説明

画像形成装置

【課題】トナーブリスタやペーパブリスタの発生を防止する画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写機構部(転写ニップ部N2)よりもシートPの搬送方向上流側に設けられる、シートPのトナー像転写予定面に接触してその表面を加熱する加熱部材121と、シートPのトナー像転写予定面とは反対面側の加熱部材121と対向する位置で該シートPに接触して支持する支持部材122と、からなる加熱機構部120を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタのカラー化、高速化、及び高画質化が進み、オフセット印刷レベルの高精細な画像形成も可能になった。特に、オンデマンド出版物の分野において、比較的手軽で、また少部数への対応が可能であるところから、これまで印刷法で作製してきた出版物をカラー複写機、カラープリンタで作製する傾向が顕著になっている。その結果、版を起こす手間をかけずにプリント作成ができるという迅速性がビジネスチャンスを拡大し、最近では一部の商用軽印刷分野でオフセット印刷との競合が始まっている。
【0003】
このような分野に用いられる高速処理が可能なカラー画像形成装置に適用される定着装置は、加熱定着部材からの分離性に優れ、定着ニップ部が広い(ニップ時間が長い)ことが要求され、この要求を満たすためにはベルト定着方式の定着装置が好適である。
【0004】
すなわち、高速化によっても加熱ローラによって低熱容量の定着ベルトを十分に加熱する事ができ、定着ローラと加圧ローラの大径化によるニップ幅の拡大や定着ローラの硬度や厚さによる曲率分離によって分離性の向上などで対応できるためである。
【0005】
ところで、オフセット印刷用の紙には、塗工紙と非塗工紙という2つのタイプがあるが、これらの高い白紙光沢を有する塗被紙を通常のPPC用紙、プリンタ用紙に代えて電子写真方式の複写機やプリンタに適用して画像の鮮明度を高めるケースが増えてきている。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置でこれら塗被紙にトナー画像を形成するとブリスタを発生するという問題がある。
【0006】
ブリスタには、ペーパブリスタとトナーブリスタが知られている。
ペーパブリスタとは、トナー画像の加熱定着時に用紙(記録媒体ともいう)内部の水分が加熱されて水蒸気を発生し、用紙内部の水蒸気圧が上昇することで、この水蒸気が用紙の外に排出される際に、塗工層に阻害され、排出がスムーズにいかない場合、この水蒸気は紙層内部で急激に膨張して塗工層と紙の間に局所的なフクレを生ずる。
【0007】
また、上記のペーパブリスタに対し、トナーブリスタとは、塗工紙上にトナー画像が形成されている場合に起こる。トナーとトナーの隙間、トナーと記録媒体の隙間の空気(および水分)が定着される際に膨張し、塗工された紙側は通気性が悪いためこの熱膨張した気体の逃げ場がなくなる。その結果、トナー層内に気泡が発生し、定着画像が乱れるという現象である。
【0008】
特に、光沢度の高い塗被紙の場合、光沢を上げるためにカレンダー処理を必要とし、塗被層密度を上昇させるため、ペーパブリスタやトナーブリスタが発生しやすくなる。以下、ペーパブリスタとトナーブリスタの両方を指す場合にはトナーブリスタ等と総称する。
【0009】
このトナーブリスタ等は画像の重大な欠陥となるが、普通紙等の非塗工紙では、当該水蒸気は記録媒体の内部を通して外部に放出することが可能であり、あまりブリスタは発生しない。
【0010】
そこで、電子写真用途に水蒸気が透過できるように塗工した専用紙が開発されているが、オフセット印刷用紙と質感が異なったり、使用可能な用紙が装置により限定されることは印刷業者にとって望ましいことではなく、印刷ビジネスを妨げる障害となってしまう。
【0011】
そのため、特許文献1では、転写装置よりも用紙搬送方向上流側に予備加熱装置を設け、転写前に用紙を加熱する技術が提案されている。これにより、トナー像の転写前に用紙から水蒸気が排出され、トナーブリスタ等をある程度抑制することが可能である。
しかしながら、この技術によってもトナーブリスタ等が発生することがあり、塗工層を有する記録媒体を用いた場合に顕著であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、定着装置を備える電子写真方式の画像形成装置において、トナーブリスタやペーパブリスタの発生を防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 記録媒体にトナー像を転写する転写機構部と、トナー像が転写された記録媒体を加圧及び加熱して該記録媒体にトナー像を定着する定着機構部と、を備える画像形成装置において、前記転写機構部よりも記録媒体搬送方向上流側に設けられる、該記録媒体のトナー像転写予定面に接触してその表面を加熱する加熱部材と、前記記録媒体のトナー像転写予定面とは反対面側の前記加熱部材と対向する位置で該記録媒体に接触して支持する支持部材と、からなる加熱機構部を備えることを特徴とする画像形成装置。
〔2〕 前記加熱機構部の加熱部材は、前記記録媒体と接触して加熱する加熱ガイド板と、該加熱ガイド板を加熱する発熱体と、からなることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔3〕 前記発熱体は、PTC特性を有するものであることを特徴とする前記〔2〕に記載の画像形成装置。
〔4〕 前記加熱機構部の支持部材は、前記加熱部材に対して前記記録媒体を挟んで一定のニップ幅をもつように押圧される駆動ローラであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔5〕 前記支持部材は、少なくとも非加熱の状態であることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
〔6〕 前記支持部材は、前記転写機構部の構造部材と接触していることを特徴とする前記〔5〕に記載の画像形成装置。
〔7〕 前記加熱機構部は、記録媒体を給紙するレジストローラと兼用されるものであることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の画像形成装置。
〔8〕 記録媒体にトナー像を転写する転写機構部と、トナー像が転写された記録媒体を加圧及び加熱して該記録媒体にトナー像を定着する定着機構部と、を備える画像形成装置において、前記転写機構部よりも記録媒体搬送方向上流側に設けられ、少なくとも一方のローラに熱源を内包するローラ対からなり、該ローラ対で前記記録媒体を挟持して加熱しつつ該記録媒体のトナー像転写予定面をローラ面で加圧する加熱加圧機構部を備えることを特徴とする画像形成装置。
〔9〕 前記転写機構部と定着機構部との間の記録媒体搬送経路上に、前記記録媒体を挟持してトナー像を押圧する加圧機構部を備えることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の画像形成装置。
〔10〕 前記加圧機構部は、表面が平滑なローラ対からなり、該ローラ対のうち、前記記録媒体上のトナー像転写面と接するローラにトナーと同極性のバイアスが印加されていることを特徴とする前記〔9〕に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置によれば、トナーブリスタ等のない良好な画像を形成することができる。ここで、トナーブリスタは、記録媒体(用紙、シートともいう)がコート紙の場合、用紙表面の水分およびトナー層内のトナーとトナーの空隙(に含まれる水分)が定着ニップ部を通過する際に加熱膨張して水蒸気となり、この水蒸気がコート層を通過できずトナー層に気泡を発生させることである。普通紙の場合は用紙内部を通って外部に放出することが可能であるため発生しないが、コート紙の場合、コート紙の水分が多いほどまた、トナー層が厚い(高濃度画像)ほどトナーブリスタが発生する。本発明ではコート紙表面(トナー像転写予定面)の水分を未定着のトナー像が転写される前に、加熱機構部の加熱部材で加熱して蒸発させることにより減少させるので、トナーブリスタの発生を抑制することができる。
また、加熱機構部では、コート紙のトナー像転写予定面の反対面側を支持部材が支持することにより、ニップ幅を確保するとともに、該支持部材の接触によりある程度トナー転写予定面側で加熱部材により加熱される熱の一部を反対面側で奪うことにより、用紙全体が過剰に加熱されることを防止し、ペーパブリスタの発生を抑制することができる。
また、本発明の画像形成装置によれば、加熱加圧機構部により、記録媒体表面(トナー像転写予定面)の水分を未定着のトナー像が転写される前に加熱して蒸発させることにより減少させ、かつローラ面で加圧して記録媒体表面の凹凸を均して記録媒体表面とトナーとの空隙を減少させるので、トナーブリスタの発生を抑制することができる。これに加えて、記録媒体表面の凹凸を均すことによって記録媒体と転写ベルトの密着不良をなくし、転写率を向上させてオフセットの無い良好な画像を提供することができ、転写後に行われるベルトクリーニングの負荷を軽減することができる。また、凹凸の大きな記録媒体にも良好な画像が提供できるため紙種対応性が向上する。
またさらに、加圧機構部により、用紙上のトナー像が押圧されてトナー間の空隙が減少するため、トナーブリスタの発生をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】図1の画像形成装置における転写機構部の転写部を含めた加熱機構部の構成を示す断面図である。
【図3】図1の画像形成装置における転写機構部の転写部を含めた加熱加圧機構部の構成を示す断面図である。
【図4】図1の画像形成装置における加圧機構部と定着機構部の構成を示す断面図である。
【図5】本発明で用いる定着装置のその他の構成(1)を示す断面図である。
【図6】本発明で用いる定着装置のその他の構成(2)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
カラー複写機200は、装置本体中央部に位置する画像形成部200Aと、該画像形成部200Aの下方に位置する給紙部200Bと、画像形成部200Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有する高速機であり、画像形成部200Aに定着機構部である定着装置100を組み込んでいる。
【0017】
画像形成部200Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写ベルト210が配置されており、該転写ベルト210の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体205Y、205M、205C、205Kが転写ベルト210の転写面に沿って並置されている。
【0018】
各感光体205Y、205M、205C、205Kはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する光書き込み装置201、帯電装置202Y、202M、202C、202K、現像装置203Y、203M、203C、203K、1次転写装置204Y、204M、204C、204K及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置203Y、203M、203C、203Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。
【0019】
転写ベルト210は、駆動ローラと従動ローラに掛け回されて感光体205Y、205M、205C、205Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、従動ローラの1つであるローラ211に対向する位置に転写ローラ212が設けられている。
【0020】
ここでは、帯電装置202Y、202M、202C、202K、現像装置203Y、203M、203C、203K、1次転写装置204Y、204M、204C、204K、感光体205Y、205M、205C、205K、転写ベルト210、ローラ211、転写ローラ212からなる機構部分を転写機構部と称する。
【0021】
また、転写ローラ212から定着装置100までの記録媒体(シートともいう)Pの搬送経路は横パスとなっている。
【0022】
給紙部200Bは、記録媒体としてのシートPを積載収容する給紙トレイ220と、該給紙トレイ220内のシートPを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ212の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0023】
また、転写機構部よりもシートPの搬送方向上流側に、シートPを予熱する加熱機構部120(または加熱加圧機構部125)を備えている(詳細は後述)。
【0024】
本発明の画像形成装置200における画像形成の概略は、次のとおりである。
まず感光体205Yの表面が帯電装置202Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体205Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置203Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置204Yにより転写ベルト210上に1次転写される。他の感光体205M、205C、205Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写ベルト210上に静電気力で順に転写されて重ね合わせられる。
【0025】
つぎに、感光体205Y、205M、205C、205Kから転写ベルト210上に1次転写されたトナー像Tは、ローラ211、転写ローラ212により搬送されてきたシートPに転写される。トナー像Tが転写されたシートPは、さらに定着装置100まで搬送される。
【0026】
定着装置100は、内部に定着部材と加圧部材とを当接させて熱と圧力によって通過するシートPにトナー像Tを定着させる定着ニップ部N4を有している。図1では、定着ローラ及び加熱ローラに一定のテンションで架け渡された定着部材(定着ベルト)と、該定着部材(定着ベルト)に対して下側で加圧部材(加圧ローラ)が回転自在に圧接し定着ニップ部N4を形成する構成を示している。ここで、シートPが定着ベルトと加圧ローラとの定着ニップ部N4を通過することによって定着が行なわれる。
【0027】
なお、定着ベルト(必要に応じて加圧ローラにも)に図示しないオイル塗布装置により適当量のオイルを塗布しても良く、また必要に応じて定着ニップ部N4の出側に配置された分離爪が機能して、シートPは定着ベルト、加圧ローラに巻き付くことなく定着ニップ部N4の出側に排出される。
【0028】
ついで、定着ニップ部N4から排出されたシートPは排出経路に沿ってスタッカ215へ送り出される。
【0029】
以上のように、本発明の画像形成装置200により、より高度な定着分離機能が得られ、さまざまな紙種(薄紙から厚紙まで)・画像(画像先端余白をより少なくすることが可能)への対応が可能となる。
【0030】
次に、本発明に係る画像形成装置の要部構成である加熱機構部について説明する。
図2は、転写機構部の転写部を含めた加熱機構部の構成を示す断面図である。
図2に示すように、加熱機構部120は、転写機構部(転写ベルト210を介したローラ211と転写ローラ212のニップ部N2)よりもシートPの搬送方向上流側に設けられており、シートPのトナー像転写予定面に接触してその表面を加熱する加熱部材121と、シートPのトナー像転写予定面とは反対面側の加熱部材121と対向する位置でシートPに接触して支持する支持部材122と、から構成される。
【0031】
ここで、加熱部材121は、シートPと接触して加熱する板形状の加熱ガイド板121aと、該加熱ガイド板121aのシートP接触面とは反対面側に配置され加熱ガイド板121aを加熱する発熱体121bと、からなるものである。
【0032】
加熱ガイド板121aは、熱伝導率の高い金属板で構成されており、発熱体121bからシートPへの熱抵抗とならないようになっている。
【0033】
また、発熱体121bは、PTC(Positive Temperature Coefficient:正の温度係数)特性を有することが好ましい。PTC特性とは、高温になるほど電気抵抗が大きくなって電流が流れなくなり、一定温度に収束する特性であり、そのような特性を有する発熱体121bは、温度制御が不要で一定の温度を保持することができる。発熱体121bは、所定のキューリー点となると抵抗が急激に上昇する抵抗発熱体であるため、その自己温度制御機能によって用紙が異常昇温してしまうような事故を防げ、安全性が高い装置を構成することができる。また温度制御が不要になるため、簡単な構成で用紙加熱できる。
【0034】
支持部材122は、加熱部材121に対してシートPを挟んで一定のニップ幅のニップ部N1を形成するように押圧される駆動ローラである。詳しくは、支持部材122は、円筒形状の本体ローラの外周に、シートPと加熱ガイド板121aとを確実に接触させシートPの加熱時間を確保するために、耐熱ブラシや発泡ウレタン、フェルト等の弾性層が設けられてなるものである。図2では、本体ローラ外周面に直立した状態で耐熱ブラシ毛材を植毛した耐熱ブラシからなる弾性層を示している。これにより、支持部材122を加熱ガイド板121a側に3〜5kgf程度の作用力で押し付けたときに、支持部材122の弾性層が変形して例えば3〜10mm程度のニップ幅(加圧幅)が形成されるようになる。このとき、支持部材122は不図示の駆動機構によりシートPを搬送する方向に、該シートPの搬送速度と略同速度となるように駆動される。なお、図2ではローラ形状の支持部材122としているが、これに代えて繊維を植毛した板状の押し当て部材を支持部材122としてもよい。
【0035】
レジストローラ対221により加熱機構部120に搬送されてきたシートPは、ニップ部N1に進入すると、加熱ガイド板121aと接触することによって表面が所望の温度まで加熱される。例えば、加熱ガイド板121aは、60〜180℃の温度範囲内となるように温度制御されている。
【0036】
これにより、転写機構部で未定着画像(トナー像)が転写される前に、ニップ部N1でシートPの表面の水分は蒸発して減少されるようになり、ついでニップ部N2で該シートPに転写ベルト210上の1次転写されたトナー像が2次転写され、その結果トナー像定着時のトナーブリスタの発生を抑制することが可能となる。
【0037】
このとき、シートP表面の水分を未定着トナー像が転写される前に加熱部材121で加熱することで減少させる際、できるだけシートP表面(トナー転写予定面)のみを加熱するとよい。シートPの裏面(トナー転写予定面の反対面)まで昇温するようにシートP全体を加熱することはトナーブリスタには寄与しない裏面まで不必要に温めるだけでなく、ペーパブリスタを引き起こしてしまうことになるためである。具体的には、加熱ガイド板121aにシートPを搬送力を妨げない弱い力で接触させ、シートPの表面加熱と搬送性を両立させることでトナーブリスタ、ペーパブリスタのない良好な画像形成を実現することができる。
【0038】
また、支持部材122は、発熱体などによる加熱は行われておらず、少なくとも非加熱の状態であることが好ましい。これにより、ニップ部N1において、シートPのトナー像転写予定面(図中上面)表面は接触する加熱ガイド板121aにより加熱されて温度が上昇するが、トナー像転写予定面とは反対面(図中下面)表面は接触する支持部材122により熱を奪われて温度はほとんど上昇しないようになる。これにより、塗工層を有する記録媒体であっても、ペーパブリスタの発生を抑えることが可能となる。
【0039】
実際に、シートPのトナー転写予定面の反対面(裏面)に熱電対を固定し温度を計測しながら通紙実験を行ったところ、加熱ガイド板121aとの接触後0〜60msでは、シートPの裏面(支持部材122接触面)の温度は15℃以内の変化で収まることが確認された。なお、このときのシートPとしては、60k紙相当のリコーコピー用紙6200(紙厚87μm、70g/m)を用いた。
【0040】
また、支持部材122は、前記転写機構部の構造部材(例えば、転写ローラ212や円筒ガイド板140)と接触していることが好ましい。これにより、支持部材122は、シートPの裏面側から奪った熱を転写機構部側に排出して、蓄熱することがないので、シートPのトナー転写予定面の反対面(裏面)を温度上昇なしで、かつ温度変化が少ない状態とすることができる。
【0041】
また図2に示すように、支持部材122は、その外周の弾性層の部分が円筒ガイド板140の外面に接触して変形する位置に配置されており、転写ローラ212の駆動方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に回転駆動されている。なお、円筒ガイド板140は、転写ローラ212の外周に沿って該転写ローラ212との微少ギャップを保持するように同心上に固定されており、好適にはその外面に、支持部材122との摺動抵抗を低減させるようにフッ素樹脂コートやダイヤモンドグラファイトなどの低摩擦表面処理がなされている。
【0042】
本構成例では、支持部材122の回転中心から転写ローラ212の回転中心までの距離Lを両者の半径の和よりも小さくなるよう配置しているので、シートPが空走する距離、すなわち加熱ガイド板121aの後端からニップ部N2までの距離L2を極限まで近づけることができ、加熱機構部120の加熱による水分除去の効果を最大限に発揮している。
【0043】
なお、支持部材122は、転写ローラ212側の変形(側面の変形)によってシートPの空走距離を低減し、加熱ガイド板121a側の変形(上面の変形)で加熱ニップ距離(ニップ幅)を確保しているが、回転駆動されている期間以外も上記変形を与えた状態を維持すると作用力による変形や熱による組成変化によって、支持部材122の回転方向に圧力ムラが生じて加熱不足の箇所が発生する不具合がある。そのため、シートPが搬送されていない状態では、支持部材122を加熱ガイド板121aおよび円筒ガイド板140から離間させるよう制御するとよい。
【0044】
また、シートP搬送途中にジャムが発生した場合、特に加熱ガイド板121a下部にシートPが滞留すると、たとえ発熱体121bへの電力を遮断してもシートPの発火の危険性がある。このため、ジャム時は加熱ガイド板121aを上方に回転回避させるとよい。
【0045】
また、加熱機構部120は、給紙トレイ220からシートPを給紙するレジストローラ対221と兼用されるものであることが好ましい。すなわち、レジスト部によってシートPの加熱を行うものである。この構成により、部品の削減によるコストダウン、小スペース化が図ることができる。
【0046】
また、本発明に係る画像形成装置において、前述した加熱機構部120に替えて、以下に示す加熱加圧機構部を適用してもよい。
図3は、転写機構部の転写部を含めた加熱加圧機構部の構成を示す断面図である。
図3に示すように、加熱加圧機構部125は、転写機構部(転写ベルト210を介したローラ211と転写ローラ212のニップ部N2)よりもシートPの搬送方向上流側に設けられており、少なくとも一方のローラに熱源(ヒータ125h)を内包する金属のローラ対125aからなる。
【0047】
ここで、ローラ対125aは、熱伝導率の高い金属で、かつ加工性のよい材質であるアルミニウムまたはアルミニウム合金などを用いた2つの回転体(ローラ)であり、これらのローラが当接してニップ部N1を構成している。また、ローラ対125aのうち、少なくともシートPのトナー像転写予定面と接触するローラの表面が平滑に仕上げられている。
【0048】
ローラ対125aのローラのうち、少なくともシートPのトナー像転写予定面と接触するローラは、熱源としてヒータ125hが内部に設けられた加熱ローラとなっている。ヒータ125hとしては、ハロゲンヒータでもよいが、輻射加熱効率の良いカーボンヒータが好ましい。また、ローラ対125aのうち、ヒータ125hを内蔵するローラについて、ローラ円周上に複数のヒートパイプを均等に配置したヒートパイプ構造にすることが好ましい。これにより、対象ローラの長手方向(記録媒体幅方向)の温度ムラをなくし、シートPを均一に加熱することができる。なお、ローラ対125aの温度が60〜140℃となるように、ヒータ125hの発熱を制御する。
【0049】
加熱加圧機構部125によれば、転写機構部で未定着画像(トナー像)が転写される前に、ニップ部N1でシートPを挟持して加熱しつつ該シートPのトナー像転写予定面をローラ面で所定の荷重で加圧することを行う。加熱加圧機構部125における加熱により、シートPの表面の水分は蒸発して減少されるようになり、ついでニップ部N2で該シートPに転写ベルト210上の1次転写されたトナー像が2次転写され、その結果トナー像定着時のトナーブリスタの発生を抑制することが可能となる。また、加熱加圧機構部125におけるローラ面の加圧により、シートP表面の凹凸が均され、ニップ部N2で該シートPに転写ベルト210上のトナー像が転写される際に、シートP表面とトナーとの空隙が減少するようになり、その結果トナー像定着時のトナーブリスタの発生をより抑制することが可能となる。
【0050】
なお、加熱加圧機構部125におけるローラ対125aの線圧としては、10〜20kgf/cmが好ましい。シートPに用いられる比較的凹凸の大きな紙としてマーメイド絹90kg紙があるが、実際に前記線圧に設定したローラ対125aを通したところ、該シートPの表面凹凸高さが約30μmから約20μmとなり、シートP表面とトナーとの空隙が減少するようになった。
【0051】
また、転写ベルト210からのトナー像の転写の際、比較的表面の凹凸が大きなシートPにおいては、転写ベルト210との密着不良で転写率が低下してしまう場合がある。これに対して、本発明では、加熱加圧機構部125においてシートPの凹凸を均すことによってシートPと転写ベルトの密着不良をなくすことができる。実際に、前記加熱加圧機構部125により表面凹凸高さが約30μmから約20μmとなったシートPに転写ベルト210からトナー像を転写させたところ、転写後の画像はオフセットが無く良好な画像が確認できた。また、転写後に行うベルトクリーニングの負荷を軽減することもできた。
【0052】
また、トナーブリスタの抑制に関しては、図4に示すように、前記転写機構部と定着機構部(定着装置100)との間のシートPの搬送経路上に、トナー像が転写されたシートPを挟持して該トナー像を押圧する加圧機構部130を備えることが好ましい。
【0053】
加圧機構部130は、表面が平滑な一対のローラ131a,131bからなり、ローラ131a,131b間のニップ部N3を通過するシートPに対して該シートPの厚み方向に所定の圧力を加える構成となっている。
【0054】
本構成例において、ローラ131a,131bは、シートPに対して加圧しながら接触し、その加圧力は500gf程度となっている。この加圧力は1次転写装置204Y、204M、204C、204Kの感光体205Y、205M、205C、205Kへの押し付け力と同程度であるが、トナー像を乱さない範囲で加圧力を変えてもよい。
【0055】
これにより、シートP上のトナー像はローラ131a,131bにより押圧され、トナー間の空隙が減少することからトナーブリスタの発生をより抑制することが可能となる。また、トナー像は薄層化され、低パイルハイトとすることができるため、トナー消費量の低減も実現できる。ベタ被覆率が向上するためである。
【0056】
ここで、ローラ131a,131bは、表面を平滑にした金属ローラであればよいが、少なくともローラ131aは、未定着トナー像押圧部材として、金属ローラの表面にPFAやPTFEなどのフッ素系樹脂からなる材料がコーティングされているものであることが好ましい。この表面性によって、ローラ131aへのトナーオフセットのしやすさが決定されるためである。
【0057】
なお、ローラ131a表面のコーティング部材としては、PTFE、PFA、FEPに耐磨耗性に優れたカーボン、ガラス繊維やセラミック、ポリイミド、摺動性に優れたニ硫化モリブデンなどの充填材を2〜20%加えたもの、機械的強度に優れた四フッ化エチレン・エチレン共重合体樹脂(ETFE)など水素の半分をフッ素に置換した構造のフッ素樹脂などが挙げられ、離型性(これを表す特性として水の接触角)を高めた材料として容易に得ることができる。また、コーティング部材に充填材を多く含むようにすることで耐磨耗性が確保され、非常に好適である。
【0058】
また、ローラ131aにはブレード部材132が、ローラ回転方向に対しカウンター方向に備えられており、ローラ131aにオフセットしてしまったトナーが回収される。本構成例では該ブレード部材132は、例えばポリウレタンからなるものを用い、ローラ131a外周面に加圧されながら接触する。本例においてその加圧力は線圧で20gf/cm程度となっている。
【0059】
また、該ローラ対のうち、シートP上のトナー像転写面と接するローラ131aにトナーと同極性のバイアスを印加することが好ましい。例えば、マイナス帯電のトナーならばローラ131a側をマイナス電位に設定する。ローラ131aにトナーと同極性のバイアスをかけることでさらに、トナーオフセットを防止する。ローラ131aの離型性にもよるが、前述のように金属部材やフッ素系の材料を用いれば、ローラ131a側にトナーが移動しにくいため、印加するバイアスは一次転写のバイアスよりも小さくすることが可能である。
【0060】
以上のように、加熱機構部120または加熱加圧機構部125、転写機構部、加圧機構部130を経由して、ブリスタの原因となる水分が低減され、トナー像を担持したシートPは、入口ガイド36により定着装置100に進入する。なお、加熱加圧機構部125を用いた場合には、シートP表面の凹凸が均されているのでシートPとトナーとの間の空隙も低減されている。そして、該シートPはヒータ44を内包した加熱ローラ35によって加熱された定着ベルト38と定着ローラ34、加圧ローラ37に挟持されることによってトナー像がシートP上にトナーブリスタを発生させることなく良好な状態で定着され、ガイド40を通って排紙ローラの回転に伴って機外に排出される。
【0061】
このとき、定着ベルト38および加圧ローラ37の表面にはトナー等が付着するが、この汚れはクリーニングウェブ39によってクリーニングされる。なお、定着ベルト38と加圧ローラ37表面のトナーの離型性差によって定着ベルト38の汚れは加圧ローラ37に回収されるようにしているため、加圧ローラ37側だけのクリーニングでよい。このクリーニングウェブ39はモータにて少しずつ送られて常にきれいな面を接触させ加圧ローラ37を清掃する。
【0062】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0063】
例えば、本発明は加圧ベルトを用いた方式の定着装置を用いてもよい。
図5は、本発明で用いる定着装置におけるその他の構成例(1)を示す断面図である。この定着装置100では、上側に回転自在に配置された定着ローラ12Rと、定着ローラ12Rの下にローラ13R,14R,15Rに回動自在に一定のテンションで架け渡された加圧ベルト14aと、が当接して加圧ベルト14aの裏面にある加圧パッドであるバックアップ部材14bにより定着ニップ部N4’を形成可能に配置されている。また、定着ローラ12Rはヒータ12hにより加熱され、加圧ベルト14aはヒータ14hにより加熱されるようになっている。
【0064】
また、少なくともバックアップ部材14bには、所定の加圧制御が行われる加圧手段を備えており、ニップ部N4'のニップ幅が用紙の種類(紙種)やモード(光沢を付与するモード、光沢を付与しないモード)によって複数の状態に可変可能な構成になっている。
【0065】
図6は、本発明で用いる定着装置におけるその他の構成例(2)を示す断面図である。この定着装置100では、上側に回転自在に配置された定着ローラ12Rと、定着ローラ12Rの下に支持部材14sでテンションフリーの状態で支持された加圧ベルト14aと、が当接して加圧ベルト14aの裏面にある加圧部材であるバックアップ部材14dにより定着ニップ部N4''を形成可能に配置されている。また、定着ローラ12Rはヒータ12hにより加熱されるようになっている。
【0066】
また、少なくともバックアップ部材14dには、所定の加圧制御が行われる加圧手段を備えており、ニップ部N4''のニップ幅が用紙の種類(紙種)やモード(光沢を付与するモード、光沢を付与しないモード)によって複数の状態に可変可能な構成になっている。
【符号の説明】
【0067】
12h,14h,44,125h ヒータ
12R,34 定着ローラ
13R,14R,15R ローラ
14a 加圧ベルト
14b,14d バックアップ部材
14s 支持部材
35 加熱ローラ
36 入口ガイド
37 加圧ローラ
38 定着ベルト
39 クリーニングウェブ
40 ガイド
100 定着装置(定着機構部)
120 加熱機構部
121 加熱部材
121a 加熱ガイド板
121b 発熱体
122 支持部材
125 加熱加圧機構部
125a ローラ対
130 加圧機構部
131a,131b ローラ
132 ブレード部材
140 円筒ガイド板
200 画像形成装置(カラー複写機)
200A 画像形成部
200B 給紙部
201 光書込み装置
202Y,202C,202M,202K 帯電装置
203Y,203M,203C,203K 現像装置
204Y,204M,204C,204K 1次転写装置
205Y,205C,205M,205K 感光体
210 転写ベルト
211 従動ローラ
212 転写ローラ
215 スタッカ
220 給紙トレイ
221 レジストローラ対
N1,N2,N3,N4,N4’,N4'' ニップ部
P シート(記録媒体)
T トナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2001−42665号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にトナー像を転写する転写機構部と、トナー像が転写された記録媒体を加圧及び加熱して該記録媒体にトナー像を定着する定着機構部と、を備える画像形成装置において、
前記転写機構部よりも記録媒体搬送方向上流側に設けられる、該記録媒体のトナー像転写予定面に接触してその表面を加熱する加熱部材と、前記記録媒体のトナー像転写予定面とは反対面側の前記加熱部材と対向する位置で該記録媒体に接触して支持する支持部材と、からなる加熱機構部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱機構部の加熱部材は、前記記録媒体と接触して加熱する加熱ガイド板と、該加熱ガイド板を加熱する発熱体と、からなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記発熱体は、PTC特性を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱機構部の支持部材は、前記加熱部材に対して前記記録媒体を挟んで一定のニップ幅をもつように押圧される駆動ローラであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記支持部材は、少なくとも非加熱の状態であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記転写機構部の構造部材と接触していることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加熱機構部は、記録媒体を給紙するレジストローラと兼用されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体にトナー像を転写する転写機構部と、トナー像が転写された記録媒体を加圧及び加熱して該記録媒体にトナー像を定着する定着機構部と、を備える画像形成装置において、
前記転写機構部よりも記録媒体搬送方向上流側に設けられ、少なくとも一方のローラに熱源を内包するローラ対からなり、該ローラ対で前記記録媒体を挟持して加熱しつつ該記録媒体のトナー像転写予定面をローラ面で加圧する加熱加圧機構部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記転写機構部と定着機構部との間の記録媒体搬送経路上に、前記記録媒体を挟持してトナー像を押圧する加圧機構部を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記加圧機構部は、表面が平滑なローラ対からなり、該ローラ対のうち、前記記録媒体上のトナー像転写面と接するローラにトナーと同極性のバイアスが印加されていることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−76045(P2011−76045A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240564(P2009−240564)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】