画像形成装置
【課題】シート状の転写部材を用いる画像形成装置において、通紙枚数増大に伴う転写部材と転写ベルトとの摺動負荷の増大を抑制し、色ズレなどの画質劣化を抑制する。
【解決手段】トナー像を担持する回転可能な像担持体と、回転する無端状のベルト体と、前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、を有し、前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、を備える。
【解決手段】トナー像を担持する回転可能な像担持体と、回転する無端状のベルト体と、前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、を有し、前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、用紙を搬送する転写ベルトや中間転写ベルトに、シート状の転写部材を、像担持体としての感光ドラムの反対側から接触させる構成のものがある。この構成では、転写部材の自由端側を転写ベルト又は中間転写ベルトに摺擦させた状態で、転写部材に所定の転写バイアスを印加することで、感光体ドラムから中間転写ベルトや用紙にトナー像が転写される。この構成の画像形成装置では、転写ローラを転写部材として用いる画像形成装置に対し装置の小型化、低コスト化、低電力化が期待できる。
【0003】
例えば特許文献1の画像形成装置では、図13に示すように、感光ドラム1aに形成されたトナー像を中間転写ベルト13に転写するための転写部材として、導電性と弾力性を有する導電樹脂シート32aを用いている。この導電樹脂シート32aは端部が支持部材33aに固定されることにより支持され、中間転写ベルト13の移動方向下流側に設けられた自由端が感光ドラム1aの反対側から中間転写ベルト13に当接する。この導電樹脂シート32aは、押圧部材31aを介して押圧バネ36aによって中間転写ベルト13の裏面に押圧され接触することにより、導電樹脂シート32aと中間転写ベルト13の裏面とが長手方向に均一に密着する。この導電樹脂シート32aに転写電圧(バイアス)が印加されると、感光ドラム1aに形成されたトナー像が中間転写ベルト13に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に示したシート状の転写部材では、画像形成装置の通紙枚数の増大に伴って、導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺擦面が劣化し、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷が増大する。摺動負荷が増大すると、中間転写ベルトを移動させる駆動ローラと中間転写ベルトがスリップするなどして中間転写ベルトの移動速度にムラが生じ、複数色のトナーの中間転写ベルト上の位置が正確に一致しなくなり、色ずれが発生する場合がある。導電樹脂シートが用紙などの転写材を搬送する転写ベルトである場合も同様である。
【0006】
そこで本発明は、シート状の転写部材を用いる画像形成装置において、通紙枚数の増大に伴う転写部材と転写ベルト又は中間転写ベルトとの摺動負荷の増大を抑制し、色ズレなどの画質劣化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トナー像を担持する回転可能な像担持体と、
回転する無端状のベルト体と、
前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、
前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、
を有し、
前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、
前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、
段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状の転写部材を用いる画像形成装置において、通紙枚数の増大に伴う転写部材と転写ベルト又は中間転写ベルトとの摺動負荷の増大を抑制し、色ズレなどの画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例に係る1次転写手段の構成を示す図
【図2】実施例に係る1次転写手段の部品を示す斜視図
【図3】実施例に係る1次転写手段への押圧力を変更する機構の動作を示す図
【図4】実施例に係る画像形成装置の構成、摺動負荷と駆動トルクの関係を示す図
【図5】通紙枚数による摩擦係数、垂直抗力、摺動負荷の変化を示す図
【図6】通紙枚数による駆動ローラ回転トルク、色ずれ量の変化を示す図
【図7】駆動モータ消費電流量と駆動ローラ回転トルクの関係を示す図
【図8】通紙枚数による駆動モータ消費電流量、色ずれ量の変化を示す図
【図9】通紙枚数による駆動モータ消費電流量の変化を示す図
【図10】通紙枚数による駆動モータ消費電流量、色ずれ量の変化を示す図
【図11】実施例における通紙枚数による1次転写電圧の変化を示す図
【図12】通紙枚数による駆動モータ回転トルク、色ずれ量の変化を示す図
【図13】従来例に係る1次転写手段の構成を示す図
【図14】その他の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、感光ドラム等の像担持体に形成するトナー像を、用紙等の転写材や中間転写ベルト等の中間転写体に転写するために、用紙を搬送する転写ベルトや中間転写ベルトの裏面にシート状の転写部材を接触させる構成の電子写真方式の画像形成装置に適用できる。
【0011】
(実施例1)
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施例について図4に則して説明する。
まず、露光、潜像、1次転写工程について説明する。
画像形成装置本体にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーに応じた画像形成ステーションY、M、C、Kが設けられる。また、各画像形成ステーションには、像担持体としての回転可能な感光ドラム1a〜1dが設けられている。感光ドラム1a〜1dには、感光ドラム1の回転方向から順に、帯電ローラ2a〜2d、現像ユニット8a〜8d、クリーニングユニット3a〜3dが設けられており、これらがプロセスカートリッジ9a〜9dとして一体化されている。なお、4つの画像形成ステーションY、M、C、Kの構成は全て同一であるので、以下、イエローの画像形成ステーションYの構成のみ説明を行い、他の画像形成ステーション(M、C、K)の構成の説明は省略する。
感光ドラム1aは、アルミシリンダーの外周面に有機感光体(OPC)から成る光導電体を塗布して構成される。静電潜像担持体である感光ドラム1aは外径24mmであり、不図示の駆動手段によって図示矢印方向に駆動される。また、感光ドラム1aは、帯電ローラ2aにより負極性に帯電される。
【0012】
次に、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットまたはLEDアレイから構成される露光手段11aにより、第1色目(本実施例1では、イエロー)の画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aが感光ドラム1a上に照射される。これにより、感光ドラム1a上に第1色目の静電潜像が形成される。この感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像スリーブ4aに到達すると、静電潜像における露光を受けた箇所は負極性のトナーによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(本実施例1では、イエロー)のトナーが形成される。尚、現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像スリーブ4aに塗布されている。また、現像スリーブ4aには、高圧電源21aより、負極性の電圧が供給されている。
【0013】
そして、高圧電源22aから1次転写手段10aにトナーと逆極性の電圧(バイアス)が供給され、感光ドラム1a上のトナー(本実施例1では、イエロー)は回転する無端状のベルト体である中間転写ベルト13上に転写される。1次転写手段10aは、中間転写ベルト13の内周面側に配置され、中間転写ベルト13の外周面側に配置される感光ドラム1aの担持するトナー像を中間転写ベルトに転写する。
また、感光ドラム1aから中間転写ベルト13に転写されずに感光ドラム1a上に残留した1次転写残トナーは、感光ドラム1a表面に当接するクリーニングブレード3aによって捕集される。
以上の行程が第2〜4色目であるマゼンタ色、シアン色、黒色についても同様に行われ、中間転写ベルト13上に複数色のトナーが重ね合わされる。第2〜4色目の画像形成動作は第1色目と同様であるため、説明を省略する。
【0014】
次に、2次転写工程、中間転写ベルトクリーニング、定着工程について説明する。
複数色のトナーが中間転写ベルト13上に転写された後、転写材カセット16に積載されている転写材P(以下、用紙と称する)は、給紙ローラ17によりピックアップされる。そして、用紙は、2次転写ローラ25と駆動ローラ15とのニップ部(2次転写部)へ、不図示の搬送ローラ、レジストローラ18を経て1枚ずつタイミングを図って送り込まれる。尚、中間転写ベルト13上に形成されたトナーの先端と用紙の先端が一致するタイミングで、前記2次転写部へ用紙が移動する。駆動ローラ15は駆動モータ150により駆動される。
【0015】
その後、高圧電源26から2次転写ローラ25にトナーと逆極性の電圧が供給され、中間転写ベルト13上の複数色のトナーは一括して用紙に転写される。その後、ベルトクリーニング部材27によって、中間転写ベルト13上に残留した2次転写残トナーが中間転写ベルトから除去される。
2次転写終了後の用紙は、定着手段19へと移動し、定着ニップ部を通過する際に熱と圧力を受けてトナーが定着し、カラー画像形成物(プリント、コピー)として画像形成装置外へと排出される。
【0016】
以下に、本実施例1で使用した各部品について説明する。
中間転写ベルト13は、厚さ100μm、体積抵抗率1011Ω・cmの汎用エンプラシートを用いている。尚、体積抵抗率は、三菱化学株式会社のHiresta−UP(MCP−HT450)、UR測定プローブを用い測定した。また、測定時の室内温度は23℃、室内湿度は50%に設定し、印加電圧500V、測定時間10secとした。
中間転写ベルト13は、駆動ローラ15、テンションローラ14の2本のローラ上に張架され、駆動ローラ15がモータ150により図中矢印の方向に回転することにより、中間転写ベルト13は図中矢印の方向に移動する。モータ150は中間転写ベルト13を回転させるための動力を出力する駆動手段である。
【0017】
2次転写ローラ25は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に体積抵抗率を108Ω・cm、厚み5mmに調整したNBRの発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いた。また、2次転写ローラ25は、中間転写ベルト13に対して、250g/cm2程度の面圧で当接させ、且つ中間転写ベルト13の移動方向に対して順方向に略等速度で回転する様に配置した。尚、2次転写ローラ25は従動とし、中間転写ベルト13を介して2次転写ローラ25に対向する駆動ローラ15の回転に連れ回るように構成した。画像形成装置の用紙の移動速度は50[mm/sec]とした。
【0018】
以下に、図1、2、3を用いて、本実施例1の特徴を説明する。上記で説明したように、本実施の形態に係る画像形成装置は、4つの感光ドラム1a〜1dの各々に対して1次転写手段10a〜10dが設けられる構成である。1次転写手段10a〜10dの構成は全て同一であるので、ここでは1次転写手段10aの構成のみ説明し、他の1次転写手段の説明については省略する。
図1は本実施例1で使用する1次転写手段10aの断面図を示している。1次転写手段10aは、導電樹脂シート101a、シート押圧弾性体102a、シート支持部材104a、シートカバー部材103a、押圧バネ105a、押圧バネ受け面107a、前記押圧バネ受け面107aを支えるカム106a、カムシャフト108aを含む。導電樹脂シート101aは、トナー像を担持する回転可能な像担持体である感光ドラム1aからトナー像が転写される移動可能なベルト体である中間転写ベルト13の内周面に当接するシート部材である。
シート押圧弾性体102aは、感光ドラム1aの反対側から導電樹脂シート101aを中間転写ベルト13の方向へ押圧する弾性部材である。前記押圧バネ105aは、シート押圧弾性体102aを導電樹脂シート101aの方向へ付勢し中間転写ベルト13に押圧密着させる付勢部材である。また、カムシャフト108aを回転中心として、カム106aが矢印方向に回転することで、押圧バネ受け面107aの、押圧バネ105aによる付勢方向の位置が変動する。これにより、押圧バネ105aの使用長(押圧バネ受け面107aとシート支持部材104aとの押圧バネ105aによる付勢方向の距離)が変化する。よって、押圧バネ105aがシート押圧弾性体102aを導電樹脂シート101aの方向へ押圧する力が可変となり、従って導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との密着力が可変となる。モータ1080がカムシャフト108aを回転させる動力を出力することにより、カム106aが回転する。カム106a、カムシャフト108a、モータ1080は押圧バネ105aによる付勢力を調節する調節機構である。CPU1081はモータ1080を制御する制御手段である。なお、CPU1081、モータ1080は画像形成ステーション毎に別個に設けられていても良いし、画像形成ステーションY,M,C,Kで共通としても良い。ここでは4つの画像形成ステーションで共通のCPU1081及びモータ1080を用いるものとし、画像形成ステーションの区別を表す添え字「a」を付していない。
【0019】
図2は前述した1次転写手段10aの各部品の斜視図である。押圧バネ105aは押圧バネ受け面107aの長手方向端部近傍の2箇所に配置され、押圧バネ受け面107aは板形状で、押圧バネ受け面107aの下方にカム106aが配置される。また、カム106aはカムシャフト108aの両端に取り付けられ、不図示の回転機構によりカムシャフト108aを中心に矢印方向に回転する。
尚、導電樹脂シート101aは中間転写ベルト13と摺動し、導電樹脂シート101aに図4(A)に示した高圧電源22aから電圧を印加することで1次転写が行われる。
【0020】
本実施例では、導電樹脂シート101aとして線膨張係数17.0(10−5/℃)、表面抵抗率10(KΩ/□)の超高分子導電ポリエチレンシートを使用し、シート押圧弾性体102aとして発泡ウレタンを使用した。また、導電樹脂シート101aの表面抵抗率測定には三菱化学株式会社のHiresta−UP(MCP−HT450)、UR−1
00測定プローブを用いた。
【0021】
図3はカム106aの回転により段階的に変化する4通りの押圧バネ105aの状態をそれぞれ図示している。押圧バネ105aの自然長は30mm、バネ定数10gf/mmとする。また、1次転写手段10aの重量は50gとする。
【0022】
画像形成装置の初期状態での1次転写手段10aの状態を図3(A)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R1は20mmである。また、押圧バネ105aの使用長は10mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによるによる押圧力(付勢力)は200gf×2本=400gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は400−50=350gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数1万枚まではこの状態が維持される。
【0023】
次に、図3(A)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(B)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R2は15mmである。また、押圧バネ105aの使用長は15mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は150gf×2本=300gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は300−50=250gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数1万枚から2万枚まではこの状態を維持する。
【0024】
さらに、図3(B)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(C)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R3は10mmである。また、押圧バネ105aの使用長は20mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は100gf×2本=200gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は200−50=150gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数2万枚から3万枚まではこの状態を維持する。
【0025】
最後に、図3(C)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(D)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R4は5mmである。また、押圧バネ105aの使用長は25mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は50gf×2本=100gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は100−50=50gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数3万枚からはこの状態を維持する。
【0026】
以上に示したように、本実施例1は、カム106aを回転させることで、押圧バネ受け面107aの位置を可変とし、押圧バネ105aの使用長を通紙積算枚数の増大に応じて段階的に増大させる構成を採用した。そして、画像形成装置の通紙積算枚数の増大に応じて、押圧バネ105aによる押圧力を段階的に低減することを特徴としている。
【0027】
本実施例1において期待できる作用を説明する。
図1(B)は、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との摺動負荷を説明する図である。摺動負荷Fは導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摩擦係数μ、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13を押圧する垂直抗力Nの積で説明できる。さらに、前記垂直抗力Nは押圧バネ105aによる押圧力Nb、導電樹脂シート101aに転写電圧を印加することで導電樹脂シート101a表面と中間転写ベルト13裏面間が電気的に密着する静電吸着力Neに分解することができる。前記静電吸着力Neの発生要因として、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13に含有される導電剤の脱落や放電
による酸化等による互いに摺擦する面の劣化が考えられる。これにより、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摺擦面に誘電層とみなせる層ができ、転写電圧(バイアス)印加により導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との間に引力が作用し静電的に吸着すると考えられる。ここでは引力は静電引力である。尚、劣化後の摺擦面は電気抵抗も増大する。
【0028】
図5(A)に示すように、画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摩擦係数μが増大する。これは、導電樹脂シート101a表面の平滑化によって導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13裏面の接触面積が増大することが原因と考えられる。
【0029】
図5(B)に示すように、画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、静電吸着力Neが大幅に増大する。これは、前述したように導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摺擦面の劣化が通紙枚数の増大に伴って進行することが原因と考えられる。従って、静電吸着力Neは中間転写ベルト13と導電樹脂シート101aとの当接部位の劣化の度合を示す。図13に示した従来技術では、図5(B)のグラフB2に示すように、導電樹脂シートを押圧する押圧バネの押圧力Nbが一定であった。そのため、導電樹脂シートが中間転写ベルトを押圧する垂直抗力Nは、グラフB1に示すように、通紙枚数増大に伴って大きく増大していた。以上の摩擦係数増大、静電吸着力増大、押圧力一定により、従来技術では、図5(C)のグラフB3に示すように、摺動負荷Fは画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、大きく増大していた。
【0030】
しかしながら、本実施例1では、上述のように、押圧バネ105aの付勢力が通紙積算枚数(印字枚数)の増大に応じた予め定められたタイミングで低減される。具体的には、CPU1081が不図示の通紙積算枚数をカウントする手段から通紙積算枚数の情報を取得し、通紙積算枚数が予め定められた複数の閾値の各々に達するたびにモータ1080に駆動指令を送信してカム106aを90°回転させる。これにより、例えば図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移する。そのため、図5(B)のグラフA2に示すように、導電樹脂シート101aを押圧する押圧バネ105aの押圧力Nbが通紙積算枚数に応じた予め定められたタイミングで低減する。これにより、図5(B)のグラフA1に示すように、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13を押圧する垂直抗力Nが積算通紙枚数に応じた予め定められたタイミングで低減する。よって、図5(C)のグラフA3に示すように、本実施例では、通紙積算枚数が増大しても摺動負荷が大幅に増大することを抑制できる。
【0031】
なお、図5(B)において、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13とを均一に密着させ、圧抜けによる画像不良を発生させないために必要な垂直抗力値をN1としている。押圧バネ105aの押圧力を低減する場合、通紙枚数によらず垂直抗力NをN1より大きくする必要がある。従って、カム106aの回転により押圧バネ105aの押圧力を低減させた後の垂直抗力がN1を下回らない条件、例えば静電吸着力Neがある程度増大した状態で、押圧バネ105aの押圧力の低減を行う。
【0032】
図4、図6を用いて本実施例1の作用効果を説明する。
本実施例1の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施した。初期、1万枚、2万枚、3万枚、5万枚通紙時の導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を駆動ローラ15の回転トルクの測定により確認した。比較のために、図13に示した従来例を採用した場合においても、同様の確認を行った。
【0033】
図4(B)を用いて、前記摺動負荷と駆動ローラ15の回転トルクの関係を示す。導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13との画像形成ステーションY、M,C,K
における摺動負荷をそれぞれFa、Fb、Fc、Fdとし、駆動ローラ15の外径を2rとする。この場合、駆動ローラ15の回転トルクT=r×(Fa+Fb+Fc+Fd)で示される。以上より、駆動ローラ15の回転トルクの測定により、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を把握(推定)することができる。
【0034】
図6(A)に通紙枚数に応じた駆動ローラ回転トルクの測定値を示す。図6(A)によれば、従来例の場合、通紙枚数の増大に応じて、駆動ローラ回転トルクが大きく増大している。よって、通紙枚数の増大に応じて、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷が増大していることがわかる。
【0035】
一方、本実施例1によれば、通紙積算枚数が予め定められたタイミングである1万枚、2万枚、3万枚を経過するたびに、押圧バネ105a〜dによる押圧力が初期の350gfから順次250gf、150gf、50gfと低減される。これにより、押圧バネ105a〜dによる押圧力が低減されるタイミングで、駆動ローラ回転トルクが低減しており、通紙枚数の増大に伴って従来例のような駆動ローラ回転トルクの大幅な増大が見られなかった。通紙枚数によらず、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を一定以下に抑制できていることが確認できた。
【0036】
次に、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷の増大による画像への影響を確認するため、画像の色ずれ量を確認した。上述したように、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷がある程度以上大きくなると、駆動ローラ15と中間転写ベルト13の微小なスリップにより色ずれが生じ、画像不良として顕在化する。
【0037】
図6(B)に通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。尚、色ずれ量100μm未満であれば“○”、色ずれ量100μm以上150μm未満であれば“△”、色ずれ量150μm以上であれば“×”と評価した。
図6(B)によれば、従来例は通紙積算枚数2万枚を超えてから、色ずれ量が大きくなり、通紙積算枚数3万枚をこえてから色ずれ量は不良レベルに至った。
一方、本実施例1は通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が不良レベルに至ることはなかった。
【0038】
本実施例1によれば、1次転写手段10a〜dにおける良好な転写性能を維持しながら、中間転写ベルト13の回転速度ムラを生じさせる摺動負荷増大を抑制し、画像形成装置の動作時間(通紙積算枚数)によらず色ずれ等の画質劣化を抑制することができる。
中間転写ベルト13の移動量や、駆動ローラ15の回転数や、1次転写手段10a〜dの高圧電源22a〜dの積算動作時間などを画像形成装置の動作時間を示す情報として取得・検出し、その情報に基づき、押圧バネ105a〜dの押圧力を低減しても良い。例えば、中間転写ベルト13の移動量の増大、駆動ローラ15の回転数の増大、高圧電源22a〜dの積算動作時間の増大に応じて、押圧バネ105a〜dの押圧力(付勢力)を低減するようにしても良い。中間転写ベルト13の移動量や駆動ローラ15の回転数は、例えば画像形成装置の初回動作開始時点等のある基準時点からの移動量の積算値や回転数の積算値とすることができる。
【0039】
(実施例2)
実施例1においては、予め定められた通紙積算枚数に応じて1次転写手段への押圧力を低減するという予測制御を行う例を説明した。
本実施例2では、予測制御ではなく、1次転写手段への押圧力低減の必要性を判定し、判定結果に応じて押圧力を低減する例を説明する。
実施例2における画像形成装置や1次転写手段の構成、押圧力低減方法などは実施例1
と同様の構成を採用するため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、押圧力低減方法は図3に示す。
【0040】
以下に、本実施例2の特徴を説明する。
前述のように、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷と、駆動ローラ回転トルクTとには相関がある(図4(B)参照)。この駆動ローラ15の駆動源である駆動モータ150の消費電流量と駆動ローラ回転トルクTとにも相関がある。図7に駆動ローラ回転トルクと駆動モータ消費電流量の関係を示す。図7に示すように、駆動ローラ回転トルクが大きくなるほど駆動モータ消費電流量が大きくなる。
以上のことから、駆動ローラ15の駆動源である駆動モータ150に供給される電流値を測定すれば、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13の摺動負荷を把握(推定)することが可能である。
【0041】
本実施例2においては、前記駆動モータ150の消費電流量を測定し、消費電流量が閾値を超えた場合、前記駆動モータ150の消費電流量が閾値以下となるよう1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。尚、閾値は、色ずれ量100μmを超えると推定できる駆動モータ消費電流量に基づき定め、本実施例では3[A]に設定する。
【0042】
図8(A)を用いて、本実施例2の作用効果を説明する。
本実施例2の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施し、通紙枚数に対する駆動モータ消費電流量を測定した。その結果を図8(A)に示す。比較として、従来例、実施例1を採用した場合についての測定結果も示す。
実施例2において、通紙枚数1万5千枚時、駆動モータ消費電流量が3Aを超えたことを検出したため、1次転写手段への押圧力を低減した。具体的には、1次転写手段を図3(A)に示す状態から、図3(B)の状態に遷移させた。
【0043】
その後、通紙耐久試験を継続し、通紙枚数3万枚時に再び駆動モータ消費電流量が3Aを超えたため、1次転写手段への押圧力の低減を実施した。具体的には、1次転写手段を図3(B)に示す状態から、図3(C)の状態に遷移させた。図8(A)に示すように、従来例では通紙枚数の増大に応じて駆動モータ消費電流量が色ずれ不良が発生する閾値3Aを超えて増大する。一方、実施例1では所定枚数に達したタイミングで、実施例2では駆動モータ消費電流量が閾値3Aに達したタイミングで、押圧力の低減が行われるため、駆動モータ消費電流量が閾値3A以下の状態が維持された。
【0044】
次に、画像の色ずれ量を確認した。図8(B)に通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例2は実施例1のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良のレベルに至ることはなかった。
【0045】
以上のように、1次転写手段への押圧力低減の必要性を判定し、判定結果に応じて押圧力を低減する制御を実施することで、導電樹脂シートと中間転写ベルト裏面間の摺動負荷増大を抑制し、中間転写ベルトの回転速度ムラ発生による色ずれを抑制することができた。
なお、本実施例2では、1次転写手段への押圧力を低減する必要性の判定を中間転写ベルトを駆動する駆動モータの消費電流量の測定結果に基づいて判定する例を説明した。しかし、判定のために測定する物理量は、中間転写ベルトと導電樹脂シートとの摺動負荷を推定できる物理量であれば、駆動モータの消費電流量に限定されない。測定する物理量に応じて、色ずれ不良が発生する閾値を予め調べて設定し、測定値と閾値との大小比較により1次転写手段への押圧力の低減の必要性を判定すると良い。
【0046】
(実施例3)
中間転写ベルトを回転させる駆動ローラとトナーカートリッジの感光ドラムの駆動源が同一のモータである画像形成装置の場合、実施例2のように駆動モータの消費電流量から導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷を把握するのは困難である。なぜなら、トナーカートリッジの使用状況に応じて感光ドラムの回転負荷も変動し、この影響によっても、駆動モータの消費電流量が変動してしまう。例えば、図9(A)に示すように、通紙枚数C1、C2のポイントでトナーカートリッジを新品に交換した場合、駆動モータの消費電流量が低減しており、トナーカートリッジの使用状況によって、駆動モータの消費電流量が異なることがわかる。
【0047】
このような画像形成装置において、駆動モータの消費電流量に基づき導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷を把握するためには、駆動モータの消費電流量からトナーカートリッジ要因を取り除く必要がある。
1次転写手段へ電圧を印加した場合の駆動モータ消費電流量と印加しない場合の駆動モータ消費電流量との差分を算出すれば、両者に含まれるトナーカートリッジ要因が相殺される。ここで、1次転写手段へ電圧を印加した場合、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力が発生し、1次転写手段へ電圧を印加しない場合、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力が発生しない。従って、1次転写手段へ電圧を印加した場合の駆動モータ消費電流量と印加しない場合の駆動モータ消費電流量との差分は、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力に対応する。
【0048】
図9(B)に、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量の通紙枚数に応じた変化を示す。また、1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の通紙枚数に応じた変化を図9(C)に示す。
上述のように、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力は、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化により増大する(図5(B)の静電吸着力Neのグラフ参照)。図9(C)で得られるような、1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の通紙枚数による変化は、図5(B)に示すような静電吸着力Neの通紙枚数による変化に対応する。
【0049】
従って、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力から、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合を推定できる。導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合が予め定められたいくつかの閾値に達するたびに、1次転写手段への押圧力の低減を行うことにより、導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷が大幅に増大することを抑制できる。
【0050】
そこで本実施例3では、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力を把握するために、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量を測定し、その差分を算出する。そして、算出した差分に基づき1次転写手段への押圧力の低減を行う。これにより、中間転写ベルトを回転させる駆動ローラとトナーカートリッジ感光ドラムの駆動源として同一の駆動モータを用いる画像形成装置において、駆動モータ消費電流量からトナーカートリッジ要因を除去することができる。さらに、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合に応じた1次転写手段への押圧力の低減を行うことができる。
【0051】
実施例3における画像形成装置の構成、1次転写手段の構成、1次転写手段への押圧力低減方法などは実施例1と同様のため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、1次転写手段への押圧力低減方法は図3に示す。
【0052】
以下に、本実施例3の特徴を説明する。
前述したとおり、本実施例3では、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量を検出し、その差分を算出することで、導電樹脂シート101と中間転写
ベルト13の摺動負荷変動を把握する。本実施例3では、前記駆動モータ消費電流量の差分に応じて、1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。
【0053】
尚、本実施例3では、前記駆動モータ消費電流量の差分が1.5[A]を超えた場合、1次転写手段の押圧力を一定量だけ低減する。具体的には、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させる。さらに、前記駆動モータ消費電流量の差分が2[A]を超えた場合、1次転写手段の押圧力をさらに低減する。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させる。
【0054】
図10を用いて、本実施例3の作用効果を説明する。
本実施例3の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施し、通紙枚数に対する1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量の測定結果及び1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の算出結果を図10(A)に示す。
図10(A)には、1次転写電圧印加時、無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量と、その差分を示している。尚、トナーカートリッジは通紙枚数1万5千枚時、3万枚時に新品トナーカートリッジと交換している。それゆえに、通紙枚数1万5千枚時、3万枚時に駆動モータ消費電流量が低減している。
【0055】
1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分に着目すると、トナーカートリッジの交換による影響が除去されていることがわかる。また、通紙枚数2万枚時に1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分が1.5[A]を超えたため、1次転写手段への押圧力を低減するための動作を実施した。具体的には、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、押圧力を350gfから250gfに低減させた。
【0056】
次に、通紙枚数3万5千枚時に1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分が2[A]を超えたため、1次転写手段への押圧力を低減するための動作を実施した。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、押圧力を250gfから150gfに低減させた。
【0057】
図10(B)に実施例3における画像色ずれ抑制効果を確認した結果を示す。図10(B)は通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例3は実施例1、2のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良レベルに至ることはなかった。
【0058】
(実施例4)
実施例1においては、予め定められた通紙積算枚数に達するたびに1次転写手段への押圧力を低減する例を説明した。本実施例4においては、通紙積算枚数の代わりに、1次転写手段に印加する電圧値が予め定められたいくつかの閾値に達するたびに1次転写手段への押圧力を低減する例を説明する。
実施例4における画像形成装置の構成、1次転写手段の構成、押圧力低減方法などは実施例1と同様のため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、押圧力低減方法は図3に示す。
【0059】
以下に、本実施例4の特徴を説明する。
本実施例4の1次転写手段10には、図4に示す高圧電源22と不図示の電流検知回路を備えており、1次転写時には一定電流制御を実施している。
画像形成装置の通紙枚数が増大すると、導電樹脂シート101と中間転写ベルト13の摺擦面が劣化し、1次転写手段の電気抵抗が増大する。これにより、図11(A)に示す
ように、通紙枚数の増大に伴い、1次転写時に印加される1次転写電圧も増大する。また、図11(B)に示すように、1次転写手段の電気抵抗の増大に伴って、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力Neが増大することがわかっている。
【0060】
以上のことから、本実施例4において、1次転写時に印加される1次転写電圧を検出し、その検出結果により1次転写手段の電気抵抗を把握し、前記検出結果に応じて、押圧バネによる1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。
【0061】
尚、本実施例4では1次転写電圧値が500[V]を超えた場合、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させる。さらに、1次転写電圧値が800[V]を超えた場合、1次転写手段の押圧力をさらに低減する。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させる。最後に、1次転写電圧値が1000[V]を超えた場合、図3に示す(C)の状態から(D)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を150gfから50gfに低減させる。
【0062】
以下に、本実施例4の作用効果を説明する。
本実施例4の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施した。この通紙耐久試験によれば、図11(A)に示すように、通紙枚数によって1次転写時に印加される1次転写電圧は変動し、通紙枚数1万枚にて1次転写時に印加される1次転写電圧が500[V]を超えた。そのため、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させた。次に、通紙枚数2万5千枚にて1次転写電圧が800Vを超えたため、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させた。最後に、通紙枚数4万枚にて1次転写電圧が1000[V]を超えたため、1次転写手段への押圧力を150gfから50gfに低減させた。
【0063】
また、通紙耐久試験において、実施例1と同様に、駆動ローラの回転トルクを測定した。その結果を図12に示す。上記のように通紙枚数1万枚、2万5千枚、4万枚にて1次転写時に印加される1次転写電圧値が閾値500[V]、800[V]、1000[V]をそれぞれ超えたため、押圧バネによる1次転写手段への押圧力の低減が行われた。図12(A)によれば、押圧バネによる1次転写手段への押圧力が低減された通紙枚数1万枚、2万5千枚、4万枚にて、駆動ローラ回転トルクが低減しており、結果として通紙枚数の増大による駆動ローラ回転トルクが抑制された。つまり、通紙耐久試験において、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷を一定以下に抑制できていることが確認できた。
【0064】
次に、画像色ずれ量を確認した。図12(B)に本実施例4及び従来例の通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例4は実施例1のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良のレベルに至ることはなかった。
【0065】
尚、画像形成装置の設置場所の温湿度が大きく変化する場合、1次転写部の電気抵抗は大きく変動する場合がある。このような変化に対応するために、温湿度を測定する温湿度測定手段を有し、温湿度測定手段の検出結果に応じて、1次転写手段への押圧力の低減の可否を判断する1次転写電圧の閾値を変更しても良い。
【0066】
上記各実施例に係る画像形成装置は、感光ドラム1a〜1dに形成されたトナー像を、一旦、中間転写ベルト13に転写(1次転写)した後に中間転写ベルト13から記録材・転写材(用紙)上に転写(2次転写)する構成であった。
しかし、本発明に係る画像形成装置の構成はこれに限られるものではない。すなわち、
中間転写ベルトに一旦転写することなく、感光ドラム1a〜1dから転写材上に直接トナー像を転写する構成であってもよい。
この構成であっても、感光ドラム1a〜1dから転写材にトナー像を転写する転写手段の構成を上記各実施例の1次転写手段と同様の構成とすることで、上記各実施例と同様の効果を奏することが可能になる。
【0067】
図14に、本発明のその他の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す。図14に示すように、その他の実施の形態では、転写材カセット16から給送される転写材を、画像形成のタイミングを図って、回転駆動する転写ベルト130(ベルト体)に送り込む。
転写ベルト130上に担持された転写材Pは、タイミングを図って各々の感光ドラム1a〜1dとの転写ニップ部に搬送され、その転写ニップにおいて感光ドラム1a〜1dから直接トナー像が転写される。
なお、転写ベルト130を挟んで感光ドラム1a〜1dの反対側には、感光ドラム1a〜1dの各々に対向する位置に転写手段10a〜10dが配設されている。転写手段10a〜10dの構成は、上記各実施例で説明した1次転写手段と同一であるので、ここではその説明は省略する。
この場合、通紙積算枚数、駆動モータ消費電流量、転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分、転写電圧値等に応じて押圧バネによる導電樹脂シートへの押圧力を低減することで、導電樹脂シートと転写ベルト間の摺動負荷増大を抑制できる。これにより、転写ベルトの回転速度ムラ発生による色ずれ等の画質劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・感光ドラム、10・・・1次転写手段、13・・・中間転写ベルト、15・・・駆動ローラ、101・・・導電樹脂シート、102・・・シート押圧弾性体、105・・・押圧バネ、106・・・カム
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、用紙を搬送する転写ベルトや中間転写ベルトに、シート状の転写部材を、像担持体としての感光ドラムの反対側から接触させる構成のものがある。この構成では、転写部材の自由端側を転写ベルト又は中間転写ベルトに摺擦させた状態で、転写部材に所定の転写バイアスを印加することで、感光体ドラムから中間転写ベルトや用紙にトナー像が転写される。この構成の画像形成装置では、転写ローラを転写部材として用いる画像形成装置に対し装置の小型化、低コスト化、低電力化が期待できる。
【0003】
例えば特許文献1の画像形成装置では、図13に示すように、感光ドラム1aに形成されたトナー像を中間転写ベルト13に転写するための転写部材として、導電性と弾力性を有する導電樹脂シート32aを用いている。この導電樹脂シート32aは端部が支持部材33aに固定されることにより支持され、中間転写ベルト13の移動方向下流側に設けられた自由端が感光ドラム1aの反対側から中間転写ベルト13に当接する。この導電樹脂シート32aは、押圧部材31aを介して押圧バネ36aによって中間転写ベルト13の裏面に押圧され接触することにより、導電樹脂シート32aと中間転写ベルト13の裏面とが長手方向に均一に密着する。この導電樹脂シート32aに転写電圧(バイアス)が印加されると、感光ドラム1aに形成されたトナー像が中間転写ベルト13に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に示したシート状の転写部材では、画像形成装置の通紙枚数の増大に伴って、導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺擦面が劣化し、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷が増大する。摺動負荷が増大すると、中間転写ベルトを移動させる駆動ローラと中間転写ベルトがスリップするなどして中間転写ベルトの移動速度にムラが生じ、複数色のトナーの中間転写ベルト上の位置が正確に一致しなくなり、色ずれが発生する場合がある。導電樹脂シートが用紙などの転写材を搬送する転写ベルトである場合も同様である。
【0006】
そこで本発明は、シート状の転写部材を用いる画像形成装置において、通紙枚数の増大に伴う転写部材と転写ベルト又は中間転写ベルトとの摺動負荷の増大を抑制し、色ズレなどの画質劣化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トナー像を担持する回転可能な像担持体と、
回転する無端状のベルト体と、
前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、
前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、
を有し、
前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、
前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、
段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状の転写部材を用いる画像形成装置において、通紙枚数の増大に伴う転写部材と転写ベルト又は中間転写ベルトとの摺動負荷の増大を抑制し、色ズレなどの画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例に係る1次転写手段の構成を示す図
【図2】実施例に係る1次転写手段の部品を示す斜視図
【図3】実施例に係る1次転写手段への押圧力を変更する機構の動作を示す図
【図4】実施例に係る画像形成装置の構成、摺動負荷と駆動トルクの関係を示す図
【図5】通紙枚数による摩擦係数、垂直抗力、摺動負荷の変化を示す図
【図6】通紙枚数による駆動ローラ回転トルク、色ずれ量の変化を示す図
【図7】駆動モータ消費電流量と駆動ローラ回転トルクの関係を示す図
【図8】通紙枚数による駆動モータ消費電流量、色ずれ量の変化を示す図
【図9】通紙枚数による駆動モータ消費電流量の変化を示す図
【図10】通紙枚数による駆動モータ消費電流量、色ずれ量の変化を示す図
【図11】実施例における通紙枚数による1次転写電圧の変化を示す図
【図12】通紙枚数による駆動モータ回転トルク、色ずれ量の変化を示す図
【図13】従来例に係る1次転写手段の構成を示す図
【図14】その他の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、感光ドラム等の像担持体に形成するトナー像を、用紙等の転写材や中間転写ベルト等の中間転写体に転写するために、用紙を搬送する転写ベルトや中間転写ベルトの裏面にシート状の転写部材を接触させる構成の電子写真方式の画像形成装置に適用できる。
【0011】
(実施例1)
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施例について図4に則して説明する。
まず、露光、潜像、1次転写工程について説明する。
画像形成装置本体にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーに応じた画像形成ステーションY、M、C、Kが設けられる。また、各画像形成ステーションには、像担持体としての回転可能な感光ドラム1a〜1dが設けられている。感光ドラム1a〜1dには、感光ドラム1の回転方向から順に、帯電ローラ2a〜2d、現像ユニット8a〜8d、クリーニングユニット3a〜3dが設けられており、これらがプロセスカートリッジ9a〜9dとして一体化されている。なお、4つの画像形成ステーションY、M、C、Kの構成は全て同一であるので、以下、イエローの画像形成ステーションYの構成のみ説明を行い、他の画像形成ステーション(M、C、K)の構成の説明は省略する。
感光ドラム1aは、アルミシリンダーの外周面に有機感光体(OPC)から成る光導電体を塗布して構成される。静電潜像担持体である感光ドラム1aは外径24mmであり、不図示の駆動手段によって図示矢印方向に駆動される。また、感光ドラム1aは、帯電ローラ2aにより負極性に帯電される。
【0012】
次に、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットまたはLEDアレイから構成される露光手段11aにより、第1色目(本実施例1では、イエロー)の画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aが感光ドラム1a上に照射される。これにより、感光ドラム1a上に第1色目の静電潜像が形成される。この感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像スリーブ4aに到達すると、静電潜像における露光を受けた箇所は負極性のトナーによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(本実施例1では、イエロー)のトナーが形成される。尚、現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像スリーブ4aに塗布されている。また、現像スリーブ4aには、高圧電源21aより、負極性の電圧が供給されている。
【0013】
そして、高圧電源22aから1次転写手段10aにトナーと逆極性の電圧(バイアス)が供給され、感光ドラム1a上のトナー(本実施例1では、イエロー)は回転する無端状のベルト体である中間転写ベルト13上に転写される。1次転写手段10aは、中間転写ベルト13の内周面側に配置され、中間転写ベルト13の外周面側に配置される感光ドラム1aの担持するトナー像を中間転写ベルトに転写する。
また、感光ドラム1aから中間転写ベルト13に転写されずに感光ドラム1a上に残留した1次転写残トナーは、感光ドラム1a表面に当接するクリーニングブレード3aによって捕集される。
以上の行程が第2〜4色目であるマゼンタ色、シアン色、黒色についても同様に行われ、中間転写ベルト13上に複数色のトナーが重ね合わされる。第2〜4色目の画像形成動作は第1色目と同様であるため、説明を省略する。
【0014】
次に、2次転写工程、中間転写ベルトクリーニング、定着工程について説明する。
複数色のトナーが中間転写ベルト13上に転写された後、転写材カセット16に積載されている転写材P(以下、用紙と称する)は、給紙ローラ17によりピックアップされる。そして、用紙は、2次転写ローラ25と駆動ローラ15とのニップ部(2次転写部)へ、不図示の搬送ローラ、レジストローラ18を経て1枚ずつタイミングを図って送り込まれる。尚、中間転写ベルト13上に形成されたトナーの先端と用紙の先端が一致するタイミングで、前記2次転写部へ用紙が移動する。駆動ローラ15は駆動モータ150により駆動される。
【0015】
その後、高圧電源26から2次転写ローラ25にトナーと逆極性の電圧が供給され、中間転写ベルト13上の複数色のトナーは一括して用紙に転写される。その後、ベルトクリーニング部材27によって、中間転写ベルト13上に残留した2次転写残トナーが中間転写ベルトから除去される。
2次転写終了後の用紙は、定着手段19へと移動し、定着ニップ部を通過する際に熱と圧力を受けてトナーが定着し、カラー画像形成物(プリント、コピー)として画像形成装置外へと排出される。
【0016】
以下に、本実施例1で使用した各部品について説明する。
中間転写ベルト13は、厚さ100μm、体積抵抗率1011Ω・cmの汎用エンプラシートを用いている。尚、体積抵抗率は、三菱化学株式会社のHiresta−UP(MCP−HT450)、UR測定プローブを用い測定した。また、測定時の室内温度は23℃、室内湿度は50%に設定し、印加電圧500V、測定時間10secとした。
中間転写ベルト13は、駆動ローラ15、テンションローラ14の2本のローラ上に張架され、駆動ローラ15がモータ150により図中矢印の方向に回転することにより、中間転写ベルト13は図中矢印の方向に移動する。モータ150は中間転写ベルト13を回転させるための動力を出力する駆動手段である。
【0017】
2次転写ローラ25は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に体積抵抗率を108Ω・cm、厚み5mmに調整したNBRの発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いた。また、2次転写ローラ25は、中間転写ベルト13に対して、250g/cm2程度の面圧で当接させ、且つ中間転写ベルト13の移動方向に対して順方向に略等速度で回転する様に配置した。尚、2次転写ローラ25は従動とし、中間転写ベルト13を介して2次転写ローラ25に対向する駆動ローラ15の回転に連れ回るように構成した。画像形成装置の用紙の移動速度は50[mm/sec]とした。
【0018】
以下に、図1、2、3を用いて、本実施例1の特徴を説明する。上記で説明したように、本実施の形態に係る画像形成装置は、4つの感光ドラム1a〜1dの各々に対して1次転写手段10a〜10dが設けられる構成である。1次転写手段10a〜10dの構成は全て同一であるので、ここでは1次転写手段10aの構成のみ説明し、他の1次転写手段の説明については省略する。
図1は本実施例1で使用する1次転写手段10aの断面図を示している。1次転写手段10aは、導電樹脂シート101a、シート押圧弾性体102a、シート支持部材104a、シートカバー部材103a、押圧バネ105a、押圧バネ受け面107a、前記押圧バネ受け面107aを支えるカム106a、カムシャフト108aを含む。導電樹脂シート101aは、トナー像を担持する回転可能な像担持体である感光ドラム1aからトナー像が転写される移動可能なベルト体である中間転写ベルト13の内周面に当接するシート部材である。
シート押圧弾性体102aは、感光ドラム1aの反対側から導電樹脂シート101aを中間転写ベルト13の方向へ押圧する弾性部材である。前記押圧バネ105aは、シート押圧弾性体102aを導電樹脂シート101aの方向へ付勢し中間転写ベルト13に押圧密着させる付勢部材である。また、カムシャフト108aを回転中心として、カム106aが矢印方向に回転することで、押圧バネ受け面107aの、押圧バネ105aによる付勢方向の位置が変動する。これにより、押圧バネ105aの使用長(押圧バネ受け面107aとシート支持部材104aとの押圧バネ105aによる付勢方向の距離)が変化する。よって、押圧バネ105aがシート押圧弾性体102aを導電樹脂シート101aの方向へ押圧する力が可変となり、従って導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との密着力が可変となる。モータ1080がカムシャフト108aを回転させる動力を出力することにより、カム106aが回転する。カム106a、カムシャフト108a、モータ1080は押圧バネ105aによる付勢力を調節する調節機構である。CPU1081はモータ1080を制御する制御手段である。なお、CPU1081、モータ1080は画像形成ステーション毎に別個に設けられていても良いし、画像形成ステーションY,M,C,Kで共通としても良い。ここでは4つの画像形成ステーションで共通のCPU1081及びモータ1080を用いるものとし、画像形成ステーションの区別を表す添え字「a」を付していない。
【0019】
図2は前述した1次転写手段10aの各部品の斜視図である。押圧バネ105aは押圧バネ受け面107aの長手方向端部近傍の2箇所に配置され、押圧バネ受け面107aは板形状で、押圧バネ受け面107aの下方にカム106aが配置される。また、カム106aはカムシャフト108aの両端に取り付けられ、不図示の回転機構によりカムシャフト108aを中心に矢印方向に回転する。
尚、導電樹脂シート101aは中間転写ベルト13と摺動し、導電樹脂シート101aに図4(A)に示した高圧電源22aから電圧を印加することで1次転写が行われる。
【0020】
本実施例では、導電樹脂シート101aとして線膨張係数17.0(10−5/℃)、表面抵抗率10(KΩ/□)の超高分子導電ポリエチレンシートを使用し、シート押圧弾性体102aとして発泡ウレタンを使用した。また、導電樹脂シート101aの表面抵抗率測定には三菱化学株式会社のHiresta−UP(MCP−HT450)、UR−1
00測定プローブを用いた。
【0021】
図3はカム106aの回転により段階的に変化する4通りの押圧バネ105aの状態をそれぞれ図示している。押圧バネ105aの自然長は30mm、バネ定数10gf/mmとする。また、1次転写手段10aの重量は50gとする。
【0022】
画像形成装置の初期状態での1次転写手段10aの状態を図3(A)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R1は20mmである。また、押圧バネ105aの使用長は10mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによるによる押圧力(付勢力)は200gf×2本=400gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は400−50=350gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数1万枚まではこの状態が維持される。
【0023】
次に、図3(A)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(B)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R2は15mmである。また、押圧バネ105aの使用長は15mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は150gf×2本=300gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は300−50=250gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数1万枚から2万枚まではこの状態を維持する。
【0024】
さらに、図3(B)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(C)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R3は10mmである。また、押圧バネ105aの使用長は20mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は100gf×2本=200gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は200−50=150gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数2万枚から3万枚まではこの状態を維持する。
【0025】
最後に、図3(C)の状態からカム106aを90°回転した状態を図3(D)に示す。カム106aの回転中心から押圧バネ受け面107aまでの距離R4は5mmである。また、押圧バネ105aの使用長は25mmであり、押圧バネ105aを2本使用していることから、押圧バネ105aによる押圧力は50gf×2本=100gfになる。よって、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13へ押圧される押圧力は100−50=50gfとなる。画像形成装置の積算通紙枚数3万枚からはこの状態を維持する。
【0026】
以上に示したように、本実施例1は、カム106aを回転させることで、押圧バネ受け面107aの位置を可変とし、押圧バネ105aの使用長を通紙積算枚数の増大に応じて段階的に増大させる構成を採用した。そして、画像形成装置の通紙積算枚数の増大に応じて、押圧バネ105aによる押圧力を段階的に低減することを特徴としている。
【0027】
本実施例1において期待できる作用を説明する。
図1(B)は、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との摺動負荷を説明する図である。摺動負荷Fは導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摩擦係数μ、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13を押圧する垂直抗力Nの積で説明できる。さらに、前記垂直抗力Nは押圧バネ105aによる押圧力Nb、導電樹脂シート101aに転写電圧を印加することで導電樹脂シート101a表面と中間転写ベルト13裏面間が電気的に密着する静電吸着力Neに分解することができる。前記静電吸着力Neの発生要因として、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13に含有される導電剤の脱落や放電
による酸化等による互いに摺擦する面の劣化が考えられる。これにより、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摺擦面に誘電層とみなせる層ができ、転写電圧(バイアス)印加により導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13との間に引力が作用し静電的に吸着すると考えられる。ここでは引力は静電引力である。尚、劣化後の摺擦面は電気抵抗も増大する。
【0028】
図5(A)に示すように、画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摩擦係数μが増大する。これは、導電樹脂シート101a表面の平滑化によって導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13裏面の接触面積が増大することが原因と考えられる。
【0029】
図5(B)に示すように、画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、静電吸着力Neが大幅に増大する。これは、前述したように導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13の摺擦面の劣化が通紙枚数の増大に伴って進行することが原因と考えられる。従って、静電吸着力Neは中間転写ベルト13と導電樹脂シート101aとの当接部位の劣化の度合を示す。図13に示した従来技術では、図5(B)のグラフB2に示すように、導電樹脂シートを押圧する押圧バネの押圧力Nbが一定であった。そのため、導電樹脂シートが中間転写ベルトを押圧する垂直抗力Nは、グラフB1に示すように、通紙枚数増大に伴って大きく増大していた。以上の摩擦係数増大、静電吸着力増大、押圧力一定により、従来技術では、図5(C)のグラフB3に示すように、摺動負荷Fは画像形成装置の通紙枚数増大に応じて、大きく増大していた。
【0030】
しかしながら、本実施例1では、上述のように、押圧バネ105aの付勢力が通紙積算枚数(印字枚数)の増大に応じた予め定められたタイミングで低減される。具体的には、CPU1081が不図示の通紙積算枚数をカウントする手段から通紙積算枚数の情報を取得し、通紙積算枚数が予め定められた複数の閾値の各々に達するたびにモータ1080に駆動指令を送信してカム106aを90°回転させる。これにより、例えば図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移する。そのため、図5(B)のグラフA2に示すように、導電樹脂シート101aを押圧する押圧バネ105aの押圧力Nbが通紙積算枚数に応じた予め定められたタイミングで低減する。これにより、図5(B)のグラフA1に示すように、導電樹脂シート101aが中間転写ベルト13を押圧する垂直抗力Nが積算通紙枚数に応じた予め定められたタイミングで低減する。よって、図5(C)のグラフA3に示すように、本実施例では、通紙積算枚数が増大しても摺動負荷が大幅に増大することを抑制できる。
【0031】
なお、図5(B)において、導電樹脂シート101aと中間転写ベルト13とを均一に密着させ、圧抜けによる画像不良を発生させないために必要な垂直抗力値をN1としている。押圧バネ105aの押圧力を低減する場合、通紙枚数によらず垂直抗力NをN1より大きくする必要がある。従って、カム106aの回転により押圧バネ105aの押圧力を低減させた後の垂直抗力がN1を下回らない条件、例えば静電吸着力Neがある程度増大した状態で、押圧バネ105aの押圧力の低減を行う。
【0032】
図4、図6を用いて本実施例1の作用効果を説明する。
本実施例1の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施した。初期、1万枚、2万枚、3万枚、5万枚通紙時の導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を駆動ローラ15の回転トルクの測定により確認した。比較のために、図13に示した従来例を採用した場合においても、同様の確認を行った。
【0033】
図4(B)を用いて、前記摺動負荷と駆動ローラ15の回転トルクの関係を示す。導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13との画像形成ステーションY、M,C,K
における摺動負荷をそれぞれFa、Fb、Fc、Fdとし、駆動ローラ15の外径を2rとする。この場合、駆動ローラ15の回転トルクT=r×(Fa+Fb+Fc+Fd)で示される。以上より、駆動ローラ15の回転トルクの測定により、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を把握(推定)することができる。
【0034】
図6(A)に通紙枚数に応じた駆動ローラ回転トルクの測定値を示す。図6(A)によれば、従来例の場合、通紙枚数の増大に応じて、駆動ローラ回転トルクが大きく増大している。よって、通紙枚数の増大に応じて、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷が増大していることがわかる。
【0035】
一方、本実施例1によれば、通紙積算枚数が予め定められたタイミングである1万枚、2万枚、3万枚を経過するたびに、押圧バネ105a〜dによる押圧力が初期の350gfから順次250gf、150gf、50gfと低減される。これにより、押圧バネ105a〜dによる押圧力が低減されるタイミングで、駆動ローラ回転トルクが低減しており、通紙枚数の増大に伴って従来例のような駆動ローラ回転トルクの大幅な増大が見られなかった。通紙枚数によらず、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷を一定以下に抑制できていることが確認できた。
【0036】
次に、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷の増大による画像への影響を確認するため、画像の色ずれ量を確認した。上述したように、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷がある程度以上大きくなると、駆動ローラ15と中間転写ベルト13の微小なスリップにより色ずれが生じ、画像不良として顕在化する。
【0037】
図6(B)に通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。尚、色ずれ量100μm未満であれば“○”、色ずれ量100μm以上150μm未満であれば“△”、色ずれ量150μm以上であれば“×”と評価した。
図6(B)によれば、従来例は通紙積算枚数2万枚を超えてから、色ずれ量が大きくなり、通紙積算枚数3万枚をこえてから色ずれ量は不良レベルに至った。
一方、本実施例1は通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が不良レベルに至ることはなかった。
【0038】
本実施例1によれば、1次転写手段10a〜dにおける良好な転写性能を維持しながら、中間転写ベルト13の回転速度ムラを生じさせる摺動負荷増大を抑制し、画像形成装置の動作時間(通紙積算枚数)によらず色ずれ等の画質劣化を抑制することができる。
中間転写ベルト13の移動量や、駆動ローラ15の回転数や、1次転写手段10a〜dの高圧電源22a〜dの積算動作時間などを画像形成装置の動作時間を示す情報として取得・検出し、その情報に基づき、押圧バネ105a〜dの押圧力を低減しても良い。例えば、中間転写ベルト13の移動量の増大、駆動ローラ15の回転数の増大、高圧電源22a〜dの積算動作時間の増大に応じて、押圧バネ105a〜dの押圧力(付勢力)を低減するようにしても良い。中間転写ベルト13の移動量や駆動ローラ15の回転数は、例えば画像形成装置の初回動作開始時点等のある基準時点からの移動量の積算値や回転数の積算値とすることができる。
【0039】
(実施例2)
実施例1においては、予め定められた通紙積算枚数に応じて1次転写手段への押圧力を低減するという予測制御を行う例を説明した。
本実施例2では、予測制御ではなく、1次転写手段への押圧力低減の必要性を判定し、判定結果に応じて押圧力を低減する例を説明する。
実施例2における画像形成装置や1次転写手段の構成、押圧力低減方法などは実施例1
と同様の構成を採用するため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、押圧力低減方法は図3に示す。
【0040】
以下に、本実施例2の特徴を説明する。
前述のように、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13間の摺動負荷と、駆動ローラ回転トルクTとには相関がある(図4(B)参照)。この駆動ローラ15の駆動源である駆動モータ150の消費電流量と駆動ローラ回転トルクTとにも相関がある。図7に駆動ローラ回転トルクと駆動モータ消費電流量の関係を示す。図7に示すように、駆動ローラ回転トルクが大きくなるほど駆動モータ消費電流量が大きくなる。
以上のことから、駆動ローラ15の駆動源である駆動モータ150に供給される電流値を測定すれば、導電樹脂シート101a〜dと中間転写ベルト13の摺動負荷を把握(推定)することが可能である。
【0041】
本実施例2においては、前記駆動モータ150の消費電流量を測定し、消費電流量が閾値を超えた場合、前記駆動モータ150の消費電流量が閾値以下となるよう1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。尚、閾値は、色ずれ量100μmを超えると推定できる駆動モータ消費電流量に基づき定め、本実施例では3[A]に設定する。
【0042】
図8(A)を用いて、本実施例2の作用効果を説明する。
本実施例2の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施し、通紙枚数に対する駆動モータ消費電流量を測定した。その結果を図8(A)に示す。比較として、従来例、実施例1を採用した場合についての測定結果も示す。
実施例2において、通紙枚数1万5千枚時、駆動モータ消費電流量が3Aを超えたことを検出したため、1次転写手段への押圧力を低減した。具体的には、1次転写手段を図3(A)に示す状態から、図3(B)の状態に遷移させた。
【0043】
その後、通紙耐久試験を継続し、通紙枚数3万枚時に再び駆動モータ消費電流量が3Aを超えたため、1次転写手段への押圧力の低減を実施した。具体的には、1次転写手段を図3(B)に示す状態から、図3(C)の状態に遷移させた。図8(A)に示すように、従来例では通紙枚数の増大に応じて駆動モータ消費電流量が色ずれ不良が発生する閾値3Aを超えて増大する。一方、実施例1では所定枚数に達したタイミングで、実施例2では駆動モータ消費電流量が閾値3Aに達したタイミングで、押圧力の低減が行われるため、駆動モータ消費電流量が閾値3A以下の状態が維持された。
【0044】
次に、画像の色ずれ量を確認した。図8(B)に通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例2は実施例1のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良のレベルに至ることはなかった。
【0045】
以上のように、1次転写手段への押圧力低減の必要性を判定し、判定結果に応じて押圧力を低減する制御を実施することで、導電樹脂シートと中間転写ベルト裏面間の摺動負荷増大を抑制し、中間転写ベルトの回転速度ムラ発生による色ずれを抑制することができた。
なお、本実施例2では、1次転写手段への押圧力を低減する必要性の判定を中間転写ベルトを駆動する駆動モータの消費電流量の測定結果に基づいて判定する例を説明した。しかし、判定のために測定する物理量は、中間転写ベルトと導電樹脂シートとの摺動負荷を推定できる物理量であれば、駆動モータの消費電流量に限定されない。測定する物理量に応じて、色ずれ不良が発生する閾値を予め調べて設定し、測定値と閾値との大小比較により1次転写手段への押圧力の低減の必要性を判定すると良い。
【0046】
(実施例3)
中間転写ベルトを回転させる駆動ローラとトナーカートリッジの感光ドラムの駆動源が同一のモータである画像形成装置の場合、実施例2のように駆動モータの消費電流量から導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷を把握するのは困難である。なぜなら、トナーカートリッジの使用状況に応じて感光ドラムの回転負荷も変動し、この影響によっても、駆動モータの消費電流量が変動してしまう。例えば、図9(A)に示すように、通紙枚数C1、C2のポイントでトナーカートリッジを新品に交換した場合、駆動モータの消費電流量が低減しており、トナーカートリッジの使用状況によって、駆動モータの消費電流量が異なることがわかる。
【0047】
このような画像形成装置において、駆動モータの消費電流量に基づき導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷を把握するためには、駆動モータの消費電流量からトナーカートリッジ要因を取り除く必要がある。
1次転写手段へ電圧を印加した場合の駆動モータ消費電流量と印加しない場合の駆動モータ消費電流量との差分を算出すれば、両者に含まれるトナーカートリッジ要因が相殺される。ここで、1次転写手段へ電圧を印加した場合、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力が発生し、1次転写手段へ電圧を印加しない場合、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力が発生しない。従って、1次転写手段へ電圧を印加した場合の駆動モータ消費電流量と印加しない場合の駆動モータ消費電流量との差分は、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力に対応する。
【0048】
図9(B)に、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量の通紙枚数に応じた変化を示す。また、1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の通紙枚数に応じた変化を図9(C)に示す。
上述のように、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力は、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化により増大する(図5(B)の静電吸着力Neのグラフ参照)。図9(C)で得られるような、1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の通紙枚数による変化は、図5(B)に示すような静電吸着力Neの通紙枚数による変化に対応する。
【0049】
従って、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力から、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合を推定できる。導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合が予め定められたいくつかの閾値に達するたびに、1次転写手段への押圧力の低減を行うことにより、導電樹脂シートと中間転写ベルトの摺動負荷が大幅に増大することを抑制できる。
【0050】
そこで本実施例3では、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力を把握するために、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量を測定し、その差分を算出する。そして、算出した差分に基づき1次転写手段への押圧力の低減を行う。これにより、中間転写ベルトを回転させる駆動ローラとトナーカートリッジ感光ドラムの駆動源として同一の駆動モータを用いる画像形成装置において、駆動モータ消費電流量からトナーカートリッジ要因を除去することができる。さらに、導電樹脂シート中間転写ベルトとの摺擦面の劣化度合に応じた1次転写手段への押圧力の低減を行うことができる。
【0051】
実施例3における画像形成装置の構成、1次転写手段の構成、1次転写手段への押圧力低減方法などは実施例1と同様のため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、1次転写手段への押圧力低減方法は図3に示す。
【0052】
以下に、本実施例3の特徴を説明する。
前述したとおり、本実施例3では、1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量を検出し、その差分を算出することで、導電樹脂シート101と中間転写
ベルト13の摺動負荷変動を把握する。本実施例3では、前記駆動モータ消費電流量の差分に応じて、1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。
【0053】
尚、本実施例3では、前記駆動モータ消費電流量の差分が1.5[A]を超えた場合、1次転写手段の押圧力を一定量だけ低減する。具体的には、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させる。さらに、前記駆動モータ消費電流量の差分が2[A]を超えた場合、1次転写手段の押圧力をさらに低減する。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させる。
【0054】
図10を用いて、本実施例3の作用効果を説明する。
本実施例3の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施し、通紙枚数に対する1次転写電圧印加時及び無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量の測定結果及び1次転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分の算出結果を図10(A)に示す。
図10(A)には、1次転写電圧印加時、無印加時それぞれの駆動モータ消費電流量と、その差分を示している。尚、トナーカートリッジは通紙枚数1万5千枚時、3万枚時に新品トナーカートリッジと交換している。それゆえに、通紙枚数1万5千枚時、3万枚時に駆動モータ消費電流量が低減している。
【0055】
1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分に着目すると、トナーカートリッジの交換による影響が除去されていることがわかる。また、通紙枚数2万枚時に1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分が1.5[A]を超えたため、1次転写手段への押圧力を低減するための動作を実施した。具体的には、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、押圧力を350gfから250gfに低減させた。
【0056】
次に、通紙枚数3万5千枚時に1次転写電圧印加時、無印加時の駆動モータ消費電流量の差分が2[A]を超えたため、1次転写手段への押圧力を低減するための動作を実施した。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、押圧力を250gfから150gfに低減させた。
【0057】
図10(B)に実施例3における画像色ずれ抑制効果を確認した結果を示す。図10(B)は通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例3は実施例1、2のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良レベルに至ることはなかった。
【0058】
(実施例4)
実施例1においては、予め定められた通紙積算枚数に達するたびに1次転写手段への押圧力を低減する例を説明した。本実施例4においては、通紙積算枚数の代わりに、1次転写手段に印加する電圧値が予め定められたいくつかの閾値に達するたびに1次転写手段への押圧力を低減する例を説明する。
実施例4における画像形成装置の構成、1次転写手段の構成、押圧力低減方法などは実施例1と同様のため、説明を省略する。尚、画像形成装置の構成は図4、1次転写手段の構成は図1(A)、押圧力低減方法は図3に示す。
【0059】
以下に、本実施例4の特徴を説明する。
本実施例4の1次転写手段10には、図4に示す高圧電源22と不図示の電流検知回路を備えており、1次転写時には一定電流制御を実施している。
画像形成装置の通紙枚数が増大すると、導電樹脂シート101と中間転写ベルト13の摺擦面が劣化し、1次転写手段の電気抵抗が増大する。これにより、図11(A)に示す
ように、通紙枚数の増大に伴い、1次転写時に印加される1次転写電圧も増大する。また、図11(B)に示すように、1次転写手段の電気抵抗の増大に伴って、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の静電吸着力Neが増大することがわかっている。
【0060】
以上のことから、本実施例4において、1次転写時に印加される1次転写電圧を検出し、その検出結果により1次転写手段の電気抵抗を把握し、前記検出結果に応じて、押圧バネによる1次転写手段への押圧力を低減することを特徴とする。
【0061】
尚、本実施例4では1次転写電圧値が500[V]を超えた場合、図3に示す(A)の状態から(B)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させる。さらに、1次転写電圧値が800[V]を超えた場合、1次転写手段の押圧力をさらに低減する。具体的には、図3に示す(B)の状態から(C)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させる。最後に、1次転写電圧値が1000[V]を超えた場合、図3に示す(C)の状態から(D)の状態へ遷移させ、1次転写手段への押圧力を150gfから50gfに低減させる。
【0062】
以下に、本実施例4の作用効果を説明する。
本実施例4の作用効果を確認するため、通紙耐久試験を実施した。この通紙耐久試験によれば、図11(A)に示すように、通紙枚数によって1次転写時に印加される1次転写電圧は変動し、通紙枚数1万枚にて1次転写時に印加される1次転写電圧が500[V]を超えた。そのため、1次転写手段への押圧力を350gfから250gfに低減させた。次に、通紙枚数2万5千枚にて1次転写電圧が800Vを超えたため、1次転写手段への押圧力を250gfから150gfに低減させた。最後に、通紙枚数4万枚にて1次転写電圧が1000[V]を超えたため、1次転写手段への押圧力を150gfから50gfに低減させた。
【0063】
また、通紙耐久試験において、実施例1と同様に、駆動ローラの回転トルクを測定した。その結果を図12に示す。上記のように通紙枚数1万枚、2万5千枚、4万枚にて1次転写時に印加される1次転写電圧値が閾値500[V]、800[V]、1000[V]をそれぞれ超えたため、押圧バネによる1次転写手段への押圧力の低減が行われた。図12(A)によれば、押圧バネによる1次転写手段への押圧力が低減された通紙枚数1万枚、2万5千枚、4万枚にて、駆動ローラ回転トルクが低減しており、結果として通紙枚数の増大による駆動ローラ回転トルクが抑制された。つまり、通紙耐久試験において、導電樹脂シートと中間転写ベルト間の摺動負荷を一定以下に抑制できていることが確認できた。
【0064】
次に、画像色ずれ量を確認した。図12(B)に本実施例4及び従来例の通紙枚数に応じた色ずれ量測定結果を示す。本実施例4は実施例1のときと同様に、通紙積算枚数によらず色ずれ量は100μm未満であり、色ずれ量が画像不良のレベルに至ることはなかった。
【0065】
尚、画像形成装置の設置場所の温湿度が大きく変化する場合、1次転写部の電気抵抗は大きく変動する場合がある。このような変化に対応するために、温湿度を測定する温湿度測定手段を有し、温湿度測定手段の検出結果に応じて、1次転写手段への押圧力の低減の可否を判断する1次転写電圧の閾値を変更しても良い。
【0066】
上記各実施例に係る画像形成装置は、感光ドラム1a〜1dに形成されたトナー像を、一旦、中間転写ベルト13に転写(1次転写)した後に中間転写ベルト13から記録材・転写材(用紙)上に転写(2次転写)する構成であった。
しかし、本発明に係る画像形成装置の構成はこれに限られるものではない。すなわち、
中間転写ベルトに一旦転写することなく、感光ドラム1a〜1dから転写材上に直接トナー像を転写する構成であってもよい。
この構成であっても、感光ドラム1a〜1dから転写材にトナー像を転写する転写手段の構成を上記各実施例の1次転写手段と同様の構成とすることで、上記各実施例と同様の効果を奏することが可能になる。
【0067】
図14に、本発明のその他の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す。図14に示すように、その他の実施の形態では、転写材カセット16から給送される転写材を、画像形成のタイミングを図って、回転駆動する転写ベルト130(ベルト体)に送り込む。
転写ベルト130上に担持された転写材Pは、タイミングを図って各々の感光ドラム1a〜1dとの転写ニップ部に搬送され、その転写ニップにおいて感光ドラム1a〜1dから直接トナー像が転写される。
なお、転写ベルト130を挟んで感光ドラム1a〜1dの反対側には、感光ドラム1a〜1dの各々に対向する位置に転写手段10a〜10dが配設されている。転写手段10a〜10dの構成は、上記各実施例で説明した1次転写手段と同一であるので、ここではその説明は省略する。
この場合、通紙積算枚数、駆動モータ消費電流量、転写電圧印加時及び無印加時の駆動モータ消費電流量の差分、転写電圧値等に応じて押圧バネによる導電樹脂シートへの押圧力を低減することで、導電樹脂シートと転写ベルト間の摺動負荷増大を抑制できる。これにより、転写ベルトの回転速度ムラ発生による色ずれ等の画質劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・感光ドラム、10・・・1次転写手段、13・・・中間転写ベルト、15・・・駆動ローラ、101・・・導電樹脂シート、102・・・シート押圧弾性体、105・・・押圧バネ、106・・・カム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する回転可能な像担持体と、
回転する無端状のベルト体と、
前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、
前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、
を有し、
前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、
前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、
段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像形成装置による印字枚数の情報を取得し、印字枚数の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ベルト体の移動量の情報を取得し、移動量の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像形成装置の動作時間の情報を取得し、動作時間の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、バイアスを印加したときの前記シート部材と前記ベルト体との間に作用する引力の大きさを示す情報を取得し、引力の大きさの増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動手段に供給される電流値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記引力の大きさを示す情報として、前記シート部材にバイアスを印加した状態で前記ベルト体を移動させたときの前記駆動手段に供給される電流値と、前記シート部材にバイアスを印加しない状態で前記ベルト体を移動させたときの前記駆動手段に供給される電流値と、の差分を取得し、差分の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート部材に印加されるバイアスの電圧値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、バイアスの電圧値の情報を取得し、バイアスの電圧値の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動手段に供給される電流値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記駆動手段に供給される電流値を取得し、電流値が所定の閾値を超えた場合に前記付勢力を低減することにより、前記電流値が前記閾値以下になるように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナー像を担持する回転可能な像担持体と、
回転する無端状のベルト体と、
前記ベルト体の内周面側に配置され、前記像担持体が担持するトナー像を前記ベルト体又は前記ベルト体が担持する記録材に転写する転写部材と、
前記ベルト体を回転させるための動力を出力する駆動手段と、
を有し、
前記転写部材は、前記ベルト体の内周面に当接するシート部材と、前記シート部材を前記ベルト体の方向へ押圧する弾性部材と、前記弾性部材を前記シート部材の方向へ付勢する付勢部材と、を備える画像形成装置において、
前記付勢部材による付勢力を調節する調節機構と、
段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像形成装置による印字枚数の情報を取得し、印字枚数の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ベルト体の移動量の情報を取得し、移動量の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像形成装置の動作時間の情報を取得し、動作時間の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、バイアスを印加したときの前記シート部材と前記ベルト体との間に作用する引力の大きさを示す情報を取得し、引力の大きさの増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動手段に供給される電流値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記引力の大きさを示す情報として、前記シート部材にバイアスを印加した状態で前記ベルト体を移動させたときの前記駆動手段に供給される電流値と、前記シート部材にバイアスを印加しない状態で前記ベルト体を移動させたときの前記駆動手段に供給される電流値と、の差分を取得し、差分の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート部材に印加されるバイアスの電圧値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、バイアスの電圧値の情報を取得し、バイアスの電圧値の増大に応じて段階的に前記付勢力を低減するように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動手段に供給される電流値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記駆動手段に供給される電流値を取得し、電流値が所定の閾値を超えた場合に前記付勢力を低減することにより、前記電流値が前記閾値以下になるように前記調節機構を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−92564(P2013−92564A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232999(P2011−232999)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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