる透光性、また、帯電、現像、転写、クリーニングの各行程を阻害しないことも必要である。よって、潤滑剤には、いわゆる使い捨ての表面層として、容易に被膜を生成できること(柔らかくて塗り伸ばしやすい)、掻き取り易さ、被膜の透明性、及び適宜な抵抗を有することが求められる。
これらの物性から、潤滑剤としては、粉末状、粉末状潤滑剤が固形化されたブロック体、或いは液状である、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂、シリコーンオイル等があげられる。中でも、高級脂肪酸金属塩(いわゆる金属石鹸)、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等が好適に用いられる。特にステアリン酸亜鉛は、上記の各特性に優れ、またブロック体への加工容易性も優れて好ましい。
また、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルを主成分とするワックスも好適に用いられる。
潤滑剤を感光体101表面に供給する手段としては、上述のクリーニング装置内に潤滑剤供給手段を設ける方法の他、所定の粒径の潤滑剤を現像剤に外添する等の方法も用いることが可能である。その際にも、潤滑剤は紛体状のみならず、所定形状に成形して使用してもよい。
【0025】
(8)無機微粒子(研磨剤)
上記潤滑剤に、無機微粒子を併用すると、該無機微粒子が被爆した潤滑剤被膜を摺擦研磨するとともに、新しく供給される潤滑剤を撹拌する等して、潤滑剤の均一塗布、入れ替えが好適に促進され好ましい。
無機微粒子は硬度が高く優れた研磨性能を持つ物が好ましく、例えばチタン酸ストロンチ
ウム、チタン酸バリウム、及びチタン酸カルシウム等が用いられる。
なかでも、該無機微粒子を、粒子形状が立方体状及び/又は直方体状にすることで、特に優れた研磨作用を発揮する。これは、粒子形状が立方体状及び/又は直方体状であることで、対象物との接触面積を大きくすることができ、また立方体状又は直方体状の稜線が対象物に当接することで、良好な掻き取り性を得ることができるためだと考えられる。
【0026】
更に、上記無機微粒子の1次粒子の個数平均粒径(すなわち、無機微粒子の個数平均一次粒径)が、50[nm]以上300[nm]以下であることが、上記研磨効果に優れることから好ましい。また、この個数平均1次粒径の無機微粒子は上記当接部を微量ずつすり抜け、クリーニングブレード107と感光体101の当接部に潤滑効果をも寄与する。 上記無機微粒子の個数平均一次粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定して、その平均を求めた。当該粒径は、1次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2として求めた。
上記個数平均一次粒径が30[nm]未満では当該無機微粒子の研磨効果が不十分であり、一方、300[nm]を超えると感光体のキズが生じたり、或いはクリーニングブレードの損耗が増加する場合がある。
感光体101の表面に対する上記の無機微粒子を供給する手段としては、クリーニング手段106内に無機微粉体供給手段を設ける方法以外にも、例えば現像剤に外添する方法(すなわち、無機微粒子の供給手段が現像手段である。)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
無機微粒子を現像剤に添加する場合は、現像濃度や転写性などの,いわゆる現像剤としての機能の観点から、トナー粒子に対する遊離率は20[体積%]以下となるような量、及び/又は強度で添加されていることが好ましく、15[体積%]以下が更に好ましい。ここで遊離率とは、トナー粒子から遊離したペロブスカイト型結晶無機微粒子の割合を体積%で求めたものであり、パーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)により公知の原理(例えば、Japan Hardcopy 97論文集 65〜68頁
(発行者:電子写真学会、発行日:1997年7月9日))で測定されたものである。
また、必要に応じて無機微粒子の抵抗を調整することも好ましい。抵抗調整は製造した該無機微粒子のコア粒子に、酸化度が制御された酸化錫をコートするなどの、公知の方法により制御する事ができる。該無機微粒子の抵抗は、錠剤法により測定し正規化することにより求めることができる。例えば、底面積2.26[cm2]の円筒内に0.5[g]の粉体試料を入れ、上下電極に147N(15[kgf])の加圧を行うと同時に100[V]及び500[V]の電圧を印加して、各々の抵抗値を計測、その後正規化することにより体積抵抗率を算出することができる。
なお、無機微粒子の比重の、潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])は、2以上5以下であることが好ましい。当該比の値を特定の範囲とすることで、無機微粒子が潤滑剤の微粒子の集合体或いは被膜を好適に押しのけ、クリーニングブレード107と感光体101の当接部まで達し、潤滑剤の掻き取りに好適に作用するものと考えられる。
【0027】
(9)像担持体
像担持体101は、周知の感光体を使用することができるが、磨耗量が少ないと、その表面形状が長期に渡り維持され、上記各種無機微粒子などの、すり抜け状態の耐久変動が少なくなるので好ましい。
磨耗量の制御は、クリーニング設定や、帯電手段の設定、上述の潤滑剤の使用などといった、画像形成装置のシステムで行う事もできる。また、耐磨耗性に優れた像担持体を使用すると、同じシステムでも表面形状がより好適に維持され有効である。
耐磨耗性に優れた像担持体として、公知の電子線や光、熱等により硬化された、硬化型表面保護層を有する有機感光体(OCL−OPCと称する)や、アモルファスシリコン系(
a−Siと称する)の感光体等が好ましく使用できる。
また、感光体101の表面形状のRzが大きすぎると、潤滑剤の塗布・被膜化が不均一になったり、クリーニングブレード、無機微粒子やクリーニングブラシによる劣化した潤滑剤の掻き取りや摺擦が不均一になりやすくなったりする場合がある。一方、Rzが小さすぎるとトナー粒子や外添剤が像担持体に付着しフィルミングなどが生じ易くなる場合がある。更にトナーが固着し、画像欠陥になる場合がある。クリーニング手段の構成や使用条件などにもよるが、上記観点より、像担持体の表面粗さRzは0.1[μm]以上1.0[μm]以下が好ましい。該Rzは初期から耐久を通じて上記範囲にあることが好ましい。
像担持体101の表面形状は、成膜後の感光体表面を周方向に市販の研磨テープを使用して研磨処理を施して調整した。
尚、像担持体101の磨耗速度は、0.3[μm/100k回転]以下であると、像担持体の表面形状Rzの変化を抑え、すり抜けやフィルミングの向上を図れることから好ましい。当該像担持体101の磨耗速度[μm/100k回転]は、後述する実施例の耐久の前後で渦電流式の膜厚計(Ficherscope GROUNDEINHEIT MMS 3AM:Ficher製)にて膜厚を測定し、100k回転当りの磨耗量[μm]を算出した。
像担持体101の表面形状Rzは、JISB0601:1994で規定されるRzである。測定は表面粗さ測定器(SURFPAK−SV4000S4:ミツトヨ製)を用い、測定長2.50[mm]、測定回数5[回]、高さ方向フルスケールで8[μm]、フィルターはGaussian、λc=0.25、λs=0.008、測定速度=0.1[mm/sec]で、JIS1994 RLS_JISモードで、長手方向にスキャンして測定した。膜厚、表面形状共に、周方向8点、長手5点の、計40点について測定を行い、平均値をもって各々の値とした。
なお、像担持体101の表面形状は、上述したような周方向の研磨処理の他にも、研磨の方向を変えたり、ブラスト処理する等の公知の方法で調整することもできる。その場合は長手方向だけでなく周方向にも表面形状の測定を行い、Rzが上記の範囲であることが好ましい。
【0028】
(10)現像剤
現像剤は、少なくともトナー粒子と外添剤を含む。更に、本例のごとく2成分現像剤の場合には、外添剤を付与されたトナー粒子(以下、単にトナーと称する)と、キャリア粒子を有する。これらトナー及びキャリア粒子には、公知のものを用いることができる。
トナー粒子は、高画質化、及びクリーニング性などの観点から、質量平均粒径が4乃至12[μm]が好ましく使用される。また、転写性などの画質面から、該トナー粒子の平均円形度は0.930以上が好ましい。一方、0.980以下であると、クリーニングされやすい。また、トナー粒子ごとに異なる方向へ回転負荷を受けやすく、クリーニング部でトナー粒子が拡散されやすい。潤滑剤、乃至は無機微粒子をトナー粒子に外添して使用する際には、トナー粒子の拡散に伴いこれらの粒子も拡散が促進され、長手方向での均一性も向上するので好ましい。
【0029】
(11)クリーニングブレード損耗
ここで、本発明の定性的な説明を行う。
本発明者らは検討の結果、該クリーニングブレード107が動作時に受ける負荷のばらつきが、クリーニング不良、特にびびりや、めくれ、またクリーニングブレード107の損耗に相関があることを見出した。
図9を用いて説明する。クリーニングブレード107は、感光体101に所定の当接圧で当接する(a)。クリーニング動作中、すなわち感光体101が駆動されると、該クリーニングブレード107は、感光体101との当接部で、感光体101の表面に引きずられるようにX方向に負荷を受けて歪む(b)。ある程度歪が生じると、クリーニングブレー
ド107の弾性により元の状態(a)に戻ろうする。この繰返しでクリーニングブレード107はエッジ部、乃至は感光体進行方向で上流側に対抗する面に負荷を受け、えぐれやエッジ部欠けなどの、いわゆるクリーニングブレード損耗が生じる。
また、転写残留物や感光体101の表面状態などにより、不均一に局所的な負荷がかかる場合がある。この場合、当接部位が局所的・瞬間的に感光体101に引きずられるように変形し、スティックスリップなどで復元する動作が繰り返される。この時のクリーニングブレードの受ける負荷は、感光体表面の潤滑剤の状態で変化する。
前述のごとく、感光体表面に保護膜として潤滑剤膜を形成した系において、放電を伴う帯電により、感光体表面に供給される潤滑剤は消失しないレベルであっても、摩擦が増加する。これは潤滑剤が感光体101の保護膜として放電被爆することで劣化するためと考えられる。そして摩擦が増加した状態では、クリーニング不良が生じたり、クリーニングブレード107の損耗が生じやすくなる。この劣化度合いは放電電流Idisに依存し、Idisが大きいほど潤滑剤被膜の劣化も促進される。そのためIdisに応じて、放電被爆し劣化した潤滑剤を、未劣化の新しい潤滑剤に入れ替える必要がある。
【0030】
また、上記のようなクリーニングブレードの挙動は感光体101の面速度Vにも依存し、感光体101の表面の表面状態やクリーニングブレード107の当接条件が同じであっても、感光体面速度Vが増加すると、クリーニングブレード107と感光体101の、動摩擦力の標準偏差が増加する。すなわち、局所的、或いは瞬間的に、異常に大きい摩擦力がクリーニングブレード107乃至は感光体101にかかる。
そのため、感光体面速度Vに応じて、よりクリーニングブレード107の負荷を低減する必要がある。即ち、感光体面速度Vが大きいほど、劣化がより少ない状態で潤滑剤の入れ替えを行う必要がある。
クリーニングブレード107の物性などにもよるが、IdisやVが大きくなり、その結果、動摩擦力の標準偏差がある程度上大きくなると、急激にクリーニング不良やクリーニングブレードの損耗が増大する。
【0031】
本発明者らの検討の結果、Idis×Vが0.1以下のときと、0.1を越えるときで、クリーニングブレードの損耗の傾向が変化し、潤滑剤や無機微粒子の供給に必要な量が異なることを見出した。
すなわち、潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすことことで、使用条件に応じた、適切な潤滑剤入替え量に調整が可能となる。結果、クリーニングブレードの負荷を適正に維持でき、クリーニング不良やクリーニングブレードの損耗の低減が可能となることを見出した。
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
また、Idis×Vの範囲は、0.1以上0.7以下が好ましい。より好ましくは0.125以上0.625以下である。
Idis×Vが0.7より大きいと、潤滑剤の放電被爆劣化が早く、入れ替えに要する量が増加し、装置の大型化、複雑化を招く場合がある。また、現像剤に外添する場合も多量となり、現像手段内で遊離したりして、現像剤の帯電特性などの現像性が低下する場合がある。一方、0.1より小さい場合は、帯電が不均一になる場合がある。
なお、潤滑剤の供給量は、固形化潤滑剤を部材で供給する場合は、耐刷試験前後の該潤滑剤の重量を測定し、像担持体の総回転量から、単位面積当たりの使用量を算出し、供給量Mzとした。
また、現像剤に外添して供給する場合は、転写効率、及びクリーニング装置内の現像剤の
潤滑剤含有率を測定し、耐刷に於いて現像された現像剤量から、供給された潤滑剤の質量を算出し、像担持体の総回転量からMzを求めた。
上記の転写効率は、像担持体上の現像剤の質量を、転写前後で測定し、その比から求めた。また、潤滑剤の含有率は蛍光X線で測定した。
像担持体の面速度は、像担持体の外径と、回転速度を測定して求めた。
一方、放電電流量Idis[mA/m]の算出方法は後述する。
また、無機微粒子は、潤滑剤の攪拌、劣化した潤滑剤の除去、クリーニングブレードの潤滑に寄与しクリーニングブレードの負荷を低減することができる。該無機微粒子はクリーニングブレードを微量ずつすり抜けたり、クリーニング部などで感光体表面から離脱したりするため、やはり同じように放電電流Idisや感光体面速度Vに応じて供給することが必要である。
すなわち、無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(3)及び(4)を満たすことで、クリーニングブレードの損耗の低減、及びクリーニングブレードのすり抜けの低減が可能となることを見出した。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
また、Idis×Vは、0.1以上0.7以下が好ましい。より好ましくは0.125以上0.625以下である。Idis×Vが0.7より大きいと、潤滑剤の放電被爆劣化が早く、入れ替えに要する量が増加し、装置の大型化、複雑化を招く場合がある。また、現像剤に外添する場合も多量となり、現像手段内で遊離したりして、現像剤の帯電特性などの現像性が低下する場合がある。一方、0.1より小さい場合は、帯電が不均一になる場合がある。
なお、上記無機微粒子の供給量(Ms[mg/m2])は上述のMzと同様の方法で測定される。
ここで、上記式(1)〜(4)を定性的に説明する。
上記式(1)は、クリーニングブレードが受ける負荷を抑制し、振動や異音、クリーニングブレードの損耗などを防止するための好適な範囲を示すものである。また上記式(3)は潤滑剤の攪拌、入れ替え促進するための無機微粒子の好適な量を示す。
Idis×Vに対して変局点を有する理由は定かではないが、放電被爆が増加し、潤滑剤の摩擦特性が悪化する他、クリーニングブレードと像担持体との当接部が、該像担持体に引きずられて大きくなり、相乗的にクリーニングブレードの負荷が増大するためと考えられる。
一方、上記式(2)により、多量の潤滑剤が常時供給されることで該潤滑剤の量が過剰になり擦り抜けが生じるのを、抑止できる。また上記式(4)により、無機微粒子の供給を所定量以下に抑制することで、更にすり抜けを改善できる。
該無機微粒子が局在的に過多になったり、潤滑剤皮膜の掻き取りのムラが大きくなったりすることによる、クリーニングブレード長手方向での負荷のムラを抑制し、均一な掻き取りや攪拌が促進されるためと考えられる。
【0032】
(12)放電電流Idis
帯電ローラー102から感光体101に流れる放電電流Idisについて説明する。
前述のように、帯電ローラー102には正弦波交流バイアスに直流バイアスを重畳したAC方式の帯電バイアスが印加されている。
帯電ローラー102と感光体101と間のインピーダンスZcは、図11の等価回路によって表されると考えてよい。Rcは帯電ローラー102の抵抗、Ccは帯電ローラー102の静電容量、Cdは感光体101の静電容量、Cairは帯電ローラー102と感光体
101と間の微小エアギャップ(放電ギャップ)の静電容量である。
放電が起きていない場合は、インピーダンスZcに従って、印加交流電圧Vac(振幅;Vpp)と帯電交流電流Iacの間には以下の関係が成立している。
Iac=Iz ; Iz=α・Vac、 α=1/(√2・Zc)・・・(5)
しかしながら、放電が起きているとき、即ち、
Vac(Vpp)≧2×Vth(V) Vth:放電開始電圧 ・・・(6)
のときは、図12のグラフに示すように、上記の関係からはずれ、Iac≧Izとなる(Izは図12の放電領域での破線部)。本例の説明では、このIacとIzの差Idisを放電電流量と規定する。
放電が起きているときには電気的な過渡現象を含むため、理論的に放電電流量Idisを求めることは難しい。更には、放電電流量Idisは、温湿度や帯電ローラー102の当接条件、物性、現像剤等による汚れなどに影響されやすく常に一定ではない。よって、放電電流量Idisは印字動作毎に、もしくは一定時間毎に求める必要がある。
放電電流量Idisは、以下の式(1)によって算出する。
Idis=Iac−α・Vac ・・・(7)
上記の比例定数αは未放電状態のIac、Vacから求める。放電開始電圧Vth×2(V)未満のピーク間電圧Vppに対して電流Iacの比をαとしたとき、放電による電流以外の、接触部へ流れる電流(以下、ニップ電流)などの交流電流はα・Vppとなる。そして、放電開始電圧Vth×2(V)以上の電圧印加時に測定されるIacと、このα・Vppの差分が放電電流である。
本実施形態では、放電電流量Idisが一定となるように制御している。以下にこの制御方法を述べる。
放電電流量Idisは、一定電圧又は一定電流での制御下で帯電を行った場合、環境、耐久を進めるにつれ変化する。これは、Vppと放電電流量Idisの関係、交流電流値と放電電流量Idisとの関係が変動しているからである。
AC定電流制御方式では帯電ローラー102から被帯電体である感光体101に流れる総電流Iacで、AC定電圧制御方式では帯電ローラー102に印加するAC電圧(Vpp)で、おのおの制御している。そのため、実際に、放電電流量は制御できていない。たとえば帯電ローラー102の材質の環境変動によって、ニップ電流が多くなれば当然放電電流量は減り、ニップ電流が減れば放電電流量は増える。そのため、上記の制御方式でも完全に放電電流量の増減を抑制することは不可能であった。
本発明者らは、所望の放電電流値Idisを常時得るために、以下の要領で制御を行う。本発明の画像形成装置はコントローラ(不図示)及び電流検出手段(不図示)を有している。これらと電源(不図示)により、非画像形成時(紙間、或いはプリント前回転時、プリント後回転時)に、未放電領域の交流電圧(Vpp)を1点、放電領域では交流電圧を2点以上印加し、そのときの総電流Iacを測定する。
該コントローラは、未放電領域として交流電圧0の点(Vpp=0ではIacもIdisも0)と、放電領域の複数の交流電圧で、電流Iacを測定し、各電圧と電流値から近似処理を行い、所望の放電電流Idisに対応する印加電圧Vppを算出し、電源から帯電ローラー102に印加される。電流制御方式の場合には、電流検出手段の替りに電圧検出手段として、未放電領域、及び放電領域のIacを各々印加し、上述の要領で所望のIdisに対応するIacを求めて、印加するようにすればよい。
連続で画像形成を行う場合には、画像形成間で上記の動作を行うことで、安定したIdisを得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明するが、本発明は本実験例に何ら制限されるものではなく、本発明の構成要素を満たす物であれば、他の手段を用いても良い。また、特に示していないが、像担持体である感光体やクリーニングブレードなどの各ユニットが個別に画像形成装置本体に設置されるものであっても良いし、感光体、帯電手段、現像手
段、クリーニング手段の2つ以上が一体化されたカートリッジであってもよい。
【0034】
<無機微粒子の製造例>
酸化アルミニウム(アルミナ)は、公知の気相酸化法や、遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を用いて、所定のガス中で焼成する方法によって得る事ができる。ここでは、気相酸化法でアルミナ微粒子を作成し、該微粒子を電子顕微鏡(SEM)で観測し、個数平均一次粒径を測定した。個数平均一次粒径は400[nm]であった。該粒子を機械式粉砕の条件を変更して、50〜300[nm]の、粒径の異なるアルミナ微粒子を得た。その他、バイヤー法(湿式アルカリ法)等によっても得る事ができる。
また、チタン酸ストロンチウムは、四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加することにより加水分解して得られた含水酸化チタンを純水で洗浄し、該含水酸化チタンのスラリーに含水酸化チタンに対するSO3として0.26[%]の硫酸を添加した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.58に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを5.0に調整し、上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで洗浄を繰り返した。該含水酸化チタンに対し、0.9倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製の反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、SrTiO3換算で0.6[mol/リットル]になるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを60℃まで6.7[℃/時間]で昇温し、60[℃]に到達してから6時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後、純水で洗浄を繰り返し、その後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを乾燥し、焼結工程を経由していないチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
これらの微粒子を電子顕微鏡(SEM)で観測し、個数平均一次粒径を測定した。SEM観測例を図13に示す。当該微粒子は、立方体状乃至は直方体状の結晶構造を有し、個数平均一次粒径が150[nm]であった。
上記製造条件の、pH、Sr(OH)2・8H2Oの量、昇温条件等を調整することで異なる粒径のチタン酸ストロンチウムを得る事ができる。
この他に、シリカ微粒子も周知の製造方法にて平均粒径50[nm]のシリカ微粒子を得た。
【0035】
<像担持体製造例>
図14は本例における像担持体である感光体101の層構成模型図である。この感光体101は、支持体101aの上に、感光層として電荷発生層101dと電荷輸送層101eが順に設けており、更に磨耗レートの小さい(機械的強度が高い)感光体には最表面に表面保護層101fを設けている。また、支持体101aと電荷発生層101dの間に、結着層101b、更には干渉縞防止などを目的とする下引き層101cを設けてもよい。
支持体101aとしては、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレスなどの、支持体自身が導電性を持つものや、アルミニウム、アルミニウム合金又は酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって被膜形成された層を有する前記支持体やプラスチックを用いることができる。また、導電性微粒子(例えば、カーボンブラック、酸化スズ、酸化チタン及び銀粒子など)を適当な結着樹脂と共にプラスチックや紙に含浸した支持体、導電性結着樹脂を有するプラスチックなどを用いることができる。
また、支持体101aと感光層101d及び101eの間には、バリアー機能と接着機能を持つ結着層(接着層)101bを設けることができる。結着層101bは、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体101aの欠陥の被覆、支持体101aからの電荷注入性改良及び感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。結着層101bは、カゼイン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、変性ポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン又は酸化アルミニウムなどによって形成できる。結着層101bの膜厚は、5[μm]以下が好ましく、特には0.1〜3[μm]が好ましい。
【0036】
電荷発生層101dに用いる電荷発生物質としては、(1)モノアゾ、ジスアゾ及びトリスアゾなどのアゾ系顔料、(2)金属フタロシアニン及び非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料料が挙げられる。また、(3)インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、(4)ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミドなどのペリレン系顔料が挙げられる。また、(5)アンスラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、(6)スクワリリウム色素が挙げられる。また、(7)ピリリウム塩及びチアピリリウム塩類、(8)トリフェニルメタン系色素が挙げられる。また、(9)セレン、セレン−テルル及びアモルファスシリコンなどの無機物質、(10)キナクリドン顔料、(11)アズレニウム塩顔料、(12)シアニン染料が挙げられる。また、(13)キサンテン色素、(14)キノンイミン色素、(15)スチリル色素、(16)硫化カドミウム及び(17)酸化亜鉛などが挙げられる。
電荷発生層101dに用いる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。また、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂及び塩過ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。これらは、単独・混合或いは共重合体ポリマーとして1種又は2種以上用いることができる。
電荷発生層用塗料に用いる溶剤は、使用する樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、アルコール類、スルホキシド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類又は芳香族化合物などを用いることができる。
電荷発生層101dは、前記の電荷発生物質を質量基準で0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミルなどの方法でよく分散し、塗布、乾燥されて形成される。その厚みは、5[μm]以下が好ましく、特には0.01〜1[μm]の範囲が好ましい。
また、電荷発生層101dには、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び公知の電荷発生物質を必要に応じて添加することもできる。
【0037】
電荷輸送層101eに用いられる電荷輸送物質としては、各種トリアリールアミン系化合物、各種ヒドラゾン系化合物、各種スチリル系化合物、各種スチルベン系化合物が挙げられる。また、各種ピラゾリン系化合物、各種オキサゾール系化合物、各種チアゾール系化合物及び各種トリアリールメタン系化合物などが挙げられる。
電荷輸送層101eを形成するのに用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂が好ましい。また、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンオキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及び不飽和樹脂などから選ばれる樹脂が好ましい。特に好ましい樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。
電荷輸送層101eは、一般的には前記の電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解し、塗布して形成する。電荷輸送物質と結着樹脂との混合割合(質量比)は、2:1〜1:2程度である。溶剤としては、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル類が用いられる。また、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルム及び四塩化炭素などの塩素系炭化水素類、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル類などが用いられる。
この溶液を塗布する際には、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法及びスピンナーコーティング法などのコーティング法を用いることができる。乾燥は10℃〜200[℃]が好ましく、より好ましくは20〜150[℃]の範囲の温度で、5分〜5
時間が好ましく、より好ましくは10[min]〜2[時間]の時間で送風乾燥又は静止乾燥下で行うことができる。
電荷輸送層101eは、上述の電荷発生層101dと電気的に接続されており、電界の存在下で電荷発生層101dから注入された電荷キャリアを受け取ると共に、これらの電荷キャリアを保護層101fとの界面まで輸送する機能を有している。この電荷輸送層101eは、電荷キャリアを輸送する限界があるので必要以上に膜厚を厚くすることができないが、5〜40[μm]が好ましく、特には7〜30[μm]の範囲が好ましい。
更に、電荷輸送層101e中には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び公知の電荷輸送物質を必要に応じて添加することもできる。
【0038】
更に、この電荷輸送層101eの上に前記表面保護層101fを塗布、硬化させて成膜することで、磨耗速度が異なる感光体101を作成することができる。
(1)表面保護層101fの形成方法[1]
上記条件を満足させる電子写真感光体の表面保護層101fとして、下記の化学式1で示すような、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物を含有する保護層がある。
【0039】
【化1】
【0040】
化学式1中、Aは正孔輸送性基を示す。P1及びP2は連鎖重合性官能基を示す。P1とP2は同一でも異なってもよい。Zは置換基を有してもよい有機残基を示す。a、b及びdは0又は1以上の整数を示し、a+b×dは2以上の整数を示す。また、aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく、dが2以上の場合P2は同一でも異なってもよく、またbが2以上の場合、Z及びP2は同一でも異なってもよい。
【0041】
前記同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合させることで、その表面保護層101f中において、正孔輸送能を有する化合物は少なくとも二つ以上の架橋点をもって3次元架橋構造の中に共有結合を介して取り込まれる。前記正孔輸送性化合物はそれのみを重合させる、又は他の連鎖重合性基を有する化合物と混合させることのいずれもが可能であり、その種類/比率はすべて任意である。ここでいう他の連鎖重合性基を有する化合物とは、連鎖重合性基を有する単量体、オリゴマー又はポリマーのいずれもが含まれる。正孔輸送性化合物の官能基とその他の連鎖重合性化合物の官能基が同一の基又は互いに重合可能な基である場合には、両者は共有結合を介した共重合3次元架橋構造をとることが可能である。両者の官能基が互いに重合しない官能基である場合には、感光層は少なくとも二つ以上の3次元硬化物の混合物又は主成分の3次元硬化物中に他の連鎖重合性化合物単量体又はその硬化物を含んだ物として構成される。その配合比率/製膜方法をうまくコントロールすることで、IPN(Inter Penetrating Network)すなわち相互進入網目構造を形成することも可能である。
表面保護層101fには、潤滑材として、フッ素原子含有樹脂、フッ化カーボン、ポリオレフィン樹脂からなる群のなかから選ばれた少なくとも一種を含有させることができる。その好ましい化合物としては以下の物が挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
フッ素原子含有樹脂として好ましいものは、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオロライド、クロロトリフルオロエチレンより選ばれる化合物の重合体もしくは共重合体樹脂及び樹脂微粒子が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン
、パーフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルより選ばれる化合物の重合体もしくは共重合体樹脂及び樹脂微粒子が挙げられる。フッ化カーボンは(CF)n、(C2F)nで表される化合物が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂として好ましいものは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等のホモポリマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のコポリマー樹脂及び樹脂粉体が挙げられる。
これらの潤滑材はそれぞれ単独でも2種以上を任意の割合で用いることも可能である。また、表面保護層101fには前記潤滑材の分散剤、分散助剤、その他の各種添加剤、界面活性剤等を含有してもよい。
表面保護層101fに潤滑材としてフッ素原子含有樹脂、フッ化カーボン、ポリオレフィン系樹脂のうち少なくとも1種を含有させることにより、感光体の表面の滑り性、撥水性を高めることができる。これにより、更に表面保護層101fの磨耗や形状の変化を抑制することができる。そして、繰り返し使用時の帯電、現像、転写等による表面保護層101fの化学的劣化に伴う転写効率や滑り性の低下、更には感度低下、電位低下などの電気特性の劣化を防ぐことができる。特に好ましくはフッ素含有樹脂であると更に好適な結果が得られる。
表面保護層101fに含有させる潤滑材の割合は、表面保護層101fとなる層の全重量に対し、1〜70[%]が好ましく、より好ましくは5〜50[%]である。潤滑材が70[%]より多いと表面保護層101fとなる層の機械的強度が低下しやすく、1[%]より少ないと表面保護層101fとなる層の撥水性、滑り性が充分ではなくなることがある。
前記連鎖重合性基を有する正孔輸送性化合物の硬化物を含有する表面保護層101fに、電荷輸送物質を含有させることも可能である。
前記表面保護層101fの形成方法は、前記正孔輸送性化合物を含有する溶液を塗布後、重合反応をさせるのが一般的である。前もって該正孔輸送性化合物を含む溶液を反応させて硬化物を得た後に、再度溶剤中に分散又は溶解させて、表面保護層を形成することも可能である。これらの溶液を塗布する方法は、例えば、浸漬コーティング法、スプレ−コーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法などが知られている。効率性及び生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。
前記連鎖重合性基を有する正孔輸送性化合物は、放射線により重合させることが好ましい。放射線による重合の最大の利点は重合開始剤を必要としない点であり、これにより非常に高純度な三次元感光層の作製が可能となり、良好な電子写真特性が確保される点である。また、短時間でかつ効率的な重合反応であるがゆえに生産性も高く、更には放射線の透過性のよさから、厚膜時や添加剤などの遮蔽物質が膜中に存在する際の硬化阻害の影響が非常に小さいことなどが挙げられる。ただし、連鎖重合性基の種類や中心骨格の種類によっては重合反応が進行しにくい場合があり、その際には影響のない範囲内での重合開始剤の添加は可能である。この際使用する放射線とは電子線及びγ線である。電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型などいずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、電気特性及び耐久性能を発現させる上で、照射条件が非常に重要である。加速電圧は250[kV]以下が好ましく、最適には150[kV]以下である。また線量は好ましくは10〜1000[kGy]の範囲である。加速電圧が上記を越えると、感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、線量が上記範囲よりも少ない場合には硬化が不十分となりやすく、線量が多い場合には感光体特性の劣化がおこりやすい。
【0042】
(2)表面保護層101fの形成方法[2]
更に、表面保護層101fとして、硬化性フェノール樹脂及び、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基又は置換基を有してもよいヒドロキシフェニル基からなる群より選択される基の少なくとも一つを有する電荷輸送物質を含有する表面保護層がある。
前記表面保護層に用いる結着樹脂である硬化性フェノール樹脂は、一般的にフェノール類とホルムアルデヒドの反応によって得られる樹脂である。フェノール樹脂には2つのタイプがあり、フェノール類に対してホルムアルデヒドを過剰にしてアルカリ触媒で反応させて得られるレゾール型と、ホルムアルデヒドに対しフェノール類を過剰にして酸触媒で反応させて得られるノボラック型にわけられる。
レゾール型は、アルコール類及びケトン類の溶媒にも可溶であり、加熱することで3次元的に架橋重合して硬化物となる。一方、ノボラック型は、一般にそのまま加熱しても硬化はしないが、パラホルムアルデヒドやヘキサメチレンテトラミンなどのホルムアルデヒド源を加えて加熱することで硬化物を生成する。一般的に工業的には、レゾール型は塗料、接着剤、注型品及び積層品用のワニスとして利用され、ノボラック型は主として成形材料や結合剤として利用されている。
結着樹脂として利用されるフェノール樹脂は、上記のレゾール型及びノボラック型のどちらでも利用可能であるが、硬化剤を加えることなく硬化することや、塗料としての操作性などからレゾール型を用いることが好ましい。これらのフェノール樹脂を1種類又は2種類以上混合して用いることができ、また、レゾール型とノボラック型を混合して用いることも可能である。
例えば、ヒドロキシメチル基2個以上を有するポリヒドロキシメチル化されたビスフェノール化合物を用いて表面保護層101fを形成させることができる。
上述のビスフェノール化合物の骨格は、下記の化学式2で示される構造を有する。
【0043】
【化2】
【0044】
化学式2中、Xは単結合若しくは2価の結合基を表す。R1及びR2は夫々置換基としてハロゲン原子、アリール基、ビニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい環状アルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を表す。
【0045】
このポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物は、加熱処理を施すことにより、ヒドロキシメチル基同士の縮合反応によりエーテル結合、若しくは更に縮合反応が進みメチレン結合を形成する。或いはヒドロキシメチル基とフェノール性水酸基のオルト位やパラ位の水素原子との縮合反応によりメチレン結合を形成する。これらの縮合反応が種々の分子間で起こることにより、架橋密度の高い三次元硬化膜を得ることができる。これらの縮合反応は、本質的に空気中の水分や酸素により阻害されることもなく、また電荷輸送材料を添加した系においても十分に進行する反応である。ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物の加熱処理による架橋反応においては、熱硬化性に一般的に用いられるような硬化触媒を特に添加する必要が無いという特徴を有する。従って、このような化合物を電子写真感光体の表面保護層101fとして用いる場合には、残留硬化触媒に起因する残留電位の上昇や表面保護層101fの抵抗低下といった問題も発生しない。
また、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物は、硬化触媒を加える必要が無いことや、ヒドロキシメチル基自体が、イソシアネートやシリコーン樹脂とは異なり水分に対す
る安定性も十分にあるため、塗工液の安定性においても優れている。
表面保護層101fは、硬化性フェノール樹脂を溶剤などで溶解又は希釈して得た塗料を感光層上に塗工して成形するが、塗工後に重合反応が起こり硬化層を形成する。重合の形態として、熱による付加及び縮合反応により進行し、表面保護層を塗工後、加熱することで重合反応を起こし高分子硬化層を生成する。
また、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基又は置換基を有してもよいヒドロキシフェニル基を有する電荷輸送物質は、トリフェニルアミン誘導体であることが好ましい。なお、上記ヒドロキシフェニル基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などのアルキル基が挙げられる。また、置換基を有してもよいメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基などのアルコキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基などのアリール基が挙げられる。又は置換基を有してもよいピリジル基、チエニル基、フリル基及びキノリル基などの複素環基が挙げられる。
前記電荷輸送物質のうち、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシ基を有する電荷輸送物質は、下記の化学式3で表される特定の構造を有する化合物であることが好ましい。
【0046】
【化3】
【0047】
化学式3中、R11、R12及びR13はそれぞれ炭素数1〜8の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。α、β及びγはそれぞれ置換基としてハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基を1つ以上有してもよいベンゼン環を表す。a1、b1及びc1は1又は0であり、m1及びn1は0又は1である。
【0048】
また、電荷輸送物質は、該表面保護層101fを作製するための塗料中に均一に溶解又は分散させ、塗布して形成する。電荷輸送物質と硬化性フェノール樹脂の混合割合は、質量比で、電荷輸送物質/硬化性フェノール樹脂=0.1/10〜20/10が好ましく、特には0.5/10〜10/10が好ましい。硬化性フェノール樹脂に対して電荷輸送物質が少なすぎると残留電位低下の効果が小さくなり、多すぎると表面保護層の強度を弱める可能性がある。
表面保護層101fは、本質的に抵抗体としてではなく、表面保護層中に含有させた電荷輸送物質により電荷を移動させて、表面保護層を施した電子写真感光体の感度を維持し、残留電位を低下させるものである。従って、抵抗体としての体積抵抗率は低く設定する必要はなく、その体積抵抗率として、1×1012[Ω・cm]以上にすることにより、形成された静電潜像の流れなどを高い次元で抑制することができる。
上記の表面保護層101fを有する電子写真感光体において、更にフッ素原子含有樹脂微粒子を含有させることによって、電子写真感光体表面の離型性の向上をより高い次元で達成できる。
フッ素原子含有樹脂微粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂などが好ましい。及びこれらの共重合体の中から1種或いは2種以上を適宜選択するのが好ましい。特に、四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。樹脂粒子の分子量分布や粒径は、適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
表面保護層101fの塗工液を作製する溶剤としては、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物並びに電荷輸送材料を十分に溶解し、更に、表面保護層101fの塗工液と接触する下層の電荷輸送層若しくは電荷発生層等に悪影響を与えない溶剤が好ましい。
従って、溶剤としては、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル類が使用可能である。また、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン及びジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類等が使用可能である。また、更にこれらを混合して用いてもよい。これらの中でも最も好適な溶剤は、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類である。
従来、公知の電荷輸送材料は一般的にアルコール類の溶剤には不溶又は難溶であり、ポリヒドロキシメチルビスフェノール化合物への均一な溶解は困難である。しかし、電荷輸送材料としてヒドロキシ基を含有する場合には、アルコール類を主成分とする溶剤に可溶であり、電荷輸送層等の下層に対する影響も少ない。
表面保護層101fの塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法及びブレードコーティング法等の一般的な塗工方法を用いることができる。前記表面保護層101f中に、帯電時に発生するオゾンやNOx等の活性物質の付着による表面保護層101fの劣化等を防止する目的で、酸化防止剤の添加材を加えてもよい。
【0049】
本例では、2種類の表面保護層101fを形成させた感光体と、表面保護層を設けない感光体の計3種類の感光体を得た。
【0050】
[感光体製造例1(電子写真感光体A)]
長さ260.5[mm]、直径60[mm]のアルミニウムシリンダー(JIS A3003アルミニウム合金)を支持体101aとした。この上に、ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ製)の5質量%メタノール溶液を浸漬法で塗布し、膜厚が0.5[μm]の下引き層101cを形成した。
次に、下記の電荷発生層用塗料(a〜c)を、1[mmφ]ガラスビーズを用いたサンドミルで1[時間]分散し、これにメチルエチルケトン100[質量部;以下、単に[部]と称する]を加えて希釈調製し、これを上記の下引き層101c上に浸漬塗布し、90[℃]で10[分間]乾燥して、膜厚0.17[μm]の電荷発生層101dを形成した。a:電荷発生材料としてCuKαのX線回折における回折角2θ±0.2が28.1°に最も強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶・・・3[部]
b:ポリビニルブチラール・・・2[部]
c:シクロヘキサノン・・・100[部]
次に下記の電荷輸送層用塗料(d〜g)を調製し、これを上記の電荷発生層101d上に浸漬塗布し、110℃で1[時間]熱風乾燥し、膜厚が13[μm]の電荷輸送層101eを形成した。
d:下記の化学式4の電荷輸送材料化合物・・・7[部]
【0051】
【化4】
【0052】
e:ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製)・・・10[部]
f:モノクロロベンゼン・・・105[部]
g:ジクロロメタン・・・35[部]
【0053】
更に保護層101fを、下記の要領で形成した。
本例では反転現像を用いており、表面保護層101fとして下記の化学式5の正孔輸送性化合物を電子線照射により重合させた化合物を含有する表面層を塗工し硬化させた有機感光体とした。
下記の化学式5の正孔輸送性化合物40部をn−プロピルアルコール60[部]に溶解する。
【0054】
【化5】
【0055】
更に、テトラフルオロエチレン微粒子を10[部]添加して、高圧分散機(マイクロフルイタイザー、Microfluidics社製)にて分散させた表面保護層用塗料を調整した。
この塗料を前記4層101a+101c+101d+101eの感光体上に塗布したのち、加速電圧150[KV]、線量40[kGy]の条件で電子線を照射し、膜厚3[μm]の保護層101fを形成し、電子写真感光体Aを得た。
【0056】
[感光体製造例2(電子写真感光体B)]
下記の表面保護層用塗工液を作製した。
・表面保護層用塗料
a:結着樹脂である硬化性フェノール樹脂として、下記の化学式6で示されるビスフェノールのフェノール性水酸基のオルト位水素原子が全てヒドロキシメチル基で置換されたテトラキスヒドロキシメチル−ビスフェノール化合物・・・100[部]
【0057】
【化6】
b:下記の化学式7で表される電荷輸送材料・・・70[部]
【0058】
【化7】
【0059】
c:テトラフルオロエチレン微粒子・・・42[部]
d:エタノール・・・150[部]
を混合し、高圧分散機(マイクロフルイタイザー、Microfluidics社製)にて分散させた溶剤に溶解させたもの。
上記表面保護層用塗工液を、感光体製造例1と同じ101a+101c+101d+101eの感光体上に浸漬塗布し、145[℃]で1[時間]熱風乾燥し、膜厚が3[μm]の表面保護層101fを設けて、電子写真感光体Bを得た。
ここで、表面保護層101fの膜厚は、干渉膜厚計(大塚電子(株)製)を用いて行った。
【0060】
[感光体製造例3(電子写真感光体C)]
感光体製造例1と同じ4層101a+101c+101d+101eの構成で、表面保護層を設けない電子写真感光体Cを得た。替りに電荷輸送層1eを16[μm]として、感光体A及びBと同じ総膜厚とした。
得られた感光体は、表面形状調整のため、必要に応じてラッピングテープを使用して表面研磨処理を施した。
【0061】
<現像剤製造例>
周知の製造方法で、非磁性トナー粒子(質量平均粒径5.5[μm]、平均円形度0.918)を得た。該非磁性トナー粒子100[部]に対して、平均粒径0.02[μm]のシリカ粒子を1.2[部]、及び必要に応じて潤滑剤、乃至は無機微粒子を外添してトナー(T)を得た。
キャリア(C)は、imagePRESS C1用のキャリアを使用し、トナー(T)/現像剤(T+C)の質量比が8[%]となる様に混合して現像剤を得た。
【0062】
<評価装置>
評価用の画像形成装置として、図1乃至図4の如き画像形成装置を用意した。
図1を用いて、評価装置の説明をする。
クリーニングブレード107は図5の如く、厚さTが2[mm]の板状のものを、クリーニングブレード付勢手段(バネ)107Sに接続しているクリーニングブレード板金(基材)107Bに固定した。クリーニングブレード107は、感光体101に当接圧=24.5[N/m](25[g/cm])、設定角θ=23[°]で当接される。また、クリーニングブラシ108には、転写残トナー等を除去するフリッカーバー111を付与した。該フリッカーバー111の位置は、クリーニングブラシ108の駆動方向や速度に応じて向きや位置などの設定条件を調整すればよい。
クリーニングブラシ108は、導電性の繊維を基布に織りこみ、それを直径6[mm]の芯金上に巻き付けて直径16[mm]のロールブラシ状に構成している。導電性繊維として、太さ0.67[Tex](6[デニール])のアクリルの導電糸を用い、繊維密度が10[万本/inch2]となるようにW織りで基布に植え込んだものをシート状に形成し、芯金との導電性を確保するようにして巻き付けている。ブラシの抵抗は6×103[Ω・cm]とした。そして、感光体101に対する侵入量=1[mm]で、当接幅=7[mm]をもって接している。
感光体101は、上述の像担持体製造例で作成した感光体を使用し、矢印Xの方向に所定の面速度で回転駆動させた。
帯電手段102にはiRC5185(キヤノン株式会社製)用の帯電ローラーを、実効長(帯電可能部位の長さ)を0.32[m]としたものを使用し、潜像形成信号103付与手段には1200[dpi]のレーザー露光装置を付与した。帯電ローラー102に印加するバイアス、及び潜像形成信号103は、潜像露光非照射時の現像手段104位置での感光体101の表面電位(Vd)の絶対値が600[V]、潜像露光照射部電位(Vl)の絶対値が150[V]になる様に調整される。
更に、現像手段104として非磁性2成分現像手段、転写手段105はベルト状の中間転写体を付与した。転写ベルトや現像器等の駆動条件、バイアス条件を調整した。これら各々の駆動速度や印加するバイアス条件は、感光体101の面速度に応じて適宜調整される。
【0063】
<実施例1>
上述の評価装置を用い、像担持体(感光体101)の面速度は0.25[m/sec]とした。また、クリーニングブラシ108は感光体101との当接部において同方向(図中で反時計方向)に、感光体101の面速度の120[%]で駆動される様に調整した。
放電電流は100[μA]、すなわち単位長さ当りの放電電流Idisが0.313[mA/m]となるように、ACバイアスを調整している。クリーニングブレード107は、ゴム硬度73[°]、100%モジュラス=3920[kN/m2](40[kgf/cm2])、破断伸び=420[%]のポリウレタンゴムを使用した。潤滑剤109は直方体状に形成したステアリン酸亜鉛を不図示の板金に固定し、板金ごと付勢部材であるバネ110で、クリーニング手段106に当接させた。なお、不図示の圧検出手段を付与し、一定圧で当接する様にしてある。無機微粒子としては、上述の現像剤製造例の外添に際し、個数平均一次粒径150[nm]のチタン酸ストロンチウム0.8[部]を、シリカ粒子と共に外添してトナーを作成した。感光体101は前記感光体Aを使用し、評価前の表面形状をRziniが0.3584[μm]となるように表面研磨処理した。
耐久は、図15(a)の如き、300[μm]線を5[mm]間隔にした横罫線で形成される画像比率6[%]の画像を原稿として使用し、常温/常湿(23[℃]/50[%];N/Nと称する)環境下で、A4用紙、片面2枚間欠で10[時間/日]の耐久印刷を行い、100[k枚]の耐久を行った。次に、高温/高湿(30[℃]/80[%];H/Hと称する)環境下、更に低温/低湿(15[℃]/10[%];L/Lと称する)環境下で、N/N環境同様に、各々100[k枚]、合計300[k枚]の耐久を行った。各耐久印刷日とも、夜間は電源を完全OFFとした。
各環境で、初期、及び朝一番の印刷、晩のラスト印刷については、評価用画像形成を行っ
たのち、下記の過酷運転を行い、その後もう一度評価用画像形成を行った。また、異音、振動(ビビリ)等の有無を評価した。
過酷運転は下記の様に行った。図15(b)の如く、長手方向で局在化した、画像比率6[%]の画像形成を1[分間](本例では60[枚])の画像形成をした。その後、現像器と転写手段を解除し、非通紙とした以外は通常の耐刷状態で1[分間]の空回転を5回、計5[分間]の空回転を行った。
尚、評価画像としては1ドット1スペースのハーフトーン画像(1D1Sと記する)、5[mm]間隔の格子画像、1D1S、1D2S、ベタ、白、前半はベタで後半が白のツートーン画像、17階調画像、更に再度1D1Sを、この順番で画像形成した。
上記の各環境での耐久、過酷運転評価、画像評価を行った後に、クリーニングブレードのエッジ部の損耗測定と像担持体の観測、測定を行った。
各評価項目と評価基準は下記のとおりである。○は非常に良好、△は良好、乃至は実用上問題無し、×は従来並、乃至は特性上不足となる場合がある
なお、各評価条件を表1〜2に、評価結果を下表3に示す。
【0064】
<異音、振動>
上記過酷運転中の画像形成装置から生じる音、振動から評価した
◎; 異音、振動無し
○; 過酷運転中の異音あり(小音)。振動無し
□; 過酷運転中の異音有り(大音)。振動無し
△; 通常運転中の異音有り(少音)。振動無し
×; 通常耐久時の異音あり(大音) または、振動乃至クリーニングブレード捲れ
【0065】
<すり抜け>
主に罫線、ツートーン、ハーフトーンの各画像の目視評価と、感光体表面観察結果から評価した
◎; 画像上すり抜け無し。像担持体表面も清浄
○; 画像上すり抜け無し。像担持体表面をテーピングですり抜けが検出できる程度で、クリーニングブレードの裏側(感光体進行方向で下流側)のトナー汚れ無し。
□; 画像上すり抜け無し。クリーニングブレードの裏側(感光体進行方向で下流側)のトナー汚れ有り
△; 像担持体上にはすり抜け見られるが、画像上には出ていない
×; 画像上すり抜け発生
【0066】
<フィルミング・トナー固着>
ハーフトーン、ベタ、白、17階調の画像と、それに対応する感光体表面観測結果から評価した。
◎; 画像上フィルミング、トナー固着共に無し。像担持体表面も清浄
○; 像担持体上には局所的な付着物見られるが、画像上フィルミング、トナー固着共に無し
□; 像担持体上には局所的なトナー固着見られるが、画像上フィルミング、トナー固着共に無し
△; 像担持体上には中〜広範囲に付着物見られるが、画像上フィルミング無し
×; 画像上フィルミング、或いはトナー固着起因の画像不良あり
【0067】
<クリーニングブレードの損耗>
◎; DWが 75[μm2] 以下
○; DWが 75超 150[μm2] 以下
□; DWが150超 225[μm2] 以下
△; DWが225超 300[μm2] 以下
×; DWが 300[μm2] 超
【0068】
<感光体の損耗>
耐久前後の感光体の膜厚測定から、該感光体100[k回転]当りの磨耗量[μm/100k回転]を算出した。また、耐久後の表面粗さRzlast[μm]を測定した。
なお、耐久を通じてのRzの最大値として、RziniとRzlastの大きい方を大Rzとして表示した。
【0069】
<実施例2>
実施例1に対して、感光体101は感光体Aを、Rziniが0.3213[μm]となるようにした。該感光体101の面速度を0.50[m/sec]としたほか、バネ110を変更し、潤滑剤109がクリーニングブラシ108に当接する圧を高くなる様にした。また、トナー製造の外添に際し、平均粒径150[nm]のチタン酸ストロンチウム1.6[部]外添してトナーを得た。
諸条件を表1〜2に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表3に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
実施例1、2何れも異音などの不具合も無く、クリーニングブレード欠けが非常に小さく、又、耐久を通じて良好な画像を得られた。
【0074】
<実施例3〜20、実施例74>
評価装置として、図4の如き装置を使用した。
感光体101は、感光体Cを使用した。また、現像剤製造例でいう無機微粒子は本例では添加せず、トナー製造の際にステアリン酸カルシウムの微粒子を、添加量を振りながら外添してトナーを得た。感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。
諸条件を表4〜5に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表6に示す。
【0075】
<比較例1〜8>
評価装置として、図4の如き装置を使用した。
感光体101は、感光体B、及び感光体Cを使用した。また、現像剤製造例でいう無機微粒子は本例では添加せず、トナー製造の際にステアリン酸カルシウムの微粒子を、添加量を振りながら外添してトナーを得た。
感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。諸条件を表4〜5に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表6に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
実施例3〜20、及び実施例74と、比較例1〜8の結果をIdis×Vを横軸に、
潤滑剤供給量Mzを縦軸にして、実施例(△以上の評価)を○、比較例(評価結果に×が含まれる)を×として表記した物を図7及び図8に示す。
表4〜6、及び図7及び8より、
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
且つ、Mz≦5 ・・・(2)
ただし、
Idis×V≦0.1の時は Az=0.66、 Bz=0.004
Idis×V>0.1の時は Az=2.72、 Bz=−0.202
の時に、良好な結果が得られた。
【0080】
<実施例21〜50>
評価装置として、図2の如く無機微粒子溜りを有する装置を用いた。潤滑剤はステアリン酸カルシウムを実施例3〜20、実施例74と同様に外添した。無機微粒子として剤溜り109’に保持された、平均粒径400[nm]のアルミナ粒子を、クリーニングブラシ109’を用いて感光体101表面に塗布するようにした。なお、塗布量はクリーニングブラシ109’の回転速度と、フリッカーバー111の設定条件を調整して制御した。
これらについて、感光体101の面速度Vと放電電流Idisを振って、実施例1と同様の耐久評価を行った。諸条件を表7〜8に示す。また、実施例1と同様の耐久評価を行った結果を、表9に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
表7〜9より、無機微粒子を付与した中でも特に、下式の無機微粒子の供給量Ms[mg/m2]が、範囲を満たす実施例23〜25、実施例28〜30、実施例33〜35、実施例38〜40、実施例43〜45、実施例48〜50においてクリーニングブレード損耗やすり抜けが向上した。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
且つ、 Ms≦15 ・・・(4)
ただし、
Idis×V≦0.1の時は As=1.00、 Bs=0.100
Idis×V>0.1の時は As=2.48、 Bs=−0.048
【0085】
詳細なメカニズムは不明だが、無機微粒子が適量存在する事で、クリーニング手段に於ける潤滑剤の塗延ばしや、掻き取りに有効に作用しているのではないかと思われる。また、該無機微粒子はクリーニングブレード107と感光体101の当接部でコロのような滑剤としての作用も推察される。
さらに、潤滑剤のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの比重は、各々1.1、0.9である。一方、無機微粒子のチタン酸ストロンチウム、アルミナ、シリカの比重は各々5.13、3乃至4、1.9乃至2.1であり、無機微粒子の比重が、潤滑剤の比重の概ね2乃至6[倍]となっている。この比重の差により、無機微粒子が潤滑剤の微粒子の集合体或いは被膜を好適に押しのけ、クリーニングブレード107と感光体101の当接部まで達し、掻き取りに作用していると考えられる。
【0086】
<実施例51〜58>
評価装置として、図3の如く、剤溜りとクリーニングブラシを各々複数有する装置を用いた。クリーニングブラシは、前述の製造例に対して、太さを5[mm]の芯金に0.5[mm]厚の基布、及び繊維長は3[mm]としたパイルを巻き付け直径12[mm]のロールブラシ状にした。剤溜り109’に無機微粒子を、剤溜り109に潤滑剤を、各々保持し、上記ブラシで感光体表面に塗布した。いずれも、塗布量の制御はクリーニングブラシ108、108’の回転速度とフリッカーバー111、111’の設定条件を調整して行った。
これら各々の耐久評価を行った。諸条件を表10〜11に、評価結果を表12に、夫々示す。
【0087】
【表10】
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
表10〜12より、潤滑剤供給手段を設けることで、フィルミングや異音が低減された。また、表10〜12の実施例51と実施例52〜58の比較より、潤滑剤にステアリン酸亜鉛を使用すると、DWが低減した。
また、無機微粒子の粒径が50[nm]以上300[nm]以下である実施例54〜58は、異音・すり抜けが抑制された。更に、無機微粒子をチタン酸ストロンチウムとした実施例58はDWが更に低減していた。
【0091】
<実施例59〜66>
感光体として、感光体A、及び感光体Bを使用し、更に研磨工程で初期の表面形状Rziniを調整した。評価機は図3の潤滑剤供給手段であった潤滑剤溜り109を、図1、実施例1の如く固体状で使用した。該評価機を用いて、実施例51〜58と同様の耐久評価を行った。実施例64〜66に関しては、一部クリーニングブレードのゴム物性の異なる物を使用した。
諸条件を表13〜14に、耐久評価結果を表15に、各々示す。
【0092】
【表13】
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
実施例58と実施例59の比較から分るように、固形化潤滑剤とブラシ部材による潤滑剤供給手段を使用すると、特性上の弊害無く、画像形成装置の小型化に有利である。また、後述するような、ブラシ部材の当接圧による制御も可能であり、潤滑剤を安定して長期に供給するのに有利で、クリーニング性を長期に維持するのに好ましい。
また、実施例59と実施例60以降の比較で、磨耗速度が0.3[μm/100k回転]以下の実施例は感光体の表面形状Rzの変化が少なく、すり抜けやフィルミングが向上していた。
特に表面形状の最大値「大Rz」が0.1〜1.0[μm]以下である実施例62〜66では更に、異音・振動が向上していた。表面形状が好適に維持され、滑りすぎたり、異常な摩擦が抑制されたためと考えられる。
【0096】
<実施例67〜73>
クリーニングブレードの特性が異なる物を使用した。
評価機は実施例59〜66と同様の評価機を使用した。潤滑剤の供給量制御は、実施例67〜69は実施例59〜66同様にクリーニングブラシの回転速度を調整して制御した。また、実施例70〜73に関しては、実施例1と同様に潤滑剤とクリーニングブラシの当接圧を調整して制御するようにした。その際、クリーニングブラシの回転速度も実施例1と同様にした。
諸条件を表16〜17に、耐久評価結果を表18に、それぞれ示す。
【0097】
【表16】
【0098】
【表17】
【0099】
【表18】
【0100】
表13〜15と、上記表16〜18の実施例67〜68の結果の比較から、2940≦100%モジュラス≦5880[kN/m2](30≦100%モジュラス≦60[kgf/cm2])、破断伸びが300[%]以上の時に、クリーニングブレード損耗DWが更に向上した。
また、潤滑剤の供給を当接圧制御にした実施例70〜73ではすり抜けが向上した。理由は定かではないが、当接圧制御方式にする事で、ファーブラシの繊維の変形(毛倒れ)などによる塗布量の変化が抑制されているか、或いは、固形化潤滑剤もフリッカーバーのような働きもして、クリーニングブラシが感光体表面を摺擦する力が強化されているのではないかと考えられる。
【0101】
なお、感光体の面速度Vが0.5[m/sec]を超える実施例73では、実施例67〜72と比較するとDWが若干増加していた。
上記の結果について、別の視点から評価を行った。
図6に示すような装置を作成した。感光体101は不図示の駆動手段により矢印Xの方向に任意の速度で駆動される。感光体101の鉛直上方にはクリーニングブレード107が保持された荷重検出手段113が設けられており、感光体101の回転方向でクリーニングブレード107が受ける負荷、すなわち摩擦力を検出できる様になっている。なお、荷重検出手段113は、その上に分銅を載せる上皿があり、該クリーニングブレード107が感光体101に当接する圧力を調整できる。該荷重検出手段113は、更に、天秤状の保持手段で保持されており、支点Oをはさんで反対側には不図示のバランス錘があり、で水平に保たれている。この他、帯電手段102、現像手段104、クリーニングブラシ108、潤滑剤109、該潤滑剤109を該クリーニングブラシ108の当接する圧力調整のための付勢手段110が配されている。
これらは、各速度においてクリーニングブレード107が感光体101に当接する圧(CLN圧)、周波数fと感光体面速度Vの比(f/V)、及び該感光体101への放電電流値Idisが同等になる様に調整してある。この装置で、感光体Aを用い、面速度Vを変化させて摩擦評価を行った。
感光体101の回転開始後、定常状態に於ける、動摩擦力の標準偏差を、面速度Vに対してプロットした結果を図16に示す。
図16より、感光体面速度Vが0.5[m/sec](500[mm/sec])以下では、動摩擦の標準偏差は感光体101の面速度に、ほぼ1次的に相関して増加傾向が見られる。しかし、0.5[m/sec]を超えるような高速では該面速度Vに対しての動摩
擦の標準偏差が、速度依存の直線性から外れて増大する場合があった。
これにより、0.5[m/sec]を超える実施例73のクリーニングブレード損耗DWが若干増加したものと考えられる。
上述の摩擦評価は、これに限らず、例えば図1〜図4の如き画像形成装置において、クリーニングブレード107にかかる摩擦力を測定できるように歪ゲージを設置するなどして測定しても良い。
なお、0.08[m/sec](80[mm/sec])の実施例72は、良好な結果が得られたが、0.1[m/sec](100[mm/sec])以下の面速度、はA4で20[ppm]以下相当の低速機であり、本例のような構成は逆にコストアップとなる場合がある。
すなわち、感光体(像担持体)の面速度は、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることが好ましい。
【0102】
本実施例の本実施例の構成を用いれば、クリーニングブレードの損耗や、クリーニング不良、及びそれに掛る画像欠陥が低減できるので、長期的に良好な画像が得られる。更に、放電電流量と感光体面速度に応じて潤滑剤の供給量を制御している為、潤滑剤の過剰な供給或いは供給不足を防ぎ、適正量の潤滑剤を終始安定して行える。
また、固形化した潤滑剤と無機微粒子の外添供給とを併用することで、装置の小型化/長寿命化が達成され、長期にわたるクリーニング性能を保証できる画像形成装置の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0103】
101 ;像担持体
101a ;支持体
101b ;結着層
101c ;下引き層
101d ;電荷発生層
101e ;電荷輸送層
101f ;表面保護層
102 ;帯電手段
103 ;潜像形成信号
104 ;現像手段
105 ;転写手段
106 ;クリーニング手段
107 ;クリーニングブレード
107a ;クリーニングブレード損耗を観測する時の視野方向
107b ;クリーニングブレード損耗を観測する時の視野方向
107B ;クリーニングブレード板金
107S ;クリーニングブレード付勢手段
108、108’ ;クリーニングブラシ
109 ;潤滑剤、潤滑剤溜り
109’ ;無機微粒子溜り
110 ;潤滑剤付勢手段(バネ)
111、111’ ;フリッカーバー
112 ;廃トナー搬送手段
113 ;荷重検出手段
X ;像担持体の駆動方向の例
θ ;クリーニングブレードの、像担持体への設定角
O ;摩擦力測定装置の、保持部の支点
P ;転写材
T ;クリーニングブレードの厚さ
W ;クリーニングブレード損耗の巾
D ;クリーニングブレード損耗の深さ
S1 ;電源
Cc ;帯電手段の静電容量
Rc ;帯電手段の抵抗
Cair ;放電ギャップの静電容量
Cd ;像担持体の静電容量
Zc ;帯電手段と像担持体間のインピーダンス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置に於いて、
該像担持体表面には、潤滑剤が供給され、該潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、画像形成装置。
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
【請求項2】
前記像担持体表面には無機微粒子が供給され、該無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(3)及び(4)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
【請求項3】
前記潤滑剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記無機微粒子の個数平均一次粒径が、50[nm]以上300[nm]以下であることを特徴とする、請求項2乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無機微粒子の比重の、前記潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])が、2以上5以下であることを特徴とする、請求項2乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体の磨耗速度が、0.3[μm/100k回転]以下であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体表面のRzが0.1[μm]以上1.0[μm]以下であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記弾性ブレードを構成する弾性部材の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下であり、破断伸びが300[%]以上であることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体の回転方向の、前記転写手段より下流で、且つ前記クリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を有することを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記潤滑剤供給手段が、固形化された潤滑剤と、回動可能なブラシ状部材とを備えた潤滑剤供給手段であることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧が可変であることを特徴とする、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記無機微粒子の供給手段が現像手段であることを特徴とする、請求項2乃至12の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記像担持体の面速度が、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像担持体と、該像担持体に接触又は近接し、振動電圧が印加されて該像担持体を帯電する帯電手段と、該像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化する現像手段と、該顕像を記録媒体に転写する転写手段と、転写後の該像担持体表面から転写残現像剤を除去するための弾性ブレードを有するクリーニング手段とを有する画像形成装置に於いて、
該像担持体表面には、潤滑剤が供給され、該潤滑剤の供給量をMz[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、画像形成装置。
Mz≧Az×Idis×V+Bz ・・・(1)
Mz≦5 ・・・(2)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Azが0.66、Bzが0.004であり、Idis×V>0.1のときは、Azが2.72、Bzが−0.202である。]
【請求項2】
前記像担持体表面には無機微粒子が供給され、該無機微粒子の供給量をMs[mg/m2]、該帯電手段から像担持体に流れる長手方向単位長さ当りの放電電流量をIdis[mA/m]、該像担持体の面速度をV[m/sec]としたときに、下記式(3)及び(4)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
Ms≧As×Idis×V+Bs ・・・(3)
Ms≦15 ・・・(4)
[ただし、Idis×V≦0.1のときは、Asが1.00、Bsが0.100であり、Idis×V>0.1のときは、Asが2.48、Bsが−0.048である。]
【請求項3】
前記潤滑剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記無機微粒子の個数平均一次粒径が、50[nm]以上300[nm]以下であることを特徴とする、請求項2乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無機微粒子の比重の、前記潤滑剤の比重に対する比の値([無機微粒子の比重]/[潤滑剤の比重])が、2以上5以下であることを特徴とする、請求項2乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体の磨耗速度が、0.3[μm/100k回転]以下であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体表面のRzが0.1[μm]以上1.0[μm]以下であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記弾性ブレードを構成する弾性部材の100%モジュラスが、2940[kN/m2]以上5880[kN/m2]以下であり、破断伸びが300[%]以上であることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体の回転方向の、前記転写手段より下流で、且つ前記クリーニング手段の備える弾性ブレードより上流側に、前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を有することを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記潤滑剤供給手段が、固形化された潤滑剤と、回動可能なブラシ状部材とを備えた潤滑剤供給手段であることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記潤滑剤と、前記ブラシ状部材の当接圧が可変であることを特徴とする、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記無機微粒子の供給手段が現像手段であることを特徴とする、請求項2乃至12の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記像担持体の面速度が、0.1[m/sec]以上0.5[m/sec]以下であることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−266811(P2010−266811A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120021(P2009−120021)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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