説明

画像形成装置

【課題】滴吐出状態を検出して回復動作を行うときの無駄な液体消費量が多くなる。
【解決手段】各ノズルに対応するPD(受光)部95からの検出出力(出力電圧V1)を取り込み、出力電圧Vと予め定めた正規の出力電圧V0との差分電圧ΔVを演算し、差分電圧ΔVが予め定めた閾値以上のノズルを異常吐出ノズルと判定して、当該差分電圧ΔVに対応する空吐出駆動波形を選択して当該異常吐出ノズルの圧力発生手段に与えて、当該異常吐出ノズルのみから空吐出滴を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に滴吐出状態検出装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置においては、記録ヘッドは、インクをノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良が発生すると、画像品質が低下することになる。
【0004】
そこで、ヘッドからの滴吐出状態を検出する滴吐出状態検出装置を備え、滴吐出が正常でないノズルが検出されたときには、記録ヘッドの回復動作を行うことが知られている(特許文献1)。この場合、滴体積或いは滴速度を測定するものが知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−118264号公報
【特許文献2】特開2005−280351号公報
【特許文献3】特開2006−110774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、記録ヘッドの維持回復動作としては、記録ヘッドのノズル面をキャップでキャッピングして、キャップに接続された吸引手段を駆動することにより、ノズルから強制的に液体を吸引排出させる吸引方式、記録ヘッドに供給側から液体を加圧供給することでノズルから強制的に液体を加圧排出させる加圧方式、及び、これらの吸引と加圧を組み合わせた方式などが採用されるが、いずれにしてもヘッドの回復動作を行うときには、画像形成に寄与しない液体消費を伴うことになる。
【0007】
そのため、滴吐出状態検出装置で吐出異常が検出されたときに行う回復動作では、吐出が正常なノズルからも液体が排出され、液体が無駄に消費されるという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、滴吐出不良に伴う回復動作における無駄な液体消費量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの各ノズルからの滴吐出状態を検出する滴吐出状態検出手段と、
画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作による回復動作を制御する回復制御手段と、を備え、
前記滴吐出状態検出手段は、前記滴吐出状態の検出結果と予め定めた閾値と比較して正常吐出か異常吐出かを判定し、
前記回復制御手段は、前記異常吐出と判定されたノズルに対応する圧力発生手段に対し、前記滴吐出状態の検出結果と前記閾値との差分に応じた空吐出駆動波形を出力して、当該前記異常吐出と判定されたノズルから空吐出滴を吐出させる制御をする
構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像形成装置によれば、滴吐出状態検出手段は、滴吐出状態の検出結果と予め定めた閾値と比較して正常吐出か異常吐出かを判定し、回復制御手段は、異常吐出と判定されたノズルに対応する圧力発生手段に対し、滴吐出状態の検出結果と閾値との差分に応じた空吐出駆動波形を出力して、当該異常吐出と判定されたノズルから空吐出滴を吐出させる制御をする構成としたので、滴吐出不良に伴う回復動作における無駄な液体消費量を低減するができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】同装置の模式的平面説明図である。
【図3】記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示すノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【図4】同じく図3のX−X線に沿うノズル配列方向の要部断面説明図である。
【図5】滴吐出状態検出装置の一例の説明に供する説明図である。
【図6】インクの乾燥度合いと滴体積との関係の一例を説明する説明図である。
【図7】滴吐出状態の一例の説明に供する説明図である。
【図8】図7の滴吐出状態における出力電圧(検出出力)の一例の説明に供する説明図である。
【図9】インクの乾燥度合いと滴速度との関係の一例を説明する説明図である。
【図10】滴吐出状態の一例の説明に供する説明図である。
【図11】図10の滴吐出状態における出力電圧(検出出力)の一例の説明に供する説明図である。
【図12】同画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図13】同制御部の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示すブロック説明図である。
【図14】同じくノズル欠損検知及び回復動作に関わる部分の説明に供するブロック説明図である。
【図15】滴速度と空吐出駆動波形の大きさ(入力波形倍率)との関係の一例を説明する説明図である。
【図16】本発明の第1実施形態における回復制御(空吐出制御)を説明するフロー図である。
【図17】本発明の第2実施形態における閾値設定処理を説明するフロー図である。
【図18】同じく滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を説明するフロー図である。
【図19】本発明の第3実施形態における回復制御(空吐出制御)を説明するフロー図である。
【図20】本発明の第4実施形態における閾値設定処理を説明するフロー図である。
【図21】同じく滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を説明するフロー図である。
【図22】本発明の第5実施形態の説明に供する説明図である。
【図23】空吐出駆動波形の一例の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
【0013】
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に移動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0014】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0015】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0016】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0017】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0019】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0020】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0021】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0022】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク99が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0023】
また、維持回復機構81と搬送ベルト51との間には、記録ヘッド34のノズルからの液滴吐出状態を検出する滴吐出状態検出手段(装置)90が配置され、所要のタイミングで滴吐出状態の検出が行われる。
【0024】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0025】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0026】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0027】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0028】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0029】
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図4は同じく図3のX−X線に沿うノズル配列方向の要部断面説明図である。
【0030】
この液体吐出ヘッドは、流路板(流路基板、液室基板)101と、この流路板101の下面に接合した振動板部材102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを有している。
【0031】
これらによって液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル104がそれぞれノズル連通路105を介して通じる個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)106、液室106にインクを供給する流体抵抗部を兼ねた供給路107、この供給路107を介して液室106と通じる連通部108を形成し、連通部108に振動板部材102に形成した供給口109を介して後述するフレーム部材117に形成した共通液室110からインクを供給する。
【0032】
流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。例えば、SUS基板に酸性エッチング液でエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工をすることで形成することもできる。流路板101の液室106の間は液室間隔壁106Aとなる。
【0033】
振動板部材102は、第1層102Aと第2層102Bとで形成されて、第1層102Aで薄肉部を形成し、第1層102A及び第2層102Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材102は、各液室106に対応してその壁面を形成する第1層102Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)102aを有し、この振動領域102aの中に、面外側(液室106と反対面側)に第1層102A及び第2層102Bの厚肉部で形成された島状凸部102bが設けられ、この島状凸部102bに振動領域102aを変形(変位)させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ100を配置している。
【0034】
この圧電アクチュエータ100は、ベース部材113上に接着剤接合した2つの積層型圧電部材112を有し、圧電部材112にはハーフカットダイシングによって溝を加工して1つの圧電部材112に対して所要数の圧電柱112A、112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。なお、圧電部材112の圧電柱112A、112Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動柱112A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動柱112Bとして区別している。
【0035】
そして、駆動柱112Aの上端面(接合面)を振動板部材102の島状凸部102bに接合している。
【0036】
ここで、圧電部材112は、圧電材料層121と内部電極122A、122Bとを交互に積層したものであり、内部電極122A、122Bをそれぞれ端面、即ち圧電部材112の振動板部材102に略垂直な側面に引き出して、この側面に形成された端面電極(外部電極)123、124に接続し、端面電極(外部電極)123、124間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。外部電極123を個別外部電極(個別電極)とし、外部電極124を共通外部電極(共通電極)として使用する。
【0037】
また、圧電部材112には駆動柱112Aに駆動信号を与えるための可撓性を有する配線部材としてのFPC115が接続されている。FPC115には、図示しないが駆動柱112Aに駆動波形を与えるドライバIC(駆動回路)が搭載されている。
【0038】
ノズル板103は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で形成しているが、ステンレスなどの金属、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂、シリコン及びそれらの組み合わせからなるものなども用いることができる。このノズル板103には各液室106に対応して直径10〜35μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。そして、このノズル板103の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室106側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0039】
さらに、これらの圧電部材112、ベース部材であるベース部材113及びFPC115などで構成される圧電アクチュエータ100の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材117を接合している。そして、このフレーム部材117には前述した共通液室110を形成し、更に共通液室110に外部からインクを供給するための図示しない供給口を形成している。
【0040】
このように構成した液体吐出ヘッドヘッドにおいては、記録する画像に応じて駆動柱112Aに印加する電圧を基準電位Veから下げることによって、駆動柱112Aが収縮し、振動板部材102の振動領域102aが下降して液室106の体積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後駆動柱112Aに印加する電圧を上げて駆動柱112Aを積層方向に伸張させ、振動板部材102の振動領域102aをノズル板103方向に変形させることで、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴が吐出される。
【0041】
そして、駆動柱112Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材102の振動領域102aが初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0042】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0043】
次に、滴吐出状態検出装置90の一例について図5を参照して説明する。なお、図5は同装置の説明に供する説明図である。
【0044】
この滴吐出状態検出装置90は、レーザーダイオード91から照射された光をコリメートレンズ92を通して集光してレーザー光93として射出し、レーザー光93が液滴201で散乱されて生じる散乱光94をフォトダイオード95で受光して電圧に変換して出力する。そして、この出力電圧を予め定めた閾値と比較することによって当該液滴を吐出するノズルが正常であるか異常であるかを判定(検出)する。
【0045】
例えば、ノズル内のインクの乾燥度合いと吐出される液滴の滴体積の関係は、図6に示すように、乾燥度合いが高くなるに従って滴体積が小さく関係にある。
【0046】
そこで、図7に示すように、記録ヘッド34の各ノズル104から順次液滴201を吐出するとき、例えば、同図で左から6番目のノズル104について吐出された液滴202の滴体積が所定体積より少ないとする。
【0047】
このとき、当該ノズル104からの液滴202を検出したときのフォトダイオード95の出力電圧(滴検出出力)V1は図8に実線で示すようになる。つまり、図8に破線で示す正常吐出状態であるとき(正規)の出力電圧V0に対し、当該液滴202を検出した時の出力電圧V1は差分電圧ΔVだけ低くなる。
【0048】
ここで、正規の出力電圧V0に対する実際の出力電圧V1との差分電圧ΔVは、滴体積に対応したものになり、滴体積が所定の滴体積よりも小さくなると電圧ΔVも大きくなる。
【0049】
そこで、例えば、実際の出力電圧V1と正規の出力電圧V0との差分電圧ΔVを、許容される滴体積の変動範囲に基づいて予め定めた値(閾値)と比較して、閾値以上であるときには、当該液滴を吐出したノズルを異常吐出と判定し、閾値未満であるときには正常吐出と判定することができる。
【0050】
また、例えばノズル内のインクの乾燥度合いと吐出される滴速度の関係は、図9に示すように、乾燥度合いが高くなるに従って滴速度が遅くなる関係にある。
【0051】
そこで、図10に示すように、記録ヘッド34の各ノズル104から順次液滴201を吐出するとき、例えば、同図で左から6番目のノズル104について吐出された液滴203の滴速度が所定滴速度より少ないとする。
【0052】
このとき、当該ノズル104からの液滴203を検出したときのフォトダイオード95の出力電圧(滴検出出力)は図11に実線で示すようになる。つまり、図11に破線で示す正常吐出状態であるときの隣り合う検出出力の検出間隔である正規の検出間隔t0に対し、当該液滴203を検出するまでの検出間隔t1は差分時間Δtだけ遅くなる。
【0053】
ここで、正規の検出間隔t0に対する実際の検出間隔t1との差分時間Δtは、滴速度に対応したものになり、滴速度が所定の滴速度よりも遅くなると差分時間Δtも大きくなる。
【0054】
そこで、例えば、実際の検出間隔t1と正規の検出間隔t0との差分時間Δtを、許容される滴速度の範囲に基づいて予め定めた値(閾値)と比較して、閾値以上であるときには、当該液滴を吐出したノズルを異常吐出と判定し、閾値未満であるときには正常吐出と判定することができる。
【0055】
なお、滴吐出状態検出装置90の構成はこれに限るものではない。また、不吐出ノズルは、ユーザーの長期使用によって紙紛などに代表される異物がノズル外部から詰まったり、インク内に含まれる突発的な異物により内部から詰まったりする場合がある。
【0056】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図12を参照して説明する。なお、図12は同制御部の全体ブロック説明図である。
【0057】
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行する本発明に係る空吐出動作などの回復制御を処理するプログラムなどの各種プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0058】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の吸引ポンプ812及び詳細は省略するがキャップ82等を昇降させるキャップ昇降機構820を作動する維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511とを備えている。
【0059】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0060】
また、この制御部500には、滴吐出状態検出装置90からの滴吐出状態検出信号が入力されている。制御部500は、滴吐出状態の検出を行うときには、キャリッジ33を移動走査して記録ヘッド34を滴吐出状態検出装置90による検出位置まで移動させ、記録ヘッド34の各ノズル104から順次液滴を吐出させて滴吐出状態検出装置90による滴吐出状態の検出を行わせ、検出結果に応じて、記録ヘッド34のノズル104の回復動作としての空吐出動作を制御する。
【0061】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0062】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0063】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0064】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0065】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0066】
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図13を参照して説明する。
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702と、空吐出用の駆動波形を生成して出力する空吐出駆動波形生成部703とを備えている。
【0067】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ209のスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき駆動パルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0068】
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ716とを備えている。
【0069】
このアナログスイッチ716は、各駆動柱112Aの選択電極(個別電極)123に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号MN0〜MN3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動パルス及び波形要素が通過して(選択されて)圧力発生手段である駆動柱112Aに印加される。
【0070】
空吐出駆動波形生成部703は、空吐出動作を行うときに、空吐出駆動波形を生成してアナログスイッチ715に出力する。なお、駆動波形生成部701からの共通駆動波形と空吐出駆動波形生成部703からの空吐出駆動波形とは、選択的に生成され、あるいは、選択的にアナログスイッチ715に入力される。
【0071】
次に、この制御部における滴吐出状態の検出と空吐出制御にかかる部分の詳細について図14のブロック説明図を参照して説明する。
【0072】
ノズル欠損検知部801は、液滴検知制御部802と、液滴異常演算部803とを有し、異常吐出ノズルの判定を行う。
【0073】
液滴検知制御部802は、I/F804を介して、発光部91を駆動制御して前述したようにレーザー光を射出させ、受光部95からの受光出力を入力し、液滴異常演算部803に与える。
【0074】
液滴異常演算部803は、液滴検知制御部802からの受光出力を受け取り、前述したように滴体積に対応する差分電圧ΔVあるいは滴速度に対応する差分時間Δtを演算して、液滴検知制御部802に演算した差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtを与える。そして、液滴検知制御部802の判定手段を構成する部分で、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtと予め定めた閾値とを比較して正常吐出か異常吐出かを判定する。
【0075】
また、液滴検知制御部802は、異常吐出と判定したときに、液滴異常演算部803を通じて当該異常判定したときの差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtを入力波形選択部805に出力させる。
【0076】
入力波形選択部805は、液滴検知制御部802が異常吐出と判定したときの滴体積に対応する差分電圧ΔVあるいは滴速度に対応する差分時間Δtに応じて予め定めた空吐出用の駆動波形(入力波形)を選択してヘッド制御部806に与える。
【0077】
ヘッド制御部806は、入力波形選択部804で選択された駆動波形(入力波形)をヘッドドライバ509を通じて、記録ヘッド34の異常吐出と判定されたノズルの圧力発生手段に印加させて、当該ノズルから画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を吐出させる。
【0078】
ここで、差分電圧ΔV或いは差分時間Δtは、前述したように、ノズル内のインクの乾燥度合いに応じて変化するので、差分電圧ΔV或いは差分時間Δtの大きさを「異常度合い」とするとき、図15に示すように、異常度合いが大きくなるに従ってノズルの圧力発生手段に与える駆動波形(入力波形)の倍率(%)を高くするように設定して、例えばより大きな電位の駆動波形を与え、或いは、吐出させる滴数を多くするようにしている。
【0079】
また、空吐出用の入力波形の選択は、例えば、前述した空吐出駆動波形生成部703に予め差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに対応する複数の空吐出駆動信号を含む空吐出駆動波形データを格納しておき、データ転送部702から液滴異常演算部803からの差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtのデータに対応する駆動波形を選択する滴制御信号を出力させて、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに対応する駆動波形をヘッドドライバ509に与えるようにすることができる。
【0080】
あるいは、前述した空吐出駆動波形生成部703に予め差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに対応する複数の空吐出駆動波形データを格納しておき、液滴異常演算部803からの差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtのデータに対応する空吐出駆動データを選択的に出力させるようにすることもできる。
【0081】
あるいは、前述した空吐出駆動波形生成部703に基準となる空吐出駆動波形データと、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに対応する倍率とを格納しておき、液滴異常演算部803からの差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに応じた倍率を選択して基準となる空吐出駆動波形データを補正して出力するようにすることもできる。例えば、基本の空吐出駆動波形データに150%の倍率を乗じた空吐出駆動波形を異常吐出のノズルに与える。
【0082】
次に、本発明の第1実施形態における回復制御(空吐出制御)について図16のフロー図を参照して説明する。
【0083】
まず、所定のタイミングで滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、すべてのノズルから液滴を吐出させて各ノズルに対応するPD(受光部)95からの検出出力(出力電圧V1)を取り込む。
【0084】
そして、検出した出力電圧Vと正常吐出状態に対応する予め定めた正規の出力電圧V0との差分電圧ΔVを演算する。すべてのノズルについて差分電圧ΔVの演算が終了したときには、差分電圧ΔVが予め定めた閾値以上のノズルがあるか否かを判別する。つまり、ここでは、差分電圧ΔVが閾値以上であるノズルを異常吐出ノズルと判定する。
【0085】
このとき、差分電圧ΔVが閾値以上の異常吐出ノズルがあれば、当該差分電圧ΔVに対応する空吐出駆動波形を選択して当該異常吐出ノズルの圧力発生手段に与えて、当該異常吐出ノズルのみから空吐出滴を吐出させる。なお、空吐出駆動波形の選択とは、前述した各例のいずれであってもよい。
【0086】
このように、滴吐出状態の検出結果と閾値と比較して正常吐出か異常吐出かを判定し、異常吐出と判定されたノズルに対応する圧力発生手段に対し、差分に応じた空吐出駆動波形を出力して、当該異常吐出と判定されたノズルから空吐出滴を吐出させる制御をする構成とすることで、滴吐出不良に伴う回復動作における無駄な液体消費量を低減するができる。
【0087】
次に、本発明の第2実施形態について図17及び図18を参照して説明する。なお、図17は同実施形態における閾値設定処理を説明するフロー図、図18は同じく滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を説明するフロー図である。
【0088】
本実施系形態では、滴吐出状態検出装置90による滴吐出状態の検出結果と比較する閾値として初期状態における滴吐出状態検出動作で得られる検出結果を使用するようにしている。
【0089】
すなわち、画像形成装置の使用を開始するとき、記録ヘッド34やヘッドタンク35に液体を充填する初期充填動作を行う。そこで、図17を参照して、初期充填動作完了後、初期状態における滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、PD(受光)部95からの検出出力を取り込んで、すべてのノズルについて検出動作が終了したときには、各ノズルについて出力電圧を閾値となる出力電圧V0として不揮発性メモリ504などに記録(記憶)する。
【0090】
次に、図18を参照して、所定のタイミングで滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、PD(受光部)95からの検出出力を取り込んで、各ノズルについて出力電圧V1を演算する。
【0091】
そして、検出した出力電圧V1と前記記録している出力電圧V0とを比較し、V0≧V1のノズルがあるか否かを判別する。つまり、記録している出力電圧V0を閾値として検出した出力電圧V1と比較し、V0≧V1のノズルについては異常吐出ノズルと判定する。
【0092】
そして、V0≧V1のノズル(異常吐出ノズル)があるときには、(V0−V1)の差分電圧ΔVを演算し、当該差分電圧ΔVに対応する空吐出駆動波形を選択して当該異常吐出ノズルの圧力発生手段に与えて、当該異常吐出ノズルのみから空吐出滴を吐出させる。なお、空吐出駆動波形の選択とは、前述した各例のいずれであってもよい。
【0093】
つまり、前述したように、維持回復動作を行うとき、ワイパ部材84によって記録ヘッド34のノズル面を払拭するが、拭き残しによって、ノズル面は記録を重ねる毎に経時劣化するおそれがある。この経時劣化が起こると、ヘッドのノズル面にメニスカスを形成できなくなり、吐出不良に繋がる場合がある。これを判定するために、初期状態の出力電圧V0を閾値として検出した出力電圧V1と比較することで、経時劣化による吐出異常の判定を行うことができる。
【0094】
次に、本発明の第3実施形態における回復制御(空吐出制御)について図19のフロー図を参照して説明する。
【0095】
まず、所定のタイミングで滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、すべてのノズルから液滴を吐出させてPD(受光部)95からの検出出力(出力電圧)を取り込む。
【0096】
その後、隣接する液滴の出力電圧の検出間隔t1と正常吐出状態に対応する正規の検出間隔t0との差分時間Δtを演算する。すべてのノズルについて差分時間Δtの演算が終了したときには、差分時間Δtが予め定めた閾値以上のノズルがあるか否かを判別する。つまり、ここでは、差分時間Δtが閾値以上であるノズルを異常吐出ノズルと判定する。
【0097】
このとき、差分時間Δtが閾値以上の異常吐出ノズルがあれば、当該差分時間Δtに対応する空吐出駆動波形を選択して当該異常吐出ノズルの圧力発生手段に与えて、当該異常吐出ノズルのみから空吐出滴を吐出させる。なお、空吐出駆動波形の選択とは、前述した各例のいずれであってもよい。
【0098】
このように、滴吐出状態の検出結果と閾値と比較して正常吐出か異常吐出かを判定し、異常吐出と判定されたノズルに対応する圧力発生手段に対し、差分に応じた空吐出駆動波形を出力して、当該異常吐出と判定されたノズルから空吐出滴を吐出させる制御をする構成とすることで、滴吐出不良に伴う回復動作における無駄な液体消費量を低減するができる。
【0099】
次に、本発明の第4実施形態について図20及び図21を参照して説明する。なお、図20は同実施形態における閾値設定処理を説明するフロー図、図21は同じく滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を説明するフロー図である。
【0100】
本実施系形態では、滴吐出状態検出装置90による滴吐出状態の検出結果と比較する閾値として初期状態における滴吐出状態検出動作で得られる検出結果を使用するようにしている。
【0101】
すなわち、画像形成装置の使用を開始するとき、記録ヘッド34やヘッドタンク35に液体を充填する初期充填動作を行う。そこで、図20を参照して、初期充填動作完了後、初期状態における滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、PD(受光)部95からの検出出力を取り込んで、すべてのノズルについて検出動作が終了したときには、各ノズルについて隣り合うノズルとの検出間隔t0を不揮発性メモリ504などに記録(記憶)する。
【0102】
次に、図21を参照して、所定のタイミングで滴吐出状態検出処理(ノズル欠損検知動作)を開始し、PD(受光部)95からの検出出力を取り込んで、各ノズルについて検出間隔t1を演算する。
【0103】
そして、検出した検出間隔t1と前記記録している初期状態の検出間隔t0とを比較し、t1>t0のノズルがあるか否かを判別する。つまり、記録している初期状態の検出間隔t0を閾値として検出した検出間隔t1と比較し、t1>t0のノズルについては異常吐出ノズルと判定する。
【0104】
そして、t1>t0のノズル(異常吐出ノズル)があるときには、(t1−t0)の差分時間Δtを演算し、当該差分時間Δtに対応する空吐出駆動波形を選択して当該異常吐出ノズルの圧力発生手段に与えて、当該異常吐出ノズルのみから空吐出滴を吐出させる。なお、空吐出駆動波形の選択とは、前述した各例のいずれであってもよい。
【0105】
つまり、前述したように、維持回復動作を行うとき、ワイパ部材84によって記録ヘッド34のノズル面を払拭するが、拭き残しによって、ノズル面は記録を重ねる毎に経時劣化するおそれがある。この経時劣化が起こると、ヘッドのノズル面にメニスカスを形成できなくなり、吐出不良に繋がる場合がある。これを判定するために、初期状態の検出間隔t0を閾値として検出した検出間隔t1と比較することで、経時劣化による吐出異常の判定を行うことができる。
【0106】
次に、本発明の第5実施形態について図22を参照して説明する。なお、図22は同実施形態の説明に供する説明図である。
【0107】
本実施形態では、異常度合い差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに応じて、空吐出する空吐出滴の滴数を変更している。すなわち、前述したように、乾燥度合いが大きいほど、ノズル欠損検知時の滴体積が減少し、あるいは滴速度が低下するので、図21に示すように、異常度合いが大きくなるほど(滴体積が少ないほどあるいは滴速度が遅いほど)、空吐出の滴数を多く設定する。
【0108】
これにより、異常吐出ノズルの回復性を向上させることができる。
【0109】
ここで、空吐出駆動波形の一例について図23を参照して説明する。
この空吐出駆動波形は、液滴を吐出させないでノズル近傍のインクを振動させる微駆動パルス(駆動信号)P1と、3種類の空吐出パルス(駆動信号)P2ないしP4を1駆動周期内で生成出力している。空吐出パルスP2ないしP4は、順次電位が高くなるパルスであって、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtに応じて、例えば差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtが小さいときには空吐出パルスP2を選択して圧力発生手段に与え、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtが長くなるに従って空吐出パルスP3、P4を選択して圧力発生手段に与える。
【0110】
また、差分電圧ΔVあるいは差分時間Δtが長くなったときには、空吐出パルスP2ないしP4のうちの複数の空吐出パルスを選択する(滴数を多くする)ようにすることもできる。
【0111】
また、正常吐出と判定されたノズルについては、微駆動パルスP1を印加してノズル状態を良好に維持することができる。
【0112】
以上の回復制御や滴吐出状態検出処理など、本発明に係る処理は、ROM502に格納されている本発明に係るプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。また、上記処理は、情報処理装置(ホスト600)側のプリンタドライバで行う構成とすることもできる。さらに、本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。
【0113】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0114】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0115】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0116】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0117】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0118】
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
90 滴吐出状態検出装置
104 ノズル
106 液室
112 圧電部材(圧力発生手段)
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)
801 ノズル欠損検知部
802 液滴検知制御部
803 液滴異常演算部
805 入力波形選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの各ノズルからの滴吐出状態を検出する滴吐出状態検出手段と、
画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作による回復動作を制御する回復制御手段と、を備え、
前記滴吐出状態検出手段は、前記滴吐出状態の検出結果と予め定めた閾値と比較して正常吐出か異常吐出かを判定し、
前記回復制御手段は、前記異常吐出と判定されたノズルに対応する圧力発生手段に対し、前記滴吐出状態の検出結果と前記閾値との差分に応じた空吐出駆動波形を出力して、当該前記異常吐出と判定されたノズルから空吐出滴を吐出させる制御をする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記滴吐出状態検出手段は、吐出された液滴の滴体積を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前回以前の滴吐出状態検出動作における前記滴体積の検出結果を前記閾値とすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記滴吐出状態検出手段は、吐出された液滴の滴速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前回以前の滴吐出状態検出動作における前記滴速度の検出結果を前記閾値とすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記空吐出動作では、前記差分に応じて吐出させる滴数を異ならせることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回復動作では、滴吐出が異常と判定されたノズルについてのみ前記空吐出動作を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−35138(P2013−35138A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170489(P2011−170489)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】