説明

画像形成装置

【課題】設置に必要なスペースが拡大することなく、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、イオン発生機能を有し、筐体101、複数の搬送路51,52,53、及びイオン発生ユニット10を備える。イオン発生ユニット10は、複数の搬送路51,52,53の互いに並走する部分に挟まれた空間に配置される。イオン発生ユニット10は、ダクト11、イオン発生装置12、及びファン13を有する。ダクト11は、筐体101の外部に対して用紙の幅方向に吸気及び排気する流路を形成する。イオン発生装置12はダクト内に配置される。気流発生装置はダクト内に気流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン発生機能を有するイオン発生ユニットを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置は、オフィス等において必要不可欠な機器といっても過言ではなく、実際にほとんどのオフィスに設置されている。さらには、近年、画像形成装置は、一般家庭や病院等にも普及しつつあり、我々にとって極めて身近な存在となっている。
【0003】
ところで、画像形成装置の中には、画像形成装置の周囲から吸入した空気を、画像形成装置のプロセス部や定着部に供給した後に、画像形成装置の外部に排出するものがある。このような画像形成装置の一つとして、装置外部に放出される気流に含有される有害物質を除去して清浄した上でマイナスイオンを供給し、装置内部で発生した有害物質が装置外部へ排出されることを防止するための空気清浄部を備えた画像形成装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−4144公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載の技術では、像形成部の像形成動作によって生じるトナー粉、塵埃、オゾン等を除去する必要上、電極を有するイオン発生部を、像形成部の周囲に形成される気流の内部であって像形成部の近傍に配置することを余儀なくされる。像形成部に含まれる定着部では、用紙の剥離剤としてシリコンが使用される。この結果、像形成部の周囲に発生するシリコン等の影響によってイオン発生部のイオン発生効率が低下し、画像形成装置の使用期間が長くなるにつれて、画像形成装置の周囲の空気を浄化する能力が低下するという問題があった。
【0006】
一方で、イオン発生部と像形成部との距離を大きく取ることでシリコン等の影響によるイオン発生効率の低下を防止することも考えられる。しかし、イオン発生部と像形成部との距離を大きく取るために空気清浄機能を備えるユニットを画像形成装置の外部に配置する場合は、そのようなユニットを設置するスペースが余計に必要となり、結果的に画像形成装置の設置に必要なスペースが拡大するという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、設置に必要なスペースが拡大することなく、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の画像形成装置は、イオン発生機能を有し、画像形成部、給紙部、排紙部、複数の搬送路、イオン発生ユニット、及び筐体を備える。筐体は、画像形成部、給紙部、複数の搬送路、及びイオン発生ユニットを内蔵する。画像形成部は、画像データに基づいて画像形成位置において用紙に画像形成処理を行う。給紙部は、画像形成位置へ供給される用紙を収容する。排紙部には、画像を形成された用紙が収容される。搬送路は、給紙部から画像形成位置を経由して排紙部へ至る用紙が搬送される主搬送路を含む複数の搬送路であって、複数の搬送路のうち少なくとも2個の搬送路の少なくとも一部は互いに並走する。イオン発生ユニットは、複数の搬送路の互いに並走する部分に挟まれた空間に配置される。イオン発生ユニットは、ダクト、イオン発生装置、及び気流発生装置を有する。ダクトは、複数の搬送路を搬送される用紙の面内で用紙搬送方向に直交する方向に筐体の外部に対して吸気及び排気する流路を形成する。イオン発生装置は、ダクト内に配置される。気流発生装置は、ダクト内に気流を発生させる。
【0009】
この構成では、画像形成装置の内部に格納されているイオン発生ユニットのイオン発生装置が、それぞれの端部が筐体の外部に連通するダクト内に配置される。このため、イオン発生装置が、筐体内における画像形成部が属する空間とは隔離された空間に位置することになり、画像形成部から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置に及ぶことが防止される。
【0010】
また、複数の搬送路の分岐点近傍の曲率半径は、用紙詰まりを防ぐためにあまり小さくすることができない。このため、複数の搬送路の互いの間には、空いた空間ができる。イオン発生ユニットは複数の搬送路に挟まれた空いた空間を有効に利用して配置されるので、筐体の外部にイオン発生ユニットが突出することがなくなり、その結果、イオン発生ユニットを設置しても画像形成装置の設置に必要なスペースが拡大することがない。
【0011】
さらに、ダクトは、筐体の外部に対して用紙の幅方向に吸気及び排気するように構成されるので、ダクトが搬送路と交わることがなく、構成が簡易化される。
【0012】
上述の構成において、複数の搬送路は、主搬送路と、画像形成位置を経由した用紙が表裏を反転されて再び画像形成位置へ搬送される両面印刷搬送路と、を含み、両面印刷搬送路は、筐体に対して引き出し及び収納自在に構成され、イオン発生ユニットのうち少なくともダクトの一部は、筐体を含む装置本体に固定されるように構成することができる。
【0013】
両面印刷搬送路において用紙詰まりが発生した際には、両面印刷搬送路を引き出すことで、詰まった用紙の除去が容易になる。また、少なくともダクトの一部は装置本体に固定されており、両面印刷搬送路とともに引き出されることはないので、ダクトと筐体との位置ずれが防止される。
【0014】
また、両面印刷搬送路は、画像形成位置と排紙部との間で主搬送路から分岐して主搬送路における画像形成位置へ至る手前で主搬送路と合流する副搬送路と、副搬送路から分岐して両面印刷が行われる用紙の表裏を反転させるスイッチバック搬送路と、を含み、イオン発生ユニットは、副搬送路とスイッチバック搬送路との間に配置されるように構成することができる。画像形成位置の一部において用紙に画像を熱定着させる定着装置がイオン発生ユニットの近傍に配置されている場合でも、イオン発生ユニットと定着装置との間に、副搬送路又はスイッチバック搬送路が配置されるので、定着装置から発せられる熱がイオン発生ユニットに与える影響が抑制される。
【0015】
さらに、イオン発生ユニットは、両面印刷搬送路の主搬送路からの分岐点よりも主搬送路への合流点に近い位置に配置されることが好ましい。両面印刷搬送路の主搬送路からの分岐点の近傍には用紙に画像を熱定着させる定着装置が配置されるので、両面印刷搬送路の主搬送路からの分岐点よりも主搬送路への合流点に近い位置にイオン発生ユニットを配置することで、定着装置から発せられる熱がイオン発生ユニットに与える影響が抑制される。
【0016】
また、筐体は、画像形成位置の周囲を経由した空気が排出される排気用開口部を有し、イオン発生ユニットは、排気用開口部が設けられた筐体の面とは異なる面に、ダクトの吸気口を有することが好ましい。画像形成位置の周囲を経由した空気の排気用開口部とイオン発生ユニットの吸気口とが筐体の異なる面に設けられるので、排気用開口部から排出された空気をイオン発生ユニット内に吸入してしまうことが防止される。このため、画像形成部から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置に及ぶことが防止される。
【0017】
さらに、筐体は、排気用開口部を背面又は側面に有し、イオン発生ユニットは、筐体の前面から吸気して背面へ排気するように構成することができる。これによっても、画像形成部から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置に及ぶことが防止される。
【0018】
また、筐体は、排気用開口部を側面に有し、イオン発生ユニットは、筐体の背面から吸気して前面へ排気するように構成することができる。これによっても、画像形成部から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置に及ぶことが防止される。
【0019】
さらに、イオン発生ユニットは、筐体の前面から吸気して背面へ排気するように構成され、筐体の背面に設けられるべき最小間隔分だけ筐体の背面から突出し、かつ、ダクトから排気された空気を上方へ案内する補助ダクトをさらに備えるように構成することができる。補助ダクトを備えることで、ダクトから排気されたイオンを含む空気が高い位置から吹き出され、周囲に行きわたりやすくなる。また、画像形成装置の設置場所の壁面に補助ダクトを引っ付けるように画像形成装置を設置することで、壁面と筐体の背面との間に設けられるべき最小間隔が容易かつ確実に設けられる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、設置に必要なスペースが拡大することなく、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の正面断面の略図である。
【図2】画像形成装置の右側面視断面の略図である。
【図3】前蓋を開放した状態の画像形成装置の右側面視断面の略図である。
【図4】(A)はイオン発生ユニットの斜視図であり、(B)はダクトが分割された状態におけるイオン発生ユニットの斜視図である。
【図5】画像形成装置におけるイオン発生ユニットの取り付け状態を示す図である。
【図6】他の実施形態に係る画像形成装置の右側面視断面の略図である。
【図7】さらに他の実施形態に係る画像形成装置に備えられるイオン発生ユニットの斜視図である。
【図8】さらに他の実施形態に係る画像形成装置の正面断面の略図である。
【図9】(A)は図7に示す画像形成装置に備えられるイオン発生ユニットの斜視図であり、(B)はダクトが分割された状態におけるイオン発生ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、この発明の実施形態に係る画像形成装置100は、スキャナ部200、画像形成部300、及び給紙部400を備えている。
【0023】
スキャナ部200は、自動原稿搬送装置(ADF:Automatic DocumentFeeder)201、第1原稿台202、第2原稿台203、第1ミラーベース204、第2ミラーベース205、レンズ206及び固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)207を備えている。
【0024】
ADF201は、原稿トレイ211から第2原稿台203を経由して排出トレイ212に至る間に原稿を1枚ずつ搬送する。ADF201は、第1原稿台202の上面を開閉自在に被覆するように、背面側を支点に回動自在にされている。前面側が上方に移動するようにADF201を回動させて第1原稿台202の上面を露出させることにより、手動操作によって第1原稿台202に原稿を載置することができる。
【0025】
第1原稿台202及び第2原稿台203は、ともに硬質ガラス板によって構成されている。第1ミラーベース204及び第2ミラーベース205は、第1原稿台202及び第2原稿台203の下方において水平方向に移動自在にされている。第2ミラーベース205の移動速度は、第1ミラーベース204の移動速度の1/2にされている。第1ミラーベース204は、光源及び第1ミラーを搭載している。第2ミラーベース205は、第2ミラー及び第3ミラーを搭載している。
【0026】
ADF201によって搬送される原稿の画像を読み取る際には、第1ミラーベース204は、第2原稿台203の下方に停止している。光源の光は、第2原稿台203上を通過する原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース205に向けて反射される。
【0027】
第1原稿台202に載置された原稿の画像を読み取る際には、第1ミラーベース204及び第2ミラーベース205は、第1原稿台202の下方を水平方向に移動する。光源の光は、第1原稿台202上に載置された原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース205に向けて反射される。
【0028】
ADF201を用いるか否かに拘らず、原稿の画像面における反射光は、光路長を一定にして、第2ミラー及び第3ミラーによってレンズ206を経由してCCD207に入射する。
【0029】
CCD207は、原稿の画像面における反射光の光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、図示しない画像処理部へ送られて各種の画像処理が施された後、画像形成装置100に備えられた記憶部に一旦記憶され、制御部の出力指示に応じて画像形成部300に画像データとして入力される。
【0030】
画像形成装置100は、用紙が搬送される複数の搬送路、即ち主搬送路51、副搬送路52、及びスイッチバック搬送路53を備えている。主搬送路51は、給紙部400から画像形成位置を経由して、排紙部を構成する排紙トレイ38へ至るように構成されている。複数の搬送路51,52,53のうち少なくとも2個の搬送路の少なくとも一部は、互いに並走している。副搬送路52、及びスイッチバック搬送路53の詳細については、後述する。
【0031】
画像形成部300は、プロセス部30を構成する感光体ドラム31、帯電器32、露光装置33、現像装置34、転写ベルト35、クリーナ36及び定着装置37を備えている。
【0032】
感光体ドラム31は、表面に感光層を有し、所定方向に回転する。帯電器32は、感光体ドラム31の表面を所定の電位に均一に帯電させる。
【0033】
露光装置33は、感光体ドラム31の表面に画像データに基づく光を照射する。これによって、感光体ドラム31の表面には、感光層における光導電作用によって静電潜像が形成される。露光装置33は、画像データに基づいて変調されたレーザ光をポリゴンミラーを介して感光体ドラム31の軸方向に走査する。
【0034】
現像装置34は、感光体ドラム31の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に可視像化する。
【0035】
転写ベルト35は、感光体ドラム31の下方において複数のローラ間にループ状に張架されており、予定の電気抵抗値を有する。転写ベルト35のループ状の移動経路の内側には、転写ベルトを挟んで感光体ドラム31に圧接する転写ローラ35Aが備えられている。転写ローラ35Aには、所定の転写電圧が印加される。転写ローラ35Aは、主搬送路51中で感光体ドラム31と対向する領域である転写位置に転写電界を形成する。転写ベルト35と感光体ドラム31との間を通過する用紙に、感光体ドラム31が担持するトナー像が転写される。
【0036】
クリーナ36は、用紙に対するトナー像の転写を終えた感光体ドラム31の表面から、残留しているトナーを除去する。
【0037】
主搬送路51に沿って転写領域の下流側に、定着装置37が配置されている。定着装置37は、加熱ローラ37A及び加圧ローラ37Bを有している。定着装置37は、主搬送路51を搬送されてきた用紙に付着している未定着のトナー像を、加熱ローラ37Aと加圧ローラ37Bとが圧接する定着位置において熱及び圧力によって用紙に定着させる。転写位置及び定着位置は、画像形成位置を構成する。
【0038】
画像を形成された用紙は、排紙トレイ38に収容される。
【0039】
定着装置37の近傍には、プロセス部30の周囲の気体を画像形成装置100の外部へ排出する排気用ファン39が設けられている。
【0040】
給紙部400は、給紙カセット401,402,403,404及び手差しトレイ405を備えている。給紙カセット401,402,403,404のそれぞれには、同じサイズの複数枚の、普通紙、印画紙及びOHPフィルム等の用紙が収容される。手差しトレイ405には、給紙カセット401,402,403,404に収容した用紙とは異なるサイズの用紙(使用頻度の低いサイズ等)や、給紙カセット401,402,403,404に収容した用紙の紙質と異なる紙質の用紙が載置される。
【0041】
給紙部400は、給紙カセット401,402,403,404又は手差しトレイ405の何れかから1枚ずつ用紙を給紙する。給紙部400から給紙された用紙は、主搬送路51を経由してプロセス部30の画像形成位置へ搬送される。
【0042】
副搬送路52は、画像形成位置と排紙トレイ38との間で主搬送路51から分岐して主搬送路51における画像形成位置へ至る手前で主搬送路51と合流している。スイッチバック搬送路53は、副搬送路52から分岐して、両面印刷が行われる用紙の表裏を反転させるように構成されている。副搬送路52及びスイッチバック搬送路53によって、画像形成位置を経由した用紙は表裏を反転されて再び画像形成位置へ搬送される。副搬送路52及びスイッチバック搬送路53は、両面印刷搬送路を構成している。
【0043】
副搬送路52とスイッチバック搬送路53とは、ほとんど全ての領域で互いに並走している。また、主搬送路51のうち画像形成位置を含む領域と副搬送路52及びスイッチバック搬送路53のほとんど全ての領域とも、互いに並走している。
【0044】
副搬送路52及びスイッチバック搬送路53は、定着装置37とともに、図1において破線で囲んで示される引き出しユニット54として構成され、画像形成装置100の筐体101を含む装置本体に対して引き出し及び収納自在に構成されている。引き出しユニット54及び装置本体のそれぞれにはスライドレールが取り付けられており、スライドレールがスライドすることで、引き出しユニット54は、前後方向に直線状に引き出し及び収納される。このため、副搬送路52、スイッチバック搬送路53、及び定着装置37近傍の主搬送路51において用紙詰まりが発生した際には、引き出しユニット54を引き出すことで、詰まった用紙の除去が容易になる。
【0045】
主搬送路51と副搬送路52との分岐点、及び副搬送路52とスイッチバック搬送路53との分岐点のそれぞれの下流側近傍は湾曲している。この湾曲部の曲率半径は、用紙にダメージ(紙の折れ、凹み等、さらには用紙詰まり)を与えずに、用紙を搬送できる程度の大きさを要する。このため、複数の搬送路51,52,53の互いの間には、空間ができる。
【0046】
複数の搬送路51,52,53の互いに並走する部分に挟まれた空間に、イオン発生ユニット10が配置されている。イオン発生ユニット10は複数の搬送路51,52,53に挟まれた空いた空間を有効に利用して配置されているので、画像形成装置100の筐体101の外部にイオン発生ユニット10が突出することがなくなり、その結果、イオン発生ユニット10を設置しても画像形成装置100の設置に必要なスペースが拡大することがない。
【0047】
イオン発生ユニット10は、一例として、副搬送路52とスイッチバック搬送路53との間に配置されている。このため、定着装置37がイオン発生ユニット10の近傍に配置されている場合でも、イオン発生ユニット10と定着装置37との間に、副搬送路52又はスイッチバック搬送路53(この実施形態では、副搬送路52)が配置されているので、定着装置37から発せられる熱がイオン発生ユニット10に与える影響が抑制される。
【0048】
イオン発生ユニット10は、空気中の水蒸気をコロナ放電によってイオン化し、略同量のプラスイオンとマイナスイオンとを生成するように構成されている。この実施形態において、プラスイオンは、水素イオン(H)の周囲に複数の水分子が付随しており、H (H2 O) (mは自然数)として表される。一方、マイナスイオンは、酸素イオン(O2)の周囲に複数の水分子が付随しており、O2(H2 O) (nは自然数)として表される。これらのプラスイオンおよびマイナスイオンは、画像形成装置10の周囲に浮遊する細菌の表面に付着すると、化学反応して活性種である過酸化水素Hまたは水酸基ラジカル・OHを生成する。これらの過酸化水素H2 2 または水酸基ラジカル・OHは、極めて強力な活性を示すために、空気中の浮遊細菌を殺菌することができる。
【0049】
この実施形態では、イオン発生ユニット10は、筐体101の背面側から吸気して前面側へ排気する。
【0050】
筐体101は、画像形成部300、給紙部400、複数の搬送路51,52,53、及びイオン発生ユニット10を内蔵している。
【0051】
図2及び図3に示すように、筐体101の前面側部分であって画像形成部300及び搬送路51,52,53に対向する部分である前蓋102は、下端部を軸として前後方向に開閉自在に構成されている。前蓋102が開放されることで、画像形成部300及び搬送路51,52,53が筐体101の外部に露出される。
【0052】
イオン発生ユニット10は、ダクト11、イオン発生装置12、気流発生装置として機能するファン13、及びフィルタ14を有している。ダクト11は、複数の搬送路51,52,53を搬送される用紙の面内で用紙搬送方向に直交する方向(用紙の幅方向)に筐体101の外部に対して吸気及び排気する流路を形成している。ダクト11の両端部は筐体101の外部に開放しており、ダクト11は、筐体101の内部であってダクト11の外部である空間と、ダクト11の内部空間と、を隔離している。
【0053】
イオン発生装置12は、ダクト11内に配置されている。ファン13は、図示しない駆動源によって回転することで、ダクト11内に気流を発生させる。この実施形態では、ファン13としてクロスフローファンが用いられている。クロスフローファンは、半径方向に吸気及び排気する。
【0054】
ファン13は、ダクト11内の送風方向においてイオン発生装置12の上流側に配置されることが好ましい。イオン発生装置12から発生したイオンの活性がファンを通過することで低下することを防止するためである。
【0055】
フィルタ14は、ダクト11における空気の吸入側となる吸気側端部の近傍に設けられている。フィルタ14は、ダクト11内に進入しようとする埃、トナー、紙粉等の塵埃を捕捉するように構成されている。フィルタ14は、原則として塵埃を捕捉するための一般的な機能を有するもので足りるが、シリコン吸着機能を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
画像形成装置100の内部に格納されているイオン発生ユニット10のイオン発生装置12は、それぞれの端部が筐体101の外部に連通するダクト11内に配置されている。このため、イオン発生装置12が、筐体101内における画像形成部300が属する空間とは隔離された空間に位置することになり、画像形成部300から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置12に及ぶことが防止される。したがって、イオン発生ユニット10は、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる。
【0057】
また、ダクト11は、筐体101の外部に対して用紙の幅方向に吸気及び排気するように構成されているので、ダクト11が搬送路51,52,53と交わることがなく、ダクト11及び搬送路51,52,53の構成が簡易化される。
【0058】
イオン発生ユニット10は、前蓋102と対向する側の外面に、ウレタンフォーム等の独立発泡性のシール部材15を備えている。シール部材15は、ダクト11の前蓋102と対向する側に設けられた開口と連通する第1孔部を有している。前蓋102もまた、ダクト11の開口及びシール部材15の第1孔部と連通する第2孔部を有している。前蓋102が閉じられることで、前蓋102とダクト11との間からの空気の漏れが防がれ、筐体101内における画像形成部300が属する空間とダクト11内の空間とが隔離される。なお、シール部材15は、イオン発生ユニット10に備えることに代えて、前蓋102に取り付けることもできる。
【0059】
図4(A)及び図4(B)では、フィルタ14及びシール部材15の記載が省略されている。図4(A)及び図4(B)に示すように、ダクト11は、ダクト11内の送風方向において、イオン発生装置12、ファン13、及びファイルタ14を内蔵する上流側ダクト111と、下流側ダクト112とに分割されている。上流側ダクト111は装置本体に固定されている一方、下流側ダクト112は引き出しユニット54に固定されている。
【0060】
上流側ダクト111の下流側ダクト112と対向する面には、ウレタンフォーム等の独立発泡性のシール部材16が取り付けられており、上流側ダクト111と下流側ダクト112との間の空気漏れが防がれている。
【0061】
図5(A)に示すように、筐体101の一方の側面には、定着位置や転写位置といった画像形成位置の周囲を経由した空気が排出される排気用開口部103が設けられ、排気用開口部103の近傍に、排気用ファン39が配置されている。排気用開口部103は、定着装置37に近い方の側面に設けられることが好ましい。イオン発生ユニット10の吸気口18は、排気用開口部103が設けられた筐体101の面とは異なる面に設けられている。このため、排気用開口部103から排出された空気をイオン発生ユニット10内に吸入してしまうことが防止され、画像形成部300から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置12に及ぶことが防止される。なお、図5(A)では、説明の便宜上、空気は定着装置37の周囲を経由するように記載されているが、転写位置の周囲をも経由するように構成されている。
【0062】
図5(B)に示すように、筐体101が排気用開口部103を背面に有し、イオン発生ユニット10Aが、筐体101の前面から吸気して背面へ排気するように構成することもできる。このように構成された画像形成装置100Aにおいても、画像形成部300から発生するシリコン等の影響がイオン発生装置12に及ぶことが防止される。なお、筐体101が排気用開口部103を側面に有し、イオン発生ユニット10Aが筐体101の前面から吸気して背面へ排気するように構成することもできる。図5(B)では、説明の便宜上、図5(A)における構成と同様の構成については同じ符号を使用している。また、図6でも、説明の便宜上、画像形成装置100Aについて、画像形成装置100と同様の構成については同じ符号を使用している。
【0063】
図6に示すように、イオン発生ユニット10Aは、補助ダクト17をさらに備えるように構成することができる。補助ダクト17は、筐体101の背面に設けられるべき最小間隔分だけ筐体101の背面から突出し、かつ、ダクト11から排気された空気を上方へ案内する。
【0064】
補助ダクト17を備えることで、ダクト11から排気されたイオンを含む空気が高い位置から吹き出され、周囲に行きわたりやすくなる。また、画像形成装置100Aは筐体101の背面が壁面に沿うように設置されることが多いので、画像形成装置100Aの設置場所の壁面に補助ダクト17が当たるように画像形成装置100Aを設置することで、壁面と筐体101の背面との間に設けられるべき最小間隔が容易かつ確実に設けられる。
【0065】
図7に示すように、イオン発生ユニット10Bの吸気及び排気を、筐体101における互いに同じ面において行うように構成することもできる。図7では、説明の便宜上、イオン発生ユニット10Bについて、イオン発生ユニット10と同様の構成については同じ符号を使用している。イオン発生ユニット10Bでは、ダクト11Bが平面視でU字状に湾曲している。
【0066】
一例として、イオン発生ユニット10Bは、筐体101の前面において吸気及び排気を行う。この場合、筐体101には、ダクト11Bの両端部の断面積に対応するサイズの2個の孔部が形成される。ダクト11Bの両端部と前蓋102とのそれぞれの間には、シール部材が配置される。
【0067】
上述のように構成されたイオン発生ユニット10Bを備えた画像形成装置100Bによっても、設置に必要なスペースが拡大することなく、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる。
【0068】
図8を用いて、さらに他の実施形態に係る画像形成装置100Cについて説明する。なお、説明の便宜上、画像形成装置100と同様の部材については同じ符号を使用する。
【0069】
画像形成装置100Cは、画像形成部300、及び給紙部400を備えている。画像形成装置100Cでは、主搬送路51C及び副搬送路52Cは鉛直方向に延びており、転写位置及び定着位置は主搬送路51Cに沿って鉛直方向に並んでいる。画像が形成された用紙は、画像形成装置100Cの上面に配置された排紙トレイ38Cに収容される。
【0070】
画像形成装置100Cは、大容量の用紙を収容可能な給紙装置500から用紙の供給を受けることができる外部給紙用搬送路55を備えている。
【0071】
画像形成装置100Cでは、図8において破線で囲んで示すように、主搬送路51Cの一方の第1面、副搬送路52C、転写ベルト35を含む部材が、スライドユニット56としてユニット化されている。スライドユニット56は、主搬送路51Cの第1面が対向する第2面に対して離接するように、筐体101の側方(図8において左方向)へ直線状に引き出し及び収納自在に構成されている。スライドユニット56を引き出すことで、転写位置や定着位置といった画像形成位置を含む主搬送路51Cにおいて詰まった用紙の除去が容易になる。
【0072】
画像形成装置100Cでは、イオン発生ユニット10Cは、主搬送路51Cと副搬送路52Cとに挟まれた空間に配置されている。
【0073】
イオン発生ユニット10Cは、副搬送路52Cの主搬送路51Cからの分岐点よりも主搬送路51Cへの合流点に近い位置に配置されることが好ましい。副搬送路52Cの主搬送路51Cからの分岐点の近傍には定着装置37が配置されているので、副搬送路52Cの主搬送路51Cからの分岐点よりも主搬送路51Cへの合流点に近い位置にイオン発生ユニット10Cを配置することで、定着装置37から発せられる熱がイオン発生ユニット10Cに与える影響が抑制される。
【0074】
図9に示すように、イオン発生ユニット10Cは、ダクト11C、イオン発生装置12、ファン13、独立発泡性のシール部材161C,162Cを備えている。
【0075】
ダクト11Cは、用紙の幅方向に中央部ダクト111C及び端部ダクト112C,113Cの3個に分割可能に構成されている。ダクト11Cは、スライドユニット56の引き出し方向において中央部ダクト111Cの用紙の幅方向の寸法が上流側ほど小さくなるように分割されている。
【0076】
端部ダクト112C,113Cのそれぞれの中央部ダクト111C側の面に、シール部材161C,162Cが装着されている。シール部材161C,162Cによって中央部ダクト111Cと端部ダクト112C,113Cのそれぞれとの間の空気漏れが防止されている。
【0077】
端部ダクト112C,113Cは、筐体101Cを含む装置本体に固定され、中央部ダクト111Cはスライドユニット56に固定されている。
【0078】
スライドユニット56の引き出し方向においてイオン発生ユニット10Cの上流側には、主搬送路51Cの搬送ローラ511C,512Cが配置されている。搬送ローラ511C,512Cは、主搬送路51Cの第1面側のフレーム513Cに軸支されている。
【0079】
スライドユニット56の引き出し方向において端部ダクト112C,113Cの上流側端部の間隔は、フレーム513Cの用紙幅方向の寸法より大きくされている。このため、スライドユニット56の引き出し時に、搬送ローラ511C,512C及びフレーム513Cは、端部ダクト112C,113Cと衝突することなく、端部ダクト112C,113Cの間を移動して中央部ダクト111Cとともに引き出される。
【0080】
したがって、画像形成装置100Cのメンテナンス作業を阻害することなく、かつ、設置に必要なスペースが拡大することなく、イオン発生ユニット10Cを搭載することができ、長期間にわたって安定してイオンを発生させることができる。
【0081】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10,10A,10B,10C イオン発生ユニット
11,11B,11C ダクト
111 上流側ダクト
112 下流側ダクト
111C 中央部ダクト
112C,113C 端部ダクト
17 補助ダクト
18 吸気口
30 プロセス部
37 定着装置
51,51C 主搬送路
52,52C 副搬送路
53 スイッチバック搬送路
54 引き出しユニット
56 スライドユニット
100,100A,100B,100C 画像形成装置
101,101C 筐体
103 排気用開口部
300 画像形成部
400 給紙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生機能を有する画像形成装置であって、
画像データに基づいて画像形成位置において用紙に画像形成処理を行う画像形成部と、
前記画像形成位置へ供給される用紙を収容する給紙部と、
画像を形成された用紙が収容される排紙部と、
前記給紙部から前記画像形成位置を経由して前記排紙部へ至る用紙が搬送される主搬送路を含む複数の搬送路であって前記複数の搬送路のうち少なくとも2個の搬送路の少なくとも一部が互いに並走する複数の搬送路と、
前記複数の搬送路の互いに並走する部分に挟まれた空間に配置されたイオン発生ユニットと、
前記画像形成部、前記給紙部、前記複数の搬送路、及び前記イオン発生ユニットを内蔵する筐体と、を備え、
前記イオン発生ユニットは、
前記複数の搬送路を搬送される用紙の面内で用紙搬送方向に直交する方向に前記筐体の外部に対して吸気及び排気する流路を形成するダクトと、
前記ダクト内に配置されたイオン発生装置と、
前記ダクト内に気流を発生させる気流発生装置と、を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の搬送路は、
前記主搬送路と、
前記画像形成位置を経由した用紙が表裏を反転されて再び前記画像形成位置へ搬送される両面印刷搬送路と、を含み、
前記両面印刷搬送路は、前記筐体に対して引き出し及び収納自在に構成され、
前記イオン発生ユニットのうち少なくとも前記ダクトの一部は、前記筐体を含む装置本体に固定される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記両面印刷搬送路は、
前記画像形成位置と前記排紙部との間で前記主搬送路から分岐して前記主搬送路における前記画像形成位置へ至る手前で前記主搬送路と合流する副搬送路と、
前記副搬送路から分岐して両面印刷が行われる用紙の表裏を反転させるスイッチバック搬送路と、を含み、
前記イオン発生ユニットは、前記副搬送路と前記スイッチバック搬送路との間に配置される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記イオン発生ユニットは、前記両面印刷搬送路の前記主搬送路からの分岐点よりも前記主搬送路への合流点に近い位置に配置される請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記画像形成位置の周囲を経由した空気が排出される排気用開口部を有し、
前記イオン発生ユニットは、前記排気用開口部が設けられた前記筐体の面とは異なる面に、前記ダクトの吸気口を有する請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記排気用開口部を背面又は側面に有し、
前記イオン発生ユニットは、前記筐体の前面から吸気して背面へ排気するように構成される請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記排気用開口部を側面に有し、
前記イオン発生ユニットは、前記筐体の背面から吸気して前面へ排気するように構成される請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記イオン発生ユニットは、前記筐体の前面から吸気して背面へ排気するように構成され、
前記筐体の背面に設けられるべき最小間隔分だけ前記筐体の背面から突出し、かつ、前記ダクトから排気された空気を上方へ案内する補助ダクトをさらに備える請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−118258(P2011−118258A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277308(P2009−277308)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】