説明

画像色判定装置、画像色判定方法及び画像色判定プログラム

【課題】画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像判定装置において、人間の視覚と一致する判定結果を得る。
【解決手段】アフィン変換部162は、粗画像データを構成する単位データの色差成分Cb,Crにアフィン変換AT1を適用し、色差に関する色パラメータCb1,Cr1を得る。単位データ判定部164は、色平面H1において、色パラメータCb1,Cr1をプロットした点が、7個の部分領域mA,mM,mB,mC,mG,mY,mRのいずれに属するのかを判定し、プロット点が属する部分領域に対応する色区分を、単位データが属する色区分とする。アフィン変換AT1は、色平面H1を得る際に色相全体に適用されるアフィン変換AT2と、色平面H1において、黄色基準色に対応する点Qを、原点Oを始点として部分領域mAの頂点P1を通過して伸びる半直線L1上に最終的に移動させるアフィン変換AT3とを合成したアフィン変換となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定装置、画像色判定方法及び画像色判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿に描かれた画像を記録紙上に再現する電子写真方式のカラーコピー機は、通常、イエロー,マゼンダ,シアン,黒の4色の画像形成エンジンを備え、記録紙への画像形成を4回繰り返すことにより、カラーコピーを実現している。しかし、原稿に描かれた画像を無彩色画像とみなせる場合、4色の画像形成エンジンの全てを動作させて記録紙への画像形成を行うことは、コピー時間やコピー費用の点で無駄が多い。このため、原稿に描かれた画像が無彩色画像であるか否かを自動的に判定し、無彩色画像とみなせる場合には、黒の画像形成エンジンのみを動作させて記録紙への画像形成を行うようにすることが望ましい。
【0003】
画像が無彩色画像であるか否かを判定する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−152524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に代表される従来の技術では、人間の視覚と一致する判定結果を得ることができないという問題があった。すなわち、人間の視覚では、黄色を白色と区別することは、黄色以外の色を白色と区別することより困難であるが、従来の技術では、このような人間の視覚特性は考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、画像が無彩色画像であるか否かを判定する場合において、人間の視覚と一致する判定結果を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定装置であって、2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用手段と、前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定手段と、前記領域判定手段の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定手段とを備える。
【0008】
請求項2の発明は、前記長方形領域は、前記2次元色平面の第1の座標軸に平行な2本の境界線と、前記2次元色平面の第2の座標軸に平行な2本の境界線とに囲まれる領域である請求項1に記載の画像色判定装置である。
【0009】
請求項3の発明は、前記黄色基準色は、RGB色空間において、R及びGの色成分データが最大の階調値であり、Bの色成分データが最小の階調値である画像データが表現する色である請求項1又は請求項2に記載の画像色判定装置である。
【0010】
請求項4の発明は、複数の画素を含む画素集合ごとに画素データを平均化する平均化手段をさらに備え、前記平均化手段により平均化された画素データを構成単位とする前記画像データに基づいて画像が無彩色画像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像色判定装置である。
【0011】
請求項5の発明は、原稿から記録媒体へ画像をコピーするコピー手段をさらに備え、コピーの際の変倍率に基づいて前記画素集合に含まれる画素の数を決定することを特徴とする請求項4に記載の画像色判定装置である。
【0012】
請求項6の発明は、前記原稿に係る画像データの解像度を変換する変換手段をさらに備え、前記変換手段により解像度が変換される前の前記画像データに基づいて前記画像が無彩色画像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像色判定装置である。
【0013】
請求項7の発明は、画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定方法であって、2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用工程と、前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定工程と、前記領域判定工程の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定工程とを備える。
【0014】
請求項8の発明は、画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定プログラムであって、2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用手順と、前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定手順と、前記領域判定手順の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする画像色判定プログラム。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし請求項8の発明によれば、無彩色とみなされる黄色が拡大され、人間の視覚と一致する判定結果を得ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、画像が無彩色画像であるか否かの判定が容易になる。
【0017】
請求項3の発明によれば、変換を適切なものとすることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、偽色の影響を排除できる。
【0019】
請求項5の発明によれば、変倍に起因する偽色の影響を効果的に排除できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、画像が無彩色画像であるか否かの判定が解像度の変換の影響を受けなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<1 デジタル複合機の全体構成>
図1は、本発明の望ましい実施形態に係るデジタル複合機1の全体構成を示すブロック図である。デジタル複合機1は、MFP(Multi Function Peripherals)とも呼称され、ファクシミリ機能、コピー機能、スキャン機能、プリント機能等の複数の機能を有している。
【0022】
図1に示すように、デジタル複合機1は、CPU102、ROM104及びRAM106を備える。ROM104には、デジタル複合機1のファームウェア等のプログラムPRGが格納され、CPU102、ROM104及びRAM106によって実現されるコンピュータは、ROM104に格納されたプログラムPRGにしたがって演算処理を実行することにより、デジタル複合機1の各構成を統括制御し、デジタル複合機1の各機能を実現している。RAM106は、当該コンピュータによる演算処理の実行に際して、作業領域として用いられる。
【0023】
画像メモリ108は、デジタル複合機1が処理対象とする画像を画像データとして記憶する。
【0024】
デジタル複合機1には、ユーザインターフェースとして、操作パネル110が設けられる。操作パネル110は、操作の対象となる操作部と、情報を視認可能に表示する表示部とを備える。
【0025】
デジタル複合機1は、スキャナ部112及びプリンタ部114を備える。
【0026】
スキャナ部112は、後述するCCDラインセンサ132により原稿に描かれた画像を読み取り、当該画像に係る画像データを生成する。スキャナ部112は、ADF(Automatic Document Feeder)方式又はFBS(Flat Bed Scanner)方式により原稿に描かれた画像を読み取る。ADF方式とは、複数枚の原稿を束ねた原稿束から原稿を一枚づつ繰り込んで読み取る方式であり、FBS方式とは、コンタクトガラス上に載置された原稿を読み取る方式である。ADF方式には、移動する原稿を静止した読取光学系で読み取る方式(シートスルー方式)と、静止した原稿を移動する読取光学系で読み取る方式とがあり、後者の方式を採用する場合、スキャナ部112は、コンタクトガラス上に原稿を静止させ、移動する読取光学系で静止した原稿を読み取り、読み取りが完了した原稿を排出するという読み取り手順を繰り返し実行する。
【0027】
プリンタ部114は、電子写真方式により、画像データに係る画像を記録紙等の記録媒体上に形成する。プリンタ部114は、Y(イエロー),M(マゼンダ),C(シアン),K(黒)の4色の画像形成エンジンを備え、記録媒体上への画像形成を4回繰り返すことにより、カラー画像を記録媒体上に形成することができる。
【0028】
画像色判定部116は、画像データに対して所定の処理を行う。画像色判定部116は、専用LSI等のハードウエアで構成することができるが、画像色判定部116が行う処理の一部又は全部を、CPU102、ROM104及びRAM106によって実現されるコンピュータがプログラムPRGを実行することにより行うようにしてもよい。
【0029】
圧縮伸張部118は、画像データに対して圧縮処理又は伸張処理を行う。画像データの圧縮方式としては、多階調の画像データについては、JPEG方式等を採用することができ、二階調の画像データについては、MH方式、MR方式、MMR方式及びJBIG方式等を採用することができる。圧縮伸張部118も、専用LSI等のハードウエアで構成することができるが、圧縮伸張部118が行う処理の一部又は全部を、CPU102、ROM104及びRAM106によって実現されるコンピュータがプログラムPRGを実行することにより行うようにしてもよい。
【0030】
NCU120及びモデム122は、公衆電話交換網91を経由したファクシミリ画像データの送受信に用いられる。NCU120は、公衆電話交換網91への接続を制御する。NCU120は、相手先の電話番号に対応したダイヤル信号を送出する機能及び着信を検出する機能を備える。モデム122は、ITU(国際電気通信連合)−T勧告T.30にしたがったファクシミリ伝送制御手順に基づいて、V.17,V.27ter,V.29等にしたがったファクシミリ画像データの変復調を行う。又は、モデム122は、これらに加えて、V.34にしたがったファクシミリ画像データの変復調を行う。
【0031】
データ通信部124は、例えば、イーサネット(登録商標)により、デジタル複合機1をネットワーク92に接続する。
【0032】
上述したデジタル複合機1の各構成は、バスライン126によって接続され、相互間でデータの送受信を行うことができるようになっている。
【0033】
ファクシミリモードでは、デジタル複合機1は、スキャナ部112を用いて、原稿に描かれた画像を読み取り、NCU120及びモデム122を用いて、当該画像に係るファクシミリ画像データを、他のファクシミリ機へ公衆電話交換網91を経由して送信する。また、デジタル複合機1は、NCU120及びモデム122を用いて、他のファクシミリ機から公衆電話交換網91を経由して送信されてきたファクシミリ画像データを受信し、プリンタ部114を用いて、当該ファクシミリ画像データに係る画像を記録媒体上に形成する。
【0034】
コピーモードでは、デジタル複合機1は、スキャナ部112を用いて、原稿に描かれた画像を読み取り、プリンタ部114を用いて、当該画像を記録紙等の記録媒体上に形成することにより、原稿から記録媒体へ画像をコピーする。
【0035】
スキャンモードでは、デジタル複合機1は、スキャナ部112を用いて、原稿に描かれた画像を読み取り、当該画像に係る画像データを画像メモリ108に蓄積する。
【0036】
プリントモードでは、デジタル複合機1は、データ通信部124を用いて、パーソナルコンピュータからネットワーク92を経由して送信されてきた画像データを受信し、プリンタ部114を用いて、当該画像データに係る画像を記録媒体上に形成する。
【0037】
<2 スキャンモード及びプリントモードに関連する構成>
図2は、スキャンモード及びプリントモードにおけるデジタル複合機1の処理と関連する構成を示すブロック図である。図2において、モード判定部152は、CPU102、ROM104及びRAM106によって実現されるコンピュータがプログラムPRGを実行することにより実現される機能を表現した処理ブロックである。
【0038】
以下では、スキャンモード及びプリントモードにおけるデジタル複合機1の処理と関連する構成について、「画像処理に関連する構成」及び「モード判定処理に関連する構成」に分けて説明する。
【0039】
<2.1 画像処理に関連する構成>
図2に実線で示す画像処理の流れに沿って、画像処理に関連する構成の概略を説明すると、CCDラインセンサ132が生成した画像データは、ガンマ補正部134によるガンマ補正、解像度変換部136による解像度変換、色空間変換部138による色空間変換を順次施された後に、スキャナ部112から出力される。スキャナ部112から出力された画像データは、画像メモリ108に蓄積される。プリントモードでは、画像メモリ108に蓄積された画像データは、プリンタ部114へ転送され、プリンタ部114において、当該画像データに係る画像が記録媒体上に形成される。スキャンモードでは、画像メモリ108に蓄積された画像データに対して、圧縮伸張部118による圧縮処理が施される。
【0040】
CCDラインセンサ132は、原稿からの光をCCDラインセンサ132へ導く読取光学系が原稿を走査している際に、一定の周期で読み取りを繰り返すことにより、RGB色空間で表現された画像データ、すなわち、R(赤),G(緑),B(青)の色成分データを有する画像データを生成する。読取光学系の走査速度は、CCDラインセンサ132が生成する画像データの副走査方向の解像度に基づいて設定する。具体的には、副走査方向の解像度が高くなるほど、読取光学系の走査速度を遅くし、副走査方向の解像度が低くなるほど、読取光学系の走査速度を速くする。「走査速度」とは、原稿と読取光学系との相対移動速度である。
【0041】
ガンマ補正部134は、R,G,Bの色成分データに、ガンマ値で規定される階調変換特性を有する階調変換を施して出力する。
【0042】
解像度変換部136は、プリントモードでは、画像データの主走査方向の解像度を、原稿を読み取った際の解像度から、プリンタ部114へ転送する際の解像度へ変換し、スキャンモードでは、画像データの主走査方向の解像度を、原稿を読み取った際の解像度から、画像メモリ108に蓄積する際の解像度へ変換する。
【0043】
デジタル複合機1では、変倍コピーを行う際には、解像度変換部136における解像度変換により、主走査方向の解像度を操作者が指定した変倍率に応じた解像度とし、読取光学系の走査速度を等倍コピーを行う際と異ならせることにより、副走査方向の解像度を操作者が指定した変倍率に応じた解像度とする。
【0044】
色空間変換部138は、RGB色空間で表現された画像データ(以下、「RGB画像データ」)を、YCbCr色空間で表現された画像データ(以下、「YCC画像データ」)sへ変換する。色空間変換部138が出力する画像データは、輝度成分Y及び色差成分Cb,Crを有している。
【0045】
一方、プリンタ部114は、画像データを取得し、必要な画像形成エンジンを用いて、当該画像データに係る画像を記録媒体上に形成する。
【0046】
圧縮伸張部118は、画像データを取得し、圧縮画像データを生成し、当該圧縮画像データを画像メモリ108に蓄積する。
【0047】
デジタル複合機1の処理モードには、「モノクロモード」及び「カラーモード」がある。
【0048】
「カラーモード」でスキャンを行う際には、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCC画像データへ変換し、圧縮伸張部118が、多階調のYCC画像データをJPEG方式等で圧縮して画像メモリ108に蓄積する。
【0049】
「カラーモード」でコピーを行う際には、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のLab画像データ(L***色空間で表現された画像データ)へ変換し、多階調のLab画像データをさらに多階調のCMYK画像データ(CMYK色空間で表現された画像データ)へ変換する。多階調のCMYK画像データは、二階調のCMYK画像データへ二値化され、プリンタ部113は、二階調のCMYK画像データを取得し、「Y」「M」「C」「K」の画像形成エンジンの4色の画像形成エンジンのうち必要なものを用いて、記録媒体上にカラー画像を形成する。ここで、「「Y」「M」「C」「K」の画像形成エンジンの4色の画像形成エンジンのうち必要なもの」とは、画像に含まれる色を表現するために必要な画像形成エンジンのみを動作させればよいという趣旨である。例えば、画像に含まれる色の色区分が「Y」のみであれば、「Y」の画像形成エンジンのみを動作させればよく、画像に含まれる色の色区分が「R」であれば、「Y」及び「M」の画像形成エンジンのみを動作させればよい。
【0050】
「モノクロモード」でスキャンを行う際には、原稿がグレー原稿である場合、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCC画像データへ変換し、圧縮伸張部118が、多階調のYCC画像データの輝度成分YをJPEG方式で圧縮して画像メモリ108に蓄積する。
【0051】
又は、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCbCr画像データへ変換する。多階調のYCC画像データの輝度成分Yは、二階調の輝度成分Yへ組織的ディザ法等で二値化され、圧縮伸張部118が、二階調の輝度成分YをJBIG方式等で圧縮して画像メモリ108に蓄積する。
【0052】
一方、原稿が白黒原稿である場合には、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCC画像データへ変換する。多階調のYCC画像データの輝度成分Yは、二階調の輝度成分Yへ単純二値化法等で二値化され、圧縮伸張部118が、二階調の輝度成分YをJBIG方式等で圧縮して画像メモリ108に蓄積する。
【0053】
「モノクロモード」でコピーを行う際は、原稿がグレー原稿である場合、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCC画像データへ変換する。多階調のYCC画像データの輝度成分Yは、二階調の輝度成分Yへ組織的ディザ法や誤差拡散法等で二値化され、プリンタ部113は、二階調の輝度成分Yを取得し、「K」の画像形成エンジンを用いて、記録媒体上にモノクロ画像を形成する。
【0054】
一方、原稿が白黒原稿である場合には、色空間変換部138が、解像度変換部136から入力された多階調のRGB画像データを多階調のYCC画像データへ変換する。多階調のYCC画像データの輝度成分Yは、二階調の輝度成分Yへ誤差拡散法や単純二値化法等で二値化され、プリンタ部113は、二階調の輝度成分Yを取得し、「K」の画像形成エンジンを用いて、記録媒体上にモノクロ画像を形成する。
【0055】
なお、グレイ原稿のコピーを行う際の二値化は、白黒原稿のコピーを行う際よりも階調の再現性を重視して行うことが望ましく、白黒原稿のコピーを行う際の二値化は、グレイ原稿のコピーを行う際よりも文字の再現性を重視して行うことが望ましい。
【0056】
<2.2 モード判定処理に関連する構成>
図2に点線で示すモード判定処理の流れに沿って、デジタル複合機1を画像色判定装置として機能させる構成の概略を説明すると、CCDラインセンサ132が生成した画像データは、画像色判定部116に入力され、平均部142による平均化、ガンマ補正部144によるガンマ補正、色空間変換部146による色空間変換を順次施された後に、ブロック判定部148へ入力される。そして、ブロック判定部148において、ブロックが属する色区分が判定され、判定計数部150において、各色区分に属するブロックの数が計数され、モード判定部152において、原稿に描かれた画像がモノクロ画像(無彩色画像)及びカラー画像(有彩色)のいずれであるかが判定される。モード判定部152は、さらに、処理モードを判定し、処理モードに応じた処理をプリンタ部114及び圧縮伸張部118に実行させる。
【0057】
平均部142は、複数の画素を含む画素集合ごとに、画素データの平均値を算出する。平均部142に入力される画像データは、RGB色空間で表現されているので、画素データは、R,G,Gの色成分データで構成されている。このため、平均部142は、複数の画素を含む画素集合ごとに、R,G,Bの色成分データの各々について平均値を算出する。すなわち、n個の画素Pi(i=1,2,・・・,n)が画素集合に含まれ、画素PiのR,G,Bの色成分データが、それぞれ、Ri,Gi,Biであるとすれば、平均部142は、R,G,Bの色成分データの平均値Ravg,Gavg,Bavgを式(1)にしたがって算出する。
【0058】
【数1】

【0059】
本実施形態では、画素集合は、縦(副走査方向)2個×横(主走査方向)2個の隣接する4個の画素からなる。各画素集合における、R,G,Bの色成分データの平均値Ravg,Gavg,Bavgは、後に続く処理において、色を表現する単位データを構成する。当該単位データは、平均化が行われる前の画像データより粗い粗画像データの構成単位となっている。このような平均化は、必ずしも必須ではなく、各画素の色成分データで単位データを構成してもよい。たたし、画素集合ごとの色成分データの平均値Ravg,Gavg,Bavgで単位データを構成すれば、CCDラインセンサ132においてR,G,Bの読み取りラインが数μmのライン間隔をおいて設けられていることに起因する偽色の影響を排除でき、ブロック判定部148における判定を精度よく行うことができるようになる。
【0060】
なお、上述の偽色は、変倍コピーを行う際に問題となることが多い。これは、CCDラインセンサ132のR,G,Bの読み取りラインのライン間隔が、副走査方向の読み取り間隔の整数倍に相当するものであれば、後続する読み取りラインにおける読み取りタイミングを先行する読み取りラインより遅延させることにより偽色を防止することができるが、等倍コピーを行う際に「整数倍」の関係が成立しても、変倍コピーを行う際に「整数倍」の関係が成立するとは限らないためである。
【0061】
例えば、等倍コピーを行う際の副走査方向の解像度が600dpiであり、ライン間隔が読み取り間隔の4倍に相当する場合を考える。この場合、等倍コピーを行う際には、後続する読み取りラインにおける読み取りタイミングを先行する読み取りラインより4周期遅延させることにより偽色を防止することができるが、70%縮小コピーを行う際には、副走査方向の解像度が420dpiとなり、ライン間隔が読み取り間隔の2.8倍に相当するから、後続する読み取りラインにおける読み取りタイミングを先行する読み取りラインより3周期遅延させても、先行する読み取りラインと後続する読み取りラインとの間で読み取り間隔の0.2倍の読み取り位置のずれが生じ、偽色の原因となる。
【0062】
この他、CCDラインセンサ132のR,G,Bの読み取りラインの形成位置の機械的なずれが偽色の原因となる場合もある。
【0063】
また、画素集合の大きさは、当該ライン間隔及び変倍率等に応じて決定すべきであり、上述の「縦2個×横2個の隣接する4個の画素」というのは、例示に過ぎない。
【0064】
例えば、変倍コピーを行う際の偽色の影響を排除するためには、「読み取り位置のずれ」が大きくなるほど画素集合の副走査方向の画素数を増加させることが有効であるが、「読み取り位置のずれ」は変倍率によって決まるので、変倍率と画素集合の副走査方向の画素数との関係を記述したテーブルをROM104にあらかじめ準備しておき、当該テーブルを参照して、指定された変倍率に応じて画素集合の副走査方向の画素数を決定することが望ましい。
【0065】
なお、平均部142は、解像度変換部136による解像度の変換が施されていない画像データについて平均化を行うので、画素集合の主走査方向の画素数が一定であっても特に問題とはならない。主走査方向についての平均化は、上述の「機械的なずれ」に起因する偽色に有効である。
【0066】
ただし、平均部142において、縦横両方向について平均化を行うことも必須ではない。すなわち、平均部142において、縦方向及び横方向のいずれかについてのみ平均化を行うようにしてもよい。
【0067】
ガンマ補正部144及び色空間変換部146は、それぞれ、ガンマ補正部134及び色空間変換部138と同様の回路構成を有するが、処理に適用される補正テーブルや係数は異なっている。
【0068】
ブロック判定部148は、画像を縦横に分割して得られるブロックの各々が属する色区分を判定する。ここで、「ブロック」とは、例えば、縦30個×横30個の画素集合を含む領域であり、スキャナ部112において600dpiで原稿に描かれた画像を読み取って、縦2画素×横2画素の隣接する4画素について平均化を行った場合、原稿における縦5mm×横5mmの領域に相当する。したがって、縦210mm×横297mmの原稿に描かれた画像を600dpiで読み取って、縦2画素×横2画素の隣接する4画素について平均化を行った場合、原稿は、縦42個×横60個の2520個のブロックに分割される。また、「ブロックの各々が属する色区分」は、1個の無彩色の色区分と、R,G,B,Y,M,Cの6個の有彩色の色区分との、合計7個の色区分から選択される。
【0069】
判定計数部150は、7個の色区分の各々に属するブロックの数を計数する。
【0070】
モード判定部152は、判定計数部150の計数結果に基づいて、画像に含まれる色の色区分を特定する。「画像に含まれる色の色区分」も、1個の無彩色の区分と、R,G,B,Y,M,Cの6個の有彩色の区分との、合計7個の色区分から選択される。具体的には、モード判定部152は、上述の7個の色区分の各々について閾値をあらかじめ設定しておき、属するブロックの数が当該閾値を上回る色区分を、画像に含まれる色の色区分とする。そして、モード判定部152は、画像に含まれる色の色区分が無彩色の色区分のみである場合は、画像がモノクロ画像であると判定し、画像がモノクロ画像でなければ、すなわち、画像に含まれる色の色区分が有彩色の色区分を含む場合は、画像がカラー画像であると判定する。
【0071】
モード判定部152は、画像がモノクロ画像であると判定した場合は、モノクロモードの処理をプリンタ部114及び圧縮伸張部118に実行させ、画像がカラー画像であると判定した場合は、カラーモードの処理をプリンタ部114及び圧縮伸張部118に実行させる。
【0072】
このような構成によれば、原稿に描かれた画像をモノクロ画像とみなせる場合は、プリンタ部114は、「K」の画像形成エンジンを用いて、モノクロ画像を記録媒体上に形成し、圧縮伸張部118は、画像データの輝度成分Yを画像メモリ108から取得し、モノクロ圧縮画像データを生成する。一方、原稿に描かれた画像をカラー画像とみなせる場合は、プリンタ部114は、「Y」「M」「C」「K」の4色の画像形成エンジンのうち必要なものを用いて、カラー画像を記録媒体上に形成し、圧縮伸張部118は、画像データの輝度成分Y及び色差成分Cb,Crを画像メモリ108から取得し、カラー圧縮画像データを生成する。すなわち、このような構成によれば、デジタル複合機1において、原稿の特徴に応じて、適切なコピー又はスキャンを行うことができる。
【0073】
ここで、「「Y」「M」「C」「K」の4色の画像形成エンジンのうち必要なもの」とは、画像に含まれる色を表現するために必要な画像形成エンジンのみを動作させればよいという趣旨である。例えば、画像に含まれる色の区分が「Y」のみであれば、「Y」の画像形成エンジンのみを動作させればよく、画像に含まれる色の区分が「R」であれば、「Y」及び「M」の画像形成エンジンのみを動作させればよい。
【0074】
<2.3 ブロック判定部>
続いて、図3のブロック図を参照しながら、ブロック判定部148の構成をより詳細に説明する。図3に示すように、ブロック判定部148は、アフィン変換部162、単位データ判定部164、単位データ計数部166及び色判定部168を備える。
【0075】
アフィン変換部162は、単位データの色差成分Cb,Crにアフィン変換AT1を適用し、色差に関する色パラメータCb1,Cr1を得る。
【0076】
単位データ判定部164は、ブロックに含まれる画素集合ごとに、単位データが、先述の7個の色区分のいずれに属するのかを判定する。具体的には、単位データ判定部164は、図4に示す色平面H1において、アフィン変換AT1が適用された単位データが表現する色に対応する点、すなわち、単位データの色パラメータCb1,Cr1をプロットした点が、7個の部分領域mA,mM,mB,mC,mG,mY,mRのいずれに属するのかを判定し、単位データが表現する色に対応する点が属する部分領域に対応する色区分を、単位データが属する色区分とする。ここで、部分領域mA,mM,mB,mC,mG,mY,mRは、それぞれ、無彩色,M,B,C,G,Y,Rの色区分に対応している。
【0077】
単位データ計数部166は、7個の色区分の各々に属する単位データの数を計数する。
【0078】
色判定部168は、単位データ計数部166の計数結果に基づいて、ブロックの各々が属する色区分を判定する。具体的には、上述の7個の色区分の各々について閾値をあらかじめ設定しておき、属する単位データの数が当該閾値を上回る色区分を、ブロックが属する色区分とする。なお、この判定方法によれば、ブロックが属する色区分が2個以上となることもありうる。
【0079】
このようなブロックごとの色区分の判定を採用すれば、ブロックの大きさより著しく小さい汚れが原稿にあっても、当該汚れは「ブロックが属する色区分」に影響を与えないので、原稿に描かれた画像がモノクロ画像であるか否かを適切に判定できるようになる。
【0080】
また、このようなブロックごとの色区分の判定を採用すれば、あるブロックの大部分の領域が無彩色の領域であり、当該ブロックの残余の領域が有彩色の領域である場合に、当該ブロックが属する色区分として、有彩色の色区分を採用することができるので、カラー画像と判定すべき画像をモノクロ画像と判定してしまうことを減らすことがができる。
【0081】
<2.4 色平面H1について>
色平面H1は、色パラメータCb1と対応づけられたCb1軸(横軸)と色パラメータCr1と対応づけられたCr1軸(縦軸)との2本の座標軸が直交する2次元色平面である。
【0082】
色平面H1は、YCbCr色空間のCbCr色度図と同様に、原点Oに近づくにつれて示す彩度が低下する性質を有している。このため、色平面H1においては、原点Oを含む部分領域mAは、無彩色の色区分に対応する部分領域とされている。部分領域mAは、Cb1軸に平行な2本の彩度境界線D01,D02と、Cr1軸に平行な2本の彩度境界線D03,D04とに囲まれる正方形(より一般的には,長方形)の領域となっている。このような部分領域mAを色平面H1に設定すれば、色パラメータCb1が上限値−wと下限値+wとの間に含まれているか否か、及び、色パラメータCr1が下限値−wと上限値+wとの間に含まれているか否かを確かめれば、複雑な演算を行うことなく、単位データが表現する色に対応する点が部分領域mAに属するか否かを判定することができるので、モード判定処理において、画像がモノクロ画像であるか否かの判定が容易になる。
【0083】
部分領域mAの外側には、原点Oから放射状に伸びる色相境界線D1〜D5で区切られた、6個の有彩色の部分領域mM,mB,mC,mG,mY,mRが設定されている。色平面H1では、色相境界線D1が部分領域mRと部分領域mMとの境界、色相境界線D2が部分領域mMと部分領域mBとの境界、色相境界線D3が部分領域mBと部分領域mCとの境界、色相境界線D4が部分領域mCと部分領域mGとの境界、色相境界線D5が部分領域mGと部分領域mYとの境界、色相境界線D6が部分領域mYと部分領域mRとの境界になっている。
【0084】
色相境界線D1〜D6のうち、色相境界線D1,D4はCr1軸上に設定され、色相境界線D2,D3,D5,D6は、それぞれ、各象限を二等分するように、すなわち、各象限においてCb1軸及びCr1軸と45°の角度をなすように設定される。色相境界線D1〜D6をこのように設定すれば、色パラメータCb1,Cr1の正負及び色パラメータCb1の絶対値と色パラメータCr1の絶対値との大小関係から、色パラメータCb1,Cr1を色平面H1にプロットした点(以下、「プロット点」)が、6個の部分領域mM,mB,mC,mG,mY,mRのいずれに属するかを容易に判定することができる。例えば、色パラメータCb1,Cr1の両方が正であれば、プロット点が第1象限に存在すると判断でき、色パラメータCr1の絶対値が色パラメータCb1の絶対値より大きければ、プロット点が部分領域mMに属すると判断することができる。
【0085】
このような色平面H1は、YCbCr色空間のCbCr色度図に相当する色平面H0に回転変換やスケーリング変換等のアフィン変換を適用することにより、得ることができる。
【0086】
ここで、図5〜図7を参照しながら、色平面H1を得る方法を説明する。
【0087】
色平面H1を得るのにあたっては、まず、図5に示すような、YCbCr色空間のCbCr色度図に相当する色平面H0、すなわち、色差成分Cbと対応づけられたCb軸(横軸)と色差成分Crと対応づけられたCr軸(横軸)との2本の座標軸が直交した直交座標系を有する色平面H0に、色相境界線D1〜D6を設定する。色相境界線D1〜D6は、人間の視覚に基づいて設定すればよいが、人間の視覚に基づいてそのまま設定すると原点Oに関して略対称となる2本の色相境界線(例えば、色相境界線D2,D5)が原点Oを通る1本の直線上に乗るように設定する。
【0088】
続いて、縦軸に近い色相境界線D1,D4が縦軸と一致するように、原点Oを中心とする回転変換を色相全体に適用する。これにより、図6に示すような、色パラメータCb2と対応づけられたCb2軸(横軸)と色パラメータCr2と対応づけられたCr2軸(縦軸)との2本の座標軸が直交した直交座標系を有する色平面H2が得られる。
【0089】
さらに続いて、縦軸と一致していない色相境界線D2,D3,D5,D6が各象限において横軸及び縦軸と45°の角度をなすように、異方的スケーリング変換(横軸方向と縦軸方向とで拡大率又は縮小率が異なるスケーリング変換)を色相全体に適用する。これにより、図7に示すような、色パラメータCb3と対応づけられたCb3軸(横軸)と色パラメータCr3と対応づけられたCr3軸(縦軸)との2本の座標軸が直交した直交座標系を有する色平面H3が得られる。
【0090】
この色平面H3に対して、さらに、彩度境界線D01〜D04を設定することにより、図4に示す色平面H1が得られる。
【0091】
なお、色空間変換部146において、RGB色空間で表現された画像データを、L***色空間で表現された画像データへ変換するようにした場合、ブロック判定部148で用いる色平面H1は、色度成分a*と対応づけられたa*軸と色度成分b*と対応づけられたb*軸との2本の座標軸が直交した直交座標系を有する2次元の色平面に回転変換やスケーリング変換等のアフィン変換を同様に適用することにより得られるものとすればよい。
【0092】
より一般的には、色空間変換部146が出力する画像データが1個の無彩成分(例えば、YIQ色空間における輝度成分Y、YCbCr色空間における輝度成分Y、L***色空間における明度成分L、L***色空間における明度成分L等)と2個の有彩成分(例えば、YIQ色空間における色差成分I,Q、YCbCr色空間における色差成分Cb,Cr、L***色空間における色度成分a*,b*、L***色空間における明度成分u*,v*等)とから構成される場合、ブロック判定部148で用いる色平面H1は、第1の有彩成分と対応づけられた有彩軸と第2の有彩成分と対応づけられた有彩軸との2本の座標軸が直交した直交座標系を有する2次元の色平面に回転変換やスケーリング変換等のアフィン変換を同様に適用することにより得られるものとすればよい。
【0093】
なお、これまでに説明したような色平面H1をブロック判定部148で用いれば、単位データが属する色区分の判定を行う際の演算量を減らすことができるが、このことは、色平面H1以外の色平面を用いることを妨げるものではない。例えば、図5に示すような、YCbCr色空間のCbCr色度図に相当する色平面H0に原点Oを含む部分領域mAを設定したものを用いることもできる。
【0094】
また、上述の説明では、原点Oから放射状に伸びる色相境界線D1〜D5で色平面H1を6個の有彩色の部分領域mM,mB,mC,mG,mY,mRに分割し、単位データが表現する色に対応する点と色相境界線D1〜D5との位置関係(色パラメータCb1の絶対値と色パラメータCrの絶対値との大小関係)を判定することにより単位データが属する色区分を判定するとしたが、有彩色の部分領域の数は、色相境界線の数を増やすことにより容易に増やすことができる。このため、色平面H1を7個以上の有彩色の部分領域に分割し、1個の無彩色の色区分と7個以上の有彩色の色区分との、合計8個以上の色区分から単位データが属する色区分を選択するようにすることも容易である。
【0095】
<2.5 アフィン変換について>
以下では、アフィン変換部162において単位データの色差成分Cb,Crに適用されるアフィン変換AT1について説明する。
【0096】
このアフィン変換AT1は、色平面H0から色平面H1を得る際に色相全体に適用されるアフィン変換AT2と、図4に示す色平面H1において、黄色基準色に対応する点Qを、原点Oを始点として部分領域mAの頂点P1を通過して伸びる半直線L1上に最終的に移動させるアフィン変換AT3とを合成したアフィン変換となっている。すなわち、アフィン変換AT1は、ブロック判定部148で用いる色平面H1に単位データを適合させるためのアフィン変換AT2と、無彩色とみなされる黄色を拡大し、判定結果を人間の視覚と一致させるためのアフィン変換AT3とを合成したものになっている。アフィン変換AT3は、典型的には、原点Oを中心とする回転変換であるが、スケーリング変換等を伴ってもよい。
【0097】
アフィン変換AT3により「無彩色とみなされる黄色」が「拡大」されるのは、原点Oと輝度境界線D01〜D04との距離は部分領域mAの頂点P1において極大となるので、半直線L1の方向の色相については、無彩色とみなされる彩度の上限が大きくなるからである。
【0098】
ここで、「黄色基準色」とは、人間の視覚では白色と区別することが難しい色である。この黄色基準色として、RGB色空間において、R及びGの色成分データが最大の階調値となり、Bの色成分データが最小の階調値となる色を採用すれば、アフィン変換AT1を適切なものとすることができる。なお、各色成分の階調数が8ビットである24ビットフルカラー画像においては、「最大の階調値」は「255」であり、「最小の階調値」は「0」である。
【0099】
また、原点Oから部分領域mAの頂点P1〜P4を通過して伸びる4本の半直線L1〜L4うち、点Qの移動先の半直線は、点Qから最も近い半直線L1とすることが望ましい。アフィン変換AT3による点Qの移動を必要最小限にするためである。
【0100】
なお、先述したように、YCbCr色空間のCbCr色度図に相当する色平面H0(図5参照)に原点Oを含む部分領域mAを設定したものを、単位データが属する色区分の判定を行う際に用いる場合、アフィン変換AT2を行う必要なく、アフィン変換AT1は、アフィン変換AT3と同一のものとなる。
【0101】
<3 モード判定処理の手順>
図8は、デジタル複合機1におけるモード判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0102】
モード判定処理にあたっては、最初に、原稿に描かれた画像をCCDラインセンサ132で走査して、当該画像に係る画像データを、バスライン126を介してスキャナ部112から画像色判定部116へ転送する(ステップS101)。
【0103】
画像色判定部116では、平均化部142において、画像データを平均化し(ステップS102)、ガンマ補正部144において、平均化された単位データにガンマ補正を施す(ステップS103)。ガンマ補正を施された粗画像データは、色空間変換部146によって、RGB色空間で表現された粗画像データからYCbCr色空間で表現された粗画像データへ変換される(ステップS104)。
【0104】
続いて、アフィン変換部162において、YCbCr色空間において表現された画像データの色差成分Cb,Crにアフィン変換AT1が適用する(ステップS105)。
【0105】
アフィン変換AT1の適用にあたっては、アフィン変換AT2とアフィン変換AT3とを合成したアフィン変換AT1を色差成分Cb,Crに適用してもよいし、アフィン変換AT2を色差成分Cb,Crに適用した後に、アフィン変換AT2が適用された色差成分Cb,Crにアフィン変換AT3をさらに適用してもよい。これらのいずれの方法を採用したとしても、ステップS105により、黄色基準色に対応する点Qは、半直線L1上に最終的に移動することになる。
【0106】
アフィン変換AT1の適用に続いて、色パラメータCb1,Cr1を色平面H1にプロットした点が属する部分領域が単位データ判定部164によって判定され、粗画像データを構成する単位データの各々が属する色区分が判定される(ステップS106)。なお、計算量を削減するためには、図8のフローチャートに示すように、画像データの平均化を行ってから、平均化された画像データにアフィン変換AT1を適用することが望ましいが、画像データにアフィン変換AT1を適用してから、アフィン変換AT1が適用された画像データの平均化を行うようにしてもよい。
【0107】
続くステップS107〜S110では、ステップS106の判定結果を利用して、原稿に描かれた画像がモノクロ画像であるか否かを判定する。
【0108】
具体的には、まず、7個の色区分の各々に属する単位データの数を単位データ計数部166で計数する(ステップS107)。
【0109】
次に、色判定部168が、7個の色区分の各々について設定された閾値をROM104から読み出し、設定された閾値と属する単位データの数との大小関係を色区分ごとに比較し、ブロックが属する色を示す色フラグを設定する(ステップS108)。すなわち、色判定部168は、属する単位データの数が設定された閾値を上回る色区分に値「1」と与え、それ以外の色区分に値「0」を与える。
【0110】
そして、判定計数部150が、7個の色区分の各々に属するブロックの数を計数し(ステップS109)、モード判定部152が、判定計数部150の判定結果に基づいて、原稿に描かれた画像がモノクロ画像であるか否かを判定し、デジタル複合機1をモノクロモード又はカラーモードに設定する(ステップS110)。
【0111】
なお、カラー画像に含まれる色の区分の判定にアフィン変換AT3が影響を与えることを防止するため、アフィン変換AT1が適用された色差成分Cb,Crを用いて、原稿に描かれた画像がモノクロ画像及びカラー画像のいずれに該当するのかを判定し、カラー画像と判定した場合のみ、アフィン変換AT2が適用された色差成分Cb,Crを用いて、カラー画像に含まれる色の区分をさらに判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の望ましい実施形態に係るデジタル複合機1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】スキャンモード及びプリントモードにおけるデジタル複合機1の処理と関連する構成を示すブロック図である。
【図3】ブロック判定部148の構成を示すブロック図である。
【図4】ブロック判定部148で用いる色平面H1を示す図である。
【図5】YCbCr色空間のCbCr色度図に相当する色平面H0を示す図である。
【図6】Cb2軸とCr2軸とが直交した直交座標系を有する色平面H2を示す図である。
【図7】Cb3軸とCr3軸とが直交した直交座標系を有する色平面H3を示す図である。
【図8】デジタル複合機1におけるモード判定処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
1 デジタル複合機
102 CPU
104 ROM
106 RAM
108 画像メモリ
112 スキャナ部
114 プリンタ部
116 画像処理部
118 圧縮伸張部
PRG プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定装置であって、
2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用手段と、
前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定手段と、
前記領域判定手段の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定手段と、
を備えることを特徴とする画像色判定装置。
【請求項2】
前記長方形領域は、前記2次元色平面の第1の座標軸に平行な2本の境界線と、前記2次元色平面の第2の座標軸に平行な2本の境界線とに囲まれる領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像色判定装置。
【請求項3】
前記黄色基準色は、RGB色空間において、R及びGの色成分データが最大の階調値であり、Bの色成分データが最小の階調値である画像データが表現する色であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像色判定装置。
【請求項4】
複数の画素を含む画素集合ごとに画素データを平均化する平均化手段、
をさらに備え、
前記平均化手段により平均化された画素データを構成単位とする前記画像データに基づいて画像が無彩色画像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像色判定装置。
【請求項5】
原稿から記録媒体へ画像をコピーするコピー手段、
をさらに備え、
コピーの際の変倍率に基づいて前記画素集合に含まれる画素の数を決定することを特徴とする請求項4に記載の画像色判定装置。
【請求項6】
前記原稿に係る画像データの解像度を変換する変換手段、
をさらに備え、
前記変換手段により解像度が変換される前の前記画像データに基づいて前記画像が無彩色画像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像色判定装置。
【請求項7】
画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定方法であって、
2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用工程と、
前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定工程と、
前記領域判定工程の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定工程と、
を備えることを特徴とする画像色判定方法。
【請求項8】
画像が無彩色画像であるか否かを判定する画像色判定プログラムであって、
2次元色平面において、原点を始点として前記原点を含む長方形領域の頂点を通過して伸びる半直線上に、黄色基準色に対応する点を移動させる変換を、前記画像に係る画像データに適用する適用手順と、
前記2次元色平面において、前記変換が適用された前記画像データが表現する色に対応する点が、前記長方形領域に属するか否かを判定する領域判定手順と、
前記領域判定手順の判定結果を利用して、前記画像が無彩色画像であるか否かを判定する無彩色判定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像色判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−66932(P2008−66932A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241191(P2006−241191)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】