説明

画像表示装置

【課題】物体の色だけでなく、色の見え方、光沢感、材質感等を提示できる画像表示装置を提供すること。
【解決手段】光の波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを照射方向に依存して制御して射出する光供給部である発光部103R、103G、103Bと、発光部103R、103G、103Bからの光の前記照射方向を変化させる角度制御部であるマイクロレンズ素子101とを有することを特徴とする画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、特に、物体色に加えて、物体の光沢感、材質感といった質感も提示できる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像表示装置において、発色の原理は、例えば、CRT(Cathode−Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイなどと様々提案されている。
【0003】
そして、画像提示方法においては、いずれの画像表示装置においても指向性の少ない光源を並べることにより、どの方向にも同じ平面画像を提示することが広く一般に用いられてきた。
【0004】
なお、本明細書において、光源から照射される光により色提示をする場合を「発光」という。これに対して、光源は有さず、外部からの環境光によって反射型の色提示をする場合を「発色」という。
【0005】
さらに、従来の画像表示装置をふまえて、さらに、立体視を行う構成も種々提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】「高度三次元動画像遠隔表示プロジェクト最終報告書」、通信・放送機構報告書、pp.54−58、2002年
【非特許文献2】「三次元統合画像通信の後送」、電子情報通信学会技術研究報告、vol.92、No.443、pp.1−9、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の画像表示装置における画像提示方法では、物体の物体色を再現することは可能である。しかしながら、物体の光沢感や材質感、即ち、例えば、つるつる・ざらざらといった質感を提示することは原理的に不可能である。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、物体の色だけでなく、色の見え方、光沢感、材質感等を提示できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、光の波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを照射方向に依存して制御して射出する光供給部と、前記発光部からの光の前記照射方向を変化させる角度制御部とを有することを特徴とする画像表示装置を提供できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記光供給部は、自ら光を発光する発光部であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記光供給部は、入射した光を反射する反射部であることが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記角度制御部は、所定画素ごとに設けられているマイクロレンズ素子であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記マイクロレンズ素子は、各画素ごとに形成されていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記光供給部は、照射方向に依存して、波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを制御することで物体の質感情報を表示することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記光供給部は、照射方向に依存して、波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを制御することで物体の立体情報を表示することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、物体の色だけでなく、色の見え方、光沢感、材質感等を提示できる画像表示装置を提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る画像表示装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
まず、初めに、本発明により物体の質感を提示できる原理について説明する。物体色は、所定の一つの幾何学的条件の計測により定まる。このことは、日本工業規格JISZ8722及び国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage)の国際規格CIE No.15.2で定められている。幾何学的条件の例としては、試料面の法線に対して光軸が45度の角度をなす一つ以上の光線束で試料を照明し、試料の法線となす角度が10度以下の反射光を受光する、といったものである。
【0019】
図7の(a)に示すように、上述の規格に定められている幾何学的条件により、表面のざらざら(凹凸のある状態、texturedな状態)した赤い色紙を計測した場合について説明する。図7の(b)は、このときの測定結果を示している。この結果からは、700nm程度に反射波長のピークを持ち、赤い物体色を持つことはわかる。しかしながら、ざらざらした表面であるかはわからない。
【0020】
次に、図8の(a)に示すように、図7で計測したときと同じ色紙を、受光角を様々に変えて計測する。図8の(b)は、このときの測定結果を示している。また、図9は、表面が円滑で、いわゆるつるつる(非常にスムーズな状態、平滑度が高い状態)な赤い色紙を図8と同じ計測条件で計測したものである。これらを比較すればその差異は明確であり、つるつるな表面では鏡面反射の状態、即ち図8の(a)及び図9の(a)における、受光角がEの条件のときに非常に強い反射光となる。このとき、観察者には、白色に見える。
【0021】
一方、ざらざらな表面では特に反射強度が際立って変化する状態は存在しない。このように、質感の違いは見る角度による発光波長、強度の違いとして評価することができる。
【0022】
上述の計測に基づいた質感を提示する画像提示方式を具体的な例を用いて説明する。つるつるな表面を提示するには、ある方向から見ると鏡面反射し、即ち明るい白色として見え、他の角度から見ると物体色を提示することによって実現できる。
【0023】
また、ざらざらな表面を提示するには、どの方向から見ても同じような色合いを提示することによって実現できる。このように、発色および発光のよる光波長・光強度および偏光を方向に依存して制御できる発色・発光部を並べた画像表示装置を用いることで、質感を提示することができる。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係る画像表示装置について説明する。図1は、実施例1に係る画像表示装置100の概略構成を示している。画像表示装置100は、発光体103と、調光部102と、マイクロレンズ素子101とから構成されている。
【0025】
図2は、画像表示装置100の一画素PXの部分を拡大して示している。画素PXごとにマイクロレンズ素子101が設けられている。また、発光体103は、赤色光を照射する赤色光用発光体103Rと、緑色光を照射する緑色光用発光体103Gと、青色光を照射する青色光用発光体103Bとで一組の発光体を構成している。そして、複数の組の発光体が2次元状に配列されている。ここで、各発光体ひとつの大きさは、1μm角から10cm角の間である。
【0026】
発光体103の各色用発光体103R、103G、103Bに対応して、その射出側近傍に調光部102が配置されている。調光部102も、赤色光(R光)を調光する赤色光用調光部102Rと、緑色光(G光)を調光する緑色光用調光部102Gと、青色光(B光)を調光する青色光用調光部102Bとで一組の調光部を構成している。
【0027】
図1に戻って、説明を続ける。制御部104は、表示する物体に関する質感情報、例えば凹凸情報に基づいて、調光部102の透過率を制御する。これにより、各発光体103R、103G、103Bからの光の強度を任意に制御することができる。
【0028】
発光部103と調光部102とで、光供給部に対応する。光供給部は、光の波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを照射方向に依存して制御して射出する。
【0029】
また、マイクロレンズ素子101は、発光部103からの光の照射方向を変化させる角度制御部の機能を有している。
【0030】
また発光部103は、自ら光を発光する発光体(自発光体)である。
【0031】
本実施例により、マイクロレンズ素子101ごとに配置された発光体103R、103G、103Bの数だけ、角度によって異なる発光状態(発光波長・強度及び偏光の状態)を提示できる。このため、観察者は、本装置を見る角度により発光波長(色)、強度の違いを認識できる。例えば、ある角度方向からみると白色、その他の角度からみると赤い物体色が見えるように提示すると、観察者はつやつやな赤い表面として見える。この結果、上述したように、提示する物体の質感の相違を認識できる。
【0032】
なお、マイクロレンズ素子101は、一画素PXごとに配置されているが、これに限られるものではない。例えば、複数の所定画素ごとに一つのマイクロレンズ素子101を配置する構成としても良い。
【0033】
また、調光部102は、液晶を用いた電気的光学シャッターで構成することができる。
【0034】
さらに、発光波長・強度だけでなく偏光も制御できることが望ましい。例えば、金属光沢と紙などのつやの違いには偏光が存在するか(紙などのつや)、偏光が存在しないか(金属光沢)ということがあげられている(例えば、日本色彩学会編、『色彩用語事典』、東京大学出版会、2003)。そのため、より実際に近い光沢感を実現する場合には、偏光も制御できることが望ましい。偏光の制御部としては、液晶を用いた電気的偏光素子を用いることができる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の実施例2に係る画像表示装置について説明する。図3は、本実施例に画像表示装置の概略構成を示している。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
本実施例では、複数のフォトダイオード素子501aからなるフォトダイオードアレイ501を有している。また、フォトダイオードアレイ501の近傍には、カラーフィルタ502R、502G、502Bが配置されている。
【0037】
本実施例では、光源LSからの光をフォトダイオードアレイ501で受光する。これにより、環境光の角度・強度情報を取得できる。そして、環境光の角度・強度情報を考慮して、発光部103、調光部102を制御する。これにより、環境光に対応した物体表面の質感を提示することができる。
【0038】
また、光供給部は、入射した光を反射する反射部である反射型の表示素子(発色素子)を用いることもできる。この場合、外部からの光源により、本画像表示装置を照明する。そして、その反射光により質感を表示する。
【実施例3】
【0039】
次に、本発明の実施例3に係る画像表示装置について説明する。図4は、実施例3に係る画像表示装置300の概略構成を示している。理解の容易のため、R光、G光、B光の各色光を供給する一組の構成のみを示し、その他の重複する構成については省略する。
【0040】
赤色光用発光体103Rと緑色光用発光体103Gと青色光用発光体103Bとで一組の発光体103を構成している。発光体の近傍には、調光部102が設けられている。さらに角度制御部として可動ミラー301R、301G、301Bが配置されている。角度制御部302は、各可動ミラー301R、301G、301Bの傾斜角度を制御する。これにより、発光部103からの光の照射方向を変化させることができる。
【0041】
上記実施例が角度方向の発光情報を空間分割によって提示していたのに対し、図4で示す構成例では、角度方向の発光情報を時間分割により提示している点が異なる。
【実施例4】
【0042】
図5は、実施例4に係る画像表示装置400の概略構成を示している。理解の容易のため、R光、G光、B光の各色光を供給する一組の構成のみを示し、その他の重複する構成については省略する。
【0043】
図5においては、発光部103として、自発光素子であるR光用有機EL素子103R、G光用有機EL素子103G、B光用有機EL素子103Bを用いている。また、各有機ELは、光の照射に関して指向性を有している。
【0044】
発光部103は、可動ミラー503R、503G、503Bの上に配置されている。この場合、R光用有機EL素子103R、G光用有機EL素子103G、B光用有機EL素子103Bは、発光部の機能と調光部の機能とを兼ね備えている。また、可動ミラー503R、503G、503Bは、角度制御部に相当する。
【0045】
角度制御部401は、各可動ミラー503R、503G、503Bの傾斜角度を制御する。これにより、発光部103からの光の照射方向を変化させることができる。
【実施例5】
【0046】
図6は、実施例5に係る画像表示装置600を示している。図6の(a)は、画像表示装置600の外観構成を示している。画像表示装置600は、表示部603を備えている。また、図6の(b)は、画像表示装置600の表示部分の断面構成を示している。
【0047】
本実施例では、実施例1の一画素PX分に相当する発光体601と、フォトダイオードで構成される受光部602とが交互に配置されて構成されている。これらの、発光体601と受光部602とはMEMS技術により製造されている。各発光部601、各受光部602は、それぞれ回転(傾斜)可能に構成されている。
【0048】
そして、受光部602により、環境光の角度・強度情報を取得できる。環境光の角度・強度情報を考慮して、発光部601を制御する。これにより、環境光に対応した物体表面の質感を提示することができる。
【0049】
また、上述したR光、G光、B光との3色により提示される場合には限定されない。例えば、色再現の原理が2つまたは複数の単色光の混合によるものであれば良い。このとき、用いる光の波長領域は、300nmから800nmまで変化させることができる。
【0050】
さらに、連続的な単一波長発色の混合によっても良い。連続単一波長を用いる場合、それを時間的・空間的に重ね合わせることにより、R光、G光、B光の三原色を用いる場合よりも多くの色を提示できる。
【0051】
本発明によれば、従来のディスプレイでは表示不可能であった物体の光沢感、材質感を表示することができる。また、角度による発光波長・強度を制御できるため、眼鏡なしの立体画像表示装置として利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係る画像表示装置は、質感情報を提示できる装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1の画像表示装置の一部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例3に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例4に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例5に係る画像表示装置の概略構成を示す図である。
【図7】表面反射の計測条件と測定結果とを示す図である。
【図8】表面反射の計測条件と測定結果とを示す他の図である。
【図9】表面反射の計測条件と測定結果とを示すさらに他の図である。
【符号の説明】
【0054】
100 画像表示装置
101 マイクロレンズアレイ
102、102R、102G、102B 調光部
103、103R、103G、103B 発光部
104 制御部
302 角度制御部
401 角度制御部
501 フォトダイオードアレイ
501a フォトダイオード素子
502R、502G、502B カラーフィルタ
503R、503G、503B 可動ミラー
600 画像表示装置
601 発光部
602 受光部
603 表示部
OB 物体
PX 画素
LS 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを照射方向に依存して制御して射出する光供給部と、
前記光供給部からの光の前記照射方向を変化させる角度制御部とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記光供給部は、自ら光を発光する発光部であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光供給部は、入射した光を反射する反射部であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記角度制御部は、所定画素ごとに設けられているマイクロレンズ素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズ素子は、各画素ごとに形成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記光供給部は、照射方向に依存して、波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを制御することで物体の質感情報を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記光供給部は、照射方向に依存して、波長領域と、光強度と、偏光状態との少なくとも何れか一つを制御することで物体の立体情報を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−116878(P2008−116878A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302566(P2006−302566)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】