説明

画像形成装置

【課題】 相互に設けられた通信ポートを介してシリアル通信を行う二つの制御手段が異なる電源コードによって個別に商用交流電源に接続される画像形成装置の既存のハード構成を用いて,一方の電源コードが商用交流電源に接続されていないことが原因でシリアル通信に異常が生じている可能性がある場合にその旨をユーザに通知することのできる構成を実現すること。
【解決手段】 定着制御部63が,シリアル通信によりメイン制御部1から送信される定期信号を正常に受信できない場合に,既定間隔で信号レベルが変化するレベル変化信号を出力すると共に,メイン制御部1が,定期信号の送信後,定着制御部63から返信される応答信号を正常に受信できない場合に,前記レベル変化信号が入力されるか否かを検出し,前記レベル変化信号が検出されない場合に,電源コード92の接続確認を促す情報を表示するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,相互に設けられた通信ポートを介して所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を行う二つの制御手段が異なる電源コードによって個別に商用交流電源に接続される画像形成装置に関し,特に,シリアル通信の異常発生時にその異常原因を判別するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,複写機,プリンタ,ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置は,大型化や高機能化により,装置全体の使用電力が増加する傾向にある。例えば,高速処理のために,記録媒体上にトナーを加熱定着するための熱量が増加したり,カラー化や高精度化のために,高圧負荷やモータ負荷,回路負荷が増加したりして使用電力が増加している。
このように,装置の使用電力が増加傾向にあるので,電源から供給される電力を単一の電源コードで受電するだけでは電力不足が生じることがある。すなわち,例えば日本国内において,通常の単相100V交流の電源から一本の電源コードで受電する場合,電流は15A以内に制限されるので,消費電力が15Aを越える画像形成装置では,一本の電源コードでの電力供給が困難になることがある。
そのため,近年の画像形成装置では,複数の電源コードを備え,装置内の電源供給先を,それぞれが一本の電源コードで賄える容量以下となるように分割した形態が採用されているものがある。具体的には,装置全体を統括的に制御する主制御部を含む主装置ユニットに電力を供給するために商用交流電源に接続される電源コードと,特に消費電力が大きい加熱ヒータを備える定着ユニットに電力を供給するための商用交流電源に接続される電源コードとが,別々に設けられているものが知られている(例えば特許文献1参照)。なお,近年の画像形成装置において,定着ユニットに設けられた定着制御部は,主制御部との間で行われるシリアル通信により主制御部から伝送される制御信号に基づいて定着ユニットを制御する。
【0003】
ところで,このような主装置ユニットと定着ユニットのそれぞれに電力を供給するための電源コードを備える画像形成装置では,当該複数の電源コードのうち1以上の電源コードについて,ユーザが接続をし忘れたり,一旦接続されても何らかの原因で脱落してしまうことがある。このような場合,当然ながら画像形成装置は正常に動作しない。
特に,主装置ユニットに電力を供給する電源コードが正常に接続され,定着ユニットに電力を供給する電源コードが接続されていない場合においては,画像形成装置の主電源はONとなるが,主制御部と定着制御部との間で行われるシリアル通信に異常が発生し,画像形成装置が正常に動作しない状態に陥ることがある。このような場合,ユーザは発生したシリアル通信異常が定着ユニットに電力が供給されていないことによるものなのか,それともそれ以外の原因(例えばノイズ等に起因する通信上の異常)によるものなのかを区別できず,定着ユニットに電力が供給されていないことによるものであったとしても速やかに画像形成装置を正常な状態に復旧することができないといった問題があった。
そこで,特許文献1では,定着ユニットに印加される電圧を検出することにより,定着ユニット用の電源コードが接続されているか否かを判断する接続検出手段を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記特許文献1の画像形成装置では,定着ユニット用の電源コードが接続されているか否かを判断するための接続検出手段をハード構成として追加する必要があり,コストも増大するという問題がある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,相互に設けられた通信ポートを介して所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を行う二つの制御手段が異なる電源コードによって個別に商用交流電源に接続される画像形成装置の既存のハード構成を用いて,一方の電源コードが商用交流電源に接続されていないことが原因でシリアル通信に異常が生じている可能性がある場合にその旨をユーザに通知することのできる構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は,相互に設けられた通信ポートを介して所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を行う第1の制御手段及び第2の制御手段と,前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段に対して個別に電力を供給するために商用交流電源に接続される第1の電源コード及び第2の電源コードとを備えてなり,前記第2の制御手段が前記第1の制御手段から伝送される制御信号に基づいて所定の制御対象機器を制御するものである画像形成装置に適用されるものである。
そして,本発明に係る画像形成装置では,前記第1の制御手段が,前記シリアル通信により前記第2の制御手段に所定間隔で定期信号を送信する定期信号送信手段と,前記定期信号の所定回数の送信後,或いは予め設定された所定期間経過後に,前記第2の制御手段からの応答信号が前記シリアル通信により正常に受信されないことを条件として,前記第1の制御手段の前記通信ポートに既定間隔で信号レベルが変化するレベル変化信号が入力されているか否かを検出するレベル変化信号検出手段と,前記レベル変化信号検出手段により前記レベル変化信号の入力が検出されなかった場合に,前記第2の電源コードの確認を促すための既定の情報を所定の表示手段に表示させる確認表示手段とを備えている。
また,前記第2の制御手段が,前記第1の制御手段から送信される前記定期信号の受信に応答して前記シリアル通信により前記第1の制御手段に前記応答信号を送信する応答信号送信手段と,予め設定された期間内に前記第1の制御手段からの前記定期信号が前記シリアル通信により正常に受信されないことを条件に,前記第2の制御手段の前記通信ポートから前記レベル変化信号を出力する異常時信号出力手段とを備えている。
なお,前記レベル変化信号は,例えば信号レベル(電圧)が「0」と「1」との間で反転するデジタル信号である。
本発明によれば,前記第1の制御手段が,前記シリアル通信で生じた異常の原因が前記第2の電源コードが前記商用交流電源に接続されていないことである可能性の有無を,前記シリアル通信に用いられる既存のハード構成である前記通信ポートを利用して判断することができるため,前記特許文献1のように電源コードが接続されていないことを検出するためのハード構成を別途設ける必要が無く,構成を簡素化してコストを抑制することができる。そして,前記シリアル通信の異常の原因が前記第2の電源コードが接続されていないことである可能性がある場合には,前記所定の表示手段に対する前記既定の情報の表示によって前記第2の電源コードの接続確認がユーザに促されるため,実際に前記第2の電源コードが接続されていない場合に,前記シリアル通信の異常状態の早期復旧を図ることができる。
【0007】
ところで,前記レベル変化信号検出手段により前記レベル変化信号の入力が検出された場合は,前記第2の制御手段から前記レベル変化信号が出力されているため,前記第2の電源コードによって前記第2の制御手段に電力供給が行われていると判断することができる。
そこで,前記第1の制御手段が,前記レベル変化信号検出手段により前記レベル変化信号の入力が検出された場合に,前記シリアル通信における通信異常である旨を報知する通信異常報知手段を更に備えてなることが望ましい。なお,前記通信異常報知手段は,前記シリアル通信における通信異常である旨を前記所定の表示手段に表示することによりユーザに報知するものであっても,或いは前記シリアル通信における通信異常である旨を所定の通信ネットワークを介してメンテナンスサーバなどに報知するものであってもよい。
これにより,前記第2の電源コードが接続されていないこと以外の原因によるシリアル通信異常が発生していることを知ることができるので,サービスマンへの連絡等,速やかに異常時の対応を取ることができ,早期に画像形成装置を正常な状態に復旧させることができる。
なお,前記確認表示手段が前記表示手段に表示させる前記既定の情報とは,具体的には前記第2の電源コードと商用交流電源との接続確認を促す情報であることが考えられる。
また,前記所定の制御対象機器としては,具体的には定着装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,前記画像形成装置の既存のハード構成を用いて,前記第2の電源コードが前記商用交流電源に接続されていないことが原因で前記シリアル通信に異常が生じている可能性がある場合にその旨をユーザに通知することのできる構成を実現することができる。従って,前記特許文献1のように電源コードが接続されていないことを検出するためのハード構成を別途設ける必要が無く,構成を簡素化してコストを抑制することができる。もちろん,前記所定の表示手段に対する前記既定の情報の表示によって前記第2の電源コードの接続確認がユーザに促されるため,実際に前記第2の電源コードが接続されていない場合は,前記シリアル通信の異常状態の早期復旧を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の通信制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成について説明する。
図1に示すように,本発明の実施の形態に係る複合機Xは,メイン制御部1,操作表示部2,画像読取部3,画像処理部4,画像形成部5,定着装置6,電源装置7,遮断回路8などを備えて概略構成されている。なお,前記複合機Xは,本発明に係る画像形成装置の一例に過ぎず,例えば複写機やファクシミリ装置,プリンタ装置なども本発明に係る画像形成装置に該当する。
【0011】
前記メイン制御部1は,CPU及びROM,RAM等の周辺装置を有しており,前記CPUで前記ROMに格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより,当該複合機Xを統括的に制御するものである。なお,前記メイン制御部1は,集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
さらに,前記メイン制御部1は,前記定着装置6に設けられた後述の定着制御部63との間で信号伝送を行うための通信インターフェースとして通信ポート11を備えている。例えば,前記メイン制御部1は,前記定着制御部63との間で予め定められた所定の制御プロトコルに従ったシリアル通信を前記通信ポート11を介して実行する。
ここに,本実施の形態では,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63を第1の制御手段及び第2の制御手段の一例として説明する。一方,例えば前記メイン制御部1と前記画像形成部5に設けられるエンジン制御部(CPU),又は前記エンジン制御部と前記定着制御部63を第1の制御手段及び第2の制御手段と捉えてもよい。また,前記定着装置6の定着制御部63に限らず,例えばパンチ処理やステープル処理などの後処理を実行する後処理装置(制御対象機器)が設けられる場合には,前記メイン制御部1及び前記後処理装置を制御する制御部が第1の制御手段及び第2の制御手段に該当する。
【0012】
前記操作表示部2は,当該複合機Xにおける各種の情報の表示や,ユーザによる入力操作を行うための液晶ディスプレイ,タッチパネル,各種操作キーなどを有している。
前記画像読取部3は,原稿台(不図示)に載置された原稿或いは自動原稿送り装置(ADF,不図示)により搬送された原稿の画像を読み取るCCD等を有している。
前記画像処理部4は,前記画像読取部3によって読み取られた画像データ或いは外部から入力された画像データに対して各種の画像処理を施すものである。
前記画像形成部5は,感光体ドラムや現像装置などの周知の電子写真方式の画像形成部の構成要素を備えており,給紙カセットから供給された用紙に対し,前記画像処理部4における各種の画像処理後の画像データに基づいてモノクロ画像又はカラー画像を形成する画像形成手段である。
【0013】
前記定着装置6は,前記画像形成部5によってトナー像が転写された用紙に該トナー像を溶融定着させるものであって,前記画像形成部5から搬送される用紙を圧接しながら回転する一対の定着ローラ61と,該定着ローラ61を誘導加熱により加熱する加熱ヒータ62と,前記メイン制御部1からの制御指示に従って前記定着ローラ61や前記加熱ヒータ62等,前記定着装置6全体の駆動を制御する定着制御部63とを備えている。
前記定着制御部63は,CPU及びROM,RAM等の周辺装置を有しており,前記CPUで前記ROMに格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより,前記加熱ヒータ62の設定温度や駆動の有無などを制御する。なお,前記定着制御部63は,集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
さらに,前記定着制御部63は,前記メイン制御部1との間で信号伝送を行うための通信インターフェースとして通信ポート64を備えている。例えば,前記定着制御部63は,前記メイン制御部1との間で予め定められた所定の制御プロトコルに従ったシリアル通信を前記通信ポート64を介して実行する。
【0014】
また,前記複合機Xは,前記電源装置7に電力を供給するために商用交流電源に接続される電源コード91(第1の電源コードの一例)と,前記定着装置6に電力を供給するために商用交流電源に接続される電源コード92(第2の電源コードの一例)とを備えている。
前記電源装置7は,前記電源コード91を介して商用交流電源から供給された交流電圧を変圧し,前記定着装置6を除く,前記メイン制御部1,前記操作表示部2,前記画像読取部3,前記画像処理部4及び前記画像形成部5などに対して駆動電力を供給する。
一方,前記定着装置6では,内部に設けられた不図示の電源装置によって前記電源コード92を介して商用交流電源から供給される交流電圧に基づいて,前記加熱ヒータ62や前記定着制御部63に駆動電力が供給される。即ち,前記複合機Xにおいて,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63には,前記電源コード91及び前記電源コード92が前記商用交流電源接続されることによって個別に電力が供給される。
また,前記遮断回路8は,前記電源コード92から前記定着装置6への電力供給を強制的に遮断するためのリレー等を有する回路であって,該遮断の有無は前記メイン制御部1によって制御される。
【0015】
そして,前記複合機Xでは,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63が,相互に設けられた前記通信ポート11及び前記通信ポート64を介して所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を行うことにより,前記メイン制御部1から前記定着制御部63に制御指令が伝達される。これにより,前記定着制御部63は,前記メイン制御部1から伝送される前記制御指令に基づいて前記定着装置6(制御対象機器の一例)を制御する。
ところで,前記複合機Xでは,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63への電力供給が,前記電源コード91,92を介して個別に行われるため,前記電源コード91のプラグだけが商用交流電源のコンセントに接続され,前記電源コード92のプラグが商用交流電源のコンセントに接続されない状況も想定される。この場合,前記複合機Xにおいて,前記電源コード92から電力供給を受ける前記定着装置6だけが非駆動状態となり,該定着装置6を除く前記メイン制御部1などは駆動状態となる。そのため,前記メイン制御部1と前記定着制御部63との間で実行されるシリアル通信に異常が生じ,前記複合機Xにおいて印刷処理等を正常に実行することはできない。このとき,本来はユーザが前記電源コード92を商用交流電源に接続すれば前記シリアル通信の異常を復旧させることができる。
【0016】
しかしながら,前記複合機Xにおいて生じる前記シリアル通信の異常の原因は,前記電源コード92が接続されていないために前記定着制御部63が非駆動状態となっていることの他,例えば前記シリアル通信時のノイズなどによるものなどであることも考えられる。そのため,前記シリアル通信の異常原因が特定できず,前記シリアル通信の異常復旧に時間を要するおそれがある。
一方,前記電源コード92が接続されていない場合には前記定着制御部63が非駆動状態となるため,該定着制御部63の駆動の有無を確認することができれば,前記電源コード92が商用交流電源に接続されていない可能性を判断することができる。
そこで,本発明の実施の形態に係る前記複合機Xでは,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63によって後述の通信制御処理が実行されることにより,既存のハード構成を利用して前記電源コード92が商用交流電源に接続されていない可能性が判断され,その可能性がある場合に前記電源コード92の接続確認を促す旨がユーザに通知される。
【0017】
以下,図2のフローチャートに従って,前記複合機Xにおいて前記メイン制御部1及び前記定着制御部63によって実行される通信制御処理の手順の一例について説明する。なお,図2(a)のS1,S2,…は前記メイン制御部1の処理手順(ステップ)の番号を表し,図2(b)のS21,S22,…は前記定着制御部63の処理手順(ステップ)の番号を表している。
なお,前記メイン制御部1が前記シリアル通信によって前記定着制御部63に対して制御指令を伝送するための処理も,当該通信制御処理と並行して実行されるが,その処理については従来と同様であるため,ここでは説明を省略する。
【0018】
(メイン制御部1側:ステップS1〜S3)
まず,図2(a)に示すように,ステップS1において,前記メイン制御部1は,前記定着制御部63との間の通信モードを,所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を実行するシリアル通信モードに設定する。
そして,ステップS2において,前記メイン制御部1は,前記通信ポート11を介して前記定着制御部63との間でシリアル通信を実行することにより,前記定着制御部63に所定間隔(例えば160ms)でコマンド信号(定期信号に相当)を送信する。ここに,係る処理を実行するときの前記メイン制御部1が定期信号送信手段に相当する。
次に,ステップS3において,前記メイン制御部1は,前記ステップS2で前記コマンド信号が送信されてから予め設定された所定時間内(例えば160ms)に,前記定着制御部63からの応答信号が受信されたか否かを判断する。
ここで,前記所定時間内に前記応答信号が受信されたと判断された場合(S3のYes側),処理は前記ステップS2に戻され,その後も前記メイン制御部1は前記所定間隔で前記コマンド信号を送信する。
一方,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63の間のシリアル通信に異常が生じている場合等,前記所定時間内に前記応答信号が受信されないと判断された場合(S3のNo側),処理はステップS4に移行する。なお,前記シリアル通信の異常には,前記ステップS3において所定時間内に前記応答信号が受信されなかった場合の他,制御指令通信時のパリティビットやチェックサムによりシリアル通信の異常が検出された場合も含まれる。
【0019】
(メイン制御部1側:ステップS4〜S5)
続いて,前記メイン制御部1は,ステップS4において,前記所定時間内に前記定着制御部63からの応答信号が正常に受信されなかった回数を示すリトライ回数Nが所定回数(例えば3回)以上であるか否かを判断する。なお,前記リトライ回数Nは,前記ステップS3において前記所定時間内に前記定着制御部63からの応答信号が正常に受信されたと判断された場合に,前記メイン制御部1によってリセットされるものであり,その初期値は「1」である。
ここで,前記リトライ回数Nが所定回数未満であると判断された場合(S4のNo側),処理はステップS5に移行する。そして,ステップS5では,前記メイン制御部1によって,前記リトライ回数Nが「1」だけ加算され(N=N+1),処理が前記ステップS2に戻される。これにより,前記ステップS2において,前記メイン制御部1はシリアル通信によって前記コマンド信号を前記定着制御部63に再送することとなる。
他方,前記リトライ回数Nが所定回数以上であると判断された場合(S4のYes側),即ち前記コマンド信号を所定回数以上繰り返し送信した後でも前記応答信号が前記シリアル通信によって正常に受信されなかった場合には,シリアル通信異常が発生していると判断し,処理は後段で説明するステップS6に移行する。なお,ここでは前記リトライ回数が所定回数以上であることを条件にシリアル通信異常の発生を検知しているが,予め設定された所定期間経過後も前記応答信号が受信されない場合にシリアル通信に異常が発生していると判断してもよい。
【0020】
(定着制御部63側:ステップS21〜S24)
一方,図2(b)に示すように,前記定着制御部63は,ステップS21において,前記メイン制御部1との間の通信モードを,該メイン制御部1と同じく所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を実行するシリアル通信モードに設定する。
そして,ステップS22において,前記定着制御部63は,前記通信ポート64を介して行われるシリアル通信によって,前記メイン制御部1からの前記コマンド信号が予め設定された所定時間内(例えば500ms)に正常に受信されたか否かを判断する。なお,この所定時間は,前記メイン制御部1が前記ステップS4において,前記リトライ回数Nが所定回数以上であると判断されるまでの時間よりも長い時間である。
ここで,前記所定時間内に前記コマンド信号がシリアル通信によって正常に受信されたと判断された場合(S22のYes側),処理はステップS23に移行する。そして,ステップS23では,前記定着制御部63は,前記メイン制御部1からの前記コマンド定期信号の受信に応答して,前記通信ポート64を介してシリアル通信を実行することにより,前記メイン制御部1に応答信号を送信する。ここに,係る送信処理を実行するときの前記定着制御部63が応答信号送信手段に相当する。
他方,前記所定時間内に前記コマンド信号がシリアル通信によって正常に受信されなかったと判断された場合(S22のNo側),処理はステップS24に移行する。そして,ステップS24では,前記定着制御部63は,前記加熱ヒータ62の駆動を強制的に停止させる。これにより,前記メイン制御部1と前記定着制御部63との間のシリアル通信に異常が生じた場合でも,前記加熱ヒータ62の駆動が停止されることにより,該加熱ヒータ62による異常加熱が防止される。
【0021】
(定着制御部63側:ステップS25〜S26)
続いて,ステップS25において,前記定着制御部63は,前記メイン制御部1との間の通信モードを,前記シリアル通信モードから出力ポートモードに切り換える。即ち,前記複合機Xにおいて,前記通信ポート64は,前記シリアル通信モード及び前記出力ポートモードにおける前記メイン制御部1との間の信号伝送に兼用される。例えば,前記通信ポート64は,前記シリアル通信モードにおいて前記メイン制御部1の通信ポート11との間でシリアル通信を受信するための非同期式シリアル通信処理や同期式シリアル通信処理等を実行するものであるが,前記定着制御部63によって前記出力ポートモードに切り換えられることにより,それらのシリアル通信処理を停止し,単に前記定着制御部63からのデジタル信号を出力する出力ポートとして機能するものである。
そして,ステップS26において,前記定着制御部63は,前記通信ポート64から前記メイン制御部1に対して,既定間隔(例えば50ms)で信号レベル(電圧レベル)が「0」と「1」との間で変化する反転信号(レベル変化信号に相当)の出力を開始する。ここに,係る出力処理を実行するときの前記定着制御部63が異常時信号出力手段に相当する。
なお,その後,前記定着制御部63は,前記複合機Xの主電源がOFFされることにより,或いは予め設定された所定時間が経過することにより,前記反転信号の出力を停止する。
【0022】
(メイン制御部1側:ステップS6〜S7)
次に,図2(a)に戻り,前記メイン制御部1で実行されるステップS6以降の処理について説明する。
前記メイン制御部1は,ステップS6において,前記定着制御部63との間の通信モードを,前記シリアル通信モードから入力ポートモードに切り換える。即ち,前記複合機Xにおいて,前記通信ポート11は,前記シリアル通信モード及び前記入力ポートモードにおける前記定着制御63との間の信号伝送に兼用される。例えば,前記通信ポート11は,前記シリアル通信モードにおいて前記定着制御部63の通信ポート64との間でシリアル通信を受信するための非同期式シリアル通信処理や同期式シリアル通信処理等を実行するものであるが,前記メイン制御部1によって前記入力ポートモードに切り換えられることにより,それらのシリアル通信処理を停止し,単に前記通信ポート11に入力されるデジタル信号を前記メイン制御部1に入力する入力ポートとして機能するものである。
そして,ステップS7において,前記メイン制御部1は,予め設定された所定時間(例えば20ms)ごとに,前記通信ポート11に前記定着制御部63からの前記反転信号が入力されているか否かを判断する。ここに,係る処理を実行するときの前記メイン制御部1がレベル変化信号検出手段に相当する。
ここで,前記反転信号が入力されていると判断された場合には(S7のYes側),処理はステップS8に移行する。この場合,前記定着制御部63から前記反転信号が入力されていることから,前記電源コード92が接続されており,前記定着制御部63が駆動していると判断することができる。
【0023】
(メイン制御部1側:ステップS8〜S9)
そこで,ステップS8において,前記メイン制御部1は,前記定着制御部63との間のシリアル通信で異常が生じている旨を前記操作表示部2に表示させる。なお,前記メイン制御部1は,前記定着制御部63との間のシリアル通信に異常が生じている旨を,不図示の通信ネットワークを介して所定の管理サーバなどに報知するものであってもよい。ここに,係る報知処理を実行するときの前記メイン制御部1が通信異常報知手段に相当する。
続いて,ステップS9において,前記メイン制御部1は,前記遮断回路8によって前記電源コード92から前記定着装置6に供給される電力を強制的に遮断することにより,該定着装置6の駆動を停止させる。これにより前記定着制御部63自体に異常が生じたことが原因でシリアル通信に異常が生じている場合であっても,前記定着装置6における前記加熱ヒータ62の異常加熱を防止して安全性を確保することができる。
【0024】
(メイン制御部1側:ステップS10〜S11)
一方,前記メイン制御部1は,前記反転信号が予め設定された所定時間経過後も入力されなかった場合(S7のNo側),処理はステップS10に移行する。この場合,前記反転信号が前記通信ポート11に入力されていないため,前記定着制御部63が駆動していない可能性があり,その原因が前記電源コード92が商用交流電源のコンセントに接続されていないことにある可能性がある。
そこで,ステップS10において,前記メイン制御部1は,前記電源コード92の接続確認を促すための既定の情報を前記操作表示部2に表示させる。例えば,前記既定の情報は,「定着装置用の電源コードがコンセントに接続されているか確認して下さい」という文字情報であることが考えられる。ここに,係る表示処理を実行するときの前記メイン制御部1が確認表示手段に相当する。
これにより,ユーザは前記操作表示部2を参照することで,前記電源コード92が接続されていない可能性があることを認識することができるため,実際に前記電源コード92が接続されていない場合,その電源コード92をコンセントに接続することにより,早期に前記定着制御部63を駆動させて前記複合機Xを正常に動作させることが可能となる。
その後,前記メイン制御部1は,ステップS11において,ユーザによる前記複合機Xの主電源スイッチ(不図示)のオフ/オン操作を待ち受ける(S11のNo側)。そして,前記主電源スイッチ(不図示)のオフ/オン操作が確認されると(S11のYes側),処理は前記ステップS1に戻される。もちろん,前記メイン制御部1が電源投入時には常に前記通信制御処理を前記ステップS1から開始する構成であれば前記ステップS11の処理は省略可能である。なお,前記ステップS11での主電源スイッチのオフ/オン操作は,前記メイン制御部1を再起動させるために行われるもので,必ずしも主電源スイッチのオフ/オン操作に限定されず,前記操作表示部2に対するエラーをキャンセルするためのユーザ操作等に応じて処理が前記ステップS1に戻されてもよい。
【0025】
以上説明したように,前記複合機Xでは,前記メイン制御部1及び前記定着制御部63によって前記通信制御処理が実行されることにより,前記通信ポート11,63などの既存のハード構成を用いて,前記電源コード92が商用交流電源に接続されていないことが原因で前記シリアル通信に異常が生じている可能性があるか否かが判断され,その可能性が場合にその旨をユーザに通知することのできる構成が実現される。
従って,前記電源コード92が接続されていないことを検出するためのハード構成を別途設ける必要が無く,前記特許文献1に比べて構成を簡素化してコストを抑制することができる。もちろん,前記電源コード92が商用交流電源に接続されていないことが原因で前記シリアル通信に異常が生じている場合には,前記操作表示部2の表示により前記電源コード92の接続確認がユーザに促されるため,実際に前記電源コード92が接続されていない場合は,前記シリアル通信の異常状態の早期復旧を図ることができ,前記複合機Xの稼働効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
X :複合機(画像形成装置の一例)
1 :メイン制御部(第1の制御手段の一例)
11:通信ポート
2 :操作表示部(所定の表示手段の一例)
3 :画像読取部
4 :画像処理部
5 :画像形成部
6 :定着装置
61:定着ローラ
62:加熱ヒータ
63:定着制御部(第2の制御手段の一例)
64:通信ポート
7 :電源装置
8 :遮断回路
91:電源コード(第1の電源コードの一例)
92:電源コード(第2の電源コードの一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に設けられた通信ポートを介して所定の通信プロトコルに従ったシリアル通信を行う第1の制御手段及び第2の制御手段と,前記第1の制御手段及び前記第2の制御手段に対して個別に電力を供給するために商用交流電源に接続される第1の電源コード及び第2の電源コードとを備えてなり,前記第2の制御手段が前記第1の制御手段から伝送される制御信号に基づいて所定の制御対象機器を制御するものである画像形成装置であって,
前記第1の制御手段が,前記シリアル通信により前記第2の制御手段に所定間隔で定期信号を送信する定期信号送信手段と,前記定期信号の所定回数の送信後,或いは予め設定された所定期間経過後に,前記第2の制御手段からの応答信号が前記シリアル通信により正常に受信されないことを条件として,前記第1の制御手段の前記通信ポートに既定間隔で信号レベルが変化するレベル変化信号が入力されているか否かを検出するレベル変化信号検出手段と,前記レベル変化信号検出手段により前記レベル変化信号の入力が検出されなかった場合に,前記第2の電源コードの確認を促すための既定の情報を所定の表示手段に表示させる確認表示手段とを備えてなり,
前記第2の制御手段が,前記第1の制御手段から送信される前記定期信号の受信に応答して前記シリアル通信により前記第1の制御手段に前記応答信号を送信する応答信号送信手段と,予め設定された期間内に前記第1の制御手段からの前記定期信号が前記シリアル通信により正常に受信されないことを条件に,前記第2の制御手段の前記通信ポートから前記レベル変化信号を出力する異常時信号出力手段とを備えてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の制御手段が,前記レベル変化信号検出手段により前記レベル変化信号の入力が検出された場合に,前記シリアル通信における通信異常である旨を報知する通信異常報知手段を更に備えてなる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記既定の情報が,前記第2の電源コードと商用交流電源との接続確認を促す情報である請求項1又は2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の制御対象機器が定着装置である請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−209491(P2011−209491A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76904(P2010−76904)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】