説明

画像表示装置、強調表示方法

【課題】画像表示装置が表示する画像の画像構成要素の判別性を向上させる。
【解決手段】プロジェクタPRの制御部30は、投写画像に重畳して、入力機構50により移動させることが可能なポインタ画像74を表示する。ユーザは、ポインタ画像74を移動させて、画像の任意の位置の指定を行う。制御部30は、指定された位置の画素の階調値を取得する。そして、画像の入力信号が表す階調値のうち、取得した階調値に対して所定の範囲にある階調値を、LUT回路27を用いて変換し、当該変換後の階調値が表す画像と、変換前の階調値が表す画像とを交互に表示させて、ブリンク表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、さらに詳しくは、画像表示装置が表示する画像の強調表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどから出力する画像データを元に、画像をスクリーン等に投写するプロジェクタが普及している。プロジェクタは、例えば、会議やプレゼンテーションの場において、所望のグラフ画像を大画面スクリーンに投写して、当該グラフ画像の説明を行う場合などに用いられる。かかる用途にプロジェクタを用いる場合、グラフを構成する構成要素が多数ある場合には、投写画像を見る者にとって、説明者が説明しているグラフの構成要素が投写画像のいずれの構成要素であるのかを判別しにくいことがあった。また、グラフを構成する複数の構成要素間の色が似通っている場合には、投写画像を見る者にとって、構成要素の判別が行いにくいことがあった。特に、sRGBなどの色規格から逸脱したディスプレイ上で作成されたグラフ画像を投写する場合や、逸脱した色規格を有するプロジェクタを用いて投写する場合など、画像データの提供側とプロジェクタとの双方で、色規格が整合しない場合には、グラフ作成者が意図しない色で画像が投写されることがあり、このような問題が生じやすかった。かかる問題は、プロジェクタに限らず、外部から画像データを受け取って表示する種々の画像表示装置に共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−190009号公報
【特許文献2】特開平10−274976号公報
【特許文献3】特開平8−87261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、画像表示装置が表示する画像の画像構成要素の判別性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]画像を表示するための画像表示装置であって、
外部から入力された画像データを元に画像を表示する画像表示手段と、
前記表示された画像に対して、外部からの指示に応じて移動可能なポインタ画像を重畳する重畳手段と、
前記画像上における前記ポインタ画像の移動位置の指定を受け付ける受付手段と、
前記受け付けた移動位置に該当する画素の性質に基づいて定められる所定範囲の画像を強調表示する強調表示手段と
を備えた画像表示装置。
【0007】
かかる構成の画像表示装置は、表示画像に重畳されたポインタ画像の移動位置を受け付けて、当該移動位置に該当する画素の性質に基づいて定められる所定範囲の画像を強調表示する。したがって、ユーザは、ポインタ画像の移動位置の指示を行うことで、簡単に所定範囲の画像の判別性を向上させることができる。また、本画像表示装置を用いたプレゼンテーション時などにおいては、説明者は、画像表示装置が表示する画像の所定範囲を強調表示しながら、説明を行うことができるので、説明箇所が分かりやすく、効果的な説明を行うことができる。さらに、ユーザは、画像表示装置により表示された画像を確認しながら、ポインタ画像の移動位置の指示を行うので、画像表示装置に画像データを提供する側と、画像データを受け取る画像表示装置とで色規格が整合しない場合であっても、判別が行いにくい画像構成要素を確実に特定し、当該特定要素をポインタ画像の移動位置で指示することができる。
【0008】
[適用例2]適用例1記載の画像表示装置であって、強調表示手段は、受け付けた移動位置に該当する指定画素の階調値に対応する対応階調値を有する画素群を、所定範囲の画像として強調表示する画像表示装置。
【0009】
かかる構成の画像表示装置は、ポインタ画像の移動位置に該当する画素の階調値に対応する対応階調値を有する画素群を、所定範囲の画像として強調表示する。したがって、ユーザは、表示画像上で、強調表示させたい色の位置を指定するだけの簡単な操作で、所望の強調表示を行うことができる。なお、対応階調値とは、指定画素の階調値に基づいて定まる所定幅を有する階調値や、指定画素の階調値と同一の階調値をいう。
【0010】
[適用例3]適用例1記載の画像表示装置であって、強調表示手段は、受け付けた移動位置に該当する指定画素の階調値に対応する対応階調値を有し、かつ、連続して配置された画素群を、所定範囲の画像として強調表示する画像表示装置。
【0011】
かかる構成の画像表示装置は、ポインタ画像の移動位置に該当する画素の階調値に対応する対応階調値を有し、連続して配置された画素群を、所定範囲の画像として強調表示する。したがって、ユーザは、対応階調値の範囲にある画像構成要素が複数ある場合であっても、所望の画像構成要素のみを強調表示することができる。
【0012】
[適用例4]対応階調値は、指定画素の階調値に基づき定まる所定幅を有する階調値である適用例2または適用例3記載の画像表示装置。
【0013】
かかる構成の画像処理装置は、指定画素の階調値に基づき定まる所定幅の階調値を有する画素群を所定範囲の画像として強調表示する。したがって、画像の階調値を表す信号がノイズの影響を受ける場合であっても、所定範囲が正確に定まる。また、強調表示したい部分が、複数の似通った色で表現されている場合であっても、所定範囲が正確に定まる。
【0014】
[適用例5]強調表示手段は、所定範囲に対応する画像をブリンク表示する手段である適用例1ないし適用例4のいずれか記載の画像表示装置。
【0015】
かかる構成の画像処理装置において、強調表示の手段をブリンク表示手段としても、所定範囲の画像を容易に判別可能とすることができる。なお、その他の強調表示手段として、白色表示、黒色表示、反転色表示など、種々の強調表示手段を用いることができる。
【0016】
[適用例6]適用例5記載の画像表示装置であって、強調表示手段は、所定範囲の画像を構成する各画素の階調値を、ルックアップテーブルを用いて変換した階調値に基づく画像と、変換が行われる前の階調値に基づく画像とを交互に表示して、ブリンク表示を行う画像表示装置。
【0017】
かかる構成の画像処理装置は、ルックアップテーブルを用いて変換した階調値に基づく画像と、変換前の階調値に基づく画像とを交互に表示して、ブリンク表示を行うので、簡単な構成でブリンク表示を行うことができる。
【0018】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像表示装置であって、画像表示装置は、プロジェクタであり、画像表示手段は、所定の投写面に画像を投写する手段であるプロジェクタ。
【0019】
かかる構成の画像処理装置は、プロジェクタとして実現することができる。なお、その他に、モニタやテレビなどとしても実現することができる。
【0020】
なお、本発明は、適用例8の強調表示方法としても実現することができる。
[適用例8]外部から入力された画像データを元に画像を表示する画像表示装置が表示する前記画像の所定範囲を強調表示する強調表示方法であって、表示される画像に対して、外部からの指示に応じて移動可能なポインタ画像を重畳して表示し、ポインタ画像を画像上で移動させて指定された位置に該当する画素の性質に基づいて定まる所定範囲の画像を強調表示する強調表示方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例としてのプロジェクタPRの概略構成を示す説明図である。
【図2】強調表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】強調表示処理の内容を具体的に示す説明図である。
【図4】LUTの階調値変換特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例について説明する。
A.プロジェクタの概略構成:
本発明の画像表示装置の実施例としてのプロジェクタPRについて、図1を用いて説明する。プロジェクタPRは、USBケーブルにてコンピュータPCと接続されており、コンピュータPCから画像データを受け取って、スクリーンSC上に画像を投写することができる。なお、コンピュータPCとプロジェクタPRの接続方法は、特に限定するものではなく、例えば、有線方式や無線方式のネットワークを介して接続されていてもよい。もとより、プロジェクタPRへの画像データの入力方法についても特に限定するものではなく、例えば、コンピュータPCからの入力に代えて、プロジェクタPRに接続される記憶媒体等から入力されてもよい。
【0023】
プロジェクタPRは、図1に示す通り、画像処理系20、制御部30、投写部40、入力機構50を備えており、それぞれがバスで接続されている。画像処理系20は、入力部21、フレームメモリ22、色データ読出部23、重畳部24、座標位置検出部25、色変換回路26、補正部29を備えている。
【0024】
コンピュータPCから画像処理系20に入力される画像データ信号(ここではRGB形式)は、入力部21が受け付けて、フレームメモリ22に書き込まれる。そして、フレームメモリ22から読み出された画像信号は、色データ読出部23に入力される。色データ読出部23は、入力された画像信号から、特定座標位置の色データを読み出した後、重畳部24に画像信号を出力する。重畳部24は、入力された画像信号が表す画像に、後述する入力機構50により移動表示可能なポインタ画像を重畳する回路モジュールである。
座標位置検出部25は、画像信号における画像の座標位置を検出する回路であり、所定のタイミングで重畳部24に、ポインタ画像を重畳する指示を行う。また、色データ読出部23に色データを読み出す指示を行う。これらの機能の詳細は、「B.強調表示処理」で後述する。
【0025】
色変換回路26は、ルックアップテーブル(LUT)回路27と選択回路28とを備えている。LUT回路27は、RGBの各色について、入力階調値と出力階調値とが対応付けられたLUTが記憶される図示しないメモリを備えており、当該LUTに基づいて、重畳部24からの入力信号が表す階調値を所定値に変換して出力する。選択回路28は、アナログスイッチを用いて、出力する画像信号を、LUT回路27を経由した信号と、経由しない信号との間で切り替え可能な選択回路である。かかる色変換回路26の機能の詳細は、「B.強調表示処理」で後述する。色変換回路26からの出力信号は、補正部29に入力され、ガンマ補正等の補正処理が行われる。
【0026】
画像処理系20から出力された画像信号は、投写部40に入力される。投写部40は、液晶パネル駆動部、液晶パネル、光源ランプユニット、投写光学系等を備えている。液晶パネル駆動部は、入力された画像信号に基づき、液晶パネルを駆動する。光源ランプユニットから照射された光は、RGBの各色用の液晶パネルによって変調され、投写光学系を介して、スクリーンSC上に液晶パネルによって形成される画像を表示する。なお、本実施例においては、投写部40に液晶式を用いたが、本方式に限らず、CRT方式、DLP方式、LCOS方式、GLV方式など、種々の方式を用いることができる。
【0027】
入力機構50は、十字カーソルキーと決定ボタンとを備えている。ユーザは、これらのキーを操作して、各種設定入力を行うほか、ポインティングデバイスとしてポインタの操作も行うことができる。なお、入力機構50は、本実施例においては、複数のキーからなるものとしたが、これに限るものではなく、マウスやリモートコントローラ、タッチパネルなど、他のデバイスを備えていてもよい。
【0028】
制御部30は、CPU、ROM、RAM、レジスタ等を備えたコンピュータで構成され、ROM内に記憶されたプログラムに基づき、プロジェクタPRの機能全体を制御するほか、画像表示部31、位置受付部33、強調表示部34として機能する。この機能部の詳細については、「B.強調表示処理」で後述する。
【0029】
B.強調表示処理:
プロジェクタPRを用いた強調表示処理について、図2を用いて説明する。強調表示処理とは、プロジェクタPRを用いて、画像をスクリーンSCに投写する際に、投写画面上での判別が行いにくい画像構成要素や、説明対象とする画像構成要素を強調表示させることで、当該構成要素を容易に判別可能に表示する処理である。この処理は、プロジェクタPRの入力部21が、コンピュータPCから画像データを受け取って入力することで開始される(ステップS100)。入力された画像データは、フレームメモリ22に書き込まれる。
【0030】
フレームメモリ22に書き込まれた画像データは、制御部30が生成する同期信号に基づいて読み出され、色データ読出部23を経由して、重畳部24に入力される。重畳部24では、フレームメモリ22から入力された画像データが表す画像に、ポインタ画像を重畳する。そして、重畳部24から出力され、色変換回路26及び補正部29を経て、投写部40に入力された重畳画像データに基づき、制御部30が、画像表示部31の処理として投写部40を制御することで、当該重畳画像をスクリーンSC上に投写させる(ステップS110)。なお、この段階において、色変換回路26の選択回路28は、LUT回路27を経由しないルートで、重畳部24と補正部29とを接続している。
【0031】
上記ステップS110においては、具体的には、例えば、図3(a)に示すように、商品A〜Cの売上高推移を示すグラフ画像70を投写させる場合には、グラフ画像70の画像上にポインタ画像74を重畳して表示させるのである。グラフ画像70を構成するグラフ構成要素76〜78は、凡例72に示す商品A〜Cの売上高の推移を示しており、それぞれが、対応する凡例72のマーカーと同一の階調値の色を有している。本実施例では、ポインタ画像74は、デフォルトで設定されている画像上の所定の座標位置に表示されるものとした。座標位置検出部25は、制御部30が生成する同期信号のパルスをカウントしており、上述のデフォルト位置に対応する画像データが重畳部24に入力される際に、重畳部24にポインタ画像74の表示指示を行う。これを受けて、重畳部24は、入力された画像データをポインタ画像74の画像データに変換して出力することで、ポインタ画像74を表示させるのである。
【0032】
このポインタ画像74は、ユーザ操作により、投写させたグラフ画像70の画像上を所望の位置に移動させることができる。具体的には、ユーザが、入力機構50の十字カーソルキーを用いて、ポインタ画像74の変位量を入力すると、制御部30は、入力機構50からその変位量を読み取り、当該変位量に相当する変位座標値を座標位置検出部25に指示する。座標位置検出部25は、指示された座標位置に対応する画像データが重畳部24に入力される際に、重畳部24にポインタ画像74の表示指示を行う。これを受けて、重畳部24は、入力された画像データをポインタ画像74の画像データに変換して出力する。この重畳画像データを、もとの重畳データと同様に、投写部40で投写することで、ポインタ画像74を移動させるのである。
【0033】
なお、本実施例においては、グラフ画像70の表示時には、常に、重畳部24により、ポインタ画像74が重畳される構成としたが、ポインタ画像74の重畳表示は、ユーザが所望の場合に限ってもよい。例えば、ユーザが入力機構50を用いて「強調表示モード」を選択した場合に限り、ポインタ画像74をグラフ画像70の画像上に重畳してもよい。
【0034】
ポインタ画像を重畳して、画像表示すると、制御部30は、位置受付部33の処理として、ポインタ画像による移動位置の指定を受け付ける(ステップS120)。この位置の指定は、前述の方法でユーザがポインタ画像74を移動させて、後述するステップS140において強調表示を行うべき、画像の所定範囲を指定するために行うものである。具体的には、例えば、図3(b)に示すように、ユーザが、入力機構50の十字カーソルキーを用いて、凡例72の「商品C」を示すマーカー「●」部分に、ポインタ画像74を移動させ、入力機構50の決定ボタンを押すことにより、制御部30は、当該位置の指定を受け付ける。
【0035】
位置の指定を受け付けると、制御部30は、指定された位置の画素の階調値を取得する(ステップS130)。具体的には、例えば、制御部30は、指定された位置の座標値を入力機構50から取得し、座標位置検出部25に出力する。座標位置検出部25は、制御部30が生成する同期信号のパルスをカウントしており、指定された位置の座標値に対応する画像データが色データ読出部23に入力される際に、色データ読出部23に色データ読み出し指示を行う。これを受けて、色データ読出部23は、入力された画像データを制御部30にも出力する。こうして、制御部30は、指定された位置の座標値に対応するRGBの各階調値を取得するのである。なお、階調値は、色データ読出部23から取得する構成に限るものではなく、画像処理系20の他の箇所から取得してもよい。例えば、フレームメモリ22から、取得する構成としてもよい。
【0036】
階調値を取得すると、制御部30は、強調表示部34の処理として、取得した階調値に対して所定の範囲内の階調値の画素をブリンク表示させる(ステップS140)。具体的には、以下のようにして、ブリンク表示を行う。
【0037】
制御部30は、階調値を取得すると、取得した階調値に対して所定の範囲内の階調値を表す信号を、所定値に変換するためのLUTを作成する。例えば、制御部30は、(R,G,B)=(150,50,30)という階調値を取得すると、取得した階調値に対して所定の範囲内の階調値(R,G,B)=(145〜155,45〜55,25〜35)を所定値に変換するためのLUTを作成する。この所定の範囲の幅は、予め設定されているものである。
【0038】
本実施例におけるLUTの変換特性を図4に示す。図4は、RGBのうち、R階調値の変換特性を示しており、図示するように、入力信号が表す階調値(以下、入力階調値という)が、取得した階調値に対して所定の範囲(ここでは、R=145〜155)に該当する場合には、入力信号を、予め定められた一定の階調値「0」を表す信号に変換して出力し、階調値の範囲に該当しない場合には、変換を行わずに、入力階調値と同一の階調値を表す信号を出力する特性を有している。なお、説明は省略するが、G階調値、B階調値についても同様の処理が行われる。
【0039】
LUTを作成すると、制御部30は、LUT回路27にLUTを書き込む。一方、LUT回路27は、重畳部24からLUT回路27に階調値の信号が入力された際に、書き込まれたLUTを参照して、入力階調値を所定の値に変換して出力する。ここでの変換特性は、上述のとおりである。この変換処理は、RGBの各色の階調値ごとについて行われる。
【0040】
そして、制御部30は、選択回路28に、LUT回路27を経由するルートと経由しないルートとを切り替える信号を一定時間毎に出力する。このような処理を行うことで、図3(c)に示すように、凡例72の「商品C」を示すマーカー「●」部分と同一の階調値の画素で構成されるグラフ構成要素78を簡単な構成でブリンク表示させることができる。こうして、強調表示処理は完了となる。なお、上述のブリンク表示のための構成は、一例であり、種々の公知のブリンク表示技術を用いればよい。
【0041】
なお、グラフ構成要素78がブリンク表示されている際に、例えば、続けて、グラフ構成要素77をブリンク表示させたい場合には、ユーザが入力機構50を用いてグラフ構成要素77と同一色の位置を改めて指定すれば、制御部30は、上述の処理を繰り返して、グラフ構成要素77のブリンク表示を行う。また、ブリンク表示を停止したい際には、ユーザは、それに対応する指示を行って、例えば、入力機構50が備える取消ボタンを押して、ブリンク表示を停止すればよい。
【0042】
かかる構成のプロジェクタPRは、入力機構50により移動可能なポインタ画像74をグラフ画像70に重畳して表示させ、ポインタ画像74を用いて、画像の任意の位置の指定を受け付ける。そして、指定された画素の階調値を取得し、該階調値に対して所定の範囲にある階調値を有する画素をブリンク表示させる。したがって、画像を投写した際に、画像を構成する構成要素同士の表示色が似通っているために、それらの判別が行いにくいような場合などであっても、所望の画像構成要素をブリンク表示させて、当該画像構成要素を容易に判別可能にすることができる。また、ユーザは、投写画面を確認しながら、ポインタ画像74を用いて、簡単にブリンク表示の対象となる所定範囲を選択指示することができる。また、ユーザは、画像上の1点を指定するだけの簡単な操作で、所定範囲を指示することができ、また、所望の所定範囲が、線形の図形であったり、複雑な輪郭を有していたりする場合であっても、簡単に所定範囲の指定操作を行うことができる。さらに、本画像表示装置を用いたプレゼンテーション時などにおいては、説明者は、画像表示装置が表示する画像の所定範囲を強調表示しながら、説明を行うことができるので、説明箇所が分かりやすく、効果的な説明を行うことができる。
【0043】
また、かかる構成のプロジェクタPRは、指定された画素の階調値を取得し、該階調値に対して所定範囲にある階調値を有する画素をブリンク表示させる。したがって、階調値を表す信号がノイズの影響を受ける環境下にあっても、指定された画素と同一の階調値を持つ画像構成要素をブリンク表示させることができる。また、ブリンク表示させる所定範囲が、所定の範囲の複数の階調値で構成されている場合、例えば、ブリンク表示させる所定範囲が、同系色でハッチングやグラデーションが施されたグラフ構成要素である場合などであっても、ユーザは、1点を指示する簡単な操作のみで、所望のグラフ構成要素全体をブリンク表示させる所定範囲として指定することができる。
【0044】
なお、実施例に示した、所定範囲を指定して当該範囲をブリンク表示させる機能は、コンピュータPC側で確保する、すなわち、ブリンク表示に対応する画像データをPC側で用意し、当該画像データをプロジェクタPRに送って投写させる構成も可能である。しかし、コンピュータPCのディスプレイ上でユーザが所定範囲を指定し、コンピュータPCが階調値を変換したデータをプロジェクタPRに送って投写させる場合、コンピュータPCとプロジェクタPRとが扱う色規格が整合しない場合には、画像が投写された際の色がコンピュータPCのディスプレイ上の色と大きく異なり、投写画像上で判別しにくい別の所定範囲を再度指定し直して、ブリンク表示させる必要が生じる可能性がある。一方、実施例で示したように、プロジェクタPR側で当該機能を確保すれば、ユーザは、投写画像上で所定範囲を指定するので、そのような不具合は生じない。
【0045】
また、プロジェクタPR側で当該機能を確保すれば、ブリンク表示機能を有しないコンピュータPCに接続する場合であっても、あるいは、プロジェクタPRにコンピュータPCを接続せずに、USBメモリ等の記憶媒体を接続して、プロジェクタPRが当該記憶媒体から画像データを受け取って表示する場合であっても、所望のブリンク表示を行うことができ、汎用性に優れたものとなる。
【0046】
C.変形例:
上述の実施例についての変形例について説明する。
C−1.変形例1:
実施例においては、指定された画素の階調値を取得し、該階調値に対して所定範囲にある階調値を有する画素をブリンク表示させる構成としたが、指定された階調値と同一の階調値のみをブリンク表示させる構成としてもよい。こうすれば、より簡易な構成とすることができる。
【0047】
C−2.変形例2:
実施例においては、制御部30が、LUTを作成し、LUT回路27に書き込む構成としたが、このような構成に限られるものではない。例えば、制御部30は、色データ読出部23から取得した階調値や、所定範囲の階調値を表す信号をLUT回路27に出力し、LUT回路27が、LUTを作成する構成としてもよい。
【0048】
C−3.変形例3:
実施例においては、画像を表すRGBの各色の階調値について、LUT回路27を用いて変換を行う構成としたが、所定の色要素、例えば、R階調値のみを変換する構成としてもよい。このようにすれば、より簡易な構成で所定範囲を強調表示することができる。なお、プロジェクタPRが扱う階調値は、RGB形式に限るものではなく、YCC形式など、種々の形式を用いることができ、そのような場合についても、全ての色要素や輝度値の階調値について変換を行ってもよいし、一部の色要素や輝度値の階調値について、変換を行ってもよい。
【0049】
C−4.変形例4:
実施例においては、LUT回路27において、入力された階調値を表す信号のうち、所定の範囲の階調値を表すものについては、予め定められた一定の階調値(実施例では0)を表す信号に一律的に変換する構成としたが、LUT回路27の階調値変換特性はこのような構成に限られるものではなく、例えば、入力階調値の大きさに応じて、変換値を変化させる構成であってもよい。
【0050】
具体的には、例えば、入力階調値が「128」未満であれば、制御部30から受け取った所定範囲に属する入力階調値を階調値「255」に変換し、入力階調値が「128」以上であれば、階調値「0」に変換する構成としてもよいし、入力階調値が表す色の反対色を表す階調値に変換する構成としてもよい。こうすれば、ブリンクの前後において表示される2種類の色を、互いに明確に判別可能な色とすることができるので、ブリンク表示させた際の所定範囲の判別性が向上する。
【0051】
C−5.変形例5:
実施例においては、指定された画素の階調値を取得し、該階調値に対して所定の範囲にある階調値を有する画素をブリンク表示させる構成としたが、該階調値に対して所定範囲にある階調値を有し、かつ、連続して配置された画素群をブリンク表示させる構成としてもよい。具体的には、例えば、図3(b)に示したように、ユーザが、ポインタ画像74を用いて、凡例72の「商品C」を示すマーカー「●」部分で位置の指定を行った場合、当該「●」部分のみをブリンク表示させる構成(グラフ構成要素78についてはブリンク表示させない構成)としてもよい。こうすれば、ユーザは、指定された画素の階調値に対して所定の範囲にある階調値を有する画素により構成される画像構成要素が複数ある場合や、背景の一部分に当該所定の範囲の階調値が使用されている場合であっても、所望の画像構成要素上の1点を指定することで、当該画像構成要素のみを強調表示することができる。
【0052】
なお、このような構成とするためには、例えば、制御部30は、フレームメモリ22を参照して、指定された位置の座標値に対応する階調値に対して、所定の範囲にある階調値を有し、かつ、連続する画素群を特定する。そして、重畳部24から色変換回路26への出力時において、同期信号のパルスをカウントすることにより、出力信号が特定した画素群の信号に該当するか否かを判断し、該当する場合には、LUT回路27を経由するルートで出力し、該当しない場合には、LUT回路27を経由しないルートで出力する構成とすればよい。
【0053】
C−6.変形例6:
実施例においては、入力機構50が備える十字カーソルキーを用いて、ポインタ画像74を移動させ、強調表示を行う階調値を特定するための画像位置の指定を行ったが、ポインタ画像74を移動させるためのポインティングデバイスは、十字カーソルキーに限らず、リモコン、マウスなど、種々のデバイスを利用可能である。
【0054】
C−7.変形例7:
実施例においては、ユーザに指定された画素の階調値に対して所定の範囲にある階調値を有する画素群をブリンク表示させる構成としたが、当該画素群以外の画素をブリンク表示させる構成としてもよい。このようにすれば、指定された所定範囲が、投写表示画像の大半を占めるような場合には、処理を簡略化することができる。
【0055】
C−8.変形例8:
実施例においては、画像を構成する特定の構成要素(図3の例では、グラフ構成要素78)をブリンク表示することにより、当該構成要素の判別を行いやすい表示を実現したが、強調表示の方法は、ブリンク表示に限るものではない。例えば、LUTを用いて、階調値の変換のみを行い、特定の構成要素を白色表示したり、黒色表示したり、反転色表示するなど、種々の強調表示方法を用いることができる。
【0056】
C−9.変形例9:
実施例においては、画像信号が表す階調値に基づいて、階調値の変換の可否を判断したが、このような構成に限られるものではなく、座標値に基づいて、階調値の変換の可否を判断してもよい。例えば、制御部30は、上記ステップS130において指定位置の階調値を取得した後、フレームメモリ22のデータを元に当該階調値に対して所定の範囲の階調値を有する画素の座標を記録したテーブルを作成し、当該テーブルに基づいて、重畳部24からの画像信号の出力先を、画像信号の一律変換回路と無変換回路とで切り替える構成としてもよい。
【0057】
C−10.変形例10:
実施例においては、ユーザに位置指定された画素の階調値に対して所定の範囲にある階調値を有する画素群を、ブリンク表示させる所定範囲としたが、所定範囲の定め方は、このような構成に限るものではなく、指定された画素の性質に基づいて定められればよい。例えば、制御部30は、1フレーム分の画像について、輝度値に基づくエッジ検出を行い、ユーザに位置指定された画素を含む、閉じられたエッジ内領域をブリンク表示させる所定範囲としてもよい。
【0058】
C−11.変形例11:
実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、実施例に示したプロジェクタに限らず、フラットパネルモニタ、テレビなど、外部から入力された画像データを元に画像を表示する種々の画像表示装置や、画像表示装置が表示する画像の所定範囲を強調表示する強調表示方法等の形態でも実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
20…画像処理系
21…入力部
22…フレームメモリ
23…色データ読出部
24…重畳部
25…座標位置検出部
26…色変換回路
27…ルックアップテーブル(LUT)回路
28…選択回路
29…補正部
30…制御部
31…画像表示部
33…位置受付部
34…強調表示部
40…投写部
50…入力機構
70…グラフ画像
72…凡例
74…ポインタ画像
76,77,78…グラフ構成要素
PC…コンピュータ
SC…スクリーン
PR…プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するための画像表示装置であって、
外部から入力された画像データを元に画像を表示する画像表示手段と、
前記表示された画像に対して、外部からの指示に応じて移動可能なポインタ画像を重畳する重畳手段と、
前記画像上における前記ポインタ画像の移動位置の指定を受け付ける位置受付手段と、
前記受け付けた移動位置に該当する画素の性質に基づいて定まる所定範囲の画像を強調表示する強調表示手段と
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置であって、
前記強調表示手段は、前記受け付けた移動位置に該当する指定画素の階調値に対応する対応階調値を有する画素群を、前記所定範囲の画像として強調表示する
画像表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像表示装置であって、
前記強調表示手段は、前記受け付けた移動位置に該当する指定画素の階調値に対応する対応階調値を有し、かつ、連続して配置された画素群を、前記所定範囲の画像として強調表示する
画像表示装置。
【請求項4】
前記対応階調値は、前記指定画素の階調値に対して所定の範囲内の階調値である請求項2または請求項3記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記強調表示手段は、前記所定範囲の画像をブリンク表示する手段である請求項1ないし請求項4のいずれか記載の画像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像表示装置であって、
前記強調表示手段は、前記所定範囲の画像を構成する各画素の階調値を、ルックアップテーブルを用いて変換した階調値に基づく画像と、該変換が行われる前の階調値に基づく画像とを交互に表示して、前記ブリンク表示を行う
画像表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の画像表示装置であって、
前記画像表示装置は、プロジェクタであり、
前記画像表示手段は、所定の投写面に画像を投写する手段である
プロジェクタ。
【請求項8】
外部から入力された画像データを元に画像を表示する画像表示装置が表示する前記画像の所定範囲を強調表示する強調表示方法であって、
前記表示される画像に対して、外部からの指示に応じて移動可能なポインタ画像を重畳して表示し、
前記ポインタ画像を前記画像上で移動させて指定された位置に該当する画素の性質に基づいて定まる所定範囲の画像を強調表示する
強調表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−160798(P2010−160798A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20339(P2010−20339)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【分割の表示】特願2008−36450(P2008−36450)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】