説明

画像形成装置

【課題】全方向のサイズ検知を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】トレイの開閉を検出する開閉検出手段と、トレイ内の用紙の有無を検出する用紙有無検出手段と、用紙の端面を検出する端面検出手段と、用紙の端面を揃えるフェンスと、開閉検出手段によりトレイが閉じられたことを検出し、用紙有無検出手段により用紙が有ることを検出したときに、フェンスを移動し、端面検出手段により当該用紙の端面を検出したときに当該フェンスの位置を自動的に決定する位置決定手段と、位置決定手段によるフェンスの移動量に基づき、用紙の主走査方向のサイズと副走査方向のサイズとを自動で測定するサイズ測定手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を給紙する給紙トレイを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリンタやMFP(Multifunction Peripheral:多機能周辺装置)などの画像形成装置により印刷などを行う際、目的に応じて出力用紙の変更を行ったりする。このため、画像形成装置では、給紙の多様化が求められている。
【0003】
給紙の多様化を行うために、給紙トレイの多段構成にするという方法もあるが、コストが高くなってしまう。よって、なるべく1つの給紙トレイを用いるだけで多様な用紙を印刷できることが望ましい。そこで、1つの給紙トレイのみでも、用紙の変更を任意にできるような構成を備えることが求められている。
【0004】
そのような構成の例として、給紙トレイ内にフェンスを設置する方法がある。この方法では、印刷用紙を変更する場合、ユーザが手動で、そのフェンスを移動して、フェンスを用紙に合わせる。このようにすることにより、様々なサイズの用紙を使用する際でも、用紙を揃えることができ、用紙の揃えズレによる画像位置ずれの防止や、紙詰まりの防止をすることができる。例えば、特許文献1には、用紙変更時のフェンス設定を簡素化するために、サイド方向のフェンス、エンド方向のフェンスの移動とサイズ表示部による用紙サイズの表示とを連動させる構成が開示されている。
【0005】
しかし、上記の方法では、手動によってフェンスを移動する必要があり、ユーザに手間をかけさせてしまう。そこで、特許文献2では、フェンスにセンサを備えることで、設置した用紙のサイズを自動検出するようにし、サイド方向のフェンスの位置を用紙サイズに応じて自動調節できるようにした構成が開示されている。この構成では、ユーザの手動操作を必要としない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で開示された構成では、主走査、副走査の両方向の自動サイズ検知ができていない。また、フェンスに備えたセンサによる自動サイズ検知では、用紙長さの値そのものを測定するのではなく、その長さが収まる範囲を測定する。よって、おおよその長さしかわからないため、近傍サイズに近似するしかないが、特許文献2では、サイズ測定後の定形サイズへの近似の方法が規定されていない。また、フェンスに備えたセンサによる自動サイズ検知では、定形サイズでない用紙を設定する際には自動で用紙サイズを検知できないが、特許文献2では、定形以外の用紙設定時のサイズ検知については規定されていない。このため、特許文献2に開示された構成では、サイズ検知精度に難がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、全方向のサイズ検知を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明における画像形成装置は、トレイの開閉を検出する開閉検出手段と、前記トレイ内の用紙の有無を検出する用紙有無検出手段と、前記用紙の端面を検出する端面検出手段と、前記用紙の端面を揃えるフェンスと、前記開閉検出手段により前記トレイが閉じられたことを検出し、前記用紙有無検出手段により前記用紙が有ることを検出したときに、前記フェンスを移動し、前記端面検出手段により当該用紙の端面を検出したときに当該フェンスの位置を自動的に決定する位置決定手段と、前記位置決定手段による前記フェンスの移動量に基づき、前記用紙の主走査方向のサイズと副走査方向のサイズとを自動で測定するサイズ測定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、全方向のサイズ検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置おけるトレイ内の用紙とフェンスとの関係性を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるフェンスと用紙端面検出機構との関係性を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるスキュー検出機構の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるスキュー補正機構の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する。具体的には、給紙トレイ内の用紙変更の処理に際して、以下の特徴を有する。要するに、本発明は、トレイが開く際にサイド方向のフェンス、およびエンド方向のフェンスのホームポジション(そのトレイに収納できる最大用紙サイズよりも広い位置に待機させる)への移動を自動で行ない、トレイが閉じる際にサイド方向のフェンス、およびエンド方向のフェンスのホームポジションから用紙側への移動を自動で行ない、用紙検出時にフェンス位置を確定し、フェンス移動距離からサイズ確定制御を自動で行なうことが特徴になっている。上記特徴について、以下の図面を用いて具体的に解説する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1〜3は参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例を説明する。図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例を示す図である。図1に示す処理動作は、画像形成装置のトレイ内の用紙が補充、変更されたときに、この画像形成装置が行う処理作動の例である。図2は、トレイ内の用紙とフェンスとの関係性を示す図であり、図3は、フェンスと用紙端面検出機構との関係性を示す図である。
【0013】
まず、ユーザによりトレイが引き出される(S100)。トレイが引き出されるに連動し、フェンスは、フェンスのホームポジションに移動する(S200)。ホームポジションは、トレイに様々な用紙サイズを設置できるように印刷可能最大用紙サイズより外側の位置とする。トレイが引き出される動作に連動して、サイドフェンス1およびエンドフェンス2が自動で移動するようなメカ構成が望ましい。これは、構成に書く。
【0014】
ユーザにより引き出されたトレイへの用紙の補給、変更などの作業が行われ、トレイが引き出される前のもとの位置に再セットされる(S300)。
【0015】
システムは、トレイ内に用紙が存在するかどうかを確認する(S400)。再セットされたトレイ内に用紙が存在しない場合は(S400、No)、フェンスを移動させる必要がないため、処理を終了する。
【0016】
再セットされたトレイ内に用紙がある場合は(400、Yes)、システムは、フェンスの位置決め動作を行う(S501〜S503)。この位置決め動作は、サイドフェンス1とエンドフェンス2との両方で行う。
【0017】
モーターの回転動作によりフェンスを用紙側に移動する(S501)。
【0018】
用紙端面を検出したかを判定する(S502)。フェンスは、図3に示すように、用紙の端面を検出する検出機構を備えている。用紙端面の検出がフェンス位置決めの判断ポイントになる。
【0019】
サイドフェンス1の場合は、対となる用紙の左右両端面を検出するまでフェンス位置を決めることはできないが、エンドフェンス2の場合は、対となる片端面は予め所定の固定位置が定まっているため、用紙の片端面を検出することでフェンスの位置を決めることができる。
【0020】
なお、サイドフェンス1で、対となる用紙の左右両端面の検出タイミングが異なる場合は、トレイ内で用紙がずれて置かれていることになるが、両端面を検出するまでフェンスを移動し続けることによって、フェンスの移動に合わせて用紙をスライド動作させることが可能なので、位置ずれを補正して整列させることができる。このとき、各サイドフェンス1のホームポジションからの移動距離は、左右で等距離となる。
【0021】
用紙端面が検出されたら(S502、Yes)、フェンスの残移動距離の微調整後にフェンスを停止させる(S503)。
【0022】
フェンスと用紙との距離が近過ぎる場合、すなわちフェンスが用紙を押し込み過ぎている場合、用紙とフェンスとの間の摩擦により搬送時にジャムを誘発することになる。逆に、フェンスと用紙との距離が遠すぎる場合、用紙が斜めの状態でセットされてしまい、スキューを誘発したりすることになる。
【0023】
よって、フェンスと用紙との距離をどの程度に保つかを微調整してフェンスを停止させることができると有益である。調整方向は縮める方向、広げる方向の両方が可能であることが望ましい。微調整後の最終的なフェンスと用紙との距離を、例えば、図3に示すように、主走査方向:A1[mm]、副走査方向:A2[mm]とした場合は、これらの値を画像形成装置100が備える不揮発性の記憶媒体(例えば、NVRAMなど)に保存する。この保存された値は変更できるようにすると良い。このようにすると、状況に合わせた対応が可能になる。
【0024】
また、フェンスの位置決め制御は、精度良く迅速に行われることが望ましい。ただし、フェンスの移動速度を上げることは位置決めの精度に悪影響を与えることを意味する。よって、この速度を画像形成装置が備える不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAMなど)に保存し、この速度の値を変更できるようにする。このようにすることにより、状況に合わせた対応が可能になる。
【0025】
システムは、用紙サイズの算出処理を行う(S600)。
【0026】
ホームポジションからのフェンスの移動量が算出することにより、用紙サイズを検出することができる。フェンスの移動量は、例えば、フェンス移動速度とフェンス移動時間から算出する。フェンス移動時間をFtime[s]とし、フェンス移動速度をFspeed[mm/s]とし、フェンス移動量をFdistance[mm]とすると、フェンス移動量の算出式は次のようになる。
Ftime × Fspeed = Fdistance
【0027】
また、図2に示すように、自動検出した用紙サイズを主走査:X1[mm]、副走査:X2[mm]とし、フェンスのホームポジションまでの距離を主走査:HP1[mm]、副走査:HP2[mm]とし、フェンス移動量を主走査:F1[mm]、副走査:F2[mm]とし、ステップS107による微調整後の最終的なフェンスと用紙との距離を主走査:A1[mm]、副走査:A2[mm]とすると、用紙サイズの算出式は次のようになる。
X1 = HP1−{ F1+(A1×2) }
X2 = HP2−{ F2+A2 }
【0028】
システムは、サイズ異常判定処理を行う(S701、S702)。
【0029】
ユーザが印刷可能なサイズを設定するとは限らない。このため、算出されたサイズが印刷可能なサイズであるとは限らない。そこで、印刷可能なサイズ範囲に入らない用紙を設定された場合には、ユーザに適切な用紙の再セットを促すことにする。
【0030】
印刷可能サイズかどうかを判定する(S701)。印刷可能なサイズは予めシステムで決まっているので、印刷可能なサイズであるのかどうかの判定は、下記により判定を行う。
【0031】
図2に示すように、自動検出した用紙サイズを主走査:X1[mm]、副走査:X2[mm]とし、印刷可能な最小サイズを主走査:α1[mm]、副走査:α2[mm]とし、印刷可能な最大サイズを主走査:β1[mm]、副走査:β2[mm]とすると、
X1 < α1 、 X1 > β1 X2 < α2 、 X2 > β2
の何れかの式を満たす場合は、印刷可能サイズに該当しない、と判定する。
【0032】
システムが保証する印刷可能サイズに該当しない場合は(S701、No)、ユーザに適切な用紙の再セットを促す(S702)。具体的にはアラートを表示するなどの動作を行う。
【0033】
システムはサイズ確定処理を行う(S801〜S805)。算出サイズから実際に印刷するサイズとして確定する必要がある。
【0034】
定形設定であるのか不定形設定であるのかを確認する(S801)。算出されたサイズには端面検出時の精度や計算精度などによる誤差が含まれている。よって、用紙が定形サイズであった場合、その誤差を無視して定形サイズで近似した方が安定した印刷を行うことができる。
【0035】
不定形サイズ設定であるときは(S801、No)、サイズ確定処理として、不定形サイズの用紙設定を行う(S802)。このときは、先で算出したサイズをそのまま主走査、副走査のサイズとして設定する。この自動検出した用紙サイズを主走査:X1[mm]、副走査:X2[mm]とすると、確定サイズも主走査:X1[mm]、副走査:X2[mm]とする。
【0036】
定型サイズ設定であるときは(S801、Yes)、サイズ確定処理として、定形サイズの用紙設定を行う(S803)。ここでは、算出したサイズが主走査、副走査のどの範囲に収まっているかどうかで最も妥当と判断される定形サイズとして置き換える。
【0037】
自動検出した用紙サイズを主走査:X1[mm]、副走査:X2[mm]とし、定形サイズのサイズを主走査:C1[mm]、副走査:C2[mm]とし、変換マージンをM[mm]とすると、
C1−M < X1 < C1+M C2−M < X2 < C2+M
に従って、X1、X2の両方が式を満たす場合が最も妥当な定形サイズと判断できる。よって、確定サイズは上記の式をともに満たすことを条件とする、主走査:C1[mm]、副走査:C2[mm]とする。
【0038】
なお、C1、C2は、システムが印刷可能である全ての定形サイズの値を順に代入していくことにする。また、Mは、複数の定形サイズが上記式を満たすことのないように、極力小さな値をとるものとする。Mが取り得る値は、端面検出時の精度や計算精度、すなわちメカ構成やハードウェア構成に依存する。よって、変換マージン:M[mm]を画像形成装置が持つ不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAMなど)に保存し、この値を変更できるようにすると、状況に合わせた対応をすることが可能になる。
【0039】
サイズ確定済みかを判断する(S804)。ステップS803において、サイズ確定を行う場合、定形設定で必ずしも一致する定形サイズがあるとは限らない。よって、ステップS113のサイズ確定処理の後に、サイズ確定済みかを判断し、まだ確定しない場合は(S804、No)、次の処理に移る。
【0040】
不定形に変換するかどうかを判定する(S805)。ステップS803において、サイズ確定処理を行っても妥当な定形サイズが見つからない場合、不定形に変換するかどうかを判定する。
不定形に変換する場合は(S805、Yes)、元の設定を不定形に変更し、不定形でのサイズ確定処理を行う(S802)。不定形に変換しない場合は(S805、No)、ユーザに用紙の再セットを促す(S702)。
【0041】
以上の制御により、トレイ内の用紙変更に伴う「フェンス移動制御から用紙サイズ異常検知,サイズ確定処理に渡るまでの全工程」を自動に行うことが可能となる。
【0042】
このように、トレイ内のフェンス移動を自動化することで、用紙変更時のユーザの手間を大幅に省くことができるようになる。また、本実施形態では、フェンス移動の自動化によって全方向の自動サイズ検知が可能になり、さらに、サイズ検知精度が向上する。また、不定形サイズの検知もできる。また、印刷不可能なサイズの用紙が置かれた場合の異常に対応することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
図4、5は、第2の実施形態に係る画像形成装置における処理動作例である。第2の実施形態に係る画像形成装置は、第1の実施形態に係る画像形成装置の構成に、図6に示すように、トレイ内にセットされた用紙が斜めになっているかどうか、つまり、スキューを起こしているかを検出する機構を加えた構成をしている。この構成により、用紙検出する際にスキューが発生している、すなわち用紙が傾いているかどうかを検出し、許容できない量のスキューが発生している場合には、警告や自動補正などの異常制御を行う。このようにすることにより、第2の実施形態は、トレイ内の用紙の置き方によって用紙に対して画像が斜めに傾いて印刷されてしまうスキュー現象を防ぐ。
【0044】
図4に示した処理動作と図1に示した処理動作の違いは、フェンス位置決め動作の部分のみである。つまり、図4に示した処理動作のステップS100〜S400とステップS600〜S805は、図1に示した処理動作のステップS100〜S400とステップS600〜S805と同じである。
【0045】
図4に示した処理動作における位置決め動作は、図1に示した処理動作と異なり、サイドフェンス1とエンドフェンス2の位置決めを並行してやるのではなく、サイドフェンス1、エンドフェンス2の順に行う(S511〜S519)。
【0046】
まず、サイドフェンス1の移動制御を行う(S511〜S516)。
【0047】
サイドフェンス1をホームポジションから用紙方向へ移動する(S511)。モーターの回転動作により用紙側へサイドフェンス1を移動させる。
【0048】
用紙端面を検出したかを判定する(S512)。サイドフェンス1は、図3に示すように、用紙の端面を検出する検出機構を備えている。用紙端面の検出がフェンス位置決めの判断ポイントになる。
【0049】
サイドフェンス1の場合は、対となる用紙の左右両端面を検出するまでフェンス位置を決めることはできない。なお、サイドフェンス1で、対となる用紙の左右両端面の検出タイミングが異なる場合は、トレイ内で用紙がずれて置かれていることになるが、両端面を検出するまでフェンスを移動し続けることによって、フェンスの移動に合わせて用紙をスライド動作させることが可能なので、位置ずれを補正して整列させることができる。このとき、各サイドフェンス1のホームポジションからの移動距離は、左右で等距離となる。
【0050】
用紙端面が検出されたら(S512、Yes)、サイドフェンス1の残移動距離の微調整後にサイドフェンス1を停止させる(S513)。
【0051】
サイドフェンス1と用紙との距離が近過ぎる場合、すなわちサイドフェンス1が用紙を押し込み過ぎている場合、用紙とサイドフェンス1との間の摩擦により搬送時にジャムを誘発することになる。逆に、サイドフェンス1と用紙との距離が遠すぎる場合、用紙が斜めの状態でセットされてしまい、スキューを誘発したりすることになる。
【0052】
よって、サイドフェンス1と用紙との距離をどの程度に保つかを微調整してサイドフェンス1を停止させることができると有益である。調整方向は縮める方向、広げる方向の両方が可能であることが望ましい。微調整後の最終的なサイドフェンス1と用紙との距離を、例えば、図3に示すように、主走査方向:A1[mm]、副走査方向:A2[mm]とした場合は、これらの値を画像形成装置100が備える不揮発性の記憶媒体(例えば、NVRAMなど)に保存する。この保存された値は変更できるようにすると良い。このようにすると、状況に合わせた対応が可能になる。
【0053】
また、サイドフェンス1の位置決め制御は、精度良く迅速に行われることが望ましい。ただし、フェンスの移動速度を上げることは位置決めの精度に悪影響を与えることを意味する。よって、この速度を画像形成装置が備える不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAMなど)に保存し、この速度の値を変更できるようにする。このようにすることにより、状況に合わせた対応が可能になる。
【0054】
スキュー算出処理を行う(S514)。ユーザの用紙の置き方によっては、用紙が斜めの状態、いわゆるスキューが発生している可能性がある。そこで、本実施形態では、サイドフェンス1の移動時における用紙端面の検出時にスキュー量を算出する。スキュー量を算出する機構として、例えば、図6(a)に示す機構と図6(b)に示す機構とが考えられる。
【0055】
図6(a)に示すように、同一端面に端面検出機構が複数ある場合、用紙がずれて置かれていれば、すなわちスキューが発生していれば、検出機構によって端面を検出するまでに時間差が生まれる筈である。
【0056】
例えば、検出機構数を1端面において2つとして考えると、このときの検出距離の差からスキュー量を求めることができる。検出距離差をSdif[mm]とし、検出時間差をSdiftime [s]とし、フェンス移動速度をFspeed[mm/s]とすると、検出距離差の算出式は次のようになる。
Sdiftime × Fspeed = Sdif
【0057】
スキュー量を、例えば、角度で定義するならば、スキュー量をθ[degree]とし、2つの検出機構の距離をDtoD[mm]とすると、スキュー量の算出式は次のようになる。
θ = arctan( Sdif / DtoD )
【0058】
また、図6(b)に示すように、用紙の端面に合わせてサイドフェンス1が回転する機構の場合、用紙がずれて置かれていれば、すなわちスキューが発生していれば、用紙とフェンスとの接触時に用紙に沿ってフェンスが回転する。スキュー量を、例えば、角度で定義するならば、このときの回転角度がスキュー量となる。スキュー量をθ[degree]とし、サイドフェンス1の中心軸の回転距離をFl、フェンスの中心軸からフェンス端までの距離をFrとするとスキュー量の算出式は次のようになる。
Fl = 2π × Fr × ( θ / 360 )
⇔ θ = ( 180 × Fl ) / ( π × Fr )
【0059】
スキュー許容内かを判定する(S515)。算出したスキュー量が許容内かどうか判定する。ユーザが少しも斜めにならずに用紙を置くのは非常に難しいため、多少斜めになった状態で置かれても画像形成装置で斜めに置かれたスキュー状態を印刷中に補正する処理が入っているのが一般的である。ただし、画像形成装置に予め入っている印刷中にスキュー状態を補正する一般的な処理では、補正可能な量が決まっているばかりか画像形成装置の機構や用紙の条件などに依存してしまう。よって、算出したスキューが印刷中に補正される量以下になっていることが望ましく、スキュー量が許容範囲内かそうでないかを判断する必要がある。
【0060】
スキュー量をθ[degree]とし、スキュー許容値をγとすると、
θ <= γ
であるときは、スキュー許容内であると判定する。また、スキュー許容値γを画像形成装置が持つ不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAMなど)に保存し、この値を変更できるようにすると良い。このようにすると、状況に合わせた対応が可能になる。
【0061】
算出したスキュー量が許容値より比較して許容外となったら(S515、No)、ユーザに用紙の再セットを促す(S702、図4)。ただし、再セットを促さない設定がなされていたら(S516、No)、そのままエンド方向のフェンス移動処理に移る。
【0062】
また、フェンス移動制御に伴うスキュー補正処理がある場合は、算出したスキュー量を補正するために、図7のようなトレイ底板の回転台によって用紙を回転させる(S520)。また、底板回転後はサイドフェンス1と用紙との隙間が出来てしまう可能性があるために、サイドフェンス1の位置決め処理をもう一度行う。
【0063】
次に、エンドフェンス2の移動制御を行う(S517〜S519)。
【0064】
エンドフェンス2をホームポジションから用紙方向へ移動する(S517)。
【0065】
用紙端面を検出したかを判定する(S518)
【0066】
用紙端面が検出されたら(S518、Yes)、エンドフェンス2の残移動距離の微調整後にエンドフェンス2を停止させる(S519)。用紙端面の検出がフェンス位置決めの判断ポイントになる。エンドフェンス2の場合は対となる片端面は予め所定の固定位置が定まっているため用紙の片端面を検出することでエンドフェンス2の位置を決めることができる。ただし、スキュー補正処理を行った場合は、用紙搬送方向の先端側端面と所定の固定位置との間に回転による隙間が出来てしまう可能性があるために固定位置にもセンサを設けて、先端と後端との両端面を検出するまでフェンス移動を行い、エンドフェンス2の押力によって用紙先端を固定位置に移動させ空いた隙間を埋めるようにする。
【0067】
また、スキュー検出処理を行う場合は、フェンスの移動制御をサイドフェンス1、エンドフェンス2と順に実行していく必要があるため、フェンス移動制御の時間が余計にかかってしまう。用紙の置き方を丁寧に置けばこのようなスキュー検出処理や補正処理を必要としないユーザも考えられる。このようなユーザはサイドフェンス1。エンドフェンス2の移動制御を同時に行えるためフェンス移動制御の時間を短縮化できる。よって、これらの制御の実行有無を画像形成装置が持つ不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAMなど)に保存し、この値を変更できるようにしても良い。このようにすると、状況に合わせた対応が可能になる。
【0068】
このように、第2の実施形態により、トレイ内のフェンス移動を自動化し用紙サイズを自動確定することに加えて、用紙に対して画像が斜めに傾いて印刷されてしまうスキュー現象の異常を検出および補正することが可能になる。このため、トレイ内への用紙補給時に、ユーザによる用紙の置き方が斜めになったとしても、印刷用紙には斜めにならず画像を印字することが、すなわちスキュー現象を防止することが可能になる。
【0069】
上述した実施形態における処理動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0070】
なお、ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムが格納されているROM(Read Only Memory)から、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリ(RAM)にプログラムを読み込んで実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
【0071】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROMに予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、MO(Magneto Optical)ディスク等の光磁気ディスクなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。
【0072】
このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することが可能である。
【0073】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送したりし、コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0074】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【0075】
また、上記実施形態で説明したシステムは、複数の装置の論理的集合構成にしたり、各装置の機能を混在させたりするように構築することも可能である。
【0076】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【0077】
また、本発明における画像形成装置は、前記用紙と接触したときに前記フェンスを回転する回転手段と、前記フェンスの回転量を検出する回転量検出手段と、前記回転量検出手段により検出された前記フェンスの回転量に基づき、スキュー量を測定するスキュー量測定手段と、をさらに有するようにしても良い。
【0078】
また、本発明における画像形成装置は、前記用紙を回転させる用紙回転手段と、前記スキュー量測定手段により測定されたスキュー量が所定の値より大きいときに、前記用紙回転手段により前記用紙を回転し、スキューを自動補正するスキュー補正手段と、をさらに有するようにしても良い。
【0079】
また、本発明における画像形成装置は、前記サイズ測定手段により測定された前記用紙の主走査方向のサイズと副走査方向のサイズとがともに印刷可能なサイズであるかを判定する印刷可否判定手段をさらに有するようにしても良い。
【0080】
また、本発明における画像形成装置は、前記開閉検出手段により前記トレイが開かれたことを検出したときに、前記フェンスを所定の位置まで自動で移動する手段をさらに有するようにしても良い。
【符号の説明】
【0081】
1 サイドフェンス
2 エンドフェンス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開平08−119467号公報
【特許文献2】特許4230030号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイの開閉を検出する開閉検出手段と、
前記トレイ内の用紙の有無を検出する用紙有無検出手段と、
前記用紙の端面を検出する端面検出手段と、
前記用紙の端面を揃えるフェンスと、
前記開閉検出手段により前記トレイが閉じられたことを検出し、前記用紙有無検出手段により前記用紙が有ることを検出したときに、前記フェンスを移動し、前記端面検出手段により当該用紙の端面を検出したときに当該フェンスの位置を自動的に決定する位置決定手段と、
前記位置決定手段による前記フェンスの移動量に基づき、前記用紙の主走査方向のサイズと副走査方向のサイズとを自動で測定するサイズ測定手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙と接触したときに前記フェンスを回転する回転手段と、
前記フェンスの回転量を検出する回転量検出手段と、
前記回転量検出手段により検出された前記フェンスの回転量に基づき、スキュー量を測定するスキュー量測定手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙を回転させる用紙回転手段と、
前記スキュー量測定手段により測定されたスキュー量が所定の値より大きいときに、前記用紙回転手段により前記用紙を回転し、スキューを自動補正するスキュー補正手段と、をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記サイズ測定手段により測定された前記用紙の主走査方向のサイズと副走査方向のサイズとがともに印刷可能なサイズであるかを判定する印刷可否判定手段をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記開閉検出手段により前記トレイが開かれたことを検出したときに、前記フェンスを所定の位置まで自動で移動する手段をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−190040(P2011−190040A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57398(P2010−57398)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】