説明

画像投影装置

【課題】遠方に表示されている画像ほどより拡大して表示することにより、観察者が投影画像を正立画像として視認できるよう斜め方向から観察した場合であっても、見やすい画像を表示する画像生成装置を提供する。
【解決手段】画像データに含まれる画像の正立方向を検出する画像方向検出手段25と、画像データを入力し、検出された画像の正立方向に基づいて、画像の下部から上部に向けて左右方向に拡大させる逆台形補正を施した変換画像データを生成する画像変換手段(画像処理回路21)とを備え、光変調素子(LCD8)は、変換画像データを入力して逆台形補正が施された補正画像を含む投影像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに基づいて光源からの光を光変調素子により変調して投影像を生成する画像投影装置に関し、特に、投影された画像を観察する利用者から見て近くに投影されている画像より遠くに投影されている画像ほどより拡大して投影する画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影映像の明るさの分布を観測して、スクリーンの傾きに起因する画像歪み補正を行うプロジェクタが知られている。
【0003】
この画像歪み補正を行うプロジェクタの一形態として、出力画像の歪みの補償に使用するための補正用画像を画像投射部に供給する補正用画像供給部と、撮像情報に応じて仮想投影面における明るさのピーク位置から現実の投影面における明るさのピーク位置への移動量を決定して、当該決定したピーク位置移動量に応じて出力画像の歪みが補償されるように入力画像を予め歪ませる画像処理部とを備えたプロジェクタが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載のプロジェクタでは、所定の補正用の画像を投影することにより、投影面の傾斜の測定誤差を減少させて、より正確な投影面の傾斜を推定することができる旨の記載がなされている。この結果、スクリーンの傾斜に起因する画像の歪みの補償を高い精度で実現することができるとされている。
【特許文献1】特開2005−318510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、机上型などの画像投影装置を用いて机上に画像を投影して表示する場合には、当該画像を見る利用者は、通常、投影画像が正立する位置側の斜め方向から見ることになる。そのために、投影画像の上下方向において、画像の下側ほど利用者に近接し、画像の上側ほど利用者から遠ざかる。即ち、利用者においては、机上等に投影された文字等からなる画像の下側はよく見えるが、上側は下側に比べて文字等が判別し難くなるという課題がある。
【0006】
特許文献1に記載されたプロジェクタにおいては、プロジェクタとこのプロジェクタから投影されるスクリーンとの位置関係において、投影画像の歪を修正しようとするものであるが、スクリーン上に投影された画像自体が有する上下方向と、この画像の上下方向において下側ほど画像が見やすく、上側の画像ほど見難くなることを解決しようとするものではない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、正立画像の上側画像を下側画像よりも相対的に拡大して表示することにより、利用者が投影画像を正立像として視認できるよう斜め方向から観察した場合であっても、見やすい画像を投影することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明においては、入力した画像データに基づいて光源からの光を変調して投影像を生成する画像投影装置において、前記画像データに含まれる画像の正立方向情報を検出する画像方向検出手段と、前記検出された画像の正立方向情報に基づいて、前記画像を、前記画像の下部から上部に向かうほど左右方向に広がるような逆台形形状に変換する逆台形補正を施す画像変換手段と、を備え、前記逆台形補正が施された補正画像を含む投影像を生成することを特徴とする画像投影装置とした。
【0009】
請求項2に係る発明においては、前記画像変換手段は、前記正立方向情報に基づいて前記画像データに前記逆台形補正を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置とした。
【0010】
請求項3に係る発明においては、前記画像方向検出手段は、前記画像データに含まれるか、又は、前記画像データと共に入力される同期信号に基づいて画像の正立方向を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像投影装置とした。
【0011】
請求項4に係る発明においては、前記画像変換手段は、前記画像データにブランク画像を挿入して前記逆台形補正を施すことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像投影装置とした。
【0012】
請求項5に係る発明においては、前記逆台形補正の際の画像の歪量を設定する歪量設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像投影装置とした。
【0013】
請求項6に係る発明においては、前記画像変換手段は、前記入力した画像データに前記逆台形補正を施すと共に、前記逆台形補正が施された補正画像を複数含む変換画像データを生成し、前記変換画像データに基づいて前記補正画像を複数含む投影像を生成することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像投影装置とした。
【0014】
請求項7に係る発明においては、前記入力した画像データが複数ある場合に、前記画像変換手段は、前記逆台形補正を夫々個別に施すと共に、前記逆台形補正が施された夫々の補正画像を含む変換画像データを生成し、前記変換画像データに基づいて前記補正画像を複数含む投影像を生成することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の画像投影装置とした。
【0015】
請求項8に係る発明においては、前記複数の補正画像の夫々は、配置される位置、向き又は大きさが個別に設定され、又は変換された画像であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の画像投影装置とした。
【0016】
請求項9に係る発明においては、前記投影される前記複数の補正画像の位置、向き又は大きさを設定するための画像配置設定手段を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像投影装置とした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、画像データに含まれる画像の正立方向情報を検出する画像方向検出手段と、画像方向検出手段により検出された画像の正立方向情報に基づいて、前記画像データに当該画像の下部から上部に向けて広がる逆台形補正を施して変換画像データを生成する画像変換手段とを備え、逆台形補正が施された補正画像を含む投影像を生成するようにした。これにより、投影される画像は正立像として視認する場合の下方側より上方側のほうがより拡大され、利用者にとって投影画像全体が見かけ上、歪みの少ない正立像となり見やすくなる、という利点を有する。
【0018】
請求項2の発明によれば、画像変換手段は、正立方向情報に基づいて画像データに逆台形補正を施す。従って、利用者の位置や方向を検出して画像を補正する必要がなく、画像投影装置の構成が複雑にならない、という利点を有する。
【0019】
請求項3の発明によれば、画像方向検出手段は、画像データに含まれるか、又は、画像データと共に入力される同期信号に基づいて画像の正立方向情報を検出する。これにより、簡便にかつ自動的に画像の正立方向を検出することができるので、画像投影装置の構成が複雑にならず、かつ利用者の手間を省くことができる、という利点を有する。
【0020】
請求項4の発明によれば、画像変換手段は、画像データにブランクを挿入して逆台形補正を施す。そのために、画像を補正するための複雑な構成(例えば光学系)を要せず、自由度の高い補正ができる、という利点を有する。
【0021】
請求項5の発明によれば、逆台形補正の際に画像の歪量を設定する歪量設定手段を備えている。これにより、画像投影環境に適した逆台形補正を行うことができる、という利点を有する。
【0022】
請求項6の発明によれば、画像変換手段は、入力した画像データに逆台形補正を施すと共に、逆台形補正が施された補正画像を複数含む変換画像データを生成し、変換画像データに基づいて前記補正画像を複数含む投影像を生成する。これにより、一つの投影画像を複数の利用者が見る場合であっても、個々の利用者用に逆台形補正が施された補正画像をそれぞれ見ることができるので、見やすい投影像を生じさせることができる、という利点を有する。
【0023】
請求項7の発明によれば、入力した画像データが複数ある場合に、画像変換手段は、逆台形補正を夫々個別に施すと共に、逆台形補正が施された夫々の補正画像を含む変換画像データを生成し、変換画像データに基づいて補正画像を複数含む投影像を生成する。従って、複数の利用者が同時に多角度から複数の異なる画像を含む投影画像を見る場合であっても、各利用者は、各画像を逆台形補正が施された正立画像として個別に見ることができるために、位置や角度の異なる各利用者に対して見やすい投影画像を生成することができる、という利点を有する。
【0024】
請求項8の発明によれば、複数の補正画像の夫々は、配置される位置、向き又は大きさが個別に設定され、又は変換された画像である。これにより投影画像が投影される投影面や利用者の位置等の環境に応じた補正画像を投影することできる、という利点を有する。
【0025】
請求項9の発明によれば、投影される前記複数の補正画像の位置、向き又は大きさを設定するための画像配置設定手段を有する。これにより、利用者の人数や配置に適した補正画像を投影することができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。
図1は、机上に設置した本発明の実施形態に係る画像投影装置1の模式的な断面図であり、図2は、本発明の実施形態に係る画像投影装置1の機能ブロック図を表し、図3は、画像投影装置1により逆台形補正を行った画像の状態を説明するための説明図である。
【0027】
図1において、画像投影装置1は机の天板Tの上に立設されている。画像投影装置1は天板Tの上に設置されたスクリーンS上に図示しない画像Gを投影している。画像投影装置1は、ハウジングHと、このハウジングH内に収納される制御ユニットU、光源5、光源5からの光を集光するコンデンサーレンズ4、反射ミラー6により反射された光を伝達するリレーレンズ3、反射ミラー7から反射される光を入射して投影像に変調する光変調素子としてのLCD8、LCD8からの投影像を投影する投影光学系2等から構成されている。ハウジングHの上辺には画像投影装置1を操作するための操作パネルPが設置されている。
【0028】
操作パネルPには、画像投影装置1の電源スイッチ、後述する投影画像の逆台形補正を行う際の画像の歪量を設定するための操作キー、複数の画像を投影する際の各画像の位置や向き(例えば正立像の向き)を設定するための操作キー等を備えている。
【0029】
図2により、制御ユニットUの構成について説明する。制御ユニットUは、画像投影装置1の全体の動作を制御するためのマイクロコンピュータ24、映像信号を入力する映像信号入力回路20、入力した画像データに含まれる画像の正立方向を検出し、正立方向情報を生成するための画像方向検出手段25、映像信号入力回路20からの画像データを入力して画像の逆台形補正等の画像処理を行うための画像処理回路21、画像処理がなされた変換画像データを記憶するための画像メモリ23、画像メモリ23から変換画像データを入力してLCD8を駆動するためのLCD駆動回路22、光源5を駆動するためのランプ駆動回路28、外部機器とのデータの送受信を行うための通信手段27、前記通信手段27によって受信したデータ等を記憶、読出し可能な記憶手段26、及び、画像投影装置1の電源のオン、オフ等の制御を行うための操作パネルPから構成されている。
【0030】
具体的には次のように動作する。映像信号入力回路20は、NTSCビデオ信号等からなる映像信号を入力してRGB3色の画像信号に復調し、復調された画像信号のA/D変換処理を行って画像データを生成すると共に、映像信号に含まれる垂直同期信号及び水平同期信号を検出し、画像データと共に画像処理回路21へ出力する。画像方向検出手段25は、画像処理回路21が入力した垂直同期信号及び水平同期信号のタイミングと画像データの入力タイミングとから、画像データに含まれる画像の正立方向を検出し、正立方向情報を生成する。画像処理回路21は、マイクロコンピュータ24の制御のもとに、画像方向検出手段25からの正立方向情報に基づいて、正立像としての画像データを生成する。マイクロコンピュータ24は、当該マイクロコンピュータ24内の図示しないROMに格納されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って画像処理回路21を制御し、検出した画像の正立方向情報に基づき正立像としての画像データの逆台形補正を行い、変換画像データを画像メモリ23に格納する。画像処理回路21は、画像メモリ23から補正された画像データを変換画像データとしてLCD駆動回路22に出力する。従って、マイクロコンピュータ24又は画像処理回路21が画像変換手段として機能している。
【0031】
LCD駆動回路22は、行列状に配置されたLCD8の各画素に変換画像データに基づく表示信号を出力し、LCD8はその表示信号に基づいて各画素を透過する光の透過光量を制御する。光源5から発光された光は照明光学系9を介してLCD8に照射され、LCD8上に表示された補正画像を含む投影像が投影光学系2によりスクリーンS上に投影される。
【0032】
なお、上記実施形態では映像信号入力回路20が映像信号を入力して画像データを画像処理回路21に出力するが、これに代えて、マイクロコンピュータ24の制御のもとに、通信手段27を介してアプリケーションデータを受信し、或いは、記憶手段26のRAMに既に記憶されたアプリケーションデータを順次読み出して前記マイクロコンピュータ24内の図示しないROMに格納されたプログラムを読み出し、対応するアプリケーションを起動し、アプリケーションデータに対応して表示する画像データを生成するが、生成された画像データのその後の処理は前述した映像信号の場合と同様に処理され、画像処理回路21にて逆台形補正処理を行うようにしてもよい。画像方向検出手段25は、このアプリケーションデータから、画像データに含まれる所定の情報(例えば、文書データ等の書式情報やレイアウト情報等)に基づいて正立方向を検出し、正立方向情報を生成する。マイクロコンピュータ24の制御に基づいて、画像処理回路21は、正立方向が関係付けられた画像データを生成して入力した画像データの逆台形補正処理を行い、変換画像データとして画像メモリ23に記憶させるようにしてもよい。尚、ここでいうアプリケーションデータとは、アプリケーションの実行で表示される動画ファイル、静止画ファイル、文書ファイルなどのデータを例に挙げているが、直接、読出し可能なイメージデータそのものであってもよい。
【0033】
図3は、机の天板Tの上に立設した画像投影装置1からスクリーンSに向けて画像Gを投影している状態を示す模式的な上面図である。利用者は天板Tの下方に位置している。図3(a)は、逆台形補正が施されていない画像GをスクリーンS上に投影している状態を上部から見た図であり、図3(b)は、逆台形補正が施された画像GをスクリーンS上に投影している状態を上部から見た図である。
【0034】
図3(a)に示すように、画像投影装置1は、スクリーンSの投影領域30に画像Gを投影している。投影された文字HとAを含む画像Gは、矢印で表す方向31に向けて正立している。利用者Aは正立する画像Gを観察している。従って、利用者Aに対して画像Gの下辺Gaが接近し、画像Gの上辺Gcが遠方に離れる。そのために、利用者Aにおいて、画像Gの下辺Gaが大きく見え、上辺Gcが小さく見えることになる。なお、投影領域30に投影される画像Gは下辺Ga、右辺Gb、上辺Gc、左辺Gdにより囲まれる領域である。
【0035】
図3(b)においては、逆台形補正が施された画像G’が投影されている。この場合も、スクリーンS上の画像G’を含む投影領域30は上記図3(a)の場合と同じであるが、画像G’は利用者Aから見て逆台形補正が施されている。即ち、画像G’の底辺G’aに対して上辺G’cが拡大される。そのために、利用者Aおいては、上辺G’cに投影される画像が小さくなって見難くなることが防止される。
【0036】
次に、図4、図5、図6を用いて、画像データの逆台形補正を行う方法の一例について説明する。図4は画像メモリ23の記憶領域を模式的に示し、図5は画像メモリ23に画像データを記憶する順序を模式的に示し、図6は画像データにブランク画像を挿入して逆台形補正処理を施す様子を模式的に示している。
【0037】
図4に示すように、画像メモリ23はJm行×In列からなるm、n個の記憶要素をマトリクス状に有している。画像メモリ23は、画像処理回路21で処理される画像データなどを一時的に書き込んで記憶する。例えば、NTSC方式に準拠する映像信号を入力する場合には、少なくともm×n=640×480画素に相当する記憶要素を有する。画像メモリ23に記憶された画像データは画像処理回路21により読み出される。図5においては、説明を簡単にするために画像メモリ23を8行(m=8)×11列(n=11)とし、この画像メモリ23に逆台形補正を行わないで画像データを書き込む様子を表している。
【0038】
具体的に説明する。映像信号入力回路20は、外部からNTSCビデオ信号等からなる映像信号を入力してRGB3色の画像信号に復調し、復調された画像信号のA/D変換処理を行って画像データを生成し、画像処理回路21へ出力する。また、映像信号入力回路20は、映像信号に含まれる垂直同期信号及び水平同期信号を検出し、画像処理回路21及び画像方向検出手段25へ出力する。通常、垂直同期信号を検出して後の走査線の中で前記垂直同期信号に近い走査線ほど画面上においてより上側に位置するもので、同様に、水平同期信号を検出して後の画素の中で前記水平同期信号に近い画素ほど画面上においてより左側に位置する。
【0039】
画像方向検出手段25は、垂直同期信号と水平同期信号を入力し、垂直同期信号により画像Gの上部を検出し、水平同期信号により画像Gの左辺を検出して、正立方向情報を生成する。つまり、垂直同期信号と水平同期信号から上下方向と左右方向を検出することができ、画像Gの1行1列(1,1)の画像データ入力タイミングを特定することが可能となる。画像データは、1行1列(1,1)〜1行n列(1,n)の画素に対応して時系列的に順次入力される。そして、画像方向検出手段25が2番目の水平同期信号を検出することにより、2行1列(2,1)の画素に対応する画像データ入力タイミングを特定することが可能となる。これを順次繰り返して2行2列(2,2)〜2行n列(2,n)、〜、m行n列(m,n)の画像に対応する画像データを特定することが可能となる。即ち、垂直同期信号と水平同期信号とを検出することにより、1フレームに形成される画像の上辺及び左辺が検出でき、画像の方向を決定することができる。
【0040】
画像処理回路21は、画像方向検出手段25により生成された正立方向情報に基づいて、入力した画像データを画像Gの位置に関係付けて、画像メモリ23に記憶する。例えば、画像メモリ23の記憶要素(J1,I1)、(J1,I2)・・・(J1,I11)、(J2,I1)・・・(J8,I11)に順次記憶させる。画像処理回路21は、画像メモリ23に記憶された画像データを読み出してLCD駆動回路22に出力する。LCD駆動回路22は、入力した画像データを、LCD8を駆動するための駆動信号に変換してLCD8へ出力する。LCD8は、画像メモリ23の記憶要素(J1,I1)を投影される画像Gの左上画素に対応させ、(J8,I11)を投影される画像Gの右下画素に対応させて表示する。LCD8上に表示された表示像は投影光学系2によりスクリーンS上に投影される。
【0041】
尚、前述した説明は、プロジェクタが設置される側から正立像としての投影画像をみる場合の説明である。実際は、机上プロジェクタでは、プロジェクタ自体が邪魔となるので、左右側や対面側から正立像として視認できるよう画像を回転させた状態で配置する場合が多い。その場合は、同期信号と画像の上下方向との関係は、適宜、変更設定されるものである。
【0042】
図6を用いて逆台形補正を説明する。画像処理回路21は、マイクロコンピュータ24の制御のもとに、予め操作パネルPにより設定された画像の歪量に従って最上行(J1)から最下行(J8)に向けて左右の記憶領域にブランク画像を形成するように補正した変換画像データを画像メモリ23に記憶させる。即ち、記憶要素(J4,I1)、(J5,I1)、(J6,I1)及び(J4,I11)、(J5,I11)、(J6,I11)をブランク画像とし、各行におけるI2〜I10列に対応する画像データは間引いて圧縮する。また、記憶要素(J7,I1)、(J7,I2)、(J7,I10)、(J7,I11)及び(J8,I1)、(J8,I2)、(J8,I10)、(J8,I11)をブランク画像とし、各行におけるI3〜I9列に対応する画像データは間引いて圧縮する。このように、上方から下方に向けて画像Gの左右領域にブランク画像を設け、かつ、ブランク画像を設けた各行において画像データを間引いて圧縮して変換画像データを生成する。これにより、逆台形補正処理が施された投影画像をスクリーンS上に形成することができる。
【0043】
なお、上記図5及び図6の実施形態においては、画像投影装置1により投影される投影像のうち、画像メモリ23の記憶要素(J1,I1)〜(J8,I11)に対応する投影画像の領域おいて、上方から下方に向けて画像を縮小する逆台形補正を施した場合である。これに対して、図3(a)及び図3(b)に示すように、下方から上方に向けて画像を拡大する逆台形補正を行うことができる。この場合は、画像記憶領域m行n列に対応する画像データのうち、下方のm行から上方の1行に向けて、n+x(xは1より大きな整数)列に拡大し、画像データを重複記憶して画像を拡大する。これにより、図3(b)に示すように、図3(a)に示す投影画像を下方から上方に向けて拡大させることができる。
【0044】
また、上記図5及び図6の実施形態においては、画像方向検出手段25が映像信号に含まれる同期信号を検出して画像Gの方向を決定したが、これに限定されない。画像変換手段が画像データから画像の正立方向情報を取得して、その画像の水平成分の伸縮率を垂直方向の位置に応じて変更することにより、画像を下部から上部に向けて広がる形状に変換することができる。マイクロコンピュータ24が、通信手段27又は記憶手段26から画像ファイルを取得して展開し、画像処理回路21に画像データを渡す。画像方向検出手段25は、その画像データに含まれる同期データやページ切り替えデータから画像の上部を検出する。マイクロコンピュータ24は、画像方向検出手段25により検出された検出結果に基づいて、入力した画像データと画像Gにおける位置とを関連付け、画像Gの下部から上部に向けて拡大する逆台形補正処理を施した変換画像データを画像メモリ23に書き込む。画像処理回路21は、変換画像データを読み出してLCD駆動回路22へ出力して、補正後の投影像をスクリーンS上に投影する。
【0045】
なお、画像方向検出手段25は映像信号に含まれる同期信号を検出するための検出回路でもよいし、画像データに含まれるコードを解析するためのプログラムでもよいし、このプログラムを処理するマイクロコンピュータ24であってもよい。また、画像変換手段は、画像処理回路21でもよいし、画像データを変換画像データに組み替えるためのプログラムでもよいし、このプログラムを処理するマイクロコンピュータ24であってもよい。
【0046】
また、操作パネルPから利用者が画像の逆台形補正を行う際の歪量を設定することができるようにすることができる。例えば、投影される画像Gの下辺に対する上辺の長さの比率γを操作パネルPから設定する。マイクロコンピュータ24は、設定された比率γに基づいて、画像Gの両辺に挿入するブランク画像数を算出し、各行に記憶する画像データの圧縮又は拡大を行って、変換画像データを画像メモリ23に記憶する。これにより、任意の歪量を有する逆台形補正を行うことができる。この場合、歪量設定手段は、操作パネルP、又は、ブランク画像数の算出や画像データの圧縮又は拡大を行うためのプログラム、或いは、このプログラムを実行するマイクロコンピュータ24である。
【0047】
なお、画像処理回路21又はマイクロコンピュータ24は、逆台形補正の他にシャープネス補正、ガンマ補正、コントラスト補正、ホワイトバランス補正等の各種画像処理を行うことができる。
【0048】
図7は、本発明の他の実施形態を表す説明図である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。画像投影装置1は投影領域30に2つの画像G1、G2を投影している。2つの画像G1、G2は、投影領域30の中央部に上方を向けて、また、投影領域30の各辺部に下方を向けて互いに逆向きに投影されている。2つの画像G1、G2はそれぞれ逆台形補正が施されている。そのために、机の天板Tの両辺から投影像を見る2人の利用者A1、A2は、それぞれが逆台形補正の施された正立像を見ることができる。そのために、見かけ上歪の少ない画像を見ることができる。
【0049】
マイクロコンピュータ24は、操作パネルPからの設定により、画像メモリ23を複数の記憶領域に分割する。映像信号入力回路20は映像信号を復調して画像データを生成し、同期信号と共に画像処理回路21へ出力する。画像処理回路21は、マイクロコンピュータ24の制御のもとに、画像方向検出手段25の正立方向情報に関連付けてバッファメモリ等に画像データを一端記憶し、逆台形補正を施して画像メモリ23のそれぞれの記憶領域に変換画像データを書き込む。書き込む際には、画像配置手段により夫々の画像の位置、向き又は大きさを個別に設定することができる。
【0050】
例えば、第1記憶領域である記憶要素(Jx,I1)〜(Jm,In)に画像G1の変換画像データを書き込み、第2記憶領域である記憶要素(J1,I1)〜(Jx−1,In)に画像G2の変換画像データを書き込む(xは1より大きい正の整数)。第1記憶領域に書き込む際にはJx行からJm行に向けて正立する逆台形補正を行い、第2記憶領域に書き込む際にはJx−1行からJ1行に向けて正立する逆台形補正を行う。
【0051】
画像処理回路21は画像メモリ23から変換画像データを読み出し、LCD駆動回路22に出力する。LCD8は変換画像データに基づいて2つの逆向きの逆台形補正が施された画像G1、G2を表示し、図7に示す投影像を投影する。
【0052】
なお、上記実施形態においては、同一の画像データに基づいて2つの画像G1及びG2を形成しているが、これに代えて、異なる画像データに基づいて2つの異なる画像G1及びG2を投影することができる。即ち、画像処理回路21は、2つの画像データを各画像データに対応する正立方向情報に関連付けてバッファメモリ等に一旦記憶し、互いに別個に逆台形補正を施して画像メモリ23の夫々の記憶領域に変換画像データを書き込む。書き込む際には、画像配置手段により夫々の画像の位置、向き又は大きさを個別に設定することができる。この2つの変換画像データを読み出して投影すればよい。
【0053】
図8は、本発明の他の実施形態を表す説明図である、同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。画像投影装置1は投影領域30に3つの画像G1、G2、G3を投影している。3つの画像G1、G2、G3は、投影領域30の中央部に上方を向けて、また、投影領域30の各辺部に下方を向けて互いに放射状に投影されている。3つの画像G1、G2、G3はそれぞれ逆台形補正が施されている。そのために、机の天板Tの3辺からそれぞれ正立した画像G1、G2、G3の投影像を見る3人の利用者A1、A2、A3は、それぞれが逆台形補正の施された成立像を見ることができる。これにより見かけ上歪の少ない画像を見ることができる。
【0054】
マイクロコンピュータ24は、操作パネルPからの設定により、画像メモリ23を3つの記憶領域に分割する。例えば、第1記憶領域を記憶要素(Jx,Iy)〜(Jx,In)、(Jx+1,Iy)〜(Jx+1,In)・・・(Jm,Iy)〜(Jm,In)とする(yは1より大きい正の整数)。第2記憶領域を記憶要素(J1,Iy)〜(J1,In)、(J2,Iy)〜(J2,In)・・・(Jx−1,Iy)〜(Jx−1,In)とする。第3記憶領域を記憶要素(J1,I1)〜(J1,Iy−1)、(J2,I1)〜(J2,Iy−1)・・・(Jm,I1)〜(Jm,Iy−1)とする。第1記憶領域において書き込む画像はJx行からJm行に向けて正立する逆台形補正を行い、第2記憶領域に書き込む画像はJx−1行からJ1行に向けて正立する逆台形補正を行い、第3領域において書き込む画像はIy−1列からI1列に向けて正立する逆台形補正を行う。その他は上記図7において説明したとおりである。
【0055】
画像処理回路21は画像メモリ23から変換画像データを読出し、LCD駆動回路22に出力する。LCD8は変換画像データに基づいて3つの逆台形補正が施された画像G1、G2、G3を表示し、図8に示す投影像を投影する。
【0056】
なお、上述した図7、8の説明において、画像G1、G2、G3を先に画像メモリの記憶領域に分割配置した上でその後各画像を逆台形補正を施したが、画像G1、G2、G3のそれぞれにおいて逆台形補正をしたうえで、画像メモリの記憶領域に分割配置してもよい。この場合、各画像毎に全画面に対する逆台形補正を施せるので、処理自体は簡易となる。また、逆台形補正は、上下方向に対応して左右方向の表示画像の幅が変わるように処理しているが、この場合、左右方向の画素数を単純に削減しても良いが、全体の画像内容を表すように縮小するのが好ましい。
【0057】
また、図3(a)、(b)、図7、図8での画像G1、G2、G3と投影領域30の間のスペースに関しては、特に、言及はしていないが、実際は、図6の実施例で説明したようなブランク画像(所定色の画素で構成される画像で黒色の画素が好ましいが、画像G1、G2、G3が見易くなるような画像で有れば何でも良い)を前記スペースに挿入した画像を投影領域30に投影している。従って、本実施例では、前記スペースを大きめに取って説明したが、解像度などの関係でいえば、前記スペースはできるだけ小さくするのが好ましい。
【0058】
また、本実施例で逆台形処理などの画像処理で説明した構成、動作は一例示であって、例えば、画像メモリ23は、マイクロコンピュータ24の制御のもとに画像処理回路21にて逆台形補正処理を行った結果の画像を記憶するものとして説明したが、実際は、画像メモリ23やマイクロコンピュータ24内の図示しないRAMは、逆台形処理に限らず、様々な画像処理に対して、画像メモリ23やマイクロコンピュータ24に記憶エリアのアドレスや記憶、読み出しなどを制御される場合が多い。
【0059】
また、以上説明してきた実施形態において、投影像に含まれる画像の数や投影される各画像の方向は操作パネルPから設定することができる。図3に示すように、1人の利用者Aの観察する方向の設定や、図7や図8に示すように、複数の利用者の観察する方向、観察人数等の設定を行うことができる。例えば、同じ方向から2人の利用者が投影像を観察する場合に、逆台形補正が施された2つの画像を、正立方向を同じ向きにして投影させるようにしてもよい。また、画像投影装置1に利用者の人数や位置を検出する検出手段を設け、この検出結果に基づいて投影画像の分割や画像方向を自動的に設定するようにしてもよい。
【0060】
また、投影する画像の台形補正を、上記実施形態においてはマイクロコンピュータ24や画像処理回路21によりブランク画像を挿入し、各行の画像データを圧縮又は拡大する方法により行ったが、これに代えて、投影光学系2のレンズ群の少なくとも一部を移動又は傾斜させるか、または交換などして投影画像を歪ませるようにしてもよい。
【0061】
また、以上の説明において、画像投影装置1の表示部にLCD8を使用した例について説明したが、これに限定されない。LCD8に代えて多数のマイクロミラーを使用したDMD(Digital Mirror Device)素子等の他の光変調素子を使用してもよい。
【0062】
また、レーザー光などの光ビームを2次元方向に走査して、画像を形成し、投影する光走査型投影装置(例えばレーザープロジェクタ)にも利用可能であり、左右方向を主走査とし、上下方向を副走査とすると、主走査方向の走査範囲を副走査方向に応じて可変出来るため、複雑な画像処理や光学系を用いないでよく簡易である。
【0063】
また、本発明に係る画像投影装置は、机上等の水平面に投影像を投影し、この投影像を斜め方向から見る場合に特に有効であるが、これに限定されない。投影像が投影される投影面は、傾斜していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る画像投影装置の投影状態を表す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像投影装置の機能ブロック図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る画像投影装置の投影画像の説明図である。
【図4】画像メモリの記憶領域を示す模式図である。
【図5】画像メモリに画像データを書き込む順序を表す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像投影装置の画像メモリに逆台形補正を行う方法を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る画像投影装置の投影状態を表す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る画像投影装置の投影状態を表す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像投影装置
5 光源
8 LCD
9 照明光学系
20 映像信号入力回路
21 画像処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した画像データに基づいて光源からの光を変調して投影像を生成する画像投影装置において、
前記画像データに含まれる画像の正立方向情報を検出する画像方向検出手段と、
前記検出された画像の正立方向情報に基づいて、前記画像を、前記画像の下部から上部に向かうほど左右方向に広がるような逆台形形状に変換する逆台形補正を施す画像変換手段と、を備え、
前記逆台形補正が施された補正画像を含む投影像を生成することを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
前記画像変換手段は、前記正立方向情報に基づいて前記画像データに前記逆台形補正を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記画像方向検出手段は、前記画像データに含まれるか、又は、前記画像データと共に入力される同期信号に基づいて画像の正立方向を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記画像変換手段は、前記画像データにブランク画像を挿入して前記逆台形補正を施すことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記逆台形補正の際の画像の歪量を設定する歪量設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項6】
前記画像変換手段は、前記入力した画像データに前記逆台形補正を施すと共に、前記逆台形補正が施された補正画像を複数含む変換画像データを生成し、
前記変換画像データに基づいて前記補正画像を複数含む投影像を生成することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記入力した画像データが複数ある場合に、前記画像変換手段は、前記逆台形補正を夫々個別に施すと共に、前記逆台形補正が施された夫々の補正画像を含む変換画像データを生成し、
前記変換画像データに基づいて前記補正画像を複数含む投影像を生成することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記複数の補正画像の夫々は、配置される位置、向き又は大きさが個別に設定され、又は変換された画像であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の画像投影装置。
【請求項9】
前記投影される前記複数の補正画像の位置、向き又は大きさを設定するための画像配置設定手段を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像投影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−21929(P2010−21929A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182574(P2008−182574)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】