説明

画像形成装置

【課題】帯電効率の良い接触帯電器を用いた画像形成装置において、a−SiC表面層の放電による変質を抑制することにより従来に比べ、良好なクリーニング特性が長期間に渡って維持され、耐磨耗性に優れ長寿命で帯電能力、画像品質を高次で満たす画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体と帯電手段と、露光手段と、その潜像を現像してトナー像を形成するための現像手段と、そのトナー像を像担持体に転写するための転写手段と、感光体表面をクリーニングするためのクリーニングブレードを有する画像形成装置において、帯電手段が接触帯電器で、感光体が光導電層と、水素化アモルファス炭化ケイ素で形成されている表面層とを順次積層した感光体で、表面層がSiの原子密度とCの原子密度の和に対するCの原子密度の比が0.61以上0.75以下であり、且つSiの原子密度とCの原子密度の和が6.60×1022原子/cm以上である感光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化アモルファス炭化ケイ素で構成された表面層(以下、「a−SiC表面層」とも称する。)を有する感光体を用いた複写機、プリンター、ファックス等の電子写真プロセスを利用した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式や静電記録方式を用いた画像形成装置は、数多く考案されている。
このような電子写真画像形成装置に用いられる感光体としては、有機感光体やアモルファスシリコン系感光体(以下、「a−Si系感光体」とも称する。)等がよく用いられている。
a−Si系感光体は、表面硬度が高く、半導体レーザなどに高い感度を示す。しかも繰返し使用による劣化もほとんど認められないことから、高速複写機やレーザービームプリンタ(LBP)などの電子写真感光体(以下「感光体」とも称する。)として用いられている。
【0003】
a−Si系感光体の基本的な構成としては、図2に示すような層構成が知られている。マイナス帯電用a−Si系感光体は、導電性基体2001にアモルファスシリコン(以下、「a−Si」とも称する。)で構成された光受容層2002を形成し、更にa−SiC表面層2005を積層した構成となっている。光受容層2002は、下部注入阻止層2003、光導電層2004及び上部注入阻止層2006からなる。なお、光受容層2002の中で上部注入阻止層2006が無い層構成も、検討されている。
【0004】
感光体表面のクリーニングに関しては、特許文献1に感光体表面の残留物をクリーニングブレードによって除去する時の感光体の表面自由エネルギーとクリーニングブレードの表面自由エネルギーとトナーの表面自由エネルギーの相関関係について記載されている。また、特許文献2には、研磨粒子が含まれた磁気ブラシで感光体表面を摺擦することにより、クリーニングブレードの反転やクリーニング不良を抑制するという技術が明示されている。
a−Si系感光体を帯電する方法としては、コロナ放電を用いたコロナ帯電方式、導電性ローラや導電性ブラシを用い帯電を行う接触帯電方式などがある。
【0005】
近年、これらの内、被帯電体としての感光体に電圧(帯電バイアス)を印加した帯電部材(接触帯電部材)を当接させて感光体表面を所定の極性、電位に帯電させる接触帯電方式の帯電装置が多く提案され、また実用化されている。これは、上記の非接触タイプのコロナ帯電器による場合に比べて低オゾン、低電力等の利点を有するためである。
このような接触帯電方式の帯電装置において、被帯電体としての感光体に接触させる帯電部材にはローラ型(帯電ローラ)、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型(帯電ブレード)など種々の形態があり、また様々な改善提案がある。
接触帯電の帯電機構(帯電のメカニズム、帯電原理)には、以下に述べる放電帯電系と注入帯電系の2種類の帯電機構がある。接触帯電において、どちらの帯電機構が主として帯電がおこなわれるか設定が可能である。
【0006】
(a)放電帯電系
接触帯電器の放電帯電系は、接触帯電部材と感光体(被帯電体)との微小間隙に生じる放電現象により感光体表面を帯電する系である。放電帯電系は、接触帯電部材と感光体間電圧に対して一定の放電閾値を有するため、帯電電位より大きな電圧を接触帯電部材に印加する必要がある。また、コロナ帯電器に比べれば発生量は格段に少ないけれども放電生成物を生じることが原理的に避けられないため、オゾンなど活性イオンによる弊害は避けられない。
【0007】
(b)注入帯電系
接触帯電器の直接注入帯電系は、接触帯電部材から感光体(被帯電体)に直接電荷が注入されることで感光体表面が帯電する系であり、直接帯電、注入帯電、あるいは電荷注入帯電とも称される。より詳しくは、中抵抗の接触帯電部材が感光体表面に接触して、感光体表面に直接電荷注入を行うものである。接触帯電部材への印加電圧が放電閾値以下の印加電圧であっても、感光体を印加電圧相当の電位に帯電することができる。
【0008】
注入帯電系であっても、接触帯電部材と感光体表面の近傍で、微小僅少ではあるが放電が生じており、長期の使用によっては表面変質がみられる。
これら二つの系の内、条件設定的には放電帯電系を主として機能させることが、帯電能力、コスト、簡便性から多く採用されている。さらに、感光体周りの省スペース性と高速プロセスでの帯電効率(印加電流と帯電電位の関係)で有利な放電帯電系の接触帯電方式が多く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−021135号公報
【特許文献2】特開2003−195713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
放電帯電系では上述したようなメリットがあるものの近接放電を必ず伴うために、感光体の表面変質が生じやすい。この表面変質により、表面摩擦抵抗が変化し、クリーニングブレードの接触状況が変わりクリーニング不良が発生することがあった。クリーニング不良が生じると、クリーニング出来ずに感光体表面に残ったトナ−、外添剤、紙粉等々が接触帯電器に付着し接触帯電器表面が汚れる。そのために、画像欠陥や、帯電電位の低下や電位均一不良といった帯電不良を引き起こすことがあった。
【0011】
特に、高速プロセスでは、帯電電位を確保するために接触帯電器に印加する電流が増加し、そのために感光体の表面変質も進みやすい。このため、感光体の初期状態でクリーニング条件を最適に設定しても、使用が進むにつれて感光体の表面状態が変化し、このため接触帯電器を用いた画像形成装置において、良好なクリーニング状態を常時維持することは、非常に困難な課題であった。
そこで、本発明の目的は、接触帯電を用いた電子写真装置において、使用期間中を通じて良好なクリーニング状態を維持し、接触帯電器の汚れを防止し、画像不良の生じない画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは、使用期間中を通じて良好なクリーニング状態の維持を実現するために鋭意検討を行った。その過程で、クリーニングブレードとa−SiC表面層との摩擦抵抗の変化に着目して検討を行った。
その結果、以下の二つがクリーニング不良を生じさせる原因の候補として浮かび上がってきた。
(1)a−SiC表面層最表面の微細形状が使用に伴う摩耗により、平滑化してクリーニングブレードとの接触面積が増加し、その結果、摩擦抵抗が増加する。
(2)近接放電により感光体最表面が変質し摩擦抵抗が変化する。
これら二つのうちどちらがクリーニング不良の主原因となっているか見極めるため、研磨により平滑化した感光体で耐久画像出力評価を行った。その結果、近接放電による表面変質が摩擦抵抗を変化させることが主原因であり、これによりクリーニング不良をまねく場合があることがわかった。
【0013】
そこで、本発明者らは、a−SiC表面層の近接放電による変質を抑制することにより、摩擦抵抗の変化を抑え、使用期間中を通じて良好なクリーニング状態を維持できる画像形成装置を提供するために鋭意検討を行った。その結果、a−SiC表面層を構成するケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を所定の範囲内とした上で、ケイ素原子及び炭素原子の原子密度の和を所定の値より大きくすることにより、上述した課題に対して大きな効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明は、少なくとも、感光体と、感光体を帯電する帯電手段と、感光体表面に静電潜像を形成するための露光手段と、その静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像手段と、そのトナー像を像担持体に転写するための転写手段と、感光体表面をクリーニングするためのクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記帯電手段が接触帯電器で、前記感光体が少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化ケイ素で形成されている表面層とを順次積層した感光体で、該表面層がケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.61以上0.75以下であり、且つケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm以上である感光体を用いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、接触帯電を用いた高速電子写真プロセスであっても、使用期間中を通じて良好なクリーニング状態を維持でき、安定して良好な画像出力が可能な画像形成装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置を説明するための模式的な説明図である。
【図2】a−Si感光体の層構成を示す模式的概略断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置を説明するための模式的な説明図である。
【図4】タンデム式の画像形成装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、本発明に係る画像形成装置は、少なくとも、感光体と、感光体を帯電する帯電手段と、感光体表面に静電潜像を形成するための露光手段と、その静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像手段と、そのトナー像を像担持体に転写するための転写手段と、感光体表面をクリーニングするためのクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記帯電手段が接触帯電器で、前記感光体が少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化ケイ素で形成されている表面層とを順次積層した感光体で、該表面層がケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比(以下「C/(Si+C)」とも称する。)が0.61以上0.75以下であり、且つケイ素原子の原子密度(以下「Si原子密度」とも称する。)と炭素原子の原子密度(以下「C原子密度」とも称する。)の和(以下「Si+C原子密度」とも称する。)が6.60×1022原子/cm以上である感光体を用いていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る感光体のa−SiC表面層は原子密度が高いため(ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm以上)、膜構造の骨格を形成するケイ素原子及び炭素原子の原子間距離が短くなる。そのため、骨格を形成する原子同士の結合力が向上すると推測される。このような表面層を積層した感光体を画像形成装置で用いた場合、近接放電による表面層変質の進行が小さくなると考えられる。
近接放電による表面層の変質は、ミクロには生じていると考えられるが、従来の表面層と比べて、その度合いは小さい。そのために、感光体表面の摺擦による摩耗で変質部分が消失していると推測している。このため、表面摩擦抵抗の変化が小さくなり、良好なクリーニング状態が維持されると推測している。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
上述したように本発明では、a−SiC表面層を構成するケイ素原子及び炭素原子の原子密度を高くする。このことにより、ケイ素原子と炭素原子との結合が接触帯電器の近接放電により切断されにくくなり、また空間率が低減するため放電生成物(オゾン等)が層中に侵入しにくくなり、変質を低減させることが可能になると考えられる。
更に、表面層の構成原子の結合力が高くなるため、高硬度な表面層が得られ、その結果、耐磨耗性も向上すると推察される。
【0020】
そのため、a−SiC表面層のケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が高い方がより好ましい。6.81×1022原子/cm以上にすることで、さらに良好なクリーニング状態の維持に加えて、耐磨耗性の向上も見られる。なお、a−SiCにおいては、結晶以上に高密度化することはないため、本発明の組成範囲のa−Siについては、13.0×1022原子/cmという原子密度が、ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和の上限となる。
ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和を上記範囲とし、且つ、a−SiC表面層のケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.61以上0.75以下の組成範囲とすることが、優れた感光体特性を得る上では必要である。
【0021】
a−SiC表面層において、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.61よりも小さくすると、特に、原子密度の高いa−SiCを作製した場合、a−SiCの抵抗が低下する場合がある。このような場合、静電潜像形成時にキャリアが表面層中で横流れを生じやすくなる。そのため、静電潜像として孤立ドットを形成した場合に、表面層中でのキャリアの横流れにより孤立ドットが小さくなる。その結果、出力された画像において、特に、低濃度側での画像濃度が低下してしまうために、階調性やドット再現性の低下を生じる場合がある。このような理由により、原子密度の高いa−SiC表面層においては、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.61以上にする必要がある。
【0022】
また、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.75より大きくすると、特に、原子密度の高いa−SiCを作製した場合、a−SiC表面層での光吸収が急激に増加する場合がある。このような場合、静電潜像形成時に必要となる画像露光光量が多くなり、感度が極端に低下してしまう。また、a−SiC表面層の磨耗量に対する感度変動が大きくなることから、感光体に削れムラが生じた場合に、画像濃度ムラが生じる場合がある。このような理由により、原子密度の高いa−SiC表面層においては、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.75以下にする必要がある。
【0023】
以上の理由により、実用上好ましい感光体特性を維持しつつ、a−SiC表面層の耐変質性を向上させるためには、a−SiC表面層のケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和を6.60×1022原子/cm以上、且つ、a−SiC表面層のケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.61以上0.75以下の組成範囲とする必要がある。
【0024】
また、本発明において、ケイ素原子の原子数、炭素原子の原子数及び水素原子の原子数の和に対する水素原子の原子数の比(以下、「H原子比」とも称する。)を0.30以上0.45以下にすることが好ましい。
原子密度の高いa−SiC表面層において、光学的バンドギャップが狭くなり、光吸収が増加することにより感度が低下する場合がある。しかしながら、H原子比を0.30以上含有させることで光学的バンドギャップが広がり、感度の良化が図れる。よって、H原子比を0.30以上とすることが好ましい。
【0025】
一方、H原子比を0.45より多くすると、a−SiC表面層中には、メチル基のような水素原子の多い終端基が増加する傾向がみられる。メチル基のような複数の水素原子を有する終端基がa−SiC表面層中に存在すると、a−SiCの構造中に大きな空間を形成するとともに、周囲に存在する原子間の結合にひずみを生じさせる。このような構造上弱い部分は、変質しやすい部分となってしまうと考えられる。また、水素原子をa−SiC表面層中に多量に含有させると、a−SiC表面層における骨格原子であるケイ素原子と炭素原子のネットワーク化の促進が図りづらくなる。
このような理由により、H原子比を0.45以下とすることで、a−SiC表面層における骨格原子であるケイ素原子と炭素原子のネットワーク化の促進及び原子間の結合に生じていたひずみの低減が可能となると考えられる。その結果、更にa−SiC表面層の変質の進行が小さくなり、かつ耐磨耗性も良好となる。
【0026】
また、a−SiC表面層のラマンスペクトルにおける1480cm−1のピーク強度Iに対する1390cm−1のピーク強度Iの比を、0.20以上0.70以下にすることにより、良好なクリーニング状態の維持に大きな効果が得られる。
まず、a−SiC表面層のラマンスペクトルについて、ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」とも称する。)と比較しながら説明する。
【0027】
sp構造とsp構造から形成されているDLCのラマンスペクトルは、1540cm−1付近に主ピークを持ち、1390cm−1付近にショルダーバンドを有する非対称なラマンスペクトルが観察される。RF−CVD法で作製されたa−SiC表面層では、1480cm−1付近に主ピークを持ち、1390cm−1付近にショルダーバンドを有するDLCに類似したラマンスペクトルが観察される。a−SiC表面層の主ピークがDLCよりも低波数側にシフトしているのは、a−SiC表面層にはケイ素原子が含まれているためである。このことから、RF−CVD法で作製されたa−SiC表面層は、DLCに非常に近い構造を有する材料であることが分かる。
【0028】
一般的に、DLCのラマンスペクトルにおいて、高波数バンドのピーク強度に対する低波数バンドのピーク強度の比が小さいほど、DLCのsp性が高い傾向があることが知られている。よって、a−SiC表面層においても、DLCと非常に近い構造であることから、高波数バンドのピーク強度に対する低波数バンドのピーク強度の比が小さいほど、sp性が高い傾向を示すと考えられる。
本発明のa−SiC表面層において、a−SiC表面層におけるID/IGを0.70以下にすることにより、クリーニング耐久性をさらに向上させることができる。
【0029】
この理由としては、sp性が向上すると、spの2次元のネットワーク数が減少し、sp3の3次元ネットワークが増加するため、骨格原子の結合数が増加し、強固な構造体が形成可能になるためだと考えている。
そのため、a−SiC表面層のラマンスペクトルにおける1480cm−1のピーク強度Iに対する1390cm−1のピーク強度Iの比が小さい方がより好ましいが、量産レベルで作製されるa−SiC表面層では、完全にsp構造を取り除くことはできない。そのため、本発明において、a−SiC表面層のラマンスペクトルにおける1480cm−1のピーク強度Iに対する1390cm−1のピーク強度Iの比の下限値としては、本実施例でクリーニング維持の良好な範囲として確認された0.2とする。
【0030】
なお、感光体表面の微細形状が、摩擦係数に影響を与える因子か否かを見極めるために、原子間力顕微鏡(AFM)により感光体表面を10μm×10μmの範囲で測定したときに求められる表面粗さRaと、クリーニング耐久性との相関を評価した。その結果、実施例の感光体で確認された表面粗さRa(中心線平均粗さ)の範囲7nmから44nmでは特段の差が無く、良好な結果であった。
【0031】
また、特許文献2に記載されているようにクリーニングブレードとの摩擦に影響する因子として、本発明の画像形成装置に用いる感光体表面の表面自由エネルギーについて、クリーニング耐久性との相関を評価した。その結果、実施例及び比較例の感光体で確認された表面自由エネルギー(γ)が37mN/mから52mN/mの範囲では、クリーニング耐久性について特段の差が無く、良好な結果であった。
【0032】
さらに、摩擦係数をオイラーベルト式で測定し、クリーニング耐久性との相関を評価した。その結果、実施例及び比較例の感光体で確認された耐久試験実施前の摩擦係数(μs)の範囲0.20から0.79ではクリーニング性について特段の差が無く、良好な結果であった。しかしながら、使用に伴い摩擦係数が大きく変化した場合には、クリーニング性が悪化して、帯電ローラー汚れが目だってくる状況にあった。
【0033】
(光導電層)
本発明の感光体における光導電層は、電子写真特性上の性能を満足できる光導電特性を有するものであればいずれのものであっても差し支えない。
しかし、a−Siから形成された光導電層が、耐久性、安定性の観点から望ましく、水素化アモルファスシリコンがより望ましい。
本発明で光導電層としてa−Siを用いる場合は、a−Si中の未結合手を補償するため、水素原子に加えて、ハロゲン原子を含有させることができる。
水素原子(H)およびハロゲン原子の含有量の合計は、ケイ素原子と水素原子およびハロゲン原子の和に対して10原子%以上、特に15原子%以上であることが好ましく、また、30原子%以下、特に25原子%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明において、光導電層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、光導電層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、面内方向には均一に含有されてはいるが、層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える周期表13族に属する原子(以後「第13族原子」と略記する)またはn型伝導性を与える周期表15族に属する原子(以後「第15族原子」と略記する)を用いることができる。
【0035】
第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にホウ素、アルミニウム、ガリウムが好適である。第15族原子としては、具体的にはリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にリン、砒素が好適である。
光導電層に含有される伝導性を制御する原子の含有量は、ケイ素に対して1×10−2原子ppm以上、特に5×10−2原子ppm以上、さらには1×10−1原子ppm以上であることが好ましい。また、1×10原子ppm以下、特に5×10原子ppm以下、さらには1×10原子ppm以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、感光体の全層厚は、所望の電子写真特性が得られること、経済的効果等の点から所望にしたがって適宜決定されるが、特に高速プロセスで用いる場合には、帯電特性の観点から、40μm以上80μm以下の範囲が好ましい。
【0037】
(下部注入阻止層)
本発明の感光体において、基体側からの電荷の注入を阻止する働きを有する下部注入阻止層を基体と光導電層との間に設けることが効果的である。即ち、下部注入阻止層は感光体の自由表面が一定極性の帯電処理を受けた際、基体から光導電層への電荷の注入を阻止する機能を有している。このような機能を付与するために、下部注入阻止層には伝導性を制御する原子を光導電層に比べて比較的多く含有させる。
【0038】
伝導性を制御するために下部注入阻止層に含有させる原子は、下部注入阻止層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、面内方向には均一に含有されてはいるが、層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。分布濃度が不均一な場合には、基体側に多く分布するように含有させるのが好適である。しかしながら、いずれの場合においても、伝導性を制御する原子を基体表面に対して平行面内方向に均一な分布で含有されることが、特性の均一化を図る上からも望ましい。
伝導性を制御するために下部注入阻止層に含有させる原子としては、帯電極性に応じて第13族原子又は第15族原子を用いることができる。
【0039】
更に、下部注入阻止層に、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも1種の原子を含有させることにより、下部注入阻止層と基体との間の密着性の向上を図ることが可能となる。
下部注入阻止層に含有される炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも1種の原子は、下部注入阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよい。また、面内方向には均一に含有されてはいるが、膜厚方向には不均一に分布する状態で含有していてもよい。いずれの場合にも、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも1種の原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で下部注入阻止層に含有されることが、特性の均一化を図る上からも好ましい。
【0040】
下部注入阻止層の層厚は、所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の点から、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmとされる。層厚を0.1μm以上とすることにより、基体からの電荷の注入阻止能を十分に有することができ、好ましい帯電能を得ることができる。一方、10μm以下とすることにより、作製時間の延長による製造コストの増加を防ぐことができる。
【0041】
(上部注入阻止層)
上部注入阻止層は、上部からの電荷の注入を阻止し、帯電能を向上させると共に、強露光の照射により大量の光キャリアが生成され、この光キャリアが動きやすい部分へと集中して流れ込む現象を、阻止する役割も果たしている。
【0042】
高抵抗の表面層で上部阻止能を持たせる場合、光照射で生成した帯電極性と逆極性のキャリアが表面層に溜まることがあり、このキャリアが横流れすることで、文字部分がぼやけてしまい階調性が低下することがある。
上部注入阻止層に対して、帯電極性に応じて周期表の第13族原子又は周期表の第15族原子を所望の量含有させることで、帯電極性と逆極性のキャリアを通過させつつ横流れしない最適な抵抗値に調整できる。このため、階調性に関して格段の改善が見られる。
【0043】
本発明における上部注入阻止層は、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数和に対する炭素原子の原子数の比が0.10以上、0.60以下の範囲とするのが好ましい。
上部注入阻止層には帯電極性に応じて、伝導性を制御する原子として、周期表の第13族原子又は周期表の第15族原子を含有させる。
ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.10以上であれば、電荷注入の阻止能力を損なわずに、良好な階調性が得られる。
【0044】
また、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.60以下であれば、周期表の第13族原子又は周期表の第15族原子の含有効果が得られるため、電気抵抗の制御が容易である。
上部注入阻止層における周期表の第13族原子又は周期表の第15族原子の含有量は、階調性、電荷注入の阻止能力及び画像品質の観点からケイ素に対して10原子ppm以上、30000原子ppm以下とする。
周期表の第13族原子又は周期表の第15族原子の含有量がケイ素に対して10原子ppm以上とすることで、表面からの電荷注入を十分阻止することができ、30000原子ppm以下であれば、良好な階調性が得られる。
【0045】
上部注入阻止層は光導電層側から表面層に向かって組成を連続的に変化させることが好ましく、密着性の向上や干渉防止等に効果がある。
本発明において、上部注入阻止層の層厚は、光導電層および表面層の層厚や、求められる電子写真特性によって総合的に判断して決定される。表面からの電荷注入の阻止能力を十分発揮し、かつ画像品質に影響を与えない観点から、通常は0.01μm〜0.5μmで設計する。
【0046】
(基体)
円筒状基体の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタンやこれらの合金を用いることができる。中でも加工性や製造コストを考慮するとアルミニウムが優れている。この場合、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金のいずれかを用いることが好ましい。
【0047】
<本発明の画像形成装置>
図1に、本発明に係る画像形成装置の一例を示す。同図に示す画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。
同図に示す画像形成装置は、光受容部材としてドラム型の感光体1001を備えている。感光体1001は、画像形成装置本体(不図示)に回転自在に支持されていて、駆動手段(不図示)によって矢印X方向に所定のプロセス速度(周速度)で回転駆動される。
【0048】
感光体1001の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電装置(帯電手段)1012、露光装置(露光手段)1003、現像装置(現像手段)1004、転写装置(転写手段)1005、クリーニング装置(クリーニング手段)1006、前露光装置(前露光手段)1007が配設されている。また、転写材P(例えば、紙、透明フィルム)の搬送方向(矢印Kp方向)に沿っての下流側には、定着装置(不図示)が配設されている。
【0049】
上述構成の画像形成装置において、矢印X方向に回転駆動された感光体1001は、帯電部材として感光体表面に接触された帯電ローラ1012aによって帯電される。帯電ローラ1012aには、帯電バイアス印加電源(不図示)によって帯電バイアスが印加され、これにより感光体1001の表面は、所定の極性、電位に均一に帯電される。
帯電後の感光体1001の表面では、画像情報に基づいて露光装置1003から照射される露光光によって照射部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。露光装置1003としては、例えばレーザスキャナやLEDを使用することができる。
【0050】
この静電潜像は、現像装置1004によって現像される。現像装置1004は、感光体1001の表面に対向するように配置された現像スリーブ1004aを有している。この現像スリーブ1004aの表面に担持されて感光体1001の表面に対向する現像位置に現像剤が搬送される。搬送された現像剤は、現像スリーブ1004aに対して現像バイアス印加電源(不図示)から印加された現像バイアスによって感光体1001の表面の静電潜像に静電的に付着される。これにより、感光体1001の上の静電潜像は、トナー像として現像される。
【0051】
こうして感光体1001の表面に形成されたトナー像は、感光体1001と転写装置1005との間の転写部に供給される他部材としての転写材P(例えば、紙、透明フィルム)に転写される。転写装置1005としては、例えば感光体1001の表面に接触するように配置された転写ローラ(転写部材)を使用することができる。また転写材Pは、給紙部(不図示)から給搬送手段(不図示)によって搬送され、レジストローラ(不図示)によって感光体1001の上のトナー像にタイミングを合わせるようにして上述の転写部に供給されるようになっている。転写部に供給された転写材Pは、転写バイアス印加電源(不図示)から転写装置1005に印加された転写バイアスによって、また、感光体1001から加圧を受けることによって感光体1001の表面上から転写材Pの表面に転写される。なお、カラーの画像形成装置等の、例えば中間転写ドラムや中間転写ベルト等の中間転写体を有する画像形成装置では、これら中間転写ドラムや中間転写ベルトが上述の他部材に相当する。
【0052】
トナー像転写後の感光体1001では、転写材Pに転写されないで表面に残ったトナー(残留トナー)がクリーニング装置1006のクリーニングブレード1006aによって除去される。さらに表面に残った電荷が前露光装置1007によって除去され、次の画像形成に供される。
一方、トナー像転写後の転写材Pは、定着装置に搬送され、ここで定着ローラー、加圧ローラによって加熱・加圧されて表面にトナー像が定着される。
トナー像定着後の転写材Pは、画像形成装置本体外部に排出され、これにより、転写材Pに対する画像形成(プリント、コピー)が終了する。
【0053】
<帯電装置>
感光体1001の帯電方式は、感光体1001に接触させた帯電部材1012により帯電する接触帯電方式である。接触帯電装置は、像担持体等の被帯電体に、ローラ型(帯電ローラ)、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型等の導電性の帯電部材(接触帯電部材・接触帯電器)1012を接触させる。そして、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して被帯電体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。
【0054】
帯電装置1012に印加する電圧としては直流電圧のみでもよいし、直流交流成分重畳電圧でもよい。
注入帯電方法の場合、交流成分としては、装置のプロセススピードにもよるが100Hz〜10kHz程度の周波数で、印加交流成分のピーク間電圧(ピーク・ツウ・ピーク電圧)は1000V程度以下が好ましい。1000Vを越えると、印加電圧に応じた感光体電位が得られてしまうので、潜像面が電位的に波打ち、かぶりや濃度うすを生じることがある。
放電を用いる帯電方法の場合、交流成分としては、装置のプロセススピードにもよるが100Hz〜10kHz程度の周波数で、印加交流成分のピーク間電圧は1000V程度以上で、放電開始電圧の2倍以上が好ましい。印加する交流成分の波形はサイン波、矩形波、鋸波等が使用できる。
【0055】
(A)ローラー帯電
各種の接触帯電装置のなかでも、接触帯電部材として導電ローラー(帯電ローラー)を用いるローラー帯電方式が、本発明において好ましい。この帯電方式は、帯電の安定性というメリットがあり、高速プロセスにも有用である。
このローラー帯電では、その帯電機構は前記の放電帯電機構が支配的である。
本発明の帯電ローラーは、導電性または中抵抗のゴム材あるいは発泡体を用いて作成されている。さらに、これらローラー材料を、積層した構成として、所望の特性に調整したものも利用することがきる。
【0056】
本発明の帯電ローラーは、弾性を持たせて被帯電体との十分な接触状態を得ることが可能とされている。同時に、移動する被帯電体を充電するのに十分低い抵抗を有している。一方では被帯電体にピンホールなどの低耐圧欠陥部位が存在した場合に電圧のリークを防止する必要がある。そのために、十分な帯電性と耐リークを得るために10〜10Ωの抵抗に調整している。帯電ローラの硬度は、硬度が低すぎると形状が安定しないために被帯電体との接触性が悪くなり、高すぎると被帯電体との間に帯電ニップ部を確保できないだけでなく、被帯電体表面へのミクロな接触性が悪くなる。そのため、本発明の帯電ローラーは、アスカーC硬度で25度から50度が好ましい範囲である。
【0057】
本発明の帯電ローラの材質としては、弾性発泡体に限定するものではない。弾性体の材料として、EPDM、ウレタン、NBR、シリコーンゴムや、IR等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものがあげられる。また、特に導電性物質を分散せずに、イオン導電性の材料を用いて抵抗調整をしたものも利用することができる。EPDMはエチレンプロピレンジエンゴムを、NBRはニトリルゴムを、IRはイソプレンゴムを意味する。
【0058】
感光体1001の帯電は、帯電部材1012に対して、感光体が所望の電位となるよう直流電圧値を設定して印加し、これに感光体表面に電荷をのせるエネルギーとなる交流電圧を重畳させて行う。たとえば−400Vの電位を感光体表面に与える際には、−400Vの直流電圧を印加し、さらに、帯電部材や感光体の抵抗にもよるが0.1〜3.0kV程度の交流電圧を重畳する。
【0059】
本発明の帯電ローラーの接触帯電においては、帯電印加によって充分な帯電性を確保するために帯電部材1012と感光体1001の間で近接放電を起こさせることが必要である。特に帯電均一性に優れる交流電圧を印加して帯電を行う場合には、放電による電位の安定化は不可欠である。この放電が不十分であると、帯電ムラが生じてハーフトーンでムラがでたり、砂地カブリという画像白地部に黒ポチができる帯電不良が生じたり、さらには帯電部材1012が汚れたときに、帯電性が大きく変わり、画像への影響が出やすくなったりする。
【0060】
(B)ファーブラシ帯電
本発明のファーブラシ帯電は、接触帯電部材として導電性または中抵抗繊維のブラシ部を有する部材(ファーブラシ帯電器)を用いる。ファーブラシ帯電器に帯電バイアスを印加して、その導電性繊維ブラシ部を被帯電面に接触させ、被帯電面を所定の極性・電位に帯電させる。
ファーブラシ帯電器としては、固定タイプとロールタイプが実用化されている。固定タイプは、中抵抗の繊維を基布に折り込みパイル状に形成したものを電極に接着したものであり、ロールタイプは、パイルを芯金に巻き付けて、ブラシ状に形成したものである。
本発明のファーブラシ帯電器は、どちらのタイプも利用可能であるが、ロールタイプの方が帯電性、高速プロセス対応ではより好ましい。本発明のファーブラシ帯電器の繊維としては、ビニル、PET、ポリスチレンなどの繊維にカーボンを分散させて抵抗を調整したもの等が利用可能である。
【0061】
本発明のファーブラシ帯電器のブラシ部の繊維密度としては、一般的なファーブラシ帯電器と同等のものが利用でき、例えば100本/mm程度のものが利用可能である。
ファーブラシ帯電器では、注入帯電機構により帯電させることも可能である。しかし、注入帯電機構により十分均一な帯電を行うためには、前記の繊維密度では接触性は十分ではない。注入帯電機構により十分均一な帯電を行うためには、接触頻度を高くすることが必須となり、感光体ドラム表面に対して極めて大きな相対的な速度差を持たせている。しかし、このような速度差を設けることは、機械構成上大ききな制約となる。例えば、高速プロセスでは、ファーブラシ帯電器の回転速度を非常に大きくしなければならなくなり、機構的にもコスト的にも実用的でない。さらに、感光体の小径化が進むと必要な速度差を設けることは容易でない。
従って、ファーブラシ帯電器において、その帯電機構は前記の放電帯電機構がある程度生じるように、抵抗を調整した繊維を用い、帯電均一性の向上のために交流電圧を重畳する構成とすることが好ましい。
【0062】
<クリーニングブレード>
本発明に使用するクリーニングブレードとしては、弾性体として作用する樹脂であれば特に制限されるものではない。反応性を有する液状の数種類の原料を混合し、加熱等の手段により硬貨させて弾性体として得られる、熱硬化性ポリウレタンポリマーを使用することが、弾性特性の環境安定性の点から好ましい。
ポリウレタンの一方の反応性原料であるポリオールとしては、特に限定されるものではない。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカプロラクタムの開環重合性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等、公知の多価アルコールを使用することができる。本発明のクリーニングブレードとしては、弾性特性、及びブレード状形状作製の容易さから、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0063】
ポリウレタンのもう一方の反応性原料であるジイソシアネートとしては、特に限定されるものではない。例えばジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等、公知のジイソシアネート化合物を使用することができる。本発明のクリーニングブレードとしては、ブレード形状に成形した後の表面研磨処理の容易性、及び研磨粒子の表面移向性の観点から、脂肪族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0064】
また、弾性体形成用の混合液の粘性や、形成されたブレードの弾性特性を制御する目的で、架橋剤を添加することも可能である。
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、ブタンジオール等のアルコール系架橋剤や、4,4’−ジアミノ−ジフェニルアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン系架橋剤を使用することができる。
【0065】
上述の弾性体をブレードの形に成形する手段としては、複数種の原材料からなる混合液体を回転式のドラムロールの裏側に遠心成形させて加熱し、作製されたエンドレスシートを所望の大きさに切断する方法等が挙げられる。
上述のクリーニングブレードの表面性を変える手段として、研磨手段による研磨、ブレード中に研磨性微粒子を含有させる、等が挙げられ、研磨粒子を含有させる手段がより好ましい。また、これら複数の手段を組み合わせて施しても良い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
<実施例1>
RFプラズマCVD法による堆積装置を用いて、円筒状基体(直径84mm、長さ370mm、厚さ3mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウム基体)上に下記表1に示す条件でa−Si感光体を作製した。その際、下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を下記表2に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件で3本ずつ作製した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
実施例1により作製した各成膜条件3本ずつの感光体について、後述の方法で評価した。各成膜条件1本の感光体を用いて、C/(Si+C)、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、H原子比、H原子密度、及びsp性を求めた。そして、各成膜条件の残りの2本の感光体について、図1のような本発明の構成の画像形成装置で画像出力耐久評価をおこなった。二つの印刷環境にそれぞれ設置した画像形成装置に、それぞれ1本ずつの感光体を用いて評価した。その画像出力耐久評価で使用した感光体を用いて、表面自由エネルギー、表面摩擦係数、表面粗さ、クリーニング耐久性、ローラー汚れ、ドット再現性、階調性、耐摩耗性及び感度の評価を行った。これら結果を表4中に示す。
【0070】
<比較例1>
実施例1と同様に、円筒状基体上に上記表1に示す条件でa−Si感光体を作製した。但し、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を下記表3に示す条件として、1条件につき3本の感光体を作成した。
成膜条件No.11の表面層は、従来の代表例として、評価した。
【0071】
【表3】

【0072】
比較例1により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価を行った。それら結果を表4中に示す。
【0073】
<比較例2>
比較例1のNo.11と同じ条件で、a−Si感光体を3本作成した。
本比較例では、画像評価装置をコロナ帯電器とし、a−Si感光体の条件に調整したものを用いた。それ以外は実施例1と同様に、測定及び評価を行った。それら結果を表4中に示す。
【0074】
(C/(Si+C)の測定、Si+C原子密度、H原子比の測定)
表1の下部注入阻止層2003及び光導電層2004、上部注入阻止層2006を積層させたリファレンス感光体を作製し、任意の周方向における長手方向の中央部を15mm□(15mmx15mm)で切り出し、リファレンス試料を作製した。
さらに、実施例および比較例で作製した感光体をリファレンス試料と同様に切り出し、表面層測定用試料を作製した。
リファレンス試料と表面層測定用試料を分光エリプソメトリー(J.A.Woollam社製:高速分光エリプソメトリー M−2000)により測定し、表面層の膜厚および屈折率を求めた。
【0075】
具体的な測定条件は、入射角:60°、65°、70°、測定波長:195nmから700nm、解析ソフト:WVASE32、ビーム径:1mm×2mmである。
まず、リファレンス試料を分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
次に、リファレンス試料の測定結果をリファレンスとして、各測定用試料をリファレンス試料と同様に分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
【0076】
そして、下部注入阻止層および光導電層、上部注入阻止層、表面層を順次形成した。最表面に表面層と空気層の体積比が8:2となる粗さ層を有する層構成を計算モデルとして用いて、解析ソフト:J.A.Woollam Co.,Inc.製 WVASE32により各入射角における波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を計算により求めた。
さらに、この計算により求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係と、表面層測定用試料を測定して求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係の平均二乗誤差が最小となるときの表面層の膜厚を算出し、この値を表面層の膜厚とした。
【0077】
その後、上記測定用試料について、RBS(ラザフォード後方散乱法)(日新ハイボルテージ(株)製:後方散乱測定装置 AN−2500)を用いて、RBSの測定面積における表面層および上部注入阻止層のケイ素原子および炭素原子の原子数を測定した。
こうして得られた値を用いてC/(Si+C)を算出した。
【0078】
また、RBSの測定面積から求めたケイ素原子および炭素原子の原子数に対し、分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、Si原子密度、C原子密度およびSi+C原子密度を算出した。
RBSと同時に、上記試料について、HFS(水素前方散乱法)(日新ハイボルテージ(株)製:後方散乱測定装置 AN−2500)を用いて、HFSの測定面積における表面層および上部注入阻止層の水素原子の原子数を測定した。
HFSの測定面積における水素原子の原子数に対し、上記エリプソメトリーより求めた膜厚を用いて水素原子の原子密度を求めた。また、RBSの測定面積におけるケイ素原子の原子数および炭素原子の原子数により、HFSの測定面積におけるH/(Si+C+H)を求めた。
【0079】
具体的な測定条件は、入射イオン:4He、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:75°、試料電流:35nA、入射ビーム経:1mmであり、RBSの検出器は、散乱角:160°、アパーチャ径:8mm、HFSの検出器は、反跳角:30°、アパーチャ径:8mm+Slitで測定を行った。
【0080】
(sp性評価)
sp性は、感光体の任意の周方向における長手方向の中央部を10mm□(10mmx10mm)で切り出した試料を、レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)製:NRS−2000)により算出した。
具体的な測定条件は、光源:Ar+レーザー 514.5nm、レーザー強度:20mA、対物レンズ:50倍とし、中心波長を1380cm−1、露光時間30秒、積算5回で3回測定した。得られたラマンスペクトルの解析方法を以下に示す。ショルダーラマンバンドのピーク波数を1390cm−1で固定し、主ラマンバンドのピーク波数を1480cm−1に設定して固定せずに、ガウシアン分布を用いてカーブフィッティングを行った。このとき、ベースラインは直線近似とした。カーブフィッティングより得られた主ラマンバンドのピーク強度Iとショルダーラマンバンドのピーク強度IよりI/Iを求め、3回の平均値をsp性の評価に用いた。
【0081】
(表面自由エネルギー測定)
本測定は、画像出力耐久評価を行う前に行った。感光体の軸方向中心から50mm間隔で5点測定した。2本の感光体について同様に測定し、その平均値を求めた。
表面自由エネルギーは、p(双極子成分)、d(分散成分)、h(水素結合成分)の表面自由エネルギー各成分が既知の試薬を使用し、該試薬との付着性を測定し、算出した。
具体的には、試薬に純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを使用し、協和界面(株)製の接触角計CA−SROLLを使用して上記各試薬の感光体表面への接触角を測定した。そして、同社製表面自由エネルギー解析ソフトEG−11にて表面自由エネルギーγを算出した。
【0082】
(表面粗さの測定)
本測定は、画像出力耐久評価を行う前と、中間(50万枚終了時)と、終了時(100万枚出力後)に行った。感光体の軸方向中心から30mm間隔で11点測定した。2本の感光体について同様に測定し、その平均値を求めた。
感光体の任意の周方向における長手方向の中央部を原子間力顕微鏡(AFM)(Quesant社製:Q−SCOPE250(Version3.181))により測定し、Raを算出した。2本各10点を測定して得られたRaの平均値をRaの値とした。
【0083】
具体的には、ヘッド:Tape10、プローブ:NSC16を用い、10μm×10μmの範囲をSCANRATE:4Hz、Integral Gain:600、Proportional Gain:500、Scan Resolution:300の測定条件で、Wavemadeにて測定した。
解析ソフト:Quesant社製 Q−SCOPE250により得られたAFM観察像をTilt RemovalのParabolic Line By Lineを用いて、補正を行った。
補正したAFM観察像をHistogram AnalysisにてRa、Δaを算出した。但し、Histogram AnalysisでのRaは、Meas Deviationで表される値を用いた。
【0084】
(表面摩擦係数の測定)
本測定は、画像出力耐久評価を行う前に行った。感光体の軸方向中心で、3回測定した。2本の感光体について同様に測定し、その平均値を求めた。
表面摩擦係数の測定方法は、オイラーベルト方式にて測定したものである。
この方法は、下記の方法で実施されるが、測定が簡便で感光体径に関係なく測定でき、繰り返し安定性が優れている。なお、本発明での測定環境は温度20〜24℃、湿度61〜65%RHである。
【0085】
測定方法:
測定用の感光体を台座に固定する。次に、幅50mm、長さ290mmにカットした厚み92μmの上質紙(キヤノンマーケティングジャパン、タイプCS−814ペーパー)をベルトとして用意し、前記感光体表面のドラム円周の1/4に張架した。ベルト端部の一方に100gの重りを取り付け、もう一方の片端に重量測定用のデジタル・フォース・ゲージを取り付け、デジタル・フォース・ゲージをゆっくり引き、ベルトの移動開始時の重量を読みとり、下記式(2)より(静止)摩擦係数(μs)を計算する。
μs=2/π×ln(F/W)…式(2)
(ただし上記式中、μs:静止摩擦係数、F:読みとり荷重(g)、W:分銅の重さ(g)、π:円周率を表す。)
【0086】
(画像出力耐久評価)
評価で使用した画像形成装置は、図4に示すような4本の感光体及び電子写真プロセス部を有する構成の装置であり、図1に示す構成の電子写真プロセス部を4セット有する画像形成装置である。
Pa(Yellowステーション)、Pb(Magentaステーション)、Pc(Cyanステーション)、Pd(BKステーション)の4ステーションからなり、それぞれ感光体1a,1b,1c,1d、帯電器12a,12b,12c,12d、現像器6a,6b,6c,6d等が配置されている。
【0087】
感光体からITB(中間転写ベルト)81の上にトナー像が転写され、さらに紙Pなどに転写されて、定着器211で加熱定着されて出力される。
本評価においては、Pc(Cyanステーション)の感光体1cとしてa−Si感光体を設置した。
より具体的には、キヤノン製デジタル画像形成装置iP−C7000VPのCyanステーションを帯電ローラーに改造したものを2台用いた。
帯電ローラー及び現像、転写の各高圧条件及び画像露光のレーザー光量をa−Si系感光体の条件に合わせた。
【0088】
さらに、クリーナーはクリーニングブレードのみとし、図1記載の、補助ブラシ1006bは、機能しないように措置した。
作製した感光体を上記の画像形成装置のCyanステーションに設置して行った。
画像出力条件は、次の印刷環境で各々1台の画像形成装置を用いて、各1本の感光体の画像出力耐久評価を行った。
【0089】
印刷環境 温度23℃/湿度60RH%(以下「N/N」とも称する。)
温度23℃/湿度5RH%(以下「N/L」とも称する。)
出力紙、出力画像は以下のとおりとし、各環境で100万枚の評価を行った。
紙 CS−814(81.4g/m
キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
画像形成速度 70枚(A4)/分
耐久画像 日本画像学会テストチャートNo.8(画像比率15%)
(BW画像ををCyan/WhiteにAdobe:PhotoShop(登録商標)で変換した画像)
印刷枚数 100万枚
【0090】
(感度評価)
評価は、上記の画像形成装置を用いて「N/N」環境で行った。感光体の表面電位は、感光体の軸方向位置の中央部を測定した。
画像露光を切った状態で帯電ローラーのDC成分(電圧)を調整して感光体の表面電位を500Vとなるように設定した。
次に、先に設定した帯電条件で帯電させた状態で、画像露光光を照射し、その照射エネルギーを調整することにより現像器位置の電位を150Vとした。その際の照射エネルギーにより評価した。
評価結果は比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体を搭載した場合の照射エネルギーを1.00とした相対比較で示した。
【0091】
A‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が1.10未満。
B‥比較例1で作製した成膜条件No.11の作製した感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が1.10以上1.15未満。
C‥比較例1で作製した成膜条件No.11感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が1.15以上。
なお、感度評価に対して、小さいほど良く、AまたはBであれば良好であると判断した。
【0092】
(耐磨耗性評価)
耐磨耗性の評価方法は、以下のとおりである。
作製直後の感光体の表面層膜厚を感光体の任意の周方向で長手方向9点(感光体の長手方向中央を基準として、0mm、±50mm、±90mm、±130mm、±150mm)、及び前記任意の周方向から180°回転させた位置での長手方向9点、合計18点を測定し、その18点の平均値を算出、さらに2本の感光体の平均値で評価した。
測定方法は、2mmのスポット径で感光体表面に垂直に光を照射し、分光計(大塚電子製:MCPD−2000)を用いて、反射光の分光測定を行った。得られた反射波形をもとに表面層膜厚を算出した。このとき、波長範囲を500nmから750nm、光導電層の屈折率は3.30とし、表面層の屈折率は前述したSi+C原子密度測定の際に行った分光エリプソメトリーの測定より求まる値を用いた。
【0093】
膜厚測定後、画像出力耐久評価を行った。その後クリーニング耐久性、ローラー汚れ、ドット再現性、階調性の評価を行った後、感光体を画像形成装置から取り出し、作製直後と同じ位置で膜厚を測定した。そして、作製直後及び画像出力耐久評価後で得られた表面層の平均膜厚から差分を求め100万枚での磨耗量を算出した。そして、比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の摩耗量に対する比率を求め、相対評価を行った。
【0094】
A‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が60%以下。
B‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が60%より大きく70%以下。
C‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が70%より大きく80%以下。
D‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が80%より大きく90%以下。
E‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が90%より大きく100%未満。
F‥比較例1で作製した成膜条件No.11の感光体の表面層の摩耗量に対する各成膜条件にて作製された感光体の表面層の摩耗量の比率が100%以上。
本評価は、摩耗量の比率が小さいほど良い。比較例2の成膜条件No.11がコロナ帯電で、E評価であったので、A〜Dを良好とした。
【0095】
(クリーニング耐久性)
評価は、以下のとおりとした。
画像出力耐久評価後でトナーの載り量が0.5mg/cmのベタ画像を出力した。トナー転写直後の感光体の表面Aと、トナー転写後にクリーニングを行った後の感光体の表面Bにそれぞれ透明なテープ(リンテック(株)社製 スーパーステック)を貼って転写残トナーを採取する。
表面Aから転写残トナーを採取した透明テープを、テープAとして、上質紙(CS−814)に貼り付けた。さらに、表面Bから転写残トナーを採取した透明テープを、テープBとして上記の上質紙に貼り付けた。上質紙に貼り付けたテープA及びテープBをX−Rite分光濃度計(Spectrodensitometer X−Rite 504)によって画像濃度測定し、次式によりクリーニング耐久性の評価を行った。
【0096】
テープA部のカラー反射濃度計による画像濃度をDAとし、テープB部のカラー反射濃度計による画像濃度をDBとしたときに
(式):クリーニング耐久性 = 〔1−(DB/DA)〕×100(%)
として評価した。
各環境の2本の感光体について同様に評価し、その平均値を求めた。
【0097】
[評価基準]
A:非常に良好 (98%以上)
B:良好 (95%〜98%未満)
C:淡色の画像で、僅かに汚れがある (92%〜95%未満)
D:画像上に汚れとして目に付く (89%〜92%未満)
E:汚れがかなり目立つ (89%未満)
本評価は平均値が、100%に近いほど良く、Cランク以上で本発明の効果が得られていると判断した。
【0098】
(帯電ローラ汚れ)
クリーニング状態が劣化した場合に、極小の外添剤等が帯電ローラーに達して、ローラーに付着する。この付着により帯電ローラーの表面状況の変化が、帯電性に影響を与えて、感光体の帯電電位の低下や、不均一を生じさせる。その電位低下及び不均一性が大きくなると画像ムラ等の画像欠陥として現れることから、この帯電ローラー汚れを感光体表面電位として測定、評価を行った。
具体的評価方法は以下の通りである。
「N/N」、「N/L」各環境で画像出力耐久評価後に、感光体表面電位について評価した。
【0099】
画像出力耐久評価前に画像露光光を切った状態で帯電ローラーのDC成分(電圧)を調整して、所定の感光体の表面電位に設定する。その時のDC成分(電位)と表面電位の分布を記録しておく。
画像出力耐久評価終了後に、記録していたDC成分(電位)に再調整し、表面電位を測定した。表面電位の測定は、感光体の軸方向中心から等間隔で7点、その各点で周方向を360分割で測定した。2本の感光体について同様に測定した。感光体の同じ位置の表面電位について、(画像出力耐久評価前の表面電位)−(画像出力耐久評価後の表面電位)によって差分を計算した。その差分の最大値で評価した。
【0100】
A:0V以上3V未満の電位低下で、画像影響無し
B:3V以上5V未満の電位低下が発生するが画像に目立った影響無し
C:5V以上10V未満の電位低下が発生し、わずかに画像濃度が低下するが目立った濃度低下ではない
D:10V以上の感光体電位低下が発生し、大きく画像濃度が低下する
本評価は、電位低下無し、即ち0Vに近いほど良く、Cランク以上で本発明の効果が得られていると判断した。
【0101】
(ドット再現性)
評価は、以下のとおりとした。
「N/N」、「N/L」各環境で画像出力耐久評価後、それぞれの環境の画像形成装置で600dpiの画像データで、1画素を3×3ドットで形成するドット画像を作成した。
出力した画像はデジタルマイクロスコープVHX−200(ワイドレンジズームレンズVH−Z100・キーエンス社製)を用い、ドット1000個の面積を測定した。ドット面積の個数平均(S)とドット面積の標準偏差(σ)を算出し、ドット再現性指数を下記式により算出し、ドット再現性の指標とし、2本の感光体の平均値で評価した。
(式):ドット再現性指数(I)=σ/S×100
【0102】
[評価基準]
A:Iが5.0未満
B:Iが5.0以上7.0未満
C:Iが7.0以上10.0未満
D:Iが10.0以上
本評価は、全てのドットが安定して同じ面積で形成されるほど良いので、ドット再現性指数は小さいほど良く、Cランク以上で本発明の効果が得られていると判断した。
【0103】
(階調性評価)
評価は、以下のとおりとした。
「N/N」、「N/L」各環境で画像出力耐久評価後、以下の出力画像をそれぞれの環境で出力して評価した。
出力画像として、45度170lpi(1インチあたり170線)で面積階調ドットスクリーンを用い面積階調(画素点の大きさを変えて濃淡階調する)によって、ベタ画像から白(印刷画素点なし)までの全階調範囲を18段階に均等配分した階調データを作成した。
【0104】
このとき最も濃い階調を17、最も薄い階調を0として各階調に番号を割り当て、階調段階とした。
画像出力は、画像形成装置及びプリンタドライバのスクリーン処理等の画像処理が行われないように設定して、A3用紙に出力する。
得られた画像を各階調ごとに反射濃度計(X−Rite Inc製:504 分光濃度計)により画像濃度を測定した。なお、反射濃度測定では各々の階調毎に3枚の画像を出力し、それら濃度の平均値を算出し、2本のドラムの平均値で評価値とした。
こうして得られた評価値と階調段階との相関係数を算出し、各階調の反射濃度が完全に直線的に変化する階調表現が得られた場合である相関係数=1.00からの差分を求めた。
【0105】
そして、成膜条件No.2で作製した感光体の相関係数から算出される差分(ΔA)に対する、各成膜条件にて作製された感光体の相関係数から算出される差分(ΔB)との比(ΔB/ΔA)を階調性の指標として評価した。
A‥差分の比(ΔB/ΔA)が1.80以下。
B‥差分の比(ΔB/ΔA)が1.80より大きい。
本評価は、数値が小さいほど階調性が優れており、直線的に近い階調表現がなされていることを示している。Aランクで本発明の効果が得られていると判断した。
【0106】
実施例1及び比較例1、2について、C/(Si+C)、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、H原子比、H原子密度、sp性、表面自由エネルギー、摩擦係数、表面粗さ(Ra)、クリーニング耐久性、ローラー汚れ、ドット再現性、階調性、耐磨耗性及び感度に関する結果を表4中に示す。
表4の結果より、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上にすることにより、クリーニング耐久性及びローラー汚れが良化することが解った。また、Si+C原子密度を6.81×1022原子/cm以上にすることにより、クリーニング耐久性及びローラー汚れが更に良好となることが解った。
この結果より、表面層のSi+C原子密度を上記範囲とした感光体を用いることで、クリーニング耐久性及びローラー汚れが良好な画像形成装置が得られることが解った。
【0107】
実施例1及び比較例1で作製した感光体の表面粗さRa及び表面自由エネルギー、表面摩擦係数とクリーニング耐久性及びローラー汚れには明確な相関は無く、本発明の感光体はクリーニング耐久性及びローラー汚れについて全て良好な結果が得られた。
また、比較例1の成膜条件14と実施例1から表面層のSi+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上であって、C/(Si+C)を0.61以上にすることでドット再現性及び階調性が良好となることが解った。
さらに、比較例1の成膜条件15と実施例1から表面層のSi+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上とした上でC/(Si+C)を0.75以下にすることで、光吸収が抑制され、感度が良好となることが解った。
【0108】
同じ表面層(成膜条件No.11)の比較例1(帯電ローラーを使用)と比較例2(コロナ帯電器を使用)との比較から、コロナ帯電に比べて、帯電ローラーの方がクリーニング耐久性の劣化が激しいことが分かる。
この結果より、本発明のSi+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上とし、表面層のC/(Si+C)を0.61以上0.75以下の範囲とした感光体を用いることで、接触帯電である帯電ローラーを用いた表面層変質に厳しい条件でも、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ、ドット再現性、階調性及び感度に優れた感光体が得られ、良好な画像出力が使用期間を通じて得られる優れた画像形成装置が得られることが分かった。
【0109】
【表4】

【0110】
<実施例2>
実施例1と同様に、円筒状基体上にa−Si感光体を作製した。その際、上記表1に示す条件で下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を下記表5に示す条件とした。
【0111】
【表5】

【0112】
実施例2により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。それら結果を実施例1の成膜条件No.8と合わせて表6中に示す。
表6の結果より、表面層のH原子比を0.30以上にすることにより、光吸収が抑制されたため感度が良化した。また、表面層のH原子比を0.45以下にすることにより、耐磨耗性が更に良化した。
この結果より、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上とし、C/(Si+C)を0.61以上0.75以下とした上で、表面層のH原子比を上記範囲とすることで、優れた画像形成装置が得られることが分かった。具体的には、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ感度及び耐摩耗性が良好な感光体が得られ、使用期間を通じて良好な画像出力ができる画像形成装置が得られることが分かった。
【0113】
【表6】

【0114】
<実施例3>
表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を下記表7に示す条件とした以外は、実施例1と同様にしてa−Si感光体を作成した。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例3により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。それら結果を、実施例1の成膜条件No.4、5及び7とを合わせて表8中に示す。
表8の結果より、表面層のsp性を0.70以下にすることにより、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ耐摩耗性が向上した感光体が得られ、良好な画像出力が使用期間を通じて可能な、優れた画像形成装置が得られることが分かった。
そして、今回確認できた表面層のsp性が0.20以上0.70以下の範囲では、更にクリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ耐摩耗性が、更に向上した感光体が得られ、使用期間を通じて良好な画像出力ができる優れた画像形成装置が得られた。
【0117】
【表8】

【0118】
<比較例3>
実施例1と同様に、円筒状基体上に帯電a−Si感光体を作製した。その際、上記表1に示す条件で下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を高周波電力を下記表9に示す条件とした。
【0119】
【表9】

【0120】
比較例3により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。それら結果を、実施例1の成膜条件No.4、10及び実施例2の成膜条件No.20、21と合わせて表10中に示す。
表10の結果より、表面層のSi+C原子密度が6.60×1022原子/cm以上、且つ、C/(Si+C)が0.61以上0.75以下、さらにH原子比が0.30以上0.45以下の感光体を用いることにより優れた画像形成装置が得られることが分かった。具体的には、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ耐摩耗性及び、ドット再現性、階調性、感度に優れた画像形成装置が得られることが分かった。
更に、sp性の範囲を0.70以下とすることにより更に耐摩耗性が向上した感光体が得られ、使用期間を通じて良好な画像出力ができる優れた画像形成装置が得られた。
【0121】
【表10】

【0122】
<実施例4>
実施例1と同様に、円筒状基体上にa−Si感光体を作製した。その際、上記表1に示す条件で下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を高周波電力を下記表11に示す条件とした。
【0123】
【表11】

【0124】
実施例4により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。それら結果を表13中に示す。
【0125】
<比較例4>
実施例1と同様に、円筒状基体上にa−Si感光体を作製した。その際、上記表1に示す条件で下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、内圧、基体温度、SiH流量及びCH流量を高周波電力を下記表12示す条件とした。
【0126】
【表12】

【0127】
比較例4により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。それら結果を表13中に示す。
実施例4及び比較例4について、評価結果を、実施例1の成膜条件No.7、比較例1の成膜条件No.13、実施例2の成膜条件No.16、17、19と合わせて表13中に示す。
【0128】
【表13】

【0129】
表13の結果より、表面層のSi+C原子密度が6.60×1022原子/cm以上、且つ、C/(Si+C)が0.61以上0.75以下、さらにH原子比が0.30以上0.45以下の感光体を用いることにより優れた画像形成装置が得られることが分かった。具体的には、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ耐摩耗性及び、ドット再現性、階調性、感度に優れた画像形成装置が得られることが分かった。
更に、sp性の範囲を0.70以下とすることにより耐摩耗性が特に向上した感光体が得られ、使用期間を通じて良好な画像出力ができる優れた画像形成装置が得られた。
【0130】
<実施例5>
実施例1と同様に、円筒状基体上にa−Si感光体を作製した。その際、表14に示す条件で下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行い、光導電層作成時の膜厚を表15に示す条件とした。また、表面層作製時の成膜条件は実施例1の成膜条件No.5と同じ条件とした。
【0131】
【表14】

【0132】
【表15】

【0133】
実施例5により作製した感光体について、実施例1と同様に、測定及び評価した。
また、成膜条件No.42を基準としてコストと帯電能を比較した。
【0134】
(コスト評価)
評価は、No.42の製造コストに対する、各々の感光体製造コストの比率で行った。
A:1.0以下
B:1.0超〜1.4以下
C:1.4超〜1.8以下
D:1.8超
本評価は、比率が小さいほど良く、A〜Cを良好とした。
【0135】
(帯電能評価)
帯電能評価の評価方法は、以下のとおりである。
評価は、画像出力耐久評価の開始前に行った。
実施例1と同じ画像形成装置を用いて「N/N」環境で感光体1本の測定を行った。感光体の表面電位は、感光体の軸方向位置の中央部を測定した。
画像露光を切った状態で帯電ローラーのDC成分(電圧)を調整して感光体の表面電位を500Vとなるように設定し、その際のDC成分(電圧)を用いて評価を行った。
評価結果は実施例5で作製した成膜条件No.42の感光体を搭載した場合のDC成分(電圧)を1.00とした相対比較で示した。
【0136】
A‥比較例5で作製した成膜条件No.42の感光体でのDC成分(電圧)に対する評価感光体のDC成分(電圧)の比が1.15以上。
B‥比較例5で作製した成膜条件No.42の感光体でのDC成分(電圧)に対する評価感光体のDC成分(電圧)の比が1.00以上1.15未満。
C‥比較例5で作製した成膜条件No.42の感光体でのDC成分(電圧)に対する評価感光体のDC成分(電圧)の比が0.97以上1.00未満。
D‥比較例5で作製した成膜条件No.42の感光体でのDC成分(電圧)に対する評価感光体のDC成分(電圧)の比が0.93以上0.97未満。
E‥比較例5で作製した成膜条件No.42の感光体でのDC成分(電圧)に対する評価感光体のDC成分(電圧)の比が0.93未満。
本評価は、比率が大きいほど良く、A〜Dを良好と判断した。
【0137】
【表16】

【0138】
表16の結果より、感光体の全層厚さが40μm以上で、帯電能、感度が特に良好な特性となることが分かった。コストも含めて総合的には、感光体の全層厚さは80μm以下が好ましいと判断した。
【0139】
<実施例6>
RFプラズマCVD法による堆積装置を用いて、円筒状基体(直径30mm、長さ370mm、厚さ1mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウム基体)上に下記表17に示す条件でa−Si感光体を作製した。その際、下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に成膜を行った。表17の成膜条件をNo.47とした。
また、感光体の作製本数は、各成膜条件で3本ずつ作製した。
【0140】
【表17】

【0141】
本実施例の評価で使用した画像形成装置には、図1に示すような本発明の構成の電子写真プロセス部を有する画像形成装置を準備した。より具体的には、キヤノン製デジタル画像形成装置iR−ADV9075ProのCyanステーションを改造し、a−Si感光体の条件に合わせたものである。
帯電ローラー及び現像、転写の各電圧条件及び画像露光のレーザー光量をa−Si系感光体の条件に合わせた。
さらに、クリーナーはクリーニングブレードのみとし、図1記載の、補助ブラシ1006bは、機能しないように措置した。
【0142】
作成した感光体を上記の画像形成装置のCyanステーションに設置した。
その他、条件は、画像形成速度を75枚(A4)/分とする以外は、実施例1と同様に画像出力耐久評価を行った。
その他の評価に関しても、画像形成装置を変更した以外は、実施例1と同様に、測定及び評価した。
評価結果は、表19に実施例7と共に示す。
【0143】
<実施例7>
実施例6と同様に、円筒状基体上に下記表18に示す条件でa−Si感光体を作製した。表18の成膜条件をNo.48とした。
本実施例では、実施例6の画像形成装置の帯電ローラーをファーブラシ帯電器(ロールタイプ)とし、図3(a)のような構成に電子写真プロセス部を改造した装置を用いた。ファーブラシ帯電器3013は、感光体3001とのニップが1cm幅となるように設置した。
使用したファーブラシ帯電器3013は、繊維径10μm、繊維密度200本/mmで、樹脂繊維(PET)にカーボンを分散し、抵抗をa−Si系感光体用に調整したものを用いた。
画像形成装置を変更した以外は、実施例1と同様に、測定及び評価した。評価結果は、表19に実施例6と共に示す。
【0144】
【表18】

【0145】
【表19】

【0146】
表19の結果より、小径の感光体で、プロセスサイクル(帯電から次回の帯電までの時間)が短く、近接放電を受ける回数が増えても、表面層のSi+C原子密度が6.60×1022原子/cm以上、且つ、C/(Si+C)が0.61以上0.75以下の感光体を用いることにより優れた画像形成装置が得られることが分かった。具体的には、クリーニング耐久性及びローラー汚れが抑制され、かつ耐摩耗性及び、ドット再現性、階調性、感度に優れた画像形成装置が得られることが分かった。
また、接触帯電器は、帯電ローラーだけでなく、ファーブラシであっても同様の良好な結果が得られた。
【0147】
<実施例8>
実施例1と同様に、円筒状基体上に下記表20に示す条件でa−Si感光体を作製した。表面層は、実施例2の成膜条件No.18と同じにした。
ただし、実施例1で用いた評価用の画像形成装置のキヤノン製デジタル画像形成装置iP−C7000VPを改造して、感光体の回転速度、すなわち円周の線速度を変更できるようにした。またそれに合わせて、電子写真プロセスの各速度も調整して、毎分当たりの出力枚数を変更できるようにした。
上記の画像形成装置のCyanステーションに感光体を設置し、表21に示すような線速度250mm/秒から750mmmm/秒までの各条件で画像出力耐久評価を行った。線速度を変更した以外は、実施例1と同様に、測定及び評価した。その結果は表22中に示す。
【0148】
【表20】

【0149】
【表21】

【0150】
【表22】

【0151】
表22の結果より、感光体の線速度が、600mm/秒以下で特に良好なクリーニング耐久性が得られた。300mm/秒未満で、ドット境界がやや揺らいだように観測され、そのためドット面積のバラツキが増加し若干、標準偏差が若干大きい結果となった。そのため、評価No.8−1のドット再現性がBとなった。したがって、総合的には300mm/秒以上600mm/秒以下で良好な結果が得られた。
【0152】
<実施例9>
実施例1と同様に、円筒状基体上に上記表20に示す条件でa−Si感光体を作製した。
表面層は、実施例2の成膜条件No.18と同じとし、その時の成膜条件をNo.49とした。
ただし、評価用の画像形成装置は、キヤノン製デジタル画像形成装置iP−C7000VPのCyanステーションの帯電ローラーを図3(a)のようにファーブラシに改造したものを用いた。ファーブラシ帯電器3013は、実施例7と同じものを用いた。
ファーブラシ帯電器3013は、感光体とのニップが1cm幅からなるように設置して用いた。
それ以外は、実施例1と同じとした。それらの結果を表23中に示す。
【0153】
<実施例10>
実施例9と同じa−Si感光体を作製した。
本実施例では、評価用の画像形成装置を図3(b)に示すように感光体3001の回転方向の上流側にファーブラシ帯電器3013を、下流側に帯電ローラー3012を、各々1本、合計2本の接触帯電器を設置できるように改造したものを用いた。
帯電ローラー3012は実施例1と同じものを用い、実施例1と同じように設置した。また、ファーブラシ帯電器3013は実施例9と同じものを用い実施例9と同様に設置した。
それ以外は、実施例1と同様に評価した。それらの結果を表23中に示す。
【0154】
【表23】

【0155】
表23の結果から、実施例9のように帯電装置にファーブラシを用いた場合も、実施例2(No.18)と同様に良好な結果が得られた。また、実施例10のように帯電ローラーとファーブラシの両方を用いた場合も、同様に良好な結果が得られた。接触帯電器を2本つけたことで、2本合計のDC電圧で比較した帯電能が帯電ローラーのみやファーブラシ帯電器のみに比べて若干、良い傾向を示したのでA+と表記した。
【符号の説明】
【0156】
1001‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥感光体
1003‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥露光装置
1004‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥現像装置
1004a‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥現像スリーブ
1005‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥転写装置
1006‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥クリーニング装置
1006a‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥クリーニングブレード
1006b‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥補助ブラシ
1007‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥前露光装置
1012‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥帯電装置
1012a‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥帯電ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、前記感光体の表面に静電潜像を形成するための露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像手段と、前記トナー像を像担持体に転写するための転写手段と、前記感光体の前記表面をクリーニングするためのクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記帯電手段が接触帯電器で、
前記感光体が少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化ケイ素で形成されている表面層とを順次積層した感光体で、
前記表面層がケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.61以上0.75以下であり、且つケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm以上である感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記表面層は、ケイ素原子の原子数、炭素原子の原子数及び水素原子の原子数の和に対する水素原子の原子数の比が0.30以上0.45以下である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記表面層は、ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.81×1022原子/cm以上である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記表面層は、表面層のラマンスペクトルにおける1390cm−1のピーク強度IDに対する1480cm−1のピーク強度IGの比が、0.20以上0.70以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記光導電層が、水素化アモルファスシリコンで形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体の全層厚が、40μm以上80μm以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記感光体表面の線速度が300mm/秒以上600mm/秒以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記接触帯電器が、帯電ローラーである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記接触帯電器が、ファーブラシである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記接触帯電器が、帯電ローラーとファーブラシを有している請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−138006(P2011−138006A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298073(P2009−298073)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】