説明

画像表示方法および装置並びにプログラム

【課題】 比較観察するための複数のデジタル画像を、表示手段の画面において切り替えて表示する画像表示装置において、効率のよい比較観察が安定して行えるようにする。
【解決手段】 画像処理手段20が、入力された複数の画像の輝度調整と画像中の被写体の構造物の位置合せ処理を行い、表示制御手段30が、当該処理済画像データに基づいて、上記各画像が表示手段10の画面にて比較観察しやすい毎秒1こまから毎秒5こまのフレームレートで繰返し切り替えて表示されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示方法および装置並びにそのためのプログラムに関し、詳しくは、比較観察するための異なる画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、これらの画像を画面に表示する画像表示方法および装置並びにそのためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やフィルム等の記録媒体に記録された画像を比較観察する際には、これら記録媒体を単純に並べて載置して観察したり、記録媒体がフィルムである場合には、これらフィルムをシャーカステン上に並べて載置して観察したりしている。
【0003】
一方、デジタル画像において同様の比較観察を行う場合には、画像をCRTやLCD等の表示装置の同一画面に並べて表示させたり、あるいは、表示装置を複数台並べて設置し、これら表示装置の各画面毎に各画像を表示させたりする方法が提案されている(例えば、特許文献1,2等)。
【0004】
また、比較観察するための画像間でサブトラクション処理(減算処理)を行って、その差分を表す差分画像を生成し、当該差分画像を用いて抽出された画像間の差異を観察する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−076741号公報
【特許文献2】特開平8−186762号公報
【特許文献3】特開2002−158923公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示装置の同一画面に複数の画像を並べて表示する方法では、各画像のサイズが小さくなり観察しにくいという問題があり、複数の表示装置の各画面毎に各画像を表示する方法では、表示システム全体が大きくなり、設置場所が限定されたりコストが上昇したりする等の問題がある。また、これらの方法では、比較する画像が少なからず位置的に離れていることから視線をずらして観察する必要があり、その行為が煩わしく観察者の疲労を招くという問題がある。
【0006】
また、差分画像を用いて抽出された画像間の差異を観察する方法では、差分画像は元の画像と異なる画像であるために被写体を正確に捉えることができず観察がし難い場合があるという問題がある。
【0007】
このような問題の解消が期待できる1つの方法として、1つの表示装置の画面において比較する各画像を切り替えて表示する方法が考えられるが、画像を単純に切り替えるだけでは、切り替わるまでの時間が比較的長い場合には、前に表示されていた画像の記憶が薄れてしまうことがあり、また、切り替わるまでの時間が比較的短い場合には、残像効果により各画像が重なって見えてしまうことがあるので、効率のよい比較観察を安定して行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、比較観察するための画像を画面で切り替えて表示する方法を適用しつつ、効率のよい比較観察を安定して行うことが可能な画像表示方法および装置並びにそのためのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像表示方法は、比較観察するための同種の被写体の複数の異なる画像を1つの表示手段の画面において切り替えて表示させる画像表示方法において、前記複数の画像を毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示させることを特徴とする方法である。
【0010】
本発明の画像表示装置は、画像を表示する1つの表示手段と、入力された、比較観察するための同種の被写体の異なる画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、該複数の画像データが表す複数の画像が前記表示手段の画面において切り替えて表示されるように制御する表示制御手段とを備えた画像表示装置において、前記表示制御手段が、前記複数の画像が毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示されるように制御するものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の画像表示装置おいては、前記表示速度を調整する表示速度調整手段を備えるものであってもよい。
【0012】
本発明の画像表示装置において、前記表示速度は、毎秒1.5こまから毎秒3.5こまの間の表示速度であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の画像表示装置においては、前記複数の画像における被写体の構造物の位置が互いに略一致するように、前記複数の画像データのうち少なくともいずれかに画像処理を施して、前記構造物の位置合せがなされた前記複数の画像データを得る位置合せ手段を備え、前記表示制御手段が、前記位置合せがなされた前記複数の画像データに基づいて制御するものであってもよい。
【0014】
なお、前記複数の画像は、異なる時期に撮影された同一の被写体をそれぞれ表す複数の画像、異なる時期に撮影された同一の人体の胸部をそれぞれ表す複数の医用画像、あるいは、対となる左右の各乳房をそれぞれ表す2つの医用画像であってもよい。
【0015】
本発明のプログラムは、コンピュータに、入力された、比較観察するための同種の被写体の異なる画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、該複数の画像データが表す複数の画像を1つの表示手段の画面において切り替えて表示されるように制御する表示制御処理を実行させるためのプログラムにおいて、前記表示制御処理が、前記複数の画像が毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示されるように制御する処理であることを特徴とするプログラムである。
【0016】
ここで「表示速度」とは、一定時間当たりに切り替えて表示する画像のこま数を表し、いわゆるフレームレートを意味する。
【0017】
なお、画像の切替えは、常に一定の表示速度で行われている必要はなく、表示速度に一時的な変動や時間的変化があってもよい。
【0018】
また「繰返し」とは、所定回数を繰り返すことであってもよいし、中断の指示があるまで繰り返すことであってもよい。
【0019】
「表示手段」としては、例えば、CRT、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、プロジェクタ等が考えられる。
【0020】
「画像」は、比較観察の対象となるデジタル画像であればいかなるものであってもよく、例えば、非破壊検査用の画像や診断に供する医用画像としての、放射線画像、CT断層像画像、MRI画像等が考えられる。
【0021】
なお、表示速度における上記の具体的な数値範囲の限定は、本出願人が行った以下の方法による評価結果に基づくものである。
【0022】
(使用症例)
評価は下記2種類の画像セットで行う。
【0023】
1.撮影日が異なる2つの胸部単純X線画像で肺がん結節陰影が発現している例(chest)。
【0024】
2.撮影日が異なる2つのマンモグラムで腫瘤影が発現している例(mammo)。
【0025】
(評価方法)
セットである2つの画像を一定のフレームレートで表示させ、目視で主観評価を行う。異常陰影(結節陰影や腫瘤陰影)の発現部位が当該2つの画像間における差異として確認できるかが評価観点。観察者は発明者本人。
【0026】
(評価結果)
表1は、上記評価の結果を表すものである。
【表1】

【0027】
(結論)
差異が認識できるフレームレートは1fps(frame per second)、2fps、3fpsおよび5fpsであり、特に違いを明確に認識することができたレートは、chestでは2fps、mammoでは3fpsであった。したがって、適したフレームレートは1fpsから5fpsであり、中でも最も適したフレームレートは、1.5fpsから3.5fpsと考えられる。評価結果は、観察者の動態視力または画像の位置合せの精度等によって、多少のずれが生じる可能性があるが、おおよそのオーダーは変わらないと考える。
【発明の効果】
【0028】
本発明の画像表示方法および装置並びにそのためのプログラムによれば、比較する各画像を、1つの表示手段の画面において毎秒1こまから毎秒5こまの間という、視覚を通して記憶した各画像を忘れず、かつ、各画像が識別可能な程度の表示速度で繰り返し切り替えて表示させるので、比較する各画像間の差異を際立たせて観察することができ、効率のよい比較観察を安定して行うことができる。
【0029】
また、比較する各画像を同一画面に表示していないため、視線をそらさずに比較的大きなサイズで画像を比較観察することができ、また、複数台の表示装置を必要としないため、コストも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本発明の画像表示方法を適用した画像表示装置の第1の実施形態である画像表示装置100の構成を示すブロック図である。
【0032】
図1に示す画像表示装置100は、画像を表示するCRTやLCD等の1つの表示手段10と、入力された、同一患者の撮影時期の異なる胸部X線画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、上記複数の胸部X線画像における解剖学的構造物の位置が互いに略一致するように、上記複数の画像データのうち少なくともいずれかに画像処理を施して、解剖学的構造物の位置合せ処理を行う画像処理手段20と、上記位置合せがなされた複数の画像データに基づいて、上記位置合せ済みの複数の胸部X線画像が表示手段10の画面において少なくとも毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し切り替えて表示されるように制御する表示制御手段30と、表示速度を調整する表示速度調整手段40とを備えている。
【0033】
この画像表示装置100は、観察者が本画像表示装置により表示された胸部X線画像を観察することにより、胸部の時系列的変化を確認し、病変の有無の判定や病変部の経過観察等の診断を行うことができるようにするものである。
【0034】
次に、画像表示装置100の作用について説明する。
【0035】
図2は、画像表示装置100における処理フローを概略的に示した図である。
【0036】
例えば、図3(1)〜(3)に示すような、同一患者の撮影時期が異なる3つの胸部X線画像P1,P2,P3をそれぞれ表す画像データP1,P2,P3(簡便のため、画像データとその画像データが表す画像とを同一記号で表す)が、不図示の画像データベース等から読み出されて本画像表示装置100に入力される(ステップS1)。これらの画像データは、例えば、CRシステム(Computed Radiography System)等により取得される。なお、図中のQ2,Q3は、腫瘤等の経時変化部分を示している。
【0037】
画像データP1〜P3が入力されると、画像処理手段20は、まず、各画像データが表す胸部X線画像P1〜P3の輝度レベルが略同じになるように、各画像データに対して輝度調整処理を施す(ステップS2)。このような輝度調整を行う理由は、各画像間で輝度レベルにばらつきがあると、後述の位置合せ処理を行う際に胸部の構造物の認識に誤差が生じたり、観察者が表示された画像を見る際に見辛くなったりするからである。具体的には、例えば、下記のような2つの方法により輝度レベルを調整することができる。
【0038】
1)画素値の最大・最小を合せる方法
第1の画像と第2の画像における画素値(輝度の程度を表す各画素の値)の集合を、それぞれ、S1,S2とする。集合S1の最大・最小Max1,Min1と、集合S2の最大・最小Max2,Min2を、それぞれ、数式(1)〜(4)にしたがって算出する。
【数1】

【0039】
第1の画像(S1)を基準として、第2の画像(S2)の画素値を、数式(5)にしたがってS2の各画素値pを画素値p′に変換することで輝度を合せる。
【数2】

【0040】
2)画素値の平均・分散を合せる方法
第1の画像と第2の画像における画素値の集合を、それぞれ、S1,S2とする。画素数をNとして、S1の平均画素値μ1と分散(σ1×σ1)、S2の平均画素値μ2と分散(σ2×σ2)を、それぞれ、数式(6)〜(9)にしたがって算出する。
【数3】

【0041】
第1の画像(S1)を基準として、第2の画像(S2)の画素値を、数式(10)にしたがってS2の各画素値pを画素値p′に変換することで輝度を合せる。
【数4】

【0042】
ここでは、上記のような方法により、画像P1を基準に他の画像P2,P3の輝度調整を行って、画像データP1,P′2,P′3を得るものとする。
【0043】
次に、各画像データP1,P′2,P′3が表す胸部X線画像における胸部の解剖学的構造物が互いに略一致するように、各画像データに対して位置合せ処理を施す(ステップS3)。位置合せ処理の方法としては、例えば、下記の方法が考えられる。
【0044】
これら3つの画像のうち1つを基準画像とし、この基準画像と他の1つの画像との各組合せについて、2つの画像間で平行移動、回転または拡大・縮小という全体的な位置合せ(アフィン変換等を用いた線形的な位置合せ)を行い、全体的な位置合せが行われた2つの画像のうち一方の画像に多数の小領域である関心領域(テンプレート領域)を設定して、他方の画像に各テンプレート領域にそれぞれ対応する各テンプレート領域よりも大きい領域の探索領域を設定する。そこで、テンプレート領域と対応する探索領域との各組において、テンプレート領域と画像が略一致する探索領域内の部分領域(対応テンプレート領域)を求める。また、一方の画像における各テンプレート領域と、他方の画像における各対応テンプレート領域との対応位置関係に基づいて、一方の画像における各テンプレート領域を他方の画像における各対応テンプレート領域に一致させるためのシフト量を求める。求められたシフト量に基づいて、上記全体的な位置合せがなされた2つの画像に対し、カーブフィッティング(例えば、2次元n次多項式,n≧2)による非線形歪変換(ワーピング)を行う。
【0045】
また、画像中の特定の構造物を重視した画像を用いて、特定の構造物同士が合うように位置合せを行う方法が本出願人により提案されている(特開2001―325584公報、特開2002―324238公報)。この方法を利用すれば、骨部組織あるいは軟部組織を重視した画像を用いることにより骨部組織あるいは軟部組織について全体的に位置合せされた画像を得ることが可能になる。
【0046】
さらに、骨部組織あるいは軟部組織の所望の組織を重視して、その重視する組織について概略位置合せを行った後に、局所的位置合せ処理を行う方法が本出願人により提案されている(特開2002―324238公報)。この2段階の位置合せ方法によれば、目的に応じて2つの画像を比較的良好に位置合せすることができる。
【0047】
ここでは、上記のような方法により、画像P1を基準に画像P′2,P′3に対して位置合せ処理を施して、位置合せ処理後の画像データP1,P″2,P″3を得るものとする。
【0048】
位置合せ処理後の画像データが得られると、表示制御手段30は、例えば、画像の切替表示の開始を指示する信号の入力をトリガに、胸部X線画像の切替表示を開始する(ステップS4)。すなわち、輝度調整および位置合せ処理後の画像データP1,P″2,P″3に基づいて、これら各画像データが表す胸部X線画像P1,P″2,P″3を、表示手段20の画面上において、毎秒1.5から3.5こま程度の所定の表示速度で繰返し切り替えて表示させるようにする。
【0049】
表示速度調整手段40は、切替表示前および切替表示中において、例えば、不図示の入力手段(キーボード、マウス、ボタンやダイアル等を備えたハードデバイス等)を介して入力される情報に基づいて表示速度の設定を更新する(ステップS5)。これにより、操作者は、自身が観察しやすい所望の表示速度に調整することができる。
【0050】
なお、画像の切替表示は、例えば、一定時間経過後、または、切替表示の停止を指示する信号の入力をトリガに終了する。あるいは、切替表示を指示する信号が入力されている間のみ、切替表示を継続して行うようにしてもよい。
【0051】
このような切替表示により、各画像間の差分、例えば、画像P1〜P3においては、腫瘤等の差異部分Q2,Q3が際立って見えるようになる。
【0052】
図4は、上記のような第1の実施形態における表示手段10の画面11のレイアウト例を示した図である。画面11には、入力された画像(ここではP1〜P3)の縮小画像が撮影日順に並べて表示される窓w1があり、操作者は、この中から所望の画像のみを選択して切替表示の対象とすることができる。また、窓w1とは別に、画像の切替表示を行う切替表示領域w2が設けられている。この切替表示領域w2のサイズは可変であり、画面いっぱいに広げて表示したり、画面の一部において表示したりすることができる。画面には、さらに、切替表示の開始/停止を指示するトリガ信号を入力するための「経時切替ビュー」ボタンvと、表示速度を調整するためのスクロールバーbが表示されている。操作者は、マウス等によりこのボタンbを画面上のポインタを用いて押すことにより、切替表示の開始/停止を行い、スクロールバーbのボタン位置をスライドさせることにより表示速度を調整することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、表示速度を表示手段10の画面に表示されたスクロールバーにて設定するようにしているが、この他に、例えば、ダイアル等の回転式ハードデバイスを用いて、そのダイアルの回転位置や回転量に応じて設定するようにしてもよい。
【0054】
また、表示速度は、一定に維持されるだけでなく、はじめは高速で切替え、徐々に低速に切り替わっていくようにしてもよい。例えば、はじめ毎秒5こまで徐々に遅くなり10秒後には毎秒0.5こま(2秒毎に1こま)となるようにする。このようにすることで、高速切替時に画像間の差分の概略を確認し、低速切替時にその差分がそれぞれどの画像のどの部分(例えば、他の正常組織に対する相対的位置等)に存在しているかを特定することができる。
【0055】
図5は、本発明の画像表示方法を適用した画像表示装置の第2の実施形態である画像表示装置200の構成を示すブロック図である。図5に示す画像表示装置200は、表示手段10と、入力された、同一患者の左右各乳房のマンモグラム(乳房の医用X線画像)をそれぞれ表す2つの画像データに基づいて、上記2つのマンモグラムにおける解剖学的構造物の位置が互いに略一致するように、上記2つの画像データのうち少なくともいずれかに画像処理を施して、解剖学的構造物の位置合せを行う画像処理手段20と、上記位置合せがなされた2つの画像データに基づいて、上記位置合せ済みの2つのマンモグラムが表示手段10の画面に表示されるように制御する手段であって、不図示の入力手段により入力された、画面に表示するマンモグラムの切替えを指示する切替信号に応答して、マンモグラムを1回切り替えて表示されるように制御する表示制御手段30とを備えるものであり、切替信号を連続的に入力することにより、上記2つのマンモグラムを毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し切り替えて表示することを可能にするものである。
【0056】
この画像表示装置200は、観察者が本画像表示装置により表示されたマンモグラムを観察することにより、乳房の左右非対称部分を確認し、病変の有無等の診断を行うことができるようにするものである。
【0057】
次に、画像表示装置200の作用について説明する。
【0058】
図6は、画像表示装置200における処理フローを概略的に示した図である。
【0059】
例えば図7(1),(2)に示すような、同一患者の左右各乳房のマンモグラムP4,P5を表す画像データP4,P5が本画像表示装置200に入力される(ステップS11)。なお、図中のQ5は、左右非対称部分を示している。
【0060】
画像データP4,P5が入力されると、画像処理手段20は、第1の実施形態と同様の方法により、輝度調整処理を行って(ステップS12)、画像データP4,P′5を得た後、位置合せ処理を行って(ステップS13)、画像データP4,P″5を得る。
【0061】
マンモグラムにおける位置合せ処理の方法としては、第1の実施形態と同様の方法を適用することはもちろん可能であるが、より簡易的に、例えば、特開2002―65613公報にて提案されているような、画像上における乳房の位置を公知の認識技術により認識し、乳房の胸筋側の画像辺の位置と乳頭の位置が2つの画像間でそれぞれ一致するように、一方の画像に対してワーピング処理を施す方法が考えられる。
【0062】
なお、左右乳房を表すマンモグラムでは、通常、画像中の乳房の向きが左右対称であるので、一方の画像を左右反転させて位置合せをすることとなる。
【0063】
位置合せ処理後の画像データが得られると、表示制御手段30は、例えば、はじめにマンモグラムP4,P″5のうちのいずれか一方を表示手段10の画面に表示して、切替信号の入力待ちを行う(ステップS14)。
【0064】
ここで、操作者が、不図示の入力手段により、例えば、キーボードやマウスの所定のボタンを押すなどして切替信号が入力されると、表示制御手段20がこれに応答して、表示するマンモグラムをもう一方のマンモグラムに切り替える処理を1回だけ行う(ステップS15)。
【0065】
これにより、操作者が切替信号を入力する度に、表示されるマンモグラムが切り替わることになるので、操作者が所定のタイミングで切替信号を繰返し入力することにより、毎秒1こまから毎秒5こま程度の表示速度で左右乳房のマンモグラムを交互に切り替えて表示させることができる。表示速度は切替信号を入力するタイミングで自由に制御できるので、速度調整はもとより、途中、切替信号の入力を一時止めて画像の切替えを中断し、1つのマンモグラムを注意深く観察することも容易にできる。
【0066】
このような切り替え表示により、左右乳房の非対称部分、例えば、非対称部分Q5のみが際立って見えるようになる。操作者は、このような非対称部分を発見し、当該部分をより詳しく観察することにより乳がん等に関する診断を行うことができる。
【0067】
このように、本発明の第1および第2の実施形態によれば、比較する各画像を、1つの表示手段の画面において毎秒1こまから毎秒5こまの間という、視覚を通して記憶した各画像を忘れず、かつ、各画像が識別可能な程度の表示速度で繰り返し切り替えて表示させることができるので、比較する各画像間の差異を際立たせて観察することができ、効率のよい比較観察を安定して行うことができる。
【0068】
また、比較する各画像を同一画面に表示していないため、視線をそらさずに比較的大きなサイズで画像を比較観察することができ、また、複数台の表示装置を必要としないため、コストも抑えることができる。
【0069】
なお、比較観察する画像がマンモグラムである場合、これらの画像は同時期に撮影された左右乳房に限らず、例えば、現時点で撮影された右乳房のマンモグラムと過去に撮影された左乳房のマンモグラムのように、撮影時期も乳房の左右別も異なる画像であってもよいし、胸部画像と同様に、同一乳房の撮影時期の異なる画像であってもよい。同一乳房の撮影時期の異なる画像を観察することにより、乳がんの特徴的形態である石灰化影がどのように増加したかを観察することも容易に行うことができる。
【0070】
また、切替表示は、各画像を完全に切り替える場合の他、いずれかの画像を半透明な画像として他の画像と重ねて表示するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態による画像表示装置の構成を示した図
【図2】第1の実施形態による画像表示装置の処理フローを示した図
【図3】経時的な複数の胸部X線画像を表した図
【図4】第1の実施形態における表示手段の画面のレイアウト例を示した図
【図5】本発明の第2の実施形態による画像表示装置の構成を示した図
【図6】第2の実施形態による画像表示装置の処理フローを示した図
【図7】一対の左右乳房のマンモグラムを表した図
【符号の説明】
【0072】
10 表示手段
11 表示手段の画面
20 画像処理手段(位置合せ手段)
30 表示制御手段
40 表示速度調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較観察するための同種の被写体の複数の異なる画像を1つの表示手段の画面において切り替えて表示させる画像表示方法において、
前記複数の画像を毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示させることを特徴とする画像表示方法。
【請求項2】
画像を表示する1つの表示手段と、
入力された、比較観察するための同種の被写体の異なる画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、該複数の画像データが表す複数の画像が前記表示手段の画面において切り替えて表示されるように制御する表示制御手段とを備えた画像表示装置において、
前記表示制御手段が、前記複数の画像が毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示されるように制御するものであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記表示速度を調整する表示速度調整手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示速度が、毎秒1.5こまから毎秒3.5こまの間の表示速度であることを特徴とする請求項2または3記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記複数の画像における被写体の構造物の位置が互いに略一致するように、前記複数の画像データのうち少なくともいずれかに画像処理を施して、前記構造物の位置合せがなされた前記複数の画像データを得る位置合せ手段を備え、
前記表示制御手段が、前記位置合せがなされた前記複数の画像データに基づいて制御するものであることを特徴とする請求項2から4いずれか記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の画像が、異なる時期に撮影された同一の被写体をそれぞれ表す複数の画像であることを特徴とする請求項2から5いずれか記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記複数の画像が、異なる時期に撮影された同一の人体の胸部をそれぞれ表す複数の医用画像であることを特徴とする請求項2から5いずれか記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記複数の画像が、対となる左右の各乳房をそれぞれ表す2つの医用画像であることを特徴とする請求項2から5いずれか記載の画像表示装置。
【請求項9】
コンピュータに、
入力された、比較観察するための同種の被写体の異なる画像をそれぞれ表す複数の画像データに基づいて、該複数の画像データが表す複数の画像が1つの表示手段の画面において切り替えて表示されるように制御する表示制御処理を実行させるためのプログラムにおいて、
前記表示制御処理が、前記複数の画像が毎秒1こまから毎秒5こまの間の表示速度で繰返し表示されるように制御する処理であることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−6435(P2006−6435A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184517(P2004−184517)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】