説明

画像表示装置およびこれを備えた情報処理装置

【課題】台形歪み補正を行う画像表示装置において、投射光が装置の載置面に遮られることを防止する。
【解決手段】側壁に設けられたスクリーン15上に画面を投写する光学エンジンユニット13と、光学エンジンユニットの投写角度を検出する加速度センサ95と、加速度センサにより検出された投写角度に応じて画面の台形歪みを補正する画面補正部96とを備え、画面補正部は、補正後の画面の縦方向の長さを補正前の画面に比べて小さくすると共に、補正後の画面の上辺を前記補正前の画面の上辺に重ねるように台形歪みを補正する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン上に画面を投写する画像表示装置およびこれを備えた情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーンに画面を投写する画像表示装置において、筐体の下面前端側の左右両端部に設けられた一対の調整脚部と、筐体の下面後端側中央に設けられた1本の固定脚部とを有し、これら3本の脚部により筐体を支持すると共に、調整脚部の各脚長を個別に調整することにより、投射レンズの光軸の仰角及び画像の左右の傾きを調整可能としたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、スクリーンに対して斜め方向から画面を投写すると、矩形の出力画面が台形状に歪む、いわゆる台形歪みが発生する。そこで、矩形の出力画面を、スクリーン上の投写画面に生じる台形歪みと逆向きの台形状に変換する台形歪み補正(キーストーン補正)を電気的に行うことにより、スクリーン上に歪みのない矩形の画面を表示させる技術が存在する。この台形歪み補正は、スクリーン上の画面を見ながらユーザが手動で調整するように構成してもよいが、調整作業が面倒であることから、台形歪み補正を自動的に行ってユーザが手動で調整する手間を省くようにした技術が知られている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−186678号公報
【特許文献2】特開平9−270979号公報
【特許文献3】特開2006−14233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のような画像表示装置では、その構造上、投射レンズの光軸の仰角の調整範囲には一定の制限がある。特に、この種の画像表示装置を他の情報処理装置(例えば、ノート型のPC(Personal Computer))に内蔵することを考えた場合、上記特許文献1に記載のような単体の画像表示装置の場合に比べて、投射レンズの光軸の仰角を調整するための構成が複雑になり、また、光軸の仰角を調整可能な範囲もより小さくなり得る。さらに、投射レンズの光軸の仰角の調整範囲は、特許文献2、3に記載のような台形歪み補正を適用可能な範囲によっても制限される場合がある。
【0006】
したがって、従来の画像処理装置において、載置面(情報処理装置や画像表示装置が載置されるテーブルの上面等)から投射レンズ(投射窓)までの高さを十分に確保できない場合には、装置の載置位置によっては投写光(画像)の一部が載置面に遮られてスクリーンに正常に画像を表示できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、スクリーンに対して斜め方向から画面を投写する際に台形歪み補正を適切に実施することにより、投写光が装置の載置面に遮られることを防止する画像表示装置およびこれを備えた情報処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像表示装置は、側壁に設けられたスクリーン上に画面を投写する投写ユニットと、前記投写ユニットの投写角度を検出する投写角度検出部と、前記投写角度検出部により検出された投写角度に応じて前記画面の台形歪みを補正する画面補正部とを備え、前記画面補正部は、前記補正後の画面の縦方向の長さを前記補正前の画面に比べて小さくすると共に、前記補正後の画面の上辺を前記補正前の画面の上辺に重ねるように台形歪みを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、補正後の画面の下端位置を補正前の画面の下端位置に対して上方に移動せることができるため、投射光(すなわち、画面の下部)が装置の載置面に遮られることを防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図
【図2】光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図
【図3】緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図4】画像表示装置1の概略構成を示すブロック図
【図5】携帯型情報処理装置2を載置台100に載置し、壁面101をスクリーンとして画像表示装置1により画面を水平方向に投写する状況を示す側面図
【図6】水平投写時において投写光が装置の載置面に遮られる場合の(A)投写の状況及び(B)画面の状況を示す説明図
【図7】壁面上向き投写時において投写光が装置の載置面に遮られる場合の(A)投写の状況及び(B)画面の状況を示す説明図
【図8】図7の壁面上向き投写時における(A)従来技術による台形歪み補正および(B)本発明による台形歪み補正を実施した後の画面の状況を示す説明図
【図9】図8(B)に示した本発明による台形歪み補正の変形例を示す図
【図10】画像表示装置1の台形歪み補正時の動作を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、側壁に設けられたスクリーン上に画面を投写する投写ユニットと、前記投写ユニットの投写角度を検出する投写角度検出部と、前記投写角度検出部により検出された投写角度に応じて前記画面の台形歪みを補正する画面補正部とを備え、前記画面補正部は、前記補正後の画面の縦方向の長さを前記補正前の画面に比べて小さくすると共に、前記補正後の画面の上辺を前記補正前の画面の上辺に重ねるように台形歪みを補正する構成とする。
【0012】
これによると、スクリーンに対して斜め方向から画面を投写する際に、補正後の画面の縦方向の長さを補正前の画面に比べて小さくすると共に、補正後の画面の上辺を前記補正前の画面の上辺に重ねるように台形補正を実施するため、補正後の画面の下端位置を補正前の画面の下端位置に対して上方に移動せることができ、投射光(すなわち、画面の下部)が装置の載置面に遮られることを防止可能となる。
【0013】
また、第2の発明は、前記画面補正部は、前記補正後の画面の横方向の長さを前記補正前の画面の下辺の横方向長さよりも小さくするように台形歪みを補正する構成とする。
【0014】
これによると、補正後の画面の下端位置の上方への移動量をより大きく確保することができ、投射光が装置の載置面に遮られることをより確実に防止可能となる。
【0015】
また、第3の発明は、上記第1または第2の発明に係る画像表示装置を備えた情報処理装置である。
【0016】
また、第4の発明は、上記情報処理装置において、前記投写ユニットをヒンジ部を介して回動可能に支持すると共に、情報処理装置本体に接続される支持ユニットを更に備え、前記ヒンジ部は、前記スクリーンに対するレーザ光の投写角度を少なくとも上側に変化させる向きに前記投写ユニットを回動させる構成とする。
【0017】
これによると、簡易な構成により投写ユニットの投写角度を広範囲に調整可能となり、投射光が装置の載置面に遮られることをより確実に防止可能となる。
【0018】
また、第5の発明は、上記情報処理装置において、前記画像表示装置を情報処理装置本体に形成されたドライブベイに収容する構成とする。
【0019】
これによると、情報処理装置に対する画像表示装置の取付性および操作性を向上させることができる一方、画像表示装置がドライブベイに収容されることにより情報処理装置の底面から投写ユニット(投射レンズ)までの距離が短くなっても、投射光が装置の載置面に遮られることを防止可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置2は、CPUやメモリなどが実装された制御基板(図示せず)などが内蔵された本体部(情報処理装置本体)3と、液晶パネルを備えた表示部4とを有し、本体部3と表示部4とがヒンジ部5で連結され、本体部3と表示部4とを重ね合わせた折りたたみ状態として携帯性を高めるようにしている。
【0022】
本体部3の筐体8の上面8aには、キーボード6およびタッチパッド7が設けられている。また、本体部3の筐体8におけるキーボード6の裏面側には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイ9が形成されており、このドライブベイ9に画像表示装置1が取り付けられている。
【0023】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12とを有している。可動体12は、スクリーン15に画面16を投写するための光学部品が収容された光学エンジンユニット(投写ユニット)13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット(支持ユニット)14とで構成されている。
【0024】
図2は、光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図である。この光学エンジン部21は、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24と、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の光変調素子25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて光変調素子25に照射させるとともに光変調素子25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光をスクリーン15に投射する投射レンズを含む投射光学系28とを備えている。
【0025】
この光学エンジン部21は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0026】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34、35と、ダイクロイックミラー34、35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37とを備えている。
【0027】
投射光学系28から投射窓28aを通してスクリーンに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34、35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0028】
第1および第2のダイクロイックミラー34、35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0029】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0030】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0031】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。これら赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45、46に開設された取付孔47、48に圧入するなどして固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45、46を介して筐体41に伝達されて放熱され、両ホルダ45、46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0032】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0033】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0034】
図3は、緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ51のレーザチップ61は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ52は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ53は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0035】
固体レーザ素子54は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ53を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子54は、Y(イットリウム)VO(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVOのYに蛍光を発する元素であるNd3+に置換してドーピングしたものである。
【0036】
固体レーザ素子54におけるロッドレンズ53に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜62が形成されている。固体レーザ素子54における波長変換素子55に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜63が形成されている。
【0037】
波長変換素子55は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子54から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0038】
波長変換素子55における固体レーザ素子54に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜64が形成されている。波長変換素子55における凹面ミラー56に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜65が形成されている。
【0039】
凹面ミラー56は、波長変換素子55に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜66が形成されている。これにより、固体レーザ素子54の膜62と凹面ミラー56の膜66との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0040】
波長変換素子55では、固体レーザ素子54から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子55を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー56で反射されて波長変換素子55に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子55の膜64で反射されて波長変換素子55から出射される。
【0041】
ここで、固体レーザ素子54から波長変換素子55に入射して波長変換素子55で波長変換されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー56で一旦反射されて波長変換素子55に入射して膜64で反射されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0042】
そこでここでは、波長変換素子55を光軸方向に対して傾斜させて、入射面および出射面での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0043】
なお、図2に示したガラスカバー57には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0044】
図4は、画像表示装置1の概略構成を示すブロック図である。画像表示装置1の制御部81は、各色のレーザ光源装置22〜24を制御するレーザ光源制御部82と、携帯型情報処理装置2から入力される映像信号に基づいて光変調素子25を制御する光変調素子制御部83と、携帯型情報処理装置2から供給される電力をレーザ光源制御部82および光変調素子制御部83に供給する電源部84と、各部を総括的に制御する主制御部85とを有している。この制御部81は、制御ユニット14に設けられている。
【0045】
光学エンジン部21には、各色のレーザ光源装置22〜24および光変調素子25の他に、光変調素子25に入射する光量を検出するフォトセンサ86と、光変調素子25の近傍の温度を検出する温度センサ87とが設けられている。この光学エンジン部21は、光学エンジンユニット13に設けられているが、この光学エンジンユニット13には、光学エンジン部21の他に、光学エンジン部21を冷却する冷却ファン88が設けられている。
【0046】
画像表示装置1の筐体11(図1を併せて参照されたい)には、携帯型情報処理装置2から電力を供給するための給電線および携帯型情報処理装置2から映像信号を送信するための信号線が接続されるインタフェイス部91が設けられており、このインタフェイス部91と制御ユニット14とが配線ケーブル92で結ばれている。この配線ケーブル92は、可撓性を有し、筐体11に対して可動体12を出し入れする際には、制御ユニット14に追随するように屈曲変形する。
【0047】
また、制御ユニット14と光学エンジンユニット13とは配線ケーブル93で結ばれている。この配線ケーブル93は、制御部81内の各部と光学エンジン部21内の各部との間で信号を送受するための信号線や、冷却ファン88などに電力を供給する給電線で構成されている。この配線ケーブル93も、可撓性を有し、制御ユニット14に対して光学エンジンユニット13を回動させる際には、光学エンジンユニット13の回動に伴って配線ケーブル93が屈曲変形する。
【0048】
なお、ここでは、制御部81を制御ユニット14に設けたが、この制御部81の一部、例えば電源部84を、インタフェイス部91とともに筐体11側に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、光学エンジンユニット13内の光学エンジン部21には、加速度センサ(投写角度検出部)95が設けられている。この加速度センサ95は、光学エンジンユニット13の投射窓28a(図2参照)から出射される投写光の光軸に沿う方向(前後方向)と、初期状態での重力方向である上下方向(後述する図5参照)との2方向について重力加速度を計測することで、投写角度、すなわち投写光の光軸の水平方向に対する傾斜角度を求めることができる。
【0050】
また、図4に示したように、制御部81は、スクリーンに対して斜め方向に画面を投写した際に生じる台形歪みを補正する画面補正部96を備えている。この画面補正部96では、画素の間引きあるいは補間により、矩形の出力画面を、スクリーン上の投写画面に生じる台形歪みと逆向きの台形状に変換するスケーラ処理(画素変換処理)が行われる。この台形歪み補正は、加速度センサ95の出力信号から求められる傾斜角度に基づいて行われ、これについては後に詳しく説明する。
【0051】
図5は、携帯型情報処理装置2を載置台100に載置し、壁面101をスクリーンとして画像表示装置1により画面を水平方向(前方)に投写する状況を示す側面図である。
【0052】
図5に示すように、光学エンジンユニット13と制御ユニット14とはヒンジ部73を介して連結されている。光学エンジンユニット13では、ヒンジ部73と相反する側の端部に投射窓28a(図2参照)が設けられており、この投射窓28aから光学エンジン部21の投射光学系28を通過したレーザ光が出射される。
【0053】
光学エンジンユニット13は、ヒンジ部73により、水平状態から矢印Aで示す少なくとも上側に回動可能なように制御ユニット14に支持されており、光学エンジンユニット13を回動させることで、投写角度を調整することができる。特にここでは、図5に示す初期状態(水平投写時)を中立位置として、光学エンジンユニット13を上側に所定の角度(ここでは、18°)まで回動させることができ、投写角度(すなわち、投射レンズの光軸の仰角)を0°から+18°の範囲で変えて壁面上向き投写を行うことができる。なお、光学エンジンユニット13に関し、投写角度はここに示すものに限定されるものではなく、また、光学エンジンユニット13が下側にも所定の角度で回動可能な構成としてもよい。
【0054】
図5に示すように、壁面(側壁)101をスクリーンとして画面を水平方向に投写する場合、壁面101までの距離が投写画面の上辺と下辺とで等しいため、壁面101上の投写画面は、上辺と下辺とが同一長さの歪みのない矩形に表示される。一方、図5中に2点鎖線で示すように、光学エンジンユニット13を上側に回動させて壁面101に対して斜め方向下側から画面を投写した場合、壁面101までの距離が投写画面の上辺と下辺とで異なるため、矩形の出力画面が、壁面101上では上辺と下辺とが異なる台形状に表示され、台形歪み補正が必要になる。
【0055】
図6および図7は、それぞれ水平投写時および壁面上向き投写時(台形歪み補正前)において投写光が装置の載置面に遮られる場合の(A)投写の状況及び(B)画面の状況を示す説明図であり、図8は、図7の壁面上向き投写時における(A)従来技術による台形歪み補正および(B)本発明による台形歪み補正を実施した後の画面の状況を示す説明図であり、図9は、図8(B)に示した本発明による台形歪み補正の変形例を示す図である。
【0056】
図6(A)に示すように、例えば、載置台100の一端縁が壁面101に近接して配置されると、光学エンジンユニット13の前方(投写方向)に載置台100の上面(装置の載置面)100aが存在するため、投写光の下辺側の一部が載置台100の上面100aに遮られてしまう場合がある。このとき、図6(B)にも示すように、壁面101上の投写画面16においては、本来投写されるべき投写画面(以下、「全域投写画面」という。)の下部領域が遮断された状態で表示される(すなわち、図6(B)中に斜線で示す矩形の欠損領域110が生じる。)。ここでは、全域投写画面のサイズは、縦方向の長さを6×L(Lは所定の基準長さ)とし、横方向の長さを8×Lとする。
【0057】
これに対し、ユーザは、図7(A)に示すように、光学エンジンユニット13を上側に回動させて画面16を壁面101にして斜め上向きに投写することにより、壁面101における全域投写画面の下辺位置(すなわち、下端位置)を上昇させることができる。これにより、図7(B)に示すように、投写画面16の欠損領域110の上下方向幅は、図6(B)の場合と比べて小さくなる。なお、図7(B)では、投写画面16は、台形歪み補正前の状態(すなわち、上辺の長さが下辺の長さより大きくなった台形状の画面)を示しており、全域投写画面では、高さ(縦方向の長さ)は8×L、上辺の横方向長さは12×L、下辺の横方向長さは9×Lとなる。
【0058】
ここで、図7(B)に示した画面において従来技術により台形歪み補正を実施した場合、補正後の画面116は、その下辺116aが補正前の画面16の下辺16aと重なるように設定された正常なアスペクト比の矩形画面として生成される。このように、従来技術による補正後の画面116は、台形歪みが解消されて矩形状の画面となるものの、依然として下部に欠損領域110を有するものとなる。なお、図8(A)に示す補正後の画面116では、縦方向の長さは補正前よりも小さい6.75×Lとなり、横方向長さは補正前と同じ9×Lとなる。
【0059】
一方、本発明による台形歪み補正を実施した場合、図8(B)に示すように、補正前の画面16の下辺16aの長さを基準として正常なアスペクト比となる補正後の画面116が生成される点においては図8(A)の場合と略同様であるが、補正後の画面116は、その上辺116bが補正前の画面16の上辺16bと重なるように設定される。これにより、光学エンジンユニット13の回動による投写画面の下辺位置(すなわち、下端位置)の上昇に加え、台形歪み補正による投写画面の下辺位置の上昇の効果が得られ、図8(B)に示した欠損領域110の発生(すなわち、投写光が装置の載置面に遮られること)を防止することができる。なお、光変調素子25からの補正後の出力画面は、従来技術の場合と同様にライン毎の画素データが間引きまたは補間調整されると共に、補正前の台形歪みとは逆に歪ませた映像データとして生成される。
【0060】
なお、本発明による台形歪み補正は、図8(B)に示したものに限らず、例えば、図9に示すように、補正後の画面116のサイズを図8(B)の場合(図9中に2点鎖線で示す)に比べてアスペクト比を維持したまま更に小さくする(すなわち、図7(B)に示す補正前の画面16の下辺16aの横方向の長さ9×Lよりも小さくする)ことも可能である。これにより、補正後の画面の下辺位置の上昇量をより大きく確保することができ、欠損領域110の発生をより効果的に防止することができる。
【0061】
図10は、画像表示装置1の台形歪み補正時の動作を示すフロー図である。ここでは、図4を共に参照しながら画像表示装置1の動作について説明する。
【0062】
まず、画像表示装置1の起動後にユーザが光学エンジンユニット13を上側に回動させると、加速度センサ95が光学エンジンユニット13の傾きを検出する(ST101)。この加速度センサ95の出力信号は制御部81に入力される。続いて、画面補正部96は、加速度センサ95の検出結果に基づき光学エンジンユニット13の傾斜角度を算出し(ST102)、更に、この傾斜角度に基づき台形歪み補正を実施する(ST103)。この台形歪み補正では、光学エンジンユニット13の傾斜角度(投射レンズの光軸の仰角)等を用いて、出力画面の形状を逆台形に歪ませると共に、補正後の出力画面の上辺を補正前の出力画面の上辺に重ねるように投射データ(映像信号)が補正される。その後、光変調素子制御部83は、その補正後の投射データに基づき光変調素子25の動作を制御する(ST104)。これにより、台形歪み補正された(すなわち、逆向きの台形状に変換された)出力画面が生成され、スクリーン15には補正後の矩形の投写画面が表示される(ST105)。
【0063】
なお、上記台形歪み補正の動作は、必ずしも光学エンジンユニット13の回動に応じて自動で開始される必要はなく、例えば、キーボード6(図1参照)におけるユーザの所定のキー操作に応じて実施してもよい。
【0064】
このように、画像表示装置1では、スクリーン(側壁)に対して斜め方向下側から画面を投写する際に、台形歪み補正後の画面の縦方向の長さを補正前の画面に比べて小さくすると共に、補正後の画面の上辺を補正前の画面の上辺に重ねるように台形補正を実施するため、補正後の画面の下端位置を補正前の画面の下端位置に対して上方に移動せることが可能となり、投射光(すなわち、画面の下部)が装置の載置面に遮られることを防止することができる。
【0065】
また、携帯型情報処理装置2では、光学エンジンユニット13をヒンジ部73を介して上側に回動可能に支持すると共に、携帯型情報処理装置2の本体部3に筐体11を介して接続される制御ユニット14を備え、ヒンジ部73によって、スクリーンに対するレーザ光の投写角度を少なくとも上側に変化させる向きに光学エンジンユニット13を回動させる構成としたため、、簡易な構成により光学エンジンユニット13の実質的な投写角度を広範囲に調整可能であり、投射光が装置の載置台100の上面100aに遮られることをより確実に防止することができる。
【0066】
また、携帯型情報処理装置2では、画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に形成されたドライブベイ9に収容する構成としたため、携帯型情報処理装置2に対する画像表示装置1の取付性および操作性を向上させることができる一方、画像表示装置1がドライブベイ9に収容されることにより携帯型情報処理装置2の底面から投写ユニット(投射レンズ)までの距離が短くなっても、投射光が装置の載置面に遮られることを防止することができる。
【0067】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、本発明に係る画像表示装置は、ノート型PC等の携帯型情報処理装置に内蔵される装置として好適であるが、情報処理装置は必ずしも携帯型に限定されず、また、画像表示装置を単体のプロジェクタ等に適用することも可能である。なお、上記実施形態に示した本発明に係る画像表示装置およびこれを備えた情報処理装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る画像表示装置およびこれを備えた情報処理装置は、スクリーンに対して斜め方向から画面を投写する際に台形歪み補正を適切に実施することにより、投射光が装置の載置面に遮られることを防止することを可能とし、スクリーン上に画面を投写する画像表示装置およびこれを備えた携帯型情報処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 画像表示装置
2 携帯型情報処理装置
3 本体部
6 キーボード
8 筐体
9 ドライブベイ
12 可動体
13 光学エンジンユニット(投写ユニット)
14 制御ユニット(支持ユニット)
15 スクリーン
21 光学エンジン部
22 緑色レーザ光源装置
23 赤色レーザ光源装置
24 青色レーザ光源装置
25 光変調素子
28 投射光学系
28a 投射窓
73 ヒンジ部
81 制御部
95 加速度センサ(投写角度検出部)
96 画面補正部
101 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に設けられたスクリーン上に画面を投写する投写ユニットと、
前記投写ユニットの投写角度を検出する投写角度検出部と、
前記投写角度検出部により検出された投写角度に応じて前記画面の台形歪みを補正する画面補正部と
を備え、
前記画面補正部は、前記補正後の画面の縦方向の長さを前記補正前の画面に比べて小さくすると共に、前記補正後の画面の上辺を前記補正前の画面の上辺に重ねるように台形歪みを補正することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記画面補正部は、前記補正後の画面の横方向の長さを前記補正前の画面の下辺の横方向長さよりも小さくするように台形歪みを補正することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置を備えた情報処理装置。
【請求項4】
前記投写ユニットをヒンジ部を介して回動可能に支持すると共に、情報処理装置本体に接続される支持ユニットを更に備え、
前記ヒンジ部は、前記スクリーンに対するレーザ光の投写角度を少なくとも上側に変化させる向きに前記投写ユニットを回動させることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像表示装置を情報処理装置本体に形成されたドライブベイに収容することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−9021(P2013−9021A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138259(P2011−138259)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】