説明

画像形成装置

【課題】現像ローラから像担持体における画像形成領域への電荷の放電を抑制し、現像ローラから像担持体への電荷の放電に起因する画像不良などを抑制することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171と、芯171の一部を覆うように活性層172を介して配置される膜厚が10〜25μmのアルマイト層173とを有する現像スリーブ17Aであって、現像スリーブ17Aの第2回転軸J2方向の中央側に像担持体2の画像形成領域201に対向して配置され、表面にアルマイト層173が配置される第1部174と、現像スリーブ17Aの第2回転軸J2方向の端部側に像担持体2の非画像形成領域202に対向して配置され、表面にアルミニウム又はアルミニウム合金が露出されると共に、表面粗さが第1部174よりも粗い第2部175と、を有する現像スリーブ17Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に備えられる現像装置として、トナー(現像剤)によりトナー層(現像剤層)を形成する現像ローラを備え、現像ローラの表面に形成されたトナー層により感光体ドラム(像担持体)の表面に形成された静電潜像を現像する現像装置が知られている。
【0003】
現像装置は、一般的に、1又は複数の磁極を有するマグネットローラと、マグネットローラの外部に配置される現像スリーブと、を備える。
現像ローラにおける現像スリーブとして、表面に粗面化処理を施したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯と、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面を覆うように形成されるアルマイト層と、を有する現像スリーブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載される現像ローラにおける現像スリーブは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯の表面に粗面化処理を行うことで、現像スリーブの表面にトナーを安定して保持させることができる。そのため、現像スリーブの表面には、安定したトナー層を形成することができる。これにより、現像スリーブに形成されたトナー層のトナーを感光体ドラムへ安定して供給することができる。
【0005】
また、特許文献1に記載される現像ローラにおける現像スリーブは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯の表面を覆うようにアルマイト層を設けることにより、その表面の強度を向上させることができる。そのため、現像スリーブは、その表面がトナーや研磨剤等により削られることが低減される。従って、例えば、数十万枚以上の用紙(被転写材)に画像を形成した場合においても、現像スリーブの表面に安定したトナー層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−145674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載される現像ローラにおける現像スリーブにおいて、現像スリーブの表面にアルマイト層を設けた場合には、その表面の絶縁性により現像スリーブの表面に電荷が溜まりやすくなる。特に、低温低湿環境下では、現像スリーブの表面に静電気による電荷がたまりやすい傾向がある。そのため、低温低湿環境下において現像装置を動作させた場合には、現像スリーブの表面に溜まった電荷は、現像スリーブの表面から感光体ドラムへ放電されやすい。これにより、感光体ドラムにおける静電潜像が形成される領域である画像形成領域に電荷が放電された場合には、画像形成領域にリーク痕が形成されたり、トナー層の乱れ等が生じる場合があった。その結果、画像不良が発生する場合があった。
従って、現像ローラ(現像スリーブ)から感光体ドラムにおける画像形成領域への電荷の放電を抑制することが望まれていた。
【0008】
本発明は、現像ローラから像担持体における画像形成領域への電荷の放電を抑制することにより、現像ローラから像担持体への電荷の放電に起因する画像不良などを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1回転軸を中心に回転可能に形成され、静電潜像を形成可能な画像形成領域と、前記静電潜像が形成されない非画像形成領域とを有する像担持体と、1又は複数の磁極を有するマグネット部と、前記像担持体に対向して前記マグネット部の外部に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能に配置され、現像剤の供給を受けて表面に現像剤層を形成する現像スリーブであって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯と、前記芯における一部を覆うように活性層を介して配置される膜厚が10〜25μmのアルマイト層とを有する現像スリーブと、を有する現像ローラと、を備え、前記現像スリーブは、該現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の中央側に前記画像形成領域に対向して配置され、表面に前記アルマイト層が配置される第1部と、該現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の端部側に前記非画像形成領域に対向して配置され、表面にアルミニウム又はアルミニウム合金が露出されると共に、表面粗さが前記第1部よりも粗い第2部と、を有する画像形成装置に関する。
【0010】
また、前記第2部の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)が10〜30μmであることが好ましい。
【0011】
また、前記第1部と前記第2部とは、連続して配置され、前記第1部は、前記第1回転軸方向において、該第1部の外縁が前記画像形成領域の外縁と同じ位置、又は、該第1部の外縁が前記画像形成領域の外縁よりも前記現像スリーブの端部側に位置するように配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記第2部の表面粗さは、前記現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の端部側に向かうにしたがって十点平均粗さ(Rz)が大きくなることが好ましい。
【0013】
また、前記像担持体における前記画像形成領域と前記現像スリーブにおける前記第1部とは、非接触状態であることが好ましい。
【0014】
また、前記現像剤は、磁性一成分現像剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現像ローラから像担持体における画像形成領域への電荷の放電を抑制することにより、現像ローラから像担持体への電荷の放電に起因する画像不良などを抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための正面図である。
【図2】プリンタ1における現像装置16の全体構成を示す断面図である。
【図3】現像ローラ17と感光体ドラム2との位置関係を説明する平面図である。
【図4A】図3に示す現像ローラ17のA−A線断面図である。
【図4B】図3に示す現像ローラ17のB−B線断面図である。
【図5】現像ローラ17における粗面化処理された表面の状態を示す断面図である。
【図6】現像ローラ17の表面に溜まる電荷が放電される様子を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施形態における現像ローラ17の粗面化処理された表面の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1により、本発明の第1実施形態における画像形成装置としてのプリンタ1の全体構造を説明する。図1は、本発明の第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための正面図である。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、所定の画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0019】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4と、現像装置16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写ローラ8と、定着部9とを備える。
【0020】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、排紙部50とを備える。
【0021】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って順に、上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザスキャナユニット4による露光、現像装置16による現像、転写ローラ8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニングが行われる。
【0022】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に、矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
【0023】
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0024】
レーザスキャナユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4は、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
【0025】
レーザスキャナユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4により走査露光されることで、感光体ドラム2の表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
【0026】
現像装置16は、感光体ドラム2に対応して設けられ、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像装置16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像に単色(通常はブラック)のトナーを付着させて、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像装置16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラ17、トナー攪拌用の攪拌ローラ18、19等を有して構成される。
現像装置16の詳細については後述する。
【0027】
トナーカートリッジ5は、現像装置16に対応して設けられており、現像装置16に対して供給されるトナーを収容する。
【0028】
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像装置16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像装置16に対して供給する。トナー供給部6と現像装置16とは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
【0029】
転写ローラ8は、感光体ドラム2の表面に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラ8には、不図示の転写バイアス印加部により、感光体ドラム2に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。転写ローラ8は、感光体ドラム2に対して当接した状態で回転可能に構成される。
【0030】
感光体ドラム2と転写ローラ8との間に、搬送路Lを搬送される用紙Tが挟み込まれる。挟み込まれた用紙Tは、感光体ドラム2の表面に押し当てられる。感光体ドラム2と転写ローラ8との間に、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に現像されたトナー画像が用紙Tに転写される。
【0031】
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。除電器12は、感光体ドラム2の表面に光を照射することにより、転写が行われた後の感光体ドラム2の表面を除電する(電荷を除去する)。
【0032】
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構(不図示)へ搬送して、回収させる。
【0033】
定着部9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着部9は、ヒータにより加熱される加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間に挟み込まれた状態で用紙Tが搬送されることで、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。
【0034】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する1個の給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの右側(図1における右側)から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において右側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対63とからなる重送防止機構を備える。
【0035】
装置本体Mの右側(図1において右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの前面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
【0036】
装置本体Mにおける上方側には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラ対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
【0037】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着部9までの第2搬送路L2と、定着部9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を下流側から上流側へ搬送する用紙を、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbとを備える。
【0038】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、戻り搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラ対54a及び第2ローラ対54bを有する。第1ローラ対54aの一方のローラと第2ローラ対54bの一方のローラとは兼用される。
【0039】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するためのセンサ(不図示)と、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80とが配置される。センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
【0040】
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(未印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。
戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1ローラ対54aにより排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第2ローラ対54bにより第1搬送路L1に戻して、転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、転写ニップNにおいて未印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
【0041】
第3搬送路L3における端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mにおける上方側に配置される。排紙部50は、装置本体Mの右側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラ対53により装置本体Mの外部に排紙する。
【0042】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0043】
以下、図面を参照して、第1実施形態のプリンタ1における特徴部分である現像装置16に関連する構成について説明する。
図2は、プリンタ1における現像装置16の全体構成を示す断面図である。図3は、現像ローラ17と感光体ドラム2との位置関係を説明する平面図である。図4Aは、図3に示す現像ローラ17のA−A線断面図である。図4Bは、図3に示す現像ローラ17のB−B線断面図である。図5は、現像ローラ17における粗面化処理された表面の状態を示す断面図である。
【0044】
まず、感光体ドラム2について説明する。
図2及び図3に示すように、感光体ドラム2は、第1回転軸J1を中心に、矢印R方向に回転可能である。また、感光体ドラム2は、第1回転軸J1に沿う方向に延びるように形成される。
【0045】
感光体ドラム2は、第1回転軸J1方向の中央部における表面に、静電潜像を形成可能な画像形成領域201を有する。また、感光体ドラム2は、第1回転軸J1方向の両端部における表面に、静電潜像が形成されない非画像形成領域202を有する。
【0046】
次に、現像装置16について説明する。
図2に示すように、現像装置16は、収容室20と、第1攪拌ローラ18と、第2攪拌ローラ19と、現像ローラ17と、規制ブレード21と、を備える。第1攪拌ローラ18、第2攪拌ローラ19、現像ローラ17、規制ブレード21は、収容室20の内部に配置される。
【0047】
収容室20には、現像剤が収容される。現像剤は、磁性を有する磁性トナーからなる磁性一成分現像剤である。収容室20における感光体ドラム2に対向する部分には、開口部23が形成される。収容室20内に収容された現像剤としてのトナーは、開口部23を通じて現像ローラ17から感光体ドラム2に供給される。現像装置16は、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像を現像する。
【0048】
収容室20は、その内部に各部材を収容する所定形状の空間を有している。また、収容室20は、トナーを収容して攪拌する攪拌室25を備えている。
攪拌室25は、仕切板24によって、図1における右側の第1攪拌室25Aと、図1における左側の第2攪拌室25Bとの2室に仕切られている。第1攪拌ローラ18及び第2攪拌ローラ19は、水平方向に並列して仕切板24を挟んで収容室20内に配置されている。第1攪拌室25Aには、第1攪拌ローラ18が配置される。また、第2攪拌室25Bには、第2攪拌ローラ19が配置される。
【0049】
仕切板24に対して第1攪拌ローラ18及び第2攪拌ローラ19の回転軸方向の両端部側には、第1攪拌室25Aと第2攪拌室25Bとをつなぐ第1流通口(図示せず)及び第2流通口(不図示せず)が形成される。
【0050】
第1攪拌室25Aの上部の所定位置には、トナーを収容室20に供給するための現像剤供給開口部29が形成される。トナーは、トナーカートリッジ5からトナー供給部6及び現像剤供給開口部29を介して収容室20に供給される。
【0051】
第1攪拌ローラ18は、第1攪拌室25Aに配置される。第1攪拌ローラ18は、矢印A方向に回転する。第1攪拌ローラ18は、現像剤供給開口部29から第1攪拌室25Aに供給されたトナーを攪拌すると共に、第1流通口を介して第1攪拌室25Aから第2攪拌室25Bへ搬送する。
【0052】
第2攪拌ローラ19は、第2攪拌室25Bに配置される。第2攪拌ローラ19は、矢印B方向に回転する。第2攪拌ローラ19は、第2攪拌室25Bに搬送されたトナーを攪拌して搬送すると共に、搬送するトナーの一部を後述する現像ローラ17に供給する。また、第2攪拌ローラ19は、第2流通口を介してトナーを第2攪拌室25Bから第1攪拌室25Aへ搬送する。
【0053】
現像ローラ17は、図3に示すように、第1回転軸J1に平行な第2回転軸J2に沿う方向に延びるように形成される。現像ローラ17は、第2回転軸J2に沿う方向の長さが感光体ドラム2の第1回転軸J1に沿う方向の長さよりも短く形成されている。
【0054】
現像ローラ17は、図2に示すように、第2攪拌ローラ19と感光体ドラム2との間に配置される。現像ローラ17は、感光体ドラム2に対して非接触状態で対向して配置される。例えば、現像ローラ17の表面と感光体ドラム2の表面との間の距離は、0.27mmから0.33mmの範囲に設定される。
【0055】
現像ローラ17は、マグネット部としてのマグネットローラ17Bと、マグネットローラ17Bの外部に配置される現像スリーブ17Aと、を有して構成される。
マグネットローラ17Bは、1又は複数の磁極が埋設されると共に、円柱状に形成される。マグネットローラ17Bは、現像スリーブ17Aの内部における所定位置に、回転しない状態で固定される。
【0056】
現像スリーブ17Aは、円筒形状に形成される。現像スリーブ17Aは、マグネットローラ17Bの外周を回転可能に配置される。現像スリーブ17Aは、第2回転軸J2を中心に矢印C方向に回転可能に構成される。現像スリーブ17Aは、不図示の現像ローラ駆動部によって回転駆動される。現像スリーブ17Aと第2攪拌ローラ19との回転方向は、第2攪拌ローラ19と現像スリーブ17Aとが互いに対向した部分において同じ向きになっている。
【0057】
図3から図4Bに示すように、現像スリーブ17Aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる円筒状の芯171と、活性層172を介して芯171の表面を覆うように配置されるアルマイト層173と、を有する。
【0058】
図5に示すように、芯171の表面は、粗面化処理がされている。芯171の表面を粗面化処理することにより、トナーが現像スリーブ17A上に保持されやすくなり、感光体ドラム2へのトナーの搬送量が確保される。
【0059】
芯171の表面は、第2回転軸J2に沿う方向の全域にわたって凹凸の形状の粗面化が施されている。例えば、ガラスビーズ等の球体を用いてブラスト処理を行うことにより、芯171の表面に、断面が波状の凹凸を形成する。芯171の表面に形成される凹凸の粗さにより、現像スリーブ17Aにおける表面の粗さとしての表面粗さを規定する。
現像スリーブ17Aにおける表面粗さについては、後述する。
【0060】
アルマイト層173は、芯171の表面に粗面化処理を施した後に、芯171の表面を覆うように形成される。
アルマイト層173は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171の表面を陽極酸化処理することにより形成される。アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171の表面を陽極酸化処理した場合、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171の表面には、酸化皮膜が生成される。この酸化皮膜がアルマイト層173である。
【0061】
陽極酸化処理によりアルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171の表面に酸化皮膜を生成した場合には、アルミニウム又はアルミニウム合金とアルマイト層との間には、活性層(バリアー層)172が形成される。活性層172は、数十nmの厚さを有する。
【0062】
アルマイト層173は、芯171の表面に形成された凹凸を保護するために形成される。そのため、硬度の比較的高いアルマイト層173を芯171の表面に形成する。現像スリーブ17Aの表面にアルマイト層173を設けることにより、現像スリーブ17Aに形成された凹凸は、トナーや研磨剤等により削られることが低減される。
【0063】
アルマイト層173の膜の厚さは、10〜25μmの範囲に設定される。アルマイト層173の膜の厚さを10〜25μmに設定する理由は、膜厚が10μm未満の場合には、例えば、数万枚以上の用紙に画像を形成する場合、トナーや研磨剤等によりアルマイト層173が削られることにより、芯171に形成された凹凸を保護するという十分な耐久性を得ることができないためである。また、膜厚が25μmを超えた場合には、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷が放電されにくくなるためである。
【0064】
現像スリーブ17Aは、図3から図5に示すように、表面にアルマイト層173が配置される第1部174と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171が露出される第2部175と、を有する。
第1部174は、現像スリーブ17Aにおける第2回転軸J2に沿う方向の中央部側の表面に、画像形成領域201に対向して形成される。第2部175は、第1部174に連続して配置され、現像スリーブ17Aにおける第2回転軸J2に沿う方向の両端部の表面に形成される。
【0065】
第1部174は、図3に示すように、第1回転軸J1方向において、第1部174の外縁が画像形成領域201の外縁と同じ位置、又は、第1部の外縁が画像形成領域201の外縁よりも現像スリーブ17Aの端部側に位置するように配置される。第1部174は、感光体ドラム2の画像形成領域201に対して非接触の状態で配置される。
【0066】
第2部175は、第2回転軸J2に沿う方向において、第1部174よりも端部側に、非画像形成領域202に対向して配置される。つまり、第2部175は、第1回転軸J1及び第2回転軸J2に沿う方向に直交する方向から視た場合に、感光体ドラム2の画像形成領域201に重ならないように配置される。
言い換えると、第2部175は、第1部174よりも現像スリーブ17Aにおける第2回転軸J2方向の端部側に配置されると共に、画像形成領域201から離れた非画像形成領域202に対向して配置される。
【0067】
次に、現像スリーブ17Aにおける表面粗さについて説明する。本実施形態においては、現像スリーブ17Aの表面粗さを、第1部174と、第2部175とにおいて規定する。現像スリーブ17Aの表面粗さは、第1部174においては、凹凸が形成された芯171上にアルマイト層173が形成された後の表面粗さであり、第2部175においては、芯171に形成された凹凸が露出された状態における表面粗さである。なお、第1部174における表面粗さは、凹凸が形成された芯171にアルマイト層173を形成した状態で規定しているが、アルマイト層173が形成されていない場合においても、アルマイト層173が芯171の凹凸に沿って形成されるため略同じである。
【0068】
図5に示すように、第1部174の表面に形成される凹凸は、凸同士の間隔が間隔p1であり、凹の底部と凸の頂部との厚さ方向の差(凹凸の深さ)がd1となるように形成される。なお、アルマイト層173の表面における凹凸の深さと芯171の表面における凹凸の深さとは、略同一である。
【0069】
また、第2部175の表面に形成される凹凸は、凸同士の間隔が間隔p2であり、凹と凸との厚さ方向の差(凹凸の深さ)がd2となるように形成される。つまり、第2部175の表面175Aに形成される凹凸の深さd2は、第1部174の表面174Aに形成される凹凸の深さd1よりも大きく形成されている。現像スリーブ17Aの表面粗さは、凹凸の深さが大きいほど粗い。
【0070】
このように、第2部175の表面175Aの表面粗さを、第1部174の表面174Aの表面粗さよりも粗く形成する。詳細には、第1部174の表面粗さは、例えば、十点平均粗さ(Rz)において、7.5μmに設定する。また、第2部175の表面粗さは、例えば、十点平均粗さ(Rz)において、10〜30μmの範囲に設定する。
【0071】
なお、十点平均粗さ(Rz)とは、抽出曲線(第2回転軸J2方向に連続する波状の凹凸部の底点及び頂点を結ぶ曲線)から基準長さを抜き取った部分の平均線から縦倍率の方向に測定したときの最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(yv)の絶対値の平均値との和の値より求められる値である。この十点平均粗さ(Rz)の測定には、公知の測定装置(例えば、株式会社 東京精密製 SURFCOM 1500DX)が使用される。
十点平均粗さ(Rz)は、以下の数1の式により求めることができる。
【0072】
【数1】

【0073】
現像スリーブ17Aには、マグネットローラ17Bの磁力によって外周面(表面)上にトナーが保持(被着)されてトナー層が形成される。現像スリーブ17Aには、電圧印加部(図示せず)により所定の電圧が印加される。
【0074】
また、図2に示すように、現像ローラ17は、現像ローラ17の一部が開口部23を介して感光体ドラム2に対向して近接配置される。現像ローラ17に形成されるトナー層を構成するトナーは、現像ローラ17と感光体ドラム2との電圧との電圧差により、開口部23を介して感光体ドラム2に移動される。これにより、現像ローラ17は、感光体ドラム2に形成された静電潜像を現像する。
【0075】
図2に示すように、規制ブレード21は、第1回転軸J1方向及び第2回転軸J2方向に延びる部材である。規制ブレード21は、現像ローラ17の現像スリーブ17Aにおける外周面に先端が近接した状態で配置される。規制ブレード21は、現像ローラ17の回転方向Cに対し、感光体ドラム2よりも上流側に配置される。規制ブレード21は、現像ローラ17の外周面に対して略直交する位置関係となるように配置される。
【0076】
規制ブレード21は、現像ローラ17に形成されるトナー層の厚さを規制する。つまり、規制ブレード21は、現像ローラ17の表面に形成されるトナーの量を規制することにより、現像ローラ17の表面に、数10μm程度の一定の厚さのトナーの薄層を形成する。また、規制ブレード21は、現像ローラに形成されるトナー層の厚さを規制する際に、トナー層のトナーを帯電させる。
【0077】
次に、図2から図6を参照して、現像装置16の動作について説明する。
図6は、現像ローラ17の表面に溜まる電荷が放電される様子を説明する図である。
まず、図2に示すように、現像剤供給開口部29から供給されたトナーは、第1攪拌室25Aに供給される。第1攪拌室25Aに供給されたトナーは、第1攪拌ローラ18の回転により攪拌されながら搬送される。そして、第1攪拌ローラ18により搬送されるトナーは、不図示の第1流通口を介して第1攪拌室25Aから第2攪拌室25Bに搬送される。
【0078】
第2攪拌室25Bに供給されたトナーは第2攪拌ローラ19の回転により攪拌されながら搬送される。そして、第2攪拌ローラ19に搬送されるトナーの一部が現像ローラ17における現像スリーブ17Aの表面に供給される。これにより、現像スリーブ17Aには、マグネットローラ17Bの磁力によって外周面(表面)上にトナーが保持(被着)されてトナー層が形成される。
【0079】
次に、図2に示すように、現像ローラ17の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ17の回転により、規制ブレード21に対向する位置へ搬送される。現像ローラ17の回転により搬送されるトナー層は、規制ブレード21と近接する位置を通過する。現像ローラ17の表面に形成されたトナー層は、感光体ドラム2と対向する位置に移動される前(感光体ドラム2に対して現像ローラ17の回転方向Cの上流側)において、規制ブレード21により層厚が規制される。具体的には、現像ローラ17上のトナーは、規制ブレード21により規制されて、数10μm程度の一定の厚さのトナーの薄層に形成される。また、規制ブレード21により、現像ローラ17上のトナー層のトナーは、帯電される。
【0080】
次に、規制ブレード21により層厚が規制されたトナー層は、現像ローラ17の回転により感光体ドラム2と対向する位置へと搬送される。
一方、感光体ドラム2の表面は、帯電部10によって一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電されている。そして、レーザスキャナユニット4の走査露光により、感光体ドラム2の表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成されている。
【0081】
ここで、現像ローラ17の表面に形成されたトナー層は、感光体ドラム2と対向する位置まで搬送される。現像スリーブ17Aには、電圧印加部(図示せず)により所定の電圧が印加されている。これにより、現像ローラ17と感光体ドラム2とが対向した位置において、感光体ドラム2と現像ローラ17との間の電圧差により、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ17上のトナー層を構成するトナーによって現像される。
【0082】
ここで、図3から図5に示すように、現像ローラ17の現像スリーブ17Aにおける第1部174の表面粗さは、例えば、十点平均粗さ(Rz)において、7.5μmに設定されている。また、現像スリーブ17Aの表面のうち、感光体ドラム2の画像形成領域201に対向して配置される第1部174の表面には、アルマイト層173が配置されている。
【0083】
そのため、第1部174の表面174Aは、アルマイト層173が形成されることによりトナーや研磨剤等により削られることが抑制される。これにより、数十万枚以上の用紙Tに画像を形成した場合においても、第1部174の表面に形成された凹凸の形状が保持されやすいため、現像スリーブ17Aの表面には、トナー層が安定して形成される。その結果、現像スリーブ17Aは、感光体ドラム2ヘのトナーの供給を安定して行うことが可能である。従って、トナー画像の画像濃度の低下を抑制することができる。
【0084】
ところで、低温低湿環境下において、現像スリーブ17Aを回転させる場合を想定する。
図6に示すように、現像スリーブ17Aが低温低湿環境下で回転させる場合、第1部174の表面を形成するアルマイト層173に静電気による電荷が溜まりやすい。
【0085】
ここで、現像スリーブ17Aの表面のうち、感光体ドラム2の非画像形成領域202に対向して配置される第2部175の表面175Aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171が露出され、且つ、露出する芯171の表面粗さが第1部174よりも粗く設定されている。第2部175の表面粗さは、例えば、十点平均粗さ(Rz)において、10〜30μmの範囲に設定されている。
【0086】
そのため、図6に示すように、第1部174の表面を形成するアルマイト層173に溜まった電荷は、導電性を有するアルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171を伝達されて、第2部175の表面に形成される凹凸のうちの凸の部分に集中的に移動される。
【0087】
これは、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、対向して配置される感光体ドラム2の表面に放電される際に、最も放電されやすい現像スリーブ17Aの部位に移動されるためである。本発明においては、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷を放電させる部位として、感光体ドラム2の非画像形成領域202に対向して配置される第2部175を設定した。感光体ドラム2の非画像形成領域202に電荷を放電させることにより、感光体ドラム2の画像形成領域201へ電荷が放電されにくい。これにより、画像不良の発生を抑制することができる。
【0088】
詳細には、第2部175は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171が露出されると共に、表面粗さを、第1部174よりも粗く且つ、十点平均粗さ(Rz)において、10〜30μmの範囲に設定している。これにより、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、導電部分が露出される第2部175の表面の凸の部分から感光体ドラム2の表面に放電されやすい。更に、芯171が導電性を有するアルミニウム又はアルミニウム合金により形成されているため、現像スリーブ17Aのアルマイト層173の表面に溜まった電荷は、芯171の内部を移動されて、放電されやすい第2部175の表面に形成された凸の部分に向けて移動される。
【0089】
そのため、図6に示すように、アルマイト層173に溜まった電荷は、第2部175の凸の部分から感光体ドラム2の表面に向けて放電される。
従って、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、現像スリーブ17Aの第2部175の表面の凸の部分から感光体ドラム2の非画像形成領域202に放電される。これにより、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、感光体ドラム2の画像形成領域201へ放電されることが抑制される。その結果、画像形成領域201に電荷の放電に伴うリーク痕が形成されたり、トナー層の乱れが生じたりすることに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
【0090】
また、第2部175は、非画像形成領域202に対向する現像スリーブ17Aの領域において、第1回転軸J1に沿う方向における画像形成領域201に対して端部側に離れた領域に対向して配置される。そのため、第2部175から感光体ドラム2に放電される電荷は、感光体ドラム2における画像形成領域201から離れた領域に放電される。
これにより、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷を、感光体ドラム2における画像形成領域201から離れた領域に安全に放電させることができる。
【0091】
第1実施形態のプリンタ1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
第1実施形態のプリンタ1においては、現像スリーブ17Aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯171と、芯171における一部を覆うように活性層172を介して配置される膜厚が10〜25μmのアルマイト層173と、を有する。
そのため、第1部174の表面174Aの硬度は、アルマイト層173が形成されることにより高くなる。これにより、数十万枚以上の用紙Tに画像を形成した場合においても、現像スリーブ17Aの表面にトナー層を安定して形成することができる。そして、現像スリーブ17A上のトナー層から感光体ドラム2ヘのトナーの供給を安定して行うことが可能である。従って、トナー画像の画像濃度の低下を抑制することができる。
【0092】
また、現像スリーブ17Aが感光体ドラム2の画像形成領域201に対向して配置されると共に、現像スリーブ17Aにおける第2回転軸J2に沿う方向の中央部の表面にアルマイト層173が配置される第1部174と、感光体ドラム2の非画像形成領域202に対向して配置され、現像スリーブ17Aにおける第2回転軸J2に沿う方向の両端部側の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金が露出されると共に、表面粗さが第1部174よりも粗い第2部175と、を有する。
【0093】
そのため、現像スリーブ17Aの表面に溜まる電荷は、現像スリーブ17Aの第2回転軸J2方向の両端部の第2部175に形成された凹凸の凸の部分から感光体ドラム2の非画像形成領域202に向けて放電されやすい。従って、特に、現像スリーブ17Aの表面に電荷が溜まりやすい低温低湿環境下において、第2部175から電荷を放電させることができる。その結果、感光体ドラム2の画像形成領域201には、電荷が放電されることが抑制される。従って、感光体ドラム2の画像形成領域201にリーク痕が形成されたり、現像スリーブ17A上のトナー層の乱れが生じることに起因する画像不良等の発生を抑制することができる。
【0094】
また、第1実施形態のプリンタ1においては、現像スリーブ17Aにおける第2部175の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)が10〜30μmである。
そのため、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、現像スリーブ17Aの第2部175に移動されやすく、且つ、第2部175は、電荷を感光体ドラム2へ向けて放電させやすい。
これにより、第2部175から感光体ドラム2に向けて放電させることができる。従って、感光体ドラム2の画像形成領域201において、リーク痕の形成やトナー層の乱れの発生を一層抑制することができる。
【0095】
また、第1実施形態のプリンタ1においては、第1部174と第2部175とは、連続して配置され、第1部174は、第1回転軸J1方向において、第1部174の外縁が画像形成領域201の外縁と同じ位置、又は、第1部の外縁が画像形成領域201の外縁よりも現像スリーブ17Aの端部側に位置するように配置される。
【0096】
そのため、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷が放電しやすい第2部175は、感光体ドラム2の画像形成領域201から離れた領域に対向して配置される。これにより、現像スリーブ17Aの表面に溜まった電荷は、感光体ドラム2の画像形成領域201から離れた安全な領域に放電される。これにより、感光体ドラム2の画像形成領域201において、リーク痕の形成やトナー層の乱れの発生を一層抑制することができる。
【0097】
また、第1実施形態のプリンタ1においては、感光体ドラム2における画像形成領域201と現像スリーブ17Aにおける第1部174とは、非接触の状態である。そのため、現像スリーブ17Aの表面から感光体ドラム2に向けて電荷が飛翔して放電されやすい。このような場合であっても、本発明の上記構成により、第2部175から感光体ドラム2に電荷が放電されるため、画像形成領域201にリーク痕が形成されたり、現像スリーブ17Aのトナー層の乱れが生じることに起因する画像不良等の発生を抑制することができる。
【0098】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、本発明の第2実施形態におけるプリンタ1における現像ローラ17の粗面化処理された表面の状態を示す断面図である。
第2実施形態については、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成、同様な構成要素については同じ符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。また、第2実施形態において、特に説明しない点及び図示しない点は、第1実施形態の説明及び図(図1から図4B)が適用される。
【0099】
図7に示すように、第2実施形態のプリンタ1における現像スリーブ17Aにおいては、第2部175の表面175Aの表面粗さ(十点平均粗さRz)は、第2回転軸J2に沿う方向において、端部に向かうにしたがって大きくなるように形成されている。具体的には、第2部175の表面175Aに形成される凹凸は、凹の底部と凸の頂部との厚さ方向の差(凹凸の深さ)が第2回転軸J2に沿う方向における端部に向かうにしたがって順次深くなるように形成されている。
【0100】
例えば、第2部175の凹凸の深さは、現像スリーブ17Aの第2回転軸J2方向における最も外側の端部においてd3である。そして、第2部175の凹凸の深さは、中央部側に向かうにしたがって徐々に浅くなるように形成される。そして、第2部175の凹凸の深さは、第1部174に隣接する部分において、第1実施形態の第2部175の凹凸の深さと同様に、d2である。また、第1部174の凹凸の深さは、第1実施形態の第1部174の凹凸の深さと同様に、d1である。
【0101】
第2実施形態のプリンタ1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
第2実施形態のプリンタ1においては、第2部175の表面粗さは、第2回転軸J2方向における端部側に向かうにしたがって十点平均粗さ(Rz)が大きくなる。
そのため、第2部175から放電される電荷は、第2部175の端部側における電荷の放電が多く、感光体ドラム2の画像形成領域201に対向する領域に近づくにしたがって電荷の放電を少なくすることができる。これにより、感光体ドラム2の画像形成領域201及び画像形成領域201に近い非画像形成領域202の部分への電荷の放電をより少なくして、安全に電荷を放電させることができる。従って、電荷の放電によるリーク痕の形成やトナー層の乱れの発生を一層抑制することができる。
【0102】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、現像剤を磁性一成分現像剤としたが、これに制限されない。例えば、現像剤をトナーとキャリアからなる磁性二成分現像剤としてもよい。
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、プリンタ以外に、コピー機、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の実施例及び比較例を用いて、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものでない。
なお、以下の実施例及び比較例における表面粗さ(Rz)は、表面粗さ測定装置(株式会社 東京精密製 SURFCOM 1500DX)を用いて測定した。
実施例1:アルミニウム管(外径16mm,長さ240mm,肉厚1mm)表面の両端部(第2部)(各10mm)を残し、中央部(第1部)にRz=7.5μmの凹凸を施した(ブラスト条件;ガラスビーズ#100 1kg/cm 60秒)。
次に、アルミニウム管の両端部(第2部)(各10mm)のみローラ軸方向平均Rz=15μm(ブラスト条件;ガラスビーズ#200 2kg/cm 90秒)の凹凸を施した。
更に、両端部(各10mm)に耐酸性テープ等でマスキングして陽極酸化処理(処理時間50min)を施した。同時に、肉厚1mm(40mm×40mm)のアルミニウムプレートを同一条件で陽極酸化処理を施した。このアルミプレートの表面部の断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)及び走査型電子顕微鏡(SEM)で分析した結果、アルミニウム表面にバリヤー層と約15μmのアルマイト層とが形成されていた。
【0104】
実施例2:陽極酸化処理の処理時間を30minにした以外は、実施例1と同様の処理を行った。分析の結果、アルマイト層は約10μmであった。
実施例3:陽極酸化処理の処理時間を80minにした以外は、実施例1と同様の処理を行った。分析の結果、アルマイト層は約25μmであった。
実施例4:アルミニウム管の両端部を別のブラスト条件(ガラスビーズ#100 2kg 60秒)によりローラ軸方向の両端部の凹凸を平均Rz=10μmとした。これ以外は、実施例1と同様の処理を行った。
実施例5:アルミニウム管の両端部を別ブラスト条件(ガラスビーズ#300 4kg 120秒)によりローラ軸方向の両端部の凹凸を平均Rz=30μmとした。これ以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0105】
比較例1:陽極酸化処理の処理時間を20minにした以外は、実施例1と同様の処理を行った。分析の結果、アルマイト層は約8μmであった。
比較例2:陽極酸化処理の処理時間を100minにした以外は、実施例1と同様の処理を行った。分析の結果、アルマイト層は約30μmであった。
比較例3:両端部にマスキングをせずに、アルミニウム管の表面全体を陽極酸化処理し、その他は実施例1と同様な処理を施した。
比較例4:実施例1に対し、陽極酸化処理をせず(アルマイト層がない状態)に凹凸を施したアルミニウム管を作製した。
比較例5:アルミニウム管の両端部のブラスト条件を中央部と同一条件で実施すると共にローラ軸方向の凹凸を平均Rz=7.5μmと同等にした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
比較例6:アルミニウム管の第1部及び第2部の双方を別のブラスト条件(ガラスビーズ#100 2kg 60秒)により凹凸を平均Rz=10μmと同等にした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
比較例7:アルミニウム管の両端部を別のブラスト条件(ガラスビーズ#300 5kg 120秒)によりローラ軸方向の両端部の凹凸を平均Rz=40μmにした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0106】
実施例1〜比較例7で処理を施したアルミニウム管(アルマイト管)を京セラミタ製LS−4020DN改造機に装着して、以下の評価を行った。
低温低湿環境下における初期の評価と、初期の評価で問題がないものに関して20万枚印刷後における評価とを行った。評価項目は、画像濃度及び画質とした。
【0107】
画像濃度は、以下の判定基準で評価を行った。
○:画像濃度(ID)が1.2以上
×:画像濃度(ID)が1.2未満
【0108】
画質は、以下の判定基準で評価を行った。
○:異常画像無し
×:リーク痕,黒点,層乱れの発生
×:その他画像不良発生
評価結果を以下の表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すように、低温低湿環境下での初期評価において、比較例1〜4は、実施例1〜5と同様又は略同様な画像濃度が得られると共に、画質にも異常が無い。一方、比較例5〜7は、実施例1〜5と同様又は略同様な画像濃度が得られるものの、リーク痕や黒点が発生し、画質の劣化が確認された。
【0111】
そして、20万枚の印刷後において、初期評価で問題が無かった比較例1〜4及び実施例1〜5について、静電ラン(静電付与試験)を行い、初期と同様に評価した。その結果、表1に示すように、比較例1、2及び4は、実施例1〜5に比べて、画像濃度の低下が大きいと共に、リーク痕、層乱れ及び筋画像の発生により、画質の劣化が確認された。また、比較例3は、実施例1〜5に比べて画像濃度の低下が見られないものの、リーク痕や黒点が発生して画質の劣化が確認された。
【符号の説明】
【0112】
1……プリンタ(画像形成装置)、2……感光体ドラム(像担持体)、16……現像装置、17……現像ローラ、17A……現像スリーブ、17B……マグネットローラ(マグネット部)、J2……第2回転軸、171……芯、172……活性層、173……アルマイト層、174……第1部、174A……凹凸表面、175……第2部、175A……凹凸表面、201……画像形成領域、202……非画像形成領域、J1……第1回転軸、J2……第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転可能に形成され、静電潜像を形成可能な画像形成領域と、前記静電潜像が形成されない非画像形成領域とを有する像担持体と、
1又は複数の磁極を有するマグネット部と、前記像担持体に対向して前記マグネット部の外部に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能に配置され、現像剤の供給を受けて表面に現像剤層を形成する現像スリーブであって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯と、前記芯における一部を覆うように活性層を介して配置される膜厚が10〜25μmのアルマイト層とを有する現像スリーブと、を有する現像ローラと、を備え、
前記現像スリーブは、
該現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の中央側に前記画像形成領域に対向して配置され、表面に前記アルマイト層が配置される第1部と、
該現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の端部側に前記非画像形成領域に対向して配置され、表面にアルミニウム又はアルミニウム合金が露出されると共に、表面粗さが前記第1部よりも粗い第2部と、を有する
画像形成装置。
【請求項2】
前記第2部の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)が10〜30μmである
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1部と前記第2部とは、連続して配置され、
前記第1部は、前記第1回転軸方向において、該第1部の外縁が前記画像形成領域の外縁と同じ位置、又は、該第1部の外縁が前記画像形成領域の外縁よりも前記現像スリーブの端部側に位置するように配置される
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2部の表面粗さは、前記現像スリーブにおける前記第2回転軸方向の端部側に向かうにしたがって十点平均粗さ(Rz)が大きくなる
請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体における前記画像形成領域と前記現像スリーブにおける前記第1部とは、非接触状態である
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像剤は、磁性一成分現像剤である
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197145(P2011−197145A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61594(P2010−61594)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】