説明

画像形成装置

【課題】画像濃度の制御の可変幅を拡大させて、適切に画像濃度を制御する。
【解決手段】静電潜像を担持する像担持体と、像担持体上の静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、交流電圧出力部と、交流電圧出力部によって出力された交流電圧を整流するための整流及び平滑する整流平滑部と、整流平滑部によって整流された電圧から直流電圧を出力する直流電圧生成部とを有し、交流電圧出力部から出力された交流電圧に直流電圧生成部から出力された直流電圧を重畳した電圧を現像手段に対して出力する現像電源部34と、現像電源部34から現像手段に印加する電圧を制御することにより、像担持体上に現像されるトナー画像の濃度を制御するCPU401と、整流平滑部と接地電位との間に定電圧素子とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセス等を用いた複写機・ファクシミリ・プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、像担持体上に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、帯電ローラ等の帯電部によってその表面を一様に帯電した像担持体をレーザ露光して静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置から供給されるトナーによって現像する。そして、現像によって得られたトナー像を転写手段で記録媒体上に転写し、記録媒体上に転写したトナー像を定着器により、定着させることによって画像形成を行うものが知られている。
【0003】
図5は、画像形成装置の一例としてのレーザビームプリンタの概略構成を示した図である。
【0004】
図5において、1は像担持体である感光ドラムを表し、11は感光ドラムの導体部、12は感光層である。なお、導体部11はグラウンドに接地されている。
【0005】
2は帯電ローラを表し、21は帯電ローラの導体軸、22は弾性のある抵抗体である。ここで、感光層12と抵抗体22は接触しており、印字動作中は、感光ドラム1、及び帯電ローラ2は、不図示の駆動部により、矢印方向に回転動作を行っている。
【0006】
23は帯電電源部を表し、印字動作中は交流電圧と直流電圧を重畳した電圧を帯電ローラ2の導体軸21に印加する。このとき、感光層12と抵抗体22の接触部近傍では、放電が発生して感光層12の表面が帯電される。なお、帯電された感光層12の表面電位は、帯電電源部23により印加される直流電圧とほぼ等しい電位となる。また、帯電電源部23で交流電圧を重畳するのは、放電を促進して感光層12の表面電位を均一化するためである。
【0007】
9はレーザ走査光を表している。不図示のレーザ及びレーザを駆動するドライバ回路により画像信号に応じて射出されたレーザ走査光9は、帯電された感光層12の表面に照射される。感光層12の表面は、レーザ走査光9が照射されると、生成された光電子により等価的に抵抗率が下がるため、帯電電源部23により帯電された表面電荷が減衰する。その結果、レーザ走査光9が照射された部分の電位の絶対値が減少し、感光層12の表面には画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0008】
3は現像ローラであり、31は中空の導体部、32は導体部31の内部に埋め込まれたマグネットである。導体部31の表面には、弾性のある現像ブレード33が接している。現像ローラ3と現像ブレード33の間には、不図示の攪拌棒の回転によって攪拌され、負電位に帯電されたトナー100が蓄積されている。なお、図示されていないが、現像ローラ3とトナー100の収容器は消耗部材であり、それらを含むプロセスカートリッジは、プリンタ本体に着脱可能となっており、トナー100が無くなるとユーザによって交換可能である。
【0009】
トナー100自体は磁性体であり、導体部31の表面とマグネット32で生じる電気鏡像効果による静電気力により、現像ローラ3の表面に引き付けられる。導体部31表面に付着したトナー100の多くは、現像ブレード33により剥ぎ取られ、表面近傍のトナー100のみが、導体部31と感光層12との隙間部に運ばれる。なお、感光層12と導体部31の間には、微小な隙間が設けてある。
【0010】
34は現像電源部を表し、印字動作中は交流電圧と直流電圧が重畳された電圧を現像ローラ3の導体部31に印加する。この現像電源部34の電圧印加により、感光層12と導体部31の隙間部には電界が生じて、導体部31の表面に付着したトナー100が導体部31から飛翔する。ここで、感光層12の表面においてレーザ走査光9が照射されていない部分は負電位に帯電されており、その表面電位VDは現像電源部34の直流電圧Vdcより低くなるように設定されている。このため、トナー100に対し、直流的には導体部31に押し戻す方向に力が作用することとなり、飛翔したトナー100は現像ローラ3に戻されることになる。
【0011】
一方、感光層12の表面において、レーザ走査光9が照射された部分は、表面の負電荷が減衰しているため、その部分の電位VLは現像電源部34の直流電圧Vdcより高くなる。このため、トナー100に対し、直流的には感光層12に引き付ける力が作用することとなり、飛翔したトナー100は感光層12に付着することになる。その結果、感光層12の表面には、レーザ走査光9により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。このように、現像電源部34の直流電圧Vdcを可変し、飛翔するトナー量を増加ないしは減少させることにより、画像濃度を制御することが可能となる。
【0012】
4は転写ローラを表し、41は導体軸、42は弾性のある抵抗体である。感光層12の表面上に形成されたトナー像は、転写ローラ4の方向に引き付けられる。また、抵抗体42の表面は感光層12と接していて、記録紙は抵抗体42と感光層12との間を搬送される。
【0013】
続いて、図6は、図5の現像電源部34の内部構成を示した回路図である。
【0014】
図6において、401は、パルス信号の出力及び停止を制御することによりプリンタ全体の動作を制御するCPUである。402は、CPU401から出力されたパルス信号を一定の増幅率で増幅を行う増幅部である。
【0015】
403は、増幅部402からの出力の直流成分をカットするためのカップリングコンデンサである。404は、カップリングコンデンサ403を介して入力された電圧を昇圧するための昇圧部であり、昇圧部404からは昇圧された交流電圧が出力される。405は整流ダイオード、406、409はコンデンサ、407、408は抵抗器である。
【0016】
昇圧部404より出力された交流電圧は、整流ダイオード405、平滑コンデンサ406により整流・平滑化される。平滑コンデンサ406の両端には抵抗器407、408が接続されており、共にグラウンドに接地されている。
【0017】
平滑コンデンサ406には、昇圧部404より出力された交流電圧を整流した電圧がチャージされる。この整流電圧は、抵抗器407、408によって分圧される。この結果、現像電源部34の出力端には、昇圧部404から出力された交流電圧に、抵抗器407に生じた直流電圧Vdcが重畳された電圧(以下、「現像バイアス」という)が出力されることになる。そして、CPU401が、その出力するパルス信号の1周期における信号の時間幅(以下、「デューティ」という)を変化させると整流電圧が変化し、それに伴って、抵抗器407に生じる直流電圧Vdcも変化する。このように、CPU401が現像バイアスの直流電圧成分を制御することにより、画像濃度の制御が行われる。
【0018】
例えば、特許文献1では、プロセスカートリッジの使用状況に応じて、現像電源部34の交流電圧のデューティを可変制御することにより、画像濃度の低下を防止する手法が提案されている。
【0019】
続いて、現像バイアスの直流電圧成分の制御を、上述したパルス信号のデューティの可変制御ではなく、交流電圧の振幅Vpp(以下、「交流振幅Vpp」という)の可変制御により行う例について、図7を用いて説明する。
【0020】
図7は、上述した図6のデューティ可変制御の場合と同様の回路であるが、図6と比べて、昇圧部404の入力である増幅部402の回路が異なる。現像バイアスの交流振幅Vppを可変するために、基準電源V2は可変電源419となっており、CPU401によって制御される。CPU401は、可変電源419を制御することによって昇圧部404の交流入力電圧の振幅を可変し、その結果、昇圧部404の出力、すなわち現像バイアスの交流振幅Vppが制御される。このように、CPU401により制御された交流振幅Vppに応じて、平滑コンデンサ406にチャージされる電圧が変化することで、現像バイアスの直流電圧Vdcが制御され、その結果、画像濃度も制御される。
【0021】
上述したどちらの現像バイアス制御方式においても、現像バイアスの直流電圧Vdcを可変することにより、感光体に飛翔するトナー量を増減させることができるので、画像濃度の制御を行うことができる。
【0022】
さらに、どちらの現像バイアス制御方式においても、現像バイアスの直流電圧成分を可変制御するための高圧出力部のフィードバック制御回路、もしくは直流電圧成分を別途生成するための昇圧トランスのような高圧出力回路は不要である。その結果、高価な高耐圧トランジスタや昇圧トランス等を使用することなく、安価に回路を構成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2004−037642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上述した従来の現像バイアス制御方式では、画像の濃度制御が充分でないことがあり、意図した濃度可変幅が得られない可能性がある。
【0025】
図8は、図6に示す、現像バイアス制御方式であるデューティ可変制御方式の現像電源部34の出力波形の模式図である。図8の(a)、(b)は、図6において、現像バイアスの交流電圧の振幅Vppを1400V一定にし、抵抗器R1、R2の抵抗値を10MΩ、4MΩに設定し、CPU401より出力されるパルス信号のデューティを25%、45%にした時の出力波形を示す。図8における現像バイアスの直流電圧Vdc、及び波形上端電圧Vminは、図6の抵抗器407、及び408にかかる電圧に対応する。
【0026】
抵抗器407、408の抵抗値をR1、R2とし、現像バイアスの交流振幅をVpp、波形下端電圧をVmax、波形下端電圧が出力される区間のデューティをDとすると、Vdc、Vmin、及びVmaxは、式(1)、(2)、(3)により表される。



【0027】
例えば、交流振幅Vppを一定とし、デューティDを大きくした場合、式(1)より直流電圧Vdcは低くなり、前述したように、レーザ走査光9が照射された部分の感光層12の表面のVL電位との相対電位差が大きくなる。その結果、より多くの飛翔したトナーが感光体に付着し、画像濃度が濃くなることになる。しかしながら、このとき、交流振幅Vppは一定であるが、デューティDを大きくしたことから、式(2)、(3)より、電圧Vminは増大し、電圧Vmaxはその電圧が+(プラス)側に向かって上昇する。電圧Vmaxは、その電圧が−(マイナス)方向に大きい程、トナーを感光層12に飛翔させ、電圧Vminは、その電圧が+(プラス)方向に大きい程、トナーを感光層12から引き戻すように働く。このことから、直流電圧Vdcは濃度が濃くなる方向に制御されるのに対して、電圧Vmaxと電圧Vminはトナーが感光層12へ飛翔するのを抑制する方向、即ち濃度を薄くする方向へ制御されてしまう。
【0028】
逆に、デューティDを一定にし、交流振幅Vppを可変して、直流電圧Vdcを制御した場合も、交流振幅Vppを大きくすることにより、式(1)よりVdcが低下し、画像濃度が濃くなることになる。ところが、交流振幅Vppを大きくすると、式(2)、(3)より電圧Vmin、及び電圧Vmaxも大きくなる。電圧Vmaxが大きくなることにより、画像濃度は濃くなるが、電圧Vminも大きくなることで画像濃度を薄くする方向に制御されるため、画像濃度を濃くしようとする制御が抑制される。
【0029】
このように、従来方式では、電圧Vmin、Vmaxが画像濃度を濃くしようとする制御が上手くいかない場合があり、画像濃度の制御が充分でなく、意図した濃度可変幅が得られないという課題があった。
【0030】
本発明は、このような状況に鑑み、画像濃度の制御の可変幅を拡大させて、適切に画像濃度を制御することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記課題を解決するため、本発明では、画像形成装置を次のとおりに構成する。
【0032】
静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体上の静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、交流電圧出力部と、前記交流電圧出力部によって出力された交流電圧を整流するための整流及び平滑する整流平滑部と、前記整流平滑部によって整流された電圧から直流電圧を出力する直流電圧生成部と、を有し、前記交流電圧出力部から出力された交流電圧に前記直流電圧生成部から出力された直流電圧を重畳した電圧を前記現像手段に対して出力する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から前記現像手段に印加する電圧を制御することにより、前記像担持体上に現像されるトナー画像の濃度を制御する濃度制御手段と、前記整流平滑部と接地電位との間に定電圧素子とを有する画像形成装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、画像濃度の制御の可変幅を拡大させて、適切に画像濃度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の現像バイアス回路の構成を示す図
【図2】実施例1の現像バイアス回路の各電圧値の変化例を示す図
【図3】実施例2の現像バイアス回路の構成を示す図
【図4】実施例2の現像バイアス回路の各電圧値の変化例を示す図
【図5】従来例の画像形成装置の概略構成を示す図
【図6】従来例のデューティ可変制御方式による現像バイアス回路の構成を示す図
【図7】従来例のVpp可変制御方式による現像バイアス回路の構成を示す図
【図8】従来例のデューティ可変制御方式の現像バイアス回路の出力波形図
【図9】従来例のデューティ可変制御方式の現像バイアス回路の各電圧値の変化例を示す図
【図10】従来例のVpp可変制御方式の現像バイアス回路の各電圧値の変化例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について、画像形成装置の実施例を詳しく説明する。
【実施例1】
【0036】
最初に、本実施例における画像形成装置の画像形成について簡単に説明する。画像形成装置においては、まず、帯電手段により、像担持体(感光ドラム)が一様に帯電される。次に、画像信号に応じて、レーザ走査光が像担持体に照射され、画像信号に応じた静電潜像が像担持体上に形成される。現像手段の現像ローラにはトナーが付着しており、現像手段の電源部から現像バイアス電圧を印加することにより、現像ローラに付着したトナーが像担持体のレーザ走査光が照射された部分に飛翔し、像担持体に付着する。これにより、像担持体上の静電潜像がトナー画像として現像され、可視化される。また、現像バイアス電圧を可変することにより、飛翔するトナー量の増減ができ、画像濃度を制御することができる。そして、現像によって得られたトナー画像は、転写手段によって記録材に転写され、転写されたトナー画像を定着手段によって記録材に定着させることにより、画像形成が行われる。
【0037】
図1は、本実施例の画像形成装置の現像電源部34(電圧印加手段)の内部構成を示した回路図である。
【0038】
図1において、401は、パルス信号の出力及び停止を制御することによりプリンタ全体の動作を制御するCPU(濃度制御手段)であり、出力するパルス信号のデューティ制御を行う。402は、CPU401より出力されたパルス信号を一定の増幅率で増幅を行うための増幅部である。増幅部402はトランジスタ410、412からなるプッシュプル増幅回路で構成されており、基準電源V2の電位と接地電位を基準として増幅された矩形波を出力する。
【0039】
403は、増幅部402からの出力の直流成分をカットするためのカップリングコンデンサである。404は、カップリングコンデンサ403を介して入力される電圧を昇圧するための昇圧部であり、本実施例では昇圧トランスを使用している。交流電圧出力部である昇圧トランス404からは昇圧された矩形波状の交流電圧が出力される。405は整流素子である整流ダイオード、406及び409はコンデンサ、407、418は抵抗器である。昇圧トランス404から出力された交流電圧は、整流平滑部を構成する整流ダイオード405、平滑コンデンサ406により、整流・平滑化される。そして、現像電源部34の出力端には、昇圧部404から出力された交流電圧に、直流電圧生成部である抵抗器407に生じた直流電圧が重畳された電圧が出力され、現像ローラに電圧印加される。
【0040】
図1では、CPU401によって出力されるパルス信号のデューティによらず、現像バイアス出力の波形上端電圧Vminを一定にするために、整流ダイオード405のカソード端子と接地電位の間に定電圧素子であるツェナーダイオード417を挿入している。さらに、接地電位とツェナーダイオード417のアノードに直列に接続された抵抗器418は、ツェナーダイオード417に過大なツェナー電流が流れるのを防止するために挿入されている。なお、抵抗器418は、その抵抗値が抵抗器407に比して十分に小さいものを選定する必要がある。
【0041】
現像バイアスの交流振幅をVpp、直流電圧をVdcとし、波形上端電圧をVmin、波形下端電圧をVmax、波形下端電圧が出力される区間のデューティをDとすると、本実施例におけるVdc、Vmin、及びVmaxは式(4)〜(6)で表される。なお、式中のVzは、ツェナーダイオード417のツェナー電圧を示す。



【0042】
例えば、交流振幅Vppを1400V、直流電圧Vdcの可変範囲を−250Vから−450Vまでとし、電圧Vminの中心設定値を140Vとする。そして、前述した従来の現像バイアス制御方式の図6において、抵抗器R1を10MΩ、抵抗器R2を4MΩに設定し、直流電圧Vdcを−250Vから−450Vまで変化させるために、デューティを25%から45%まで変化させる。この時のデューティDの変化に対する直流電圧Vdc、及び電圧Vminの出力値をプロットしたものが、図9である。前述した式(2)より、交流振幅Vppが1400Vで、デューティDが25%の時には電圧Vminは100Vであり、デューティDが45%の時には電圧Vminは180Vであり、80Vも変化してしまう。同様に、Vmaxについても、前述した式(3)より、Vminが100Vの時には−1300Vになり、Vminが180Vの時には−1220Vとなり、80Vも変化してしまう。
【0043】
これに対して、本実施例において、従来方式の図9と同様に、交流振幅Vppを1400Vとし、直流電圧Vdcを−250Vから−450Vまで変化させるために、デューティDを25%から45%まで変化させる。この時の、本実施例における直流電圧Vdcと電圧VminのデューティDによる電圧変化をプロットしたものが、図2である。本実施例では、ツェナー電圧Vz=140Vとなるツェナーダイオードを選定している。これにより、電圧Vminは140V一定となるため、電圧Vmaxも、式(6)より−1260V一定となる。従って、直流電圧Vdcを−250Vから−450Vまで変化させても、電圧Vminや電圧Vmaxが変動せず、従来方式のように直流電圧Vdcの変化と相反して、濃度変化が抑制されるような影響を受けない。また、電圧Vminを固定させるためのフィードバック回路が不要となるため、コストアップせずに、画像濃度の制御可変幅を拡大することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施例では、直流電圧Vdc制御のためのデューティ可変制御方式の回路において、ツェナーダイオードを用いて、現像バイアス出力の波形上端電圧Vminを一定にする。電圧Vminを一定にしたことによって、電圧Vmaxも一定となり、濃度制御の効果が抑制されることなく、画像濃度の制御の可変幅を拡大させて、適切に画像濃度を制御することができる。さらに、電圧Vminを固定させるためのフィードバック回路を必要としないため、コストアップを防止することもできる。
【実施例2】
【0045】
図3は、本実施例の画像形成装置の現像電源部34の内部構成を示す回路図である。実施例1は、現像バイアスのデューティDを可変制御する例であったが、本実施例では、交流振幅Vppを可変制御する例を示す。
【0046】
図3において、401は、パルス信号の出力及び停止を制御することによりプリンタ全体の動作を制御するCPUであり、出力するパルス信号のデューティは一定である。402は、CPU401より出力されたパルス信号を一定の増幅率で増幅を行うための増幅部である。増幅部402は、トランジスタ410、412からなるプッシュプル増幅回路で構成されており、基準電源V2の電位と接地電位を基準として増幅された矩形波が出力される。本実施例では、この基準電源V2を可変制御するために、可変電源419を設け、CPU401によって可変電源419の出力電圧を制御する。
【0047】
403は、増幅部402からの出力の直流成分をカットするためのカップリングコンデンサである。404は、カップリングコンデンサ403を介して入力される電圧を昇圧するための昇圧部であり、本実施例では昇圧トランスを使用している。昇圧トランス404からは、昇圧された矩形波状の交流電圧が出力される。ここで、CPU401が可変電源419の出力電圧を可変することによって、昇圧トランス404の交流電圧を制御することが可能となる。
【0048】
405は、整流ダイオード、425、426はコンデンサ、420、421は抵抗器である。
【0049】
本実施例では、現像バイアス出力の波形上端電圧Vminを一定にするために、整流ダイオード405のカソード端子と接地電位の間に、422、423、424の3つのツェナーダイオードを挿入している。必要とされるツェナー電圧を複数個に分割することによって、ツェナー電圧が50V以下の入手しやすい安価なツェナーダイオードを使用することができる。
【0050】
CPU401により制御される昇圧部404の交流振幅Vppが変化することによって、平滑コンデンサ425、426により整流される電圧が変化する。ツェナーダイオード422、423、424を使用することによって、平滑コンデンサ426により平滑される電圧は一定となる。但し、抵抗器421の抵抗値は、抵抗器420に比して十分に小さい必要がある。
【0051】
交流振幅Vppの総平滑電圧から平滑コンデンサ426の平滑電圧を引いた電圧が、平滑コンデンサ425にチャージされる。よって、平滑コンデンサ425にチャージされる電圧が現像バイアスの直流電圧Vdc、平滑コンデンサ426にチャージされる電圧が現像バイアスの波形上端電圧Vminとなる。そこで、現像バイアスの交流振幅をVpp、波形下端電圧をVmin、波形下端電圧をVmax、波形下端電圧が出力される区間のデューティをDとすると、Vdc、Vmin、及びVmaxは、式(7)、式(8)、式(9)で表される。なお、式中のVz1、Vz2、Vz3は、ツェナーダイオード422,423,424のツェナー電圧を示す。



【0052】
例えば、デューティDを35%一定とし、交流振幅Vppの中心設定値を1400V、電圧Vminの中心設定値を140Vとする。そして、前述した従来の現像バイアス制御方式の図7の回路図において、抵抗器R1を10MΩ、抵抗器R2を4MΩに設定し、直流電圧Vdcの可変範囲を−250Vから−450Vまでとする。その結果、交流振幅Vpp変化に対する電圧Vdc、Vmin、Vmaxの出力値は、前述した式(1)、式(2)、式(3)で表され、図10に示すように変化する。
【0053】
図10に示すように、直流電圧Vdcを−250Vから−450Vまで変化させるためには、前述した式(1)より、交流振幅Vppを1000Vから1800Vまで変化させる必要がある。このとき、前述した式(1)、(2)より、直流電圧Vdcが−250Vの時には、交流振幅Vppは1000V、電圧Vminは100Vとなり、直流電圧Vdcが−450Vの時には、交流振幅Vppは1800V、電圧Vminは180Vとなる。その結果、電圧Vminは100Vから180Vまで、80Vも変化してしまう。
【0054】
これに対して、本実施例において、従来方式の図10と同様に、デューティDを35%一定とし、直流電圧Vdcを−250Vから−450Vまで変化させるために、交流振幅Vppを1000Vから1800Vまで変化させる。この時の本実施例における電圧Vdc、Vmin、Vmaxの交流振幅Vppによる変化をプロットしたものが、図4である。本実施例では、図3のツェナーダイオード422、423、424のツェナー電圧Vz1、Vz2、Vz3は、全て47Vとしている。これにより、図4からも分かるように、電圧Vminは140V一定となる。従って、直流電圧Vdcを変化させても電圧Vminは変動しないため、前述した従来方式のようにVminが大きくなることによる濃度抑制の影響を受けない。
【0055】
さらに、従来方式の図10と同じ交流振幅Vppの可変幅では、従来方式よりも大きな直流電圧Vdcの変化量を得ることができる。すなわち、図10と同じ交流振幅Vppの可変幅が許容された場合、式(7)より、交流振幅Vppが1000Vでは、直流電圧Vdcは−210V、交流振幅Vppが1800Vでは、直流電圧Vdcは−490Vとなる。その結果、直流電圧Vdcは、−210Vから−490Vまで280Vの範囲で可変させることができる。上述した図10における200Vに比べて、本実施例では1.4倍の直流電圧Vdcの電圧可変幅を得ることができ、濃度可変幅の増加を実現することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施例では、直流電圧Vdc制御のための交流振幅Vpp可変制御方式の回路において、ツェナーダイオードを用いて、現像バイアス出力の波形上端電圧Vminを一定にする。電圧Vminを一定にすることによって、濃度制御の効果が抑制されることなく、画像濃度の制御の可変幅を拡大させて、適切に画像濃度を制御することができる。さらに、電圧Vminを固定させるためのフィードバック回路が不要となるため、コストアップを防止することもできる。
【符号の説明】
【0057】
34 現像電源部(電圧印加手段に相当)
401 CPU(濃度制御手段に相当)
402 増幅部
404 昇圧トランス(交流電圧出力部に相当)
405 ダイオード(整流素子)
407,418、420,421 抵抗器
417,422,423,424 ツェナーダイオード(定電圧素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、
交流電圧出力部と、前記交流電圧出力部によって出力された交流電圧を整流するための整流及び平滑する整流平滑部と、前記整流平滑部によって整流された電圧から直流電圧を出力する直流電圧生成部と、を有し、前記交流電圧出力部から出力された交流電圧に前記直流電圧生成部から出力された直流電圧を重畳した電圧を前記現像手段に対して出力する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段から前記現像手段に印加する電圧を制御することにより、前記像担持体上に現像されるトナー画像の濃度を制御する濃度制御手段と、
前記整流平滑部と接地電位との間に定電圧素子とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定電圧素子はツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ツェナーダイオードと前記接地電位との間に、抵抗が直列に接続されたことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度制御手段は、前記交流電圧出力部から出力される交流電圧を可変することにより、画像の濃度を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−232450(P2011−232450A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101172(P2010−101172)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】