説明

画像形成装置

【課題】印刷終了までに要する時間を短縮しつつ、定着不良の発生頻度を低下させる。
【解決手段】画像形成装置は、定着可能判定部が、定着部は定着可能温度に達していないと判定し(S102)、且つ、状態判定部が、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が異常な温度上昇状態(例えば、低電圧状態)であると判定した(S103)ときに、印刷制御部は、中間転写ベルト上のトナー像を二次転写部よりも上流側の所定のトナー像待機位置に移動させて待機させ、且つ、用紙を二次転写部よりも上流側の所定の用紙待機位置で待機させ(S104,S105,S107)、その後、定着部の温度が定着可能温度に達したと判定されたときに(S109)、中間転写ベルトの移動を実行させ、用紙の搬送を実行させ、二次転写部に中間転写ベルト上のトナー像の用紙への転写を実行させる(S111)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上にトナー像を定着させる定着部を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する画像形成装置、例えば、電子写真プリンタは、記録媒体である用紙上に転写されたトナー像を、加熱及び加圧することによって定着させる定着部を備えている。例えば、特許文献1は、定着部の温度の検出結果に基づいて、定着可能温度に達するまでに要する上昇時間(予測値)をテーブルから求め、この上昇時間が用紙搬送時間よりも短いと判断したときに、用紙の搬送(給紙)を開始する画像形成装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−64436号公報(要約、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、定着部内のヒータ部に印加される電圧(例えば、コンセント電源電圧)に変動がある場合(例えば、低電圧状態)や画像形成装置が設置されている場所の環境温度が低い場合(低温環境状態)などにおいては、画像形成装置の電源投入後において、定着部の温度が、テーブルから求められた上昇時間内に定着可能温度に達しない場合がある。このように、定着可能温度に達するまでの上昇時間が予測困難な状態であるときには、定着部の温度が定着可能温度に達する前に、用紙が定着部に到達してしまい、トナー像の定着不良が発生するという問題が生じる。
【0005】
また、定着不良を発生させないために用紙の搬送開始を遅らせる場合には、電源投入時から印刷終了までに要する時間が増加して、印刷速度が低下するという別の問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、定着可能温度に達するまでの上昇時間が予測困難な状態であっても、印刷終了までに要する時間を短縮しつつ、定着不良の発生頻度を低下させることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体を有し、該像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と、中間転写部材及び該中間転写部材を所定の移動方向に移動させる移動部を有するトナー像搬送部と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写部材上に転写させる一次転写部と、記録媒体を所定の搬送方向に搬送する記録媒体搬送部と、前記記録媒体上に前記中間転写部材上のトナー像を転写させる二次転写部と、ヒータ部を有し、該ヒータ部によって前記記録媒体上のトナー像を加熱する定着部と、前記定着部が前記記録媒体上のトナー像を定着できる定着可能温度に達しているか否かを判定する定着可能判定部と、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が、前記定着部が前記定着可能温度に到達するまでに要する上昇時間の予測値が所定の基準時間以下である正常な温度上昇状態又は前記上昇時間の予測値が前記基準時間を超える異常な温度上昇状態のいずれであるかを判定する状態判定部と、印刷制御部とを備え、前記定着可能判定部が、前記定着部は前記定着可能温度に達していないと判定し、且つ、前記状態判定部が、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が前記異常な温度上昇状態であると判定したときに、前記印刷制御部は、前記トナー像搬送部により、前記中間転写部材上の前記トナー像を前記二次転写部よりも前記移動方向の上流側の所定のトナー像待機位置に移動させて待機させ、且つ、前記記録媒体搬送部により、前記記録媒体を前記二次転写部よりも前記搬送方向の上流側の所定の用紙待機位置で待機させ、その後、前記定着部の温度が前記定着可能温度に達したと判定されたときに、前記トナー像搬送部に前記中間転写部材の前記移動方向の移動を実行させ、前記記録媒体搬送部に前記記録媒体の前記搬送方向の搬送を実行させ、前記二次転写部に前記中間転写部材上のトナー像の前記記録媒体への転写を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着可能温度に達するまでの上昇時間が予測困難な状態であっても、印刷終了までに要する時間を短縮しつつ、定着不良の発生頻度を低下させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構造を概略的に示す側断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】(a)〜(h)は、第1の実施形態に係る画像形成装置の正常な温度上昇状態における動作を示すタイミング図である。
【図5】(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る画像形成装置の正常な温度上昇状態における動作を示す説明図である。
【図6】(a)〜(h)は、第1の実施形態に係る画像形成装置の異常な温度上昇状態における動作を示すタイミング図である。
【図7】(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る画像形成装置の異常な温度上昇状態における動作を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の構造を概略的に示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態に係る画像形成装置におけるトナー像形成部と二次転写部との間の中間転写ベルトに沿う長さを示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る画像形成装置の動作を示すフローチャート(その1)である。
【図12】第2の実施形態に係る画像形成装置の動作を示すフローチャート(その2)である。
【図13】(a)〜(j)は、第2の実施形態に係る画像形成装置の異常な温度上昇状態における動作を示すタイミング図である。
【図14】(a)〜(f)は、第2の実施形態に係る画像形成装置の異常な温度上昇状態における動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置100の構造を概略的に示す図である。画像形成装置100は、電子写真方式を利用したカラー画像形成装置である。画像形成装置100は、例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、又は、多機能周辺機器(MFP)などである。
【0011】
図1に示されるように、第1の実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部110と、像担持体上に静電潜像を形成するための記録光を照射する露光部120と、中間転写部材を有するトナー像搬送部130と、中間転写部材にトナー像を転写させる一次転写部140と、記録媒体搬送部としての用紙搬送部150と、記録媒体としての用紙Pにトナー像を転写させる二次転写部160と、用紙P上にトナー像を定着させる定着部170と、ユーザが各種設定などを行うユーザ操作部としての操作パネル190とを主要な構成として備えている。さらに、画像形成装置100は、用紙Pが積載される用紙カセット181と、二次転写部160の用紙搬送方向Db上流側の所定位置に配置され、用紙搬送位置を検出するための用紙センサとしてのINセンサ182と、定着部170の用紙搬送方向Db下流側の所定位置に配置され、用紙搬送位置を検出するための用紙センサとしてのOUTセンサ183とを備えている。
【0012】
トナー像形成部110は、各色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)用のトナー像形成ユニット111,112,113,114を有している。トナー像形成ユニット111,112,113,114はそれぞれ、各色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)用の像担持体としての感光ドラム111a,112a,113a,114aを有している。なお、図1には、トナー像形成ユニット111,112,113,114の個数が4個の場合を示しているが、この個数は、例えば、1個から3個、又は、5個以上のような、4個以外の個数であってもよい。
【0013】
露光部120は、感光ドラム111a,112a,113a,114a上に静電潜像を形成する光(記録光)を照射する各色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)用の光源ユニットとしてのLEDアレイを備えたLEDヘッド121,122,123,124を有している。なお、LEDヘッドに代えて、レーザ光源などの他の光源を用いることもできる。
【0014】
トナー像搬送部130は、中間転写部材として継ぎ目なしのエンドレス状の中間転写ベルト131と、この中間転写ベルト131が巻き掛けられる駆動ローラ132、ベルト従動ローラ133、及び二次転写バックアップローラ134とを有している。中間転写ベルト131は、例えば、高抵抗の半導電性プラスチックフィルムによって形成される。駆動ローラ132は、駆動モータ(後述する図2における、中間転写ベルト移動モータ135)を含む中間転写部駆動機構から伝達される駆動力によって回転して、中間転写ベルト131を移動方向Daに移動させることによって、中間転写ベルト131上のトナー像を移動方向Daに搬送する。
【0015】
一次転写部140は、中間転写ベルト131を挟んで、感光ドラム111a,112a,113a,114aに対向する位置に各色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)用の一次転写ローラ141,142,143,144をそれぞれ備えている。一次転写ローラ141,142,143,144は、感光ドラム111a,112a,113a,114a上に形成された各色のトナー像を、中間転写ベルト131上にそれぞれ転写(一次転写)させる。中間転写ベルト131上に転写された各色のトナー像は、中間転写ベルト131上で重ねられ、カラーのトナー画像が形成される。
【0016】
用紙搬送部150は、用紙カセット181に積載されている用紙Pを1枚ずつ給紙するためのピックアップローラ151と、ピックアップローラ151によって取り出された用紙Pを用紙搬送方向Dbに搬送する用紙搬送用ローラ152,153及び154,155と、図示しない他の搬送用ローラとを有している。
【0017】
二次転写部160は、二次転写バックアップローラ134(トナー像搬送部130の構成でもある)と、中間転写ベルト131を挟んで二次転写バックアップローラ134の反対側に配置された二次転写ローラ161とを備えている。二次転写ローラ161は、例えば、高抵抗の半導電性ローラであり、二次転写バックアップローラ134に対向した位置で中間転写ベルト131と接触している。二次転写部160は、中間転写ベルト131上に転写(一次転写)されたトナー像を、用紙P上に転写(二次転写)させる。
【0018】
定着部170は、用紙Pと、この用紙P上に転写されたトナー像とを、加熱及び加圧する加熱加圧部材としての定着ローラ171と、定着ローラ171に対向して接触し(又は用紙Pを挟んで接触し)、トナー像及び用紙Pを加圧する加圧部材としての加圧ローラ172とを備えている。定着ローラ171内には、加熱部であるヒータ部171aが備えられている。さらに、定着部170は、定着ローラ171の表面又はその近傍の温度を検出するための温度検出部としてのサーミスタ173を備えている。ただし、定着部170の構造は、図示の構造に限定されない。
【0019】
操作パネル部190は、液晶パネル等の表示部(図示せず)と操作ボタン等を含む操作部(図示せず)とを有し、例えば、表示部に設定項目を表示し、ユーザは表示部の表示内容を見ながら操作部を使って各種設定項目を入力する。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。図2に示されるように、画像形成装置100は、印刷動作を制御する印刷制御部10と、記録光を照射する露光部120としてのLEDヘッド121,122,123,124と、トナー像形成部110と、このトナー像形成部110に電力を供給するトナー像形成部電源115と、一次転写部140と、この一次転写部140に電力を供給する一次転写部電源145とを備えている。また、画像形成装置100は、二次転写部160と、この二次転写部160に電力を供給する二次転写部電源162と、トナー像形成部110内のトナー像形成ユニット111,112,113,114の各構成を駆動させる1又は複数台のトナー像形成部モータ115と、このトナー像形成部モータ115に電力を供給するモータ電源116とを備えている。さらに、画像形成装置100は、中間転写ベルト131を移動させるための駆動力を駆動ローラ132に与える中間転写ベルト移動モータ135と、この中間転写ベルト移動モータ135に電力を供給するモータ電源157と、INセンサ182と、OUTセンサ183と、ヒータ部171aを有する定着部170と、ヒータ部171aに電力を供給するヒータ部電源174と、定着部170(例えば、定着ローラ171の表面又はその近傍)の温度を検出するサーミスタ173と、操作パネル190とを備えている。さらにまた、画像形成装置100は、画像形成装置100に供給される電源電圧(例えば、コンセント電源の電圧)を検出する電源電圧検出部16を備えてもよい。
【0021】
印刷制御部10は、一次転写部140及び二次転写部160への印加電圧を制御する転写電圧制御部11と、トナー像形成部モータ115、中間転写ベルト移動モータ135、及び用紙搬送モータ156を含む各モータの駆動を制御するモータ制御部12と、サーミスタ173より得られる定着ローラ171の表面温度の検出結果に基づいて定着部170が定着可能温度に到達しているか否かを判定する定着可能判定部13と、定着ローラ171の表面温度を所定温度に制御する温度制御部14とを有している。さらに、印刷制御部10は、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後(例えば、画像形成装置の電源投入後など)の状態が、定着部170が定着可能温度(定着可能下限)TLに到達するまでに要する上昇時間の予測値が所定の基準時間ta(後述の図4、図6に示す)以下である「正常な温度上昇状態」(後述の図4、図5に示す)又は上昇時間の予測値が基準時間を超える「異常な温度上昇状態」(後述の図6、図7に示す)のいずれであるかを判定する状態判定部15を備えている。なお、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態とは、例えば、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された直後の所定期間の状態であるが、画像形成装置に最初の印刷要求が入力されてから少し時間経過した後から始まる所定期間の状態であってもよい。
【0022】
図2においては、転写電圧制御部11、モータ制御部12、定着可能判定部13、温度制御部14、及び状態判定部15を、印刷制御部10の一部として説明したが、これらの構成は、印刷制御部10とは別個の構成であってもよい。また、図2においては、電源電圧検出部16を、印刷制御部10と別個の構成として説明したが、この構成は、印刷制御部10の一部であってもよい。
【0023】
状態判定部15は、例えば、温度検出部であるサーミスタ173が検出する温度に基づいて、最初の印刷要求が入力された後の状態が「正常な温度上昇状態」又は「異常な温度上昇状態」のいずれであるかを判定する。以下においては、このようなサーミスタ173が検出する温度に基づく判定方法を、便宜上、第1の状態判定方法と言う。
【0024】
第1の状態判定方法をより具体的に説明する。状態判定部16は、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された直後の所定期間(例えば、5秒)内に所定の時間間隔(例えば、1秒間隔)でサーミスタ173が検出する温度の変化量を算出し、例えば、算出された温度の変化量の1つ以上が変化量閾値以上であるときに、画像形成装置100の状態は「正常な温度上昇状態」であると判定し、温度変化量のすべてが変化量閾値より小さいときに、画像形成装置100の状態は「異常な温度上昇状態」であると判定する。これは、サーミスタ173の温度上昇率(温度上昇勾配)が所定の閾値以上であるか、所定の閾値未満であるかを判定していることと等価である。なお、最初の印刷要求が入力された後の所定時間は5秒に限定されず、所定の時間間隔は1秒に限定されない。
【0025】
また、算出された温度変化量の所定個数以上(例えば、半分以上)が、変化量閾値より小さいときに、画像形成装置100の状態は「異常な温度上昇状態」であると判定するというような、他の判定方法を採用することもできる。
【0026】
さらに、算出された温度の変化量の最大値又は平均値を、所定の閾値と比較し、最大値又は平均値が所定の閾値以上であるときに、最初の印刷要求が入力された後の状態が「正常な温度上昇状態」であると判定し、それ以外のときに「異常な温度上昇状態」であると判定することもできる。
【0027】
状態判定部15が判定する「異常な温度上昇状態」(後述の図6、図7に示す)は、例えば、画像形成装置の電源投入時に定着部170のヒータ部171aに印加される電源電圧が低電圧であるときに発生する。通常は、コンセント電源電圧がヒータ部171aに直接印加されるので、定着部170の温度の上昇は、コンセント電源電圧の変動の影響を大きく受ける。「異常な温度上昇状態」が、定着部170のヒータ部171aに印加される電源電圧が低電圧であるために発生した場合には、「異常な温度上昇状態」を、「低電圧状態」とも言う。
【0028】
また、状態判定部15は、第1の状態判定方法に代えて以下に説明する第2の状態判定方法を採用することもできる。第2の状態判定方法においては、状態判定部15は、最初の印刷要求が入力された後(例えば、画像形成装置の電源投入後)の所定期間内において電源電圧検出部16が検出する電源電圧に基づいて、最初の印刷要求が入力された後の状態が「正常な温度上昇状態」又は「異常な温度上昇状態」のいずれであるかを判定する。このとき、状態判定部16は、最初の印刷要求が入力された後の所定期間(例えば、5秒)内に所定の時間間隔(例えば、1秒間隔)で電源電圧を検出し、例えば、検出された電源電圧の1つ以上が電圧閾値以上であるときに、画像形成装置100の状態は「正常な温度上昇状態」であると判定し、電源電圧のすべてが電圧閾値より小さいときに、画像形成装置100の状態は「異常な温度上昇状態」であると判定する。
【0029】
また、算出された電源電圧の所定個数以上(例えば、半分以上)が、所定の電圧閾値より小さいときに、画像形成装置100の状態は「異常な温度上昇状態」であると判定するというような、他の判定方法を採用することもできる。
【0030】
さらに、算出された電源電圧の最大値又は平均値を、所定の電圧閾値と比較し、最大値又は平均値が所定の電圧閾値以上であるときに、最初の印刷要求が入力された後の状態が「正常な温度上昇状態」であると判定し、それ以外のときに「異常な温度上昇状態」であると判定することもできる。
【0031】
さらにまた、印刷制御部15は、操作パネル190からのユーザ入力に基づいて、「異常な温度上昇状態」時における動作を実行させてもよい。ユーザ入力によって「異常な温度上昇状態」時における動作を実行させる場合は、例えば、電源電圧が低下していることをユーザが事前に知っている場合(例えば、ユーザが複数台の同タイプの画像形成装置を使用しており、その内の1台で定着不良が発生した場合など)である。
【0032】
定着可能判定部13が、定着部170は定着可能温度に達していないと判定し、且つ、状態判定部15が、画像形成装置100の最初の印刷要求が入力された後の状態が「異常な温度上昇状態」であると判定したとき、印刷制御部10は、以下の制御を行う。このとき、印刷制御部10は、トナー像搬送部130に、中間転写部材131上のトナー像を二次転写部160よりも移動方向Daの上流側の所定のトナー像待機位置に移動させて待機させ、且つ、用紙搬送部150に、用紙Pを二次転写部160よりも搬送方向Dbの上流側の所定の用紙待機位置で待機させ、その後、定着部170の温度が定着可能温度に達したと判定されたときに、トナー像搬送部130に中間転写ベルト131の移動方向Daの移動を実行させ、用紙搬送部150に用紙Pの搬送方向Dbの搬送を実行させ、二次転写部160に中間転写ベルト131上のトナー像の用紙Pへの転写を実行させる。なお、用紙Pの搬送速度が十分に速い場合には、用紙Pの待機位置は、用紙カセット181内であってもよい。
【0033】
次に、第1の実施形態に係る画像形成装置100の動作を説明する。印刷制御部10は、ユーザ入力による印刷指示又は上位ホスト(図示せず)からの印刷指示を受けると、LEDヘッド121,122,123,124に印刷データに応じた記録光をトナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114aに照射させて静電潜像を形成し、照射された記録光に応じたトナー像を感光ドラム111a,112a,113a,114a上にトナー像形成部110の図示しない現像部によって形成する。なお、トナー像形成部モータ115の駆動及び停止の制御は、モータ制御部12からの制御信号に基づいてモータ電源116が行う。また、中間転写ベルト移動モータ135の駆動及び停止の制御は、モータ制御部12からの制御信号に基づいてモータ電源136が行う。
【0034】
印刷制御部10内の転写電圧制御部11は、一次転写部電源145によって、一次転写部140に適切なタイミングで電圧を印加させて、感光ドラム111a,112a,113a,114a上に形成されたトナー像を、中間転写ベルト131上に重ねて転写(一次転写)させる。印刷制御部10内のモータ制御部12は、モータ電源157による電力供給を制御して、用紙搬送部150に画像形成タイミングに合わせて用紙Pを搬送させる。
【0035】
印刷制御部10内の転写電圧制御部11は、中間転写ベルト131上のトナー像と用紙Pとが二次転写部160に搬送されたときに、二次転写部電源162によって、二次転写部160に適切なタイミングで電圧を印加させて、用紙P上にトナー像を転写(二次転写)させる。
【0036】
その後、用紙搬送部150による用紙Pの搬送によって、定着部170に用紙Pが搬送されると、印刷制御部10内の温度制御部14は、ヒータ部電源174を制御して定着部170の温度を制御し、加熱及び加圧によって用紙P上のトナー像を定着させる。トナー像が定着された用紙Pは、搬送されて装置外に排出される。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る画像形成装置100の動作を詳細に説明する。図3は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の動作を示すフローチャートである。印刷制御部10は、上位ホスト(図示せず)からの最初(1枚目)の印刷要求を受けると、ヒータ部電源174により定着部170のヒータ部171aに電力を供給して、定着部170の温度制御を開始する(ステップS101)。
【0038】
印刷制御部10内の定着可能判定部13は、定着部170の温度に応じた検出信号を出力するサーミスタ173からの検出信号に基づいて、定着部170の温度が予め決められた印刷可能温度の範囲内であるか否かを判定する(ステップS102)。定着可能判定部13が、ステップS102において、定着部170の温度が予め決められた印刷可能温度以上であると判定した場合には、印刷制御部10は、感光ドラム111a,112a,113a,114a上へのトナー像形成、中間転写ベルト131へのトナー像の一次転写、用紙Pの搬送開始、用紙Pへのトナー像の二次転写などを実行させるための処理(印刷処理)を行う(ステップS112)。
【0039】
ステップS102において、定着可能判定部13が、定着部170の温度が印刷可能温度未満であると判定した場合には、印刷制御部10内の状態判定部15は、画像形成装置100が「異常な温度上昇状態」(例えば、低電圧状態)であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0040】
状態判定部15が、画像形成装置100の状態を「異常な温度上昇状態」ではない、すなわち、「正常な温度上昇状態」であると判定した場合に、印刷制御部10は、定着部170が定着可能温度に到達するまでの時間(上昇時間の予測値)を算出して(ステップS106)、温度上昇時間の予測値が用紙搬送時間よりも短くなった場合に(ステップS108)、用紙搬送とトナー像の形成等の印刷処理を行う。ここで、用紙搬送時間とは、用紙Pが給紙カセット181から給紙され、定着部170に達するまでの時間である。
【0041】
ステップS103において、状態判定部15が、画像形成装置100の状態を「異常な温度上昇状態」であると判定した場合は、印刷制御部10は、トナー像形成部110において感光ドラム111a,112a,113a,114a上へのトナー像の形成を開始させる(ステップS104)。このとき、印刷制御部10は、トナー像形成部110内の各トナー像形成ユニット111,112,113,114にてトナー像の形成を実行させ、転写電圧制御部11は、一次転写部電源145に、適切なタイミングで一次転写部140への電圧印加を実行させる。
【0042】
印刷制御部10は、トナー像形成部110にトナー像の形成を実行させる制御と並行して、中間転写ベルト131の移動と用紙Pの搬送を実行させるための制御を行う(ステップS105)。
【0043】
次に、印刷制御部10は、中間転写ベルト131上のトナー像と用紙Pの両方を二次転写部160の直前位置に搬送するための制御を行う。モータ制御部12は、用紙Pの搬送に際して、印刷制御部10がINセンサ182を用いて用紙Pの位置を検出した時点で、用紙搬送部150による用紙Pの搬送を停止させる(ステップS107)。中間転写ベルト131の移動によるトナー像の搬送は、印刷制御部10がトナー像形成部110又は中間転写ベルト駆動ローラ102の回転量及び移動量からトナー像の位置を算出して、二次転写部160の直前位置にトナー像が到達したと判定された時点で、モータ制御部12による中間転写ベルト131の搬送を停止する(ステップS107)ことによって行われる。
【0044】
次に、定着可能判定部13は、定着部170の温度が定着可能温度に達しているか否かを判定し(ステップS109)、定着可能温度に達していると判定されるまで、印刷制御部10は、モータ制御部12にて中間転写ベルト131と用紙搬送を二次転写部160の直前位置で停止させて印刷動作を待機する(ステップS110)。
【0045】
その後、定着部170の温度が定着可能温度に達して、所定の温度範囲内となり、定着可能判定部13が定着可能と判定した後に、モータ制御部12は、用紙Pの搬送を用紙搬送部150に再開させ、転写電圧制御部11は、二次転写部電源162に二次転写部160への電圧印加を開始させることによって、用紙P上にトナー像を転写(二次転写)させる(ステップS111)。
【0046】
さらに、印刷制御部10が、用紙搬送部150に用紙Pの搬送を行わせると、用紙Pは定着部170を通過し、定着部170による加熱及び加圧によってトナー像が用紙Pに定着される。
【0047】
図4(a)〜(h)は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の「正常な温度上昇状態」における動作を示すタイミング図である。図4(a)は、定着ローラ171の温度を示し、同図(b)は、ヒータ部171aのON期間とOFF期間(ON期間以外の期間)を示し、同図(c)は、一次転写部140による処理期間を示し、同図(d)は、中間転写ベルト131の移動期間を示し、同図(e)は、二次転写部160による処理期間を示し、同図(f)は、用紙搬送部150の動作期間を示し、同図(g)は、INセンサ182の動作期間を示し、同図(h)は、OUTセンサ183の動作期間を示す。
【0048】
図5(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の「正常な温度上昇状態」における動作を示す説明図である。なお、「正常な温度上昇状態」は、定着部170の温度が低い場合に印刷要求が発生したとき(図3の制御フローでステップS106、S108、S111を指す)を例に動作を説明する。また、図4(a)〜(h)及び図5(a)〜(e)における時刻t0〜時刻t5は、同じ時刻を示す。
【0049】
時刻t0において、印刷要求が発生して印刷処理を開始すると(図4(a))、温度制御部14は、ヒータ部171aの加熱制御を開始する(図4(b))。この時点では、トナー像は、まだ作成されておらず、用紙Pも搬送されていない。
【0050】
時刻t1(図3のステップS106、S108)は、計算により求められた、定着可能温度に到達するまでに要する上昇時間の予測値が、用紙Pの定着部170までの搬送時間よりも短くなった時点を示す。この時点で用紙Pの搬送を行えば、定着部170に用紙Pが到達した時点で、定着部170は、定着可能温度に達していると考えられるため、印刷処理を開始する。このとき、温度制御部14によるヒータ部171aの加熱制御(図4(b))は継続され、転写電圧制御部11とモータ制御部12による一次転写部140とトナー像形成部110による中間転写ベルト131へのトナー像IMの形成(図4(c))、モータ制御部12による中間転写ベルト131の移動(図4(d))がそれぞれ開始される。この時点におけるトナー像IMと用紙Pの位置は、時刻t0と同一である。
【0051】
時刻t2は、トナー像IMの先端部が二次転写部160へ到達するまでの時間と、用紙Pの搬送を開始して用紙Pの先端が二次転写部160へ到達するまでの時間が同一であると判定される時点を示す。時刻t2において、モータ制御部12による用紙搬送部150における用紙搬送(図4(e))を開始することで、二次転写部160において、中間転写ベルト131上のトナー像の先端部と用紙先端部とを一致させることができる。この時点では、トナー像IMのみ形成されており、用紙Pは、まだ搬送されていない。
【0052】
時刻t3は、用紙Pが二次転写部160に到達した時点を示す。INセンサ182(図4(g))がONとなることで用紙Pが二次転写部160へ到達したことを検知でき、二次転写部160(図4(e))の二次転写処理を開始することで、中間転写ベルト131上のトナー像IMを用紙P上へ転写することができる。この時点では、トナー像IM及び用紙Pともに二次転写部160の直前に位置している。
【0053】
時刻t4は、用紙Pの先端がOUTセンサ183まで到達した時点を示す。この時点では、トナー像IMの一部が用紙P上へ転写された状態である。時刻t5は、用紙Pの後端がOUTセンサ183を通過し終えた時点を示す。この後、用紙Pの搬送を継続することでトナー像IMが印刷された用紙Pが画像形成装置100の外部へ排出される。以上で、1枚目の印刷処理は終了する。
【0054】
また、正常な電圧上昇状態のときには、図4(a)に示すように、1枚目の印刷処理の終了前に2枚目の印刷処理(トナー像形成部110におけるトナー像形成処理)を開始して、1枚目の印刷処理終了の直後の時点である時刻t6から2枚目の一次転写処理を開始することができる。2枚目以降の印刷処理は、1枚目の印刷処理と同様である。なお、時刻t7は、2枚目の印刷処理の終了時刻である。
【0055】
図6(a)〜(h)は、第1の実施形態に係る画像形成装置の「異常な温度上昇状態」における動作を示すタイミング図である。図6(a)は、定着ローラ171の温度を示し、同図(b)は、ヒータ部171aのON期間とOFF期間(ON期間以外の期間)を示し、同図(c)は、一次転写部140による処理期間を示し、同図(d)は、中間転写ベルト131の移動期間を示し、同図(e)は、二次転写部160による処理期間を示し、同図(f)は、用紙搬送部150の動作期間を示し、同図(g)は、INセンサ182の動作期間を示し、同図(h)は、OUTセンサ183の動作期間を示す。
【0056】
図7(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の「異常な温度上昇状態」における動作を示す説明図である。なお、「異常な温度上昇状態」は、定着部170の温度が低い場合に印刷要求が発生したとき(図3の制御フローでステップS106、S108、S111を指す)を例に動作を説明する。また、図6(a)〜(h)及び図7(a)〜(e)における時刻t10〜時刻t15は、同じ時刻を示す。
【0057】
時刻t10で、最初の印刷要求が発生して印刷処理を開始すると(図6(a))、温度制御部14は、ヒータ部171aの加熱制御(図6(b))、転写電圧制御部11とモータ制御部12による一次転写部140とトナー像形成部110による中間転写ベルト131へのトナー像IMの形成(図6(c))、モータ制御部12による中間転写ベルト131の移動(図6(d))、モータ制御部12による用紙搬送部150での用紙Pの搬送(図6(f))をそれぞれ開始させる。この時点では、トナー像IMは、まだ作成されておらず、用紙Pも搬送されていない。
【0058】
時刻t11は、二次転写部160の直前まで用紙Pの搬送が完了した時点を示す。印刷制御部10によるINセンサ182(図6(g))の検知により、印刷制御部10が用紙Pを二次転写部160の直前まで搬送したことを検知すると、モータ制御部12は、用紙搬送部150(図6(f))を停止させる。この時点では、トナー像IMは、形成中であり、中間転写ベルト131も移動中であるが、用紙Pは待機位置、例えば、二次転写部160の直前位置で、待機している。
【0059】
時刻t12は、トナー像IMの形成が完了し、トナー像IMの先端位置が二次転写部160の直前に位置した時点である。このとき、転写電圧制御部11とモータ制御部12によって制御される一次転写部140とトナー像形成部110の処理が完了し(図6(c))、モータ制御部12からの制御によって、中間転写ベルト131も停止する(図6(d))。
【0060】
時刻t13は、定着部170の温度が定着可能温度に到達した時点、すなわち、温度上昇処理(「ウォームアップ」とも言う。)が完了した時点である。このときのトナー像IMと用紙Pの位置は、時刻t12と同じである。このとき、中間転写ベルト131の移動(図6(d))、二次転写部160における二次転写処理(図6(e))、及び用紙搬送部150による用紙Pの搬送(図6(f))を開始する。
【0061】
時刻t14は、用紙Pの先端が定着部170を通過してOUTセンサ183へ到達した時点である。二次転写部160にて、用紙Pに転写されたトナー像IMは、定着部170による加熱及び加圧によって用紙Pへ定着される。
【0062】
時刻t15は、用紙Pの後端がOUTセンサ183を通過した時点である。この後、用紙Pの搬送を継続することでトナー像IMが印刷された用紙Pが画像形成装置100の外部へ排出される。以上で、1枚目の印刷処理は終了する。
【0063】
また、異常な電圧上昇状態のときには、図6(a)に示すように、1枚目の印刷処理の終了後に2枚目の印刷処理(トナー像形成部によるトナー像形成処理)を開始して、トナー像形成部におけるトナー像の形成後、すなわち、1枚目の印刷処理終了から少し時間経過した時点である時刻t16から2枚目の一次転写処理を開始することができる。2枚目以降の印刷処理は、図4(a)〜(h)及び図5(a)〜(e)における正常な温度上昇状態の場合の印刷処理と同様である。なお、時刻t17は、2枚目の印刷処理の終了時刻である。
【0064】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る画像形成装置100においては、定着可能判定部13が、定着部170は定着可能温度に達していないと判定し、且つ、状態判定部15が、画像形成装置100の最初の印刷要求が入力された後の状態が「異常な温度上昇状態」であると判定したときに、中間転写部材131上のトナー像IMを所定のトナー像待機位置に移動させて待機させ、且つ、用紙Pを所定の用紙待機位置に待機させ、その後、定着部170の温度が定着可能温度に達したと判定されたときに、中間転写ベルト131の移動及び用紙Pの搬送を実行し、二次転写部160でトナー像IMの用紙Pへの転写を実行する。このため、定着部170の温度が定着可能温度に達したと判定されたときに、直ぐに、二次転写部160によって中間転写ベルト131上のトナー像IMの用紙Pへの転写、及び定着部170による定着を実行することができる。したがって、第1の実施形態に係る画像形成装置100によれば、印刷要求の発生から印刷終了までに要する時間、特に、1枚目の印刷が終了するまでに要する時間を、短縮することができる。
【0065】
また、第1の実施形態に係る画像形成装置100によれば、電源電圧が不安定な場合であっても、二次転写部160の直前までの印刷処理を完了させて待機させ、定着可能と判定された後に印刷処理を再開させているので、定着不良の発生頻度を防止することができる。
【0066】
さらに、第1の実施形態に係る画像形成装置100によれば、二次転写部160と定着部170との距離を小さくできるので、画像形成装置100の小型化が容易になる。
【0067】
さらにまた、第1の実施形態に係る画像形成装置100によれば、定着部170が定着可能温度に達するまでの間、用紙搬送部150、トナー像搬送部130を停止して待機しているので、電力の消費を抑制することができる。
【0068】
第2の実施形態.
図8は、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置200の構造を概略的に示す図である。図8において、図1(第1の実施形態)に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、同じ符号を付す。第2の実施形態に係る画像形成装置200は、中間転写ベルト131と感光ドラム111a,112a,113a,114aとの間隔を変更(接近又は離間)する第1の接近離間部210と、中間転写ベルト131と二次転写部260の転写ローラ161との間隔を変更(接近又は離間)する第2の接近離間部220とをさらに備えている点が、図1(第1の実施形態)に示される画像形成装置100と相違する。
【0069】
図9は、第2の実施形態に係る画像形成装置200の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。図9において、図2(第1の実施形態)に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、同じ符号を付す。第2の実施形態に係る画像形成装置200は、印刷制御部20が、第1の接近離間部210及び第2の接近離間部220の動作を制御する接近離間制御部21を有する点、及び、第1の接近離間部210を構成するトナー像形成部離間機構211、離間モータ212、モータ電源213を有する点、及び、第2の接近離間部220を構成するトナー像形成部離間機構221、離間モータ222、モータ電源223を有する点が、図2(第1の実施形態)に示される画像形成装置100と相違する。
【0070】
トナー像形成部離間機構211は、例えば、トナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114aの回転軸を上下方向Dcに移動させる機構である。トナー像形成部離間機構211は、例えば、トナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114aの回転軸を、くさび形状の支持部材231,232,233,234の傾斜面上に当接させることによって回転軸を支持し、この支持部材231,232,233,234を水平方向(上下方向Dcに直交する方向であって、感光ドラム111a,112a,113a,114aの回転軸に直交する方向)に移動させることによって感光ドラム111a,112a,113a,114aの回転軸を上下方向Dcに移動させる機構である。なお、この支持部材231,232,233,234の水平方向の移動は、離間モータ212の駆動力をギヤ等の動力伝達機構(図示せず)によって支持部材231,232,233,234に伝達することによって実現できる。ただし、トナー像形成部離間機構211は、上記例に限定されず、感光ドラム111a,112a,113a,114aの回転軸を、回転軸に対して直交する上下方向に移動する他の構成によって実現してもよい。
【0071】
二次転写部離間機構221は、例えば、転写ローラ171の回転軸を上下方向Ddに移動させる機構である。二次転写部離間機構221は、例えば、転写ローラ171の回転軸を、くさび形状の支持部材241の傾斜面上に当接させることによって回転軸を支持し、この支持部材241を水平方向(上下方向Ddに直交する方向であって、転写ローラ171の回転軸に直交する方向)に移動させることによって転写ローラ171の回転軸を上下方向Dcに移動させる機構である。なお、転写ローラ171の回転軸の支持部材241の水平方向の移動は、離間モータ222の駆動力をギヤ等の動力伝達機構(図示せず)によって支持部材に伝達することによって実現できる。ただし、二次転写部離間機構221は、上記例に限定されず、転写ローラ171の回転軸をこの回転軸に対して直交する方向に移動する他の構成によって実現してもよい。
【0072】
図10は、中間転写ベルト131の各位置間の距離を説明する図である。図10において、L1は、トナー像形成部110の中間転写ベルト131の搬送方向最下流のトナー像形成部であるトナー像形成ユニット111のトナー像形成位置K0から二次転写部260にて用紙Pと接触する部分の位置K1までの中間転写ベルト131上の距離(長さ)、すなわち、中間転写ベルト131の移動方向最下流の転写ローラ141による一次転写位置K0から二次転写部260による転写位置K1までの中間転写ベルト131上の長さである第1の距離を示す。また、L2は、二次転写部260で用紙Pと接触する部分の位置K1からトナー像形成部110の中間転写ベルト131の搬送方向最上流のトナー像形成部であるトナー像形成ユニット114のトナー像形成位置K2までの中間転写ベルト131上の距離(長さ)、すなわち、二次転写部260による転写位置K1から中間転写ベルト131の移動方向最上流の転写ローラ144による転写位置K2までの中間転写ベルト131上の長さである第2の距離を示す。
【0073】
次に、トナー像形成部離間機構211及び二次転写部離間機構221の動作について説明する。印刷制御部20内の接近離間制御部21は、モータ電源210によるトナー像形成部離間モータ電源203への電力供給を制御することによって、トナー像形成部離間モータ203を回転させ、その回転駆動力がギヤなどの動力伝達機構を介して伝達されることで感光ドラム111a,112a,113a,114aの支持部材231,232,233,234を移動させ、感光ドラム111a,112a,113a,114aを上下方向Dcに移動させる。この感光ドラム111a,112a,113a,114aの上下方向Dcの移動により、感光ドラム111a,112a,113a,114aを中間転写ベルト131と離間又は接近させることができる。二次転写部離間機構221は、トナー像形成部離間機構211と同様の機構とすることができる。
【0074】
第2の実施形態に係る画像形成装置200においては、印刷制御部20内の定着可能判定部13が、定着部170は定着可能温度に達していないと判定し、且つ、印刷制御部20内の状態判定部15が、画像形成装置200の最初の印刷要求が入力された後の状態が「異常な温度上昇状態」、例えば、「低電圧状態」であると判定したときに、以下のように動作する。
【0075】
印刷制御部20は、用紙の搬送方向の長さである用紙長が距離L1以下のときに、第1の接近離間部210により中間転写ベルト131と感光ドラム111a,112a,113a,114aとの間隔を狭くし、第2の接近離間部220により中間転写ベルトと二次転写部260の転写ローラ161との間隔を狭くした状態で、中間転写ベルト131上のトナー像を二次転写部260よりも移動方向の上流側の所定位置へ移動させた状態で待機させ、その後、用紙搬送部150に用紙の搬送を実行させ、中間転写ベルト131上のトナー像の移動を実行させ、二次転写部260に中間転写ベルト131上のトナー像の用紙Pへの転写を実行させる。
【0076】
また、印刷制御部20は、用紙長が距離L1より長く、距離L1と距離L2の合計値(L1+L2)以下のときに、中間転写ベルト131と感光ドラム111a,112a,113a,114aとの間隔を狭くし、中間転写ベルト131と二次転写部との間隔を狭くした状態で、中間転写ベルト131上にトナー像を形成させる。その後、印刷制御部20は、中間転写ベルト131から感光ドラム111a,112a,113a,114aを離間させ、中間転写ベルト131上のトナー像を二次転写部260よりも移動方向の上流側の所定位置へ移動させた状態で待機させ、その後、中間転写ベルト131に二次転写部260の転写ローラ160を接触させ、用紙Pの搬送を実行させ、中間転写ベルト131上のトナー像の移動を実行させ、二次転写部260により中間転写ベルト131上のトナー像の用紙Pへの転写を実行させる。
【0077】
また、印刷制御部20は、用紙長が、用紙長が距離L1と距離L2の合計値(L1+L2)よりも長いと判定されたときに、定着部170の温度が定着可能温度に到達した後に、中間転写ベルト131上にトナー像を形成させ、用紙Pの搬送を実行させ、中間転写ベルト131上のトナー像の移動を実行させ、二次転写部260に中間転写ベルト131上のトナー像の用紙Pへの転写を実行させる。
【0078】
次に、第2の実施形態に係る画像形成装置200の動作を詳細に説明する。図11は、第2の実施形態に係る画像形成装置200の動作を示すフローチャート(その1)であり、図12は、第2の実施形態に係る画像形成装置200の動作を示すフローチャート(その2)である。図11におけるステップS201、S202、S203、S208は、図3(第1の実施形態)におけるステップS101、S102、S103、S112とそれぞれ同様である。
【0079】
印刷制御部20は、上位ホスト(図示せず)からの印刷要求を受けると、ヒータ部電源174に定着部170のヒータ部171aに電力を供給させて、定着部170の温度制御を開始する(図11のステップS201)。
【0080】
印刷制御部20内の定着可能判定部13は、定着部170の温度に応じた検出信号を出力するサーミスタ173からの検出信号に基づいて、定着部170の温度が予め決められた印刷可能温度に達しているか否かを判定する(図11のステップS202)。定着可能判定部13は、ステップS202において、定着部170の温度が予め決められた印刷可能温度以上であると判定した場合には、印刷制御部20は、感光ドラム111a,112a,113a,114a上へのトナー像形成、中間転写ベルト131へのトナー像の一次転写、用紙Pの搬送開始、及び用紙Pへのトナー像の二次転写などを実行させるための処理(印刷処理)を行う(図11のステップS208)。
【0081】
ステップS202において、印刷制御部20内の定着可能判定部13が、定着部170の温度が印刷可能温度未満であると判定した場合には、印刷制御部20内の状態判定部15は、画像形成装置100が「異常な温度上昇状態」(例えば、低電圧状態)であるか否かを判定する(図11のステップS203)。「異常な温度上昇状態」であるか否かの状態判定方法は、第1の実施形態における状態判定方法と同様である。
【0082】
ステップS203において、印刷制御部20内の状態判定部15が、画像形成装置200の状態を「正常な温度上昇状態」(例えば、正常電圧状態)であると判定した場合には、処理をステップS206に進めて、図3(第1の実施形態)におけるステップS101〜S112と同様の処理(この場合には、ステップS106、S108、S111と同様の処理)を行う。
【0083】
ステップS203において、状態判定部15が、画像形成装置200の状態を「異常な温度上昇状態」(例えば、低電圧状態)であると判定した場合は、印刷制御部20は、印刷される用紙の用紙長と中間転写ベルト131上の距離L1とを比較する(図11のステップS204)。なお、印刷制御部20は、用紙長を操作パネル190にてユーザが選択した情報を取り込むことなどで認識できる。印刷制御部20は、用紙長が距離L1よりも短いと判定した場合は、ステップS206にて図3(第1の実施形態)のステップS101〜S112と同様の処理(この場合には、ステップS104、S105、S107〜S111と同様の処理)を行い、用紙長がL1以上であると判定した場合は、処理をステップS205に進める。
【0084】
次に、印刷制御部20は、用紙長を距離の合計値(L1+L2)と比較する(図11のステップS205)。距離の合計値(L1+L2)は、中間転写ベルト131上の距離であり、中間転写ベルト131上の最下流の一次転写部の位置から最上流の一次転写部の位置までの距離に相当する。印刷制御部20は、ステップS205において、用紙長が距離の合計値(L1+L2)以上であると判定した場合は、定着可能判定部13が定着部170の温度が定着可能温度に到達したと判定した後に、トナー像形成部110でのトナー像形成、一次転写部140による一次転写の開始を実行させ、その後、所定のタイミングで用紙搬送部150による用紙Pの搬送の開始、二次転写部260による二次転写処理、定着部170による熱定着処理を実行させる(図11のステップS207)。この場合には、定着可能判定部13にて定着部170の温度が定着可能温度に到達したと判定された後に、印刷処理を開始するので、1枚目の印刷終了までの時間を短縮できない。
【0085】
印刷制御部20は、ステップS205において用紙長が距離の合計値(L1+L2)より短いと判定した場合は、処理を図12のステップS209に進める。この場合には、以下に説明する処理によって、印刷終了までの時間を短縮できる。
【0086】
図12のステップS209において、印刷制御部20は、トナー像形成部110にトナー像の形成を開始させ、この処理と並行して、印刷制御部20内のモータ制御部12は、トナー像形成部モータ115及び中間転写ベルトモータ135の駆動を開始させる。
【0087】
次に、印刷制御部20内の接近離間制御部21は、二次転写部離間機構221を動作させて二次転写部260の転写ローラ161を中間転写ベルト131から離間させる(図12のステップS210)。
【0088】
次に、印刷制御部20内の転写電圧制御部11は、一次転写部140への転写電圧の印加を制御することで、トナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114a上のトナー像を中間転写ベルト131上へ転写(一次転写)させる。この動作と並行して、印刷制御部20のモータ制御部13は、用紙搬送部150に用紙Pの搬送を開始させる(図12のステップS211)。
【0089】
印刷制御部20が、INセンサ182の検知結果により用紙Pが二次転写部260の直前まで搬送されたことを検知すると、印刷制御部20内のモータ制御部13は、用紙搬送部150に用紙Pの搬送を停止させる(図12のステップS212)。
【0090】
印刷制御部20は、用紙長分のトナー像IMを中間転写ベルト131上に形成し終えるまで、トナー像形成部110と一次転写部140による中間転写ベルト131へのトナー像形成を継続する(図12のステップS213)。この動作と並行して、印刷制御部20は、中間転写ベルト搬送モータ135による中間転写ベルト131の移動を継続させる。
【0091】
印刷制御部20は、用紙長分のトナー像IMの中間転写ベルト131上への形成が完了すると、トナー像形成処理を終了する(図12のステップS214)。
【0092】
次に、印刷制御部20内の接近離間制御部21は、トナー像形成部離間機構211を動作させトナー像形成部110を中間転写ベルト131から離間させる(図12のステップS215)。このとき印刷制御部20内のモータ制御部12は、中間転写ベルト131を一旦停止させることとしてもよく、その場合は、離間動作が完了した後に再度中間転写ベルト131の移動を再開させる。以上の処理によって、感光ドラム111a,112a,113a,114a及び転写ローラ161の両方が、中間転写ベルト131から離間した状態となる。この状態で印刷制御部20内のモータ制御部12は、中間転写ベルト131を移動させる。
【0093】
次に、印刷制御部20は、モータ制御部12による中間転写ベルト131の移動量からトナー像IMの位置を検知し、二次転写部260の直前位置までトナー像IMを移動させる(図12のステップS216)。
【0094】
印刷制御部20内のモータ制御部12は、中間転写ベルト131を停止させ、その後、接近離間制御部21は、二次転写部離間機構221を制御し、二次転写部260の転写ローラ161を中間転写ベルト131へ接触させる(図12のステップS217)。
【0095】
印刷制御部20内の定着可能判定部13は、定着ローラの温度が定着可能温度に到達したと判定されるまで、トナー像形成部110におけるトナー像形成と用紙Pの搬送を停止させ印刷処理の待機状態とする(図12のステップS218,S220)。
【0096】
印刷制御部20は、定着可能判定部13にて定着ローラ161の温度が定着可能温度に到達したと判定されると、その後、印刷処理を再開する。具体的には、モータ制御部12による中間転写ベルト131の移動、用紙搬送部150による用紙Pの搬送と転写電圧制御部11による二次転写部260への電圧の印加を開始する(図12のステップS219)。
【0097】
印刷制御部20は、モータ制御部12によって中間転写ベルト131の移動量を計測し、トナー像IMの後端部がトナー像形成ユニット111(すなわち、トナー像形成部110の中間転写ベルト131の移動方向最下流位置(図10の位置K0))まで移動したことを検知すると、接近離間制御部21によってトナー像形成部離間機構211を制御してトナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114aを中間転写ベルト131に接触させる(図12のステップS221,S222)。
【0098】
以上の処理を行うことで、画像形成装置200の状態が「異常な温度上昇状態」であると判定した場合に、用紙長がL1よりも長い場合においても、定着不良を防止して、かつ印刷完了までの時間を短縮することができる。
【0099】
次に、「異常な電圧上昇状態」、例えば、低電圧状態のときに印刷要求が発生したとき(図12のステップS209以降)の動作例を説明する。図13(a)〜(j)は、第2の実施形態に係る画像形成装置200の「異常な温度上昇状態」における動作を示すタイミング図である。図13(a)は、定着ローラ171の温度を示し、同図(b)は、ヒータ部171aのON期間とOFF期間(ON期間以外の期間)を示し、同図(c)は、一次転写部140による処理期間を示し、同図(d)は、トナー像形成部離間機構211による感光ドラム111a,112a,113a,114aの状態を示し、同図(e)は、中間転写ベルト131の移動期間を示し、同図(f)は、一次転写部離間機構221による転写ローラの状態を示し、同図(g)は、二次転写部260による処理期間を示し、同図(h)は、用紙搬送部150の動作期間を示し、同図(i)は、INセンサ182の動作期間を示し、同図(j)は、OUTセンサ183の動作期間を示す。
【0100】
図14(a)〜(f)は、第2の実施形態に係る画像形成装置200の「異常な温度上昇状態」における動作を示す説明図である。また、図13(a)〜(j)及び図14(a)〜(f)における時刻t20〜時刻t26は、同じ時刻を示す。
【0101】
時刻t20で、最初の印刷要求が発生して印刷処理を開始すると(図13(a))、温度制御部14によるヒータ部171aの加熱制御(図13(b))、転写電圧制御部11とモータ制御部12による一次転写部140とトナー像形成部110による中間転写ベルト131へのトナー像形成(図13(c))、接近離間制御部21による二次転写部260の離間処理(図13(d))、モータ制御部12による中間転写ベルト131の移動(図13(e))、モータ制御部12による用紙搬送部150での用紙Pの搬送(図13(h))がそれぞれ開始される。この時点では、トナー像IMは、まだ作成されておらず、用紙Pも搬送されていない。
【0102】
時刻t21は、用紙Pの先端が二次転写部160の直前位置に到達した時点を示す。印刷制御部20は、INセンサ182の検知結果(図13(i))から用紙Pの位置を判定し、用紙搬送部150の用紙Pの搬送(図13(h))を停止する。この時点では、トナー像IMは、形成中であり、用紙Pは、二次転写部260の直前まで到達している。
【0103】
時刻t22は、トナー像形成が完了した時点を示す。一次転写処理(図13(c))が完了すると、一次転写離間機構(図13(d))にてトナー像形成部110を中間転写ベルト131から離間させる。この時点では、トナー像IMの先端は、一次転写部140の最上流部(位置K3)と二次転写部260との間に位置し、トナー像形成部110は、この後にトナー像形成部離間機構211により中間転写ベルト131から離間される。
【0104】
時刻t23は、トナー像IMの先端部を二次転写部260の直前まで移動した時点を示す。中間転写ベルト131の移動(図13(e))を停止し、二次転写離間機構(図13(f))の離間を解除して中間転写ベルト131と二次転写部260の転写ローラ161とを接触させる。この時点で用紙P、トナー像IMともに二次転写部260の直前に位置しており、また、トナー像形成部110の感光ドラム111a,112a,113a,114aは中間転写ベルト131から離間した状態である。
【0105】
時刻t24は、定着器170の温度が定着可能温度に到達した時点を示す。このとき、中間転写ベルト131(図13(e))の移動、二次転写部(図13(g))の電圧制御、用紙搬送部150(図13(h))の用紙Pの搬送を開始する。この時点での各部状態、位置は、時刻t23と同じである。
【0106】
時刻t25は、トナー像IMの後端部が一次転写部140の最下流部(位置K0)を通過し終えた時点を示す。このときトナー像形成部離間機構(図13(d))は、感光ドラム111a,112a,113a,114aは、離間を解除し、中間転写ベルト131と接触する。
【0107】
時刻t26は、用紙Pの後端がOUTセンサ183を通過した時点である。この後用紙Pの搬送を継続することで、印刷が完了する。
【0108】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る画像形成装置200においては、定着部260が定着可能温度に達しておらず、且つ、異常な温度上昇状態であると判定されたときであっても、用紙長が距離L1未満のときには、第1の実施形態の場合と同様の処理によって、また、用紙長が距離L1以上であり合計値(L1+L2)未満のときには、図12、図13(a)〜(h)、図14(a)〜(f)に示す処理によって、印刷に要する時間、特に、1枚目の印刷が終了するまでに要する時間を、短縮することができる。
【0109】
また、第2の実施形態に係る画像形成装置200によれば、電源電圧が不安定な場合であっても、二次転写部260の直前までの印刷処理を完了させて待機させ、定着可能と判定された後に印刷処理を再開させているので、定着不良の発生頻度を防止することができる。
【0110】
さらに、第2の実施形態に係る画像形成装置200によれば、中間転写ベルト131を短くできるので、画像形成装置200の小型化が容易になる。
【0111】
さらにまた、第2の実施形態に係る画像形成装置200によれば、定着部170が定着可能温度に達するまでの間、用紙搬送部150、トナー像搬送部130を停止して待機しているので、電力の消費を抑制することができる。
【符号の説明】
【0112】
10,20 印刷制御部、 11 転写電圧制御部、 12 モータ制御部、 13 定着可能判定部、 14 温度制御部、 15 状態判定部、 16 電源電圧検出部、 21 接近離間制御部、 100,200 画像形成装置、 110 トナー像形成部、 111,112,113,114 トナー像形成ユニット、 111a,112a,113a,114a 感光ドラム、 115 トナー像形成部電源、 120 露光部、 121,122,123,124 LEDヘッド、 130 トナー像搬送部、 131 中間転写ベルト、 132 駆動ローラ、 133 ベルト従動ローラ、 134 二次転写バックアップローラ、 135 中間転写ベルト移動モータ、 140 一次転写部、 141,142,143,144 一次転写ローラ、 145 一次転写部電源、 150 用紙搬送部、 151 ピックアップローラ、 152,153,154,155 用紙搬送用ローラ、 157 モータ電源、 160,260 二次転写部、 161 二次転写ローラ、 162 二次転写部電源、 170 定着部、 171 定着ローラ、 171a ヒータ部、 172 加圧ローラ、 173 サーミスタ、 174 ヒータ部電源、 181 用紙カセット、 182 INセンサ、 183 OUTセンサ、 190 操作パネル、 210 第1の接近離間部、 211 トナー像形成部離間機構、 212 離間モータ、 213 モータ電源、 220 第2の接近離間部、 221 二次転写部離間機構、 222 離間モータ、 223 モータ電源、 P 用紙、 IM トナー像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を有し、該像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と、
中間転写部材及び該中間転写部材を所定の移動方向に移動させる移動部を有するトナー像搬送部と、
前記像担持体上のトナー像を前記中間転写部材上に転写させる一次転写部と、
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する記録媒体搬送部と、
前記記録媒体上に前記中間転写部材上のトナー像を転写させる二次転写部と、
ヒータ部を有し、該ヒータ部によって前記記録媒体上のトナー像を加熱する定着部と、
前記定着部が前記記録媒体上のトナー像を定着できる定着可能温度に達しているか否かを判定する定着可能判定部と、
画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が、前記定着部が前記定着可能温度に到達するまでに要する上昇時間の予測値が所定の基準時間以下である正常な温度上昇状態又は前記上昇時間の予測値が前記基準時間を超える異常な温度上昇状態のいずれであるかを判定する状態判定部と、
印刷制御部と
を備え、
前記定着可能判定部が、前記定着部は前記定着可能温度に達していないと判定し、且つ、前記状態判定部が、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が前記異常な温度上昇状態であると判定したときに、前記印刷制御部は、
前記トナー像搬送部により、前記中間転写部材上の前記トナー像を前記二次転写部よりも前記移動方向の上流側の所定のトナー像待機位置に移動させて待機させ、且つ、前記記録媒体搬送部により、前記記録媒体を前記二次転写部よりも前記搬送方向の上流側の所定の用紙待機位置で待機させ、
その後、前記定着部の温度が前記定着可能温度に達したと判定されたときに、前記トナー像搬送部に前記中間転写部材の前記移動方向の移動を実行させ、前記記録媒体搬送部に前記記録媒体の前記搬送方向の搬送を実行させ、前記二次転写部に前記中間転写部材上のトナー像の前記記録媒体への転写を実行させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記状態判定部は、前記温度検出部が検出する温度に基づいて、前記最初の印刷要求が入力された後の状態が前記正常な温度上昇状態又は前記異常な温度上昇状態のいずれであるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記最初の印刷要求が入力された後の所定期間内に所定の時間間隔で前記温度検出部が検出する温度変化量を算出し、該温度変化量のすべてが又は幾つかが所定の温度変化量閾値以上であるときに、前記画像形成装置の状態は前記正常な温度上昇状態であると判定し、前記正常な温度上昇状態と判定できないときに、前記画像形成装置の状態は前記異常な温度上昇状態であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、前記最初の印刷要求が入力された後の所定期間内に所定の時間間隔で前記温度検出部が検出する温度変化量を算出し、該温度変化量の最大値又は平均値が所定の温度変化量閾値以上であるときに、前記画像形成装置の状態は前記正常な温度上昇状態であると判定し、前記正常な温度上昇状態と判定できないときに、前記画像形成装置の状態は前記異常な温度上昇状態であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヒータ部の電源電圧を検出する電源電圧検出部をさらに備え、
前記状態判定部は、前記最初の印刷要求が入力された後の所定期間内において前記電源電圧検出部が検出する電源電圧に基づいて、前記最初の印刷要求が入力された後の状態が前記正常な温度上昇状態又は前記異常な温度上昇状態のいずれであるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記状態判定部は、前記最初の印刷要求が入力された後の所定期間内に所定の時間間隔で前記電源電圧検出部が検出する電源電圧を算出し、該電源電圧のすべてが又は幾つかが所定の電源電圧閾値以上であるときに、前記画像形成装置の状態は前記正常な温度上昇状態であると判定し、前記正常な温度上昇状態と判定できないときに、前記画像形成装置の状態は前記異常な温度上昇状態であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記状態判定部は、前記最初の印刷要求が入力された後の所定期間内に所定の時間間隔で前記電源電圧検出部が検出する電源電圧を算出し、該電源電圧の最大値又は平均値が所定の電源電圧閾値以上であるときに、前記画像形成装置の状態は前記正常な温度上昇状態であると判定し、前記正常な温度上昇状態と判定できないときに、前記画像形成装置の状態は前記異常な温度上昇状態であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記印刷制御部に前記異常な温度上昇状態時における動作を実行させる指令信号を入力するユーザ操作部をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着可能判定部が、前記定着部は前記定着可能温度に達していると判定したときに、前記印刷制御部は、
前記トナー像形成部によるトナー像の形成、前記一次転写部による前記トナー像の前記中間転写部材上への転写、前記トナー像搬送部による前記トナー像の搬送、前記記録媒体搬送部による前記記録媒体の搬送、前記二次転写部による前記中間転写部材上の前記トナー像の前記記録媒体への転写、及び前記定着部による前記トナー像の前記記録媒体への定着を実行させる
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記定着可能判定部が、前記定着部は前記定着可能温度に達していないと判定し、且つ、前記状態判定部が、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が前記正常な温度上昇状態であると判定したときに、前記印刷制御部は、
前記定着部が前記定着可能温度に到達するまでに要する前記上昇時間の予測値を算出し、
前記上昇時間の予測値が、前記記録媒体が前記定着部に到達するまでの時間よりも小さくなったときに、前記記録媒体搬送部による前記記録媒体の搬送、前記二次転写部による前記中間転写部材上の前記トナー像の前記記録媒体への転写、及び前記定着部による前記トナー像の前記記録媒体への定着を実行させる
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記二次転写部から前記定着部までの距離は、前記記録媒体として使用可能な最小の記録媒体の前記搬送方向の長さよりも短い
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記中間転写部材と前記像担持体との間隔を変更する第1の接近離間部と、
前記中間転写部材と前記二次転写部との間隔を変更する第2の接近離間部と
をさらに備え、
前記中間転写部材の移動方向最下流の前記一次転写部による一次転写位置から前記二次転写部による二次転写位置までの中間転写部材上の長さを第1の距離とし、
前記二次転写部による前記二次転写位置から前記中間転写部材の移動方向最上流の前記一次転写部による一次転写位置までの中間転写部材上の長さを第2の距離としたときに、
前記定着可能判定部が、前記定着部は前記定着可能温度に達していないと判定し、且つ、前記状態判定部が、画像形成装置に最初の印刷要求が入力された後の状態が前記異常な温度上昇状態であると判定したときの動作として、前記印刷制御部は、
前記記録媒体の搬送方向の長さが、前記第1の距離以下と判定されたときに、
前記第1の接近離間部により前記中間転写部材と前記像担持体との間隔を狭くし、前記第2の接近離間部により前記中間転写部材と前記二次転写部との間隔を狭くした状態で、前記中間転写部材上の前記トナー像を前記二次転写部よりも前記移動方向の上流側の所定位置へ移動させた状態で待機させ、且つ、前記記録媒体搬送部により、前記記録媒体を前記二次転写部よりも前記搬送方向の上流側の所定の用紙待機位置で待機させ、
その後、前記記録媒体搬送部に前記記録媒体の前記搬送方向の搬送を実行させ、前記トナー像搬送部に前記中間転写部材上のトナー像の前記移動方向の移動を実行させ、前記二次転写部に前記中間転写部材上のトナー像の前記記録媒体への転写を実行させる
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記印刷制御部は、
前記記録媒体の搬送方向の長さが、前記第1の距離より長く、前記第1の距離と前記第2の距離の合計値以下と判定されたときに、
前記第1の接近離間部により前記中間転写部材と前記像担持体との間隔を狭くし、前記第2の接近離間部により前記中間転写部材と前記二次転写部との間隔を狭くした状態で、前記中間転写部材上に前記トナー像を形成し、
その後、前記第1の接近離間部により前記中間転写部材と前記像担持体との間隔を広くし、前記中間転写部材上の前記トナー像を前記二次転写部よりも前記移動方向の上流側の所定位置へ移動させた状態で待機させ、且つ、前記記録媒体搬送部により、前記記録媒体を前記二次転写部よりも前記搬送方向の上流側の所定の用紙待機位置で待機させ、
その後、前記第2の接近離間部により前記中間転写部材と前記二次転写部との間隔を狭くして、前記記録媒体搬送部に前記記録媒体の前記搬送方向の搬送を実行させ、前記トナー像搬送部に前記中間転写部材上のトナー像の前記移動方向の移動を実行させ、前記二次転写部に前記中間転写部材上のトナー像の前記記録媒体への転写を実行させる
ことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記印刷制御部は、
前記記録媒体の搬送方向の長さが、前記第1の距離と前記第2の距離の合計値よりも長いと判定されたときに、
前記定着部の温度が定着可能温度に到達した後に、前記中間転写部材上に前記トナー像を形成させ、前記記録媒体搬送部に前記記録媒体の前記搬送方向の搬送を実行させ、前記トナー像搬送部に前記中間転写部材上のトナー像の前記移動方向の移動を実行させ、前記二次転写部に前記中間転写部材上のトナー像の前記記録媒体への転写を実行させる
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−164487(P2011−164487A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29364(P2010−29364)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】