説明

画像形成装置

【課題】感光ドラム2を加熱する面状発熱ヒータ21を有する構造で、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の温度ムラを緩和できる構造を実現する。
【解決手段】前回の画像形成終了時から所定の時間が経過し、この間に面状発熱ヒータ21を通電している場合、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の感光ドラム2と対向する部分は高温になっている。したがって、この場合に、画像形成をせずに中間転写ベルト6を、定着装置10の温度が所定の定着温度になるまで空回転させる。これにより、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の温度ムラが緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体をヒータなどの加熱部材により加熱する構成を有する電子写真方式のファクシミリ、プリンタ、複写機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体である電子写真感光体(感光体)上に形成された静電像(潜像)をトナーにより現像してトナー像を形成する。その後、感光体上に形成されたトナー像は、最終的に記録材(記録用紙、OHPシート等)に転写され、定着された後に、画像形成装置外に出力される。感光体上のトナー像を記録材に転写する方式として、感光体上に形成されたトナー像を直接記録材に転写する直接転写方式がある。又、感光体上に形成されたトナー像を一度中間転写ベルト上に転写してから、この中間転写ベルト上のトナー像を記録材上に転写する中間転写方式がある。記録材上にトナー像を転写するまでの工程において、記録材の裏面や中間転写体の裏面に転写バイアスが印加される。
【0003】
上記のような感光体に潜像を形成するためには、感光体表面を一旦所定の電位に帯電させてから、レーザなどの光源を照射する。このような感光体表面の帯電は、例えば、感光体に対向して配置されるスコロトロンなどのコロナ帯電器や、帯電ローラなどの帯電装置により行う。いずれも絶縁体の感光体表面に対して放電によって電荷を乗せる事で帯電させる工程であるが、放電時にNOxなどの放電生成物が生成される。
【0004】
そして、このような放電生成物が感光体表面に付着すると、感光体表面の局所的な表面抵抗が低下するために潜像を保持できなくなって、文字や細線がぼやける「画像流れ」と呼ばれる画像不良が発生する場合がある。この画像流れは、高温高湿環境で顕著に発生する現象であり、放電生成物が外気の水分を吸収することで低抵抗化するためと考えられる。
【0005】
このような放電生成物による画像流れを防止するために、感光体内部に面状発熱ヒータを内蔵し、内部から感光体表面付近を加温する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。この構成によれば、周辺の水分量を減少させ、放電生成物が水分を吸収しにくくさせることで、画像流れを回避できる。
【0006】
一方、上記のような感光体内部にヒータを内蔵させ、感光体を加熱する画像形成装置では、感光体に直接接触する部材の温度ムラにより画像ムラが生じる可能性がある。即ち、中間転写ベルトが回転せずにヒータにより加熱された感光体と接触したまま長時間放置されると、中間転写ベルトがこの接触部で局所的に加熱されるため、中間転写ベルトに温度ムラが生じてしまう。そして、中間転写ベルトの局所的に高温となる部分では、電気抵抗の温度特性によって低抵抗化する。この結果、中間転写ベルトの一部で局所的に転写電流が過大に流れるため、これが画像ムラとなってしまう。
【0007】
このような中間転写ベルトの温度ムラを防止すべく、中間転写ベルトの張架ローラとして、芯金内部に放熱性の高い(ローラ芯金が中空、或は、ローラが空冷される、或は芯金内部に冷却用空気を流す)ローラを用いた構造がある(特許文献2参照)。この特許文献2では、画像形成時に中間転写ベルトの局所的に高温となった部分が放熱性の高いローラを通過することにより、この部分の熱が放熱され、中間転写ベルトの温度ムラを緩和するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−282570号公報
【特許文献2】特開2008−268597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された構造の場合、中間転写ベルトの放熱しか考慮していないため、上述のような画像ムラを十分に防止することはできない。即ち、中間転写方式、直接転写方式のいずれにしても、感光体と、中間転写ベルト又は記録材を搬送する記録材搬送ベルトを介して転写ローラを対向配置する構成がある。そして、転写ローラに所定の転写バイアスを印加することにより、感光体から中間転写ベルト又は記録材にトナー像を転写する。この転写ローラは、中間転写ベルト又は記録材搬送ベルト(以下、単にベルトと言う)と当接して回転する。
【0010】
このような構造の場合、ヒータにより加熱された感光体からの熱が中間転写ベルトだけではなく、転写ローラにも伝達する。したがって、ベルト及び転写ローラが回転せずに長時間放置されると、転写ローラもベルトとの接触部で局所的に加熱され、温度ムラが生じる。そして、この温度ムラにより、転写ローラの電気抵抗も変化して、転写ローラのピッチで画像ムラが発生する可能性がある。上述の特許文献2に記載された構造の場合、中間転写ベルトの張架ローラを放熱性の高いローラとしているだけであるため、このような転写ローラの温度ムラの緩和を十分に図れない。
【0011】
この点についてより詳しく説明する。まず、中間転写ベルトなどのベルトとしては、厚さが薄い、フィルム部材或は半導電性の部材製のものが広く使用されている。例えば、フィルム部材としては、厚さは50〜100μm程度のポリイミド(PI)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などがある。また、半導電性の部材としては、厚さ100〜300μm程度のCRゴムなどのゴム部材を基材として、抵抗調整剤としてカーボンブラックなど導電性粉末を混入したものがある。一方、転写ローラとしては、ウレタンやヒドリンなどのゴム部材を発泡処理したスポンジゴムに、抵抗調整剤としてイオン導電性の導電フィラーを混入したローラが幅広く用いられており、ゴム部の厚さは数mm程度としている。
【0012】
したがって、ベルトと転写ローラとを比べた場合、部材の厚さによって部分的な熱容量は、転写ローラの方が大きくなる。このため、上述のように、ベルトがヒータにより加熱された感光体と接触した状態で長時間放置され、ベルト及び転写ローラに温度ムラが生じた場合、転写ローラの方が温度ムラを解消しにくい。特許文献2に記載された構造の場合、中間転写ベルトを放熱性の高いローラを、画像形成時に通過させるだけである。このため、中間転写ベルトの温度ムラを緩和できたとしても、転写ローラの温度ムラを緩和することは難しく、温度ムラにより生じる画像ムラを十分に防止することはできない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、像担持体を加熱する加熱部材を有する構造で、ベルト及び転写ローラの温度ムラを緩和できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、像担持体と、該像担持体を加熱する加熱部材と、前記像担持体と対向して配置され、回転駆動自在な無端状のベルトと、該ベルトを介して前記像担持体と対向して配置され、該ベルトと当接して回転する転写ローラと、記録材に転写されたトナー像を記録材に加熱定着する定着装置と、前記定着装置の温度を検知する定着部温度検知手段と、を備え、前記転写ローラに転写バイアスを印加することにより、前記像担持体に形成されたトナー像をベルト又はベルトにより搬送される記録材に転写する画像形成装置において、前記像担持体が前記加熱部材により加熱され、トナー像を記録材に加熱定着する定着温度まで加熱された前記定着装置の温度が低下して、前記定着部温度検知手段が、予め設定された低温定着部温度未満の温度を検知する第1の条件を満たす場合には、画像形成をせずに前記ベルトを回転させる空回転動作を前記ベルト及び前記転写ローラの温度ムラが緩和される第2の条件を満たすまで行う制御手段を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像形成せずにベルトを回転させる空回転動作を第2の条件を満たすまで行うため、この間に、ベルト及び転写ローラの温度ムラを十分に緩和することができ、この温度ムラに起因する画像ムラを防止できる。また、このような温度ムラの緩和のために特別な部材を追加する必要がなく、画像ムラ防止のためのコスト増大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構成概略図。
【図2】第1の実施形態の画像形成開始前の初期制御動作のフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図6】第4の実施形態で、1次転写ローラに流れる電流の時間に対する変化を示す図。
【図7】1次転写ローラに流れる電流と転写後の感光ドラム表面のトナー濃度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。まず、図1により画像形成装置1の全体構成について簡単に説明する。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のトナー像を重ねてフルカラー画像を形成するものである。図中、2は像担持体としての感光ドラムである。感光ドラム2は、例えば外径84mmのアルミニウム製のシリンダに、アモルファスシリコンを主成分とする感光体を成膜して構成したものである。感光ドラム2の周囲には、帯電装置としての帯電ローラ3、レーザ4、現像装置5、中間転写ベルト6、ドラムクリーニング装置7が、それぞれ感光ドラム2の回転方向(矢印α方向)に順に配置されている。
【0018】
このうちの帯電ローラ3は、不図示の電源に接続され帯電バイアスを印加されることにより、感光ドラム2の表面を所定の電位に帯電させる。なお、帯電ローラ3の代わりにコロナ帯電器を使用しても良い。また、レーザ4は、スキャナにより読み取った画像情報或は外部端末から画像形成装置1に送られた画像情報に基づいて、感光ドラム2の表面にレーザ光を照射し、感光ドラム2にこの画像情報に基づいた静電潜像を形成する。また、現像装置5は、Y、M、C、Kの各色トナー(現像剤)を有する現像器5Y、5M、5C、5Kを備える。これら各現像器は回転するドラムに支持され、ドラムは、各色の現像を行う際に各現像器をそれぞれ感光ドラム2に対向させるように矢印β方向に回転する。また、ドラムクリーニング装置7は、ブレードを感光ドラム2の表面に摺接させて、感光ドラム2の表面に残存したトナーを回収する。
【0019】
また、上述の現像器5Y、5M、5C、5Kは、それぞれ、現像容器内のトナー搬送機構によって現像スリーブにトナーを搬送し、現像スリーブの外周に圧接された規制ブレードによって現像スリーブの外周にトナーを薄層塗布すると共にトナーに電荷を付与する。トナーに電荷を付与した後、現像スリーブにDCバイアスにACバイアスを重畳した現像バイアスを印加することで感光ドラム2上に形成された静電潜像に対し、現像を行う。現像スリーブは、感光ドラム2に対向した位置に微小間隔(例えば300μm)をもって配設される。
【0020】
また、中間転写ベルト6は、無端状のベルトで、複数の張架ローラ61、62、63により張架され、回転駆動自在である。この中間転写ベルト6としては、例えば、厚さ85μmのポリイミド樹脂フィルムを基材とし、カーボンブラックを分散して、表面抵抗率で1×1012Ω/□、体積抵抗率で1×109.5Ω・cmとなるように抵抗調整したものを使用する。また、中間転写ベルト6の周長は、例えば527.5mmとし、駆動速度(プロセススピード)を130mm/secとする。このような中間転写ベルト6は、基材として、イオン導電性のゴム材料、または、イオン導電性のプラスチックを用いることができる。
【0021】
また、張架ローラ61は、中間転写ベルト6を駆動する駆動ローラであり、モータMに接続される。そして、モータMにより駆動ローラ61が駆動して、中間転写ベルト6を矢印γ方向に回転駆動する。また、張架ローラ62は、中間転写ベルト6に所定の張力を付与する張力付勢ローラである。このために、張架ローラ62はばねなどの張力付与手段64により付勢されている。また、張架ローラ63は、中間転写ベルト6の外周面と接離自在な二次転写外ローラ65と中間転写ベルト6を介して対向する二次転写内ローラである。二次転写外ローラ65には、不図示の電源により所定の二次転写バイアスを印加する。一方、二次転写内ローラ63は接地されている。中間転写ベルト6の二次転写内ローラ63と二次転写外ローラ65とに挟持される部分を二次転写部T2としている。
【0022】
また、二次転写外ローラ65は、例えば、外径12mmの鋼鉄製の芯金に、発泡処理したNBR(ニトリルブタジエンゴム)を基材とする発泡ゴム層を設けたスポンジローラとし、NBRゴム層を含めた外径を24mmとする。また、ローラの抵抗値は、23℃・50%Rh環境下で、107.5Ω(2kV印加時)となるように、イオン伝導性の抵抗調整剤を分散することで抵抗調整を行うようにしても良い。
【0023】
また、中間転写ベルト6内の感光ドラム2と対向する位置には、一次転写ローラ8を配置している。即ち、一次転写ローラ8は、中間転写ベルト6を介して感光ドラム2と対向して配置される。また、一次転写ローラ8は、中間転写ベルト6の内周面と当接しており、中間転写ベルト6の回転駆動により従動回転する。また、一次転写ローラ8には、電源Eが接続され、所定の一次転写バイアスが印加される。なお、感光ドラム2は接地されている。このような一次転写ローラ8は、例えば、外径8mmの鋼鉄製の芯金に、発泡処理をしたEPDMを基材とする発泡ゴム層を設けたスポンジローラとし、外径を16mmとする。また、ローラの抵抗値は、23℃・50%Rh環境下で、106.5Ω(100V印加時)となるように、イオン伝導性の抵抗調整剤を分散することで抵抗調整を行うようにしても良い。即ち、基材としてイオン導電性のゴム材料を使用しても良い。
【0024】
また、中間転写ベルト6内の一次転写ローラ8の下流には一次転写下流ローラ81が中間転写ベルト6の内周面に当接するように配置されている。一次転写下流ローラ81は、例えば、外径16mmのSUS製のローラであり、接地されている。一次転写下流ローラ81は、中間転写ベルト6の感光ドラム2と一次転写ローラ8とに挟持される一次転写部T1において一次転写ローラ8から電荷を付与された中間転写ベルト6を、一次転写部T1の下流で裏面(内周面)より担持する。したがって、接地していないとチャージアップするおそれがあり、周辺の部材へリークし、画像形成装置本体に電気的ストレスを与えるおそれがあることから、接地することが望ましい。
【0025】
また、中間転写ベルト6の外周面で張力付勢ローラ62と対向する位置には、ベルトクリーニング装置9が配置されている。ベルトクリーニング装置9は、ブレードを中間転写ベルト6の外周面に摺接させて、中間転写ベルト6の外周面に残存したトナーを回収する。
【0026】
また、画像形成装置1は、定着装置10を備える。この定着装置10は、トナー像を記録材に加熱定着する定着温度に加熱される加熱ローラ101と、加熱ローラ101に所定の圧力で当接する加圧ローラ102とを有する。そして、定着温度まで加熱された加熱ローラ101と加圧ローラ102とで形成される加熱ニップ部Nに、トナー像を担持した記録材を通過させることにより、記録材にトナー像を加熱定着させる。
【0027】
画像形成を行う場合には、帯電ローラ3によって感光ドラム2の表面を一様に帯電した後、レーザ4により画像情報に応じたレーザ光を感光ドラム2の表面に照射し、感光ドラム2の表面に静電潜像を形成する。次いで、形成された静電潜像に対し、現像装置5の各色の現像器を感光ドラム2の表面に対向させ、各色トナーの現像を行う。感光ドラム2の表面に形成されたトナー像は、一次転写部T1で中間転写ベルト6に一次転写される。中間転写ベルト6に転写されたトナー像は、二次転写部T2でトナー像とタイミングを合わせて搬送される記録材に二次転写される。トナー像が転写された記録材は、図1に破線で示すように、定着装置10に搬送されてトナー像が加熱定着され、機外に搬送される。
【0028】
一次転写後に感光ドラム2の表面に残存したトナーはドラムクリーニング装置7により回収され、二次転写後に中間転写ベルト6の外周面に残存したトナーはベルトクリーニング装置9により回収される。そして、感光ドラム2の表面に次の静電潜像およびトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト6に転写するようにしている。
【0029】
なお、本実施形態の場合、1個の感光ドラム2に対し複数の現像器を順次対向させてフルカラーの画像を形成するものである。したがって、この点について補足説明を行う。まず、イエローの画像に対応した静電潜像が形成された感光ドラム2に、イエロートナーを収容した現像器5Yを対向させ、この静電潜像をイエロートナーにより現像し、中間転写ベルト6に一次転写する。この際、二次転写外ローラ65は中間転写ベルト6から離間されており、イエローのトナー像は記録材に二次転写されない。次いで、マゼンダ、シアン、ブラック各色成分のトナー像を同様のプロセスで形成し、中間転写ベルト6上に各色のトナー像が重なるように順次一次転写する。そして、中間転写ベルト6上に4色のトナー像を重ねたら、二次転写外ローラ65を中間転写ベルト6に接触させ、上述のように、このトナー像を記録材に二次転写する。
【0030】
また、本実施形態の場合、感光ドラム2は、感光ドラム2を加熱する加熱部材である面状発熱ヒータ21を有する。この面状発熱ヒータ2は、感光ドラム2に内蔵されており、例えば、78Wのヒータをドラム内周1周にわたって配設することにより構成されている。そして、感光ドラム2の表面温度が約42℃となるようにヒータ2の電力制御を行っている。このために感光ドラム2の表面温度を温度センサ22により検知し、ヒータ制御器23により面状発熱ヒータ21の電力制御を行っている。即ち、ヒータ制御器23により、温度センサ22の検知結果に基づいて、ヒータ21に入力する電力のフィードバック制御を行っている。このヒータ制御器23は、制御手段である本体CPU200によって制御されている。
【0031】
感光ドラム2の表面温度が約40℃以上となることで、高温高湿環境においても放電生成物の付着による画像流れが発生することを防止できる。一方で、ドラム表面温度が約44℃を超えると、感光ドラム2に近接する現像器5Y、5M、5C、5Kや、ドラムクリーニング装置7についても面状発熱ヒータ21によって暖められる。このため、各現像器内のトナーや、クリーニング装置内部の回収トナーが融着してしまう可能性がある。したがって、本実施形態では、ドラム表面温度が約42℃となるように制御を行っている。なお、面状発熱ヒータ21は、装置1がスタンバイ状態であっても常に加熱を行っている。これは、画像形成を行っていない場合に感光ドラム2の表面に付着した放電生成物が周囲の水分を吸収することを防止して、次に画像形成を行う場合に画像流れが生じることを防止するためである。但し、本体の電源がオフされ、更に電源のコンセントが抜かれた場合にはヒータ21による加熱が停止される。
【0032】
また、本実施形態の画像形成装置1は、環境温度検知手段である外気温湿度センサ11を有する。外気温湿度センサ11は、図示しない本体電源がONされ、CPU200が起動されて以降、常に外気(装置外)の温湿度を検知し続ける。なお、環境温度検知手段は、装置内の温度を検知するものでも良い。何れにしても、画像形成装置1が置かれている環境を検知する。また、定着装置10の温度を検知する定着部温度検知手段である定着部温度センサ103を有する。定着部温度センサ103は、加熱ローラ101の表面温度を検知する。そして、このセンサ103の検知結果に基づいて、定着制御器104により定着装置10の温度を制御する。具体的には、加熱ローラ101の温度が定着温度となるように制御する。
【0033】
このように構成される本実施形態の画像形成装置1は、CPU200により次のような制御を行う。まず、中間転写ベルト6が回転しない状態で一定の期間以上、感光ドラム2が面状発熱ヒータ21により加熱されている場合には、画像形成をせずに一定の期間、中間転写ベルト6を回転させる空回転動作を行う。即ち、感光ドラム2の面状発熱ヒータ21により中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8に温度ムラが生じると想定される場合(第1の条件を満たす場合)には、温度ムラが緩和されると想定されるまで(第2の条件を満たすまで)空回転動作を行う。
【0034】
第1の条件とは、定着温度(例えば190℃)まで加熱された定着装置10の温度が、装置がスタンバイ状態になるなどして低下して、定着部温度センサ103が、予め設定された低温定着部温度未満(例えば100℃未満)の温度を検知することである。
【0035】
面状発熱ヒータ21は、コンセントが抜かれない限り常に加熱されているため、定着装置10の温度が第1の条件を満たすまでの間、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の感光ドラム2と対向する部分は、それぞれ加熱され続ける。したがって、中間転写ベルト6と一次転写ローラ8のこの対向部分は、それぞれ他の部分に比べて温度が高くなって、全体として温度ムラが生じている。
【0036】
本実施形態の場合、このような温度ムラ生じた状態で、中間転写ベルト6を空回転動作させている。具体的には、CPU200により、画像形成動作をさせずに、駆動ローラ61のモータMを駆動させ、中間転写ベルト6を第2の条件を満たすまで回転させる。この際、二次転写外ローラ65を離間させておいても良い。中間転写ベルト6が回転すると、一次転写ローラ8も従動回転する。なお、感光ドラム2も回転させて、中間転写ベルト6と摺接して表面が傷つくことを防止する。何れにしても、中間転写ベルト6が回転することにより、中間転写ベルト6の全周及び一次転写ローラ8の全周が、感光ドラム2内の面状発熱ヒータ21により加熱される。一方、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8のそれぞれの温度が高い部分は、回転時に放熱される。この結果、全体として温度分布が均一化される傾向となる。
【0037】
特に、本実施形態の場合、第2の条件を満たすまで中間転写ベルト6を回転させて、温度分布の均一化を促進させ、温度ムラを防止する。この第2の条件としては、定着装置10が再度加熱され、定着部温度センサ103が、予め設定された高温定着部温度(例えば190℃)を検知するまでとする。この高温定着部温度は定着温度とすることが好ましい。この高温定着部温度に到達する時間は、定着装置10を加熱するヒータの性能にもよるが、定着装置10が定着を開始できる温度に到達すれば、機内の温度も上昇しており、中間転写ベルト6の回転も温度ムラの緩和に対し十分に行われていると考えられる。また、定着装置10の温度を定着可能な定着温度まで上昇させる工程は、画像形成のためには必須であり、本実施形態は、この時間を利用して中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の温度ムラの緩和を行うものである。
【0038】
但し、定着装置10の加熱に要する時間が短い場合には、定着装置10の温度に拘らず、所定時間空回転動作を行わせるようにしても良い。例えば、定着部温度センサ103が100℃未満を検知した時、或は、装置1のタイマが前回画像形成終了時から30分以上たったことを検知した時から30秒間空回転動作を行うようにしても良い。即ち、第2の条件を例えば、10秒、30秒などの所定時間経過時とすることもできる。
【0039】
また、上述のような空回転動作は、画像形成装置1が置かれている環境に応じて行うようにしても良い。例えば、外気温湿度センサ11の検知温度が、予め設定された低温環境温度未満である場合に、空回転動作を行う。即ち、画像形成装置1が置かれている環境が、例えば18℃未満の低温環境である場合、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の感光ドラム2と対向した位置(ニップ部)から外れた部分は、周囲の環境温度とほぼ同じとなる。この結果、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の感光ドラム2と対向し、面状発熱ヒータ21から加熱されている部分と、この部分から外れた部分との温度差が大きくなり、温度ムラがより大きくなる。したがって、この場合に、上述のような空回転動作を行うことが、温度ムラによる画像ムラを抑える上では、特に有効である。なお、低温環境温度は15℃以外に、例えば、20℃、25℃、30℃などとすることもできる。
【0040】
<空回転動作の具体例>
このような本実施形態の具体例の1例について、図2も参照しつつ説明する。この具体例では、所定期間画像形成が行われなかった状態から、最初の画像形成を行う時の動作(初期制御動作)について説明する。即ち、前回の画像形成終了からかなりの時間が経過してから行う制御である。ここで、本実施形態では、初期制御動作は、電源がONとなる場合である。具体的には、メイン電源がOFFからONとなる場合や、スリープモードになっている状態から復帰する場合を含むものである。
【0041】
まず、初期制御動作の概要を説明する。本体電源がONになり、CPU200が起動すると、外気温湿度センサ11によって装置本体の外気温を、また定着部温度センサ103によって定着装置10の温度を検知する。電源ONした直後は、定着装置10を加温し、定着部温度センサ103が120℃を検知すると、前多回転制御を行う。なお、この前多回転制御中も定着装置10の加温は継続する。前多回転制御は、帯電、現像、一次転写の各印加バイアスを決定する制御を順に行うものである。
【0042】
即ち、前多回転制御においては、感光ドラム2、中間転写ベルト(ITB)6、現像装置5を駆動しつつ、帯電ローラ3に印加する帯電ACバイアスを決定する放電電流制御、一次転写ローラ8に印加する一次転写バイアスを決定するATVC制御などを行う。即ち、この制御中は、感光ドラム2及び中間転写ベルト6が回転し続ける。そして、帯電ローラ3や一次転写ローラ8の抵抗変動に対してその時々で最適なバイアスを決定する。前多回転制御が終了した後は、加熱ローラ101の表面温度が所定の定着温度である190℃になるまで、定着装置10の加温のみを行う。このような初期制御動作が終了した後は、前述したような画像形成動作(プリントアウト)が可能になる。即ち、初期制御動作を行っている間は、画像形成を行わない。
【0043】
本具体例の場合、上述の初期制御動作の際に、所定の条件下で空回転動作を行うものである。まず、図2に示すように、電源がONされ(或はスタンバイ状態が解除され)、外気温湿度センサ11により外気温湿度を検知する(S1)。そして、外気温が低温環境温度(18℃)未満であると、画像形成装置1が低温環境にあるものと判断する。次に、定着部温度センサ103が定着装置10の温度を検知する(S2)。そして、この検知温度が低温定着部温度(100℃)未満の場合には、定着装置10への通電が停止してから、十分時間が経過したことで、定着装置10が冷却されたものと判断する。定着装置10への通電が停止される場合として、例えば、電源が落とされる、或は、スタンバイ状態になるなど前回の画像形成が終了してから所定期間経過した場合がある。定着装置10への通電が停止してから十分時間が経過した場合には、画像形成装置本体内部には定着装置10のような熱源がなく、また外気温が低いために、本体内部は冷却されているものとみなす。
【0044】
次に、感光ドラム2内部の面状発熱ヒータ(以下、ドラムヒータ)21への通電の有無を、ヒータ制御器23によって検知する(S3)。即ち、ヒータ制御器23は、前回の画像形成が終了してから今までドラムヒータ21の加熱を行っていたか否かを検知する。例えば、前回の画像形成が終了してから、本体の電源が落とされ、更にコンセントが抜かれた場合には、ドラムヒータ21への通電が行われていない。したがって、この場合には、電源がONされた時点でドラムヒータ21への通電が開始されているとしても、通電が行われていなかったと判断する。即ち、ヒータ制御器23は、本体の電源がON(或はスタンバイ状態が解除)された時点で、ドラムヒータ21への通電が行われていたか否かを判断する。
【0045】
ドラムヒータ21へ通電され、ドラムヒータ21が発熱している状態にある場合は、ドラム表面が約42℃となるように暖められている。このため、感光ドラム2に接触する部位の中間転写ベルト6や一次転写ローラ8は、特に感光ドラム2と接触してニップを形成する部分で温められている。外気温および定着装置10が低温の場合には、画像形成装置本体内は電源OFFされて(或はスタンバイ状態になって)から十分に冷却されている。このため、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8のうち、感光ドラム2とニップを形成していない部分は、外気温程度まで冷却されていることが想定される。したがって、この状態は、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8において、感光ドラム2とのニップ部内外での温度ムラが発生するリスクが高いケースである。
【0046】
したがって、このような(特に一次転写ローラ8の)温度ムラを回避するため、初期制御動作において、前多回転制御(S4)が終了して定着装置10を加熱している間、感光ドラム2及び中間転写ベルト6は、回転を停止せずに空回転動作を行う(S5)。この空回転動作は、定着温度が190℃(高温定着部温度)になるまで行う。そして、定着温度が190℃になって定着温度調整が終了したら(S6)、初期制御動作を終了する。
【0047】
このように、前多回転制御が終了した後も、定着温度が190℃となるまで感光ドラム2および中間転写ベルト6を回転し続けることで、温度ムラを持つ一次転写ローラ8が従動で中間転写ベルト6と接触し続ける。このために、中間転写ベルト6および一次転写ローラ8の両方の温度ムラが緩和される。延いては、一次転写ローラ8の温度ムラによって発生する抵抗ムラによって画像ムラが発生することを有効に回避することが可能となる。
【0048】
一方で、ヒータ制御器23がドラムヒータ21に通電されていないことを検知(S3)した場合には、初期制御動作において、前多回転制御(S4a)の終了後は、感光ドラム2及び中間転写ベルト6の回転を停止して、定着装置10に加温のみ行う(S5a)。即ち、上記のような感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続ける制御は行わない。これは、ドラムヒータ21に通電されていないため、画像形成装置本体内においては、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8と同様に、感光ドラム2も冷却されているためである。したがって、この場合には、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8の、感光ドラム2とのニップ部においては温度ムラは発生せず、均一に冷却されているため、画像ムラは発生しない。
【0049】
更に、外気温が18℃未満の低温環境下においても、電源ON時点での定着温度が100℃以上と検知(S2)された場合には、定着装置10への加熱のみを行う一方で(S7)、前多回転制御や、感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続ける制御は行わない。これは、定着装置10が、加熱ローラ101の温度が100℃を上回る程度に保温されている状態では、画像形成装置1が電源OFFされてから、それほど長時間にわたって放置されていなかったものとみなすことができるためである。
【0050】
上述のように、ドラムヒータ21に通電されて感光ドラム2が暖められている状態で放置すると、感光ドラム2とニップを形成している中間転写ベルト6及び、特に一次転写ローラ8が、ニップ部だけで暖められて温度ムラを発生するリスクがある。これに対して、放置時間が短い場合においては、一次転写ローラ8などには大きな温度ムラは発生していないものと想定される。したがって、電源OFFされてからの放置時間が長くない場合においては、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8の温度ムラによる画像ムラのリスクは低いと判断し、感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続ける制御は行わない。
【0051】
また、前多回転制御は作像条件を決定するための制御であり、前述のとおり、帯電ローラ3や一次転写ローラ8の抵抗変動に対して、その時々で常に最適な印加バイアスを決定するための制御である。帯電ローラ3や一次転写ローラ8は、ゴム基材の導電性ローラであるため、抵抗が雰囲気の温湿度に強く依存する。定着装置10のような熱源を本体内に含有する画像形成装置1においては、電源ONしてから使用し続けることで本体内が定着装置10の輻射熱で暖められ、昇温する。このために、帯電ローラ3や一次転写ローラ8も電源ONされてから使用し続けることで抵抗変動が発生する。
【0052】
したがって、ローラの抵抗によって最適値が変動する帯電ACバイアスや一次転写バイアスについては、電源ONされた直後の前多回転制御によって最適値を設定した後は、使用状況に応じて変動する抵抗値に合わせて設定値を変更し続ける必要がある。また、電源OFFされてから長時間放置されることでも抵抗値変動が発生するために電源ONしたタイミングで、再度前多回転制御によって最適値に設定する必要がある。
【0053】
しかしながら、電源ONのタイミングで定着装置10が100℃以上であり、電源OFFされてからそれほど長時間放置されていない場合においては、本体内部の温湿度には大きな変動はない。したがって、帯電ローラ3や一次転写ローラ8の抵抗値も大きく変動していないものとみなすことができる。このため、定着温度が100℃以上である場合には、電源ON直後の前多回転制御は行わなず、前回画像形成動作時に設定したバイアス設定で画像形成を行う。これは、ユーザーが電源ONした直後に必要の無い制御時間を極力減らすことで本体の生産性とユーザビリティーを向上することを目的とするものである。
【0054】
一方、外気温度が18℃以上であれば(S1)、定着温度の検知を行い(S2a)、定着温度が100℃未満であれば、前多回転制御を行い(S4b)、感光ドラム2及び中間転写ベルト6の回転を停止して、定着装置10に加温のみ行う(S5b)。これは、外気温度が高いため、画像形成装置本体内においては、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8の感光ドラム2とのニップ部外の温度も、環境温度に応じて高くなっているためである。したがって、この場合には、中間転写ベルト6や一次転写ローラ8の、感光ドラム2とのニップ部においては温度ムラが小さく、画像ムラは発生しにくい。
【0055】
更に、外気温が18℃以上の高温環境下において、電源ON時点での定着温度が100℃以上と検知(S2a)された場合には、定着装置10への加熱のみを行う一方で(S7a)、前多回転制御や感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続ける制御は行わない。これは、上述したように、定着装置10が、加熱ローラ101の温度が100℃を上回る程度に保温されている状態では、画像形成装置1が電源OFFされてから、それほど長時間にわたって放置されていなかったものとみなすことができるためである。何れにしても、定着温度が190℃になって定着器温度調整が終了したら(S6a)、初期制御動作を終了する。
【0056】
本実施形態によれば、上述のように画像形成せずに中間転写ベルト6を回転させる空回転動作を第2の条件を満たすまで行うため、この間に、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8の温度ムラを十分に緩和することができる。これらの温度ムラを緩和できれば温度に基づく抵抗ムラも緩和できるため、この温度ムラに起因する画像ムラを防止できる。また、このような温度ムラの緩和のために特別な部材を追加する必要がなく、画像ムラ防止のためのコスト増大を防止できる。
【0057】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図3を用いて説明する。なお、本実施形態は、上述の第1の実施形態と、第2の条件を、一次転写ローラ8の表面温度を検知して定める点が異なる。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略若しくは簡略にし、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0058】
本実施形態の場合、一次転写ローラ8の表面温度を検知する転写部温度検知手段である転写部温度センサ82を有する。この転写部温度センサ82は、一次転写ローラ8の近傍に配置され、一次転写ローラ8の表面温度を電源ONされてから常に監視する。また、転写部温度センサ82の検知結果は、CPU200に送られる。CPU200は、転写部温度センサ82の検知結果を常に監視し、転写部温度センサ82が検知する温度の幅が、予め設定された設定範囲内に収束するまで、空回転動作を行う。即ち、本実施形態の場合、一次転写ローラ8の温度の収束が第2の条件となる。
【0059】
例えば、前述の図2のS1で外気温が18℃未満、S2で定着温度が100℃未満、S3でドラムヒータ21が通電されている場合、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8に温度ムラが生じている。この状態で、S4で前多回転制御を行い、S5で感光ドラム2及び中間転写ベルト6を回転したまま定着温度制御を行うと、一次転写ローラ8の回転によりこの一次転写ローラ8の温度ムラが転写部温度センサ82により検知される。この際、CPU200が、例えば、1秒や2秒などの所定時間毎に、転写部温度センサ82が検知する温度の極大値及び極小値を監視する。そして、この極大値と極小値が予め設定された設定範囲内、例えば、目標温度に対し±5℃、±3℃、±1℃などの温度の範囲内に収束すれば、感光ドラム2及び中間転写ベルト6の回転を停止し、空回転動作を終了する。
【0060】
なお、温度の幅が設定範囲内に収束しているか否かの判断は、極大値と極小値の比率が所定の設定比率以下であるかどうかで判断しても良い。例えばこの比率が1.3以下であれば温度が設定範囲内に収まっていると判断する。
【0061】
本実施形態によれば、一次転写ローラ8自体の温度ムラを検知して空回転動作を行うため、温度ムラをより高精度に緩和できる。
【0062】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図4を用いて説明する。なお、本実施形態は、上述の第1の実施形態と、第2の条件を、中間転写ベルト6の表面温度を検知して定める点が異なる。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略若しくは簡略にし、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0063】
本実施形態の場合、中間転写ベルト6の表面温度を検知するベルト温度検知手段であるベルト温度センサ66を有する。このベルト温度センサ66は、中間転写ベルト6の近傍に配置され、中間転写ベルト6の表面温度を電源ONされてから常に監視する。また、ベルト温度センサ66の検知結果は、CPU200に送られる。CPU200は、ベルト温度センサ66の検知結果を常に監視し、ベルト温度センサ66が検知する温度の幅が、予め設定された設定範囲内に収束するまで、空回転動作を行う。即ち、本実施形態の場合、中間転写ベルト6の温度の周速が第2の条件となる。
【0064】
例えば、前述の図2のS1で外気温が18℃未満、S2で定着温度が100℃未満、S3でドラムヒータ21が通電されている場合、中間転写ベルト6及び一次転写ローラ8に温度ムラが生じている。この状態で、S4で前多回転制御を行い、S5で感光ドラム2及び中間転写ベルト6を回転したまま定着温度制御を行うと、中間転写ベルト6の回転によりこの中間転写ベルト6の温度ムラがベルト温度センサ66により検知される。この際、CPU200が、例えば、1秒や2秒などの所定時間毎に、ベルト温度センサ66が検知する温度の極大値及び極小値を監視する。そして、この極大値と極小値が予め設定された設定範囲内、例えば、目標温度に対し±5℃、±3℃、±1℃などの温度の範囲内に収束すれば、感光ドラム2及び中間転写ベルト6の回転を停止し、空回転動作を終了する。
【0065】
なお、温度の幅が設定範囲内に収束しているからか否かの判断は、極大値と極小値の比率が所定の設定比率以下であるかどうかで判断しても良い。例えばこの比率が1.3以下であれば温度が設定範囲内に収まっていると判断する。
【0066】
本実施形態によれば、中間転写ベルト6自体の温度ムラを検知して空回転動作を行うため、温度ムラをより高精度に緩和できる。
【0067】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図5ないし図7を用いて説明する。なお、本実施形態は、上述の第1の実施形態と、第2の条件を、一次転写ローラ8に流れる電流を検知して定める点が異なる。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略若しくは簡略にし、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0068】
本実施形態の場合、一次転写ローラ8に流れる電流を検知する電流検知手段である電流計83を有する。この電流計83は、一次転写ローラ8と一次転写ローラ8に一次転写バイアスを印加する電源Eとの間に配置され、一次転写ローラ8に流れる電流を電源ONされてから常に監視する。また、電流計83の検知結果は、CPU200に送られる。CPU200は、電流計83の検知結果を常に監視し、電流計83が検知する電流値の幅が、予め設定された設定範囲内に収束するまで、空回転動作を行う。即ち、本実施形態の場合、一次転写電流8に流れる電流の収束が第2の条件となる。
【0069】
このような本実施形態について、より具体的に説明する。まず、上述の第1の実施形態の場合、外気温が18℃未満の低温環境であること、かつ定着温度が100℃未満であること、またドラムヒータ21に通電されていることを検知した場合に、前多回転制御終了後に、定着温度が190℃となるまで空回転動作を行う。これに対して、本実施形態では、感光ドラム2と中間転写ベルト6を空回転する際に、感光ドラム2の帯電と、一次転写ローラ8へのバイアス印加を行う。
【0070】
帯電ローラ3には、画像形成時と同様の帯電バイアスを印加し、感光ドラム2を均一に一次帯電させる。本実施形態においては、帯電バイアスとしてDC成分−700VにAC成分(2.3kVp−p、2.4kHz、Sin波)を重畳させたAC波形を印加する。また、一次転写ローラ8には800Vを印加する。
【0071】
上記のバイアスを帯電ローラ3、一次転写ローラ8に印加した状態で、感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続けると、一次転写ローラ8に電流が流れ続ける。図6に示すように、このときの電流を電流計83でモニタし続け、回転開始より所定時間(図示の例の場合、1秒)毎に電流値の極大値と極小値を算出し、極大値と極小値の比を算出する。感光ドラム2と一次転写ローラ8間の電位差が一定の状態で、一次転写ローラ8に流れる電流値の極大値と極小値の比率は、一次転写ローラの抵抗ムラを測定していることと同等である。
【0072】
また、本実施形態においては、図7に示すように一次転写電流(一次転写ローラ8に流れる電流)の設定値を定めている。一次転写電流が低いほど、転写残トナー量が増える一方で、一次転写電流が高くなるほど再転写トナー量が増えてしまう。このため、転写残トナー量および再転写トナー量がともに最も少なくなる電流値を、一次転写でのターゲット電流として定めている。一方で、一次転写ローラ8の抵抗ムラや外径フレなどのローラ要因、あるいは高圧基板出力のフレなどに起因して、必ずしもターゲット電流どおりの電流が常時出力されるわけではない。
【0073】
電流変動は、低電流側にずれることで転写残トナーが増えて再転写トナー量が減少する。反対に高電流側では転写残トナーが減るものの再転写トナー量が増えるために、最終画像での濃度変動が発生するリスクがある。しかしながら、転写残トナーおよび再転写トナーのトナー残濃度が反射濃度として0.1を切る濃度であれば画像ムラとして顕像化しない濃度領域である。したがって、転写残トナー、再転写トナーが0.1の濃度を切る範囲であれば一次転写電流のフレが許容されるため、一次転写電流のラチチュードとみなすことができる。
【0074】
本実施形態においては、例えば、一次転写電流は32μAをターゲットして、±4.5μAのラチチュードがあるため、電流のフレとしては±4.5/32=±14%のフレが許容されるとする。したがって、一次転写ローラの電流ムラとして、極大値と極小値の比率が、(32+4.5)/(32−4.5)=36.5/27.5≒1.33以下であれば、画像の濃度ムラとして顕像化しない。このため、本実施形態では、一次転写ローラ8に流れる電流値の極大値と極小値の比率を、予め設定された設定比率以下である、1.33以下、より好ましくは1.30以下として、画像ムラが発生することを回避する。
【0075】
このように本実施形態では、帯電ローラ3、一次転写ローラ8に印加した状態で、感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続けると、一次転写ローラに電流が流れ続ける。そして、この際に1秒や2秒などの所定時間毎に極大値および極小値を測定し、極大値と極小値の比率が所定の設定比率以下となる(第2の条件を満たす)まで、感光ドラム2と中間転写ベルト6を回転し続ける。これにより、一次転写ローラ8に流れる電流ムラが、画像ムラを発生させないラチチュードの範囲に収めることができ、より確実に一次転写ローラ8の温度ムラに起因する画像ムラを回避することが可能となる。勿論、この間に中間転写ベルト6の温度ムラが緩和されることは言うまでもない。
【0076】
なお、上述の各実施形態では、本発明を複数の現像器をドラムに支持して、順次感光ドラムに対向させて現像を行う1ドラム方式の構成に適用した場合について説明した。但し、本発明は、複数の感光ドラム(像担持体)をベルトの回転方向に並べて配置し、それぞれに各色の現像器を配置するタンデム型の画像形成装置にも適用できる。この場合、各感光ドラムにそれぞれ転写ローラが対向して配置されるため、転写ローラの温度を検知したり、転写ローラに流れる電流を検知して空回転動作の制御を行う場合には、それぞれに温度センサ或は電流計を配置するようにしても良い。また、これらは、何れか1個或は複数(感光ドラムよりも少ない数)の転写ローラに配置し、全体を制御するようにしても良い。また、全部或は複数に配置する場合には、全てのセンサ或は電流計で設定範囲内に収まるまで空回転動作を行うようにしても良いし、平均値から空回転動作の制御を行うようにしても良い。また、本発明は、上述のような多色の画像形成装置に限らず、1色の画像形成装置にも適用可能である。
【0077】
また、本発明は、上述のような中間転写方式の画像形成装置だけではなく、直接転写方式の画像形成装置にも適用可能である。即ち、感光ドラム(像担持体)と対向して配置されるベルトを記録材搬送ベルトとする。この記録材搬送ベルトは記録材を吸着し、感光ドラムとのニップ部を通過させる。そして、感光ドラムに形成されたトナー像を直接記録材に転写し、加熱定着後、機外に排出する。この場合にも、感光ドラムと記録材搬送ベルトを挟んで転写ローラが対向して配置される。その他の構成は、上述した中間転写方式で説明した場合と同様である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・画像形成装置、11・・・外気温湿度センサ(環境温度検知手段)、2・・・感光ドラム(像担持体)、21・・・面状発熱ヒータ(ドラムヒータ、加熱部材)、6・・・中間転写ベルト(ベルト)、66・・・ベルト温度センサ(ベルト温度検知手段)、8・・・一次転写ローラ(転写ローラ)、82・・・転写部温度センサ(転写部温度検知手段)、83・・・電流計(電流検知手段)、10・・・定着装置、103・・・定着部温度センサ(定着部温度検知手段)、200・・・CPU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、該像担持体を加熱する加熱部材と、前記像担持体と対向して配置され、回転駆動自在な無端状のベルトと、該ベルトを介して前記像担持体と対向して配置され、該ベルトと当接して回転する転写ローラと、記録材に転写されたトナー像を記録材に加熱定着する定着装置と、前記定着装置の温度を検知する定着部温度検知手段と、を備え、
前記転写ローラに転写バイアスを印加することにより、前記像担持体に形成されたトナー像をベルト又はベルトにより搬送される記録材に転写する画像形成装置において、
前記像担持体が前記加熱部材により加熱され、トナー像を記録材に加熱定着する定着温度まで加熱された前記定着装置の温度が低下して、前記定着部温度検知手段が、予め設定された低温定着部温度未満の温度を検知する第1の条件を満たす場合には、画像形成をせずに前記ベルトを回転させる空回転動作を前記ベルト及び前記転写ローラの温度ムラが緩和される第2の条件を満たすまで行う制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の条件は、前記定着装置が再度加熱され、前記定着部温度検知手段が、予め設定された高温定着部温度を検知することであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写ローラの表面温度を検知する転写部温度検知手段を有し、
前記第2の条件は、前記転写部温度検知手段が検知する温度の幅が、予め設定された設定範囲内に収束することであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルトの表面温度を検知するベルト温度検知手段を有し、
前記第2の条件は、前記ベルト温度検知手段が検知する温度の幅が、予め設定された設定範囲内に収束することであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写ローラに流れる電流を検知する電流検知手段を有し、
前記第2の条件は、前記電流検知手段が検知する電流の幅が、予め設定された設定範囲内に収束することであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の条件は、前記電流検知手段が検知する電流の極大値と極小値との比率が、予め設定された設定比率以下となることであることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
装置内又は装置外の温度を検知する環境温度検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境温度検知手段の検知温度が、予め設定された低温環境温度未満である場合に、前記空回転動作を行うことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−175156(P2011−175156A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39953(P2010−39953)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】