説明

画像形成装置

【課題】 トラッピングと解像度変換処理の双方が行われると画質劣化が生じる。
【解決手段】 上記課題を解決するために本発明は、境界を近接するオブジェクトのいずれか一方の輪郭を他方に向けて拡張するトラッピング処理手段
画像のエッジの濃度を変更する解像度変換処理手段、
前記トラッピング手段と解像度変換処理手段にエッジ部の濃度を変更する処理が同じ画素に行なわれないに制限する制限手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、異なる色版の画像や図形、文字等のオブジェクトの境界をわずかに重ね合わせるトラッピング処理や、入力解像度を画像処理可能な解像度に変換する解像度変換処理を行う機能が備わったものがある。トラッピング処理は、異なる色版で形成される画像オブジェクト間の境界の空白(白抜けと呼ばれる)を防止するための処理であり、境界を接するオブジェクトのいずれか一方の輪郭を他方に向けて一定量拡張する処理である。これによりオブジェクトの重複が生じ、版のずれ等に起因する白抜けを防止できる。トラッピング処理は無条件に行われるのではなく、たとえば境界を接するオブジェクトの濃度に応じて処理を行うか否かを決定されるのが一般的である。この理由は、境界を接するオブジェクトのうち少なくとも一方の濃度が薄い場合には白抜けがあったとしても目立ちにくく、双方の濃度が濃いと白抜けが目立ちやすいためである。このほか、トラッピングをページ単位で指定する技術や、オブジェクトの属性によって適用条件を変更する技術が提案されている。
【0003】
また解像度変換処理は、ユーザが電子写真方式の画像形成装置に入力する画像の解像度が色処理やフィルタ処理などの各画像処理で処理することが可能な解像度と異なる場合、処理可能な解像度に変換する処理である。
【0004】
解像度変換処理では、対象となる画像の属性や濃度に応じて変換方法を変更する。例えば、文字の属性の画像については、1200dpiの画像を600dpiに変換したい場合、注目画素の周辺画素4画素の濃度を重み付平均した結果を1画素に変換する。または、グラフィックの属性については周辺画素4画素のうち最大の濃度の1画素を選択することで600dpiに変換するなどである。このような画像は重みの付け方や位相によってエッジの濃度が不均一になる。しかし、各画像処理後入力解像度に戻して出力したときの画像の品位が良いことが知られている。(特許文献1等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特登録04143519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにトラッピング処理も解像度変換処理も画質向上のために施されるものではあるが、両者を併用すると様々な弊害が起こる。例えば、解像度変換処理、とりわけ、重み付や平均で解像度変換を行う際にエッジの濃度が不均一になる。その後、トラッピング処理を行うときにある濃度以上の画像にトラッピングを行う設定をすると、先に行った解像度変換によってエッジ濃度がトラッピングを行う濃度以下の箇所と濃度以上の箇所にわかれ、ところどころにトラッピング処理がかかってしまう。結果として、トラッピングの効果が全くないばかりか、解像度変換処理を行うことでエッジの濃度が不均一になった箇所がより顕著に目立ってしまう。
【0007】
つまり、トラッピングと重み付の解像度変換処理を行う両処理が施された領域は、ところどころにトラッピングが行なわれることがあり、画像劣化が著しい。
【0008】
本発明は上記従来例に鑑みて成されたものであって、一つの画像に対してトラッピング処理と解像度変換処理とを施す場合にあっても、ひとつの輪郭あるいはその一部に対して、いずれか一方の処理を選択的に施すものである。このことにより、画像品質の劣化を防止した画像処理装置及び画像形成装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は境界を近接するオブジェクトのいずれか一方の輪郭を他方に向けて拡張するトラッピング処理手段
画像のエッジの濃度を変更する解像度変換処理手段、
前記トラッピング手段と解像度変換処理手段にエッジ部の画像濃度を変更する処理が同じ画素行なわれないに制限する制限手段を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、トラッピング処理と解像度変換処理が同じ画素に行なわれることを制限することで、画質劣化を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略ブロック図である。
【図2】トラッピング処理部のフロー図である。
【図3】解像度変換処理部のフロー図である。
【図4】第一実施形態においてトラッピングと解像度変換の排他制御を実現するための設定受け付け処理のフローチャートである。
【図5】第二実施形態においてトラッピングと解像度変換の排他制御を実現するためのトラッピング処理および解像度変換処理のフローチャートである。
【図6】トラッピングのUIを示した図である。
【図7】解像度変換のUIを示した図である。
【図8】図1における画像形成装置の画像読取部100及び画像出力部103のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図9】本発明での効果が出る箇所を例示する図である。
【図10】トラッピング処理を行う箇所は重み付処理や平均処理を行わないフローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
以下、図面を参照して、本発明の一実施例に係る画像形成装置における画像処理の詳細について説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る画像形成装置の概略ブロック図である。以下、本実施例では画像形成装置としてデジタル複合機等を想定しているが、複写機だけでなく、カラープリンタ等の他の印刷デバイスを用いることもできる。まず、本実施例に係る画像形成装置の構造について説明する。図1に示すように、画像形成装置800は、画像読取部100、画像受信部101、UI部107、各種画像処理を行う画像処理部102、記憶部105、CPU 106及び画像出力部103を備える。なお、画像形成装置800は、LANやインターネット等のネットワークを介して、画像データを管理するサーバや、この画像形成装置に対してプリントの実行を指示するパーソナルコンピュータ(PC)等とも接続可能である。また、外部通信路104とも画像受信部101を介して接続可能である。また画像処理部102は、コンピュータ等を用いて、その機能のみを持つ独立した画像処理装置として構成することも可能である。
【0013】
次に、図1に示す画像形成装置の各構成の働きについて説明する。画像読取部100は、画像スキャナ等を有しており、紙等の原稿から画像を読み取る。例えば、画像読取部100はRGBのカラー画像等を読み取る。読み取られたRGBデータは画像処理部102に送られる。スキャナ画像処理部1020は、画像読み取り部100で読み取られたたとえばRGBのカラー画像データに対して、シェーディング補正や像域分離処理、色変換等の画像処理を行う。この象域分離処理により、後述する自然画像属性や文字画像属性等が得られ、各画素毎の属性をビットマップとして記憶した属性マップが生成される。
【0014】
画像受信部101はたとえば通信回線等を介してページ記述言語(PDL)で記述された画像データ(PDL画像データ)を受信する。PDL画像データは、画像を構成するオブジェクトを記述するコマンドの集合である。なお、画像形成装置800は、PDL画像データに限らず、画像を構成する個々のオブジェクトに対応付けられたコマンド群で表現される画像データを受信して画像形成に供することができる。以下では一例としてPDL画像データを受信した場合の説明をする。画像受信部101に入力されたPDL画像テータはプリンタ画像処理部1021に送られる。初めに、プリンタ画像処理部1021の持つインタープリタはPDL画像データのコマンド群を解釈し、中間コードを出力する。次いでプリンタ画像処理部1021のRIP(ラスターイメージプロセッサ)は中間コードからビットマップ画像を展開する。ここで生成されるビットマップ画像データは量子化以前の階調を有しており、連続階調画像あるいはコントーン画像と呼ばれる。その一方で、コマンド群に含まれる属性情報から画素毎の属性情報(グラフィック属性、イメージ属性、色属性、自然画像属性、文字属性、細線属性等)を作成する。すなわち、属性情報はオブジェクトの種類を示しており、ビットマップ画像データと対応付けられた、各画素ごとに当該画素が属するオブジェクトの種類を示す属性マップが生成される。
【0015】
解像度変換処理部1022は後述で詳細に説明する。色処理部1023は、画像読取部100または画像受信部101からのデータを受け付け、たとえばRGB→CMYKの色変換処理などを行う。すなわち、入力された表色系から、後述の画像形成装置800が画像を形成する表色系へと変換する。さらに、トラッピング処理部1024は、CMYK画像データに対してトラッピングを行い、その後、画像形成処理部1025がディザ処理を行う。トラッピングやディザでは、属性マップを参照して対象となるオブジェクトに属する画素が特定され、特定された画素を対象に処理が施される。トラッピング処理は、異なる色版で形成される画像オブジェクト間の境界の空白(白抜けと呼ばれる)を防止するための処理であり、境界を接するオブジェクトのいずれか一方の輪郭を他方に向けて一定量拡張する処理である。これによりオブジェクトの重複が生じ、版のずれ等に起因する白抜けを防止できる。トラッピング処理は無条件に行われるのではなく、たとえば境界を接するオブジェクトの濃度に応じて処理を行うか否かを決定されるのが一般的である。
【0016】
次に、図1に示す画像形成装置の記憶部105、CPU106及び画像出力部103の構成及び働きについて説明する。記憶部105は、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読み出し専用メモリ(ROM)等のさまざまな記憶媒体から構成される。例えば、RAMはデータや各種情報を格納する領域として用いられたり、CPU106の作業領域として用いられたりする。さらに不揮発性の書き換え可能メモリを有する場合もある。このメモリには、たとえば、トラッピング設定を保存するトラッピング設定保存部1051や、解像度変換設定を保存する解像度変換設定保存部1052等が含まれる。トラッピング設定には着目画素に対してトラッピング処理を施す条件等を含み、解像度変換設定には着目画素に対して解像度変換処理を施す条件等を含む。なおこれらの領域は、トラッピング処理部および解像度変換処理部に含まれていても良い。一方、ROMは、各種制御プログラムを格納する領域として用いられる。また、CPU106は、ROMに格納されたプログラムに従って各種処理を判断、制御するものとして用いられる。画像出力部103は、画像を出力(例えば、印刷用紙等の記録媒体に画像を形成して出力)する働きを持つ。以上、RIP処理後のビットマップ画像データに対する画像変形処理方法について述べた。なおトラッピングなどの処理は、RIP内でオブジェクトのデータに対して行われる場合でも、本実施例の発明は適用可能である。RIP内でオブジェクトのデータに対して行われる場合では、プリント画像処理部1021内でトラッピングなどの処理を行う。
【0017】
図8は、図1におけるデジタル複合機等の画像形成装置800の画像読取部100、画像受信部101及び画像出力部103のハードウェア構成を模式的に示す図で、画像形成装置800の断面図を示している。制御部801は、図1の画像処理部102を含むが、その他、画像形成装置800全体の制御を行う機能を有している。画像形成装置800は、コピー/プリンタ/FAXのそれぞれの機能を有している。画像形成装置800は、少なくとも2色(図では4色)の色版を重ねて画像を形成する構造を有する。そのために、各色成分ごとの画像形成部802を有している。画像形成部802は、画像データの各色成分ごとにトナーなどの色剤で現像されたトナー像を形成する。形成された各色成分のトナー像は中間転写ベルト803上に転写される。このため各色成分の画像(すなわち色版)は中間転写ベルト803で重ねられ、フルカラー画像となる。なお、画像形成部802が形成する色成分は装置によっては2色あるいは3色の場合もあり、5色以上にすることもできる。こうして形成されたカラー画像データは、トレー804から搬送された用紙シートに転写され、定着器805で加熱されて用紙上に定着し、排紙トレー上に排出される。
【0018】
<解像度変換処理>
解像度変換処理部1022による処理の詳細は、図3(A)に示す処理ステップから成り立っている。スキャナ処理部1020とプリンタ画像処理部1021からそれぞれの出力画像データが入力され、解像度変換ON/OFF判定処理(S301)において、解像度変換をONと設定されているか否かの判定を行う。この設定はUI部107で入力され、解像度変換設定保存部1052に保存されている。判定の結果解像度変換の設定がOFFであれば解像度変換処理を終了する(S307)。このときは、単純に変換されることになる。一方解像度変換設定がONであれば、1画素ごとに順次注目して以下の処理を行う。すなわち、はじめに注目画素属性判定処理(S302)に進む。注目画素属性判定処理(S302)では、注目画素の属性がUI部107で設定され、解像度変換設定保存部1052に保存された属性と同じであるか否かを判定する。同じ属性と判定したら、次の注目画素濃度判定処理(S303)へ進む。注目画素濃度判定処理(S303)では、注目画素の濃度がUI部107で設定され、解像度変換設定保存部1052に保存された設定濃度の範囲内であるか否かを判定する。この設定濃度はCMYKデータの場合その設定値に従うが、RGBデータの場合反転した値を設定することになる。設定した濃度の範囲内であれば解像度変換処理(S304)へ進み、属性に応じた解像度変換を行う。ここで、注目画素の属性に応じた解像度変換方法はUI部107で設定される。すなわち、全ての解像度変換処理の実行条件を満たしていたなら、初めて解像度変換処理が実行される。
【0019】
上記、注目画素属性判定処理(S302)〜解像度変換処理(S304)までの一連の処理(S306)を図3(B)に示す。
【0020】
初めに(S3021)〜(S3023)からなる注目画素の属性判定処理(S302)によって属性が判定される。次に、UI部(図7の716)での設定を元に濃度判定処理(S3031)から(S3033)までが行われる。そして、UI部(図7の711)での設定を元に注目画素の属性に基づき(S3044)から(S3047)の変換処理が行われる。
【0021】
解像度変換処理(S304)の後は、画素更新処理(S305)へと進む。その後、画素更新処理(S305)は、次の画素があれば次の画素を注目画素として注目画素属性判定処理(S302)へ進み、次の画素がなければ終了する。
【0022】
ここで次の画素とは、1200dpiの画像を600dpiの画像にする解像度変換処理をするときは、1200dpiの画像上で主走査方向に1画素飛ばした画素のことで、副走査方向も1画素飛ばした画素のことである。
【0023】
解像度変換処理部1022の後、1023において色変換処理を行いトラッピング処理部へ移る。
【0024】
<トラッピング処理>
次に、図1のトラッピング処理部1024の処理ステップについて述べる。図1のトラッピング処理部1024による処理の詳細は、図2に示す処理ステップである。色処理部1023から入力された画像データに対し、トラッピングON/OFF判定処理(S201)において、トラッピングをONと設定されているか否かの判定を行う。この設定はUI部107で入力され、トラッピング設定保存部1051に保存されている。S201の判定の結果、トラッピング設定がOFFであればトラッピング処理を終了する(S208)。一方、トラッピング設定がONであれば、1画素ごとに順次注目して以下の処理を行う。すなわち、はじめに注目画素属性判定処理(S202)に進む。注目画素属性判定処理(S202)では、注目画素の属性が、UI部107で設定され、トラッピング設定保存部1051に保存された属性であるか否かが判定される。なお注目画素の属性は当該画素に関連づけられた属性値を属性マップで参照することで得られる。なお属性とは、オブジェクトの種類と言い換えることもできる。同じ属性と判定されたら、次の周辺画素属性判定処理(S203)に進む。ここでトラッピング処理は、注目画素が属するオブジェクトに隣接するオブジェクトに属する周辺画素を、注目画素の位置に複製する処理である。本手順では周辺画素を参照画素とも呼ぶ。
【0025】
周辺画素属性判定処理(S203)では、注目画素の周辺画素が、図6のUI部107で設定され、トラッピング設定保存部1051に保存された属性と同じで属性を持つか否かを判定する。同じ属性であると判定したら、次の注目画素濃度判定処理(S204)へ進む。注目画素濃度判定処理(S204)では、注目画素の濃度がUI部107で設定され、トラッピング設定保存部1051に保存された設定濃度の範囲内であるか否かを判定する。設定濃度の範囲であれば次の参照画素濃度判定処理(S205)へ進む。参照画素濃度判定処理(S205)では、参照画素の濃度がUI部107で設定され、トラッピング設定保存部1051に保存された設定濃度の範囲内であるか否かを判定する。設定した濃度の範囲内であればトラッピング処理(S206)へ進み、トラッピングを行う。すなわち、全てのトラッピング処理の実行条件を満たしていたなら、初めてトラッピング処理が実行される。注目画素属性判定処理(S202)から参照画素濃度判定処理(S205)までの判定処理で、いずれかの実行条件に該当しない場合には、トラッピング処理(S206)を行わずに画素更新処理(S207)へと進む。画素更新処理(S207)では、次の画素があれば次の画素を注目画素として注目画素属性判定処理(S202)へ進み、次の画素がなければ終了する。次の画素とはたとえばラスタ順に決定することができる。
【0026】
以上、図1の解像度変換処理部1022からトラッピング処理部1024の処理ステップについて述べた。
【0027】
<解像度変換処理の設定>
次に、解像度変換の基本設定を以下、図7(A)を用いて説明する。なお選択はユーザにより行われる。解像度変換ON/OFFボタン701から解像度変換ONまたはOFFが選択される。さらに、詳細設定ボタン702を選択すると図7(B)のUI画面が現れ、この画面から、詳細な設定が設定される。
【0028】
次に解像度変換の詳細設定について以下、図7(B)を用いて説明する。まず、解像度変換を行う際に属性にごとに解像度変換方法を選択するボタン711がありその属性としてテキスト、グラフィック、イメージ、その他、オブジェクト種類に応じ解像度変換方法を選択することができる。解像度の変換方法として、重み付712、平均713、最大714、単純715が今、例として設定されている。重み付とは周辺画素をあらかじめ決められた重みに基づいて重み付平均を行う処理である。また、平均とは周辺画素の平均値算出する処理である。また、最大とは周辺画素の最大値を出力し、単純とは注目画素を周辺画素の代表値として出力する。例えば、最大とは3×3または2×2の画素のうち最大濃度の画素を1つ選択し、また、単純とは3×3または2×2の画素のうち決められた画素位置の画素を1つ選択する。以上の構成により、解像度変換処理により低解像度化が可能となる。
【0029】
次に、解像度変換を行う濃度を濃度選択ボタン716により選択され、これによって解像度変換を行う濃度が決定される。ここでは、濃度が30から100までのオブジェクトが解像度変換処理の対象となっている。ここで選択されない0から29までの濃度は単純に解像度変換がおこなう。
【0030】
上記例では濃度選択は属性と関係なく設定しているが属性ごとに指定させる構成でもよい。
【0031】
<トラッピング処理の設定>
次にUI部107でトラッピングおよび解像度変換の機能の基本設定および詳細設定の設定方法について説明を行う。はじめに、トラッピングの基本設定を図6(A)を用いて説明する。
【0032】
まず、ユーザによりトラッピング処理の設定を行う指示が入力されると、図6(A)のユーザインターフェース600が表示される。そのユーザインターフェース600上で、トラッピングON/OFFボタン601からユーザによりトラッピングONまたはOFFが選択される。また、ユーザにより、トラッピングを行う幅がトラッピング幅選択ボタン602から選択され、隣り合うオブジェクトにもぐりこませる(領域を拡張された)画素濃度が、トラッピング濃度ボタン603から選択される。さらに、詳細設定ボタン604をユーザが選択すると図6(B)のUI画面が表示され、この画面から、詳細な設定が設定される。
【0033】
次にトラッピングの詳細設定について図6(B)を用いて説明する。なお以下の説明において、ボタンの選択はユーザにより行われる。まず、トラッピングを行いたい属性が、選択ボタン611および612により、注目画素と参照画素それぞれについて選択される。この属性としては、たとえばテキスト、グラフィック、イメージなどのオブジェクト種のうちから選択される。選択可能なオブジェクトは、プリンタ画像処理部がPDL画像データのコマンドで区別する種類、あるいは画像形成装置が行う前述の像域分離処理により区別される種類である。トラッピングの適用濃度すなわちトラッピングを行う注目画素の濃度の範囲は、ボタン613で指定する。ここでは、最小濃度および最大濃度を選択することでその間の濃度に対してトラッピングがかかるように設定される。参照画素についても同様に濃度の範囲がボタン614で設定される。
【0034】
上記例では濃度選択は属性と関係なく設定しているが属性ごとに指定させる構成でもよい。
【0035】
以上のようにユーザインターフェースを介してユーザにより設定されたトラッピング処理を実行するための実行条件は、トラッピング設定保存部1051に保存される。
【0036】
ここで、図7(A)のボタン702の詳細設定が選択された際の処理手順を図4を参照して説明する。まず、図7(B)のユーザインターフェース画面を表示する(S400)。このとき。もし既に何らかの設定がされていれば、解像度変換設定保存部1052からその設定値を読み出して表示する。次に、トラッピングと解像度変換の両機能が同時に選択されているか判定する(S401)。判定は、トラッピング設定保存部1051と解像度変換設定保存部1052とを参照して行われるが、もしまだ確定値が保存されていないなら、一時的に保存された設定を参照する。いずれも行うと設定されている場合には、トラッピング設定保存部から、トラッピング詳細設定の各項目の設定値、すなわち実行条件を読み取る(S402)。たとえば、トラッピングを適用する注目画素の濃度の範囲が読み取られる。次に、図7(B)のユーザインターフェース画面のうち、解像度変換の実行条件として、ステップS402で読み取ったトラッピングの実行条件と重複する条件を選択できないよう、当該項目及び値を選択付加の状態で再表示する。例えばグレイ表示する。たとえば実行条件として属性を制限する場合には、トラッピングを行ないたい属性として設定された属性611を、解像度変換の実行条件として重み付712を選択できないように、ユーザインターフェース上で表示する(S403)。その制限された状態でユーザによる設定を受け付け、受け付けた設定値を保存する(S404)。
【0037】
こうして、解像度変換の重み付変換処理またはトラッピングが、適用される条件を重複しないよう、その実行条件の設定時に制限することで解像度変換の重み付処理とトラッピングが同じ属性のオブジェクト(画素)に実行されることを回避することができる。すなわち排他制御が可能となる。これにより両処理が行われることによる画質の劣化を防止できる。
【0038】
前記例では、解像度変換の重み付変換を選択した属性を用いて排他制御をしたが、属性ではなくトラッピングの注目・参照画素の濃度を制限してもよい。
【0039】
例えば、図7(B)の画面のうち、変更設定方法711で、一つでも解像度変換の重み付変換を選択されていたら図6(B)の画面のうち、注目・参照画素のトラッピング適用濃度設定をグレイ表示し選択できないようにユーザインターフェース上で表示する。
【0040】
こうすることでトラッピングの濃度閾値をなくし、すべての濃度に対してトラッピングを行えないように閾値によってトラッピングを制御することでの画像弊害が無くなる。
【0041】
また、トラッピング処理の実行条件を先に設定してその後で解像度変換処理の実行条件を設定する場合を説明した。これに対して、先に解像度変換の設定を行った場合も同様に、トラッピング処理の設定を行うときに、解像度変換の実行条件として選択した項目及び値に該当する個所がグレーアウトされていて選択できないようにすることでも目的を達成できる。
【0042】
また、上記例では、ボタンによる選択をさせているが数値を直接入力させるものであってもよい。
【0043】
(実施例2)
次に実施例2では、ユーザが詳細設定において排他制御を行わない場合でもユーザにメリットがあるように自動で排他制御を行うシステムについて説明を行う。図4で説明した手順以外の実施例1の構成や動作は、本実施例にも共通である。図4の手順も行っても良いが、行わなくとも良い。実施例1との相違は、トラッピング処理部および解像度変換処理部による動作にあり、その手順を図5に示した。
【0044】
解像度変換処理を図5(A)を参照して説明する。この手順は、図3(A)のステップS304の本実施例における詳細である。まず実施例1と同様に注目画素について解像度変換処理部を行う(S501)。その後、解像度変換処理を行った注目画素に関連付けて重み付または平均解像度変換済みフラグを前述の属性マップとして生成して、トラッピング処理部に引き渡す(S502)。もちろん直接引き渡さず、メモリ等に一時保存しても良い。
【0045】
一方トラッピングを、図5(B)を参照して説明する。この手順は、図2のステップS206の本実施例における詳細である。解像度変換処理を行った箇所、たとえば画素や領域に関連した重み付解像度変換済みフラグを参照し(S511)、フラグがセットされている場合にはトラッピング処理を行わず、セットされていない場合にトラッピング処理を行う(S512)。
【0046】
以上の構成によりトラッピング処理と重み付解像度変換・平均解像度変換処理が同じ画素に実行されることを制限でき、画質劣化の発生を防止できる。
【0047】
(実施例3)
次に実施例3では、ユーザによってトラッピングおよび重み付解像度変換処理が選択されているとき、参照画素の濃度によって重み付解像度変換を行ったり、最大解像度変換や単純解像度変換に切り替えたりする例を説明する。
【0048】
解像度処理時に注目画像の属性が712からユーザによって設定される重み付解像度変換を行う属性と同じであるか調べる(S1001)。ここでYesである場合、612から設定される注目画素がトラッピングを行う濃度であるか否か調べる(S1002)。ここでYesである場合、613から設定される参照画素がトラッピングを行う濃度であるか否か調べる(S1003)。ここでNoである場合、重み付変換を行う(S1004)。
一方、上記フロー以外は単純または最大変換を行う(S1005)。
【0049】
実施例3では、たとえば、ユーザが図7(B)のユーザインターフェース画面のうち、解像度変換処理の変換方法の設定として、テキストに重み付解像度変換を設定している場合について述べる。
【0050】
このとき、(S1001)において図9の画像データの文字オブジェクト「A」の内部では、注目画素の属性が重み付解像度変換を行う属性と同じであるため、(S1002)へ進む。ここで、注目画素の濃度が図6(B)のユーザインターフェース画面でトラッピング適用濃度のうち注目画素の設定が60〜100%となっている。一方ここで画像データの注目画素の濃度が100%の時Yesとなるので(S1003)へ進む。一方参照画素の設定が20〜100%となっている一方で画像データの参照画素は0%であればトラッピングは行われないため、Noとなり(S1004)へ進み重み付変換を行う。
【0051】
このように行うと図9の濃度の濃い文字オブジェクトでかつ背景が薄い箇所901では重み付解像度変換処理が行われトラッピング処理は行われない。また、濃度の濃い文字オブジェクトでかつ背景が濃い箇所902ではトラッピング処理が行われ、ここでは単純または最大の解像度変換が行われる。さらに、903のように注目画素が薄い場合は単純または最大の解像度変換が行われかつトラッピング処理は行われない。
【0052】
以上の構成により、トラッピングの必要な箇所にはきちんとトラッピングがかかる一方でトラッピングを行う必要のない箇所では、ユーザの設定どおり文字そのものの品位を向上させたい場合は重み付解像度変換処理を行うことができる。
【0053】
なお、上記第1,2の実施例においては解像度変換処理をトラッピング処理に対して優先しているが、トラッピング処理を優先しても良い。その場合には、第1実施例においては、既にトラッピング処理を行う条件が設定されている場合、その条件と同じ条件を解像度変換処理を行う条件として設定できない。そのために、該当する条件が、例えばUIにおいてグレイアウトされる。また第2の実施例においては、解像度変換処理とトラッピング処理の順序を逆転してトラッピング処理を先に行い、処理済みの画素に関連づけたフラグを生成する。そして解像度変換処理時にはそのフラグを参照してセットされていれば、条件が該当したとしても解像度変換処理をスキップする。このように排他処理を実現することもできる。また第1実施例と第2実施例とを組み合わせても良い。上述の実施例では、解像度変換処理はディザの前に、トラッピング処理はディザの後に行っているためにトラッピングを優先している。しかし、解像度変換処理をディザ処理後の画像データに施すようにすれば、上述のようにトラッピング処理を優先することも可能である。
【0054】
また図8の画像形成装置はいわゆるタンデム式であるが、画像形成部が順次中間転写体に接して各色成分のトナー画像を転写して重ねるシングルドラム式の画像形成装置についても本発明は適用できる。また、電子写真式に限らず、その他の方式の画像形成装置に対しても適用できる。
【0055】
また上記例では、トラッピング処理や解像度変換処理は画素単位で実行条件を判断しているが、一定の大きさの領域単位で判断しても良い。その場合にはその領域に関連づけて実行条件が設定され、またトラッピング処理等の実行済みフラグが設定されることになる。
【0056】
さらに、今まで、解像度変換処理としていたがたとえば解像度処理部の入出力が同じ解像度において、文字などのエッジ部だけ重み付や平均処理をさせることで文字のジャギーを低減させるアンチエイリアス処理やシャープネス処理を行うことができる。このときもトラッピングを行うときは同様な画像弊害が起こるが、この場合も上記例で解決ができる。
【0057】
[その他の実施例]
以上、実施例を詳述したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくはコンピュータ読取可能な記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0058】
尚、本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施例では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に供給し、コンピュータが該供給されたプログラム実行することでも達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタープリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。プログラムは、記録媒体や通信媒体を介してコンピュータに供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界を接するオブジェクトのいずれか一方の輪郭を他方に向けて拡張するトラッピング処理手段
画像のエッジの濃度を変更する解像度変換処理手段、
前記トラッピング処理手段による処理と解像度変換処理手段にエッジ部の濃度を変更する処理が同じ画素に行なわれないに制限する制限手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トラッピング処理手段は、注目画素の濃度によってトラッピング処理の適用のするかを判定する注目画素濃度判定手段と、参照画素の濃度によって適用するかを判定する参照画素濃度判定手段を有することを特徴とする請求項1項記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トラッピング処理手段は、注目画素の属性情報によってトラッピング処理の適用するかを判定する注目画素属性判定手段と、参照画素の属性情報によって適用のするかを判定する参照画素の属性判定手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記解像度変換処理手段は、解像度を変換する際に注目画素の周辺画素との重み付けや平均を行う重み付解像度変換、周辺画素のうち最大濃度を選択する最大解像度変換、注目画素を選択する単純解像度変換を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記解像度変換処理手段は、注目画素の属性情報によって解像度変換の適用の条件を選択することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制限手段は、前記注目画素属性判定手段と、前記解像度変換処理手段を用いて制限をおこなうことを特徴とする請求項3項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制限手段は、UIによりトラッピング手段もしくは解像度変換手段を設定させないことで実現されることを特徴とする請求項1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記UIでは解像度変換方法で重み付または平均を選択していた時、トラッピング適用濃度がグレーアウトされ選択できないことで前記制限が行なわれることを特徴とする請求項7項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記属性情報とは、文字属性、グラフィック属性、イメージ属性、細線属性、色属性であることを特徴とする請求項3項記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制限手段は、解像度変換処理において重み付処理または平均処理を行った箇所のフラグを作成する手段を有し、トラッピング処理を行う際に、該フラグを用いて重み付処理または平均処理が行われた箇所の以外には、トラッピングを行うことで前記制限が行なわれることを特徴とする請求項1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−4277(P2011−4277A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146928(P2009−146928)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】