説明

画像形成装置

【課題】記録媒体の分離除電部材に交流電圧を印加する場合であっても転写電圧を所定の範囲に制御して良好な画像転写を維持する。
【解決手段】トナー像を担持する像担持体10と、像担持体10とともに記録媒体を挟んで搬送する転写部材18と、転写部材18にバイアス電圧を印加する転写電圧印加手段20と、転写電圧印加手段20に対して定電圧制御を行う電圧制御手段21と、像担持体10から記録媒体Sへのトナー像の転写に寄与する電流を検出する転写寄与電流検出手段22と、記録媒体Sに荷電した静電気を取り除くための除電部材30と、除電部材30に交流電圧を印加する除電電圧印加手段31と、を備えた画像形成装置。転写寄与電流検出手段22は、除電部材30に印加される交流電圧の周期の整数倍に相当する電流検出時間で転写寄与電流を検出し、電圧制御手段21は転写寄与電流検出手段22にて検出された転写寄与電流が所定範囲に入るように転写部材18に印加するバイアス電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に、電子写真方式により紙などの記録媒体上にトナー画像を転写するプリンタや複写機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式でカラー画像を形成する画像形成装置においては、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の単色トナー画像を中間転写ベルト上に1次転写して合成し、該合成画像を記録媒体上に2次転写している。2次転写の際、トナーを中間転写ベルトから記録媒体に移動させる電界を中間転写ベルトと2次転写ローラとの間に形成するため、2次転写ローラにトナーとは逆極性の転写バイアスを印加している。この転写バイアスはプリントする画像のカバレッジ(一定のプリント面積に示すトナーの割合)に拘わらず良好な転写を可能とする定電圧制御が好ましい。
【0003】
このような定電圧制御として特許文献1には、2次転写電流の上限値及び下限値を記憶しておき、転写電流をモニタすることにより、転写電流が上限値を超えないように、及び、下限値を下回らないように印加電圧を制御することが記載されている。
【0004】
一方、2次転写の直後に記録媒体を中間転写ベルトから分離する必要があり、記録媒体をスムーズに分離するため、転写ローラの直後に記録媒体から電荷を除去する除電針を設け、該除電針には直流電圧を印加している。特許文献2には、検出された2次転写電流から検出された除電電流を除いた値を転写寄与電流として、該転写寄与電流が規定範囲に入るように、2次転写ローラに印加するバイアス電圧を制御することが記載されている。
【0005】
ところで、転写後に像担持体から記録媒体を分離するには、除電部材に対して直流に交流を重畳して印加することが、特に、薄紙の分離に効果的である。しかし、除電部材に交流電圧を印加した状態で転写ローラに流れる電流を検出すると、転写中に転写領域に流れる電流は除電部材に印加した交流電圧の周期で変動するため、瞬間的に電流を測定する従来の直流電流測定手段では誤動作してしまう。つまり、交流電圧を印加する除電部材を用いることを前記特許文献1に記載の制御に適用すると、次第に転写電圧が高く設定され、転写過多となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275946号公報
【特許文献2】特開2010−249872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分離除電部材に交流電圧を印加する場合であっても転写電圧を所定の範囲に制御して良好な転写を維持できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態である画像形成装置は、
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体とともに記録媒体を挟んで搬送する転写部材と、
前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写電圧印加手段と、
前記転写電圧印加手段に対して定電圧制御を行う電圧制御手段と、
前記像担持体から記録媒体へのトナー像の転写に寄与する電流を検出する転写寄与電流検出手段と、
前記転写部材の記録媒体搬送方向下流側に配置され、記録媒体に荷電した静電気を取り除くための除電部材と、
前記除電部材に交流電圧を印加する除電電圧印加手段と、
を備え、
前記転写寄与電流検出手段は、前記除電部材に印加される交流電圧の周期の整数倍に相当する電流検出時間で記録媒体へのトナー像の転写に寄与する電流を検出し、
前記電圧制御手段は、前記転写寄与電流検出手段にて検出された転写寄与電流値が所定範囲に入るように、前記転写部材に印加するバイアス電圧を制御すること、
を特徴とする。
【0009】
前記画像形成装置においては、転写部材に印加するバイアスを定電圧制御し、かつ、除電部材に交流電圧を印加して転写後の記録媒体を像担持体から効果的に分離する。そして、転写寄与電流検出手段は、除電部材に印加される交流電圧の周期の整数倍に相当する電流検出時間で記録媒体へのトナー像の転写に寄与する電流を検出するため、除電部材に印加した交流電圧の周期に応じて変動する転写電流の影響を排除して転写電圧を所定の範囲に制御することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分離除電部材に交流電圧を印加する場合であっても転写電圧を所定の範囲に制御して良好な転写を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施例における2次転写領域の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】第1実施例で2次転写時における転写寄与電流と除電交流電圧を示すチャート図である。
【図4】第1実施例で2次転写時における転写寄与電流と転写電圧を示すチャート図である。
【図5】第2実施例で2次転写時における転写寄与電流の検出態様を示すチャート図である。
【図6】転写寄与電流の検出手段の他の例を示す説明図である。
【図7】転写寄与電流の検出手段のさらに他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材、部分に関しては共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
図1に示すように、本画像形成装置は、タンデム方式のカラープリンタとして構成され、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各画像を形成するための作像ユニット1Y,1M,1C,1Kが中間転写ベルト10の直下に並置されている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Kは感光体ドラム2を中心に現像器3や1次転写ローラ4などを配置した周知の構成を有している。中間転写ベルト10は、支持ローラ11,12に無端状に張り渡され、矢印a方向に回転駆動される。各感光体ドラム2上に形成されたトナー画像は順次中間転写ベルト10上に1次転写されてカラー画像に合成される。
【0014】
記録媒体は給紙トレイ15に積載されており、給紙ローラ16によって1枚ずつ給紙され、タイミングローラ対17を経て中間転写ベルト10と2次転写ローラ18とのニップ部を通過することにより、2次転写ローラ18から付与される電界にて前記カラー画像が中間転写ベルト10から2次転写される。その後、記録媒体は定着ユニット19に搬送されてトナーの加熱定着を施され、排出ローラ対5から本体上面に排出される。
【0015】
(2次転写電流の制御、図2参照)
2次転写領域においては、図2に模式的に示すように、中間転写ベルト10と2次転写ローラ18とが記録媒体Sを挟んで矢印b方向に搬送しつつ、転写ローラ18から中間転写ベルト10に向かってバイアス直流電圧(トナーの負極性に対して正極性の電界)が印加され、この電界によってトナーが記録媒体Sに転写される。転写ローラ18に対しては直流電源20が接続され、この直流電源20は電圧制御回路21によって定電圧制御される。さらに、直流電源20から転写ローラ18に流れる電流を転写寄与電流として検出する電流検出器22が接続され、該電流検出器22の出力は電圧制御回路21に入力される。また、中間転写ベルト10は支持ローラ11を介して接地されている。
【0016】
一方、転写ローラ18の搬送方向(矢印b参照)下流側には針状をなす除電部材30が配置され、該除電部材30には交流電源31から交流電圧を印加するようになっている。
【0017】
例えば、除電部材30に印加する交流電圧を、ピーク−ピーク電圧Vppを7kV、周期(周波数)を1kHzとする。1kHz周期の除電交流電圧は1ms周期で変動することになり、転写電流を電流検出器22で5.55msごとに(瞬時に)検出すると、検出した転写電流は111ms周期で変動することになる。従って、このように変動する検出値に基づいて直流電源20を定電圧制御すると、転写電圧が転写過多となるまで上昇してしまう不具合が発生する。
【0018】
前述の不具合を解消するためには、記録媒体Sに移動した電荷量に基づいて2次転写電流を予め設定された上限値/下限値に収まるように制御するとともに、除電部材30に印加される交流電圧の周期よりも長い時間で電流検出器22によって転写電流を測定することが好ましい。以下、このような電圧制御を行う第1実施例及び第2実施例を説明する。
【0019】
(第1実施例、図3及び図4参照)
本第1実施例では、除電交流電圧の周期の整数倍の時間で以下のようにして転写寄与電流を検出する。即ち、除電交流電圧の0V時(図3の上段A点参照)から電流検出開始のタイミングを計測し、3周期分に相当する時間帯域Bの電流を測定し、平均化した値を転写寄与電流として2次転写電圧の上限値・下限値制御にフィードバックする。2次転写電圧の上限値・下限値制御は、測定された転写寄与電流が上限値を超えると転写電圧を所定量低下させ、下限値を下回ると転写電圧を所定量上昇させる制御であり、前記特許文献1,2に詳しく開示されている。
【0020】
具体的には、2次転写電圧の上限値・下限値制御は、5.55msごとに電圧制御回路21にフィードバックする制御(フィードバックタイミングは図3のC点参照)であるので、電流検出器22によって測定・平均化した電流値が次の定電圧制御タイミングCに間に合うように、除電交流電圧の3周期分の時間で測定・平均化する。
【0021】
電流を0.2msごとに16回検出し(1回の検出値をI1,I2,I3…I16と称する、図3下段参照)、I1/2+I2+I3+…+I14+I15+I16/2を算出し、転写寄与電流値とする。なお、ここでは測定された電流値の3周期分の合計を演算上の転写寄与電流値としたが、算術平均値(I1/2+I2+I3+…+I14+I15+I16/2)/15を用いてもよい。
【0022】
このように、電流検出時間を3msとして算出した転写寄与電流値を電圧制御回路21にフィードバックし、転写寄与電流値が所定範囲(上限値及び下限値)に入るように直流電源20を制御する。これにて、図4に示すように、転写電圧(ラインD参照)はほぼ2000Vに保たれ、除電交流電圧の周波数の影響を受けることが解消される。
【0023】
ちなみに、図4は1枚の記録媒体Sが2次転写領域を通過する際の転写電流及び転写電圧の変化を示し、ラインEが転写電流の変化を示している。また、ラインFが制御の対象となる電流の下限値(41μA)を示している。
【0024】
図4には、比較のため、転写電流を電流検出器22で5.55msごとに(瞬時に)測定した場合の電流値の変化をラインHで示し、このように変動する測定値に基づいて直流電源20を定電圧制御した場合に、転写電圧が転写過多となるまで上昇してしまう不具合をラインJに示している。
【0025】
なお、本第1実施例では、転写寄与電流の検出を除電交流電圧のゼロクロスのタイミング(図3のA点)から開始しているが、必ずしもその必要はなく、2次転写電圧へのフィードバックに間に合う範囲内で、除電交流電圧の周期の整数倍に相当する時間で転写寄与電流を測定すればよい。また、除電交流電圧の周期を5等分して電流を検出しているが、必ずしも5等分する必要はない。分割数は精度の点で多い方が望ましいが、多すぎると制御の負担となる。
【0026】
(第2実施例、図5参照)
前記第1実施例では、電流検出周期を0.2msで行ったが、電流検出周期を短くすると、装置の制御に電流検出命令の割り込み発生回数が多くなり、装置の動作制御に不都合が生じる機種(特に制御が複雑なカラー機)もある。そこで、本第2実施例では、電流検出周期を比較的長く設定するように工夫した。
【0027】
2次転写電圧の上限値・下限値制御は、記録媒体Sが5〜10mm間隔搬送される程度で転写電圧の制御を行ってもよい。そこで、周波数が1kHz(周期は1ms)の除電交流電圧に対して、電流検出周期を1.1msとし、電流検出時間を除電交流電圧の周期の10倍の11msとした。
【0028】
ここでは、11回測定した転写寄与電流値を平均して電圧制御回路21にフィードバックする。具体的には、電流を1.1msごとに11回測定し(1回の測定をI1,I2,I3…I11と称する)、I1/2+I2+I3+…+I9+I10+I11/2を算出して転写寄与電流値とした。このように算出した転写寄与電流値を電圧制御回路21にフィードバックし、転写寄与電流値が所定範囲(上限値及び下限値)に入るように直流電源を制御する。前記のごとく算出した転写寄与電流値は、うなり周期である11ms間の平均電流値にほぼ相当する(図5参照)。
【0029】
本第2実施例での実験に使用した装置のプロセス速度は250mm/sであり、記録媒体Sが2.75mm搬送される間に印加される転写電流値の平均にほぼ相当することになる。転写電圧の上限値・下限値制御は16.65ms間隔で行ったところ、前記第1実施例とほぼ同等の画質を得ることができた。転写電圧の上限値・下限値制御の間隔は画像上で15mm(搬送方向距離)間隔程度でも有効であり、16.65ms(画像上で4.16mm)間隔は実用上何ら問題を生じない。
【0030】
本第2実施例での制御手法をまとめると以下のようになる。つまり、下式を満足する除電交流電圧周期と電流検出周期とを選択し、
電流検出周期/除電交流電圧周期=K1(整数)+R1(小数点以下の余り)
除電交流電圧周期/R1=K2(整数)
かつ、電流検出時間=電流検出周期×K2として、電流検出時間内に検出される電流の平均値を転写寄与電流値とする。
【0031】
本第2実施例のごとく、検出される転写寄与電流のうなり周期分の検出電流値を平均して転写寄与電流値とすることにより、電流検出周期を長くして装置の制御の負担を軽減し、2次転写電圧の上限値・下限値制御を機能させることができる。
【0032】
(転写寄与電流の他の検出手段、図6及び図7参照)
転写寄与電流の検出手段は、図2に示した構成で可能であるが、それ以外にも種々の構成を採用することができる。
【0033】
図6にその第1例を示し、電流検出器22を中間転写ベルト10を支持するローラ11が接地される箇所に設けたものである。この場合、支持ローラ11へ流れる電流を転写寄与電流として検出し、その検出電流が上限値・下限値に収まるように、電圧制御回路21が直流電源20を定電圧制御する。
【0034】
図7にその第2例を示し、転写ローラ18へ流れる電流と除電交流電流との和を転写寄与電流として検出し、定電圧制御にフィードバックしてもよい。
【0035】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0036】
特に、画像形成装置の全体的な構成は任意であり、タンデム方式以外に4サイクル方式であってもよい。また、トナー像の転写元となる像担持体は中間転写ベルト以外に感光体ドラムであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、転写電圧を所定の範囲に制御して良好な画像転写を維持できる点で優れている。
【符号の説明】
【0038】
10…中間転写ベルト
18…2次転写ローラ
20…直流電源
21…電圧制御回路
22…電流検出器
30…除電部材
31…交流電源
S…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体とともに記録媒体を挟んで搬送する転写部材と、
前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写電圧印加手段と、
前記転写電圧印加手段に対して定電圧制御を行う電圧制御手段と、
前記像担持体から記録媒体へのトナー像の転写に寄与する電流を検出する転写寄与電流検出手段と、
前記転写部材の記録媒体搬送方向下流側に配置され、記録媒体に荷電した静電気を取り除くための除電部材と、
前記除電部材に交流電圧を印加する除電電圧印加手段と、
を備え、
前記転写寄与電流検出手段は、前記除電部材に印加される交流電圧の周期の整数倍に相当する電流検出時間で記録媒体へのトナー像の転写に寄与する電流を検出し、
前記電圧制御手段は、前記転写寄与電流検出手段にて検出された転写寄与電流値が所定範囲に入るように、前記転写部材に印加するバイアス電圧を制御すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写寄与電流検出手段による前記電流検出時間は、前記電圧制御手段によるバイアス電圧制御の周期よりも短いこと、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写寄与電流検出手段による電流検出の周期は、前記除電部材に印加される交流電圧の半周期の整数分の1であり、前記電流検出時間内に検出される電流の平均値を転写寄与電流値とすること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252150(P2012−252150A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124521(P2011−124521)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】