説明

画像形成装置

【課題】中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらを低減できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤像を形成する作像装置と、表面抵抗層が形成された中間転写体と、中間転写体の表面電位を測定する電位測定器と、中間転写体の表面に電荷を付与して帯電又は除電する電荷付与手段と、電荷付与手段に電圧又は電流を供給する電源手段と、電源手段から電荷付与手段に中間転写体の回転方向において分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える又は減る電圧又は電流を供給して中間転写体の表面に電荷を付与し、その電荷の付与がされた中間転写体の分割領域ごとの各表面電位を電位測定器で測定し、その測定結果から当該表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域に供給した電圧又は電流を電荷付与手段に供給すべき電圧又は電流として選定する動作を行う制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現像剤(例えばトナー)で現像されるトナー像からなる画像を形成する画像形成装置としては、そのトナー像を形成する作像装置から転写されるトナー像が一次転写され、そのトナー像を記録用紙等の被記録材に二次転写させる位置まで保持して搬送するベルト形態等の中間転写体(中間転写方式)を使用するものがある。
また、このような中間転写体を使用する画像形成装置においては、作像装置から中間転写体に転写されるトナー像を構成するトナーの一部がその周辺に飛び散るという飛び散り現象を抑制するため、中間転写体として高抵抗の表面抵抗層を形成したものを使用することがある。
【0003】
従来、高抵抗の中間転写体を使用する画像形成装置としては、例えば以下のものが知られている。
【0004】
1つは、中間転写体として体積抵抗率が5×1012〜1×1013Ωcmのもの(フッ素系樹脂シートからなる無端ベルト)を使用し、その中間転写体とトナー像を形成するトナー像形成手段の像担持体との接触対向部よりも中間転写体表面の移動方向の上流側に、中間転写体の転写面に向けてトナーの帯電極性と同極性の電荷を付与する電荷付与手段を設けた画像形成装置がある(特許文献1)。この画像形成装置においては、例えば、電荷付与手段による電荷付与量を、中間転写体の電荷が付与された部分の表面電位の絶対値が中間転写体上のトナー像の表面電位の最大値の絶対値よりも小さくなるように設定することや、電荷付与手段としてスコロトロン帯電器を適用してそのグリッド電極に印加するバイアス電圧を好適範囲に設定することが行われている。
特許文献1には、この画像形成装置によれば、転写不良等による異常画像の発生を伴うことなく、像担持体上のトナー像を中間転写体上に転写する際の転写チリ(飛び散り現象)の発生を防止できることが示されている。
【0005】
また、中間転写体として体積抵抗率が1011〜1014Ωcmのものを使用し、その中間転写体上に転写されたトナー像を転写材上に転写した後、その中間転写体に接触してこれを除電する接触式除電手段を設けた画像形成装置であって、その除電手段に直流電圧を印加して中間転写体を除電するにあたり、中間転写体の体積抵抗率に応じて上記直流電圧を可変制御する可変制御手段を設けた画像形成装置である(特許文献2)。
特許文献2には、この画像形成装置によれば、一次転写後の転写チリを安定して抑制することができ、中間転写体を二次転写後に効率よく除電することで高品質の画像を得ることができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−10886号公報
【特許文献2】特開2000−231286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、表面抵抗層を形成した中間転写体を使用する画像形成装置として、その中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらを低減することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(A1)の画像形成装置は、
現像剤で現像される現像剤像を形成する作像装置と、
前記作像装置で形成される現像剤像が転写され、その現像剤像を被記録材に転写させる位置まで保持して搬送するよう回転する、表面抵抗層が形成された中間転写体と、
前記中間転写体の表面電位を測定する電位測定器と、
前記中間転写体の表面に電荷を付与して帯電又は除電する電荷付与手段と、
前記電荷付与手段に電圧又は電流を供給する電源手段と、
前記電源手段から前記電荷付与手段に前記中間転写体の回転方向において分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える又は減る電圧又は電流を供給して前記中間転写体の表面に電荷を付与し、その電荷の付与がされた前記中間転写体の分割領域ごとの各表面電位を前記電位測定器で測定し、その測定結果から当該表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域に供給した電圧又は電流を前記電荷付与手段に供給すべき電圧又は電流として選定する動作を行う制御手段と
を有するものである。
【0009】
この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記表面電位計が、前記中間転写体の回転するときの軸の方向における複数の箇所に配置されているものである。
【0010】
この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A1又はA2の画像形成装置において、前記制御手段が、前記中間転写体の複数の分割領域を当該中間転写体の1周以下の範囲で設定しているものである。
【0011】
この発明(A4)の画像形成装置は、上記発明A1からA3のいずれかの画像形成装置において、前記中間転写体の表面を清掃する清掃装置を有し、
前記電位測定器が、前記中間転写体の前記清掃装置による清掃位置から当該中間転写体の回転方向の下流側にある前記作像装置の転写位置までの範囲に配置されているとともに、前記電荷付与手段よりも当該中間転写体の回転方向の下流側に存在するよう配置され、
前記電荷付与手段が、前記中間転写体の前記清掃装置による清掃位置を境にして当該中間転写体の回転方向の上流側又は下流側に配置されているものである。
【0012】
この発明(A5)の画像形成装置は、上記発明A4の画像形成装置において、前記清掃装置が、前記中間転写体の表面に接触して清掃する清掃ブラシを備え、前記電荷付与手段が、前記清掃装置の清掃ブラシに前記電源手段から電圧及び電力を供給するよう構成されているものである。
【0013】
この発明(A6)の画像形成装置は、上記発明A4の画像形成装置において、前記電荷付与手段が、コロナ放電器で構成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
上記発明A1の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらを低減することができる。
【0015】
上記発明A2の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらを適切に低減することができる。
【0016】
上記発明A3の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらの低減を迅速に行うことができる。
【0017】
上記発明A4の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらの低減を効率よく行うことができる。
【0018】
上記発明A5の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらの低減を、清掃装置により中間転写体上に残留する現像剤を補足しつつ行うことができる。
【0019】
上記発明A6の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、中間転写体に表面抵抗層の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、電荷付与手段に供給すべき電圧又は電流を容易に選定しつつ、そのばらつきに起因して発生する画像の濃淡むらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置に使用する中間転写ベルトを示す断面説明図である。
【図3】図1の画像形成装置の要部(中間転写ベルトの表面電位の均一化の構成部)を示す拡大説明図である。
【図4】表面電位測定器の設置状態などを示す平面説明図である。
【図5】中間転写ベルトにおける複数の分割領域の構成と表面電位の測定結果を示す概念図である。
【図6】実施の形態1に係る画像形成装置を用いて行った評価試験の内容と結果を示す図表である。
【図7】中間転写ベルトにおける表面抵抗層の厚い部分及び薄い部分でのK色の二次転写性を示すものであり、(a)は強制帯電をしない中間転写ベルトによる二次転写性を示す説明図、(b)は強制帯電をしたときの中間転写ベルトによる二次転写性を示す説明図である。
【図8】中間転写体の表面の帯電極性に対する最適な二次転写電圧(絶対値)との関係を示す相関図である。
【図9】中間転写体における表面抵抗層の厚い部分及び薄い部分の存在による表面電位の状態と、強制帯電による表面電位の変化の状態を示す説明図である。
【図10】中間転写体における表面抵抗層の厚い部分及び薄い部分における強制帯電による各部分の表面電位の変化の状態とクロスポイントの存在を予測唆する説明グラフ図である。
【図11】実施の形態2に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図12】図11の画像形成装置の要部(中間転写ベルトの表面電位の均一化の構成部)を示す拡大説明図である。
【図13】中間転写ベルトにおける複数の分割領域の構成と表面電位の測定結果を示す概念図である。
【図14】実施の形態2に係る画像形成装置を用いて行った評価試験の内容と結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示し、図2はその画像形成装置に使用する中間転写ベルトの断面を示し、図3はその画像形成装置の要部(中間転写ベルトの表面電位の均一化の構成部)を示している。
【0023】
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものであり、支持部材、外装カバー等で形成される不図示の筐体の内部空間に、公知の電子写真方式、静電記録方式等の画像記録方式を利用して入力画像情報に基づいて現像剤としてのトナー(着色等がされた微粉体)で現像されるトナー像を形成する複数の作像装置2と、作像装置2で形成されたトナー像を保持して最終的に被記録材としての記録用紙9に転写する中間転写装置3と、中間転写装置3に供給すべき所要の記録用紙9を収容して搬送する給紙装置4と、中間転写装置3でトナー像が転写された記録用紙9を通過させてトナー像の定着を行う定着装置5等が設置されている。図中の矢付き一点鎖線は記録用紙9の主な搬送経路を示す。
【0024】
作像装置2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(黒:K)の4色のトナー像を専用に形成することができる4つの作像装置(2Y,2M,2C,2K)で構成されている。4つの作像装置2(Y,M,C,K)は、直列に並べた状態となるよう配置されている。また、各作像装置2(Y,M,C,K)は、以下に示すようにほぼ共通した構成のものである。
【0025】
各作像装置2(Y,M,C,K)は、回転する感光ドラム21を備えており、この感光ドラム21の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光ドラム21の像保持面(トナー像を保持する表面部分)を所要の電位に帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の帯電された像保持面に画像情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置23と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)のトナーで現像して可視像であるトナー像とする現像装置24(Y,M,C,K)と、そのトナー像を中間転写装置3(の中間転写ベルト)に転写する一次転写装置25と、転写後の感光ドラム12の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物をかき取って除去する清掃装置26とである。
【0026】
感光ドラム21は、接地処理される円筒又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものであり、図示しない回転駆動装置から動力を受けて矢印Aで示す方向に回転するようになっている。帯電装置22は、感光ドラム21の像保持面に接触しない状態又は接触した状態で配置されるとともに帯電用電圧が印加される、コロナ放電器を用いた非接触型の帯電装置や帯電ロール等の接触部材を備えた接触型の帯電装置である。帯電用電圧としては、現像装置24が反転現像を行うものである場合、その現像装置から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧が印加される。
【0027】
露光装置23は、画像形成装置1に入力される画像情報に応じて構成される光を、帯電された後の感光ドラム21の像保持面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置23としては、半導体レーザとポリゴンミラー等の光学部品を用いて構成される走査型のものや、発光ダイオードと光学部品等を用いて構成される非走査型の露光装置が使用される。また、露光装置23は、この実施の形態では4つの作像装置2に対して個別に独立した構造のものを使用しているが、これ以外にも、例えば複数の作像装置2に対して1つに筐体に集約して必要な数の光を出光させるように構成したものなどを使用することもできる。
【0028】
現像装置24は、現像剤(例えば非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤など)を収容する現像剤収容器を有し、その現像剤収容器に収容されている現像剤を回転しながら保持して感光ドラム21と接近して対向する現像領域に搬送する現像ロール24aや、その収容されている現像剤を回転して攪拌しながら現像ロール24aに搬送する攪拌搬送部材や、現像ロール24aに保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材を有している。また、現像装置24は、その現像ロール24aに交流が重畳された直流からなる現像用電圧(現像バイアス)が印加されるとともに、その現像ロール24a及び攪拌搬送部材が所要の方向に回転させられる。現像剤のトナーは、現像剤収容器内において攪拌搬送部材により攪拌されることでキャリアと擦れ合って所要の極性(この実施形態ではマイナス極性)に摩擦帯電される。
【0029】
一次転写装置25は、感光ドラム21の像保持面に後記の中間転写ベルト(31)を介して接触して回転するとともに一次転写用電流(又は電圧)が印加される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。この一次転写装置は、一次転写ロールに一次転写用電流として例えばトナーの帯電極性と逆極性の直流が印加される。
【0030】
中間転写装置3は、図1に示すように、直列に並べた状態の各作像装置2(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するように配置されている。この中間転写装置3は、感光ドラム21と一次転写装置25(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数の支持ロール32a〜32fと、支持ロール32eに支持されている中間転写ベルト31に所定の圧力で接触して回転する二次転写ロール35と、二次転写ロール35を通過した後に中間転写ベルト31に残留して付着するトナー等を除去するベルト清掃装置36とで主に構成されている。
【0031】
中間転写ベルト31としては、図2に示すように、所要の厚さd1の無端状のベルト基材33に表面抵抗層34を所要の厚さd2で形成したものが使用される。無端状のベルト基材33は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボン等の抵抗調整剤を分散させた材料を用いて無端状の形状に作製される。表面抵抗層34は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂を単独で又はその合成樹脂にカーボン等の抵抗調整剤を分散させた材料(但し分散させる抵抗調整剤は、表面抵抗層の体積抵抗率がベルト基材のそれよりも高くなるようにその種類、量等の条件が設定される)をフローコート方法等で塗布して形成される。支持ロール32aは駆動ロールとして、支持ロール32cは張力付与ロールとして、支持ロール32eは二次転写対向ロールとしてそれぞれ構成されている。二次転写対向ロールとしての支持ロール32eには、トナーの帯電極性とは同極性の直流からなる二次転写用電圧が図示しない給電部材から所要の時期に印加される。二次転写用電圧は、二次転写ロール35にトナーの帯電極性とは逆極性の直流成分を印加するようにしても構わない。
【0032】
ベルト清掃装置36は、駆動ロールとしての支持ロール32aで支持される中間転写ベルト31の外周面の手前側(ベルト回転方向Bの上流側)の位置に配置されている。この清掃装置36は、中間転写ベルト31と向き合う部分が開口した形状の筐体36aに、支持ロール32aに支持されている中間転写ベルト31の外周面部分に接触した状態で配置される弾性ブレード37と、弾性ブレード36よりもベルト回転方向Bの上流側に離れた位置で中間転写ベルト31の外周面に接触した状態でベルト移動速度と相対的に異なる速度で回転するよう配置される清掃回転ブラシ38とが取り付けられたものである。
【0033】
給紙装置4は、中間転写装置3の下方側の位置に存在するように配置される。給紙装置4は、筐体の正面(使用者が使用時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられ、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する用紙収容体41と、用紙収容体41から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42とで主に構成されている。実施の形態1では、用紙収容体41として上面が開口した箱状のものを使用しており、その各用紙収容体41に異なるサイズ、種類等の記録用紙9を配分して収容するとともに所要の記録用紙9を収容された用紙収容体41から選択して送り出すことができるようになっている。
【0034】
給紙装置4の各用紙収容体41における送出装置42と中間転写装置3の二次転写位置との間には、複数の搬送ロール対45a,45b,45c,…と、搬送ガイド材等で構成される給紙用の用紙搬送路45が設けられている。搬送ロール対45c、記録用紙9の搬送時期や搬送状態を調整する等の機能を有する送り込みロール対として構成されている。給紙装置4の各用紙収容体41から送り出された記録用紙9は、給紙用の用紙搬送路45を経由して、中間転写装置3の中間転写ベルト31と二次転写ロール35の間となる二次転写位置まで搬送される。
【0035】
定着装置5は、中間転写装置3の下方の片側(ベルト清掃装置36の配置側)に配置されている。定着装置5は、筐体51の内部に、矢印で示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるように加熱手段によって加熱される加熱ロール52と、この加熱ロール52の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転するロール形式、ベルト形式等の加圧用回転体53とを設置したものである。二次転写位置と定着装置5との間には、例えば、二次転写後に記録用紙9を定着装置5まで搬送するベルト形式の用紙搬送装置(不図示)が配置されている。
【0036】
また、画像形成装置1は、前記4つの作像装置2(Y,M,C,K)をすべて使用して形成する4色(Y,M,C,K)のトナー像で構成されるフルカラー画像を形成する作像パターン(フルカラーモード)と、4つの作像装置2(Y,M,C,K)の1つを使用して形成する1色のトナー像で構成される単色画像を形成する作像パターン(単色モード)を有している。実施の形態1における単色モードは、ブラック色(K)のトナー像で構成される白黒画像を形成する白黒モードとして設定されている。
【0037】
次に、この画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0038】
はじめに、フルカラーモードのときの画像形成動作では、まず、4つの作像装置2(Y,M,C,K)において、各感光ドラム21が矢印Aの方向に回転し、各帯電装置22がその各感光ドラム21の像保持面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。露光装置23は、帯電後の感光ドラム21に対して各色成分(Y,M,C,K)に分解された画像信号に基づく露光を行い、所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。各現像装置24は、感光ドラム21に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された各色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール24aで供給するとともに、そのトナーを現像ロール24aと感光ドラム21の間に形成される現像電界により静電的に付着させることで現像する。これにより、トナー像として顕像化する。
【0039】
続いて、各作像装置2(Y,M,C,K)の一次転写位置において、感光ドラム21上に形成された各色のトナー像が、所要の極性(プラス極性)の一次転写電流が印加される次転写装置25で形成される転写電界により中間転写装置3の中間転写ベルト31に対し順番に一次転写されて重ね合わされる。中間転写装置3は、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像を保持し、そのベルト31の回転により二次転写位置まで搬送する。そして、そのトナー像を、二次転写位置において二次転写ロール35で形成される転写電界により、給紙装置4から給紙用の搬送路45を経由して搬送される記録用紙9に対し一括して二次転写させる。
【0040】
二次転写が終了した記録用紙9は、中間転写ベルト31から剥離された後に図示しない搬送装置により搬送されて定着装置5に導入される。定着装置5は、トナー像が転写された記録用紙9を加熱ロール52と加圧用回転体53の接触部を通過させて加熱及び加圧させることでトナー像を形成するトナーを溶融させて用紙9に定着させる。定着が終了した後の記録用紙9は、その片面への画像形成を行うだけの場合には、例えば筐体の外部に排出されて図示しない排出収容部に収容される。
【0041】
以上により、1枚の記録用紙9には、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成される。
【0042】
一方、単色(白黒)モードのときの画像形成動作では、最初に4つの作像装置2(Y,M,C,K)のうちブラック色の作像装置2Kにおいて感光ドラム21に黒色のトナー像が形成される。このとき、作像に関与しない作像装置2(Y,M,C)も、露光装置23の露光動作が行われない以外は作像のときと同様に作動する。続いて、フルカラーモードのときの画像形成動作と同様に、感光ドラム21上のトナー像は、中間転写装置3の中間転写ベルト31を経由して記録用紙9に二次転写された後に定着装置5において用紙9に定着され、最後に定着後の記録用紙9が排出収容部に排出されて収容される。これにより、1枚の記録用紙9には、黒色のトナー像で構成される白黒画像が形成される。
【0043】
さらに、この画像形成装置1では、作像装置2(Y,M,C)の各感光ドラム21から中間転写装置3の中間転写ベルト31に一次転写されるトナー像を構成するトナーの一部がその周辺に飛び散るという飛び散り現象を抑制するため、中間転写ベルト31として高抵抗(例えば体積抵抗率が1013〜1014Ωcmのもの)の表面抵抗層34を形成したものを使用している。
【0044】
この場合、中間転写ベルト31の高抵抗の表面抵抗層34の下方部分(下層部分)は、中抵抗(例えば体積抵抗率が1010〜1011Ωcmのもの)に設定している。ちなみに、中間転写ベルト31の全体を高抵抗として構成することは適切でない。その理由は、システム全体の抵抗基準が高くなり、一次転写電流や二次転写電圧等として高い電圧が必要となってしまい、システム全体としての供給電力に制限がある場合に好ましくないからである。また、中間転写ベルト31のようにベルト形態の中間転写体では、二次転写位置においてベルト裏面(内周面)と支持ロール32e(二次転写対向ロール)との間で不要な放電が起こりやすくなり、その放電により二次転写位置での電位バランスが崩れて二次転写不良を誘発し、ひいては画像不良が発生しやすくなるからでもある。
【0045】
一方、高抵抗の表面抵抗層34が形成された中間転写ベルト31を使用した場合は、一次転写位置を通過するときに、その表面抵抗層34が一次転写装置25で印加される一次転写電流により帯電され、その状態を保持することになる。この場合、表面抵抗層34がベルト全周にわたって均一の抵抗値でかつ均一の層厚であれば、一次転写位置を通過した後の表面抵抗層34における帯電状態が均一になって二次転写も平常通りに行われて問題がない。
【0046】
ところが、実際には表面抵抗層34の抵抗値及び層厚の少なくとも一方が不均一であることがあり、この場合は、表面抵抗層34における帯電状態が均一でなくなり、それが原因で二次転写も良好(均一)に行われなくなり、結果として記録用紙9に形成される画像に例えば木目模様等の濃淡むらが発生してしまう。
【0047】
本発明者らの研究によれば、特に飛び散り現象の抑制効果を追求していくと、中間転写ベルト31における表面抵抗層34とその下層のベルト基材33の各体積抵抗率には二桁又はそれ以上の差が必要になることが確認されている。しかし、そのような体積抵抗率の関係に保った表面抵抗層34を形成した中間転写ベルト31を使用する場合には、その製造時における表面抵抗層34の膜厚むらがそのまま抵抗むらとなって顕在化しやすくなり、この結果、上記した画像の濃淡むらも発生しやすくなるという傾向がある。
【0048】
ここで、中間転写ベルト31等における帯電むらを補正する対策として、帯電物を強制的に帯電させる方法又は除電する方法を適用することが考えられる。この場合、前者の方が、その強制的に帯電した後の対象物における表面電位が安定する傾向にある。
【0049】
この対策による改善効果を確認するため、上記した高抵抗の表面抵抗層34を形成した中間転写ベルト31(ベルト基材34は中抵抗のもの)を使用する画像形成装置1において、その中間転写ベルト31を何もしない(強制帯電しない)場合と強制的に帯電させた場合におけるブラック(K)色の二次転写性を調べた。このとき中間転写ベルト31としては、表面抵抗層34の層厚の厚い部分と薄い部分の位置を接触式粗さ計(うねり成分を抽出して計測した)によって確認したものを使用した。強制帯電は、ベルト清掃装置36の清掃回転ブラシ38に直流電圧又は電流を印加することにより行った。二次転写性については、例えば矩形でベタ状のK色トナー像(10g)を二次転写する場合、二次転写電圧を変更したときの二次転写効率(%)を調べた。このときの結果を図7に示す。
【0050】
図7において、特性曲線の山部分(上部)における二次転写効率はおよそ90〜95%の場合を示している。特性曲線の裾部分(下部)における二次転写効率は下がるにつれて低くなり、濃度が薄い画像になる場合を示している。また、この画像形成装置1における中間転写ベルト31は、プラス極性(+)の一次転写電流が印加される一次転写装置25を通過することにより、その表面抵抗層34がマイナス極性(−)に帯電される。
【0051】
強制帯電をしない場合は、中間転写ベルト31の表面抵抗層34が全体としてマイナス極性に帯電された状態になり、図7(a)に示すように、表面抵抗層34の厚い部分(換言すれば抵抗率が高い部分)が薄い部分(換言すれば抵抗率が低い部分)よりも低い二次転写電圧で、K色の良好な二次転写性を得られることがわかる。これは、厚い部分ほどマイナス極性の帯電量が多くなるため、同じ極性であるマイナス極性に帯電したトナー像に対する反発力が強くなる分だけ二次転写時に必要な静電吸引力が小さくて済むからである(図8参照)。
【0052】
このような状態にある中間転写ベルト31を使用した場合にフルカラー画像を形成するときの最適な二次転写電圧(図7中に実線の縦線で示す電圧)を印加してK色トナー像の二次転写を行ったときには、表面抵抗層34の薄い部分では、フルカラー時の最適な二次転写電圧がK色の最適な二次転写電圧にも含まれる関係になるため良好な二次転写性を得ることができる。しかし、表面抵抗層34の厚い部分では、フルカラー時の最適な二次転写電圧がK色の最適な二次転写電圧よりも高くなる関係になるため二次転写性が低下し、二次転写されたK色の画像も白く(うすく)なってしまう。なお、最適な二次転写電圧は、一般に4色のトナー像を転写する必要があるため、1色のトナー像を転写するときよりも相対的に大きな電圧になる。
【0053】
一方、強制帯電をした場合は、中間転写ベルト31の表面抵抗層34が全体としてプラス極性に帯電された状態になり、図7(b)に示すように、表面抵抗層34の厚い部分が薄い部分よりも高い二次転写電圧すれば、K色の良好な二次転写性を得られることがわかる。これは、厚い部分ほどプラス極性の帯電量が多くなるため、その逆極性であるマイナス極性に帯電したトナー像に対する静電吸引力が強くなる分だけ二次転写時に記録用紙9側に静電転写させるための静電吸引力も強くする必要があるからである(図8参照)。
【0054】
このような状態にある中間転写ベルト31を使用した場合にフルカラー画像を形成するときの最適な二次転写電圧を印加してK色トナー像の二次転写を行ったときには、表面抵抗層34の厚い部分では、フルカラー時の最適な二次転写電圧がK色の最適な二次転写電圧にも含まれる関係になるため良好な二次転写性を得ることができる。しかし、強制帯電をしない場合とは反対に、表面抵抗層34の薄い部分では、フルカラー時の最適な二次転写電圧がK色の最適な二次転写電圧よりも高くなる関係になるため二次転写性が低下し、二次転写されたK色の画像も白くなってしまう。
【0055】
続いて、このような表面抵抗層34の層厚むらが存在する中間転写ベルト31の表面電位の状態について、図9に概念的に示す。表面抵抗層34の層厚むらは、その表面の縦横の方向に沿って二次元的に生じるが、図5では、簡易的に一次元(ベルトの回転方向Bに見たときの状態)で表している。
【0056】
図9の横軸は、中間転写ベルト31の回転方向Bにおける位置を示している。中間転写ベルト31の表面電位は、強制帯電などをしていない場合、図9の下部のマイナス極性(−)領域に示すように、表面抵抗層34の層厚むらにほぼ対応して電位の高い部分と低い部分とが混在した状態にある。図9では、簡略化のため、表面電位のむらを波線で示している。表面電位が高い部分(マイナス極性の絶対値が大きい部分)は、表面抵抗層34の層厚が厚い部分とほぼ一致する。また、表面電位が低い部分(マイナス極性の絶対値が小さい部分)は、表面抵抗層34の層厚が薄い部分とほぼ一致する。
【0057】
この表面電位のむら(表面抵抗層43の層厚のむらにも相当する)は、むら1つ分(波線の山部分又は谷部分の1つ)の長さが数mmから数十mm程度になることが確認されている。なお、このむら1つ分の長さがこれよりも小さい表面電位のむらは、製造上発生することがない。また、これよりも大きい数百mm程度の長さとなるむらは、画像の濃淡の変化も緩やかな状態になるので、画質上問題にならない。
【0058】
以上のことから、中間転写ベルト31における表面抵抗層34の層厚のむらにほぼ同期してベルトの表面電位(帯電量)に差が生じていることがわかる(図9)。また実際に、その表面電位の差に対応して画像の濃淡にむらが現われている。これに対し、前述したように中間転写ベルト31を強制的にプラス極性に帯電させた場合には、一般に、図9の上部に示すように表面抵抗層34の層厚のむらにほぼ同期した表面電位の差が生じるようになることも確認されている。この場合、強制帯電後の中間転写ベルト31の表面電位は、その極性が反転するため、画像の濃淡のむらも反転した状態で現われるようになる。
【0059】
このような状況から考察すると、中間転写ベルト31を強制的に帯電させる過程のある時期において中間転写ベルト31の表面電位の極性が反転していることになるので、その強制帯電の中間的な強さ(中間的な地点)のときには、中間転写ベルト31の表面電位に差が生じない強制帯電時の電圧(又は電流)が存在することが推測できる。
【0060】
一方、強制帯電されたときの中間転写ベルト31の表面電位が変化する特性(強制帯電に供給される電圧に対する感度。又は極性が反転するまでの経過特性)は、図10に示すように、中間抵抗層34の層厚の違い(厚い部分と薄い部分)によって異なる。しかし、強制帯電のために供給される電圧がゼロのときとその電圧をかけすぎた(電圧が大きすぎた)ときの間においては、前記した通り中間転写ベルト31の表面電位の大小も反転する。このため、その電圧を変化させる途中には、表面抵抗層34の厚い部分に対応する表面電位の変化特性(予測線)とその薄い部分に対応する表面電位の変化特性(予測線)が反転する時期にほぼ対応して交差する電圧値(クロスポイント)が存在することが推測できる。
【0061】
したがって、その交差する電圧値の電圧を供給して中間転写ベルト31を強制的に帯電させるようにすれば、その中間転写ベルト31の表面電位(帯電量)は、表面抵抗層34の層厚のむらある場合でもそのむらの影響を受けずにほぼ均一化されることが期待できる。そして、そのように中間転写ベルト31を強制帯電させることができた場合には、二次転写して得られる画像にも濃淡のむらの発生も抑制されることが予想される。
【0062】
そこで、この画像形成装置1では、以上の知見に基づいて、中間転写ベルト31に表面抵抗層34の抵抗値や層厚のばらつきがあっても、その中間転写ベルト31の表面電位がほぼ均一な状態に保たれるよう中間転写ベルト31の表面を帯電又は除電する動作を行う以下の構成を採用している。
【0063】
すなわち、画像形成装置1は、図1や図3に示すように、中間転写ベルト31の表面電位を測定する表面電位測定器6と、中間転写ベルト31の表面に電荷を付与して帯電させる電荷付与手段7と、電荷付与手段7に電圧を供給する電源手段8とを設置したうえで、電源手段8から電荷付与手段7に中間転写ベルト31の回転方向Bにおいて分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える電圧を供給して中間転写ベルト31の表面に電荷を付与し、その電荷の付与がされた中間転写ベルト31の分割領域ごとの各表面電位を表面電位測定器6で測定し、その測定結果から当該表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域に供給した電圧を電荷付与手段7に供給すべき電圧として選定する動作を行う制御手段15を設けている。
【0064】
表面電位測定器6は、図3等に示すように、中間転写ベルト31のベルト清掃装置36による清掃位置P1(弾性ブレード37が中間転写ベルト31に接触する位置)からベルト回転方向Bの下流側に最初に存在するY色の作像装置2Yの一次転写位置P2に至るまでの範囲内で、その外周面と向き合った状態で設置されている。また、表面電位測定器6は、電荷付与手段7よりも中間転写ベルト31の回転方向Bの下流側に存在する関係になるよう配置されている。さらに、表面電位測定器6は、図4に示すように、中間転写ベルト31の回転するときの支持ロール32の軸の方向C(ベルト回転方向Bとほぼ直交する方向)における複数の箇所に配置している。実施の形態1では、軸方向Cにおける中央部及び両端部の計3箇所に、3つの表面電位測定器61〜63を配置している。
【0065】
表面電位測定器6としては、非接触型の表面電位計が使用される。その表面電位計は、中間転写ベルト31の外周面に測定素子であるプローブを接近させた状態で配置して表面電位を測定する。図3における符号65は、プローブと向き合う中間転写ベルト31の内周面側の位置に配置される、接地処理された背面電極を示す。図4の符号Eは、中間転写ベルト31の軸方向Cにおけるトナー像保持有効領域を示す。
【0066】
電荷付与手段7は、図3に示すように、ベルト清掃装置36の清掃回転ブラシ38を中間転写ベルト31の外周面との接触部材として利用し、その回転ブラシ38の金属製回転軸38aに電源手段8から電荷付与用電圧を供給することで構成されている。回転ブラシ38は、ベルト清掃装置36による清掃位置P1よりも中間転写ベルト31の回転方向Bの上流側に存在するよう配置されている。また、回転ブラシ38は、中間転写ベルト31の軸方向Cのほぼ全域に相当する長さの回転軸38aと、その回転軸38aの周囲に所要の密度で取り付けられた半導電性(104〜1010logΩ)のブラシ毛38bで形成されている。
【0067】
電源手段8は、直流電源装置で構成されている。電荷付与用電圧としては、中間転写ベルト31がマイナス極性に帯電されるタイプであるため強制的な帯電(厳密には除電されている状況にあるときも含まれる)を有効に行う観点から、プラス極性の電圧を採用している。また、この電源装置8は、清掃回転ブラシ38の金属製回転軸38aに複数の異なる電圧(0V:零ボルトを含む)を切り替えて供給できるよう制御されるようになっている。
【0068】
制御手段15は、演算処理装置、記憶素子及び装置、制御装置、入出力装置等で構成されているものであり、記憶装置に格納されている制御プログラム及びデータに基づいて所要の制御動作(主に電荷付与用電圧の選定動作)を実行するようになっている。この制御手段15には、少なくとも、電位測定器8からの測定情報(信号)が入力されるように接続されているとともに、電源手段8の給電動作を制御する信号を電源手段8の制御部に送信するよう接続されている。また、制御手段15は、画像形成装置1の全体の動作を管理制御する中央制御装置の一部(制御部)として構成するか、あるいは、専用の制御装置として構成される。後者の場合は、専用の制御装置が中央制御装置と情報信号や制御信号のやり取りができるよう接続される。制御手段15による電荷付与用電圧の選定動作の実行時期は、予め定めた時期や条件を満たした時期等になったときである。その選定動作の実行時期としては、例えば、画像形成装置1の主電源を投入したときが挙げられる。
【0069】
そして、制御手段15は、電荷付与用電圧の選定動作の実行時期が到来すると、まず電源手段8から電荷付与手段7に中間転写ベルト31の回転方向Bにおいて分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える電圧を供給する動作を実行する。
【0070】
このときの複数の分割領域は、図5に例示するように、中間転写ベルト31の1周の長さを複数に分割した領域として設定される。実施の形態1では、ベルト1周分の長さを4等分した領域1〜4としている。また、分割領域は、例えば、中間転写ベルト31の基準位置から各領域の始点位置までの距離(長さ)とベルトの回転速度を用いて、基準位置からの各領域の到達時間を算出して得られる情報により認識される。各分割領域に供給する電圧は、0Vを含み、各領域ごとに次第に増える電圧値の電圧が適用される。0Vを供給するのは、中間転写ベルト31を強制帯電しないときの表面電位のばらつき度合いも選定の比較対象に含めるためである。
【0071】
また、制御手段15は、電荷付与手段7への段階的な電圧の供給とほぼ同時に、その段階的な電圧の供給により電荷の付与がされた中間転写ベルト31の分割領域ごとの各表面電位を表面電位測定器6で測定する動作を実行するとともに、その測定結果を入手する。このとき表面電位測定器6は、回転により連続して移動する中間転写ベルト31の表面(外周面)の電位を連続して測定するが、制御手段15ではその連続して得られる測定結果を分割領域ごとに分けて集計する。前記段階的な電圧の供給と表面電位の測定は、中間転写ベルト31が1回転するという短い時間で終了するので迅速にかつ効率よく行われる。
【0072】
続いて、制御手段15は、表面電位測定器6から得られる測定結果に基づき表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域を分析する。この場合、表面電位のばらつきの範囲は、例えば、その表面電位の最小値と最大値の差(極性が異なる場合は、その各極性での絶対値をその差分の大きさとして含める。)とする。このときの分析は、4つの表面電位のばらつき範囲の大小関係を対比して選別するだけであるため迅速になされる。図5において各領域1〜4において横軸に沿って引かれた直線が供給される電圧の値(大小関係)を概念的に示している。また、図5において各領域1〜4に供給した電圧の電圧値を示す直線の下方及び上方に示す「×」印が測定した表面電位の結果を示す(例えば測定値が8個得られる場合を例示している)。例えば、その直線の下方に存在する×印がマイナス極性の電位を示し、その直線の上方に存在する×印がプラス極性の電位を示している。また、そのいずれの場合においても×印の上下方向にずれて示されるのが表面電位のばらつき度合いを示している。
【0073】
そして最後に、制御手段15は、そのときの表面電位のばらつきの範囲が最小のものであったときの分割領域に供給した電圧を電荷付与手段7に供給すべき電圧として選定する動作を行う。つまり、この表面電位のばらつき範囲が最小になるときが、電荷付与(強制帯電)のために供給する電圧の前記したクロスポイントに相当するものであるとして扱うことにしている。このようにして選定された電圧は、記憶装置等に記憶されて、次の電荷付与用電圧が選定されるまで使用される。
【0074】
以上の電荷付与用電圧の選定動作が終了すると、画像形成装置1では、その後に行う画像形成動作のときに、電源手段8から電荷付与手段7に選定された電圧を供給しながら画像形成が行われることになる。これにより、中間転写ベルト31は、電荷付与手段7から電荷が付与されて強制的に帯電され、表面抵抗層34の抵抗値や層厚のばらつきがあったとしても、その表面電位がほぼ均一な状態にされる。
【0075】
この結果、画像形成時には、中間転写ベルト31の表面抵抗層34の抵抗値や層厚のばらつきに起因した画像の濃淡むらがほとんど発生しなくなる。またこのとき、中間転写ベルト31に一次転写されるトナー像の飛び散り現象もほとんど発生しない。この飛び散り現象がほとんど発生しないのは、例えば以下の理由によるものと推測される。つまり、一次転写装置25においてプラス極性の一次転写電流が印加されて一次転写が行われることで、中間転写ベルト31の内周面にプラス極の電荷が付与されるとともに、その電荷が比較的高い抵抗値に設定されている中間転写ベルト31にそのまま留まるようになる。この結果、マイナス極性に帯電したトナー像は、中間転写ベルト31に一次転写されると、中間転写ベルト31の側に静電的に良好に引き寄せられる状態に保たれて飛び散りにくくなるためと推測される。
【0076】
なお、画像形成装置1では、上記した中間転写ベルト31の強制帯電により表面電位が変化しても、二次転写電圧は適正な値に補正される。すなわち、二次転写電圧は、二次転写位置でのシステム抵抗を測定し、そのシステム抵抗に基づいて適切な二次転写電圧を決定する制御動作により調整されることになる。ちなみに、一次転写電流については、定電圧制御をしている場合には、中間転写ベルト31の表面電位の変化に伴う補正は不要である。
【0077】
次に、この画像形成装置1を用いた評価試験について説明する。
【0078】
この試験では、中間転写ベルト31として、体積抵抗率が1010〜1011Ωcmで厚さが80μmのポリイミド樹脂製の無端状ベルト基材33の外周面に、ポリイミド樹脂にフッ素系樹脂を分散させた材料をフローコート法で塗布して体積抵抗率が1013〜1014Ωcmで厚さが5μmの表面抵抗層34を形成したもの(全周長:2m)を使用した。そして、この中間転写ベルト31について、図5に示すよう、その1周分(約2m)を4分割して4つの分割領域1〜4に設定したうえで、図6に示すように電源手段8から電荷付与手段7である清掃回転ブラシ38に対し段階的に増える電圧を各分割領域1〜4に切り替えながらそれぞれ供給し、その分割領域ごとの表面電位を表面電位測定器6(3つの測定器61〜63)で測定した。
【0079】
このときの表面電位の測定結果(ばらつき範囲)は、図6に示す通りの内容であった。この測定結果のうちばらつき範囲が最小のものは、分割領域3における表面電位であった。このため、電荷付与用電圧としては分割領域3に供給した「+500V」を選定した。
【0080】
また、この試験では、各分割領域1〜4の表面電位の状態において同じ試験用画像(画像濃度が50%のハーフトーン画像)を同じ条件で形成し、木目調の濃淡むらの有無について肉眼で観察して評価した。この分割領域ごとの試験用画像の形成は、その各電圧を印加した状態のままで作像装置2(一次転写位置)を通過させることで同様に行った。このときの評価結果を、同じく図6に示す。図6の結果が示すように、表面電位のばらつき範囲が最小のときの電圧を電荷付与用電圧として使用した場合に、画像の濃淡むらの発生が抑制される。
【0081】
[実施の形態2]
図11は実施の形態2に係る画像形成装置の概要を示し、図12はその画像形成装置の要部(中間転写ベルトの表面電位の均一化の構成部)を示している。
【0082】
実施の形態2に係る画像形成装置1Bは、電荷付与手段7としてコロナ放電器71に変更し、制御手段15における分割領域の構成を変更した以外は実施の形態1に係る画像形成装置1と同じ構成を採用している。以下では、実施の形態1と共通する構成部分には図面も含めて同じ符号を付し、その共通する構成部分に関する説明も必要な場合を除いて省略する。
【0083】
電荷付与手段7としてのコロナ放電器71は、図12に示すように、駆動ロール32aに支持されている中間転写ベルト31の外周面部分に向き合う状態で配置されている。このコロナ放電器71としては、その外周面部分と軸方向Cのほぼ全域にわたって向き合う端部が開口した形態のシールドケース71aと、そのシールドケース71aの内部空間に軸方向Cに沿って張り渡された放電ワイヤ71bとで構成されるもの(いわゆるコロトロン型の放電器)を適用した。また、この放電器71は、その放電ワイヤ71bに電源装置8から電荷付与用電流(プラス極性の直流)を供給するように構成している。さらに、コロナ放電器71は、ベルト清掃装置36による清掃位置P1よりも中間転写ベルト31の回転方向Bの下流側に存在し、かつ、表面電位測定器6よりも中間転写ベルト31の回転方向Bの上流側に存在するよう配置されている。
【0084】
制御手段15は、電荷付与用電流の選定動作の実行時期が到来すると、まず電源手段8から電荷付与手段7のコロナ放電器71に中間転写ベルト31の回転方向Bにおいて分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える電流を供給する動作を実行する。このときの複数の分割領域は、図13に例示するように、中間転写ベルト31の半周分の長さを複数に分割した領域として設定される。実施の形態1では、ベルト半周の長さを4等分した領域a〜dとしている。
【0085】
また、この制御手段15は、コロナ放電器71への段階的な電流の供給とほぼ同時に、その段階的な電流の供給により電荷の付与がされた中間転写ベルト31の分割領域ごとの各表面電位を表面電位測定器6(61〜63)で測定する動作を実行するとともに、その測定結果を入手する。このときの段階的な電流の供給と表面電位の測定は、中間転写ベルト31が半回転するという一層短い時間で終了するので更に迅速にかつ効率よく行われる。続いて、制御手段15は、表面電位測定器6から得られる測定結果に基づき表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域を分析する。そして最後に、制御手段15は、そのときの表面電位のばらつきの範囲が最小のものであったときの分割領域に供給した電流を電荷付与手段7のコロナ放電器71に供給すべき電流として選定する動作を行う。
【0086】
以上の電荷付与用電流の選定動作が終了すると、画像形成装置1では、その後に行う画像形成動作のときに、電源手段8から電荷付与手段7に選定された電流を供給しながら画像形成が行われることになる。これにより、中間転写ベルト31は、電荷付与手段7から電荷が付与されて強制的に帯電され、表面抵抗層34の抵抗値や層厚のばらつきがあったとしても、その表面電位がほぼ均一な状態にされる。この結果、画像形成時には、中間転写ベルト31の表面抵抗層34の抵抗値や層厚のばらつきに起因した画像の濃淡むらがほとんど発生しなくなる。またこのとき、中間転写ベルト31に一次転写されるトナー像の飛び散り現象もほとんど発生しない。
【0087】
次に、この画像形成装置1Bを用いた評価試験について説明する。
【0088】
この試験では、中間転写ベルト31として、実施の形態1における評価試験の場合と同じもの(全周長:2m)を使用した。そして、この中間転写ベルト31について、図5に示すよう、その半周分(約1m)を4分割して4つの分割領域a〜dに設定したうえで、図14に示すように電源手段8から電荷付与手段7であるコロナ放電器71の放電ワイヤ71bに対し段階的に増える電流を各分割領域a〜dに切り替えながらそれぞれ供給し、その分割領域ごとの表面電位を表面電位測定器6(61〜63)で測定した。
【0089】
このときの表面電位の測定結果(ばらつき範囲)は、図14に示す通りの内容であった。この測定結果のうちばらつき範囲が最小のものは、分割領域cにおける表面電位であった。このため、電荷付与用電流としては分割領域cに供給した「+200μA」を選定した。
【0090】
また、この試験では、実施の形態1における評価試験の場合と同様に、各分割領域a〜dの表面電位の状態において同じ試験用画像を同じ条件で形成し、木目調の濃淡むらの有無について肉眼で観察して評価した。このときの評価結果を、同じく図14に示す。図14の結果が示すように、表面電位のばらつき範囲が最小のときの電流を電荷付与用電流として使用した場合に、画像の濃淡むらの発生が抑制される。
【0091】
[他の実施の形態]
実施の形態1,2においては、制御手段15として、電源手段8から電荷付与手段7に中間転写ベルト31の複数の分割領域に対応して段階的に増える電圧又は電流を供給して中間転写ベルトの表面に電荷を付与する構成について例示したが、電源手段8から電荷付与手段7に中間転写ベルト31の複数の分割領域に対応して段階的に減る電圧又は電流を供給して中間転写ベルトの表面に電荷を付与する構成を適用することもできる。
要するに、中間転写ベルト31の表面に電荷を付与して表面電位のばらつきの少ない状態にすることができるときの供給すべき電圧又は電流の値(前述した「クロスポイント」に相当する電圧又は電流とも言える)を選定することができれば、その選定時において電源手段8から電荷付与手段7に段階的に供給する電圧又は電流の増減の方向については特に制限されない。
【0092】
また、実施の形態1,2においては、表面電位測定器6について、中間転写ベルト31の軸方向Cにおける1箇所に設置したり、その軸方向Cにおける3箇所以外の複数の箇所に設置して、表面電位を測定するように構成することもできる。また、電荷付与手段7としては、中間転写ベルト31の表面に電荷を付与して帯電又は除電することができるものであれば他の構成のものを適用しても構わない。さらに、電源手段8としては、直流電源装置以外にも、例えば、交流を重畳する直流電源装置を適用することも可能である。なお、その交流を重畳することによる効果の向上は、期待できないことが確認されている。
【0093】
制御手段15において分割する領域は、中間転写ベルト31の1周以下の範囲で設定することが望ましいが、必要であれば、その1周を超える長さを含めた内容で設定することもできる。また、分割領域の数についても、特に限定されないが、供給すべき電圧(又は電流)を適切に選定する観点からすれば、3以上の数にするとよい。
【0094】
作像装置2は、1つであってもよく、また4以外の複数のものであってもよい。また、中間転写装置3は、中間転写ベルト31に代えて、表面抵抗層が形成されたドラム形態の中間転写体を使用するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0095】
1,1B…画像形成装置
2Y,2M,2C,2K…作像装置
6 …表面電位測定器(電位測定器)
7 …電荷付与手段
8 …電源手段
9 …記録用紙(被記録材)
15…制御手段
31…中間転写ベルト(中間転写体)
34…表面抵抗層
36…ベルト清掃装置(清掃装置)
38…清掃回転ブラシ(清掃ブラシ)
61〜63…複数の表面電位測定器
71…コロナ放電器(電荷付与手段)
B …回転方向
C …軸方向
PI…清掃位置
P2…一次転写位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤で現像される現像剤像を形成する作像装置と、
前記作像装置で形成される現像剤像が転写され、その現像剤像を被記録材に転写させる位置まで保持して搬送するよう回転する、表面抵抗層が形成された中間転写体と、
前記中間転写体の表面電位を測定する電位測定器と、
前記中間転写体の表面に電荷を付与して帯電又は除電する電荷付与手段と、
前記電荷付与手段に電圧又は電流を供給する電源手段と、
前記電源手段から前記電荷付与手段に前記中間転写体の回転方向において分割される複数の分割領域に対応して段階的に増える又は減る電圧又は電流を供給して前記中間転写体の表面に電荷を付与し、その電荷の付与がされた前記中間転写体の分割領域ごとの各表面電位を前記電位測定器で測定し、その測定結果から当該表面電位のばらつきの範囲が最も小さかった分割領域に供給した電圧又は電流を前記電荷付与手段に供給すべき電圧又は電流として選定する動作を行う制御手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記表面電位計は、前記中間転写体の回転するときの軸の方向における複数の箇所に配置されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記中間転写体の複数の分割領域を当該中間転写体の1周以下の範囲で設定している請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体の表面を清掃する清掃装置を有し、
前記電位測定器は、前記中間転写体の前記清掃装置による清掃位置から当該中間転写体の回転方向の下流側にある前記作像装置の転写位置までの範囲に配置されているとともに、前記電荷付与手段よりも当該中間転写体の回転方向の下流側に存在するよう配置され、
前記電荷付与手段は、前記中間転写体の前記清掃装置による清掃位置を境にして当該中間転写体の回転方向の上流側又は下流側に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃装置は、前記中間転写体の表面に接触して清掃する清掃ブラシを備え、
前記電荷付与手段は、前記清掃装置の清掃ブラシに前記電源手段から電圧及び電力を供給するよう構成されている請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電荷付与手段は、コロナ放電器で構成されている請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−93645(P2012−93645A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242520(P2010−242520)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】