説明

画像形成装置

【課題】 複数の温度検知用素子を設ける構成としても、信号線の数を温度検知素子の数より少なくする。
【解決手段】 像形成部StY、StM、StC、StKと、定着ベルト1101およびセラミックヒータ1104と、このセラミックヒータ1104に設けられたサーミスタ1040bと、サーミスタ1040bの出力電圧Vmが目標電圧Vtとなるようにセラミックヒータ1104の加熱を制御するCPU521と、セラミックヒータ1104に設けられ、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cを有し、CPU521は並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsが基準電圧Vb以下となるとセラミックヒータ1104の加熱を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の定着ヒータの温度制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、原画像に応じて感光体を露光することで形成される静電潜像を、トナーを有する現像剤を用いて現像し、記録材上に転写することで、原画像に対応するトナー像を形成する。このトナー像を記録材に定着させるため、未定着のトナー像を担持した記録材は、定着器へと搬送される。
【0003】
定着器は、ヒータを内蔵した定着ローラに加圧ローラを圧接させることで形成される定着ニップ部に、未定着のトナー像を担持した記録材を通過させることにより、定着ニップ部の熱と圧力を用いて、未定着のトナー像を記録材に溶融定着する。ここで、定着器は、ヒータの温度を検知するサーミスタが設けられており、定着ニップ部の温度がトナー像を記録材に定着させる定着温度となるようにヒータへの電力供給が制御される。
【0004】
近年、A3サイズのコピー用紙から封筒まで、幅の異なる記録材にも画像を形成させたいというニーズがあり、記録材が搬送される方向(以降搬送方向と称す。)に直交する幅方向におけるヒータの複数箇所にそれぞれサーミスタを設けた定着器も存在する。これは、記録材の搬送方向に直交する幅方向におけるヒータの温度を複数のサーミスタで検知することによって、A3サイズのコピー用紙であっても封筒であっても、定着ニップ部の温度を定着温度に制御するためである。この定着器は、封筒等の小サイズ紙を連続して定着ニップ部へ通紙させた場合、定着ニップ部において小サイズ紙と接触しない定着ローラの領域の温度が、定着ローラを故障させてしまうような異常温度まで昇温される前にヒータの加熱を停止することができる。
【0005】
しかし、ヒータに複数のサーミスタを設ける場合、ヒータへの電力供給を制御する制御装置にサーミスタの数と同じ数だけ信号線を接続する必要があった。そこで、複数のサーミスタから出力されるヒータの温度に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換し、このサーミスタ毎のデジタル信号を、1本の信号線により、シリアル通信で制御装置に送信する構成が知られている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、サーミスタ毎に検知されるヒータの温度に応じたデジタル信号を、シリアル通信によって順次、制御装置に送信することで、この制御装置に入力される信号線の数をサーミスタの数よりも減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−170841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、シリアル通信を行うための新たな回路を設ける必要があり、ヒータの温度を検知する回路が複雑な構成となってしまうという問題があった。
【0008】
具体的には、サーミスタ毎の出力信号をサーミスタと関連付けて制御装置へ送信する構成や、制御装置に入力される信号がどのサーミスタからの信号であるかを特定する構成を設けなればならない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成でありながら熱源の温度を検知するセンサを複数設けても、各センサと制御回路とをつなぐ信号線の数をセンサの数よりも少なくすることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の画像形成装置は、トナー像を形成する像形成手段と、前記像形成手段により形成されるトナー像を記録材に定着させるために加熱する加熱部材と、それぞれ温度に応じて抵抗値が変化し、所定のサイズの記録材が前記加熱部材を通過する際に、前記記録材に接触する前記加熱部材の第1の位置、前記記録材に接触しない前記加熱部材の第2の位置及び前記第3の位置とにそれぞれ設けられる第1、第2、第3の温度検知素子と、前記第1の温度検知素子と第1の信号線で接続され、前記第1の温度検知素子から出力される電圧が目標温度に応じた第1の電圧となるように前記加熱部材の温度を制御する制御手段と、を有し、前記第2の温度検知素子と前記第3の温度検知素子とが並列に接続され、その接点と前記制御手段とが第2の信号線で接続され、前記制御手段は、前記接点の電圧が、前記目標温度よりも高い所定の温度に応じた第2の電圧になると、前記加熱部材の加熱を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成でありながら熱源の温度を検知するセンサの数を増加させても、このセンサからの信号線の数をセンサの数よりも少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の概略断面図
【図2】定着器の概略断面図とサーミスタの取り付け位置を示す図
【図3】第1の実施形態のサーミスタの温度特性図
【図4】第1の実施形態の制御ブロック図
【図5】第1の実施形態の定着ヒータの端部昇温した場合の信号値の変化を示す図
【図6】第1の実施形態のセラミックヒータの温調制御を示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態の画像形成装置100の概略断面図である。本実施形態では、各色成分のトナー像を形成する4つの像形成部StY、StM、StC、StKが1列に配列された画像形成装置を用いる。
【0014】
各像形成部は、StYがイエローのトナー像を形成し、StMがマゼンタのトナー像を形成し、StCがシアンのトナー像を形成し、StKがブラックのトナー像を形成する。
【0015】
各像形成部StY、StM、StC、StKは同様の構成であるため、以下ではイエローのトナー像を形成する像形成部StYについて説明し、他の像形成部StM、StC、StKについての説明を省略する。
【0016】
像形成部StYは、イエローの色成分のトナー像を担持する感光ドラム1Yと、この感光ドラム1Yを帯電する帯電器2Yと、感光ドラム1Yにイエローの色成分に対応した静電潜像を形成するため、感光ドラム1Yを露光する露光装置3Yを有している。さらに、像形成部StYは、感光ドラム1Y上に形成された静電潜像をトナーを有する現像剤を用いてトナー像として顕像化する現像器4Yと、感光ドラム1Y上のトナー像を後述の中間転写ベルト6に転写する一次転写ローラ7Yを有している。また、像形成部StYは、トナー像を転写した後に感光ドラム1Y上に残留したトナーを除去するドラムクリーナ8Yも有している。
【0017】
前述の中間転写ベルト6は、各像形成部StY、StM、StC、StKで形成された各色成分のトナー像が重ねて転写されることでフルカラーのトナー像を担持できる。また、中間転写ベルト6は、この中間転写ベルト6を回転駆動させる駆動ローラ13、および、従動ローラ14に掛け回されている。また、中間転写ベルト6の周囲には、この中間転写ベルト6上のトナー像を紙などの記録材Pへ転写するための二次転写ローラ9および二次転写対向ローラ12が配設されている。さらに、中間転写ベルト6から記録材Pへと転写されずに残留したトナーを除去するベルトクリーナ11が配設されている。
【0018】
また、画像形成装置100には、トナー像を担持した記録材Pに、このトナー像を定着させるための定着器10が設けられている。なお、定着器10の詳細については図2を用いて後述する。
【0019】
次に、本実施形態の画像形成装置100が、不図示の読取装置やPC等から入力される原画像に対応する印刷物を出力する画像形成動作について説明する。
【0020】
像形成部StYにおいて、先ず、帯電器2Yが感光ドラム1Yを一様に帯電し、露光装置3Yが感光ドラム1Yに原画像のイエロー成分に応じた露光光を照射することで、感光ドラム1Y上に原画像のイエロー成分に対応する静電潜像が形成される。次いで、感光ドラム1Y上の静電潜像は、現像器4Yがイエローのトナーを用いて、イエローのトナー像を現像する。
【0021】
感光ドラム1Y上のイエローのトナー像は、この感光ドラム1YのRy方向への回転に伴い、一次転写ローラ7Yが中間転写ベルト6を介して感光ドラム1Yを押圧する一次転写ニップ部へ搬送される。この一次転写ニップ部において、感光ドラム1Y上のイエローのトナー像は一次転写ローラ7Yから一次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト6上に転写される。また、感光ドラム1Yに残留したトナーは、ドラムクリーナ8Yによって除去される。
【0022】
中間転写ベルト6に転写されたトナー像は、二次転写ローラ9が中間転写ベルト6を介して二次転写対向ローラ12を押圧する二次転写ニップ部に搬送される。一方、記録材Pはタイミングを調整されて、中間転写ベルト6上のトナー像と接触するように二次転写ニップ部に搬送されると、二次転写電圧が印加された二次転写ローラ9により、中間転写ベルト6上のトナー像が記録材P上に転写される。また、二次転写ニップ部で記録材Pに転写されずに中間転写ベルト6に残留したトナーは、ベルトクリーナ11によって除去される。
【0023】
トナー像を担持した記録材Pは定着器10へと搬送され、後述の定着動作に未定着のトナー像を担持した記録材に熱と圧力を加えることより、未定着のトナー像を記録材に溶融定着される。
【0024】
次に、図2の定着器10概略断面図とサーミスタの取り付け位置を示す図に基づき、定着器10の構成について説明する。
【0025】
図2(a)は、定着器10の概略断面図である。定着ベルト1101は、耐熱性の高い円筒状のベルト状部材であり、その表面に弾性層を有する。この定着ベルト1101は、トナー像を定着する際の定着温度よりも高い所定の温度(例えば、300[℃])であっても熱変形しない。加圧ローラ1102は、芯金部1102aと弾性層のゴム部1102bから構成される。ヒータホルダ1103は耐熱性部材であり、加圧ローラ1102の軸線方向と平行な方向が長手方向となっている。また、ヒータホルダ1103の下面には、熱源としてのセラミックヒータ1104が装着されている。本実施形態において、定着ベルト1101とセラミックヒータ1104とは、加熱部材として機能する。
【0026】
ここで、図2(b)は、図2(a)の矢印S方向からセラミックヒータ1104を見た時の要部概略図である。セラミックヒータ1104は、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する場合、この記録材Pが搬送される方向に直交する方向が長手方向となる。また、セラミックヒータ1104は、その長手方向の長さを画像形成装置100が搬送可能な最大サイズの記録材の幅よりも長い。
【0027】
セラミックヒータ1104には、セラミックヒータ1104の温度を検出するためのサーミスタ1040a、1040b、1040cが、セラミックヒータ1104の長手方向の異なる位置に3つ設けられている。図2(b)のように、サーミスタ1040bは、セラミックヒータ1104の長手方向で中央の領域の温度を検知する。ここで、セラミックヒータ1104の長手方向で中央の領域は、加熱部材の第1の位置に相当する。サーミスタ1040aとサーミスタ1040cとは、図2(b)のように、セラミックヒータ1104の長手方向で、画像形成装置100が搬送可能な最大サイズの記録材の幅内で、且つ、搬送可能な最小サイズの記録材の幅よりも外側の領域の温度を検知する。ここで、画像形成装置100で搬送されることが許可されている最小サイズの記録材が所定のサイズの記録材に相当する。また、最小サイズの記録材の幅よりも外側の領域で、セラミックヒータ1104の一方の端部が第2の位置に相当し、この外側の領域で、セラミックヒータ1104の反対側の端部が第3の位置に相当する。
【0028】
本実施形態では、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cのいずれか一方が断線した場合であっても、他方のサーミスタによってセラミックヒータ1104が異常温度まで昇温される前に、このセラミックヒータ1104の加熱を停止させることができる。すなわち、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cとは、いずれか一方が断線した場合にも、他方のサーミスタがセラミックヒータ1104の異常昇温を検出して、セラミックヒータ1104への電力供給を遮断する予備のサーミスタとして機能する。
【0029】
図2(a)において、加圧ステー1106および加圧バネ1107は、ヒータホルダ1103を、定着ベルト1101を介して加圧ローラ1102の軸線方向に沿って一様な圧力で押圧することにより、定着ニップNを形成する。この定着ニップ部Nに記録材Pが搬送されると、記録材Pは、セラミックヒータ1104から加えられる熱と、加圧ステー1106および加圧バネ1107により加圧ローラ1102を介して加えられる圧力とにより、記録材P上の未定着のトナーが溶融定着される。また、図2(a)において、矢印Aは記録材の搬送方向、矢印Bは定着ベルト1101の回転方向、矢印Cは加圧ローラ1102の回転方向である。定着ベルト1101は、加圧ローラ1102の駆動に従動して回転することで、定着ニップ部Nにおいて記録材Pを矢印A方向へ搬送しながら、この記録材Pに未定着のトナーを定着させることができる。
【0030】
次に、サーミスタ1040bの温度に応じた抵抗値の変化(温度特性)を図3に基づき、説明する。
サーミスタ1040bは、セラミックヒータ1104が230[℃]となると、その抵抗値が4.7[kΩ]となり、セラミックヒータ1104が300[℃]となると、その抵抗値が2.0[kΩ]となる。つまり、サーミスタ1040bは、セラミックヒータ1104の温度が上昇すると抵抗値を減少させる温度特性を有する。ここで、本実施形態の定着ベルト1101は、セラミックヒータ1104の温度が230[℃]となると定着可能となり、セラミックヒータ1104の温度が300[℃]となると定着不良を発生し得る。なお、サーミスタ1040aの温度特性とサーミスタ1040cの温度特性は、サーミスタ1040bの温度特性と同じであるため、その説明を省略する。
【0031】
ここで、セラミックヒータ1104は、その温度が300[℃]を超えると、定着ニップ部Nに搬送される記録材Pに担持された未定着のトナーを定着ベルト1101に付着させてしまう。定着ベルト1101にこびりついたトナーは、後続の記録材が定着ニップ部Nを通過する際に、この記録材を汚してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、セラミックヒータ1104の温度が300[℃]となると、セラミックヒータ1104への電力供給が強制的に遮断され、セラミックヒータ1104の温度が300[℃]以上に昇温しない構成となっている。
【0032】
次に、本実施形態の回路構成について、図4の画像形成装置のブロック図に基づき説明する。
電圧ユニット404は、セラミックヒータ1104の電力供給のオンオフを切り替えるゲート制御式半導体スイッチ510と、セラミックヒータ1104への電力供給を遮断するためのリレー回路512およびトランジスタ511を有している。
【0033】
リレー回路512は、Relay信号Bがハイレベルの場合にオン状態となり、Relay信号Bがローレベルの場合にオフ状態となる。リレー回路512はオン状態となると、セラミックヒータ1104に電力が供給できる状態とし、リレー回路512がオフ状態となると、セラミックヒータ1104に電力が供給できない状態とする。
【0034】
ゲート制御式半導体スイッチ510は、Heater信号Bがハイレベルの場合にセラミックヒータ1104に電力を供給し、Heater信号Bがローレベルの場合に電力供給を停止する。ゲート制御式半導体スイッチ510は、リレー回路512がオン状態で、セラミックヒータ1104に電力を供給すると、セラミックヒータ1104が加熱する。また、ゲート制御式半導体スイッチ510は、リレー回路512がオン状態で、セラミックヒータ1104への電力供給を停止すると、セラミックヒータ1104の加熱が停止する。
【0035】
また、定着器10には、図2のセラミックヒータ1104と、このセラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度を検知するためのサーミスタ1040b、この長手方向で両端部の温度を検知するためのサーミスタ1040a、1040cが設けられている。なお、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cとが並列に接続されている。
【0036】
サーミスタ1040bは、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度に応じた出力電圧Vmを、独立した1本の信号線を介して後述のコントローラ403へ出力する。なお、サーミスタ1040bは第1の温度検知素子に相当し、サーミスタ1040bとコントローラ403とを接続する信号線は第1の信号線に相当する。
【0037】
また、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cは、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度に応じた出力電圧Vsを、1本の信号線を介して後述のコントローラ403へ出力する。なお、セラミックヒータ1104が一様な温度となった場合、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsは、サーミスタ1040bの出力電圧Vmの2倍となる。これは、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの見かけ上の抵抗値が、サーミスタ1040bの抵抗値の2分の1となるためである。なお、サーミスタ1040aは第2の温度検知素子に相当し、サーミスタ1040cは第3の温度検知素子に相当し、並列接続されたサーミスタ1040aおよびサーミスタ1040cの接点とコントローラ403とを接続する信号線は第2の信号線に相当する。
【0038】
また、コントローラ403は、画像形成装置全体を制御する制御回路であるCPU521を搭載した制御基板である。ROM700には、画像形成装置で実行する各種処理を制御するための制御プログラムが格納されている。また、RAM800は、CPU521が処理のために使用するシステムワークメモリである。像形成部StY、StM、StC、StKは図1において説明しているため、ここでの説明を省略する。インターフェース部600は、読取装置やPCから原画像に応じたプリント信号が入力されると、このプリント信号をCPU521に送信する。表示部900は、画像形成装置100に設けられた液晶画面であり、画像形成装置の状態をユーザに報知する。なお、CPU521によるセラミックヒータ1104の温調制御は、後述の図6で説明する。
【0039】
CPU521と安全回路525とには、プルアップ抵抗を用いて分圧された出力電圧Vm、Vsがそれぞれ入力される。
安全回路525は、コンパレータ522、523を有している。
【0040】
コンパレータ522は、サーミスタ1040bの出力電圧Vmが、基準電圧Va以下となると、ローレベルの信号を出力する。ここで、基準電圧Vaは、セラミックヒータ1104の温度が300[℃]のときのサーミスタ1040bの出力電圧である。
【0041】
コンパレータ523は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsが、基準電圧Vb以下となると、ローレベルの信号を出力する。ここで、基準電圧Vbは、セラミックヒータ1104の温度が300[℃]のときに、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧値である。
【0042】
また、AND回路524は、CPU521から出力されるHeater信号Aとコンパレータ522から出力される信号との両方がハイレベルであれば、ハイレベルのHeater信号Bを出力し、それ以外ならばローレベルのHeater信号Bを出力する。すなわち、AND回路524は、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が300[℃]以上となると、ローレベルのHeater信号Bを出力し、後述の電圧ユニット404によるセラミックヒータ1104への電力供給を停止させる。
【0043】
また、AND回路526は、CPU521から出力されるRelay信号Aとコンパレータ523から出力される信号との両方がハイレベルであれば、ハイレベルのRelay信号Bを出力し、それ以外ならばローレベルのRelay信号Bを出力する。すなわち、AND回路526は、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度が300[℃]以上となると、ローレベルのRelay信号Bを出力し、後述の電圧ユニット404によるセラミックヒータ1104への電力供給を禁止させる。
【0044】
次に、電圧ユニット404が、セラミックヒータ1104への電力供給を制御する方法を図5のタイミングチャートに基づいて説明する。
【0045】
時間Aにおいて、リレー回路512に入力されるRelay信号Bがハイレベルの状態で、ゲート制御式半導体スイッチ510はオン状態となると、セラミックヒータ1104への電力供給を行う。セラミックヒータ1104が加熱され、このセラミックヒータ1104の温度が上昇すると、サーミスタ1040a、1040b、1040cの抵抗値が下がるので、出力電圧Vmと出力電圧Vsとが低下する。次いで、時間Bにおいて、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下となると、ゲート制御式半導体スイッチ510はオフ状態となり、セラミックヒータ1104への電力供給を停止する。次いで、時間Cにおいて、出力電圧Vmが目標電圧Vtよりも高くなると、ゲート制御式半導体スイッチ510はオン状態となり、再びセラミックヒータ1104への電力供給を行う。時間C以降、ゲート制御式半導体スイッチ510は、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下となると、セラミックヒータ1104への電力供給を行い、出力電圧Vmが目標電圧Vtより高くなると、セラミックヒータ1104への電力供給を停止する。
【0046】
ここで、時間Dにおいて、セラミックヒータ1104が端部昇温を発生すると、出力電圧Vsが基準電圧Vb以下となり、コンパレータ523がローレベルのRelay信号Bを出力する。これにより、リレー回路512はオフ状態となり、セラミックヒータ1104への電力供給を遮断して、このセラミックヒータ1104の加熱を禁止する。なお、本実施形態では、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が230[℃]以下であるにも拘らず、この長手方向で両端部の温度が300[℃]以上となった場合を端部昇温と称している。
【0047】
次に、図6は、本実施形態の画像形成装置100が画像を形成する際のCPU521(図4)の動作を説明するフローチャートである。以下、本実施形態のセラミックヒータ1104の温調制御を図4のブロック図と、図6に表すフローチャートを用いて詳細に説明する。なお、図6のフローチャートの処理はCPU521がROM700に格納されたプログラムを読み出すことにより実行される。
【0048】
先ず、CPU521は、画像形成装置100の主電源がオンされると、ローレベルのHeater信号Aを出力し(S100)、ハイレベルのRelay信号Aを出力する(S101)。ステップS100において、ゲート制御式半導体スイッチ510にローレベルのHeater信号Aが入力されると、ゲート制御式半導体スイッチ510は、セラミックヒータ1104への電力供給をオフ状態とする。また、ステップS101において、トランジスタ511を介してリレー回路512にハイレベルのRelay信号Aが入力されると、リレー回路512は、セラミックヒータ1104への電力の供給が可能な状態とする。
【0049】
次いで、CPU521は、読取装置やPCからインターフェース部600を介してプリント信号が入力されるまで待機する(S102)。ステップS102において、プリント信号が入力されると、CPU521は、時間カウンタTに0をセットし(S103)、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高いか否かを判定する(S104)。ステップS104において、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高い場合、CPU521は、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度が300[℃]よりも低いと判定する。
【0050】
ステップS104において、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高い場合、CPU521は、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下であるか否かを判定する(S105)。ここで、目標電圧Vtは、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部に設けられたサーミスタ1040bが目標温度の230[℃]を検出したときに出力する電圧である。そのため、ステップS105において、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下となれば、CPU521は、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が230[℃]以上となったことを検知する。ステップS105において、目標電圧Vtは第1の電圧に相当する。
【0051】
ステップS105において、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下である場合、CPU521は、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高いか否かを判定する(S106)。ステップS106において、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高い場合、CPU521は、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度が300[℃]よりも低いと判定する。なお、ステップS104とステップS106において、基準電圧Vbは第2の電圧に相当する。
【0052】
ステップS106において、出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも高い場合、CPU521は、出力電圧Vmと出力電圧Vsとの差分がΔV以上であるか否かを判定する(S107)。ここで、本実施形態では、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cのいずれか一方が断線してしまうと、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度が230[℃]となったときの出力電圧Vsが、出力電圧Vmとほぼ同じ値となる。また、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cの両方が断線してしまうと、出力電圧Vsが、出力電圧Vmよりも高い値となる。そのため、ステップS107において、CPU521は、出力電圧Vmが出力電圧Vsよりも高く、且つ、出力電圧Vmと出力電圧Vsとの電圧差がΔV以上であれば、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cとが断線していないと判定する。
【0053】
ステップS107において、出力電圧Vmと出力電圧Vsとの電圧差がΔV以上ならば、CPU521は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cが断線してないと判定し、出力電圧Vmが基準電圧Va以下であるか否かを判定する(S108)。ステップS108において、出力電圧Vmが基準電圧Va以下であれば、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が300[℃]以上であるため、CPU521は、ローレベルのHeater信号Aを出力する(S109)。これにより、ゲート制御式半導体スイッチ510にローレベルのHeater信号Bが入力されると、ゲート制御式半導体スイッチ510がセラミックヒータ1104への電力供給をオフ状態とし、セラミックヒータ1104の加熱を停止させる。ステップS107において、電圧差ΔVは、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cが故障しているか否かを識別するための、閾値に相当する。
【0054】
次いで、CPU521は、前述の画像形成動作によって原画像に対応した画像を形成させ(S110)、画像形成すべき全ての画像を形成したか否かを判定する(S111)。ステップS111において、画像形成すべき全ての画像を形成している場合、CPU521は、ステップS100へ移行する。
【0055】
一方、ステップS111において、画像形成すべき全ての画像を形成していない場合、CPU521は、ステップS103へ移行し、次の画像の形成を行う。
【0056】
また、ステップS108において、出力電圧Vmが基準電圧Vaよりも高い場合、すなわち、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が300[℃]よりも低い場合、CPU521は、ステップS110へ移行する。
【0057】
ここで、ステップS104、又は、ステップS106において、出力電圧Vsが基準電圧Vb以下である場合について説明する。ステップS106において、出力電圧Vsが基準電圧Vb以下であれば、CPU521は、セラミックヒータ1104の長手方向で両端部の温度が300[℃]以上であると判定する。そのため、CPU521は、出力電圧Vsが基準電圧Vb以上であれば、ローレベルのHeater信号Aを出力し(S112)、ローレベルのRelay信号Aを出力する(S113)。ステップS112において、ゲート制御式半導体スイッチ510にローレベルのHeater信号Bが入力されると、ゲート制御式半導体スイッチ510がセラミックヒータ1104への電力供給をオフ状態とし、セラミックヒータ1104の加熱を停止させる。また、ステップS113において、トランジスタ511を介してリレー回路512にローレベルのRelay信号Bが入力されると、リレー回路512がオフ状態となり、セラミックヒータ1104への電力供給を禁止する。
【0058】
次いで、CPU521は、表示部900にセラミックヒータ1104の端部昇温を報知するための表示を行い(S114)、セラミックヒータ1104の電源制御を終了する。なお、ステップS104とステップS106において、基準電圧Vbは第2の電圧に相当する。CPU521は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsが基準電圧Vb以下となると、すなわち、第2の電圧以下となると、セラミックヒータ1104の加熱を停止している。なお、ステップS114において、表示部900は、セラミックヒータ1104の端部昇温を報知するための報知手段として機能する。
【0059】
次に、ステップS105において、出力電圧Vmが目標電圧Vtよりも高い場合について説明する。ステップS105において、出力電圧Vmが目標電圧Vtよりも高い場合、CPU521は、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部の温度が230[℃]よりも低いと判定し、ハイレベルのHeater信号Aを出力する(S115)。これにより、ゲート制御式半導体スイッチ510にハイレベルのHeater信号Bが入力されると、ゲート制御式半導体スイッチ510がセラミックヒータ1104への電力供給をオン状態とし、セラミックヒータ1104を加熱させる。次いで、CPU521は、時間カウンタTを1増加させ(S116)、時間カウンタTの値が1000よりも大きいか否かを判定する(S117)。ステップS117において、時間カウンタTの値が1000よりも小さければ、CPU521は、ステップS104へ移行する。
【0060】
本実施形態のセラミックヒータ1104は、その温度が0[℃]の状態で電力供給を開始されると、10[sec]で250[℃]まで加熱される。そのため、ステップS105において、出力電圧Vmが目標電圧Vtよりも高ければ、ステップS105からステップS115、ステップS116、ステップS117を経てステップS104までの処理が10[msec]毎に繰り返される。なお、ステップS117において、セラミックヒータ1104の加熱を開始してからサーミスタ1040bの断線を検出するまでの時間10[sec]は所定時間に相当する。ここで、ステップS117の時間カウンタTの値(本実施形態では1000)は、セラミックヒータ1104の温度が0[℃]の状態から電力供給を開始し、230[℃]まで加熱されるのに要する時間よりも長い時間となるように設定されていれば良い。
【0061】
一方、ステップS117において、時間カウンタTの値が1000よりも大きい場合、CPU521は、サーミスタ1040bが断線していると判定し、ローレベルのHeater信号Aを出力し(S118)、ローレベルのRelay信号Aを出力する(S119)。次いで、CPU521は、表示部900にサーミスタ1040bが断線していることを報知するための表示を行い(S120)、セラミックヒータ1104の電源制御を終了する。つまり、CPU521は、セラミックヒータ1104へ電力供給を開始してから10[sec]が経過するまでに、出力電圧Vmが目標電圧Vt以下とならなければ、すなわち、第1の電圧以下とならなければ、サーミスタ1040bが断線していると判定する。また、ステップS120において、表示部900は、サーミスタ1040bの断線を報知するための報知手段として機能する。
【0062】
ここで、ステップS107において、出力電圧Vmから出力電圧Vsを引き算した結果がΔVよりも小さい場合について説明する。ステップS107において、出力電圧Vmから出力電圧Vsを引き算した結果がΔVよりも小さい場合、CPU521は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cが断線したと判定し、ローレベルのHeater信号Aを出力する(S121)。次いで、CPU521は、ローレベルのRelay信号Aを出力し(S122)、表示部900にサーミスタ1040a、1040cの少なくとも一方が断線していることを報知するための表示を行い(S123)、セラミックヒータ1104の温調制御を終了する。ステップS123において、表示部900は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cが故障していることを報知するための報知手段として機能する。
【0063】
本実施形態では、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部に設けたサーミスタ1040bの出力電圧Vmと、この長手方向で両端部に設けたサーミスタ1040a、1040cが並列接続されたものの出力電圧VsとがCPU521に入力される構成とした。そのため、本実施形態は、サーミスタを複数設けた場合であっても、CPU521に入力される信号線の数をサーミスタの数よりも少ない数に抑制し、CPU521に入力される2つの出力電圧Vm、Vsに基づいて、セラミックヒータ1104の温調制御を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、サーミスタ1040bの出力電圧Vmと、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsとの電圧差がΔVよりも小さい場合、サーミスタ1040aと1040cの少なくとも一方が断線していることを検知できる。
【0065】
また、本実施形態は、端部昇温が発生している場合、CPU521がセラミックヒータ1104の温調制御を終了する構成としたが、この構成に限定されない。CPU521は、並列接続されたサーミスタ1040a、1040cの出力電圧Vsが基準電圧Vbよりも低くなった場合、出力電圧Vsが基準電圧Vb以上となるまで待機した後、画像形成を再開する構成としてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部にサーミスタ1040bを設け、この長手方向で両端部にサーミスタ1040a、1040cを設け、サーミスタ1040aとサーミスタ1040cとが並列接続される構成とした。しかしながら、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部に複数のサーミスタを設け、これらサーミスタを並列接続し、この長手方向で両端部に複数のサーミスタを設け、これらサーミスタを並列接続してもよい。この構成とする場合、セラミックヒータ1104の長手方向で中央部に設けられ、並列接続されるサーミスタの数が、この長手方向で両端部に設けられ、並列接続されるサーミスタの数よりも多くすればよい。なお、この構成とする場合、並列接続されるサーミスタの数と、その温度特性とに応じて、目標電圧Vt、基準電圧Va、基準電圧Vbがそれぞれ設定される。
【符号の説明】
【0067】
StY イエローの像形成部
StM マゼンタの像形成部
StC シアンの像形成部
StK ブラックの像形成部
1101 定着ベルト
1104 セラミックヒータ
1040a、1040b、1040c サーミスタ
521 CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成する像形成手段と、
前記像形成手段により形成されるトナー像を記録材に定着させるために加熱する加熱部材と、
それぞれ温度に応じて抵抗値が変化し、所定のサイズの記録材が前記加熱部材を通過する際に、前記記録材に接触する前記加熱部材の第1の位置、前記記録材に接触しない前記加熱部材の第2の位置および第3の位置にそれぞれ設けられる第1、第2、第3の温度検知素子と、
前記第1の温度検知素子と第1の信号線で接続され、前記第1の温度検知素子から出力される電圧が目標温度に応じた第1の電圧となるように前記加熱部材の温度を制御する制御手段と、を有し、前記第2の温度検知素子と前記第3の温度検知素子とが並列に接続され、その接点と前記制御手段とが第2の信号線で接続され、
前記制御手段は、前記接点の電圧が、前記目標温度よりも高い所定の温度に応じた第2の電圧になると、前記加熱部材の加熱を停止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の温度検知素子および前記第3の温度検知素子は温度が高くなると抵抗値が低下し、
前記制御手段は、前記接点の電圧が前記第2の電圧以下となると、前記加熱部材の加熱を停止する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第3の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の位置の反対側であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の温度検知素子は温度が高くなると抵抗値が低下し、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧よりも低いことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の温度検知素子は温度が高くなると抵抗値が低下し、
前記制御手段は、前記第1の温度検知素子から出力される電圧が前記第1の電圧となった状態で、前記第1の電圧と、前記接点の電圧との電圧差が閾値よりも小さい場合、前記加熱部材の加熱を禁止することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は更に、前記第1の温度検知素子から出力される電圧が前記第1の電圧となった状態で、前記第1の電圧と、前記接点の電圧との電圧差が閾値よりも小さい場合、前記第2の温度検知素子と前記第3の温度検知素子との少なくとも一方が断線したことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の温度検知素子は温度が高くなると抵抗値が低下し、
前記報知手段は、前記制御手段が前記加熱部材の加熱を開始してから所定時間が経過するまで、前記第1の温度検知素子から出力される電圧が前記第1の電圧以下とならなければ、前記第1の温度検知素子が断線したことを報知することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記所定のサイズは、前記画像形成装置で搬送されることが許可されている最も小さい記録材のサイズであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3382(P2013−3382A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135106(P2011−135106)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】