説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置内の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録材を搬送する搬送ローラ対3と、記録材P上に画像を転写する転写部と、未定着の画像を定着させる定着器11と、画像が定着された記録材Pを排出する排出ローラ対12と、搬送ローラ対3、転写部、及び定着器11を接続する記録材Pの主搬送路と、反転経路60と、を備えた両面印字機構を有する画像形成装置において、主搬送路と反転経路60との間にファン70を設け、未定着の画像を有する記録材Pが主搬送路を搬送されている場合は装置本体内部の空気が装置本体外部へ排出されるようにファン70を回転させ、未定着の画像を有する記録材Pが主搬送路を搬送されていない場合は、装置本体外部から装置本体内部へ空気が吸い込まれるようにファン70を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に画像を形成する電子写真複写機、プリンタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ装置などにおける画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、従来例に係る電子写真方式を採用した画像形成装置(レーザービームプリンタ)の概略構成を示す。図5に示すレーザービームプリンタには、給送手段として記録材Pを載置する給送部10、給送ローラ20、搬送ローラ30、転写手段としての転写ローラ90、定着手段としての定着器110が設けられている。
【0003】
また、記録材Pの搬送面を挟んで転写ローラ90と対向する位置に、プロセスカートリッジ70等の画像形成手段が設けられており、プロセスカートリッジ70の近傍には、露光手段としてのレーザースキャナ50が配置されている。
【0004】
記録材Pは給送部10から給送ローラ20によって給送され、転写ローラ90によってプロセスカートリッジ70の像担持体上に形成されたトナー像が転写される。そして、定着器110において記録材P上の未定着のトナー像が加熱、加圧されることで未定着のトナー像が記録材P上に定着される。
【0005】
また、このようにして記録材Pの片面に印字した後に、さらにもう一方の面(裏面)に画像を形成する両面印字機構を有する画像形成装置が多く提案されている。両面印字機構を有する画像形成装置では、記録材Pの片面に印字した後に、記録材Pを反転経路Rへスイッチバックさせ、記録材Pの表裏を反転させた状態で転写部へ再給送することで、記録材Pの裏面へ印字を行う構成である。
【0006】
しかしながら、このような両面印字機構を有する画像形成装置において両面印字を行うと、1度定着器で加熱された記録材Pを再び給送するため、記録材Pから発せられる熱によって片面印字時に比べ装置本体内部の温度が急激に上昇してしまう。
【0007】
装置本体内部の温度が上昇してしまうと、例えば、プロセスカートリッジ70内のトナーが熱溶解し、トナーの流動性が低下する、または金属材と樹脂材の熱膨張率の差に起因する各部材、装置全体の歪みが発生する、といった事態が想定される。そしてその結果、画像不良が生じることになる。
【0008】
この解決策として、両面印字機構を有する画像形成装置において、装置本体内部を冷却し、装置本体内部の温度上昇を抑制することが可能なファンを設ける構成が提案されている(特許文献1、特許文献2)。例えば図5に示す画像形成装置では、装置本体の側面(図中手前側の面)の近傍にファンF(点線部)を配設している。
【特許文献1】特開2002−96942号公報
【特許文献2】特開平11−296053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記従来の画像形成装置では次のような問題を生じる。
【0010】
例えば図5に示す従来の画像形成装置では、転写ローラ90と定着器110との間を搬送されている記録材P上には、プロセスカートリッジ70において形成された未定着の画
像が転写されている。
【0011】
よって、ファンFを回転させることで生じる気流が未定着の画像に吹き付けられると、装置本体内部で未定着のトナーが飛散してしまい、その結果、画像品質の低下、装置本体内へのトナーの流出を招く虞がある。
【0012】
また、両面印字に伴う装置本体内部の温度上昇を抑制するために新たにファンを配設すると、装置本体が大型化するといった問題も生じる。
【0013】
そこで本発明の目的は、装置本体内部の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
載置された記録材を1枚ずつ給送する給送部と、
前記給送部から給送された記録材を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対によって搬送された記録材上に画像を転写する転写部と、
前記転写部において記録材上に転写された未定着の画像を加熱、加圧して該記録材上に定着させる定着部と、
前記定着部において画像が定着された記録材を排出する排出ローラ対と、
前記搬送ローラ対、前記転写部、及び前記定着部を接続する記録材の主搬送路と、
前記主搬送路よりも装置本体外側に形成され、前記定着部の下流側において前記主搬送路から分岐して、前記搬送ローラ対の上流側で前記主搬送路と合流する反転経路と、
を備え、
前記排出ローラ対を逆回転させて記録材を前記反転経路にスイッチバックさせることで、該記録材を前記反転経路を経て前記搬送ローラ対に再給送することが可能な両面印字機構を有する画像形成装置において、
前記主搬送路と前記反転経路との間に設けられたファンと、
前記ファンの回転方向を制御して前記ファンによって生じる気流の方向を切り替える制御手段と、
を有しており、
前記ファンによって、
前記主搬送路と前記反転経路における記録材の搬送面に略垂直な方向から、前記主搬送路における前記搬送ローラ対と前記転写部との間、及び前記反転経路に対して気流を生じさせることが可能であって、
前記制御手段は、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されている場合は、
装置本体内部の空気が装置本体外部へ排出されるように前記ファンを回転させ、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されていない場合は、
装置本体外部から装置本体内部へ空気が吸い込まれるように前記ファンを回転させることを特徴とする。
【0015】
また、
載置された記録材を1枚ずつ給送する給送部と、
前記給送部から給送された記録材を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対によって搬送された記録材上に画像を転写する転写部と、
前記転写部において記録材上に転写された未定着の画像を加熱、加圧して該記録材上に定着させる定着部と、
前記定着部において画像が定着された記録材を排出する排出ローラ対と、
前記搬送ローラ対、前記転写部、及び前記定着部を接続する記録材の主搬送路と、
前記主搬送路よりも装置本体外側に形成され、前記定着部の下流側において前記主搬送路から分岐して、前記搬送ローラ対の上流側で前記主搬送路と合流する反転経路と、
を備え、
前記排出ローラ対を逆回転させて記録材を前記反転経路にスイッチバックさせることで、該記録材を前記反転経路を経て前記搬送ローラ対に再給送することが可能な両面印字機構を有する画像形成装置において、
前記主搬送路と前記反転経路との間に設けられ、互いに異なる方向に回転する2つのファンと、
前記2つのファンのうちのいずれかを回転させて前記ファンによって生じる気流の方向を切り替える制御手段と、
が設けられており、
前記2つファンは、
前記主搬送路と前記反転経路における記録材の搬送面に略垂直な方向から、前記主搬送路における前記搬送ローラ対と前記転写部との間、及び前記反転経路に対して気流を生じさせることが可能であって、
前記制御手段は、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されている場合は、
前記2つのファンのうちの一方のファンを回転させて装置本体内部の空気を装置本体外部へ排出し、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されていない場合は、
前記2つのファンのうちの他方のファンを回転させて装置本体外部から装置本体内部へ空気を吸い込むように、前記2つのファンの回転を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、画像形成装置内の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図であり、図2は、本実施の形態に係る画像形成装置に設けられた開口部を装置本体外側から見た場合の概略構成図である。
【0019】
(画像形成装置の全体構成)
図1を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置の全体構成について説明する。本実施の形態に係る画像形成装置は、像担持体の表面にレーザー光を走査して画像を形成する電子写真方式を採用するレーザービームプリンタである。
【0020】
画像形成装置の下部には、複数枚の記録材Pを載置可能な給送部1が設けられている。不図示の入力手段によって画像形成開始の信号が入力されると、給送部1に載置されている記録材Pが、給送部1の図中左側(奥側)に配設された給送ローラ2によって1枚ずつ分離されて給送され、さらに搬送ローラ対3によって転写部に搬送される。
【0021】
なお、転写部とは、転写部材としての転写ローラ9と像担持体としての感光ドラム8とによって形成されたニップ部のことを指し、このニップ部において感光ドラム8上のトナー像が記録材P上に静電気的に転写される。
【0022】
また、転写部の上流であって搬送ローラ対3の近傍には、記録材Pが搬送されてくるタイミングを検知する検知手段としてのレジストセンサー4が設けられている。
【0023】
レジストセンサー4が記録材Pの先端の通過を検知すると、記録材Pの先端が通過するタイミングと露光手段としてのレーザースキャナ5の発光タイミングとの同期をとり、プロセスカートリッジ7において、記録材Pに転写される画像の形成が開始される。これにより、記録材P上の所定の位置から画像の描き出しを行うことができる。
【0024】
トナー像が形成される感光ドラム8は、不図示の駆動手段によって回転可能に構成されており、その周囲には帯電ローラ18、現像器17が設けられている。帯電ローラ18は、不図示のバイアス印加手段に接続されており、感光ドラム8がレーザースキャナ5によって露光される前に感光ドラム8の表面を一様に所定の電位に帯電させるものである。
【0025】
また、現像器17は、現像剤としてのトナーを収容し、レーザースキャナ5からの露光によって感光ドラム8の表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として可視化するものである。
【0026】
また、感光ドラム8、帯電ローラ18、現像器17は、装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ7として一体化されている。
【0027】
感光ドラム8の表面に形成されたトナー像は、転写部において記録材Pに静電気的に転写され、記録材Pの上には未定着のトナー像(未定着の画像)が形成されることになる。その後、未定着のトナー像を有する記録材Pは、定着器(定着部)11に搬送され、定着器11内において未定着のトナー像が加圧、加熱されることで、記録材P上に画像が定着される。
【0028】
そして、画像が定着された記録材Pは、排出ガイド50に当接して印字面側に曲げられ、排出ローラ対12によって排出トレイ14上に印字面を下にして排出される。
【0029】
また、排出ローラ対12には排出センサー20が設けられており、記録材Pの先端が排出ローラ対12のニップ部に到達するタイミングと、記録材Pの後端が排出ローラ対12のニップ部を抜けるタイミングを検知している。
【0030】
なお、上記のように構成された画像形成装置において、搬送ローラ対3、転写部、及び定着部11を接続する記録材Pの搬送路を「主搬送路」と称する。また、図1に示すように、本実施の形態における主搬送路は、略鉛直方向に配設されている。
【0031】
(両面印字機構の構成)
本実施の形態に係る画像形成装置には、主搬送経路とは別に、記録材Pの両面印字を可能にするための「反転経路60」が設けられている。反転経路60は、主搬送経路を挟んでプロセスカートリッジ7等が配設されている側とは反対側であって、主搬送経路よりも装置本体外側に配設されている。また、定着器11の下流側において主搬送路から分岐して、搬送ローラ対3の上流側で主搬送路と合流している。
【0032】
このように反転経路60を配設することで、1度片面に画像が形成された記録材Pをス
イッチバックさせて反転経路60に搬送し、反転経路60を経て搬送ローラ対3に再給送することで、両面印字を行うことが可能になる。以下、この両面印字機構について説明する。
【0033】
定着器11と排出ローラ対12との間には、反転経路60への導入部61が設けられている。反転経路60へ搬送された記録材Pは、定着器11の上を通過した後、その後端から反転経路60へ入り、反転搬送ローラ対62で搬送され、記録材Pの表裏が反転した状態で搬送ローラ対3の搬送方向上流側で主搬送路に合流する。
【0034】
両面印字を行う場合の各部の動作説明を行う。まず、上述のように片面印字が行われた記録材Pの後端が排出ガイド50の後端を抜けると、排出ローラ対12に狭持された状態で、不図示の駆動切り替え手段により排出ローラ対12のみが逆回転される。
【0035】
この際、不図示の制御手段が、記録材Pの先端がレジストセンサー4を倒してから記録材Pの後端がレジストセンサー4を抜けてセンサーが戻る間の時間tを記憶しており、排出センサー20が倒されてからtより若干短い時間で駆動切り替えを行うようにする。
【0036】
すると、記録材Pが排出ローラ対12のニップに挟まれ、かつ記録材Pの後端が排出ガイド50を抜けた状態を作り出すことができる。これにより、記録材Pは後端から反転経路60の導入部61に入り込むことができる。
【0037】
その後、排出ローラ対12の搬送力で反転経路60を搬送される記録材Pは、表裏が反転した状態で反転搬送ローラ対62に搬送されて主搬送路に再び給送される。
【0038】
これにより、記録材Pの裏面にも画像を転写することができ、その状態で記録材Pが定着器11を再び通過することで、両面に印字がなされた記録材Pを得ることができる。
【0039】
なお、記録材Pが反転経路60に搬送された際に、排出ローラ対12のニップ部を記録材Pが抜けたことを排出センサー20が検知すると、不図示の駆動切り替え手段により、排出ローラ対12が元の状態(正回転の状態)に戻される。
【0040】
しかし、両面印字を行うと、一度定着器11において加熱された記録材Pを装置本体内部において再度搬送するため、片面印字よりも装置本体内部の温度が急激に上昇する。装置本体内部の温度が高くなりすぎると、プロセスカートリッジ7内のトナーの流動性が低下するためトナーの供給量が不足し、画像不良が起き易くなる。
【0041】
また、装置本体内部の温度が著しく高くなると、装置本体に収容されている構成部品が熱膨張することによって製造当初の寸法から外れてしまい、搬送性能等が低下する事が想定される。
【0042】
そのため、装置本体内部の温度を画像不良や搬送性能に影響しない設定範囲内に収めるために、本実施の形態では、装置本体内部の冷却手段として、ファン70を設けている。以下、ファン70の構成について説明する。
【0043】
(ファンの配置)
本実施の形態ではファン70を、主搬送路と反転経路60との間であって、さらに主搬送路における搬送ローラ対3と転写部との間に対向するように配置した。そして、主搬送路と反転経路60における記録材Pの搬送面に略垂直な方向から、主搬送路における搬送ローラ対3と転写部との間、及び反転経路60に対して、気流を生じさせるようにした。
【0044】
このように、未定着の画像を有する記録材Pが搬送される転写部と定着器11の間の主搬送路に対しては、ファン70が対向しないようにファン70を配置した。よって、未定着の画像に気流が積極的に吹き当たって未定着のトナーが飛散することを抑制することができる。
【0045】
また、気流の流通経路として、反転経路60を挟んで装置本体外部とファン70とを連通する第1の開口部71と、搬送ローラ対3と転写部との間を挟んでファン70と装置本体内部とを連通する第2の開口部72を設けた。ファン70によって生じた気流は、少なくともこれらの開口部を通過する。
【0046】
図2に、装置本体の外側から第1の開口部71、第2の開口部72を見た場合の概略構成図を示す。図2に示すように、反転経路60を通過する第1の開口部71と、主搬送路へつながる第2の開口部72は、記録材Pの搬送面に垂直な方向から見た場合に、互いの開口部が重ならないように形成されている。
【0047】
これにより、第1の開口部71、第2の開口部72を通じて外光が装置本体内部に入り、装置本体内部に設けられている感光ドラム8が外光に晒されて劣化することを防ぐことができる。
【0048】
また、外光を遮断することは可能になりつつも、第1の開口部71と第2の開口部72はファン70を挟んで連通しているので、ファン70の回転によって生じる気流が装置本体外部と内部との間で遮断されることはない。
【0049】
(ファンの回転制御)
画像形成動作とファン70の回転制御について説明する。
【0050】
画像形成装置にプリント信号が送られて画像形成装置が記録材Pの給送動作に先立って前回転を始めると、ファン70の回転方向を制御する不図示の制御手段によって、装置本体外部から装置本体内部へ空気が吸い込まれる方向にファン70が回転する。
【0051】
この状態では、装置本体内部の空気と比較して冷えた外気が反転経路60を通過して装置本体内部へ取り入れられ、装置本体内部に設けられている部材を冷却することができる。
【0052】
その後、給送部1から記録材Pが給送され、記録材Pの先端の通過がレジストセンサー4に検知されると、制御手段によってファン70の回転方向が切り替えられ、ファン70は装置本体内部の空気を外部へ排出する方向に回転する。
【0053】
この気流の方向では、記録材Pは気流の作用によって主搬送路に引き付けられるので、記録材Pが主搬送路上でズレることなく、記録材Pの搬送の安定性を増すことが可能となる。
【0054】
その後、制御手段が記録材Pの先端の通過がレジストセンサー4に検知されてから記録材Pの後端がレジストセンサー4を抜けるまでの時間tを記憶し、その時間と記録材Pの速さから、記録材Pの搬送方向の長さを演算する。
【0055】
そして、記録材Pの搬送方向の長さ、レジストセンサー4から定着器11までの距離、及び記録材Pの搬送速度から、記録材Pの後端が定着器11を抜け出すタイミングを演算する。
【0056】
そしてそのタイミングで、気流の方向が装置本体外部から装置本体内部へ空気が吸い込まれる方向になるように、ファン70を回転方向を再び切り替える。
【0057】
一般的に、より効率的に装置本体内部の温度上昇を抑制するためには、暖まった装置本体内部の空気を排出するよりも、冷えた外気を装置本体内部へ導入する方がよい。
【0058】
しかしながら、記録材上に定着される前の未定着トナーがある状態で外気を装置本体内部へ導入すると、装置本体内部の空気循環によって定着前の未定着トナーが記録材上から飛散してしまう。
【0059】
そこで本実施の形態では、上記で説明したように未定着の画像を有する記録材Pが主搬送路を搬送されている場合は、トナーの飛散を防ぐために記録材の未定着画像面に気流が積極的に当たらないようにしつつ、装置本体内部を冷却するようにしている。
【0060】
また、それ以外の場合(未定着の画像を有する記録材Pが搬送されていない状態)は、装置本体内部を積極的に冷却するために、装置本体外部から装置本体内部へ外気が吸い込まれるようにファン70を回転させている。
【0061】
つまり記録材P上に画像が定着した後では、気流の方向が冷却により有利な方向となるようにファン70を回転させることで、装置本体内部の温度上昇を効率的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、給送部1を最下層に配置し、熱源となる定着器11を最上部付近に配置している。
【0063】
空気の循環を良くするには、冷えた外気を本体下方から取り込み、暖まった空気を上方へ排出して好適な自然対流を生み出すことが望ましいので、本実施の形態におけるこの配置によれば、より効率的に装置本体内部を冷却することが可能になる。
【0064】
また、上述したようにファン70を主搬送路と反転経路60との間に設けたので、ファン70の設置に必要なスペースを抑制することができ、装置本体の省スペース化を達成することができる。
【0065】
また本実施の形態では、片面印字の場合は、記録材Pに画像が定着され、その後も記録材が排出されるまでファン70は外気の吸い込み方向で回転し続け、所定の時間が経過した後、停止する。さらに複数枚の連続プリントの場合は、次の記録材Pが給送されレジストセンサー4を動作させた所で、ファン70の回転方向を装置本体内部の空気を排出する方向に切り替える。
【0066】
上述したようにレジストセンサー4の動作に連動して、レーザースキャナ5より露光が開始され、トナー像の形成が始まるため、このタイミングでファン70の回転方向を切り替えるとよい。また、これ以降の画像形成動作とファン70の回転方向切り替えについては前述の動作と同様に行う。
【0067】
また、両面印字の場合は、まず排出ローラ対12を逆転させて反転経路60に記録材Pをスイッチバックさせて導入する。反転経路60を記録材Pが通過する時はファン70は外気を吸い込む方向で回転しているため、記録材Pは冷えた外気によって冷却される。
【0068】
このため、主搬送路に再び給送された時点で記録材Pは冷えた状態で導かれるため、装置本体内部の温度上昇は低く抑えられ、プロセスカートリッジ7の性能を所定の状態で使
用することが可能となる。
【0069】
その後、反転された記録材Pの先端がレジストセンサー4を動作させると、再びファン70は装置本体内部の空気を排出するように回転方向が切り替えられる。よって、記録材Pを主搬送路に引き付けることが可能になり、かつ転写部と定着器11の間にある未定着の画像を有する記録材Pからトナーが飛散することを抑制することができる。
【0070】
以上、本実施の形態によれば、画像形成装置内の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【0071】
[第2の実施の形態]
図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。図3は、本実施の形態における開口部を装置本体外側から見た場合の概略構成を示すものである。なお、第1の実施の形態と同一の構成についてはその説明を省略し、ここでは第1の実施の形態と異なる点についてのみ説明を行う。
【0072】
第1の実施の形態では、不図示の制御手段によって1つのファン70の回転方向を所定のタイミングで切り替えることで、装置本体内部の空気の排出と外気の吸い込みの切り替えを行っていた。
【0073】
しかし、1つのファンを用いて所定のタイミングで素早くその回転方向を切り替える場合、ファンを急停止させた後に再び急回転させて所定の回転数に立ち上げる必要がある。この場合、回転方向切り替えや急停止、急回転させるような条件下でファンを使用することになるので、ファンのモータ寿命が著しく低下してしまう。
【0074】
また、ファンを急停止または急回転させると、ファンから生じる駆動音が急激に変化するため、ユーザーが不快と感じやすい変動音を発生させてしまう。
【0075】
そこで本実施の形態では図3に示すように、外気の吸い込み用のファン80と装置本体内部の空気の排出用のファン81の2つの独立したファンを設けている。
【0076】
また、これらのファンは、互いに異なる方向に回転し、不図示の制御手段によって2つのファンのうちのいずれかのファンが回転するかが決定される。
【0077】
なお、これらのファンの大きさは画像形成装置の幅に比べて小さいので、並べて配置しても製品サイズが大型化する虞はない。
【0078】
このように、吸い込み用のファン80、排出用のファン81といった独立したファンを2つ設けることで、排出と吸い込みの切り替えタイミングでは、一方のファンへの電力を遮断して自然停止させ、他方のファンへの電力供給を開始して回転を始めさせれば良い。よって、ファンモータへの負担を低減できる。
【0079】
また、一方のファンへの電力遮断に先立って他方のファンへの電力供給を開始させることで、排出から吸い込みへのタイムラグを極力少なくすることも可能となり、ファンが完全停止している時間が無くなるので気流を停滞させることがない。よって、さらに冷却効果が増すと共に、ファン騒音の変化も低減でき、ユーザーへの不快感を緩和することもできる。
【0080】
なお、互いに回転方向の異なる2つのファンのうちのいずれかのファンを回転させるか
を決定するタイミングは、上記第1の実施の形態と同様である。すなわち、未定着の画像を有する記録材Pが搬送されている場合は排出用ファン81を回転させて装置本体内部の空気を装置本体外部へ排出すればよい。
【0081】
また、それ以外の場合(未定着の画像を有する記録材Pが搬送されていない状態)は、吸い込み用のファン80を回転させて装置本体外部から装置本体内部へ空気を吸い込むようにすればよい。
【0082】
以上、本実施の形態によれば、画像形成装置内の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【0083】
[第3の実施の形態]
図4を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。図4は、本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。なお、第1の実施の形態と同一の構成についてはその説明を省略し、ここでは第1の実施の形態と異なる点についてのみ説明を行う。
【0084】
まず、反転経路60側に設けられた外気取り入れ用の第1の開口部71と反転経路60とが交差する部分のうちの搬送方向下流端部71aから、レジストセンサー4が記録材Pの先端を検知する位置に至る記録材Pの搬送方向に沿った距離をL2とする。
【0085】
さらに、装置本体が両面印字可能に設定している記録材のうち、搬送方向の長さが最大の記録材Pの搬送方向の長さをL1とする。
【0086】
本実施の形態では、記録材Pの搬送距離L2を記録材Pの搬送方向の長さL1より長くなるように設定していることが特徴である。
【0087】
第1の実施の形態で説明したように、ファン70の回転方向は、未定着の画像を有する記録材Pが主搬送路を搬送されている場合と、未定着の画像を有する記録材Pが主搬送路を搬送されていない場合とで切替わるように制御されている。
【0088】
上記で説明したL1(記録材Pの搬送方向の長さ)がL2(搬送方向に沿った距離)よりも大きい場合は、記録材Pの先端がレジストセンサー4に到達しているが、記録材Pの後端が第1の開口部71に達していないといった状態が想定される。
【0089】
この場合は、ファン70による気流の方向が、装置本体内部から装置本体外部へ排出される方向へ切り替わるので、第1の開口部71から冷えた外気が導入されず、記録材Pの後端部分は十分に冷却されずに主搬送経路へ送られてしまうことになる。その結果、装置本体内部の温度が上昇してしまう。
【0090】
これに対して本実施の形態ではL2(搬送方向に沿った距離)がL1(記録材Pの搬送方向の長さ)よりも大きく設定されているので、反転経路60を通過する記録紙Pを全ての領域でファン70が吸い込んだ外気にさらすことができる。よって、記録材Pを搬送方向において均一に冷却することが可能となる。
【0091】
また、反転経路60から主搬送経路との合流点手前の反転経路60の180度反転部をより大きなRで構成できるため、記録材Pの剛性による搬送抵抗を低減させることが可能となり、搬送性能を向上させることができる。
【0092】
なお、両面搬送される記録紙Pを確実に搬送できるように、反転搬送ローラ62を第1の開口部71の位置よりも搬送方向下流側に移設した。
【0093】
また、上記第2の実施の形態で説明したように、互いに回転方向の異なる2つのファンを設ける構成であってもよい。
【0094】
以上、本実施の形態によれば、画像形成装置内の温度上昇を抑制しつつ、記録材上の未定着のトナーが飛散することを防ぎ、かつ省スペース化を達成することが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】第1の実施の形態における開口部の概略構成図。
【図3】第2の実施の形態における開口部の概略構成図。
【図4】第3の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図5】従来例に係る画像形成装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0096】
1 給送部
2 給送ローラ
3 搬送ローラ対
4 レジストセンサー(検知手段)
7 プロセスカートリッジ
8 感光ドラム
9 転写ローラ
11定着器
12排出ローラ対
60反転経路
70ファン
71第1の開口部
72第2の開口部
80ファン(吸い込み用)
81ファン(吐き出し用)
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された記録材を1枚ずつ給送する給送部と、
前記給送部から給送された記録材を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対によって搬送された記録材上に画像を転写する転写部と、
前記転写部において記録材上に転写された未定着の画像を加熱、加圧して該記録材上に定着させる定着部と、
前記定着部において画像が定着された記録材を排出する排出ローラ対と、
前記搬送ローラ対、前記転写部、及び前記定着部を接続する記録材の主搬送路と、
前記主搬送路よりも装置本体外側に形成され、前記定着部の下流側において前記主搬送路から分岐して、前記搬送ローラ対の上流側で前記主搬送路と合流する反転経路と、
を備え、
前記排出ローラ対を逆回転させて記録材を前記反転経路にスイッチバックさせることで、該記録材を前記反転経路を経て前記搬送ローラ対に再給送することが可能な両面印字機構を有する画像形成装置において、
前記主搬送路と前記反転経路との間に設けられたファンと、
前記ファンの回転方向を制御して前記ファンによって生じる気流の方向を切り替える制御手段と、
を有しており、
前記ファンによって、
前記主搬送路と前記反転経路における記録材の搬送面に略垂直な方向から、前記主搬送路における前記搬送ローラ対と前記転写部との間、及び前記反転経路に対して気流を生じさせることが可能であって、
前記制御手段は、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されている場合は、
装置本体内部の空気が装置本体外部へ排出されるように前記ファンを回転させ、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されていない場合は、
装置本体外部から装置本体内部へ空気が吸い込まれるように前記ファンを回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
載置された記録材を1枚ずつ給送する給送部と、
前記給送部から給送された記録材を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対によって搬送された記録材上に画像を転写する転写部と、
前記転写部において記録材上に転写された未定着の画像を加熱、加圧して該記録材上に定着させる定着部と、
前記定着部において画像が定着された記録材を排出する排出ローラ対と、
前記搬送ローラ対、前記転写部、及び前記定着部を接続する記録材の主搬送路と、
前記主搬送路よりも装置本体外側に形成され、前記定着部の下流側において前記主搬送路から分岐して、前記搬送ローラ対の上流側で前記主搬送路と合流する反転経路と、
を備え、
前記排出ローラ対を逆回転させて記録材を前記反転経路にスイッチバックさせることで、該記録材を前記反転経路を経て前記搬送ローラ対に再給送することが可能な両面印字機構を有する画像形成装置において、
前記主搬送路と前記反転経路との間に設けられ、互いに異なる方向に回転する2つのファンと、
前記2つのファンのうちのいずれかを回転させて前記ファンによって生じる気流の方向を切り替える制御手段と、
が設けられており、
前記2つファンは、
前記主搬送路と前記反転経路における記録材の搬送面に略垂直な方向から、前記主搬送
路における前記搬送ローラ対と前記転写部との間、及び前記反転経路に対して気流を生じさせることが可能であって、
前記制御手段は、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されている場合は、
前記2つのファンのうちの一方のファンを回転させて装置本体内部の空気を装置本体外部へ排出し、
未定着の画像を有する記録材が前記主搬送路を搬送されていない場合は、
前記2つのファンのうちの他方のファンを回転させて装置本体外部から装置本体内部へ空気を吸い込むように、前記2つのファンの回転を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記転写部の上流には、
前記給送部から給送される記録材、及び前記反転経路を経て搬送される記録材が搬送されてくるタイミングを検知する検知手段が設けられており、
前記検知手段が記録材の搬送を検知すると前記転写部で転写される画像の形成が開始される構成であって、
前記制御手段は、
記録材の先端が前記検知手段に到達してからその後端が前記検知手段を抜け出すまでの時間から、前記検知手段を通過した記録材の搬送方向の長さを演算し、
前記演算された記録材の搬送方向の長さと、
前記検知手段から前記定着部までの距離と、
前記記録材の搬送速度と、
によって、
前記記録材が前記検知手段に到達してから該記録材の後端が前記定着部を抜け出すまでに要する時間を演算し、該記録材の後端が前記定着部を抜け出すタイミングで、
前記ファンを回転させることで生じる気流の方向を、装置本体内部の空気を装置本体外部へ排出する方向とするか、又は装置本体外部から装置本体内部へ空気を吸い込む方向とするか、を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記主搬送路を、
略鉛直方向に配設したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記反転経路を挟んで装置本体外部と前記ファンとを連通する第1の開口部と、
前記主搬送路における前記搬送ローラ対と前記転写部との間を挟んで前記ファンと装置本体内部とを連通する第2の開口部と、
が設けられており、
前記ファンによって生じる気流が少なくとも第1の開口部、及び第2の開口部を流れる構成であって、
記録材の搬送面に垂直な方向から第1の開口部、第2の開口部を見たときに、
第1の開口部と第2の開口部が重ならないように、第1の開口部及び第2の開口部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1の開口部と前記反転経路とが交差する部分のうちの下流側の端部から、前記検知手段が記録材の先端を検知する位置に至る記録材の搬送方向に沿った距離は、
装置本体が両面印字可能に設定している記録材のうち、搬送方向の長さが最大の記録材の搬送方向の長さよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−39116(P2010−39116A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200827(P2008−200827)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】