画像形成装置
【課題】モノクロ印刷時における逆転写を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、モノクロ印刷モード時および前記カラー印刷モード時に使用する第1像担持体と、転写媒体の移動方向において第1像担持体の下流側に配置されるとともに、カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、第1帯電部材および第2帯電部材を制御して第1像担持体および第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、制御装置は、モノクロ印刷モード時に、第2像担持体の表面電位の絶対値(900V)を、第1像担持体の表面電位の絶対値(760V)よりも大きくする。
【解決手段】画像形成装置は、モノクロ印刷モード時および前記カラー印刷モード時に使用する第1像担持体と、転写媒体の移動方向において第1像担持体の下流側に配置されるとともに、カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、第1帯電部材および第2帯電部材を制御して第1像担持体および第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、制御装置は、モノクロ印刷モード時に、第2像担持体の表面電位の絶対値(900V)を、第1像担持体の表面電位の絶対値(760V)よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロ印刷とカラー印刷を実行可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置として、各色のトナーが収容された現像器と、各色に対応した感光体ドラムとを備え、各現像器からのトナー供給により各感光体ドラム上に形成されたトナー像を用紙に転写させるものが知られている(特許文献1参照)。この画像形成装置では、モノクロ用(通常、ブラック)の感光体ドラムが用紙搬送方向の最上流側に配置されており、モノクロ印刷を行う場合には、モノクロ用の感光体ドラムのみにトナー像を形成して、用紙に転写している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−3377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モノクロ印刷を行った場合、モノクロ用の感光体ドラムよりも用紙搬送方向の下流側に配置されたカラー用の感光体ドラムと、用紙上に形成されたモノクロのトナーとが接触するため、用紙上のトナーがカラー用の感光体に付着する(以下、逆転写という。)ことがある。そして、このような逆転写が起こると、逆転写によりカラー用の感光体に移ったトナーが再度用紙に転写されてゴースト画像が形成されてしまう、などといった問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、モノクロ印刷時における逆転写を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、転写媒体上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モードと、転写媒体上にカラー画像を形成するカラー印刷モードとを実行可能な画像形成装置であって、少なくとも前記モノクロ印刷モード時に使用する第1像担持体と、前記転写媒体の移動方向において前記第1像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、前記第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、前記第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、前記第1帯電部材および前記第2帯電部材を制御して前記第1像担持体および前記第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、制御装置が、モノクロ印刷モード時に、第2像担持体の表面電位の絶対値を、第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすると、第2像担持体と用紙との電位差が第1像担持体と用紙との電位差よりも大きいため、現像剤が用紙に引き付けられる。これにより、第2像担持体への現像剤の逆転写を抑えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モノクロ印刷時における第2像担持体への逆転写を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の側断面図である。
【図2】感光体ドラムと現像ローラの離間を説明する図である。
【図3】制御装置から現像ローラ、帯電器および転写ローラへの電圧の印加を説明する図である。
【図4】第2感光体ドラムの表面電位のみを高くする形態を示すマップである。
【図5】2色目以降のすべての感光体ドラムの表面電位を高くする形態を示すマップである。
【図6】2色目の表面電位と3色目以降の表面電位とに差を付ける形態を示すマップである。
【図7】1色面の表面電位を低くする形態を示すマップである。
【図8】湿度センサを設けた画像形成装置を示す側断面図である。
【図9】モノクロモードでの通常時よりも高湿時に2色目以降の表面電位を高くする形態を示すマップである。
【図10】モノクロモードでの通常時とカラーモード時とで表面電位を同じにする形態を示すマップである。
【図11】モノクロモードでの通常時よりも高湿時に転写バイアス(転写電流)の絶対値を高くする形態を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、カラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0011】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側」、紙面に向かって右側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体2内に、転写媒体の一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90と、制御装置100とを備えている。
【0013】
装置本体2の上部には、開口部2Aが形成されている。そして、この開口部2Aは、装置本体2に回動可能に支持されるアッパーカバー3によって開閉されるようになっている。アッパーカバー3の上面は、装置本体2から排出された用紙Pを蓄積する排紙トレイ4となっており、下面には後述するLEDユニット40を保持する複数のLED取付部材5が設けられている。
【0014】
給紙部20は、装置本体2内の下部に設けられ、装置本体2に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24および分離パッド25を主に備えている。
【0015】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Pが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、紙粉取りローラ26とピンチローラ27の間を通過する過程で紙粉が除去された後、搬送経路28を通って後ろ向きに方向転換され、画像形成部30に供給される。
【0016】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、クリーニング部10と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0017】
LEDユニット40は、LED取付部材5に対して揺動可能に連結されており、装置本体2に設けられる位置決め部材によって適宜位置決めされて支持されている。
【0018】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー3と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、像担持体の一例としての感光体ドラム51や、帯電部材の一例としての帯電器52、現像ローラ53、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容室54などを備えて構成されている。
プロセスカートリッジ50は、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各色のトナーが入った50K,50Y,50M,50Cの符号で示すものが用紙Pの搬送方向(転写媒体の移動方向)の上流側からこの順で並んで配置されている。なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した感光体ドラム51、帯電器52、現像ローラ53および転写ローラ74を特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付したり、上流側から順に、第1、第2、第3、第4の文字を各部材の名称の先頭に付ける場合がある。
【0019】
すなわち、例えば各感光体ドラム51を、上流側から順に、第1感光体ドラム51K(第1像担持体)、第2感光体ドラム51Y(第2像担持体)、第3感光体ドラム51M(第3像担持体)、第4感光体ドラム51Cとも呼ぶ場合がある。
【0020】
図2に示すように、現像ローラ53は、公知の接離機構110(特許文献1に記載の切替機構と同様である。)を制御装置100により制御することで、感光体ドラム51に対して近接・離間可能となっている。具体的に、カラー印刷モードにおいては、すべての現像ローラ53K,53Y,53M,53Cが、それぞれ対応する感光体ドラム51K,51Y,51M,51Cに接触して各感光体ドラム51K,51Y,51M,51Cにトナーを供給するようになっている。また、モノクロ印刷モードにおいては、ブラック用(モノクロ用)の第1現像ローラ53Kのみが第1感光体ドラム51Kに接触し、その他の3色の現像ローラ53Y,53M,53Cは、対応する感光体ドラム51Y,51M,51Cから離間するようになっている。
【0021】
図1に示すように、転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写部材の一例としての転写ローラ74を主に備えている。
【0022】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に無端状のベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム51に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム51に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によってトナーの帯電極性とは異なる極性の転写バイアス(転写電圧)が掛けられる。
【0023】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の後側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0024】
このように構成される画像形成部30では、カラー印刷モードの場合、まず、各感光体ドラム51の表面が、各帯電器52により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に各現像ローラ53よりトナーが供給されることで、各感光体ドラム51上にトナー像が担持される。
【0025】
搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光体ドラム51と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム51上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0026】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、前方に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Pを搬送する複数対の搬送ローラ92を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、装置本体2の外部に排出されて排紙トレイ4に蓄積される。
【0027】
制御装置100は、CPU,ROM,RAMなどを有し、予め用意されたプログラムに従い、印刷データの受信、給紙部20、画像形成部30、排紙部90および接離機構110の制御を行うように構成されている。具体的に、制御装置100は、用紙P上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モード(以下、モノクロモード)と、用紙P上にカラー画像を形成するカラー印刷モード(以下、カラーモード)とを実行可能に構成されており、各モードにおいては、図3に示すように、現像ローラ53、帯電器52、転写ローラ74に印加する電圧を適宜制御している。
【0028】
制御装置100は、各帯電器52を制御して各感光体ドラム51の表面電位を変化(例えば0Vから760Vへ変化など)させており、特に、モノクロモード時においては、以下に説明するような特別な制御を実行する。
【0029】
<帯電器の制御>
次に、制御装置100による帯電器52に印加する帯電バイアス(帯電用の電圧)の制御について説明する。
なお、本実施形態においては、正帯電性のトナーを一例に説明するが、負帯電性のトナーでも本発明を同様に適用することができる。帯電バイアスの極性は、トナーの帯電極性に応じて適宜設定される。また、本実施形態においては、公知の制御によって、各現像ローラ53や各転写ローラ74に適宜電圧を印加するので、この説明は省略する。
【0030】
帯電バイアスは、感光体ドラム51を帯電させる電位を制御するための電圧であり、当該帯電器52(グリッド)に印加される。具体的に、制御装置100は、図4に示すマップに基づいて、各帯電器52に印加する帯電バイアスを制御している。
【0031】
図4に示すように、カラーモードでは、制御装置100は、各帯電器52に同じ値の帯電バイアスを印加することで、各感光体ドラム51の表面電位をすべて同じ値(例えば760V)の電位にする。
【0032】
そして、制御装置100は、モノクロモードを実行する場合には、第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値が、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きな値(例えば900V)となるように、カラーモード時よりも大きな帯電バイアスを第2帯電器52Yに印加する。これにより、モノクロモード時に第1感光体ドラム51Kから用紙Pに転写されたブラックのトナーが、それ以降の感光体ドラム51Y,51M,51Cに逆転写することが抑制される。
【0033】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
制御装置100がモノクロモード時に第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくするので、第2感光体ドラム51Yと用紙との電位差が第1感光体ドラム51Kと用紙との電位差よりも大きくなり、トナーが用紙に引き付けられる。これにより、第2感光体ドラム51Yへのトナーの逆転写を抑えることができる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0035】
前記実施形態では、モノクロモードにおいて第2感光体ドラム51Yの表面電位のみを第1感光体ドラム51Kの表面電位よりも大きくしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、モノクロモードにおいて、第1感光体ドラム51K以外のすべての感光体ドラム51(第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51C)の表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくしてもよい。すなわち、モノクロモードにおいて、第2帯電器52Y、第3帯電器52M、第4帯電器52Cの帯電バイアスを、第1帯電器52Kの帯電バイアスよりも大きくしてもよい。これによれば、3色目、4色目への逆転写をより抑制することができる。
【0036】
また、図6に示すように、モノクロモード時において、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位の絶対値を、第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値よりも小さく、かつ、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくしてもよい。これによれば、トナーのチャージアップによる逆転写を抑制することができる。
【0037】
ここで、「チャージアップ」とは、用紙上のトナーが各感光体ドラム51を通過する度に徐々に強く帯電していくことをいう。そして、このようなチャージアップが起きると、帯電しすぎることによるトナー粒子間およびトナーと用紙間の放電が起き、負に帯電するトナーが発生することがある。このようにして負に帯電したトナーが発生すると、3色目以降においてトナーの逆転写が起こってしまうため、3色目以降においては、感光体ドラム51の表面電位を小さくすることで、トナーのチャージアップが抑制される。
【0038】
前記実施形態では、モノクロモード時の第2感光体ドラム51Yの表面電位をカラーモード時よりも大きくなるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、モノクロモード時に第1感光体ドラム51Kの表面電位をカラーモード時よりも小さくすることで、第2感光体ドラム51Yの表面電位を第1感光体ドラム51Kの表面電位よりも相対的に大きくしてもよい。この場合でも、モノクロモードですべての感光体ドラム51の表面電位を700Vに下げる形態に比べて、逆転写を抑制することができる。ただし、前記実施形態のようにモノクロモード時の第2感光体ドラム51Yの表面電位をカラーモード時よりも大きくすると、逆転写をより抑制できるので好ましい。
【0039】
また、図8に示すように、装置本体2に検知手段の一例としての湿度センサ200を設け、この湿度センサ200で検知した装置本体2外の湿度に基づいて帯電バイアスを制御するようにしてもよい。具体的には、例えば、図9に示すように、制御装置100が、モノクロモード時において、湿度センサ200で検知された湿度が所定値以上である場合には(高湿)、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合(通常)よりも大きくするように構成されていてもよい。
【0040】
つまり、モノクロモードで湿度が通常である場合には、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kよりも大きな値(例えば800V)とし、高湿である場合には、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を通常時(800V)よりも大きな900Vにしてもよい。これは、高湿環境下において、転写媒体に転写されたトナーから電荷が逃げても、その逃げた量を、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cから電荷を得ることで補うことができるためである。これによれば、逆転写が発生しやすい高湿環境下で、逆転写をより抑制することができる。なお、検知手段としては、装置本体内の湿度を検知する湿度センサを採用してもよい。
【0041】
また、図10に示すように、モノクロモードで湿度が通常である場合には、カラーモード時と同じようにすべての感光体ドラム51の表面電位を同じ値にし、モノクロモードで湿度が所定値以上である場合(高湿)に、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kよりも大きな値にしてもよい。
【0042】
なお、図5、図9、図10の形態では、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位をすべて大きくしたが、本発明はこれに限定されず、少なくとも第2感光体ドラム51Yの表面電位を大きくすればよい。すなわち、例えば、第2感光体ドラム51Yおよび第3感光体ドラム51Mの表面電位のみを大きくしてもよいし、第2感光体ドラム51Yおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位のみを大きくしてもよい。
【0043】
また、図11に示すように、モノクロモード時において、湿度センサ200で検知された湿度が所定値以上である場合(高湿)には、第2転写ローラ74Y、第3転写ローラ74M、第4転写ローラ74Cに印加される転写バイアス(転写電流)の絶対値を、湿度が所定値未満である場合(通常)よりも大きくしてもよい。ここで、図11では、転写電流で表示しているが、転写電流と転写電圧は比例の関係にあるので、この表の数値を転写電圧と見ても差し支えない。そして、このように通常時よりも高湿時の転写電圧を大きくすることで、高湿時における2色目以降の転写ローラ74と感光体ドラム51との電位差が大きくなるので、逆転写をより抑制することができる。
【0044】
前記実施形態では、4色のトナーに対応するように感光体ドラム51を4つ設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば3色の場合には感光体ドラムを3つ、5色以上の場合には感光体ドラムを5つ以上設ければよい。
【0045】
前記実施形態では、1つの感光体ドラムで黒色を印字するようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えばイエロー、マゼンタ、シアンの3色で黒色を印字してもよい。なお、この場合、黒色の印字に寄与する3色の感光体ドラムが第1像担持体に相当し、これよりも下流側にある他の色(例えばライトマゼンタ、ライトシアンなど)の感光体ドラムが第2像担持体に相当する。
【0046】
前記実施形態では、転写媒体として用紙Pを例示したが、本発明はこれに限定されず、転写媒体は、例えば中間転写ベルトであってもよい。
前記実施形態では、像担持体として感光体ドラム51を例示したが、本発明はこれに限定されず、像担持体は、例えばベルト状の感光体であってもよい。
【0047】
前記実施形態では、帯電部材として帯電ワイヤを有する帯電器52を例示したが、本発明はこれに限定されず、帯電部材は、例えば感光体ドラムに接触することで帯電させる帯電ローラであってもよい。
【0048】
前記実施形態では、転写部材として転写ローラ74を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写部材は、導電性ブラシや導電性板バネなど、転写バイアスが印加されるものであればよい。
【0049】
前記実施形態においては、画像形成装置としてカラープリンタを例示したが、複合機やコピー機に本発明を適用することもできる。
前記実施形態においては、接離機構110を設けたが、本発明はこれに限定されず、接離機構はなくてもよい。この場合であっても、2色目以降の逆転写を抑えることで、2色目以降のトナー収容室内での混色を抑えるといった効果を発揮することができる。
【0050】
また、転写バイアスの制御方法は、定電流制御であってもよいし、定電圧制御であってもよい。ここで、定電流制御とは、転写ローラに流れる電流を検知して、その電流が一定になるように転写電圧を制御する方法をいう。この方法では、一見、感光体ドラムの表面電位を高くすると、これに伴って転写ローラに印加する転写電圧の絶対値が小さくなり、両者間の電位差を大きくすることができないように思われるが、発明者が行った実験により、逆転写が発生しやすい高湿環境下では電位差が大きくなることが確認されている。
【0051】
すなわち、高湿環境下では、湿気を吸った用紙の抵抗が小さくなることによって、転写電流のリーク(転写電流の一部が用紙に流れる現象)が発生し、検知している転写電流の値よりも感光体ドラムに流れる電流の値が小さくなるので、両者間の電位差が小さくなると考えられる。
【0052】
しかし、感光体ドラムの表面電位を上げると、感光体ドラムとアース(0V)との電位差が大きくなることで、感光体ドラムに流れる電流が大きくなり、転写電流のリークが小さくなる。その結果、両者間の電位差が大きくなっているものと考えられる。
【0053】
そのため、定電流制御であっても良好に本発明による効果を発揮することができる。なお、定電圧制御とは転写ローラに印加する転写バイアス(転写電圧)を一定にする制御であり、転写バイアスが感光体ドラムの表面変位の変動によって変化しないので、確実に本発明による効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 カラープリンタ
51K 第1感光体ドラム
51Y 第2感光体ドラム
52K 第1帯電器
52Y 第2帯電器
100 制御装置
P 用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロ印刷とカラー印刷を実行可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置として、各色のトナーが収容された現像器と、各色に対応した感光体ドラムとを備え、各現像器からのトナー供給により各感光体ドラム上に形成されたトナー像を用紙に転写させるものが知られている(特許文献1参照)。この画像形成装置では、モノクロ用(通常、ブラック)の感光体ドラムが用紙搬送方向の最上流側に配置されており、モノクロ印刷を行う場合には、モノクロ用の感光体ドラムのみにトナー像を形成して、用紙に転写している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−3377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モノクロ印刷を行った場合、モノクロ用の感光体ドラムよりも用紙搬送方向の下流側に配置されたカラー用の感光体ドラムと、用紙上に形成されたモノクロのトナーとが接触するため、用紙上のトナーがカラー用の感光体に付着する(以下、逆転写という。)ことがある。そして、このような逆転写が起こると、逆転写によりカラー用の感光体に移ったトナーが再度用紙に転写されてゴースト画像が形成されてしまう、などといった問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、モノクロ印刷時における逆転写を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、転写媒体上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モードと、転写媒体上にカラー画像を形成するカラー印刷モードとを実行可能な画像形成装置であって、少なくとも前記モノクロ印刷モード時に使用する第1像担持体と、前記転写媒体の移動方向において前記第1像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、前記第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、前記第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、前記第1帯電部材および前記第2帯電部材を制御して前記第1像担持体および前記第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、制御装置が、モノクロ印刷モード時に、第2像担持体の表面電位の絶対値を、第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすると、第2像担持体と用紙との電位差が第1像担持体と用紙との電位差よりも大きいため、現像剤が用紙に引き付けられる。これにより、第2像担持体への現像剤の逆転写を抑えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モノクロ印刷時における第2像担持体への逆転写を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の側断面図である。
【図2】感光体ドラムと現像ローラの離間を説明する図である。
【図3】制御装置から現像ローラ、帯電器および転写ローラへの電圧の印加を説明する図である。
【図4】第2感光体ドラムの表面電位のみを高くする形態を示すマップである。
【図5】2色目以降のすべての感光体ドラムの表面電位を高くする形態を示すマップである。
【図6】2色目の表面電位と3色目以降の表面電位とに差を付ける形態を示すマップである。
【図7】1色面の表面電位を低くする形態を示すマップである。
【図8】湿度センサを設けた画像形成装置を示す側断面図である。
【図9】モノクロモードでの通常時よりも高湿時に2色目以降の表面電位を高くする形態を示すマップである。
【図10】モノクロモードでの通常時とカラーモード時とで表面電位を同じにする形態を示すマップである。
【図11】モノクロモードでの通常時よりも高湿時に転写バイアス(転写電流)の絶対値を高くする形態を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、カラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0011】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側」、紙面に向かって右側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体2内に、転写媒体の一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90と、制御装置100とを備えている。
【0013】
装置本体2の上部には、開口部2Aが形成されている。そして、この開口部2Aは、装置本体2に回動可能に支持されるアッパーカバー3によって開閉されるようになっている。アッパーカバー3の上面は、装置本体2から排出された用紙Pを蓄積する排紙トレイ4となっており、下面には後述するLEDユニット40を保持する複数のLED取付部材5が設けられている。
【0014】
給紙部20は、装置本体2内の下部に設けられ、装置本体2に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24および分離パッド25を主に備えている。
【0015】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Pが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、紙粉取りローラ26とピンチローラ27の間を通過する過程で紙粉が除去された後、搬送経路28を通って後ろ向きに方向転換され、画像形成部30に供給される。
【0016】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、クリーニング部10と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0017】
LEDユニット40は、LED取付部材5に対して揺動可能に連結されており、装置本体2に設けられる位置決め部材によって適宜位置決めされて支持されている。
【0018】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー3と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、像担持体の一例としての感光体ドラム51や、帯電部材の一例としての帯電器52、現像ローラ53、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容室54などを備えて構成されている。
プロセスカートリッジ50は、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各色のトナーが入った50K,50Y,50M,50Cの符号で示すものが用紙Pの搬送方向(転写媒体の移動方向)の上流側からこの順で並んで配置されている。なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した感光体ドラム51、帯電器52、現像ローラ53および転写ローラ74を特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付したり、上流側から順に、第1、第2、第3、第4の文字を各部材の名称の先頭に付ける場合がある。
【0019】
すなわち、例えば各感光体ドラム51を、上流側から順に、第1感光体ドラム51K(第1像担持体)、第2感光体ドラム51Y(第2像担持体)、第3感光体ドラム51M(第3像担持体)、第4感光体ドラム51Cとも呼ぶ場合がある。
【0020】
図2に示すように、現像ローラ53は、公知の接離機構110(特許文献1に記載の切替機構と同様である。)を制御装置100により制御することで、感光体ドラム51に対して近接・離間可能となっている。具体的に、カラー印刷モードにおいては、すべての現像ローラ53K,53Y,53M,53Cが、それぞれ対応する感光体ドラム51K,51Y,51M,51Cに接触して各感光体ドラム51K,51Y,51M,51Cにトナーを供給するようになっている。また、モノクロ印刷モードにおいては、ブラック用(モノクロ用)の第1現像ローラ53Kのみが第1感光体ドラム51Kに接触し、その他の3色の現像ローラ53Y,53M,53Cは、対応する感光体ドラム51Y,51M,51Cから離間するようになっている。
【0021】
図1に示すように、転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写部材の一例としての転写ローラ74を主に備えている。
【0022】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に無端状のベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム51に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム51に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によってトナーの帯電極性とは異なる極性の転写バイアス(転写電圧)が掛けられる。
【0023】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の後側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0024】
このように構成される画像形成部30では、カラー印刷モードの場合、まず、各感光体ドラム51の表面が、各帯電器52により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に各現像ローラ53よりトナーが供給されることで、各感光体ドラム51上にトナー像が担持される。
【0025】
搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光体ドラム51と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム51上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0026】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、前方に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Pを搬送する複数対の搬送ローラ92を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、装置本体2の外部に排出されて排紙トレイ4に蓄積される。
【0027】
制御装置100は、CPU,ROM,RAMなどを有し、予め用意されたプログラムに従い、印刷データの受信、給紙部20、画像形成部30、排紙部90および接離機構110の制御を行うように構成されている。具体的に、制御装置100は、用紙P上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モード(以下、モノクロモード)と、用紙P上にカラー画像を形成するカラー印刷モード(以下、カラーモード)とを実行可能に構成されており、各モードにおいては、図3に示すように、現像ローラ53、帯電器52、転写ローラ74に印加する電圧を適宜制御している。
【0028】
制御装置100は、各帯電器52を制御して各感光体ドラム51の表面電位を変化(例えば0Vから760Vへ変化など)させており、特に、モノクロモード時においては、以下に説明するような特別な制御を実行する。
【0029】
<帯電器の制御>
次に、制御装置100による帯電器52に印加する帯電バイアス(帯電用の電圧)の制御について説明する。
なお、本実施形態においては、正帯電性のトナーを一例に説明するが、負帯電性のトナーでも本発明を同様に適用することができる。帯電バイアスの極性は、トナーの帯電極性に応じて適宜設定される。また、本実施形態においては、公知の制御によって、各現像ローラ53や各転写ローラ74に適宜電圧を印加するので、この説明は省略する。
【0030】
帯電バイアスは、感光体ドラム51を帯電させる電位を制御するための電圧であり、当該帯電器52(グリッド)に印加される。具体的に、制御装置100は、図4に示すマップに基づいて、各帯電器52に印加する帯電バイアスを制御している。
【0031】
図4に示すように、カラーモードでは、制御装置100は、各帯電器52に同じ値の帯電バイアスを印加することで、各感光体ドラム51の表面電位をすべて同じ値(例えば760V)の電位にする。
【0032】
そして、制御装置100は、モノクロモードを実行する場合には、第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値が、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きな値(例えば900V)となるように、カラーモード時よりも大きな帯電バイアスを第2帯電器52Yに印加する。これにより、モノクロモード時に第1感光体ドラム51Kから用紙Pに転写されたブラックのトナーが、それ以降の感光体ドラム51Y,51M,51Cに逆転写することが抑制される。
【0033】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
制御装置100がモノクロモード時に第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくするので、第2感光体ドラム51Yと用紙との電位差が第1感光体ドラム51Kと用紙との電位差よりも大きくなり、トナーが用紙に引き付けられる。これにより、第2感光体ドラム51Yへのトナーの逆転写を抑えることができる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0035】
前記実施形態では、モノクロモードにおいて第2感光体ドラム51Yの表面電位のみを第1感光体ドラム51Kの表面電位よりも大きくしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、モノクロモードにおいて、第1感光体ドラム51K以外のすべての感光体ドラム51(第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51C)の表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくしてもよい。すなわち、モノクロモードにおいて、第2帯電器52Y、第3帯電器52M、第4帯電器52Cの帯電バイアスを、第1帯電器52Kの帯電バイアスよりも大きくしてもよい。これによれば、3色目、4色目への逆転写をより抑制することができる。
【0036】
また、図6に示すように、モノクロモード時において、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位の絶対値を、第2感光体ドラム51Yの表面電位の絶対値よりも小さく、かつ、第1感光体ドラム51Kの表面電位の絶対値よりも大きくしてもよい。これによれば、トナーのチャージアップによる逆転写を抑制することができる。
【0037】
ここで、「チャージアップ」とは、用紙上のトナーが各感光体ドラム51を通過する度に徐々に強く帯電していくことをいう。そして、このようなチャージアップが起きると、帯電しすぎることによるトナー粒子間およびトナーと用紙間の放電が起き、負に帯電するトナーが発生することがある。このようにして負に帯電したトナーが発生すると、3色目以降においてトナーの逆転写が起こってしまうため、3色目以降においては、感光体ドラム51の表面電位を小さくすることで、トナーのチャージアップが抑制される。
【0038】
前記実施形態では、モノクロモード時の第2感光体ドラム51Yの表面電位をカラーモード時よりも大きくなるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、モノクロモード時に第1感光体ドラム51Kの表面電位をカラーモード時よりも小さくすることで、第2感光体ドラム51Yの表面電位を第1感光体ドラム51Kの表面電位よりも相対的に大きくしてもよい。この場合でも、モノクロモードですべての感光体ドラム51の表面電位を700Vに下げる形態に比べて、逆転写を抑制することができる。ただし、前記実施形態のようにモノクロモード時の第2感光体ドラム51Yの表面電位をカラーモード時よりも大きくすると、逆転写をより抑制できるので好ましい。
【0039】
また、図8に示すように、装置本体2に検知手段の一例としての湿度センサ200を設け、この湿度センサ200で検知した装置本体2外の湿度に基づいて帯電バイアスを制御するようにしてもよい。具体的には、例えば、図9に示すように、制御装置100が、モノクロモード時において、湿度センサ200で検知された湿度が所定値以上である場合には(高湿)、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合(通常)よりも大きくするように構成されていてもよい。
【0040】
つまり、モノクロモードで湿度が通常である場合には、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kよりも大きな値(例えば800V)とし、高湿である場合には、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を通常時(800V)よりも大きな900Vにしてもよい。これは、高湿環境下において、転写媒体に転写されたトナーから電荷が逃げても、その逃げた量を、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cから電荷を得ることで補うことができるためである。これによれば、逆転写が発生しやすい高湿環境下で、逆転写をより抑制することができる。なお、検知手段としては、装置本体内の湿度を検知する湿度センサを採用してもよい。
【0041】
また、図10に示すように、モノクロモードで湿度が通常である場合には、カラーモード時と同じようにすべての感光体ドラム51の表面電位を同じ値にし、モノクロモードで湿度が所定値以上である場合(高湿)に、各感光体ドラム51Y,51M,51Cの表面電位の絶対値を、第1感光体ドラム51Kよりも大きな値にしてもよい。
【0042】
なお、図5、図9、図10の形態では、第2感光体ドラム51Y、第3感光体ドラム51Mおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位をすべて大きくしたが、本発明はこれに限定されず、少なくとも第2感光体ドラム51Yの表面電位を大きくすればよい。すなわち、例えば、第2感光体ドラム51Yおよび第3感光体ドラム51Mの表面電位のみを大きくしてもよいし、第2感光体ドラム51Yおよび第4感光体ドラム51Cの表面電位のみを大きくしてもよい。
【0043】
また、図11に示すように、モノクロモード時において、湿度センサ200で検知された湿度が所定値以上である場合(高湿)には、第2転写ローラ74Y、第3転写ローラ74M、第4転写ローラ74Cに印加される転写バイアス(転写電流)の絶対値を、湿度が所定値未満である場合(通常)よりも大きくしてもよい。ここで、図11では、転写電流で表示しているが、転写電流と転写電圧は比例の関係にあるので、この表の数値を転写電圧と見ても差し支えない。そして、このように通常時よりも高湿時の転写電圧を大きくすることで、高湿時における2色目以降の転写ローラ74と感光体ドラム51との電位差が大きくなるので、逆転写をより抑制することができる。
【0044】
前記実施形態では、4色のトナーに対応するように感光体ドラム51を4つ設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば3色の場合には感光体ドラムを3つ、5色以上の場合には感光体ドラムを5つ以上設ければよい。
【0045】
前記実施形態では、1つの感光体ドラムで黒色を印字するようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えばイエロー、マゼンタ、シアンの3色で黒色を印字してもよい。なお、この場合、黒色の印字に寄与する3色の感光体ドラムが第1像担持体に相当し、これよりも下流側にある他の色(例えばライトマゼンタ、ライトシアンなど)の感光体ドラムが第2像担持体に相当する。
【0046】
前記実施形態では、転写媒体として用紙Pを例示したが、本発明はこれに限定されず、転写媒体は、例えば中間転写ベルトであってもよい。
前記実施形態では、像担持体として感光体ドラム51を例示したが、本発明はこれに限定されず、像担持体は、例えばベルト状の感光体であってもよい。
【0047】
前記実施形態では、帯電部材として帯電ワイヤを有する帯電器52を例示したが、本発明はこれに限定されず、帯電部材は、例えば感光体ドラムに接触することで帯電させる帯電ローラであってもよい。
【0048】
前記実施形態では、転写部材として転写ローラ74を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写部材は、導電性ブラシや導電性板バネなど、転写バイアスが印加されるものであればよい。
【0049】
前記実施形態においては、画像形成装置としてカラープリンタを例示したが、複合機やコピー機に本発明を適用することもできる。
前記実施形態においては、接離機構110を設けたが、本発明はこれに限定されず、接離機構はなくてもよい。この場合であっても、2色目以降の逆転写を抑えることで、2色目以降のトナー収容室内での混色を抑えるといった効果を発揮することができる。
【0050】
また、転写バイアスの制御方法は、定電流制御であってもよいし、定電圧制御であってもよい。ここで、定電流制御とは、転写ローラに流れる電流を検知して、その電流が一定になるように転写電圧を制御する方法をいう。この方法では、一見、感光体ドラムの表面電位を高くすると、これに伴って転写ローラに印加する転写電圧の絶対値が小さくなり、両者間の電位差を大きくすることができないように思われるが、発明者が行った実験により、逆転写が発生しやすい高湿環境下では電位差が大きくなることが確認されている。
【0051】
すなわち、高湿環境下では、湿気を吸った用紙の抵抗が小さくなることによって、転写電流のリーク(転写電流の一部が用紙に流れる現象)が発生し、検知している転写電流の値よりも感光体ドラムに流れる電流の値が小さくなるので、両者間の電位差が小さくなると考えられる。
【0052】
しかし、感光体ドラムの表面電位を上げると、感光体ドラムとアース(0V)との電位差が大きくなることで、感光体ドラムに流れる電流が大きくなり、転写電流のリークが小さくなる。その結果、両者間の電位差が大きくなっているものと考えられる。
【0053】
そのため、定電流制御であっても良好に本発明による効果を発揮することができる。なお、定電圧制御とは転写ローラに印加する転写バイアス(転写電圧)を一定にする制御であり、転写バイアスが感光体ドラムの表面変位の変動によって変化しないので、確実に本発明による効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 カラープリンタ
51K 第1感光体ドラム
51Y 第2感光体ドラム
52K 第1帯電器
52Y 第2帯電器
100 制御装置
P 用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モードと、転写媒体上にカラー画像を形成するカラー印刷モードとを実行可能な画像形成装置であって、
少なくとも前記モノクロ印刷モード時に使用する第1像担持体と、
前記転写媒体の移動方向において前記第1像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、
前記第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、
前記第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、
前記第1帯電部材および前記第2帯電部材を制御して前記第1像担持体および前記第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写媒体の移動方向において前記第2像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第3像担持体と、
前記第3像担持体を帯電させる第3帯電部材と、を備え、
前記制御装置は、
前記第3帯電部材を制御して前記第3像担持体の表面電位を変化させるように構成され、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第3像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記モノクロ印刷モード時における前記第3像担持体の表面電位の絶対値が、前記第2像担持体の表面電位の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
湿度を検知する検知手段を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時において、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
湿度を検知する検知手段を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時において、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第3像担持体の表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第1転写部材と、
前記第2像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第2転写部材と、を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モードに、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第2転写部材に印加される転写バイアスの絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第3転写部材を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モードに、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第3転写部材に印加される転写バイアスの絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記カラー印刷モード時よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
転写媒体上にモノクロ画像を形成するモノクロ印刷モードと、転写媒体上にカラー画像を形成するカラー印刷モードとを実行可能な画像形成装置であって、
少なくとも前記モノクロ印刷モード時に使用する第1像担持体と、
前記転写媒体の移動方向において前記第1像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第2像担持体と、
前記第1像担持体を帯電させる第1帯電部材と、
前記第2像担持体を帯電させる第2帯電部材と、
前記第1帯電部材および前記第2帯電部材を制御して前記第1像担持体および前記第2像担持体の表面電位を変化させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写媒体の移動方向において前記第2像担持体の下流側に配置されるとともに、前記カラー印刷モード時に使用する第3像担持体と、
前記第3像担持体を帯電させる第3帯電部材と、を備え、
前記制御装置は、
前記第3帯電部材を制御して前記第3像担持体の表面電位を変化させるように構成され、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第3像担持体の表面電位の絶対値を、前記第1像担持体の表面電位の絶対値よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記モノクロ印刷モード時における前記第3像担持体の表面電位の絶対値が、前記第2像担持体の表面電位の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
湿度を検知する検知手段を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時において、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
湿度を検知する検知手段を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時において、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第3像担持体の表面電位の絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第1転写部材と、
前記第2像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第2転写部材と、を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モードに、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第2転写部材に印加される転写バイアスの絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3像担持体に形成される現像剤像を、現像剤の帯電極性とは異なる極性の転写バイアスにより転写媒体上に転写させる第3転写部材を備え、
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モードに、前記検知手段で検知された湿度が所定値以上である場合には、前記第3転写部材に印加される転写バイアスの絶対値を、湿度が所定値未満である場合よりも大きくすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記モノクロ印刷モード時に、前記第2像担持体の表面電位の絶対値を、前記カラー印刷モード時よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−248291(P2011−248291A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124245(P2010−124245)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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