説明

画像形成装置

【課題】定着装置に分離爪を設けずに、長期間使用しても記録媒体の定着部材や加圧部材への巻き付きが発生しないようにする。
【解決手段】トナー像形成手段100により記録媒体上に未定着トナー像を形成し、それを定着装置200の定着部材210と加圧部材220による定着ニップ部Nを通過させて、記録媒体に未定着トナー像を定着させる。その定着部材210の温度を温度検知手段230により検知し、その温度が定着目標温度になるように、定着温度制御手段410が定着部材210を加熱する加熱手段250を制御する。先端部余白制御手段420が、記録媒体の搬送方向の先端部に未定着トナー像を形成しない余白を設定し、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が閾値以上になるとその余白量を増加させ、記録媒体の増加させた余白部分が定着ニップ部Nを通過する期間だけ、定着温度制御手段410に対して定着目標温度を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置又はそれらの複数の機能を有するデジタル複合機等の定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような各種の画像形成装置として、作像部で感光体上に形成した静電潜像を現像剤であるトナーで現像し、そのトナー画像を記録紙(転写紙又は用紙とも云う)に転写した後、それを定着して排出する電子写真方式の画像形成装置が多用されている。
このような電子写真方式の画像形成装置には、転写されたトナー画像を用紙に定着するために定着装置を備えている。その定着装置は、加熱される定着部材(定着ローラ又は定着ベルト等)と加圧部材(加圧ローラ等)とを有し、その定着部材と加圧部材とで形成される定着ニップ部によってトナー画像が転写された記録紙を挟んで、加熱及び加圧しながら搬送してトナー画像を記録紙に定着させる。
【0003】
このような定着装置において、定着後の記録紙を定着部材から分離させるために、定着ニップ部の出口付近に分離板あるいは分離爪を備えたものがある。しかし、分離板や分離爪を用いて記録紙を定着部材から分離させると、画像面や定着部材の表面を傷つける場合があるため、それらを設けない定着装置もある。ところが、そのような定着装置には次のような問題がある。
【0004】
分離板や分離爪が設けられていない定着装置では、記録紙の搬送方向の先端が定着ニップ部を抜けてから排紙ローラに到達するまでの間、記録紙は定着ニップ部の一点で支えられて搬送されている状態になる。
そのため、この状態の時の上記先端側領域の搬送挙動は不安定な状態にある。特に、腰の弱い薄紙の場合は、トナーと定着部材との粘着力等の影響を受け、記録紙が定着部材に巻き付き易くなり、巻き付きによるジャムが発生してしまう恐れがある。
【0005】
定着部材から記録紙へ供給する熱量を増やすことによって、トナーを完全に溶融させて記録紙が定着部材に巻き付くのを防止することができる。しかし、特に熱容量の小さい薄紙に対しては、記録紙へ供給する熱量を増やすと、排紙される薄紙である記録紙の温度が上昇し、トナーが接着剤となって定着部材あるいは加圧部材に巻き付きが発生する恐れがある。
【0006】
また、例えば特許文献1に開示されているように、記録紙の搬送方向先端部に充分な余白を設けることによって、記録紙が定着装置の定着ニップ部を抜けるときの定着部材や加圧部材への巻き付きを防止できることが知られている。
しかし、記録紙の搬送方向先端部に充分な余白を設けると、形成すべき画像によっては、画像情報の先端部が欠損してしまうことがある。
【0007】
そこで、特許文献1に記載された画像形成装置では、定着装置の定着部材及び加圧部材の定着ニップ部の出口側に、それぞれ離接可能に分離爪を設けるとともに、記録紙の搬送方向先端部の余白幅を可変設定できるようにし、設定された余白幅が規定値以上の場合は各分離爪を定着部材及び加圧部材から離間させ、設定された余白幅が規定値未満の場合は各分離爪を定着部材及び加圧部材に当接させるようにしている。
このようにすれば、記録紙の定着部材又は加圧部材への巻き付きを防止できると共に、定着部材及び加圧部材への分離爪の接触時間を少なくして、その表面の傷付き等を低減することできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した定着装置を備えた画像形成装置では、記録紙の搬送方向先端部の余白幅が規定値未満の場合は分離爪を使用するので、やはり定着部材及び加圧部材の表面を傷付ける恐れがある。また、定着部材への記録紙の巻き付きは、定着部材と加圧部材の経時劣化による定着ニップ部の形状変動によっても発生し易くなる。
しかし、上述した画像形成装置ではその点が考慮されていないため、長期間使用していると、記録紙の搬送方向先端部の余白幅が規定値以上でも巻き付きが発生する恐れがある。
【0009】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、上述のような定着装置を備えた画像形成装置において、定着装置に分離爪を設けずに、長期間使用しても記録媒体の定着部材や加圧部材への巻き付きが発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記の目的を達成するため、画像情報に基づいて記録媒体上に未定着トナー像を形成するトナー像形成手段と、その未定着トナー像を形成した記録媒体を定着ニップ部を通過させることによって記録媒体に未定着トナー像を定着させる定着装置と、定着温度制御手段とを備え、上記定着装置は、定着部材と、その定着部材に圧接して上記定着ニップ部を形成する加圧部材と、少なくとも上記定着部材を加熱する加熱手段と、少なくとも定着部材の温度を検知する温度検知手段とを有し、上記定着温度制御手段が、その温度検知手段によって検知される温度が定着目標温度になるように上記加熱手段を制御する画像形成装置において、
上記定着ニップ部を通過する記録媒体の通紙枚数を計数する通紙枚数計数手段と、上記トナー像形成手段に対して、記録媒体の搬送方向の先端部に上記未定着トナー像を形成しない所定量の余白を設定し、上記通紙枚数計数手段によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上になると上記余白の余白量を増加させ、上記未定着トナー像を形成した記録媒体の該増加させた余白部分が上記定着ニップ部を通過する期間だけ、上記定着温度制御手段に対して定着目標温度を低下させる先端部余白制御手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明による画像形成装置は、定着装置に分離爪を設けることなく、長期間使用しても記録媒体の定着部材や加圧部材への巻き付きが発生しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明による画像形成装置の一実施形態の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】その画像形成装置に設けられた定着装置の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置の制御系におけるこの発明による機能の実現に係わる部分の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明による画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔画像形成装置の全体構成〕
まず、この発明による定着装置を設けた画像形成装置の一実施形態の全体構成及びその動作の概要を説明する。図1はその画像形成装置の概略構成図である。
【0014】
図1において、1は画像形成装置であり、この実施形態ではタンデム型カラー複写機であるが、デジタル機であり、ネットワークに接続してプリンタとしても使用できる。
この画像形成装置1は、原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部2と、その読取画像情報を構成する各色の画像に基づいて変調した各色の露光用のレーザ光を発する書込部3と、各色のトナー像を形成する作像部4と、そのトナー像を転写する転写部5を備えている。
【0015】
さらに、転写紙等の記録媒体である記録紙Pが収容される給紙部7、およびトナー像が転写された記録紙Pを定着する電磁誘導加熱方式の定着装置20等も備えている。
原稿読込部2には、コンタクトガラス201、光源である照明ランプ202、ミラー群203及びレンズ204等の光学系、およびCCDカラーラインセンサ等の撮像素子205を備えている。6は圧板であり、コンタクトガラス201上に載置された原稿Dを押さえる。
【0016】
作像部4には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKと、その各感光体ドラムの周囲に配置された帯電部12、現像部13、およびクリーニング部14を備えている。
【0017】
転写部5には、3本のローラ17a、17b、17cに張り渡されて、その表面が各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKに接する中間転写ベルト15と、その中間転写ベルト15上の残溜トナーを清掃する中間転写ベルトクリーニング部16、ローラ17aと中間転写ベルト15を挟んで対向する二次転写ローラ18等が設けられている。
ローラ17aは、中間転写ベルト15を矢示A方向へ周回移動(回動)させる駆動ローラであるとともに、二次転写バックアップローラの役目も果す。
【0018】
給紙部7には、トレイ上に積層された記録紙Pを1枚ずつ引き出して給紙する給紙ローラ8が設けられ、その記録紙Pの搬送経路には、搬送ローラ対10及び排紙ローラ対9と、図示を省略している位置決めローラ対(レジストローラ対)やガイド板等が設けられている。
原稿読込部2の下側には外部に開放した中空部が形成されており、その下面が排紙トレイ19になっている。
【0019】
定着装置20は、定着部材である定着ローラ21と、その定着ローラ21に圧接する加圧部材である加圧ローラ22、および定着ローラ21に対向する誘導加熱部25等を備えているが、その詳細は図2によって後述する。
【0020】
ここで、この画像形成装置におけるコピー機能によるカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿読込部2によって、コンタクトガラス201上に載置された原稿Dの画像情報を光電的に読み取る。詳しくは、コンタクトガラス201上の原稿Dの画像面に対して、照明ランプ202から発した光を照射しながら照明ランプ202とミラー群203を副走査方向(矢示B方向)へ移動させて走査する。
【0021】
そして、原稿Dの画像面によって反射された光を、ミラー群203及びレンズ204によってCCDカラーラインセンサ等の撮像素子205の受光面に結像させる。それによって撮像素子205は、原稿Dのカラー画像情報をRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取って電気的な画像信号に変換する。さらに、図示していない処理回路によって、そのRGBの色分解画像信号に対して色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の各種の処理を行って、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0022】
その各色の画像情報を書込部3へ送信する。そして、書込部3は、その各色の画像情報に基づいて変調したレーザ光(露光光)を、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKに向けて、高速回転するポリゴンミラーにより各感光体ドラムの回転軸線方向に主走査しながら照射する。
【0023】
一方、4個の各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1に示す矢示方向(時計方向)に回転している。そして、まず、その各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面が、帯電部12によって一様に帯電される(帯電工程)。その後、その帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面が、書込部3による各レーザ光の照射位置に達する。
そこで、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分毎のレーザ光によって露光され、各色ごとの静電潜像が形成される(露光工程)。
【0024】
すなわち、イエロー成分に対応したレーザ光は、図1で左側から1番目の感光体ドラム11Yの表面に照射され、感光体ドラム11Y上にはイエロー成分に対応した静電潜像が形成される。同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、左から2番目の感光体ドラム11Mの表面に照射され、感光体ドラム11M上にはマゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。
【0025】
シアン成分のレーザ光は、左から3番目の感光体ドラム11Cの表面に照射され、感光体ドラム11C上にはシアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、左から4番目の感光体ドラム11BKの表面に照射され、感光体ドラム11BK上にはブラック成分の静電潜像が形成される。
【0026】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、その各感光体ドラム上の潜像が現像され、各色のトナー像が形成される(現像工程)。
【0027】
その現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、中間転写ベルト15との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト15の内周面に当接するように、転写バイアスローラ(図示を省略)が設置されている。そして、その転写バイアスローラの位置で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト15の表面上に、順次重ねて転写され、フルカラーのトナー像が形成される(一次転写工程)。
【0028】
その一次転写工程後の各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、クリーニング部14によって表面に残存する未転写トナーが除去されて回収される(クリーニング工程)。
その後、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、不図示の除電部で残留電荷が除電されて、一連の作像プロセスが終了し、次の作像に備える。
【0029】
一方、フルカラーのトナー像が形成された中間転写ベルト15は、二次転写ローラ18との対向位置に達する。この位置で、二次転写バックアップローラの役目を果すローラ17aが、二次転写ローラ18との間に中間転写ベルト15を挟み込んで二次転写ニップ部を形成している。そして、中間転写ベルト15上に形成されたフルカラーのトナー像が、この二次転写ニップ部の位置に搬送された記録紙Pの図で左側の面に転写される(二次転写工程)。
このとき、中間転写ベルト15上の記録紙Pに転写されなかった未転写トナーは、その後、中間転写ベルトクリーニング部16によって除去されて回収される。
こうして、中間転写ベルト15上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0030】
ここで、二次転写ニップ部の位置に搬送される記録紙Pは、装置本体の下方に配設された給紙部7から、給紙ローラ8や搬送ローラ対10及び図示を省略した位置決めローラ等が設置された搬送経路(図中に破線矢印で示す)K1を経由して搬送される。
詳しくは、給紙部7には、記録紙Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ8が矢示方向(反時計方向)に回転駆動されると、一番上の記録紙Pが搬送経路K1に向けて給送される。
【0031】
搬送経路K1に搬送された記録紙Pは、搬送ローラ対10によって、回転駆動を停止した位置決めローラ(図示を省略)のローラニップ位置に先端が到達すると一旦停止する。そして、中間転写ベルト15上のトナー像の移動タイミングに合わせて、位置決めローラが回転駆動して、記録紙Pが二次転写ニップ部に向けて搬送される。こうして、記録紙P上に、所望のカラートナー像が転写され、未定着のトナー像が形成される。
【0032】
二次転写ニップ部の位置でカラートナー像が転写された記録紙Pは、定着装置20へ搬送される。そして、その定着装置20を通過する際に、定着ローラ21と加圧ローラ22による熱と圧力とにより、表面に転写された未定着のカラートナー像が記録紙P上に定着される(定着工程)。
そして、定着装置20による定着工程を経た記録紙Pは、排紙ローラ対9によって排紙トレイ19上に出力画像として排出され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0033】
〔定着装置の例〕
次に、この画像形成装置1に設けた定着装置20の構成例及びその動作について詳述する。図2はその定着装置20の断面図である。
この図2に示す定着装置20は、定着部材である定着ローラ21と、その定着ローラ21に圧接する加圧部材である加圧ローラ22と、定着ローラ21に対向する誘導加熱部25(磁束発生手段)を備えている。
さらに、入口ガイド板31、拍車ガイド板32、分離ガイド板33、出口ガイド板34、サーミスタ35,36等も設けられている。
【0034】
定着ローラ21は、鉄やステンレス鋼等からなる芯金21a上に、発泡シリコーンゴム等からなる断熱弾性層21b、スリーブ層21cが順次積層されたものであって、その外径が40mm程度に形成されている。
定着ローラ21のスリーブ層21cは、内周面側から基材層、第1酸化防止層、発熱層、第2酸化防止層、弾性層、離型層が順次積層された多層構造体である。
【0035】
スリーブ層21cの基材層は、層厚が40μm程度のステンレスで形成されたものであり、第1酸化防止層及び第2酸化防止層は、層厚が1μm以下のニッケルをストライクめっき処理にて形成したものである。発熱層は層厚が10μm程度の銅で形成されたものであり、弾性層は層厚が150μm程度のシリコーンゴムで形成されたものであり、離型層は層厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成されたものである。
【0036】
このように構成された定着ローラ21は、誘導加熱部25から発せられる磁束によってスリーブ層21cの発熱層が電磁誘導加熱されることになる。なお、定着ローラ21の構成は、この実施形態のものに限定されることなく、例えば、スリーブ層21cを断熱弾性層21b(定着補助ローラ)に接着せずに別体化することもできる。ただし、スリーブ層21cを定着スリーブとして別体化した場合には、稼動中にその定着スリーブが幅方向(スラスト方向)に移動するのを抑止するための部材を設置するのが好ましい。
【0037】
一方、加圧ローラ22は、鋼鉄やアルミニウム等からなる円筒部材22a上に、シリコーンゴム等からなる弾性層22bと、PFA等からなる離型層22cが形成されている。その弾性層22bは層厚が1〜5mmとなるように形成され、離型層22cは層厚が20〜200μmとなるように形成されている。加圧ローラ22は定着ローラ21に圧接しており、その圧接部である定着ニップ部Nに、記録紙Pが搬送される。
【0038】
この実施形態では、定着ローラ21の加熱効率を高めるために、加圧ローラ22にハロゲンヒータ等のヒータ23が内設されている。そのヒータ23に電力が供給されることにより、ヒータ23の輻射熱によって加圧ローラ22が加熱されて、定着ローラ21の表面が加圧ローラ22を介して加熱される。
【0039】
誘導加熱部25は、コイル部(励磁コイル)26、コア部(励磁コイルコア)27、コイルガイド28等で構成されている。コイル部26は、定着ローラ21の外周面の一部を覆うように配設されたコイルガイド28上に、細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に沿って延びて設けられている。
コイルガイド28は、ガラス材料を45%程度含有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等の耐熱性の高い樹脂材料からなり、定着ローラ21の外周面に対向してコイル部26を保持する。
【0040】
なお、この実施形態では、この誘導加熱部25のコイルガイド28の対向面と、定着ローラ21の外周面とのギャップが2±0.1mmに設定されている。
コア部27は、比透磁率が2500程度のフェライト等の強磁性体からなり、定着ローラ21のスリーブ層21cの発熱層に向けて、効率よく磁束を形成するためのものであり、アーチコア、センターコア、サイドコア等で構成されている。
また、この実施形態において、誘導加熱部25は、定着ローラ21の側方(図2では左側の側方)に配設されている。
【0041】
この定着装置20の定着ローラ21に対向する位置であって、定着ニップ部Nより記録紙の搬送方向上流側(以下単に「上流側」という)に、複数の拍車が幅方向に並設された拍車ガイド板32が設置されている。その拍車ガイド板32は、定着ニップ部Nに送入される記録紙Pの定着面(画像が定着される面)に対向する位置に配設されており、記録紙Pを定着ニップ部Nに案内する。そのため、拍車ガイド板32は、記録紙P上の未定着のトナー像Tに拍車が接触しても、その画像に擦れ跡が生じないように、拍車の周面が鋸歯状に形成されている。
【0042】
また、定着ローラ21に対向する位置であって、定着ニップ部Nより記録紙Pの搬送方向下流側(以下単に「下流側」という)の、定着ニップ部Nから送出される記録紙Pの定着面に対向する位置には、分離ガイド板33が非接触で設置されている。その分離ガイド板33は、定着ニップ部Nから送出された定着工程後の記録紙Pが、定着ローラ21に吸着して巻き付く不具合を防止するためのものである。すなわち、定着工程後の記録紙Pが定着ローラ21に吸着してしまった場合に、記録紙Pの先端に分離ガイド板33が接触して、記録紙Pを定着ローラ21から強制的に分離させる。
【0043】
また、定着ニップ部Nの上流側であって、定着ニップ部Nに近接する位置には、定着ローラ21に接触する接触型温度検知センサであるサーミスタ36が配設されている。サーミスタ36は、定着ローラ21の軸線方向(紙幅方向)の端部に配設されており、その表面温度を検知する。
また、定着ローラ21の軸線方向の中央部に対応する表面に近接した位置には、非接触型温度検知センサであるサーモパイル(図示していない)が配設されている。サーモパイルとは、物体が放射する赤外線から物体の温度を測定する素子である。
【0044】
物体から放射された赤外線は、サーモパイル内部の熱変換膜で吸収されて熱に変換される。その後、膜上に形成された多数の微小熱電対によって温度として検出される。
そして、サーミスタ36と上述したサーモパイルによって、定着ローラ21の表面温度(定着温度)を検知し、その検知結果に基づいて後述する制御部が誘導加熱部25による加熱量を調整する。なお、この実施形態では、定着工程時(通紙時)における定着温度が160〜165℃になるように、誘導加熱部25の制御が行われる。
【0045】
また、定着ニップ部Nの上流側であって、定着ニップ部Nに近接する位置には、加圧ローラ22に接触する接触型温度検知センサであるサーミスタ35が配設されている。このサーミスタ35は、加圧ローラ22の軸線方向(紙幅方向)の端部に配設されており、その表面温度を検知する。
また、加圧ローラ22の軸線方向の中央部に対応する表面に近接する位置には、非接触型温度検知センサであるサーモパイル(図示していない)が配設されている。
そして、サーミスタ35と上述したサーモパイルによって、加圧ローラ22の表面温度を検知して、その検知結果に基づいて後述する制御部がヒータ23による加熱量を調整する。
【0046】
加圧ローラ22に対向する位置であって、定着ニップ部Nの上流側の定着ニップ部Nに送入される記録紙Pの非定着面に対向する位置には、入口ガイド板31が設置されている。この入口ガイド板31は、定着ニップ部Nに送入される記録紙Pを定着ニップ部Nに案内する。
また、加圧ローラ22に対向する位置であって、定着ニップ部Nの下流側の定着ニップ部Nから送出される記録紙Pの非定着面に対向する位置には、出口ガイド板34が軸34aを中心に矢示C方向へ回転可能に設置されている。この出口ガイド板34は、定着ニップ部Nから送出される定着工程後の記録紙Pを、定着工程後の搬送経路に向けて案内する。
【0047】
このように構成された定着装置20は次のように動作する。
不図示の駆動モータによって定着ローラ21が図2の反時計方向に回転駆動され、それにともない加圧ローラ22が時計方向に回転する。そして、定着ローラ21のスリーブ層21cは、誘導加熱部25との対向位置で誘導加熱部25から発生される磁束によって加熱される。
【0048】
すなわち、図示していない発振回路が周波数可変の電源部から、誘導加熱部25のコイル部26に10kHz〜1MHz(好ましくは20kHz〜800kHz)の高周波交番電流が通電されることにより、コイル部26から定着ローラ21のスリーブ層21cに向けて磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。
このように交番磁界が形成されることによって、スリーブ層21cの発熱層に渦電流が生じ、発熱層はその電気抵抗によってジュール熱が発生して誘導加熱される。こうして、定着ローラ21のスリーブ層21cは、自身の発熱層の誘導加熱によって加熱される。
【0049】
その後、誘導加熱部25によって加熱された定着ローラ21の表面は、加圧ローラ22との当接部である定着ニップ部Nに達する。そして、そこに搬送される記録紙P上の未定着トナー像Tを加熱して溶融する。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経て未定着トナー像Tを担持した記録紙Pが、入口ガイド板31又は拍車ガイド板32に案内されながら、矢示Y1で示す搬送方向に移動して、定着ローラ21と加圧ローラ22による定着ニップ部Nに送入される。
【0050】
そして、定着ローラ21から受ける熱と加圧ローラ22から受ける圧力とによって、未定着トナー像Tが記録紙Pに定着され、その記録紙Pは定着ローラ21と加圧ローラ22との間から送出され、矢示Y2方向に搬送される。
定着ニップ部Nを通過した定着ローラ21の表面は、その後に再び誘導加熱部25との対向位置に達する。
【0051】
この実施形態の定着装置20は、定着ローラ21が誘導加熱部25による電磁誘導加熱によって加熱されるものであったが、ハロゲンヒータを熱源とするものでもよい。また、定着部材として無端ベルトによる定着ベルトを用いた定着装置でもよい。また、加圧ローラ22内にヒータ23のような熱源を設けなくてもよい。この発明による画像形成装置に備える定着装置は、その構造の形態を限定するものではない。
【0052】
〔画像形成装置の制御系に概要〕
次に、図1及び図2によって説明した画像形成装置の制御系の概要を図3によって説明する。図3は、前述した画像形成装置の制御系におけるこの発明による機能の実現に係わる部分の構成を示すブロック図である。
【0053】
図3における制御部40は、中央処理装置であるCPU、プログラム及び固定データ用メモリであるROM、データメモリであるRAM等からなるマイクロコンピユータを有し、この画像形成装置全体を制御する。当然ながら、この発明による機能を実現するための制御も実行する。また、必要に応じて、電源がオフになっても記憶データを保持する不揮発性メモリも有する。
【0054】
操作部41は、図1に示した画像形成装置1の筐体上部の外部から見やすい位置に設けられ、液晶表示パネル等の表示部と複数のキー等による入力部とを有している。そして、制御部40に制御されて、ユーザに対して装置の状態を知らせたり、各種の選択や情報入力を促すための画面を表示部に表示する。また、ユーザによる入力部の操作によって、モード選択や紙種、後述する余白量及び定着目標温度の自動変更の要否などの各種の入力情報を生成し、それを制御部40へ入力させる。
【0055】
プリンタコントローラ42は、この画像形成装置1に対して、例えばネットワークを介して接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト装置から転送される画像データを、画像形成可能なデータに変換して、メモリ43に一時的に記憶させる。
メモリ43は、複数の画像データを記憶できる記憶容量を持つ画像メモリであり、図1に示した原稿読込部2によって原稿の画像を読み取った場合、その読取画像データも一時的に記憶する。その読取画像データは、図1における原稿読込部2の撮像素子205から出力される光電変換信号から、図示していない信号処理回路によって各種の処理が施されて生成される。
【0056】
これらのプリンタコントローラ42及びメモリ43も制御部40に接続されている。そして、制御部40はメモリ43に一時記憶された画像データを各ページ毎に順次読み込んで、図1に示した書込部3へ転送して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色成分毎のレーザ光を変調して、作像部4の帯電された各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面を露光する。その後、前述した現像工程、一次転写工程、および二次転写工程を経て、フルカラーのトナー像を記録紙Pに転写する。
【0057】
その際、位置決めローラによる記録紙Pの二次転写位置への搬送タイミングに対して、書込部3における画像データに応じたレーザ光による副走査方向の書き込み開始タイミングを、記録紙Pの先端と画像の先端とを一致させるタイミングより遅らせることによって、二次転写後に、記録紙Pの搬送方向の先端部に未定着トナー像を形成しない余白を設けることができる。この余白は、画像データに余白が設定されていなくても、必ず設けられることになる。制御部40はこの余白の設定および補正制御も行う。
【0058】
制御部40はまた、図1及び図2に示した定着装置20も制御する。すなわち、画像形成準備開始時から画像形成動作完了時まで常に、サーミスタ35,36及び図示していないが前述した2個のサーモパイルによる温度センサ30によって検出される定着ローラ21及び加圧ローラ22の表面の温度検知情報を入力する。
そして、その温度が予め設定した定着目標温度を保つように、誘導加熱部25及びヒータ23への通電を制御する。
【0059】
加圧ローラ22内にヒータ23を設けない場合は、加圧ローラ22の表面温度を検知するサーミスタ35とサーモパイルは不要である。そして、温度センサ30として定着ローラ21の表面の温度を検知するサーミスタ36とサーモパイルによる温度検知情報だけを入力して、誘導加熱部25への通電を制御し、定着ローラ21の表面温度が定着目標温度を保つように制御する。
【0060】
通紙枚数カウンタ50は、図2に示した定着装置20の定着ニップ部Nを通過する記録紙Pの通紙枚数を計数するカウンタであり、例えば図1における定着装置20と排紙ローラ対9との間に記録紙Pの通過を検知する光電センサ等のセンサを配置し、その通過検知信号を積算計数する。この通紙枚数カウンタ50は、制御部40のマイクロコンピュータによって、上述した通過検知信号の入力回数をプログラム処理でカウントして、そのカウント値を不揮発性メモリに記憶させるソフトカウンタであってもよい。
【0061】
制御部40は、この通紙枚数カウンタ50による通紙枚数の情報によって、前述した余白の余白量の補正(増加)及びその補正した余白部分に対する定着目標温度の一時的な変更などの処理も行う。その詳細は後述する。
【0062】
〔この発明に係わる機能の説明〕
次に、上述した画像形成装置によるこの発明に係わる機能について、図4によって説明する。図4はこの発明による画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
この発明による画像形成装置は、図4に示すように、画像情報に基づいて記録媒体上に未定着トナー像を形成するトナー像形成手段100と、その記録媒体に未定着トナー像を定着させる定着装置200と、その定着装置200の定着ニップ部Nを通過する記録媒体の通紙枚数を計数する通紙枚数計数手段500と、これらを制御する制御部400とを備えている。
【0063】
定着装置200は、定着部材210と、その定着部材210に圧接して定着ニップ部Nを形成する加圧部材220と、それらの少なくとも定着部材210を加熱する加熱手段250と、少なくとも定着部材210の温度を検知する温度検知手段230とを有している。そして、未定着トナー像を形成した記録媒体を定着ニップ部Nを通過させることによって、その記録媒体に熱と圧力によって未定着トナー像を定着させる。
なお、当然ながら、加圧部材220を定着部材210に押圧し、あるいはその定着部材210への押圧を解除する加圧脱圧機構なども設けられている。
【0064】
制御部400は、定着装置200の温度検知手段230によって検知される温度が設定した定着目標温度(Ts℃)になるように加熱手段250を制御する定着温度制御手段410と、この発明特有の機能を果す先端部余白制御手段420とを設けている。
定着目標温度(Ts℃)は、この実施例では前述のように160〜165℃に設定するが、記録媒体の種類やサイズ(幅及び長さ)、記録媒体の搬送速度である線速などの条件によって最適温度に変更するのが望ましい。
【0065】
先端部余白制御手段420は、トナー像形成手段100に対して、記録媒体の搬送方向の先端部に未定着トナー像を形成しない所定量の余白を設定し、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上になると、その余白の余白量を増加させる。また、未定着トナー像を形成した記録媒体の、その増加させた余白部分が定着装置200の定着ニップ部Nを通過する期間だけ、定着温度制御手段410に対して定着目標温度を低下させる。
【0066】
記録媒体の搬送方向の先端部に上記余白を設定するのは、どのような画像を形成する場合でも所定の通紙枚数(上記閾値)になるまでは、定着装置200の定着部材210又は加圧部材220への記録媒体の巻き付きが発生しないようにするためである。
この画像形成装置が、パーソナルコンピュータ等で作成された文書や画像のデータをプリンタ機能で画像形成(印刷)する場合は、その印刷データには一般に画像領域の周囲に余白が設定されているので、先端部にも十分な余白があるため上記巻き付きは発生しない。
【0067】
しかし、コピー機能でコピー画像を形成する場合は、読み取る原稿の画像領域の周囲に余白があるかどうか不明であり、先端まで画像がある場合もある。また、プリンタ機能で画像形成(印刷)する場合でも、写真画像のように余白が設定されていない画像データを印刷する場合もある。そのような場合でも所定の通紙枚数になるまでは、上記巻き付きが発生しないようにするため、画像先端部に最小限の余白を設定する必要がある。その余白の設定量(上記所定量)は、例えば3〜5mm程度とする。
【0068】
さらに、上述のように通紙枚数が予め設定した閾値以上になった場合、記録媒体の搬送方向の先端部の余白量を増加させ、その増加させた余白部分が定着装置200の定着ニップ部Nを通過する期間だけ定着目標温度を低下させる目的は、経時においても定着装置200の定着部材210又は加圧部材220への記録媒体の巻き付きを防止するためである。
【0069】
定着装置200では、定着部材210と加圧部材220とによって定着ニップ部Nを形成するために、ニップ形成部材である定着部材210と加圧部材220の外周部には、通常スポンジのような柔らかい素材が使用される。そのため、繰り返し記録媒体が通紙されることによってニップ形成部材が劣化し、その結果定着ニップ部Nの曲率が大きくなり、巻き付きが発生し易くなる。
【0070】
また、トナーが接着剤のように紙とローラの間に張り付くと巻き付きが発生するが、画像先端部の定着ニップ部通過時の温度が極端に高いとトナーが溶け易いため、同様に巻き付きが発生し易くなる。
そこで、上述のように、通紙枚数が予め設定した閾値以上になった場合、記録媒体の先端の余白を広くし、その広げた部分すなわち画像先端部に隣接する余白部分が定着ニップ部Nを通過する期間だけ、定着温度を瞬間的に下げて、画像部では設定された定着温度に戻すようにすれば、記録媒体の巻き付きを防止でき、しかも定着不良が発生することもない。
【0071】
ところで、この図4に示す各部と図1〜図3によって説明した画像形成装置1における各部とは、次のように対応している。
トナー像形成手段100は、図1に示した画像形成装置1において、記録紙P上に電子写真方式で未定着トナー像を形成するための部分であり、書込部3、作像部4、転写部5、給紙部7、給紙ローラ8、排紙ローラ対9、搬送ローラ対10、二次転写ローラ18等を含む。それは、原稿読込部2と定着装置20を除く殆どの部分である。
記録媒体は、トナー像を形成できるシート状の媒体であればよく、図1における記録紙Pである。
【0072】
定着装置200は定着装置20に相当し、その定着部材210は定着ローラ21、加圧部材220は加圧ローラ22である。加熱手段250は、図2に示した実施例ではヒータ23と誘導加熱部25であるが、少なくとも定着ローラ21を加熱する誘導加熱部25等の熱源は必要である。温度検知手段230は、図2に示した実施例では接触型温度検知センサであるサーミスタ35,36と、定着ローラ21と加圧ローラ22のそれぞれ軸線方向の中央部に対応する表面に近接する位置に配置された非接触型温度検知センサのサーモパイル(図示は省略)であるが、少なくとも定着ローラ21の温度を検知するサーミスタ36又はサーモパイルが必要である。
【0073】
制御部400は、図3に示した制御部40におけるこの発明に直接係わる機能だけを、定着温度制御手段410と先端部余白制御手段420として示している。
通紙枚数計測手段500は、図3に示した通紙枚数カウンタ50に相当する。これは、前述したように、制御部40によるソフトカウンタであってもよい。
【0074】
この先端部余白制御手段420による記録媒体先端部の余白に関する制御の具体例を実施例1〜3として説明する。なお、以下の説明において、記録媒体(記録紙)の搬送方向の先端部の未定着トナー像を形成しない余白を「先端部余白」と称す。
【0075】
<実施例1>
まず、実施例1を表1によって説明する。これは最も基本的な実施例であり、定着装置200の定着部材210の寿命が通紙枚数30万枚の場合を想定して、通紙枚数に応じて先端部余白を補正(増加)する先端部補正余白量〔mm〕と、その補正した余白部分が定着ニップ部を通過する期間における定着目標温度の補正量である補正余白部補正温度〔℃〕とを示している。
【0076】
【表1】

【0077】
この実施例1では、通紙枚数の閾値を10万枚とし、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が10万枚未満の間は、先端部補正余白量は0mmであるから、先端部余白は設定値(例えば3mm)のままにする。先端部余白を補正しないので、補正余白部補正温度も0℃であり、定着目標温度は常に設定温度(例えば160℃)のままである。
【0078】
通紙枚数が閾値である10万枚以上になると、先端部補正余白量を1mmとし、先端部余白を1mm増加する。また、補正余白部補正温度を−10℃とし、その増加した余白部分(画像領域に隣接する1mmの増加部分)が定着ニップ部を通過する期間における定着目標温度を10℃低下させる。したがって、定着目標温度が160℃であった場合は150℃にする。このように定着目標温度も補正をするのは、先端部余白の補正部分であり、その余白部が定着ニップ部を通過した後は、定着目標温度の補正をリセットする。熱容量の小さい定着装置では先端部余白が通過後の定着温度の追従は可能である。
【0079】
<実施例2>
ここで、先端部余白制御手段420のより好ましい動作について説明する。
先端部余白制御手段420は、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、その通紙枚数に応じて段階的に先端部余白の余白量を増加させ、その余白量の増加に応じて定着目標温度を低下させる温度を段階的に少なくすることができる。その実施例2を表2によって説明する。
【0080】
【表2】

【0081】
この実施例2では、通紙枚数が閾値である10万枚以上になると、先端部余白の補正(増加)を開始するが、通紙枚数に応じてその先端部補正余白量を1mmから段階的に増加させる。すなわち、通紙枚数が10万枚以上で15万枚未満のうちは先端部補正余白量は1mm、15万枚以上になると2mm、20万枚以上になると3mm、25万枚以上になると4mm、30万枚以上になると5mmに、先端部補正余白量を段階的に増加させる。
【0082】
これは、経時によって定着ニップ部内で巻き付きに寄与する特性値が悪化するため、画像形成した記録紙の通紙枚数に対して、先端部余白の余白量を段階的に増加させるように補正をかけることによって、ニップ形成部材の経時劣化による巻き付きが発生するのを抑えることができる。
【0083】
一方、補正余白部の定着目標温度を低下させる補正余白部補正温度は、表2に示すように、通紙枚数の増加による先端部補正余白量の段階的な増加に応じて段階的に少なくすることができる。
この実施例では、通紙枚数が10万枚以上で15万枚未満のうちは補正余白部補正温度は−10℃、15万枚以上になると−8℃、20万枚以上になると−6℃3、25万枚以上になると−4℃、30万枚以上になると−2℃にする。それによって、画像先端部に定着不良が生じないようにすることができる。
【0084】
<実施例3>
また、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、上記余白の増加量及び定着目標温度を低下させる温度を、記録紙の厚さを示す坪量(1m当たりの重量〔g/m〕)の情報に応じて変更することもできる。
その場合、記録紙の厚さ(坪量)の増加に応じて、先端部余白の増加量及び定着目標温度を低下させる温度を低減するとよい。その実施例3を表3によって説明する。
【0085】
【表3】

【0086】
この実施例3では、記録紙の厚さを示す坪量〔g/m〕に応じて、表1及び表2に示した先端部補正余白量を補正する係数である補正余白量補正係数と、表1及び表2に示した補正余白部補正温度を補正する係数である補正余白部補正温度補正係数とを、表3に示すように同時に段階的に変更する。
したがって、実際の先端部補正余白量は、表1又は表2における先端部補正余白量〔mm〕に、表3における紙種に応じた補正余白量補正係数を乗じた値となり、実際の補正余白部補正温度は、表1又は表2における補正余白部補正温度〔℃〕に、表3における紙種に応じた補正余白部補正温度補正係数を乗じた値になる。
【0087】
例えば、表2の第2実施例に表3の第3実施例を適用した場合、通紙枚数が180000枚の状態で厚紙1に画像形成する場合、先端部補正余白量は2×0.6=1.2〔mm〕になり、補正余白部補正温度は−8×0.8=−6.4〔℃〕になる。
したがって、設定した先端部余白が3〔mm〕で、設定した定着目標温度が160〔℃〕であったとき、上記の場合の先端部余白は3+1.2=4.2〔mm〕、定着目標温度は160−6.4=153.6〔℃〕となる。
【0088】
このように、紙厚に対応する坪量が大きくなるに従って、補正余白量補正係数及び補正余白部補正温度補正係数を小さくしていくのは、坪量が59〔g/m
〕以下の薄い記録紙は、剛度が小さく巻き付きが発生し易いため、余白量と余白補正部の定着目標温度の低下量を多くする必要があるが、記録紙の厚さが増加するに連れて剛度が大きく(腰が強く)なるため、巻き付きが発生しにくくなるからである。
【0089】
<その他の実施例>
先端部余白制御手段420はさらに、通紙枚数計数手段500によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、上記余白の余白量及び定着目標温度を自動的に変更する第1のモードと、操作部から変更が選択された場合に限り余白量および定着目標温度を変更する第2のモードとを有することができる。
その場合、その第1のモードと第2のモードは、図3に示した操作部41で選択可能であり、そのモード選択信号および第2のモードの場合は変更選択の有無を示す信号も、操作部41から制御部40(400)の先端部余白制御手段420へ入力されるようにするとよい。
【0090】
また、通紙枚数計数手段500に代えて、記録媒体の累積搬送距離(積算走行距離とも称す)を計測する搬送距離計測手段を設け、先端部余白制御手段420は、通紙枚数計数手段500によって計数される通紙枚数と上記閾値に代えて、上記搬送距離計測手段によって計測される記録媒体Pの累積搬送距離とその搬送距離に対する閾値を使用して、上記の各制御を行うようにしてもよい。
【0091】
累積搬送距離は、この画像形成装置におけるトナー像形成手段100及び定着装置200を通して搬送する記録媒体の搬送距離を累積して計測した値であり、図1に示した画像形成装置1内の記録紙Pの搬送路の距離(長さ)Lと通紙枚数Nとの積L・Nに相当する。このように、記録紙の通紙枚数と累積搬送距離は連動しているため、閾値として設定し易い。
【0092】
この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、画像形成装置は、カラー画像を形成するものに限らず単色又は特定の複数色の画像を形成するものでもよい。また、複写機に限らず、プリンタやファクシミリ装置又はそれらの複数の機能を有するデジタル複合機等の定着装置を備えた電子写真方式の種々の画像形成装置に適用できる。定着装置のタイプや構造なども限定しない。
【符号の説明】
【0093】
1:画像形成装置 2:原稿読込部 3:書込部 4:作像部
5:転写部 6:圧版 7:給紙部 8:給紙ローラ 9:排紙ローラ対
10:搬送ローラ対 11Y、11M、11C、11BK:感光体ドラム
12:帯電部 13:現像部 14:クリーニング部 15:中間転写ベルト
16:中間転写ベルトクリーニング部
17a:ローラ(二次転写バックアップローラ) 18:二次転写ローラ
19:排紙トレイ 20:定着装置 21:定着ローラ(定着部材)
21a:芯金 21b:断熱弾性層 21c:スリーブ層
22:加圧ローラ(加圧部材) 23:ヒータ 25:誘導加熱部
26:コイル部(励磁コイル) 27:コア部(励磁コイルコア)
28:コイルガイド
【0094】
31:入口ガイド板 32:拍車ガイド板 33:分離ガイド板
34:出口ガイド板 35,36:サーミスタ(接触型温度検知センサ)
40:制御部 41:操作部 42:プリンタコントローラ
43:メモリ 50:通紙枚数カウンタ
201:コンタクトガラス 202:照明ランプ(光源) 203:ミラー群
204:レンズ 205:撮像素子(CCDカラーラインセンサ)
100:トナー像形成手段 200:定着装置 210:定着部材
220:加圧部材 230:温度検知手段 250:加熱手段
400:制御部 410:定着温度制御手段 420:先端部余白制御手段
500:通紙枚数計数手段 D:原稿 N:定着ニップ部 P:記録紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2005−173486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて記録媒体上に未定着トナー像を形成するトナー像形成手段と、
定着部材と、該定着部材に圧接して定着ニップ部を形成する加圧部材と、少なくとも前記定着部材を加熱する加熱手段と、少なくとも該定着部材の温度を検知する温度検知手段とを有し、前記未定着トナー像を形成した記録媒体を前記定着ニップ部を通過させることによって該記録媒体に前記未定着トナー像を定着させる定着装置と、
前記温度検知手段によって検知される温度が定着目標温度になるように前記加熱手段を制御する定着温度制御手段とを備えた画像形成装置において、
前記定着ニップ部を通過する記録媒体の通紙枚数を計数する通紙枚数計数手段と、
前記トナー像形成手段に対して、記録媒体の搬送方向の先端部に前記未定着トナー像を形成しない所定量の余白を設定し、前記通紙枚数計数手段によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上になると前記余白の余白量を増加させ、前記未定着トナー像を形成した記録媒体の該増加させた余白部分が前記定着ニップ部を通過する期間だけ、前記定着温度制御手段に対して前記定着目標温度を低下させる先端部余白制御手段と
を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記先端部余白制御手段は、前記通紙枚数計数手段によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、該通紙枚数に応じて段階的に前記余白の余白量を増加させ、該余白量の増加に応じて前記定着目標温度を低下させる温度を段階的に少なくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記先端部余白制御手段は、前記通紙枚数計数手段によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、前記余白の増加量及び前記定着目標温度を低下させる温度を前記記録媒体の厚さの情報に応じて変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記先端部余白制御手段は、前記記録媒体の厚さの増加に応じて、前記余白の増加量及び前記定着目標温度を低下させる温度を低減することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記先端部余白制御手段は、前記通紙枚数計数手段によって計数された通紙枚数が予め設定した閾値以上のとき、前記余白の余白量及び前記定着目標温度を自動的に変更する第1のモードと、操作部から変更が選択された場合に限り前記余白の余白量および前記定着目標温度を変更する第2のモードとを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記通紙枚数計数手段に代えて、記録媒体の累積搬送距離を計測する搬送距離計測手段を設け、
前記先端部余白制御手段は、前記通紙枚数計数手段によって計数される通紙枚数と前記閾値に代えて、前記搬送距離計測手段によって計測される記録媒体の累積搬送距離とその累積搬送距離に対する閾値を使用することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114213(P2013−114213A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262617(P2011−262617)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】