説明

画像形成装置

【課題】装置を大型化させることなく,フィルミングの除去,ベルトの冷却,除電をいずれも適切に行うことのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラープリンタ1は,弾性層を有し,無端ベルト状であるとともに回転移動される中間転写ベルト11を備えるものであり,中間転写ベルト11の移動方向について2次転写部より下流側で,かつ,トナー像形成部より上流側の箇所に配置され,ブラシローラを帯電状態として中間転写ベルト11に接触させる第1クリーニング部(正極ブラシクリーナ52と負極ブラシクリーナ53)と,中間転写ベルト11の移動方向について第1クリーニング部より下流側で,かつ,トナー像形成部より上流側の位置に配置され,液体分を含浸した多孔質層71bを中間転写ベルト11に接触させる第2クリーニング部(液体クリーナ54)とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,中間転写ベルトを有する電子写真方式または静電記録方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,中間転写ベルトとして,弾性層を含む弾性ベルトを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,電子写真方式の画像形成装置では,例えばタンデム型のカラープリンタ等において,中間転写ベルトとして,無端ベルト状の像担持体が用いられることが多い。このベルト状の像担持体から,例えば記録部材へとトナー像が転写された後も,像担持体上には多少の付着物が残る。そのため,この付着物を除去するためのクリーニング部材が設けられる。クリーニング部材としては,従来より,ブレード部材やブラシ部材等が用いられている。
【0003】
近年,転写性を向上させるために,中間転写ベルトとして,基材と表層との間に弾性層を有する弾性中間転写ベルトが採用される場合がある。このような弾性ベルトに対してブレード部材によるクリーニングを行った場合にはトナーのすり抜けが多く,クリーニング性があまり良好とは言えない。そのため,例えば,特許文献1に記載されているように,ブラシ部材によるクリーニングが採用されることが多い。この文献では,2つの異なる極性のバイアスを印加したファーブラシを備えることにより,良好にクリーニングできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−207403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術では,ブラシに電気的に吸着させることにより,付着物を中間転写ベルトから除去している。そのため,例えばトナーの外添材や紙粉等がトナーから離れてベルト表面に固着し,いわゆるフィルミングと呼ばれる状態となったものに対しては,適切に除去できるとは言えなかった。特に近年,プリント速度を向上させるために,用紙やトナーに働く電界が大きくなっていることから,フィルミングが発生しやすくなっている。そのため,フィルミングを適切に除去できるクリーニング装置が望まれていた。
【0006】
また,プリント速度の向上によって,両面印刷時等にはベルトの温度が上昇しがちであった。あるいは,弾性ベルトでは,抵抗の違う層を積層しているため,層間に電荷が溜まりやすい。そのため,充分な自己除電が行われないという問題点もあった。これらの問題点に対しては,例えば温度の上昇に対しては冷却装置を,除電のためには除電装置をそれぞれ設ければよいが,像担持体に接触させて配置する部材がそれだけ増えるため,装置の大型化を招くことになる。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,装置を大型化させることなく,フィルミングの除去,ベルトの冷却,除電をいずれも適切に行うことのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,弾性層を有し,無端ベルト状であるとともに回転移動される中間転写ベルトと,中間転写ベルト上にトナー像を形成するトナー像形成部と,トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録部材へ転写する転写部とを有する画像形成装置であって,中間転写ベルトの移動方向について転写部より下流側で,かつ,トナー像形成部より上流側の箇所に配置され,ブラシローラを帯電状態として中間転写ベルトに接触させる第1クリーニング部と,中間転写ベルトの移動方向について第1クリーニング部より下流側で,かつ,トナー像形成部より上流側の位置に配置され,液体を含浸した多孔質層を中間転写ベルトに接触させる第2クリーニング部とを有するものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,弾性層を有する中間転写ベルトをクリーニングする部材として,第1クリーニング部と第2クリーニング部とを有している。そのうち,第1クリーニング部は,ブラシローラを帯電状態として中間転写ベルトに接触させるので,電気的に付着物を除去することができる。その後,第2クリーニング部によって,液体を含浸した多孔質層が接触されるので,中間転写ベルトに付着している外添材等が除去される。従って,フィルミングを除去できる。さらに,液体による冷却効果がある。また,液体が導電性のものであれば除電効果をも得ることができる。従って,これらの機能を併せ持つので,装置を大型化させることなく,フィルミングの除去,ベルトの冷却,除電をいずれも適切に行うことができるものとなっている。
【0010】
さらに本発明では,第2クリーニング部は,最外面に多孔質層を有する多孔質ローラと,多孔質ローラの表面の一部に接触するとともに,他の箇所において液体容器に部分的に浸漬されている液体供給ローラと多孔質ローラによる液体の含有量を制限する規制部材とを有することが望ましい。
このようなものであれば,多孔質ローラの多孔質層に適量の液体を保持させておくことができる。
【0011】
さらに本発明では,規制部材は,多孔質ローラの多孔質層に圧接または離隔する部材であることが望ましい。
規制部材を圧接させれば,離隔させている場合より,多孔質層の含有する液体分を減少させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置によれば,装置を大型化させることなく,フィルミングの除去,ベルトの冷却,除電をいずれも適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】中間転写ベルトを示す断面図である。
【図3】ベルトクリーナを示す説明図である。
【図4】ベルトクリーナの実験用の構成を示す説明図である。
【図5】ベルトクリーナの比較例を示す説明図である。
【図6】ベルトクリーナの比較例を示す説明図である。
【図7】ベルトクリーナの比較例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,いわゆるタンデム型のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0015】
本形態のカラープリンタ1は,その概略構成を図1に示すように,カラー画像の形成が可能ないわゆるタンデム方式の画像形成装置である。図中で中段には,4色の画像形成部が,図中左から右へ,イエロー10Y,マゼンタ10M,シアン10C,ブラック10Kの順に中間転写ベルト11に沿って配置されている。また,カラープリンタ1の図中左下部には,着脱可能な給紙カセット13が,図中右下部には,手差しユニット14がそれぞれ装着されている。
【0016】
イエローの画像形成部10Yは,図1に示すように,感光体21を中心に,帯電部22,現像部24,1次転写部25,クリーナ26を有している。図では,イエローの画像形成部10Yのみに符号を付して説明したが,他の色についても同様の構成となっている。なお,図では,ブラック10Kは,他色とはやや異なる形状となっているが,これは単に大きさが大きいのみであり,装置構成はほぼ同様である。また,露光部23は,各色の画像形成部の下部に設けられ,各色で共通のものとなっている。さらに,中間転写ベルト11の図中で上方には,各色のトナーを貯留するホッパ28Y,28M,28C,28Kが備えられている。
【0017】
さらに,図1中で右側には,用紙搬送経路31,32が設けられている。図中で下から上向きに用紙を搬送する用紙搬送経路31と,図中で上から下向きに用紙を搬送する用紙搬送経路32とが,並べて設けられている。用紙搬送経路32は,両面印刷を行う場合に使用されるものである。用紙搬送経路31,32には,それぞれ複数の搬送ローラ33が設けられている。本形態のカラープリンタ1は,これらの搬送ローラ33を制御することにより,各搬送路31,32に沿って用紙の搬送または停止等を必要に応じて行うことができるようになっている。
【0018】
用紙搬送経路31上には,図1に示すように,2次転写部35と定着部36とが配置されている。定着部36は,互いに対向する2つのローラ(加熱ローラ37と加圧ローラ38)によるローラ対を有している。2次転写部35は,2次転写ローラ41を有している。なお,中間転写ベルト11は,複数のベルトローラ42,43等に巻き掛けられており,2次転写ローラ41は,中間転写ベルト11を間に挟んで,そのうちの1つのベルトローラ42と対向している。
【0019】
さらに,本形態のカラープリンタ1は,各部を制御するための制御部40を有している。制御部40は,各色の画像形成部の画像形成動作や,2次転写部35,定着部36における処理,および各所の搬送ローラ33等の駆動を制御している。なお,図1では制御部40を図中で右下に示しているが,配置される位置はどこでもよいし,機能を複数の制御部に分けてそれぞれ別の箇所に配置されるものでもよい。
【0020】
なお,本形態の中間転写ベルト11は,図2に示すように,弾性材層を含む層構造のものである。図2中で下側に示しているのが最内層(図1において内周側に配置される層)であり,内側から外側へ順に,基材層11a,弾性層11b,表面層11cを有している。なお,これら以外にもさらに別の層を有していてもよい。
【0021】
基材層11aは,PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)等により形成された厚み50〜200μm程度の層である。弾性層11bは,NBR(ニトリルゴム),CR(クロロプレン)ゴム,ウレタンゴム等の弾性材により,100〜500μm程度の厚さに形成された弾性層である。また,表面層11cは,アクリル,ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等の樹脂材や,これにフッ素樹脂コートや酸化処理等を施してさらに離型性を高めたものによる層であり,0.1〜5μm程度の厚さに形成されている。
【0022】
本形態のカラープリンタ1は,図1に示すように,図中で左方に配置されているベルトローラ43に対向して,ベルトクリーナ51を有している。画像形成時には,中間転写ベルト11は,複数のベルトローラ42,43等によって,図中に矢印gで示すように,図中反時計回りに回転移動される。そして,ベルトクリーナ51は,中間転写ベルト11の移動方向について,2次転写部35に対向する位置より下流側,かつ,各色の画像形成部に対向する位置より上流側に配置されている。
【0023】
本形態のベルトクリーナ51は,2次転写処理後にも中間転写ベルト11の表面に残っているトナー等の付着物を除去する。これによって,中間転写ベルト11にトナーに混ぜられている外添材や紙粉等が固着して,いわゆるフィルミング状態となることを防止している。さらに,このベルトクリーナ51は,中間転写ベルト11を冷却し,除電するという機能をも有している。
【0024】
本形態のベルトクリーナ51は,図3に示すように,3つのクリーナを備えている。中間転写ベルト11の移動方向について上流側から順に,正極ブラシクリーナ52,負極ブラシクリーナ53,液体クリーナ54である。正極ブラシクリーナ52は,ブラシローラ61,清掃ローラ62,掻き取りブレード63,正極バイアス電源64を有している。そして,正極バイアス電源64によってブラシローラ61を正に帯電させ,帯電したブラシ毛を中間転写ベルト11の表面層11aに接触させることにより,付着物中の主に負に帯電しているものを電気的に除去するためのものである。
【0025】
負極ブラシクリーナ53は,図3に示すように,ブラシローラ66,清掃ローラ67,掻き取りブレード68,負極バイアス電源69を有している。そして,負極バイアス電源69によってブラシローラ66を負に帯電させ,帯電したブラシ毛を中間転写ベルト11の表面層11aに接触させることにより,付着物中の主に正に帯電しているものを電気的に除去するためのものである。
【0026】
正極ブラシクリーナ52と負極ブラシクリーナ53とは,極性が異なるだけでほぼ同様の構成である。片方のみを備えるものとしてもよいが,両方備えることにより,いずれの極性の付着物も確実に除去することができる。これらが,第1クリーニング部に相当する。なお,図3に示すように,ブラシローラ61,66は,いずれも中間転写ベルト11の移動方向に対して,カウンター方向に回転する。また,清掃ローラ62,67は,ブラシローラ61,66に対して,同じ回転方向に回転する。従って,これらの接触箇所では,カウンター方向の回転となっている。
【0027】
液体クリーナ54は,図3に示すように,多孔質ローラ71,72と液体容器73とを有している。液体容器73には液体74が収納されている。多孔質ローラ71,72はそれぞれ,ローラ軸71a,72aの周囲に多孔質層71b,72bを有し,その多孔質層71b,72bに液体を保持できるものである。そして,多孔質ローラ71は,中間転写ベルト11の表面の汚れを液体74を使ってふき取るものであり,中間転写ベルト11の移動方向に対してカウンター方向に回転される。
【0028】
多孔質ローラ72は,多孔質ローラ71に液体を供給するためのものであり,図3に示すように,多孔質層72bの一部が液体容器73中の液体74に接するように配置されている。そして,多孔質ローラ72は,多孔質ローラ71とは逆の回転方向に回転されている。この多孔質ローラ72が,液体供給ローラに相当する。そして,液体クリーナ54が第2クリーニング部に相当する。
【0029】
また,液体74としては,例えば純水を使用することができる。純水は,純度の高い水であり,ここでは,導電率2〜8MΩ・cmのものを用いる。純水を使用して水ぶきすれば,液体74に起因する新たな汚れの原因にはならない。なお,中間転写ベルト11の移動方向について液体クリーナ54よりさらに下流側に,中間転写ベルト11に付着した液体74を除去するための乾燥手段(例えば,ふき取り手段や送風手段等)を設けてもよい。
【0030】
さらに,本形態では,図3に示すように,多孔質ローラ71に対して規制部材75が進退可能に設けられている。規制部材75は,金属等の硬質の棒材である。ここでは,少なくとも多孔質ローラ71の多孔質層71b以上の長さ(図中奥行き方向)のものとしている。そして,図中に実線で示すように,規制部材75が多孔質層71bに押し込まれた状態では,多孔質層71b中の液体74を押し出して,多孔質層71bに含有する液体74の量を減らす。すなわち,多孔質ローラ72から供給された液体74のうち多すぎる分を液体容器73へ返すことができる。規制部材75による圧接力の大きさや圧接している時間等によって,多孔質層71bに含有させる液体74の量を調整することができる。
【0031】
一方,図中に破線で示すように,規制部材75が多孔質層71bから離れると,多孔質層71bには多孔質ローラ72から供給を受けた液体74がそのまま保持される。従って,規制部材75の進退によって,中間転写ベルト11を液体74で拭く前に,多孔質層71bの含有する液体74の量の調節を行うことができる。例えば,通常は比較的少量でふき取りを行い,累計印刷枚数が予め決めた枚数に到達した場合に,多めの液体74を用いるといった制御を行うことができる。
【0032】
次に,このカラープリンタ1によってカラー画像が形成される際の,各部の動作を説明する。各色の感光体21にはそれぞれ,タイミングを合わせてトナー像が形成される。すなわち,帯電部22によって一様に帯電され,続いて露光部23によって露光される。これにより,各色の感光体21の表面には,各色の画像データに基づいた静電潜像が形成される。次に,現像部24によって,その静電潜像にトナーが供給され,感光体21上にトナー像が形成される。
【0033】
各色の感光体21上にそれぞれ形成されたトナー像は,それぞれの1次転写部25によって中間転写ベルト11上に転写され,互いに重ね合わせられる。これによって,中間転写ベルト11にカラーのトナー像が形成される。なお,1次転写領域を通過した後も感光体21に残留しているトナーは,クリーナ26によって掻き取られる。
【0034】
一方,画像形成されるための記録部材である用紙は,図1中の下方に矢印hで示すように,給紙カセット13または手差しユニット14から1枚ずつ用紙搬送経路31へと引き出される。そして,用紙搬送経路31を2次転写部35へ向かって搬送される。中間転写ベルト11上に重ね合わせられたトナー像は,2次転写部35において,搬送されてきた用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は,さらに上方へ搬送されて定着部36に至り,加熱されるとともに加圧される。これにより,トナーが用紙に定着される。そして,画像形成された用紙は,機外に排出される。
【0035】
中間転写ベルト11の2次転写後の箇所は,さらに図1中の矢印g方向に回転され,ベルトクリーナ51に至る。この時点では,中間転写ベルト11の表面層11cの外面には,残留トナーや紙粉等の付着物が付着していることがある。また,例えば連続して両面印刷を行った場合等には,中間転写ベルト11の表面温度が通常よりやや高くなることもある。あるいは,中間転写ベルト11の弾性層11b等の影響により,中間転写ベルト11の厚さ内に電荷が溜まることにより,部分的に帯電したような状態となることもある。これらはいずれも,次回の画像形成処理において画質を低下させる原因となる。本形態では,ベルトクリーナ51を有しているので,これらの全てを除去することができる。
【0036】
中間転写ベルト11の移動によって,その2次転写後の箇所は,ベルトクリーナ51に対向する位置まで運ばれる。そして,図3に示すように,まず正極ブラシクリーナ52に対向される。そして,付着物のうち,負に帯電しているものは,このブラシローラ61のブラシ毛に電気的に引き寄せられて吸い付くことにより,中間転写ベルト11から除去される。ブラシローラ61に吸い付いた付着物は,ブラシローラ61の回転によって清掃ローラ62に対向し,清掃ローラ62へと移される。さらに,掻き取りブレード63によって清掃ローラ62から掻き落とされ,回収される。
【0037】
中間転写ベルト11の表面の付着物のうち,正に帯電しているものは,上記とほぼ同様に,負極ブラシクリーナ53によって除去される。しかし,正にも負にも帯電していない付着物は,正極ブラシクリーナ52および負極ブラシクリーナ53をいずれもすり抜けることがある。その場合には,付着したままで液体クリーナ54に対向する位置まで運ばれる。そして,多孔質ローラ71によって,水ぶきされる。これにより,残っている付着物をふき取ってフィルミングを防止することができる。さらに,水ぶきすることにより,中間転写ベルト11を冷却する効果もある。さらには,除電効果をも有する。
【0038】
従来,電気的なクリーニングの後工程として,中間転写ベルト11のフィルミングを除去するためにはふき取り部材,冷却するためには冷却部材,除電のためには除電部材がそれぞれ有効であることが知られている。そこで,本発明者は,本形態のベルトクリーナ51を設けたカラープリンタ1を,これらの部材をそれぞれ設けたカラープリンタ1と比較する実験を行った。
【0039】
この実験では,図4〜図7に示すように,4種類の実験用の構成を用いた。いずれにおいても,カラープリンタ1に用いている中間転写ベルト11と同素材の弾性ベルト81を使用し,それぞれ同様の正負の電気的なクリーナ82,83を設けている。この実験では,実施例として,図4に示すように,電気的なクリーナ82,83の下流側に液体クリーナ85を配置したものを用いた。
【0040】
一方,比較例1〜3は,いずれも従来よりあるクリーニングの後工程部材をそれぞれ1つずつ設けたものである。比較例1は,図5に示すように,電気的なクリーナ82,83の下流側に布クリーナ86を備えたものである。布クリーナ86は,ローラに巻き付けた布を少しずつ送り出して,弾性ベルト81の表面をふき取るものである。
【0041】
比較例2は,図6に示すように,電気的なクリーナ82,83の下流側に冷却装置87を備えたものである。冷却装置87は,金属製等の筒を弾性ベルト81の表面に接触させて,従動回転させつつその内部に冷気を通すものである。比較例3は,図7に示すように,電気的なクリーナ82,83の下流側に非接触の除電装置88を備えたものである。
【0042】
これらの装置をベルトクリーナとしてそれぞれ使用したプリンタにおいて,システム速度300mm/秒,プリントスピード80枚/分で連続両面印刷を行った。そしてそれぞれ,ベルトの表面温度,ベルトの表面電位,ベルト表面のフィルミングの状態を調べた。ベルトの表面温度については,ベルトの像担持面に対向して放射型温度センサを配置して測定した。連続両面印刷を開始後,温度の上昇が止まってほぼ一定温度となったときの温度を測定した。
【0043】
ベルトの表面電位については,ベルトの像担持面に対向して,ベルトクリーナのすぐ下流側に非接触の表面電位センサを配置して測定した。また,ベルト表面のフィルミングについては,100万枚の連続両面印刷終了後,ベルトを取り出してその表面の色を観察して判断した。初期状態からの色の変化が激しいものはフィルミングありと判断した。さらに,形成された画像を目視で観察し,画像濃度不良の発生があるかどうかを判断した。
【0044】
【表1】

【0045】
この実験の結果は,表1に示した通りであった。ベルトの表面温度は,液体クリーナ85を有する実施例と冷却装置87を有する比較例2では,40℃前後であり,許容範囲内であった。しかし,それ以外の比較例1,3では,50℃を超えていた。ベルトの表面温度として許容されるのは45℃程度までであり,比較例1,3の結果は好ましくない温度であった。
【0046】
また,ベルトの表面電位は,実施例と除電装置88を有する比較例3では,±100V程度の範囲内であり,許容範囲内であった。一方,比較例1,2では,これより遙かに大きく,好ましい状態ではなかった。また,ベルト表面の色は,実施例と布クリーナ86を有する比較例1では,目視で判断できるほどの変化はなく,フィルミング状態とはなっていないと判断した。一方,他の比較例2,3では,目視で判断できる程度の色の変化が見られ,フィルミング状態であると判断した。
【0047】
すなわち,実施例は,どの評価も良好であり,画質濃度も良好なものであった。しかし,比較例1〜3では,いずれも1つの評価は良好であったものの,その他の2点については良好ではなかった。これら3種類の装置を全て配置すれば,全ての点について良好な結果が得られるかもしれないが,装置の大型化を招くことは確実である。実施例であれば,装置の大型化を招くことなく,ベルト温度,ベルト電位,フィルミングともに良好な結果が得られることが確認できた。
【0048】
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンタ1によれば,ベルトクリーナ51を有しているので,正負極のブラシクリーナ52,53によって,電気的に付着物を除去した後,液体クリーナ54によって水ぶきされる。従って,ブラシクリーナ52,53によっては除去されにくい外添材をも効率よく除去することができる。従って,適切にフィルミングの除去を行うことができる。さらに,液体として適度に導電性を有する純水を用いれば,中間転写ベルトの表面の除電や冷却も同時に行うことができる。従って,装置を大型化させることなく,フィルミングの除去,ベルトの冷却,除電をいずれも適切に行うことのできるカラープリンタ1となっている。
【0049】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
上記の形態では,多孔質ローラに含浸させる液体として純水を使用するとしたが,これに限らず,他の液体を用いてもよい。単一のベルトローラ43にベルトクリーナの各部材が対向するとしたが,それぞれに独自の対向ローラを配置してもよい。その場合には互いに多少離れた位置に配置することもできる。あるいは,液体クリーナとして,ローラでなく,板状の多孔質体を中間転写ベルト11の表面に接触させるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カラープリンタ
10Y,10M,10C,10K画像形成部
11 中間転写ベルト
35 2次転写部
52 正極ブラシクリーナ
53 負極ブラシクリーナ
54 液体クリーナ
61,66 ブラシローラ
71,72 多孔質ローラ
73 液体容器
74 液体
75 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層を有し,無端ベルト状であるとともに回転移動される中間転写ベルトと,前記中間転写ベルト上にトナー像を形成するトナー像形成部と,前記トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録部材へ転写する転写部とを有する画像形成装置において,
前記中間転写ベルトの移動方向について前記転写部より下流側で,かつ,前記トナー像形成部より上流側の箇所に配置され,ブラシローラを帯電状態として前記中間転写ベルトに接触させる第1クリーニング部と,
前記中間転写ベルトの移動方向について前記第1クリーニング部より下流側で,かつ,前記トナー像形成部より上流側の位置に配置され,液体を含浸した多孔質層を前記中間転写ベルトに接触させる第2クリーニング部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記第2クリーニング部は,
最外面に前記多孔質層を有する多孔質ローラと,
前記多孔質ローラの表面の一部に接触するとともに,他の箇所において液体に部分的に浸漬されている液体供給ローラと,
前記多孔質ローラによる液体の含有量を制限する規制部材とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記規制部材は,前記多孔質ローラの前記多孔質層に圧接または離隔する部材であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22257(P2012−22257A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161819(P2010−161819)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】