説明

画像形成装置

【課題】 プロセスユニットおよび転写ユニットの交換容易性は損なわず、感光体軸と転写ローラ軸の相対的かつ絶対的な位置関係を保証すること
【解決手段】 プロセスユニットは転写ユニット上に載置された形態で一体的に引き出されるように構成し、載置された状態で転写ローラを保持する両端部の軸受けとプロセスユニットは互いが有する位置決め手段によって位置決めされ、さらに転写ユニット筐体を構成する前側板が、感光体軸のうち一端を支持する嵌合部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を含むプロセスユニットと転写ベルトを備えた画像形成装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置において、作像部を構成する感光体は感光体ユニットとして画像形成装置の本体に対する交換容易性が実現されている。同様に、作像部を構成するベルトユニットに関しても、転写ベルト単体あるいはベルトユニット全体の交換容易性を目的とした引き出し構成が実現されている。これは、画像形成装置の本体フレームが引き出しレールを備え、該引き出しレールを介してベルトユニットが支持されるものである。このような構成を有する画像形成装置が特許文献1により提案されており、交換作業時における転写ベルトの破損防止や作業負荷の軽減が図られている。
【0003】
しかし、感光体ユニットとベルトユニットの支持および位置決めが別々の引き出し構成によって行われるため、相対的な位置精度が出にくい構成となってしまうという課題があった。これに対して、特許文献2は、感光体ユニットが載置される引き出し枠に転写ユニットを位置決めすることで、両ユニット間の相対的な位置精度の改善を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−236993号公報
【特許文献2】特開平9−179474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献2のような構成では、ユニット間の位置関係の精度を上げることはできる。しかし、ユニット間の位置精度を上げる構成であっても、感光体ユニットに含まれる感光体と転写ベルトユニットの転写ベルトより内側に配置される転写部材との位置関係については、直接位置関係を決定づけるものではない。そのため、転写ニップの長手方向における傾きが生ずる虞がある。そのため、両者の位置精度を上げる構成がより望まれている。
【0006】
そこで本発明では、感光体ユニットおよび転写ユニットの交換容易性は損なわず、感光体と転写部材との間の位置関係の精度の向上を図る画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、像担持体を備えた画像形成装置に対して着脱可能である像担持体ユニットと、ベルト部材と、像担持体に形成されたトナー像をベルト部材に転写するための転写部材と、転写部材を支持する転写部材の両端に設けられ、転写部材を支持する軸受とを備えた画像形成装置に対して着脱可能である転写ユニットと、転写部材を像担持体に向かって付勢するために軸受を弾性的に支持する弾性部材と、画像形成装置に設けられ、像担持体の内部を通り、像担持体を回転するための回転軸と、を有し、像担持体ユニットと転写ユニットは水平方向に画像形成装置から前側に引き出し可能である画像形成装置において、像担持体ユニットに設けられた第一位置決め部と軸受に設けられた第二位置決め部とが嵌合することで像担持体に対向するベルト面における像担持体と転写部材との位置決めを行い、回転軸が前側の軸受を支持する前側の支持部と嵌合することでベルト面に直交する方向における像担持体と転写部材との位置決めが行われることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、像担持体を備えた画像形成装置に対して着脱可能である像担持体ユニットと、ベルト部材と、像担持体に形成されたトナー像をベルト部材に担持された記録材に転写するための転写部材と、転写部材を支持する転写部材の両端に設けられ、転写部材を支持する軸受とを備えた画像形成装置に対して着脱可能である転写ユニットと、転写部材を像担持体に向かって付勢するために軸受を弾性的に支持する弾性部材と、画像形成装置に設けられ、像担持体の内部を通り、像担持体を回転するための回転軸と、を有し、像担持体ユニットと転写ユニットは水平方向に画像形成装置から引き出し可能である画像形成装置において、像担持体ユニットに設けられた第一位置決め部と軸受に設けられた第二位置決め部とが嵌合することで像担持体に対向するベルト面における像担持体と転写部材との位置決めを行い、回転軸が軸受を支持する支持部と嵌合することでベルト面に直交する方向における像担持体と転写部材との位置決めが行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感光体ユニットおよびベルトユニットのメンテナンス性を確保しつつ、感光体と転写部材との間の位置関係の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明について説明する斜視図(挿入時)である。
【図2】本発明について説明する斜視図(引き出し時)である。
【図3】本発明について説明する斜視図(プロセスユニット載置時)である。
【図4】本発明における転写ベルトユニットについて説明する斜視図である。
【図5】プロセスユニットの位置決めについて説明する断面図である。
【図6】画像形成装置について説明する断面図である。
【図7】転写ベルトユニットの挿入に伴う位置決めについて説明する断面図である。
【図8】感光体と転写ローラのオフセットについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置について>
本発明に係る画像形成装置について説明する。
【0012】
まず、図6を用いて画像形成装置の動作について説明する。画像形成装置には電子写真方式、オフセット印刷方式、インクジェット方式等複数の方式が挙げられるが、図6に示した画像形成装置60は電子写真方式を用いたカラーの画像形成装置である。画像形成装置60は、4色の画像形成部を中間転写ベルト上に並べて配置した、所謂中間転写タンデム方式の画像形成装置の断面図であり、厚紙対応力や生産性に優れる点から近年主流になっている。
【0013】
<転写材の搬送プロセス>
記録材Sは記録材収納部61内のリフトアップ装置62上に積載される形で収納されており、給紙装置63により画像形成タイミングに合わせて給紙される。図1ではエアによる分離吸着を利用する方式を用いるものとする。もちろん、他の給紙方式であってもいい。給紙装置63により送り出された記録材Sは搬送ユニット64が有する搬送パス64aを通過し、レジストレーション装置65へと搬送される。レジストレーション装置65において斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部へと送られる。二次転写部は、対向する第一の二次転写部材である二次転写内ローラ603および第二の二次転写部材である二次転写外ローラ66により形成される転写ニップ部である。そして、所定の加圧力と静電的負荷バイアスが与えられることで、中間転写ベルト上のトナー像が記録材S上に転写される。
【0014】
<画像の作像プロセス>
以上説明した二次転写部までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部までの画像形成プロセスについて説明する。
【0015】
本実施例では、イエロー(Y)のトナーにより画像を形成する画像形成部613Yと、マゼンタ(M)のトナーで画像形成する画像形成部Mと、シアン(C)のトナーで画像形成する画像形成部613Cと、ブラック(BK)のトナーで画像形成する画像形成部613BKを有する。画像形成部613Yと画像形成部613Mと画像形成部613Cと画像形成部613BKとは、トナーの色が異なる以外は、同様の構成であるため、代表して画像形成部613Yを用いて説明する。
【0016】
トナー像形成手段である画像形成部613Yは、像担持体である感光体608、感光体608を帯電する帯電器612、露光装置611a、現像装置610、一次転写装置607、および感光体クリーナ609から構成される。図中矢印mの方向に回転する感光体608は、帯電器612により表面を一様に帯電される。入力された画像情報の信号に基づいて露光装置611aが駆動し、回折部材611bを経由して、帯電された感光体608を露光することで、静電潜像が形成される。感光体608上に形成された静電潜像は、現像装置610により現像され、感光体上にトナー像が形成される。その後、一次転写部材607により所定の加圧力および静電的負荷バイアスにより、ベルト部材である中間転写ベルト606上にイエローのトナー像が転写される。その後、感光体608上に残った転写残トナーは感光体クリーナ609により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0017】
以上説明した画像形成部613は図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。そのため、中間転写ベルト606に形成されたイエローのトナー像に対して、画像形成部Mで形成されたマゼンタのトナー像が中間転写ベルト606に転写される。さらに、形成されたマゼンタのトナー像に対して、画像形成部Cで形成されたシアンのトナー像が中間転写ベルト606に転写される。さらに、シアンのトナー像に対して、画像形成部BKで形成されたブラックのトナー像が中間転写ベルト606に転写される。このように、異なる色のトナー像が中間転写ベルト606上に重ねられて形成されることで、フルカラー画像が中間転写ベルト606上に形成される。なお、本実施例の色数は4色であったが、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0018】
次に、中間転写ベルト606について説明する。中間転写ベルト606は駆動部材である駆動ローラ604、ステアリング部材であるステアリングローラ80、張架部材である張架ローラ617および二次転写内部材(張架部材)である二次転写内ローラ603によって張架されている。そして、中間転写ベルト606は図中矢印Vの方向へと搬送駆動されるベルト部材である。
【0019】
また、中間転写ベルト606に所定の張力を付与するテンションローラの機能はステアリングローラ1が兼ね備えているものとする。先述の各画像形成部613Y,613M,613C,613BKにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト606上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト606上に形成され、二次転写部へと搬送される。なお、中間転写ベルト606を張架するローラの本数は図1の構成に限定されるものではない。
【0020】
<二次転写以降のプロセス>
以上、それぞれ説明した記録材Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、二次転写部において中間転写ベルト606に形成されたフルカラーのトナー像が記録材S上に二次転写される。その後、記録材Sは定着前搬送部67により定着装置68へと搬送される。定着装置68には様々な構成および方式があるが、図1では対向する定着ローラ615および加圧ベルト614が形成する定着ニップ内で所定の加圧力と熱量を与えて記録材S上にトナー像を溶融固着させるものである。ここで、定着ローラ615は内部に熱源となるヒータを備え、加圧ベルト614は複数の張架ローラとベルト内周面から付勢される加圧パッド616を備えている。定着装置を通過した記録材Sは分岐搬送装置69により、そのまま排紙トレイ600上に排出されるか、もしくは両面画像形成を要する場合には反転搬送装置601へと搬送されるかの経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、反転搬送装置601へと送られた記録材Sはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置602へと搬送される。その後、給紙装置61より搬送されてくる後続ジョブの記録材とのタイミングを合わせて、搬送ユニット64が有する再給紙パス64bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、先述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0021】
なお、二次転写後に中間転写ベルト606に残留したトナー等の付着物はクリーニングブレード618を有するクリーニングユニットによって中間転写ベルト606から除去される。そして、次の作像に備えられる。中間転写ベルト606上から除去されたトナーは、搬送スクリュー619によって最終的には不図示の回収容器などに集められる。
【0022】
<プロセスユニットについて>
図1は図6で説明した画像形成装置60の作像部を中心に示した斜視図である。なお、図1では必要な部品およびユニットのみを示している。画像形成装置60は後側板2および前支柱3R、3Lからなる筐体を有し、該筐体にはスライドレール5R、5Lが設けられている。スライドレール5R、5Lは中間転写ベルトユニット40を交換する際に引き出し可能に支持する役割を有し、メンテナンス性の向上が図られている。ここで、ベルトユニット(転写ユニット)である中間転写ベルトユニット40は、ベルト部材である中間転写ベルト606、転写部材である転写ローラ607、転写ローラを支持する軸受等が一体に画像形成装置に対して着脱可能となっている。
【0023】
図1は、中間転写ベルトユニット40が画像形成装置60内に挿入された状態を示し、中間転写ベルトユニット40の位置は前支柱3R、3Lが有する位置決め軸4R、4Lなど(後側板2が有する位置決め軸については別途後述する)によって決まる。つまり、図1のように中間転写ベルトユニット40が挿入された状態では、中間転写ベルトユニット40はスライドレール5R、5Lからは浮上した状態となっている。
【0024】
また、本実施例では、画像形成部613のうち、感光体608、帯電装置621、現像装置610、感光体クリーナ609は像担持体ユニットであるプロセスユニット1(Y〜Bkの各色に対して存在する)の形態でカートリッジ化されている。なお、プロセスユニット1の上面に空いたスリット7には露光装置611からの光路が入り、感光体608上を走査する。後側板2に支持されている回転軸である感光体軸6はプロセスユニット1内の感光体608を貫通し、中間転写ベルトユニット40のユニット前側板41によって支持される構成となっている。この回転軸は不図示のモータにより回転し、感光体を回転させるものである。
【0025】
図2は、中間転写ベルトユニット40を引き出した状態を示す斜視図である。スライドレール5R、5Lは多重構造になっており、図中矢印S方向に引き出されると、図2のように引き延ばされた形態となる。このとき、中間転写ベルトユニット40は前支柱3R、3Lが有する位置決め軸4R,4L、後側板が有する位置決め軸20R、20Lから外れることで、スライドレール5R、5Lに支持された状態となる。ここで、本実施例では、プロセスユニット1は中間転写ベルトユニット40の上に載置された形態で一体的に引き出される。
【0026】
図3は中間転写ベルトユニット40が引き出された状態において、プロセスユニット1を着脱する場合について説明した斜視図である。なお、説明の都合上、ユニット前側板41の一部をカットした状態で図示している。プロセスユニット1は筐体下部に位置決めボス30(後ろ側にもあり)を有し、載置された際に、図中一点鎖線で示したように一次転写ローラ607を支持するローラ軸受け46、48に対する位置決めが行われる。
【0027】
<中間転写ベルトユニットの詳細構成>
図4に示す斜視図を用いて、本実施例における中間転写ベルトユニット40の構成を詳細に説明する。中間転写ベルトユニット40はユニット筐体を構成するユニット前側板41およびユニット後側板42を有し、両側板によって回転可能に支持された駆動ローラ604、テンションローラ80、二次転写内ローラ66などの張架ローラを有する。張架ローラの本数はこの限りではなく、必要に応じて従動ローラやステアリングローラなどを有する場合もある。これらの張架ローラには、無端ベルトである中間転写ベルト606が架け廻され、テンションローラ80によって所定のベルトテンションが付与される。ベルトテンションの付与は、テンションローラ80を回転可能に支持するテンション軸受け45をテンションばね52(ともに後側にもあり)が付勢することで実現される。駆動ローラ604の端部にはカップリングなどの駆動伝達装置が設けられ、不図示の駆動モータから駆動力を与えられることで中間転写ベルト606が図中x方向に搬送される。駆動ローラの表面はゴム層を有し、ポリイミドなどの樹脂で形成された中間転写ベルト606との間に十分な摩擦力を確保している。
【0028】
次に一次転写ローラ607の支持構成について説明する。一次転写ローラ607は、両端部を軸受としての導電性のローラ軸受け46、48によって回転可能に支持され、該ローラ軸受け46、48は支持部であるユニット前側板41およびユニット後側板42に保持され、図中z軸方向にのみ自由度を有する。具体的には、ローラ軸受け46、48は弾性部材である一次転写バネ47によって弾性的に支持される。即ち、ローラ軸受け46、48はある一次転写バネ47によってz方向に加圧され、ユニット前側板41およびユニット後側板42によってガイドおよび規制される。このような構成によって、画像形成装置内において一次転写ローラ607は感光体608に対して所望の転写圧を以って付勢される。なお、ローラ軸受け46、48は、その上面にプロセスユニットの位置決めを行うための位置決め穴および長穴がそれぞれ設けられる。
【0029】
ここで、ユニット前側板41はローラ軸受け46を保持するとともに、感光体軸と嵌合し、これを支持するドラム位置決め穴49を有する。また、画像形成装置60の前支柱3R、3Lが有する位置決め軸4R、4Lと嵌合する位置決め穴43および長穴44も有する。つまり、感光体軸と一次転写ローラ軸を共通の筐体によって保持することで、両軸の相対的な位置関係がより高精度に決められると同時に、画像形成装置内における絶対的な感光体軸の位置も決めることが出来る。一方、ユニット後側板42はローラ軸受け48を保持するものの、感光体軸と勘合する穴は有さない。なお、図4では隠れて見えないが、ユニット後側板42は後側板2が有する位置決め軸20R、20Lと勘合する位置決め穴および長穴は有する。このように、中間転写ベルトユニット40のユニット前側板41だけが感光体軸との位置決め穴49を有する点が本発明の特徴であり、これによって感光体と一次転写ローラ間の位置決め精度と、中間転写ベルト606の交換性の両立が達成される。すなわち、感光体軸は図2に示すように後側板2が有しているため、ドラム位置決め穴49は後側板2に近接するユニット後側板42ではなく、離れたユニット前側板41に設けた方が位置決め精度が向上する。また、中間転写ベルト606を交換する際には図中y方向に挿抜することで障害物がなく円滑な作業が可能となる。
【0030】
なお、図4では説明の都合上、中間転写ベルト606の一部をカットした仮定で図示してある。
【0031】
<感光体と一次転写ローラの相対位置決め>
図5を用いて、感光体と一次転写ローラの相対的な位置関係の決定について説明する。図5(a)は図3に示した画像形成装置の斜視図を正面(y方向)から見た図であり、図5(b)は図1に示した画像形成装置の同図である。なお、一部説明の都合上、断面をカットした状態で示してある。
【0032】
図5(a)に示したように、プロセスユニット1Bkは筐体下部に設けられた第一位置決めであるボス30(前後にあり)が一次転写ローラ607Bkを支持するローラ軸受け46Bk、48Bkの第二位置決めである長穴460BK、480BK(図3)で位置決めされるように載置される。
【0033】
即ち、プロセスユニットの前後にそれぞれ設けられた位置決め部とそれぞれの軸受に設けられた位置決め部とが嵌合することで、水平方向における転写ローラに対するプロセスユニットの位置、即ち、感光体の位置が決められる。なお、本実施例では、水平面としたが、感光体に対向するベルト面(xy方向)における転写ローラに対するプロセスユニットの位置、即ち、感光体の位置が決められる。
また、プロセスユニット1Bkは同様に筐体下部に設けられた脚部50が、ユニット前側板41およびユニット後側板42に設けられた凹部51に嵌るようになっている。プロセスユニット1C(あるいは1M)の図は、このようにして載置された状態を示す。この図では、感光体軸が貫通していない状態(引き出された状態)ではプロセスユニットはローラ軸受け46C、48Cに対して位置決めはされるものの、z方向に対しては自重で脚部50が凹部51に着地した状態となる(図中A部)。つまり、図5(a)に示す載置のみの段階では、プロセスユニット1Cと一次転写ローラ607Cの母線ズレのみが補正された状態であり、感光体608Cの位置および一次転写圧は仮決めされた状態である。
【0034】
次に、載置された状態のまま中間転写ベルトユニットと一体で画像形成装置内に挿入されると、図5(b)に示す状態となる。図5(b)では、中間転写ベルトユニット40はユニット前側板41およびユニット後側板42が有する決め穴43および53と、前支柱3Rおよび後側板2が有する位置決め軸4Rおよび20Rがそれぞれ嵌合することで絶対的な位置が決められている。このとき、感光体軸6C(以下、ここではシアンを例に説明する)は感光体608Cを貫通し、ユニット前側板41が有するドラム位置決め穴49Cと嵌合する。これによって、後側板2によって片持ち支持される感光体軸6Cの先端倒れが補正され、一次転写ローラ607Cとの相対的な軸間距離および画像形成装置内での絶対的な位置が決まる。即ち、感光体軸に感光体とローラ軸受けを支持する前側版とを嵌合させることで、感光体と、前側版即ち軸受けの鉛直方向における位置関係を決めることができる。その結果、感光体と転写ローラとの位置関係を決められる。したがって、図5(b)ではプロセスユニット1Cの脚部50は凹部51から浮上した状態(図中A’部)となり、このようにして決まったプロセスユニット1Cに対してローラ軸受け46C、48Cが追従し、感光体608Cに対する所定の一次転写圧が決まる。なお、本実施例では、ドラム位置決め穴49は各色とも決め穴となっているが、これは先述のように片持ち支持構成ゆえに先端倒れが大きい感光体軸6を矯正するためである。
【0035】
ここで、図5では感光体608と一次転写ローラ607は互いの中心がx方向で一致した状態(図8(a)参照)で示したが、例えば図8(b)のように一次転写ローラ606を下流に距離Lだけオフセットさせた場合でも有効である。図8(b)のようなオフセットは、感光体608に対する中間転写ベルト606の巻き付きを増やし、転写性を良好にする効果が得られる。この場合のローラ軸受けの移動方向はz方向に移動する構成にすると、z方向における感光体と転写ローラとの鉛直方向における位置決めを行いやすい点で有効である。本発明におけるプロセスユニットの載置構成によれば、プロセスユニット1のボス30を所望のオフセット量Lだけ移動させることで、ローラ軸受け46、48との位置決め関係は同様に維持することができる。その結果、感光体608と一次転写ローラ607の相対的な母線ズレを補正することができる。本実施例では、z方向は鉛直方向であるが、z方向は感光体と対向するベルト面と直交する方向となる。
【0036】
<中間転写ベルトユニットの絶対位置決め>
次に、中間転写ベルトユニットの挿入に伴う絶対的な位置決めについて説明する。図7(a)〜(d)は、プロセスユニットの載置後から中間転写ベルトユニットの挿入完了までを4つのステップに分けて順に説明したものである。
【0037】
図7(a)は、プロセスユニットと一次転写ローラの母線ズレが補正された状態で中間転写ベルトユニットが挿入された際に、まず、感光体軸6が感光体608を貫通し、ユニット前側板41が有するドラム位置決め穴49に嵌合するものである(図中B部)。このとき、画像形成装置本体との位置決め軸4R(4L)および20R(20L)とは勘合しない軸長関係になっている。感光体軸6は感光体駆動モータ70の駆動軸となっており、その絶対位置は後側板2の面内で決められている。感光体軸6には平行ピンが設けられており、貫通した際に感光体フランジ部へと係止されることで駆動が伝達される。以上から、図7(a)に示す第1ステップによって、まず感光体軸6が軸支され、それに倣って一次転写ローラ607が追従することで一次転写ニップの形状および圧が決まる。
【0038】
続いて図7(b)は、さらに中間転写ベルトユニットを挿入した状態であり、次に嵌合するのは後側板2が有する位置決め軸20R(20L)とユニット後側板42であることを示している(図中C部)。このとき、前支柱3R(3L)が有する位置決め軸4R(4L)とユニット前側板41はまだ嵌合しない軸長関係になっている。このように、図7(b)に示す第2ステップによって、後側板2に対する中間転写ベルトユニットの位置決めが行われる。
【0039】
続いて図7(c)は、さらに中間転写ベルトユニットを挿入し、最後に前支柱3R(3L)が有する位置決め軸4R(4L)がユニット前側板41と嵌合する様子を示している(図中D図)。直前の第2ステップでは、後側板2に対する位置決めは行われたものの、中間転写ベルトユニットは前奥幅が広いため、自重によって垂れ下がり気味となる。したがって、ユニット前側板41と既に嵌合している感光体軸6も前側が倒れた状態となっている。図7(c)に示す第3ステップは、このような前下がり傾向にある中間転写ベルトユニットを持ち上げ、正しい位置に補正する役割を担うものである。当然、本発明によれば、ユニット前側板41という同一部材によって感光体軸6と一次転写ローラ607を保持するため、第3ステップにおける位置決め軸4R(4L)との嵌合により、感光体軸と一次転写ローラを同時に絶対位置に決めることが可能となる。
【0040】
以上に説明した第1〜第3のステップを経て、中間転写ベルトユニットが完全に画像形成装置内に挿入された状態が図7(d)に示す第4ステップとなる。図7(d)より、ユニット側板41およびユニット後側板42が、それぞれ感光体軸6、位置決め軸4R(4L)、および位置決め軸20R(20L)と嵌合していることが分かる。このとき、感光体608と一次転写ローラ607は、傾き(母線ズレ)、相対位置関係(軸間距離や図8に示すオフセット量Lなど)、画像形成装置内における絶対位置がそれぞれ補正され、所望の状態が得られる。
【0041】
このように、本発明の実施例では、プロセスユニットおよび中間転写ベルトユニットの交換作業性を損なうことなく、画像品質を向上させる上で最も重要な関係となる感光体と一次転写ローラの位置関係を容易かつ精度良く決めることが可能となる。なお、本実施例では中間転写方式の画像形成装置を例としたが、転写ベルト上に吸着保持した転写材上に直接Y、M、CおよびBkのトナーを感光体上から転写する直接転写方式の画像形成装置であっても構わない。その場合には、中間転写ベルトが直接転写ベルト、一次転写ローラが転写ローラ、二次転写部は不要になるものの、基本的な作像プロセスおよび搬送プロセスは同様となる。直接転写方式の画像形成装置においても、感光体と一次転写ローラの位置関係は転写画像の品質を左右する重要なファクターであり、本発明の適用による効果が同様に得られる。
【符号の説明】
【0042】
1 プロセスユニット
2 後側板
3 前支柱
4 位置決め軸(前支柱側)
5 スライドレール
6 感光体軸
20 位置決め軸(後側板側)
30 (プロセスユニットの)位置決めボス
40 中間転写ベルトユニット
41 ユニット前側板
42 ユニット後側板
46 ローラ軸受け(ユニット前側板側)
47 一次転写バネ
48 ローラ軸受け(ユニット後側板側)
49 ドラム位置決め穴
50 (プロセスユニットの)脚部
51 (ユニット前・後側板の)凹部
60 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を備えた画像形成装置に対して着脱可能である像担持体ユニットと、ベルト部材と、像担持体に形成されたトナー像をベルト部材に転写するための転写部材と、転写部材を支持する転写部材の両端に設けられ、転写部材を支持する軸受とを備えた画像形成装置に対して着脱可能である転写ユニットと、転写部材を像担持体に向かって付勢するために軸受を弾性的に支持する弾性部材と、画像形成装置に設けられ、像担持体の内部を通り、像担持体を回転するための回転軸と、を有し、像担持体ユニットと転写ユニットは水平方向に画像形成装置から前側に引き出し可能である画像形成装置において、
像担持体ユニットに設けられた第一位置決め部と軸受に設けられた第二位置決め部とが嵌合することで像担持体に対向するベルト面における像担持体と転写部材との位置決めを行い、回転軸が前側の軸受を支持する前側の支持部と嵌合することでベルト面に直交する方向における像担持体と転写部材との位置決めが行われることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体を備えた画像形成装置に対して着脱可能である像担持体ユニットと、ベルト部材と、像担持体に形成されたトナー像をベルト部材に担持された記録材に転写するための転写部材と、転写部材を支持する転写部材の両端に設けられ、転写部材を支持する軸受とを備えた画像形成装置に対して着脱可能である転写ユニットと、転写部材を像担持体に向かって付勢するために軸受を弾性的に支持する弾性部材と、画像形成装置に設けられ、像担持体の内部を通り、像担持体を回転するための回転軸と、を有し、像担持体ユニットと転写ユニットは水平方向に画像形成装置から引き出し可能である画像形成装置において、
像担持体ユニットに設けられた第一位置決め部と軸受に設けられた第二位置決め部とが嵌合することで像担持体に対向するベルト面における像担持体と転写部材との位置決めを行い、回転軸が軸受を支持する支持部と嵌合することでベルト面に直交する方向における像担持体と転写部材との位置決めが行われることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像形成装置の後側板に対して前記回転軸は位置決めされ、ベルトユニットの後側はベルトユニットを後側板に対して位置決めするための位置決め部を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
像担持体ユニットとベルトユニットとは一体で画像形成装置から引き出しが可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103485(P2012−103485A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251898(P2010−251898)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】