説明

画像形成装置

【課題】押圧力調整部材と離間部材を備える画像形成装置において、現像ユニットをスムーズに動かして白抜けを抑えることを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、感光体(感光ドラム61)を支持する感光体フレームと、現像ローラを支持する現像フレームを備える現像ユニットと、現像ローラを感光体に圧接するように現像ユニットを押圧する押圧部材と、被当接部材(感光ドラム61)に当接することで、押圧部材による押圧力よりも小さい押圧力で、現像ユニットを押圧部材の押圧力に抗して押圧する押圧力調整部材200と、感光体から現像ローラを離間させる離間部材を備える。そして、離間部材および押圧力調整部材は、離間部材によって現像ローラ110を感光体から離間させるときに、感光体に対する現像ローラ110の移動量L1が押圧力調整部材200の移動量L2よりも大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体から現像ローラを離間させる離間部材を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光ドラムを支持するフレームと、感光ドラムにトナーを供給する現像ローラを有し、かつ、フレームに着脱可能な現像ユニットと、現像ユニットを感光ドラムに向けて押圧する押圧部材と、感光ドラムから現像ローラを離間させるために押圧部材の押圧力に抗して現像ユニットを押圧する離間部材とを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、押圧部材の押圧力によって、所定のニップ圧で現像ローラが感光ドラムに圧接されるとともに、感光ドラムと押圧部材との間で現像ユニットが保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−210631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した構成では、感光ドラムと押圧部材との間で現像ユニットがぐらつかないように押圧部材の押圧力を高めると、感光ドラムと現像ローラ間のニップ圧が高くなってしまうという問題があった。これに対し、本願発明者は、現像ユニットに移動可能に設けた押圧力調整部材を感光ドラムに向けて押圧し、その反力で現像ユニットを押圧部材側に押圧することで、感光ドラムと押圧部材間の挟持力を高めつつ、ニップ圧を一定にする構造を採用することを考えている。
【0005】
具体的に、押圧力調整部材としては、現像ローラよりも感光ドラム側に突出した位置と、現像ローラの表面と面一となる位置との間で移動する構造を考えている。しかしながら、この構造において、現像ローラを感光ドラムから離間部材で離間させたときに押圧力調整部材が感光ドラムに接触したままであると、この離間状態から再び現像ローラを感光ドラムに接触させる際に、押圧力調整部材の押圧部材に抗して作用する押圧力によって現像ユニットがスムーズに動かなくなるおそれがある。そして、このように現像ユニットがスムーズに動かないことにより装置内で傾いたりすると、現像ローラが感光ドラムにバランスよく圧接されず、白抜け(現像ローラのトナーの一部が感光ドラムに移らない現象)が発生するといった問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、押圧力調整部材と離間部材を備える画像形成装置において、現像ユニットをスムーズに動かして白抜けを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、感光体を支持する感光体フレームと、現像ローラを支持する現像フレームを備える現像ユニットと、前記現像ローラを前記感光体に圧接するように前記現像ユニットを押圧する押圧部材と、前記感光体フレームおよび前記現像フレームの一方に移動可能に設けられ、他方のフレームに設けられる被当接部材に当接することで、前記押圧部材による押圧力よりも小さい押圧力で、前記現像ユニットを前記押圧部材の押圧力に抗して押圧する押圧力調整部材と、前記押圧部材の押圧力に抗して、前記感光体から前記現像ローラを離間させるように、前記現像ユニットに作用する離間部材と、を備える。
そして、前記離間部材および前記押圧力調整部材は、前記離間部材によって前記現像ローラを前記感光体から離間させるときに、前記感光体に対する前記現像ローラの移動量が前記押圧力調整部材の移動量よりも大きくなるように構成されている。
【0008】
この構成によれば、離間部材によって現像ローラを離間するときに押圧力調整部材が移動しても、現像ローラの移動量が押圧力調整部材の移動量よりも大きいので、押圧力調整部材を被当接部材から確実に離すことができる。そのため、現像ユニットを離間状態から接触状態に戻し始めるときに、現像ユニットの移動が押圧力調整部材の押圧部材に抗して作用する押圧力で妨げられないので、現像ユニットをスムーズに動かして現像ローラを感光体にバランスよく圧接させることができ、その結果白抜けを抑えることができる。
【0009】
また、前記した構成において、前記押圧力調整部材は、前記現像ローラの移動方向と同じ方向に移動するのが望ましい。
【0010】
これによれば、押圧力調整部材と現像ローラの移動方向が同じなので、押圧力調整部材と現像ローラの移動方向が異なる構造に比べ、押圧力調整部材を被当接部材から離間させるための現像ローラの移動量を少なくすることができる。
【0011】
また、前記した構成において、前記被当接部材は、前記感光体であり、前記押圧力調整部材は、前記感光体の外周面に接触し、前記現像フレームに移動可能に設けられる接触部材と、前記接触部材と前記現像ローラまたは前記現像フレームとの間に配置され、前記現像ローラを前記押圧部材の押圧力に抗して付勢する付勢部材とを備えるのが望ましい。
【0012】
これによれば、感光体に接触する接触部材の形状を自由に決められるので(例えば現像ローラの外周形状と同じ)、付勢部材を直接感光体に接触させる形態よりも、感光体をスムーズに回転させることが可能となる。また、被当接部材を感光体とすることで、感光体以外の部材を被当接部とする場合に比べて押圧力調整部材が直接感光体に当接するので、感光体に対する現像ローラの押圧力を精度良く調整することができる。
【0013】
また、前記した構成において、前記現像フレームに、前記現像ローラの回転軸を回転可能に支持する軸受部材を設け、前記付勢部材を、前記接触部材と前記軸受部材との間に配置するのが望ましい。
【0014】
これによれば、付勢部材で現像ローラの回転軸を直接押圧する形態に比べ、現像ローラの回転軸との摺接による付勢部材の磨耗を抑えることができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記接触部材が、前記現像フレームが前記感光体フレームに組み付けられる前の状態において、前記現像ローラよりも径方向外側に突出しているのが望ましい。
【0016】
これによれば、感光体フレームから現像フレームを外した状態において接触部材が現像ローラと面一となる形態に比べ、接触部材のストロークを大きくすることができるので、付勢部材の変形量を大きくすることができ、押圧力調整部材から発生する押圧力を安定させることができる。
【0017】
また、前記した構成において、前記接触部材が、前記現像ローラの回転軸が係合する孔または溝を有し、前記孔または前記溝が、前記現像ローラの回転軸に接触するとともに、前記接触部材の移動方向に沿って延びるように形成されているのが望ましい。
【0018】
これによれば、接触部材が移動する際に、孔または溝の内面が現像ローラの回転軸で常に支持されるので、接触部材を安定して移動させることができる。
【0019】
また、前記した構成において、前記接触部材は、前記現像フレームに回動可能に支持されているのが望ましい。
【0020】
これによれば、接触部材を直線方向にスライドする構成(接触部材をガイドするガイド面が小さく、接触部材がスライド中に傾いてガイド面に引っ掛かり易い構造)に比べ、接触部材を滑らかに動作させることができる。
【0021】
また、前記した構成において、前記押圧力調整部材は、前記現像ローラの軸方向における両端部に設けられているのが望ましい。
【0022】
これによれば、感光体に対する現像ローラの押圧力を軸方向においてバランスよく適正化することができる。
【0023】
また、前記した構成において、前記押圧部材は、前記感光体フレームの前記現像ローラの軸方向における両端側に設けられているのが望ましい。
【0024】
これによれば、軸方向における現像ローラの押圧力の偏りを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、押圧力調整部材と離間部材を備える画像形成装置において、現像ユニットをスムーズに動かして白抜けを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係るカラープリンタの全体構成を示す説明図である。
【図2】プロセスカートリッジの構造の詳細を示す斜視図である。
【図3】感光ドラム、現像カートリッジ、押圧部材および離間部材を示す側面図である。
【図4】押圧力調整部材、軸受部材および現像ローラを示す分解斜視図である。
【図5】押圧力調整部材、軸受部材および現像ローラを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図6】感光ドラム、揺動部材および現像ローラの関係を示す説明図であり、揺動部材を感光ドラムから離したときの状態を示す図(a)と、揺動部材と現像ローラを感光ドラムに接触させたときの状態を示す図(b)である。
【図7】押圧力調整部材のコイルバネの変形状態を示す斜視図であり、揺動部材を感光ドラムから離したときの状態を示す図(a)と、揺動部材と現像ローラを感光ドラムに接触させたときの状態を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、カラープリンタ(画像形成装置)の全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0028】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって右側を「前側」、紙面に向かって左側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「右側」、紙面に向かって手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0029】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0030】
給紙部20は、用紙Pを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙搬送装置22とを備えている。
【0031】
画像形成部30は、スキャナユニット40と、プロセスユニット50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備えている。
【0032】
スキャナユニット40は、装置本体10内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。そして、スキャナユニット40では、レーザビームが図の2点鎖線で示す経路を通って、プロセスユニット50の各感光ドラム61の表面上に高速走査にて照射される。
【0033】
プロセスユニット50は、装置本体10の前面に配置されたフロントカバー11を開放することによって形成される開口部10Aを通して、装置本体10に着脱可能となっている。プロセスユニット50は、ドロワ60と、ドロワ60に着脱可能に設けられる現像ユニットの一例としての4つの現像カートリッジ100とを備えている。
【0034】
ドロワ60は、感光体の一例としての4つの感光ドラム61を備える他、図示しない公知の帯電器などを備えている。
【0035】
現像カートリッジ100には、感光ドラム61に接触してトナーを供給する現像ローラ110が回転可能に設けられるとともに、公知のトナー収容室、供給ローラなどが適宜設けられている。
【0036】
転写ユニット70は、給紙部20とプロセスユニット50の間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。
【0037】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間にエンドレスベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光ドラム61に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光ドラム61との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光ドラム61に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0038】
定着ユニット80は、プロセスユニット50および転写ユニット70の後側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0039】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム61の表面が、帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、現像ローラ110によって現像カートリッジ100内のトナーが感光ドラム61上の静電潜像に供給されることで、感光ドラム61上にトナー像が担持される。
【0040】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム61と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム61上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0041】
排紙部90は、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラ91を備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ91によって搬送され、装置本体10の外部に排出される。
【0042】
<プロセスユニット50周りの構造の詳細>
次に、プロセスユニット50周りの構造について詳細に説明する。
プロセスユニット50は、前述したドロワ60および現像カートリッジ100と、ドロワ60内の現像カートリッジ100(現像ローラ110)を感光ドラム61から離間させるための離間部材400とを備えている。
【0043】
ドロワ60は、前後に並んで配列された4つの感光ドラム61を回転可能に支持する感光体フレーム62と、現像カートリッジ100を感光ドラム61に向けて付勢する押圧部材63とを主に備えている。
【0044】
感光体フレーム62は、上下に開口した矩形の筒状に形成されており、その左右側壁の下部で各感光ドラム61を支持している。また、感光体フレーム62の前壁には、前方に向けて突出する取手部62Aが設けられている。これにより、ユーザが取手部62Aを掴んで、ドロワ60を前方に引き出すことが可能となっている。
【0045】
図2および図3に示すように、押圧部材63は、現像ローラ110を感光ドラム61に圧接するように現像カートリッジ100を後斜め下方に押圧する部材であり、現像カートリッジ100の前斜め上側の角部付近の左右両側(現像ローラ110の軸方向における両端側、詳しくは軸方向における中央に対して対称となる位置)に1つずつ設けられている。これにより、現像カートリッジ100を左右においてバランスよく押圧することができるので、現像ローラ110の感光ドラム61に対する押圧力を左右方向で均一化することが可能となっている。
【0046】
そして、左右一対の押圧部材63は、前後に配列される各現像カートリッジ100に対応してそれぞれ一対ずつ設けられている。なお、各一対の押圧部材63は、すべて同じ構造で構成されるので、以下の説明では、1つの現像カートリッジ100に対応した一対の押圧部材63について説明する。また、一対の押圧部材63は、左右対称な構造となるため、以下の説明では、左右の一方のみを説明し、他方の説明は省略することとする。
【0047】
押圧部材63は、感光体フレーム62に揺動可能に支持されるロック部材631と、ロック部材631を感光ドラム61(現像カートリッジ100)に向けて付勢するトーションバネ632とを備えている。そして、トーションバネ632で付勢されたロック部材631が、現像カートリッジ100の現像フレーム120に形成された係合突起121を押圧することで、現像カートリッジ100が感光ドラム61に向けて押圧されるようになっている。
【0048】
これに対し、現像カートリッジ100の感光ドラム61側の端部には、被当接部材の一例としての感光ドラム61に前斜め上側(押圧部材63の押圧方向の上流側)から当接して当該感光ドラム61を後斜め下方(押圧方向)に付勢する押圧力調整部材200が設けられている。押圧力調整部材200は、押圧部材63による押圧力よりも小さい押圧力で、現像カートリッジ100を押圧部材63の押圧力に抗して押圧するように構成されている。
【0049】
これにより、押圧部材63の押圧力を高めても、その高めた分の押圧力を押圧力調整部材200の押圧力で相殺することができるので、感光ドラム61に対する現像ローラ110の押圧力を適正な値に保つことが可能となっている。また、押圧部材63と押圧力調整部材200とで現像カートリッジ100を強固に挟み込むことができるので、現像カートリッジ100をドロワ60に強固に保持させることが可能となっている。
左右両側に配置されている押圧部材63および押圧力調整部材200の押圧力は、現像カートリッジ100の重心の位置によって調整され、左右で変えてもよい。
【0050】
なお、図示は省略するが、感光体フレーム62の左右両側壁には、現像カートリッジ100を、図3の位置(感光ドラム61と押圧部材63との間)まで案内するとともに、図3の姿勢で保持する公知のガイド溝やガイドリブなどが形成されている。そして、ガイド溝等で保持された現像カートリッジ100は、押圧部材63と感光ドラム61(押圧力調整部材200)との間で挟み込まれることで、感光体フレーム62に強固に保持されるようになっている。
【0051】
そして、押圧力調整部材200は、現像ローラ110の左右両端部(軸方向における両端部、詳しくは軸方向の中央に対して対称となる位置)に1つずつ設けられている。これにより、感光ドラム61に対する現像ローラ110の押圧力を軸方向においてバランスよく適正化することが可能となっている。
【0052】
そして、左右一対の押圧力調整部材200は、各現像カートリッジ100にそれぞれ一対ずつ設けられている。なお、各一対の押圧力調整部材200は、すべて同じ構造で構成されるので、以下の説明では、1つの現像カートリッジ100に設けられた一対の押圧力調整部材200について説明する。また、左右一対の押圧力調整部材200は、左右対称な構造となるため、以下の説明では、左右の一方のみを説明し、他方の説明は省略することとする。
【0053】
押圧力調整部材200は、図4および図5に示すように、接触部材の一例としての揺動部材210と、付勢部材の一例としてのコイルバネ220とを備えている。
【0054】
揺動部材210は、下方に向かうにつれて広がる略扇形状に形成された本体部230と、感光ドラム61の外周面に接触する接触部240とを有している。
【0055】
本体部230には、その上部に円状の係合孔231が形成されるとともに、その下部に円弧状に延びる長孔232が形成されている。係合孔231には、後述する軸受部材300に設けられた回動軸310が入り込んで係合するようになっており、これにより、本体部230が回動軸310を中心にして揺動可能となっている。
【0056】
詳しくは、本体部230は、その下端部が押圧部材63の押圧方向に揺動可能(移動可能)となるように、回動軸310に回動可能に支持されている。言い換えると、本体部230は、軸受部材300を介して間接的に現像フレーム120に回動可能に支持されている。
【0057】
ここで、軸受部材300は、現像ローラ110の回転軸111を回転可能に支持するものであり、現像フレーム120(図3参照)に固定されている。言い換えると、現像ローラ110や本体部230は、軸受部材300を介して現像フレーム120に支持されている。
【0058】
長孔232は、現像ローラ110の回転軸111が挿通される孔であり、図6(a),(b)に示すように、回転軸111の直径と略同じ幅で形成されることで、回転軸111に接触するようになっている。そして、この長孔232は、本体部230の揺動方向に沿って延びるように、軸受部材300の回動軸310を中心とする円弧状に形成されている。これにより、揺動部材210が揺動する際に、長孔232の内面が現像ローラ110の回転軸111で常に支持されるので、揺動部材210を安定して揺動させることが可能となっている。
【0059】
また、長孔232の接触部240とは反対側の端部は、長孔232よりも幅狭のスリット233によって外部に開放されるようになっている。これにより、現像ローラ110の回転軸111に対して径方向から揺動部材210を取り付けることが可能となり、現像ローラ110の現像フレーム120への組み付け後に揺動部材210を組み付けることができるため、組み付けが容易となる。
【0060】
接触部240は、本体部230の感光ドラム61側の端縁から左右方向内側に向けて突出するように形成されており、本体部230の揺動に伴って押圧部材63の押圧方向に移動可能となっている。接触部240は、感光ドラム61に押圧された状態の現像ローラ110の外周面形状に略合致する形状に形成されている。そのため、現像ローラ110および接触部240から感光ドラム61に対して加わる圧力を軸方向で一定にすることができるので、感光ドラム61をスムーズに回転させることが可能となっている。
【0061】
図7(a),(b)に示すように、コイルバネ220は、揺動部材210の接触部240と軸受部材300に形成された平面状の接地面320との間に、自然長の状態もしくは自然長から縮められた状態で配置されている。言い換えると、コイルバネ220の付勢力は、揺動部材210で受けられるとともに、軸受部材300を介して現像フレーム120で受けられるので、コイルバネ220は機構的に見て揺動部材210と現像フレーム120との間に設けられている。なお、コイルバネ220は、接触部240および接地面320の一方に固定されていればよい。
【0062】
そして、コイルバネ220は、現像カートリッジ100をドロワ60に装着する前の状態(図7(a)の状態)よりも、装着した状態(図7(b)の状態)において接触部240と接地面320との間で縮められることで、現像カートリッジ100を押圧部材63の押圧力に抗して付勢するようになっている。ここで、図7においては、コイルバネ220を簡略的に図示しており、コイルバネ220を示す複数の線の間隔を変えることで伸縮を表現している。
【0063】
また、コイルバネ220は、現像カートリッジ100をドロワ60から取り外した状態(ドロワ60に組み付ける前の状態、より具体的には接触部240を感光ドラム61から離した状態)においては、接触部240を装着時の位置よりも感光ドラム61側に移動させた位置で保持するようになっている。これにより、現像カートリッジ100をドロワ60から取り外した状態や、後述する離間部材400によって現像ローラ110を感光ドラム61から離間させた状態(図6(a)参照)においては、接触部240が現像ローラ110よりも感光ドラム61側(径方向外側)に突出するようになっている。
【0064】
これにより、現像カートリッジ100をドロワ60から取り外した状態において接触部が現像ローラと面一となる形態に比べ、接触部240のストロークを大きくすることができるので、コイルバネ220の変形量を大きくすることができ、押圧力調整部材200から発生する押圧力を安定させることが可能となっている。
【0065】
図1および図3に示すように、離間部材400は、押圧部材63の押圧力に抗して、感光ドラム61から現像ローラ110を離間させるように、現像カートリッジ100に作用する部材であり、4つの離間用アーム410と、1つの離間用カム420とを備えている。
【0066】
離間用アーム410は、各現像カートリッジ100の左右方向両側に1つずつ配置されている。詳しくは、離間用アーム410は、感光体フレーム62の左右の側壁の内側に配置されて当該側壁に回動可能に設けられることで、その上下端部が略前後方向に揺動可能となっている。
【0067】
離間用アーム410の下端部には、左右方向内側に突出する突出部411が形成されており、離間用アーム410を図示反時計回りに揺動させると、離間用アーム410の突出部411によって現像カートリッジ100に設けられた係合突起121が前斜め上方に押されて、図示しないガイド部に沿って現像ローラ110が感光ドラム61から離間するようになっている(図6(a)参照)。
【0068】
詳しくは、この揺動時における離間用アーム410の突出部411の移動方向は、押圧力調整部材200の接触部240の移動方向と同じ方向に設定されている。そして、各離間用アーム410は、離間用カム420によってそれぞれ作動するようになっている。
【0069】
離間用カム420は、前後方向(複数の現像ローラ110の配列方向)に延びる長尺状の直動カムであり、後方に移動することによって、離間用アーム410の上端部から左右方向外側(ドロワ60の外側)に向けて突出している部分(図示せず)を押圧して離間用アーム410を図示反時計回りに揺動させるようになっている。具体的に、離間用カム420は、装置本体10の左右の側壁の内側に配置され、各側壁に前後方向に移動可能に支持されている。
【0070】
離間用カム420は、前後方向に対して傾斜する4つのカム面421を有しており、各カム面421によって各離間用アーム410を押圧するようになっている。これにより、例えばカラーモードとモノクロモードの切替を行うことが可能となっている。
【0071】
なお、離間用カム420は、装置本体10に設けられる図示せぬ駆動機構によって前後方向に移動するようなっている。ここで、駆動機構としては、モータやギヤ等で構成される機構や、フロントカバー11の開閉に連動して離間用カム420を前後動させる機構などを採用することができる。
【0072】
そして、離間部材400と前述した押圧力調整部材200は、図6(a)に示すように、離間部材400によって現像ローラ110を感光ドラム61から離間させるときに、感光ドラム61に対する現像ローラ110の移動量L1が押圧力調整部材200の移動量L2よりも大きくなるように構成されている。つまり、移動量L1,L2が前述した関係となるように、離間用カム420の移動量、離間用アーム410の回動量、押圧力調整部材200のストロークが適宜設定されている。
【0073】
これにより、離間部材400によって現像ローラ110を離間するときに押圧力調整部材200が感光ドラム61側に近付くように移動しても、現像ローラ110の移動量L1が押圧力調整部材200の移動量L2よりも大きいので、押圧力調整部材200を感光ドラム61から確実に離すことが可能となっている。そのため、現像カートリッジ100を図6(a)に示す離間状態から図6(b)に示す接触状態に戻し始めるときに、現像カートリッジ100の移動が押圧力調整部材200の押圧部材63に抗して作用する押圧力で妨げられないので、前記ガイド部との摩擦力に抗して現像カートリッジ100をスムーズに動かして現像ローラ110を感光ドラム61にバランスよく圧接させることができ、その結果白抜けを抑えることが可能となっている。
【0074】
また、本実施形態では、前述したように離間用アーム410の突出部411の移動方向が押圧力調整部材200の接触部240の移動方向と同じ方向に設定されるので、押圧力調整部材200が、現像ローラ110の移動方向(離間部材400で離間される方向)と同じ方向に移動するようになっている。これにより、押圧力調整部材200と現像ローラ110の移動方向が異なる構造に比べ、押圧力調整部材200を感光ドラム61から離間させるための現像ローラ110の移動量L1を少なくすることが可能となっている。
【0075】
以上によれば、前述した効果の他、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
押圧力調整部材200を揺動部材210とコイルバネ220とで構成したので、例えば押圧力調整部材をバネだけで構成する形態に比べ、感光ドラム61に接触する揺動部材210の形状を自由に決めることができる。これにより、本実施形態のように、揺動部材210の接触部240の形状を現像ローラ110の外周面形状と略同じ形状にすることができるので、感光ドラム61をスムーズに回転させることができる。
【0076】
コイルバネ220を揺動部材210と軸受部材300との間に配置したので、コイルバネを現像ローラの回転軸に接触させる形態に比べ、現像ローラ110の回転軸111との摺接によるコイルバネ220の磨耗を抑えることができる。
【0077】
揺動部材210(接触部材)を現像カートリッジ100に対して回動可能に設けたので、接触部材を直線方向にスライドする構成(接触部材をガイドするガイド面が小さく、接触部材がスライド中に傾いてガイド面に引っ掛かり易い構造)に比べ、揺動部材210を滑らかに動作させることができる。
【0078】
左右対称に配置された左右一対の押圧部材63および左右一対の押圧力調整部材200の4箇所で現像カートリッジ100を押圧しているので、現像カートリッジ100をバランス良く押圧することができる。
【0079】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、被当接部として感光ドラム61を例示したが、本発明はこれに限定されず、被当接部は、感光体フレームに一体または別体に設けられる他の部材、例えば感光ドラムを回転可能に支持する軸受部材などであってもよい。また、後述するように押圧力調整部材を感光体フレームに設ける場合には、被当接部は、現像フレームに一体または別体に設けられる他の部材、例えば現像ローラを回転可能に支持する軸受部材などであってもよい。
【0080】
ただし、前記実施形態のように被当接部を感光ドラム61にした場合には、押圧力調整部材200が直接感光ドラム61に当接するので、感光ドラム61に対する現像ローラ110の押圧力を精度良く調整することができる。
【0081】
前記実施形態では、現像ユニットの一例として現像ローラ110とトナー収容室とを一体に備える現像カートリッジ100を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、トナー収容室を有するトナーカートリッジと、現像ローラを有する現像器とが別々に構成される場合には、現像ユニットは現像器であってもよい。
【0082】
前記実施形態では、感光体フレーム62に対して現像カートリッジ100を着脱可能としたが、本発明はこれに限定されず、ドライバーなどの道具を用いなければ感光体フレームに対して現像ユニットを外せない構造に本発明を適用してもよい。
【0083】
前記実施形態では、感光体の一例として感光ドラム61を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体であってもよい。
【0084】
前記実施形態では、押圧部材や押圧力調整部材を2部品で構成したが、本発明はこれに限定されず、例えばコイルバネや板バネのみで構成してもよい。また、押圧部材を前記実施形態とは逆に現像ユニットに設けてもよいし、押圧力調整部材を前記実施形態とは逆に感光体フレームに設けてもよい。
【0085】
前記実施形態では、押圧部材を現像ローラの軸方向両端側に1つずつ設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば軸方向中央部に1つだけ設けてもよいし、軸方向にバランスよく(軸方向中央に対して対称となるように)3つ以上設けてもよい。また、押圧力調整部材の位置・数も、前記実施形態に限定されず、例えば軸方向の一端側に1つだけ設けてもよいし、軸方向の両端側に2つずつ設けてもよい。
【0086】
前記実施形態では、離間部材400を離間用アーム410と離間用カム420で構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば押圧部材の押圧方向に直線的に移動して現像ユニットを押圧するスライド部材などで離間部材を構成してもよい。
【0087】
前記実施形態では、接触部材の一例として揺動可能な揺動部材210を例示したが、本発明はこれに限定されず、接触部材は、例えば直線的に移動可能なスライド部材などであってもよい。また、前記実施形態では、接触部材を軸受部材で支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば現像フレームで直接支持してもよい。
【0088】
前記実施形態では、付勢部材の一例としてコイルバネ220を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばトーションバネや板バネなどであってもよい。また、前記実施形態では、付勢部材を接触部材と軸受部材(現像フレーム)との間に配置したが、本発明はこれに限定されず、例えば接触部材と現像ローラ(回転軸)との間に配置してもよい。
【0089】
前記実施形態では、揺動部材210に現像ローラ110の軸方向に貫通する円弧状の長孔232を設け、この長孔232に現像ローラ110の回転軸111を通したが、本発明はこれに限定されず、例えば揺動部材210に軸方向に貫通しない円弧状(前記実施形態の長孔232と同形状)の溝を設け、この溝に現像ローラの回転軸の端部を係合させてもよい。この場合であっても、現像ローラの回転軸で常に溝が支持されるので、揺動部材210を安定して揺動させることができる。
【0090】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロのプリンタや複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 カラープリンタ
61 感光ドラム
62 感光体フレーム
63 押圧部材
100 現像カートリッジ
110 現像ローラ
120 現像フレーム
200 押圧力調整部材
400 離間部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を支持する感光体フレームと、
現像ローラを支持する現像フレームを備える現像ユニットと、
前記現像ローラを前記感光体に圧接するように前記現像ユニットを押圧する押圧部材と、
前記感光体フレームおよび前記現像フレームの一方に移動可能に設けられ、他方のフレームに設けられる被当接部材に当接することで、前記押圧部材による押圧力よりも小さい押圧力で、前記現像ユニットを前記押圧部材の押圧力に抗して押圧する押圧力調整部材と、
前記押圧部材の押圧力に抗して、前記感光体から前記現像ローラを離間させるように、前記現像ユニットに作用する離間部材と、を備え、
前記離間部材によって前記現像ローラを前記感光体から離間させるときに、前記感光体に対する前記現像ローラの移動量が前記押圧力調整部材の移動量よりも大きくなるように、前記離間部材および前記押圧力調整部材が構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記押圧力調整部材は、前記現像ローラの移動方向と同じ方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記被当接部材は、前記感光体であり、
前記押圧力調整部材は、
前記感光体の外周面に接触し、前記現像フレームに移動可能に設けられる接触部材と、
前記接触部材と前記現像ローラまたは前記現像フレームとの間に配置され、前記現像ローラを前記押圧部材の押圧力に抗して付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像フレームには、前記現像ローラの回転軸を回転可能に支持する軸受部材が設けられ、
前記付勢部材は、前記接触部材と前記軸受部材との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記接触部材は、前記現像フレームが前記感光体フレームに組み付けられる前の状態において、前記現像ローラよりも径方向外側に突出していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記接触部材は、前記現像ローラの回転軸が係合する孔または溝を有し、
前記孔または前記溝が、前記現像ローラの回転軸に接触するとともに、前記接触部材の移動方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記接触部材は、前記現像フレームに回動可能に支持されていることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記押圧力調整部材は、前記現像ローラの軸方向における両端部に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記押圧部材は、前記感光体フレームの前記現像ローラの軸方向における両端側に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50496(P2013−50496A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186912(P2011−186912)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】