説明

画像形成装置

【課題】小サイズの記録材を複数枚連続して画像形成する場合に、スループットの低下を抑制する。
【解決手段】画像形成命令に基づき、幅方向に関して画像形成可能な最大サイズの記録材よりも小さいサイズの記録材の記録材搬送方向の一部に対して未定着トナー画像が形成される場合、温度制御手段は、記録材のうち未定着トナー画像が形成された印字領域がニップ部を通過する場合の加熱体の温度(T0)よりも、記録材のうち未定着トナー画像が形成されていない非印字領域がニップ部を通過する場合の加熱体の温度(T1)の方が低くなるように、加熱体の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に適用される定着装置(像加熱手段)において、定着部材や加圧部材よりも幅の狭い記録材を通紙した場合、記録材が通過しない部分(非通紙部)の熱が記録材に奪われることがない。このために、非通紙部において定着部材や加圧部材の温度が上昇(非通紙部昇温)してしまうことが懸念される。例えば、封筒のような小サイズ紙を単位時間当たりの出力枚数(以下、スループット)を落とさずに連続して通紙した場合、非通紙部昇温が大きくなり、定着部材や加圧部材が熱によりダメージを受けてしまうことが懸念される。このため、小サイズ紙を連続してプリントする場合、非通紙部の昇温対策として、通紙間隔を広げる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2727899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように通紙間隔を広げた場合には、スループットが落ちてしまうことが懸念される。
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、小サイズの記録材を複数枚連続して画像形成する場合に、スループットの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
画像情報、及び、記録材の画像形成面のうち記録材搬送方向に直交する記録材幅方向のサイズ情報を含む画像形成命令が入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された画像情報に基づいて、記録材に現像剤像を形成する画像形成手段と、
それぞれ回転可能に設けられ互いに圧接してニップ部を形成する加熱部材及び加圧部材を有し、前記画像形成手段により現像剤像が形成された記録材を前記ニップ部で挟持搬送しながら加熱する像加熱手段と、
前記加熱部材の温度を制御する温度制御手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記入力手段に入力された画像形成命令に基づき、前記記録材幅方向に関して画像形成可能な最大サイズの記録材よりも小さいサイズの記録材の記録材搬送方向の一部に対して現像剤像が形成される場合、前記温度制御手段は、記録材のうち現像剤像が形成された画像領域が前記ニップ部を通過する場合の前記加熱部材の温度よりも、前記記録材のうち現像剤像が形成されていない非画像領域が前記ニップ部を通過する場合の前記加熱部材の温度の方が低くなるように、前記加熱部材の温度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小サイズの記録材を複数枚連続して画像形成する場合に、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図。
【図2】実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図。
【図3】記録材上の印字領域を示す概略図。
【図4】温調温度と時間の関係を示す図。
【図5】実施例1において、記録材上の印字領域を示す概略図。
【図6】実施例1において、温調温度と時間の関係を示す図。
【図7】比較例1において、温調温度と時間の関係を示す図。
【図8】比較例2において、温調温度と時間の関係を示す図。
【図9】実施例1の、通紙による加圧ローラの非通紙部の昇温測定結果を示す図。
【図10】実施例2において、温調温度と時間の関係を示す図。
【図11】実施例2の、通紙による加圧ローラの非通紙部の昇温測定結果を示す図。
【図12】実施例3において、温調温度と時間の関係を示す図。
【図13】実施例3の、通紙による加圧ローラの非通紙部の昇温測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る、電子写真方式・静電記録方式等の画像形成プロセスを利用した画像形成装置(画像記録装置)について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置としてレーザビームプリンタの概略構成を示す断面図である。
【0010】
本実施形態のレーザビームプリンタ11はホストコンピュータと接続されており、ホストコンピュータからの画像情報を含むプリント命令(画像形成命令)を受け取った後、コントローラによりビットマップデータに展開するようになっている。ここで、プリント命令には、記録材の画像形成面のうち記録材搬送方向に直交する記録材幅方向の幅情報(サイズ情報)、通紙枚数(印字枚数、画像形成枚数)、記録材の種類の情報が含まれる。また、コントローラは入力手段、温度制御手段及び搬送制御手段に相当する。ビットマップデータに展開された画像情報はビデオインターフェースを介してレーザビームプリンタ11のエンジン部に送られ、エンジン部は画像情報に基づいてスキャナ3によりレーザ光を変調しながらラスタースキャンすることで所望の画像が形成される。このとき、コントローラとレーザビームプリンタ11のエンジン部はビデオインターフェースを介して以下のような通信を行っている。
【0011】
先ず、エンジン部はコントローラからの信号により記録材の供給が可能でプリンタを作動させることが可能となったときレディ信号を送信する。次に、コントローラはエンジン部からのレディ信号が送信されていることを確認してエンジン部に対して記録材の供給命令であるプリント信号を送信する。エンジン部は、このプリント信号を受けて直ちに記録材Pをカセット12から供給ローラ10により供給し、レジストローラ34へ搬送する。記録材Pはレジストローラ34で一旦停止し、スキャナ3内に配設されているスキャナ及びモータ(図示せず)の立上がりや、感光ドラム1の電位安定化のための準備回転(所謂、前回転)の終了を待ってエンジン部が画像書き込み可能な状態になるまで待機する。この後、エンジン部で画像を書き込める状態になったことを知らせる垂直同期要求信号をコントローラ部に送った後、それを受けてコントローラ部では垂直同期信号を送り、さらに一定時間後に画像信号をエンジン部に送る。そして、エンジン部では垂直同期信号を受け取った後、レジストローラ34から記録材Pを転写部に搬送する。
【0012】
次に、像担持体として有機光導電体(OPC)等の感光層を有する感光ドラム1を帯電ローラ2により均一に負帯電した後、エンジン部は上述の画像信号に応じて変調されたレーザ光Lを感光ドラム1の表面に照射する。これにより、光が照射された部分と、照射されない部分では、感光ドラム表面の電荷量に差が生じ、所望の静電潜像が得られる。そして、この静電潜像は負帯電トナーを有する現像装置4により現像されトナー像(現像剤像)Tとして可視化され、転写部において転写ローラ5により静電的に記録材Pに転写された後、記録材Pは定着装置9に搬送され、トナー像は永久定着される。なお、感光ドラム1上の転写残りトナーはクリーナ41によりクリーニングされ、再び同じ画像形成プロセスが繰り返される。ここで、感光ドラム1、現像装置4及び転写ローラ5は、ホストコンピュータからの画像情報に基づいて記録材に現像剤像を形成する画像形成手段を構成している。また、定着装置9は、像加熱手段に相当する。
【0013】
次に、以上のようなレーザビームプリンタ11に適用される定着装置9について詳しく説明する。図2は、定着装置9の概略構成を示す断面図である。この定着装置9には、図2に示すように、定着フィルム23、加熱体22、及び、加圧部材としての加圧ローラ24が設けられている。ここで、定着フィルム23及び加熱体22は、回転可能に設けられ、加圧部材と互いに圧接してニップ部(定着ニップ部NF)を形成する加熱部材を構成している。加圧ローラ24は、シリコーンゴム等の離型性の良いゴム弾性層を有しており、加熱体22との間に定着フィルム23を挟んで、定着フィルム23を加熱体22の面に総圧4〜15Kgで圧接している。定着フィルム23は、テンションレスエンドレスベルト状に設けられ、単層フィルム又は複合層フィルムから成る。単層フィルムは、膜厚が総厚100μm以下、好ましくは40μm以下20μm以上の耐熱性・離型性・強度耐久性等のあるPTFE、PFA、PPS等で構成される。複合層フィルムは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等のフィルム表面にPTFE、PFA、FEP等を離型層としてコーティングしたものである。
【0014】
定着フィルム23は、加圧ローラ24の回転により、矢示の時計方向に加熱体22面に密着して加熱体面に摺動しながら所定の周速度でシワなく回転駆動される。この定着フィルム23を介して加熱体22と加圧ローラ24との間に形成される定着ニップ部NFに、上述した画像形成部(図2に示すA)側から搬送されてくる未定着トナー画像Tを担持した記録材Pが導入される。そして、記録材Pが定着ニップ部で挟持搬送される過程で加熱体22から定着フィルム23を介して記録材Pに熱エネルギーが付与され、記録材P上の未定着トナー画像Tが加熱溶解定着される。
【0015】
加熱体22は、セラミック基板、通電発熱体、給電電極、電気絶縁性オーバーコート層、温度検知素子、及び温度ヒューズを備えており、オーバーコート層側を外部露呈させて断熱性のヒートホルダー21を介して支持部(図示せず)に固定支持させたものである。ここで、セラミック基板は、定着フィルム23の移動方向に略直交する方向を長手方向とする、Al(アルミナ)、AlN、SiC等の電気絶縁性・耐熱性・低熱容量の細長の基板である。通電発熱体は、セラミック基板の一方面側(表面側)の基板幅方向中央部に基板長手方向に沿って、線状あるいは帯状に形成された、銀パラジウム(Ag/Pd)、RuO、TaN等の発熱源である。給電電極は、この通電発熱体の両端部にそれぞれ導通させて基板面に形成されたものである。電気絶縁性オーバーコート層は、基板の通電発熱体形成面を被覆させた表面保護層に相当し、ガラス等で形成されている。温度検知素子は、基板の他方側面(背面側)にそれぞれ接触させて設けた温度検知手段に相当し、サーミスタ等で構成されている。温度ヒューズは、安全対策用温度検知素子(サーマルプロテクタ)に相当する。加熱体22の温度は、基板背面の温度検知素子で検出されてその検出情報がCPU32へフィードバックされ、ドライバ31を介して交流電源(図示せず)から通電発熱体への通電が制御されることで、定着実行時に所定の定着温度になるよ
うに温度制御されている。ここで、CPU32及びドライバ31は温度制御手段に相当する。
【0016】
このように温度制御を行うのは、フィルム23を介して記録材Pに所定の熱エネルギーを付与し、記録材P上の未定着トナー画像Tを良好に加熱溶解定着するためである。従って、同一の記録材P上に未定着トナー画像Tの存在しない非印字領域(非画像領域)と、未定着トナー画像Tの存在する印字領域(画像領域)とがある場合、非印字領域に対しては、印字領域と同じ熱エネルギーを付与する必要がない。ここで、同一の記録材P上に未定着トナー画像Tの存在しない非印字領域(非画像領域)と、未定着トナー画像Tの存在する印字領域(画像領域)とがある場合とは、同一の記録材P上の記録材搬送方向の一部に対して未定着トナー画像Tが存在する場合である。また、非印字領域に対して、常に印字領域と同じ熱エネルギーを付与する場合には、消費電力量の増大にもつながる。また、記録材として特に幅が狭い封筒や小サイズ(記録材幅方向に関して画像形成可能な最大サイズの記録材よりも小さいサイズ)の記録材を通紙(搬送)する場合、定着器での非通紙部で記録材に熱が奪われないことによる非通紙部昇温が発生する。そのため、できるだけ熱エネルギーを定着器の非通紙部に与えないためにも、非印字領域ではできるだけ温度制御を低く抑える必要がある。
【0017】
そこで本実施形態では、ホストコンピュータ等からのプリント命令に基づいて、幅方向に関して画像形成可能な最大サイズの記録材よりも小さいサイズの記録材の記録材搬送方向の一部に対して未定着トナー画像が形成される場合、次のように制御することとした。すなわち、封筒などの小サイズの記録材に印字を行う場合には、印字領域及び非印字領域を区別し、それぞれの領域に対する加熱温度が異なるように加熱体22への通電制御を行うこととした。
【0018】
そして、この非印字領域及び印字領域の大きさを、これらの領域が所定の位置を通過するのに要する時間として表し、定着装置では、この時間データを基に各領域の切り替わるタイミング、即ち加熱体の目標温度の切り替えタイミングを判断することとした。ここで、上述したように、感光ドラム1への光の照射が開始されて静電潜像が形成され、この静電潜像が現像されてトナー像として記録材Pに転写され、さらに定着装置9のニップ部に入るまでにt0秒を要するとする。すると図3のような先端Xmmが印字領域の場合、記録材Pの先端が感光ドラム1への光照射が開始されるときの位置(以下、光照射位置)に到達してからt0秒後に先端が定着装置のニップ部に進入し、さらにtx秒後に印字領域後端がニップ部に入ることになる。ここで、図3は、記録材上の印字領域であって、記録材の先端(記録材搬送方向の下流側の端部)に形成された印字領域を示す概略図である。図4は、温調温度と時間の関係を示す図である。
【0019】
そこで、この例の場合には図4に示すように制御している。すなわち、記録材Pの先端が光照射位置に到達した時点から加熱体22への通電を開始し、目標温調温度をT0として昇温させ、t0秒経過からt0+tx秒経過前までは、目標温調温度T0で加熱体22への通電を行う。そして、t0+tx秒経過後から紙後端までは非印字領域での目標温調温度T1で加熱体22への通電を行うこととし、非印字領域の目標温調温度T1を印字領域での目標温調温度T0より低く制御している(T1<T0)。このことで、従来の定着性を損なわずに小サイズ紙通紙の時には非通紙部昇温を抑制できるようにしたものである。加熱体の目標温度は、定着装置9の立ち上げ時に加熱体の温度を温度検知素子で検知した結果から決めている。なお、目標温度はT0とT1で差が大きい場合もあるため、記録材の非印字領域中にT1に到達できない場合もあるが制御としては問題無い。また、本実施形態では、非印字領域の記録材搬送方向での長さが、ある一定以上の場合、通常の小サイズ紙よりもスループットを上げて通紙することとする。これは、非印字領域が記録材搬送方向で、ある一定の長さがあれば、定着させるために温調をかける時間が短くなり、定
着器の非通紙部昇温が緩和されるので、スループットを上げることが可能となるためである。ここで、スループットを上げることで、連続して画像形成される先の記録材と後の記録材との搬送間隔が短くなる。
【0020】
<実施例1>
上記のような構成を用いて小サイズ紙を通紙した時のスループット、定着性、加圧ローラの温度を確認した。
(実験条件)
・環境:23℃ 40%R.H.
・画像形成装置本体:HP(ヒューレット・パッカード)社製 Laserjet 1020 封筒モードをベースとした。
・プロセススピード:80mm/s
・通紙紙:MailWell#582 com10封筒
【0021】
実施例1では、封筒モードは印字領域にのみ温調をかけ、スループットを印字領域の大きさにより変更できる制御が盛り込まれており、印字領域を紙面の一部として、非印字領域、紙間では温調をオフ、紙間を縮めてスループットを速めている。比較例1は、実施例1のような制御が盛り込まれておらず、印字領域を紙面の一部として、温調は紙面全面180℃温調、紙間は温調をオフ、スループットは紙間を大きく空けた制御とする。比較例2も比較例1同様に実施例1のような制御が盛り込まれておらず、印字領域を紙面の一部として、温調温度は紙面全面180℃温調、紙間は温調をオフ、スループットは紙間を縮めて実施例1と同じものとした。実施例1も比較例1、2もすべて50枚連続で通紙を行った。
【0022】
(1)実施例1
図5は、本実施例において、com10封筒上の印字領域であって、封筒の先端(記録材搬送方向の下流側の端部)に形成された印字領域を示す概略図である。図6は、本実施例において、温調温度と時間の関係を示す図である。図5に示すように、印字領域はcom10封筒の先端から40mmまでの位置である。図6に示すように、t0=4.5secでヒータを180℃まで立ち上げる。先端40mmのみ温調を行い、それ以外の非印字領域、紙間では目標温調温度は0℃とし、ヒータをオフする。紙間距離はスループットが11ppm(page per minute)になるように196mmとしている。2枚目以降は図6に示す「次頁」の制御を繰り返す。
【0023】
(2)比較例1
図7は、比較例1において、温調温度と時間の関係を示す図である。本比較例において印字領域は実施例1と同じcom10封筒の先端から40mmまでの位置であり、紙面全面で温調を行う。紙間では目標温調温度は0℃としヒータをオフする。紙間距離はスループットが7ppmになるように446mmとしている。2枚目以降は図7に示す「次頁」の制御を繰り返す。
【0024】
(3)比較例2
図8は、比較例2において、温調温度と時間の関係を示す図である。本比較例において印字領域は実施例1と同じcom10封筒の先端から40mmまでの位置であり、紙面全面で温調を行う。紙間では目標温調温度は0℃としヒータをオフする。紙間距離はスループットが11ppmになるように196mmとしている。2枚目以降は図8に示す「次頁」の制御を繰り返す。
【0025】
【表1】

表1は、上記実施例及び比較例の実験結果であり、com10を通紙したときのスループット、定着性、加圧ローラ温度を示すものである。図9は、本実施例において、通紙による加圧ローラの非通紙部の温度上昇を示す図である。
【0026】
実施例1に関しては、スループット11ppmまで出ているが定着性も問題無く、加圧ローラ温度も228℃に収まっている。これは、先端40mmの印字領域に温調をかけているため、定着性は問題無く、それ以外の非印字領域では温調をかけていないため、加圧ローラの非通紙部昇温を抑えることができることによるもので、これによりスループットを11ppmにすることができる。比較例1に関しては紙面全域に温調をかけているために定着性は問題無い。ただし、スループットを7ppmとしているために非通紙部昇温は抑えられている。比較例2に関しては紙面全域に温調をかけているために定着性は問題無い。ただし、実施例1と同じスループットを出そうとすると、紙面全面に温調をかけているために加圧ローラの非通紙部昇温が厳しくなり、温度が上昇し加圧ローラ表層が溶けてしまう。
【0027】
つまり、小サイズ紙で紙面の一部を印字する場合、その部分のみ温調をかけて定着すれば、加圧ローラの非通紙部昇温を抑制することができ、結果的にスループットを上げることが可能となる。そして、温調をかける印字領域の記録材搬送方向の長さが短いほど、定着のために温調をかける時間が短くなり、定着器(加圧ローラ)の非通紙部昇温が抑制されるので、結果的にスループットを上げることが可能となる。
【0028】
<実施例2>
実施例2においては、通紙枚数を20枚に限定するものであり、それ以外の実験条件は実施例1と同じである。このため、詳細な条件の説明は省略する。実施例2では、画像形成装置で、ある一定の通紙枚数を予め認識した場合、スループットを実施例1の場合よりも早くする制御が盛り込まれている。図10は、本実施例において、温調温度と時間の関係を示す図である。本実施例においても、図5に示すように、印字領域はcom10封筒の先端から40mmまでの位置である。図10に示すように、t0=4.5secでヒータを180℃まで立ち上げる。先端40mmのみ温調を行い、それ以外の非印字領域、紙間では目標温調温度は0℃としヒータをオフする。印字枚数を20枚以内と認識したため、紙間距離はスループットが13ppmになるように129mmとしている。2枚目以降は図6に示す「次頁」の制御を繰り返す。
【0029】
【表2】

表2は、本実施例の実験結果であり、com10を通紙したときのスループット、定着性、加圧ローラ温度を示すものである。図11は、本実施例において、通紙による加圧ローラの非通紙部の温度上昇を示す図である。
【0030】
実施例2に関しては、スループット13ppmまで出ているが定着性も問題無く、加圧
ローラ温度も215℃に収まっている。これは、先端40mmの印字領域に温調180℃をかけているため、定着性は問題無く、それ以外の非印字領域では温調をかけていないため加圧ローラの非通紙部昇温を抑えることができることによるもので、これによりスループットを速くすることができる。更には、印字枚数が20枚となっているため、スループットを実施例1よりも更に速くしても、加圧ローラの非通紙部昇温は問題無いレベルに抑えることが可能となる。このように、印刷枚数情報を認識することで、印字枚数が少ないほど、定着のために温調をかける時間が短くなり、定着器(加圧ローラ)の非通紙部昇温が抑制されるので、結果的にスループットを上げることが可能となる。
【0031】
<実施例3>
実施例3においては、温調温度を170℃一定にするものであり、それ以外の実験条件は実施例1と同じである。このため、詳細な条件の説明は省略する。実施例3では、画像形成装置において定着温調モードで普通紙小サイズモードを設定した場合に温調温度を170℃に下げるモードが設けられている。また、印字領域にのみ温調をかけ、スループットを印字領域の大きさにより変更できる制御が盛り込まれており、印字領域を紙面の一部として、非印字部、紙間では温調をオフ、紙間を縮めてスループットを速めている。実施例3では、オフィスプランナーA4サイズ紙をcom10サイズに切り取り、先端40mmだけ印字させた場合の、定着性、スループット、加圧ローラ温度の測定を行った。
実施例3は通紙枚数50枚で測定を行った。図12は、本実施例において、温調温度と時間の関係を示す図である。
【0032】
本実施例では、図12に示すように、t0=4.5secでヒータを170℃まで立ち上げる。先端40mmのみ温調を行い、それ以外の非印字領域、紙間では目標温調温度は0℃としヒータをオフする。紙間距離はスループットが13ppmになるように129mmとしている。2枚目以降は図11に示す「次頁」の制御を繰り返す。
【0033】
【表3】

表3は、本実施例の実験結果であり、薄紙com10サイズ紙を通紙したときのスループット、定着性、加圧ローラ温度を示すものである。図13は、本実施例において、通紙による加圧ローラの非通紙部の温度上昇を示す図である。
【0034】
実施例3に関しては、スループット13ppmまで出ているが定着性も問題無く、加圧ローラ温度も218℃に収まっている。これは、先端40mmの印字領域に温調170℃をかけているが、普通紙であるため定着性は問題無く、それ以外の非印字領域では温調をかけていないため加圧ローラの非通紙部昇温を抑えることができることによるもので、これによりスループットを速くできる。このように、記録材の種類やサイズに応じて、温調温度を複数の温度に設定可能とし、ホストコンピュータからのプリント命令に基づいて、記録材の種類やサイズに応じて設定された温調温度(ヒータの温度)が低いほど、スループットを速くできる。これは、温調温度が低くなることで、定着器(加圧ローラ)の非通紙部昇温が抑制されるので、結果的にスループットを上げることが可能となるものである。
【0035】
以上説明したように、画像情報に基づき小サイズ紙で紙面の一部を印字する場合、その部分のみ温調をかけて定着させれば加圧ローラの非通紙部昇温を抑制することができ、結果的にスループットを上げることが可能となる。このため、小サイズ紙の印字領域が小さい場合、印字領域のみに温調をかけることにより非通紙部昇温を緩和し、且つスループッ
トを速くすることが可能となる。
【0036】
尚、上記実施例において、封筒の印字領域を紙先端から40mmとしたが、これに限定されることはなく、印字領域は記録材のうち記録材搬送方向のどの位置から始まるものであっても良い。また、上記実施例においては、印字領域にのみ温調をかけ、非印字領域では温調をかけていない場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、記録材の画像情報に基づき、非印字領域に対する加熱体への通電の割合を印字領域に対して変化させ、非印字領域に対する加熱温度の方が、印字領域に対する加熱温度よりも低くなるようにすることで、小サイズ紙通紙時の非通紙部昇温を緩和できる。結果的に、紙間距離を縮めてスループットを上げることが可能となる。また、上記実施例においてそれぞれ説明した制御は、適宜組み合わせて適用するとよい。また、上記実施例においては、定着装置として、フィルム加熱方式の定着装置について説明したが、本発明は、フィルム加熱方式以外の方式を採用した定着装置にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
9 定着装置
22 加熱体
23 定着フィルム
24 加圧ローラ
31 ドライバ
32 CPU
NF 定着ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報、及び、記録材の画像形成面のうち記録材搬送方向に直交する記録材幅方向のサイズ情報を含む画像形成命令が入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された画像情報に基づいて、記録材に現像剤像を形成する画像形成手段と、
それぞれ回転可能に設けられ互いに圧接してニップ部を形成する加熱部材及び加圧部材を有し、前記画像形成手段により現像剤像が形成された記録材を前記ニップ部で挟持搬送しながら加熱する像加熱手段と、
前記加熱部材の温度を制御する温度制御手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記入力手段に入力された画像形成命令に基づき、前記記録材幅方向に関して画像形成可能な最大サイズの記録材よりも小さいサイズの記録材の記録材搬送方向の一部に対して現像剤像が形成される場合、前記温度制御手段は、記録材のうち現像剤像が形成された画像領域が前記ニップ部を通過する場合の前記加熱部材の温度よりも、前記記録材のうち現像剤像が形成されていない非画像領域が前記ニップ部を通過する場合の前記加熱部材の温度の方が低くなるように、前記加熱部材の温度を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記入力手段に入力される画像形成命令には画像形成枚数の情報が含まれており、
前記入力手段に入力された画像形成命令に基づいて複数の記録材に連続して画像形成が行われる場合、記録材のうち現像剤像が形成される画像領域の記録材搬送方向の長さが短いほど、連続して画像形成される先の記録材と後の記録材との搬送間隔を短くする搬送制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記入力手段に入力される画像形成命令には画像形成枚数の情報が含まれており、
前記入力手段に入力された画像形成命令に基づいて連続して画像形成が行われる画像形成枚数が少ないほど、連続して画像形成される先の記録材と後の記録材との搬送間隔を短くする搬送制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記入力手段に入力される画像形成命令には記録材の種類及び画像形成枚数の情報が含まれており、
前記温度制御手段は、前記記録材幅方向のサイズ及び記録材の種類に応じて、前記加熱部材の温度を設定し、
前記入力手段に入力された画像形成命令に基づいて複数の記録材に連続して画像形成が行われる場合、前記温度制御手段により設定された前記加熱部材の温度であって、記録材のうち現像剤像が形成された画像領域が前記ニップ部を通過する場合の前記加熱部材の温度が低いほど、連続して画像形成される先の記録材と後の記録材との搬送間隔を短くする搬送制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−39170(P2011−39170A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184810(P2009−184810)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】