説明

画像表示装置とその製造方法

【課題】表示領域に形成される電子源の電子放出性能を向上し、表示ムラのない長寿命の画像表示装置を提供する。
【解決手段】トンネル絶縁膜の成膜時は電源Eの陽極を下部電極11に、陰極は白金電極22に接続する。この陽極酸化処理で、下部電極11上にトンネル絶縁層12(アルミナAl23)が形成される。この反応中に化成液23に溶解されているPO3-イオンがトンネル絶縁層12中に取り込まれる。トンネル絶縁層12は、下部電極11を構成するアルミニウム膜の元の表面から化成液23側に成長するアニオン層である表面層12Aと元のアルミニウム膜側に成長する下部層12Bとからなる。表面層12Aはイオン導電性である。PO3-イオンは表面層12A中に取り込まれる。その後、電源Eの極性を切り替えて逆バイアス処理される。この逆バイアス処理は短時間である。この処理により、電解液中のK+イオンが表面層12Aの表面に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置にかかり、特に薄膜型の電子放出素子をマトリクス状に配置した自発光型のフラット・パネル・ディスプレイとも称する画像表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微少で集積可能な薄膜型電子源とも称する電子放出素子(電子源、陰極)をマトリクス状に配置した平面型の画像表示装置(フラット・パネル・ディスプレイ:FPD)が開発されている。この種の画像表示装置の電子源は、電子放出型電子源とホットエレクトロン型電子源とに分類される。前者には、スピント型電子源、表面伝導型電子源、カーボンナノチューブ型電子源等が属し、後者としては金属―絶縁体―金属を積層したMIM(Metal−Insulator−Metal)型、金属―絶縁体―半導体を積層したMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)型、金属―絶縁体―半導体−金属型等の薄膜型電子源がある。
【0003】
MIM型について、例えば特許文献1に、金属―絶縁体―半導体型についてはMOS型(非特許文献1)、金属―絶縁体―半導体−金属型ではHEED型(非特許文献2などに記載)、EL型(非特許文献3などに記載)、ポーラスシリコン型(非特許文献4などに記載)などが報告されている。
【0004】
MIM型電子源については、例えば特許文献2にも開示されている。MIM型電子源の構造と動作は以下のとおりである。すなわち、上部電極と下部電極との間に絶縁層(トンネル絶縁層)を介在させた構造を有し、上部電極と下部電極との間に電圧を印加することで、下部電極中のフェルミ準位近傍の電子がトンネル現象により障壁を透過し、電子加速層であるトンネル絶縁層の伝導帯へ注入されホットエレクトロンとなり、上部電極の伝導帯へ流入する。これらのホットエレクトロンのうち、上部電極の仕事関数φ以上のエネルギーをもって上部電極表面に達したものが真空中に放出される。なお、以下では、薄膜型の電子放出素子を単に電子源とも称する。
【0005】
図19は、薄膜型の電子放出素子の構造例を説明するMIM型電子源の要部斜視図である。図20は、図19のA−A’方向に切断した概略断面図である。なお、図19では図20に示される上部電極13を省略してある。図19と図20において、ガラスを好適とする絶縁基板10(陰極基板とも言う)の主面(内面)にアルミニウム(Al)またはアルミニウムーネオジム合金(Al−Nd)の下部電極11が形成されている。下部電極11の上面には化成処理されたトンネル絶縁膜12と、このトンネル絶縁膜12の周囲を埋めるフィールド絶縁膜14が形成されている。トンネル絶縁膜12の領域は単位画素の電子放出部であり、このトンネル絶縁膜12とフィールド絶縁膜14を覆って上部電極13が成膜されている。
【0006】
図19において、電子放出部の近傍には窒化シリコンを好適とする絶縁膜15を介して走査線21が形成されている。この例では、走査線21はアルミニウムを好適とする走査線バス電極16とその上にクロム等のキャップで17を有し、さらに走査線バス電極16の下に同じくクロム等のコンタクト電極18を有する3層構造である。
【特許文献1】特開平7−65710号公報
【特許文献2】特開平10−153979号公報
【非特許文献1】j.Vac.Sci.Techonol.B11(2)p.429−432(1993)
【非特許文献2】high−efficiency−electro−emission device、Jpn、j、Appl、Phys、vol.36、pp.939
【非特許文献3】Electroluminescence、応用物理 第63巻、第6号、592頁
【非特許文献4】応用物理 第66巻、第5号、437頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の電子放出素子を用いた画像表示装置では、複数の当該電子放出素子を平坦な絶縁基板(陰極基板)上に二次元のマトリクス状(アレイ状とも言う)に配列して表示領域を構成するが、電子放出素子を構成するトンネル絶縁膜(電子加速層)は下部電極を陽極酸化して非晶質な酸化膜としている。下部電極はアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜(アルミニウム-ネオジム合金膜等)の単層からなる金属膜、あるいは最上層をアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜とした金属の積層膜で構成される。この下部電極を化成処理(陽極酸化)してトンネル絶縁膜を形成するプロセスは、上記金属膜を成膜した絶縁基板を化成液(電解液)に浸漬し、当該金属膜の端縁に一方の電極(陽極)を接続し、電解液中に設置した他方の電極(白金Ptを好適とする陰極)との間に電流(化成電流)を流す陽極酸化工程(陽極化成処理工程)を含む。
【0008】
こうして成膜したトンネル絶縁膜の上に薄膜の上部電極を成膜してMIM型電子源とする。下部電極はデータ信号駆動回路に接続し、上部電極は走査信号駆動回路に接続する。この種の電子源では、下部電極の表面に形成された厚さが10nm程度の前記トンネル絶縁膜を覆って成膜されたイリジウム―白金―金を好適とする厚さが2nm程度の上部電極から放出される。放出される電子の量は前記トンネル絶縁膜の仕事関数で制限され、この仕事関数が小さいほど放出電子(エミッション)が多くなる。
【0009】
電子源を構成するトンネル絶縁膜にK+イオンを付着させることで電子のエミッション効率が向上することができる。トンネル絶縁膜にK+イオンを付着させる従来の方法は、以下のとおりである。先ず、陽極酸化(陽極化成)処理でトンネル絶縁膜を形成後、K2HPO4粉末の0.05%wt水溶液に3分浸漬する。これをエアナイフ乾燥する。この処理を施すことでトンネル絶縁膜上にK+イオンが付着する。トンネル絶縁膜にK+イオンが付着することで、電子のエミッションが向上する。また、P+イオンまたはCs+イオンは膜質を改善し、電子源の長寿命化に資する。
【0010】
しかし、上記従来のK+イオン付着処理では、トンネル絶縁膜の形成後にK2HPO4水溶液に浸漬し、これをエアナイフ乾燥する、というプロセスを陽極酸化処理のプロセスに追加する必要がある。また、K2HPO4水溶液での浸漬状態、エアナイフ乾燥状態により電子源間でのK+イオン付着ムラが発生し、電子エミッションの基板面内ムラをもたらす。また、同様に、トンネル絶縁膜中にドープされるP+イオン(PO4)またはCs+イオンの濃度むらが起こる。その結果、高画質の画像表示装置を得ることが難しかった。
【0011】
本発明の第1の目的は、絶縁基板に形成される表示領域に形成される電子源の電子エミッション性能の差を小さくして表示ムラがなく、膜質を改善して長寿命化を図った画像表示装置を提供することにある。又、本発明の第2の目的は、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の目的を達成するため、本発明では、平坦な絶縁基板(陰極基板)上に形成された下部電極の上にトンネル絶縁膜を介して成膜された上部電極とで構成される複数の電子放出素子がマトリクス状に配置された画像表示装置における前記電子放出素子を構成する前記トンネル絶縁膜が前記下部電極の表面を陽極酸化して形成した非晶質な酸化膜とし、前記トンネル絶縁膜中にPO3-イオンをドープし、前記トンネル絶縁膜の表面にK+イオンを付着させた。
【0013】
上記第2の目的を達成するため、本発明の製造方法では、平坦な絶縁基板上に形成される電子放出素子を構成する下部電極を、PO3-イオンとK+イオンを含んだ水溶液を混入させた化成液中に浸漬し、前記下部電極を陽極としてその表面に酸化膜を形成させる化成工程により、当該陽極酸化膜の表面層中にPO3-イオンをドープし、前記化成工程の後、当該化成工程とは逆のバイアス電圧を前記下部電極に印加して前記陽極酸化膜の表面層の表面にK+イオンを付着させる。
【0014】
本発明は、上記の構成に要約される特許請求の範囲に記載の技術範囲、後述する実施の形態に記載の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像表示装置によれば、電子源の電子エミッション性能の差が小さくなって表示ムラがなく、膜質が改善されて長寿命の画像表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、実施例の図面を用いて詳細に説明する。なお、以下では本発明の実施例をMIM(金属−絶縁体−金属)型電子源を用いた画像表示装置を例として説明するが、陽極酸化膜を用いる他の電子源を用いた画像表示装置についても同様に適用できるものである。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明にかかる画像表示装置の実施例1の電子源の構成例を説明する図である。図1は前記したMIM型電子源であり、図1の(a)は電子源の平面を、図1の(b)は図1の(a)の断面を示す。この電子源は、ガラス基板10の主面に、データ信号線となる下部電極11を有する。この下部電極11はアルミニウム―ネオジム合金であるが、アルミニウム単体でもよく、またこれら合金や単体金属の2層以上の積層構造としてもよい。下部電極11の表面の電子放出部分には陽極酸化処理(化成処理)されたトンネル絶縁膜12が形成され、その周囲は同じく陽極酸化処理されたフィールド絶縁膜14が形成されている。トンネル絶縁膜12とフィールド絶縁膜14は化成処理の条件が異なる。
【0018】
トンネル絶縁膜12の周りにはフィールド絶縁膜14の上に窒化シリコン膜を好適とする絶縁膜(層間絶縁膜)15を有し、その上に走査線21が形成されている。走査線21は下層金属膜18と中層金属膜16および上層金属膜17との積層構造である。この構成では、下層金属膜18はクロム(Cr)であり、後述する上部電極との接続をとるコンタクト電極である。また、中層金属膜16はアルミニウムであり、操作信号の配線抵抗を提言する走査線バス電極である。そして、上層金属膜17はクロムのキャップ電極である。なお、走査線21はこのような構成に限るものではなく、下層金属膜18と上層金属膜17をアルミニウム―ネオジム合金としたり、下層金属膜18に代えてシリコン膜としたもの、等がある。
【0019】
この走査線21とンネル絶縁膜12およびフィールド絶縁膜14を覆ってイリジウム(Ir)と白金(Pt)および金(Au)の3層CVD膜からなる上部電極13が形成されている。この上部電極13は、図1の(b)の右側に示したように、走査線21の下層金属膜18のテーパ(傾斜部)20で当該走査線21との確実なコンタクトを取っている。また、図1の(b)の左側に示したように、隣接する単位画素との間が、下層金属膜18のエッチングバックで形成された中層金属膜16の庇で自己整合的に分離されている。
【0020】
図2は、図1のトンネル絶縁膜を形成する陽極酸化処理における反応系を説明する模式図である。また、図3は、図2に示した反応系をPO3-イオンの取り込みとK+イオンの付着に分けて示した説明図である。下部電極11はアルミニウム(Al)であり、化成処理槽の電解液(化成液)23に浸漬して一方の電極とし、電源Eの陽極(+)を接続する。化成処理槽には他方の電極として白金(Pt)の電極22が設けられており、電源Eの陰極(−)を接続する。化成液23はPO3-イオンとK+イオンの水溶液を含んでいる。
【0021】
図3の(a)において、電源Eは切り替えスイッチSで第1電源E1側に接続される。第1電源E1の陽極は基板に形成した下部電極11に、陰極は白金電極22に接続される。この陽極酸化処理では、電源E1の電圧を6Vとすれば、下部電極11上に厚さ約10nmの絶縁層(トンネル絶縁層)12が形成される。トンネル絶縁層12はアルミナ(Al23)であり、その反応中に化成液23に溶解されているPO3-イオンがトンネル絶縁層12中に取り込まれる。トンネル絶縁層12は、下部電極11を構成するアルミニウム膜の元の表面から化成液23側に成長するアニオン層である表面層12Aと元のアルミニウム膜側に成長する下部層12Bとからなる。表面層12Aはイオン導電性である。PO3-イオンは表面層12A中に取り込まれる。
【0022】
その後、電源Eは切り替えスイッチSで第2電源E2側に接続される。第2電源E2の陽極は白金電極22に接続され、陰極は下部電極11に接続され、逆バイアス処理される。この逆バイアス処理は短時間(10分程度)である。この処理により、電解液中のK+イオンが図2の表面層12Aの表面に付着する。
【0023】
本実施例により、トンネル絶縁膜表面に付着したK+イオンの作用で電子源の電子エミッション量は増加し、電子源の電子エミッション性能の差が小さくなって表示ムラがなくなる。また、トンネル絶縁膜中に取り込まれたPO3-イオンまたはCs+イオンの作用によって膜質が改善され、長寿命の画像表示装置が得られる。PO3-イオンまたはCs+イオンによる膜質改善は、電子エミッションに対する仕事関数低減のためと考えられる。
【実施例2】
【0024】
以下、本発明にかかる画像表示装置の製造方法を実施例2として図4〜図17を参照して説明する。図4〜図17は、本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する平面図とその要部断面図である。先ず、図4に示したように、ガラス等の絶縁性の基板10上に下部電極11用の金属膜を成膜する。下部電極11の材料としてアルミニウム(Al)合金を用いる。Al合金を用いるのは、前記した陽極酸化による良質の絶縁膜を形成できるからである。ここでは、ネオジム(Nd)を2原子量%ドープしたアルミニウム―ネオジム合金(Al−Nd)を用いた。この成膜には、例えば、スパッタリング法を用いる。膜厚は600nmとした。
【0025】
下部電極11用の金属膜の成膜後、パターニング工程、エッチング工程によりストライプ形状の下部電極11を形成する(図5)。下部電極11の電極幅は画像表示装置のサイズや解像度により異なるが、そのサブピクセルのピッチ程度、大体100〜200ミクロン(μm)程度とする。エッチングは、例えば、燐酸、酢酸、硝酸の混合水溶液でのウェットエッチングを用いる。下部電極11の側縁には積極的にテーパTをもたせるのが望ましい。この下部電極11は幅の広い簡易なストライプ構造のため、レジストのパターニングは安価なプロキシミティ露光や、印刷法などで行うことができる。
【0026】
次に、電子放出部を制限し、下部電極11のエッジへの電界集中を防止するフィールド絶縁膜(保護絶縁層とも言う)14とトンネル絶縁膜12を形成する。まず、図6に示した下部電極11上の電子放出部となる部分をレジスト膜25でマスクし、その他の部分を選択的に厚く陽極酸化してフィールド絶縁膜14とする。例えば、化成電圧を200Vとして、厚さ約270nmのフィールド絶縁膜14を形成する。その後、レジスト膜25を除去して残りの下部電極11の表面を陽極酸化する。例えば、化成電圧を6Vとして下部電極11上に厚さ約10nmのトンネル絶縁層12を形成される(図7)。
【0027】
次に、窒化シリコンをスパッタして絶縁膜15を成膜する(図8)。なお、フリットガラスと反応する表示領域の外周にあるシール部の絶縁膜15はドライエッチングで除去する。そして、走査線形成部分の絶縁膜15をドライエッチングで除去し、フィールド絶縁膜14を露出させる(図9)。ここで、再び化成槽で陽極酸化処理を行い、走査線形成部分のフィールド絶縁膜14のダメージ修復を行う(図10)。この再酸化処理はフィールド絶縁膜14の剥がれを防止するために行うものであり、先のフィールド絶縁膜14の剥がれが問題ない場合には必ずしも必要でないプロセスである。
【0028】
次に、基板の全面を覆ってクロム、アルミニウム、クロムを順に成膜し、コンタクト電極となる下層金属膜18、走査線バス電極16、キャップ電極17からなる3層の金属膜を成膜する(図11)。以下、レジストの塗布とパターン露光、現像のホトリソプロセスでレジストマスクを形成し、このレジストマスクを用いてエッチングを行う、先ず、クロムを溶解するエッチング液でキャップ電極17をパターニングする(図12)。次にアルミニウムを溶解するエッチング液で走査線バス電極16をパターニングする(図13)。そして、クロムを溶解するエッチング液で下層金属膜18をパターニングする(図14)。
【0029】
次に、トンネル絶縁膜12を覆う絶縁膜(SiN)をSF6+O2+He混合ガスを用いたドライエッチングで除去し、トンネル絶縁膜12を露出する(図15)。このとき、コンタクト電極となる下層金属膜18の隣接画素側がエッチングバックされて走査線バス電極16に庇構造を形成し、トンネル絶縁膜12側の端縁にテーパ20が形成される。ここで、トンネル絶縁膜12を再び化成槽に入れ、トンネル絶縁膜12の陽極酸化を行う(図16)。この再陽極酸化もトンネル絶縁膜12のダメージ修復のプロセスである。
【0030】
最後に、基板全面にイリジウム、白金、金を順にスパッタ成膜して上部電極13とする(図17)。このスパッタ成膜の際に、図1でも説明したよおうに、走査線21の走査線バス配線16の庇構造で隣接する画素との間で上部電極13が自己整合的に分離される。
【0031】
図18は、本発明にかかる画像表示装置をMIM型の電子源を用いた表示装置を例として説明する模式平面図である。なお、図1では、電子源を有する基板(陰極基板)10の平面を示し、蛍光体や陽極を形成した他方の基板(蛍光体基板、陽極基板)は、図示を省略している。
【0032】
基板10には、信号線駆動回路50に接続する信号線(データ線)を構成する下部電極11、上部電極13、走査線駆動回路60に接続して信号線と直交配置された走査線21、走査電極の一部で上部電極13を接続するためのコンタクト電極である下層金属膜18、上部電極13を各走査線毎に分離するための庇構造19、等が形成されている。なお、電子源アレイ(電子放出部)は、下部電極11上に交差は位置される走査線21の間に配置され、トンネル絶縁膜12を介して下部電極11に積層する上部電極13で形成される。記述の如く、電子放出部の領域を制限する厚いフィールド絶縁層14で囲まれた薄層部分で形成されるトンネル絶縁層12の部分から電子が放出される。
【0033】
なお、図示しない蛍光面基板の内面には、表示画像のコントラストを上げるための遮光層すなわちブラックマトリクス、赤色蛍光体、緑色蛍光体と青色蛍光体を典型とする複数色の蛍光体群を配列した蛍光面と、陰極基板10の電子源から放出された電子を加速してこれらの蛍光体に射突させて励起する陽極が形成されている。蛍光体としては、例えば、赤色にY22S:Eu(P22−R)、緑色にZnS:CuAl(P22−G)、青色にZnS:AgCl(P22−B)を用いることができる。陰極基板10と蛍光面基板とはスペーサ30で所定の間隔で保持され、表示領域の外周に封止枠40を介在させて封着した後、内部が真空封止される。図18では、封止枠40の内側端と外側端を太線で示し、矢印aで示された範囲と矢印bで示された間が封止枠40である。矢印bで示された内部が真空封止される。また、矢印cで示された範囲に上部電極13が形成される。そして、矢印dで示された範囲の下層金属膜18がエッチングバックされて隣接する画素と分離された部分を示す。
【0034】
スペーサ30は、陰極基板10の走査電極21上に配置し、蛍光面基板のブラックマトリクスの下に隠れるように配置する。下部電極11は信号線駆動回路50へ接続し、走査電極配線である走査電極16は走査線駆動回路60に接続する。フルカラー表示の1画素(カラーピクセル)を構成する電子源のそれぞれは、前記の蛍光体のそれぞれに対応した単位画素(カラー表示の副画素:サブピクセル)を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる画像表示装置の実施例1の電子源の構成例を説明する図である。
【図2】図1のトンネル絶縁膜を形成する陽極酸化処理における反応系を説明する模式図である。
【図3】図2に示した反応系をPO3-イオンの取り込みとK+イオンの付着に分けて示した説明図である。
【図4】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する平面図とその要部断面図である。
【図5】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図4に続く平面図とその要部断面図である。
【図6】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図5に続く平面図とその要部断面図である。
【図7】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図6に続く平面図とその要部断面図である。
【図8】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図7に続く平面図とその要部断面図である。
【図9】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図8に続く平面図とその要部断面図である。
【図10】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する走査線形成部分のフィールド絶縁膜のダメージ修復を行う再化成処理の説明図である。
【図11】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図9に続く平面図とその要部断面図である。
【図12】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図11に続く平面図とその要部断面図である。
【図13】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図12に続く平面図とその要部断面図である。
【図14】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図13に続く平面図とその要部断面図である。
【図15】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図14に続く平面図とその要部断面図である。
【図16】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明するトンネル絶縁膜のダメージ修復を行う再化成処理の説明図である。
【図17】本発明の画像表示装置の陰極基板を構成する薄膜電子源の製造プロセスを説明する図15に続く平面図とその要部断面図である。
【図18】本発明にかかる画像表示装置をMIM型の電子源を用いた表示装置を例として説明する模式平面図である。
【図19】薄膜型の電子放出素子の構造例を説明するMIM型電子源の要部斜視図である。
【図20】図19のA−A’方向に切断した概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・陰極基板、11・・・下部電極(データ線)、12・・・トンネル絶縁膜、13・・・上部電極、14・・・フィールド絶縁膜、15・・・絶縁膜、16・・・中層金属膜、17・・・上層金属膜、18・・・下層金属膜、19・・・庇構造、20・・・テーパ部、21・・走査線、22・・・陰極、23・・・電解液、30・・・スペーサ、40・・・封止枠、50・・・信号線駆動回路、60・・・走査線駆動回路、。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な絶縁基板上に形成された下部電極と、該下部電極の上にトンネル絶縁層を介して成膜された上部電極とで構成される複数の電子放出素子をマトリクス状に配置してなり、
前記電子放出素子を構成する前記トンネル絶縁層は前記下部電極の表面を陽極酸化して形成した非晶質な酸化膜であり、
前記トンネル絶縁層中にPO3-イオンがドープされ、前記トンネル絶縁層の表面にK+イオンまたはCs+イオンが付着していることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記トンネル絶縁層は、下部電極の表面側に成長したアニオン層を有し、前記PO3-イオンが前記アニオン層内にドープされていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記K+イオンが前記アニオン層の表面に付着していることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記下部電極は、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の単層膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記下部電極は、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の何れかを最表面にもつ積層膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
平坦な絶縁基板上に形成される電子放出素子を構成する下部電極を、PO3-イオンとK+イオンを含んだ水溶液またはCs+イオンとCO32-イオンを含んだ水溶液、または、PO3-イオンとK+イオンとCs+イオンとCO32-イオンを含んだ水溶液、またはCs+イオンを混入させた化成液中に浸漬し、前記下部電極を陽極としてその表面に酸化膜を形成させる化成工程により、当該陽極酸化膜の表面層中にPO3-イオンをドープする工程と、
前記化成工程の後、当該化成工程とは逆のバイアス電圧を前記下部電極に印加して前記陽極酸化膜の表面層の表面にK+イオンを付着させる工程と、
を含むことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記化成工程により前記下部電極の表面側にアニオン層を成長させ、前記PO3-イオンを前記アニオン層内にドープすることで前記トンネル絶縁層を形成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記逆のバイアス電圧の印加により、前記K+イオンまたはCs+イオンを前記アニオン層の表面に付着させることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記下部電極にアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の単層膜を用いることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記下部電極にアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の何れかを最表面にもつ積層膜を用いることを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−257985(P2008−257985A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98608(P2007−98608)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】