説明

画像記録方法及びその方法により得られる記録物

【課題】インク組成物を使用して、被記録媒体の面質を全体的あるいは部分的に変換する画像記録方法、特に被記録媒体の光沢度を部分的に低減させ、記録媒体の表現効果を高めることができる画像記録方法及び画像記録方法によって得られる記録物を提供する。
【解決手段】光沢度を有する被記録媒体の少なくとも一領域に、金属化合物または中空樹脂粒子を含有するインク組成物で画像を記録することによって、前記インク組成物が記録された領域の光沢度を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な方法で、被記録媒体の面質を全体的あるいは部分的に変えることが可能な画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白色インクを用いた画像記録方法が周知である。すなわち、特許文献1では、画像を形成する記録媒体の下地処理または記録媒体の地色に応じた補色処理に用いる白色インクを含むカラー画像用のインクセットを用い、記録媒体の地色に応じて、白色インクの打ち込み方を制御する発明が記載されている。これにより、記録媒体の地色に影響されずカラー画像を再現できる。
【0003】
特許文献2には、水溶性染料インクの画像を記録する被記録材上の部位に、無機酸化物顔料を主成分とする半透明白色インク組成物を予め固着させる発明が記載されている。これにより、普通紙や葉書などの非塗工紙に、水溶性染料インクを用いて記録する場合に、画像のにじみや裏映りのない、高品質の画像を記録することができる。
【0004】
特許文献3には、白色顔料、重合性化合物及び光重合開始剤を含有した白色インクで記録媒体の下地処理を行う発明が記載されている。これにより、インク吸収性の不均一な普通紙や再生紙、インク吸収性のない透明な記録媒体、明度が低い記録媒体、白色度の低い記録媒体でも優れた印字性を示すことができる。
【0005】
また、特許文献4には、色材を含む第1のインクにより画像を形成し、次いで白色顔料を含有する第2のインクにより該画像を修正するインクジェット画像形成方法において、第1のインクと第2のインクが混合しないことを特徴とした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002− 38063号公報
【特許文献2】特開2001−171095号公報
【特許文献3】特開2004− 18546号公報
【特許文献4】特開2005−125690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常の印刷では出せない質感や手触りを与える印刷技術、いわゆる特殊印刷が知られている。特殊印刷は、人間の五感に訴える要素を印刷物に加えて表現効果を高めることができるため、雑誌やポスター等の分野での利用が徐々に増えており、近年では注目されている技術である。普通紙のみならず、ガラス、合成樹脂、金属などほとんどの被記録媒体に、形状を問わず印刷できるのが特徴である。例えば、記録面に光沢を与える「艶出し」、逆に光沢を抑えた「艶消し」の風合いに仕上げる特殊印刷がある。
【0008】
特許文献1〜4に記載の発明は、何れも下地として白色インクを使用している点で共通しているが、上記のように被記録媒体の光沢を調整するような特殊印刷の技法として使用されているものではない。したがって、白色インク組成物を使用し、記録面の表現効果を高める新たな記録方法が求められるところである。また、特許文献1〜4に記載の白色インク組成物に限られず、白色以外の他の色を呈する色材を含んだインク組成物を採用しつつ、上記のような表現効果を高めることができる記録方法も求められる。
【0009】
更に、近年では、被記録媒体の面質を部分的に変えるスポットバーニッシュ(Spot Varnish)技法の需要が高まっている。「面質」には、例えば、光沢感、立体感、表面均質感等がある。特に、印刷物などの任意の画像が予め形成された記録物の面質を部分的に変えることができれば、表現効果および手法をより高めることが可能となる。
そこで、近年、上記技法の需要の高まりに応じて、簡便に、被記録媒体の面質を部分的に変換する方法であって、光沢を有する被記録媒体を部分的にマット調に変えることが可能な新規な方法が希求されている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、インク組成物を使用して、被記録媒体の面質を全体的あるいは部分的に変換する方法、特に被記録媒体の光沢を部分的に低減させ、記録媒体の表現効果を高めることができる画像記録方法及び画像記録方法によって得られる記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の通りである。
(1)光沢を有する被記録媒体の少なくとも一領域に、金属化合物または中空樹脂粒子を
含有するインク組成物で画像を記録することによって、前記インク組成物が記録された領域の光沢を低減させることを特徴とする画像記録方法。
(2)前記被記録媒体の一領域には、カラーインク組成物によって予め下地画像が記録されていることを特徴とする上記(1)に記載の画像記録方法。
(3)前記被記録媒体の一領域の前記インク組成物による画像と、前記一領域以外の領域の画像と、が同時に記録されることを特徴とする上記(1)に記載の画像記録方法。
(4)前記インク組成物が記録された一領域に、カラーインク組成物を重ねて記録することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(5)上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の画像記録方法により得られることを特徴とする記録物。
【0012】
なお、光沢を有する被記録媒体には、予め画像が記録されている媒体と、何も記録されていない媒体が含まれる。また、下地画像は、インクジェットプリンタによって記録される画像に限定するものではなく、レーザープリンタ等その他の記録装置であってもよい。なお、本発明における“光沢を有する被記録媒体”とは、例えば、後述の実施例における60度の光沢度測定において、10以上の被記録媒体を示す。
【0013】
写真紙やコート紙、プラスチック基材など光沢の高い被記録媒体に通常のカラー画像を記録しても、カラー画像によって被記録媒体の光沢は吸収されない。このため、記録物も光沢が高い印刷物になる。本発明の画像記録方法によれば、光沢の高い被記録媒体に、汎用の金属化合物または中空樹脂粒子を含有するインク組成物を記録することで、簡便につやのないマット調の記録を全体的あるいは部分的に行うことが出来る。また、必要に応じてインク組成物により形成されたマット調の面質部分に重ねてカラーインク組成物を記録することでマット調のカラー印刷を行うことができる。
更に、本発明の画像記録方法は、特に、被記録媒体が印刷物などの任意の画像が予め形成された記録物である場合にも簡便にその面質を部分的に変えることができ、即ち、光沢調の所望の領域を部分的にマット調に変換することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の画像記録方法の一実施形態について説明する。まず、本発明の画像記録方法において使用するインク組成物について詳細に説明する。
[インク組成物]
以下、本発明におけるインク組成物について、詳細に説明する。
【0015】
1.金属化合物、中空樹脂粒子
本発明におけるインク組成物は、色材として金属化合物または中空樹脂粒子を含有する。なお、本発明の色材である金属化合物及び中空樹脂粒子は、白色色材として白色インク組成物に適用されることが好ましいが、白色以外を呈していてもよい。
【0016】
本発明における金属化合物としては、顔料として使用可能な金属原子含有化合物であれば特に限定されることがなく、好ましくは、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。中でも二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1.0〜20.0質量%であり、より好ましくは5.0〜10.0質量%である。金属化合物の含有量が20.0質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1.0質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
【0017】
金属化合物の平均粒子径(外径)は、好ましくは30〜600nmであり、より好ましくは200〜400nmである。外径が600nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径30nm未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0018】
金属化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0019】
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0020】
また、本発明におけるインク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
【0021】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0022】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
【0023】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0024】
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0025】
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0026】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0028】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0030】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0031】
2.定着樹脂
本発明におけるインク組成物は、色材を定着させる樹脂を含むことが好ましい。かかる樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0032】
3.浸透性有機溶剤
本発明におけるインク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0033】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0034】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0035】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0036】
4.界面活性剤
本発明におけるインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0037】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0038】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0039】
さらに、本発明におけるインク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0040】
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0041】
5.多価アルコール
本発明におけるインク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本発明におけるインク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0042】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0043】
上記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0044】
6.第三級アミン
本発明におけるインク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、インク組成物のpHを容易に調整することができる。
【0045】
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0046】
上記第三級アミンの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0047】
7.溶剤および添加剤
本発明におけるインク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0048】
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0049】
8.調整方法
本発明におけるインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0050】
本発明の画像記録方法に適用できる記録媒体としては、光沢を有する被記録媒体であれば特に限定されることがなく、例えば、写真紙、コート紙、シートまたはフィルム等のプラスチック基材、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。また、紙、厚紙、繊維製品等の光沢がない素材であっても、光沢性のインク組成物で被記録面を塗工していれば良い。本発明における“光沢を有する被記録媒体”とは、例えば、後述の実施例における60度の光沢度測定において、10以上の被記録媒体を示す。
【0051】
本発明におけるインク組成物は、その用途は特に限定されないが、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどが挙げられる。
【0052】
[記録物]
本発明はまた、上述したインク組成物を使用して、全体的あるいは部分的に面質が変換された、特に光沢を部分的に低減させ、表現効果を高めた記録物を提供することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお本発明におけるインク組成物の一例として、本実施例では、色材として白色を呈する金属酸化物あるいは白色中空樹脂粒子を含有する白色インク組成物を使用した。
【0054】
1.白色インク組成物の調製
表1に示す配合量で、中空樹脂粒子または金属酸化物、樹脂、有機溶剤、多価アルコール、第三級アミン、界面活性剤、およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、インク組成物1及び2を得た。なお、表1に記載される数値の単位は、質量%であり、金属酸化物、中空樹脂微粒子、ウレタン樹脂粒子についてはいずれも固形分換算である。
【0055】
金属酸化物は、表1に記載の市販品「NanoTek(R)Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek(R)Slurryは、平均粒子径36nmの二酸化チタンを固形分として15%の割合で含むスラリーである。
【0056】
中空樹脂粒子は、表1に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。
【0057】
ウレタン樹脂は、「WBR−022U」(大成ファインケミカル(株)製)ポリエステル系アニオン性ポリウレタン樹脂、Tg=−30℃)を使用した。
【0058】
【表1】

【0059】
2.評価方法
表1に記載の白色インク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。このようにして作製されたインクカートリッジをプリンタに装着し、印刷試験を行った。ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のもの(ICC33シアン、ICM33マゼンタ、ICY33イエロー、ICR33レッド、ICBL33ブルー、ICGL33グロスオプティマイザ)を装着した。
【0060】
次いで、出力はインクジェット用専用記録用紙(「写真用紙<光沢>」、「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製、「PETフィルム」東レ株式会社製)に対して、720×720dpiの解像度で行った。印刷パターンは、白印刷は100%dutyベタパターン、カラー印刷はシアン100%dutyベタパターンとした。
【0061】
本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0062】
3.光沢度の測定方法
各実施例によって記録された一領域の光沢度を、MINOLTA MULTI GLOSS 268(ミノルタ(株)製)を使用して測定した。測定条件として、測定角を60度とした。OHPシートおよびPETフィルムは測定時の下地に影響を受けるため、普通紙を下地として測定した。なお、測定角60度で普通紙の光沢度を測定すると、4.0であった。
【0063】
実施例1は、予め下地画像が記録された記録紙(被記録媒体)に対して、記録紙の一領域にのみ、下地画像に重ねて白色インク組成物を記録し、白色インク組成物が記録された一領域の光沢度を測定した。
【0064】
実施例2は、下地画像が記録されていない無記録の記録紙に対して、下地画像と白色インク組成物による画像とを同時に記録した。この場合は、カラーインク組成物による画像と、白色インク組成物による画像と、を合成して1つの画像データとすることでインクジェットプリンタは同時に印刷することができる。互いの画像が重なる一領域では白色インク組成物による画像のみを取り出せばよい。したがって、記録紙の一領域には白色インク組成物が直接記録される。その後、白色インク組成物が記録された一領域の光沢度を測定した。
【0065】
実施例3は、下地画像が記録されていない無記録の記録紙に対して、カラーインク組成物によって下地画像を記録した後、下地画像が記録された記録紙の一領域に対して、白色インク組成物による画像を記録した。この場合、記録紙の一領域には下地画像の上に白色インク組成物による画像が重ねて記録される。その後、白色インク組成物が記録された一領域の光沢度を測定した。
【0066】
実施例4は、下地画像が記録されていない無記録の記録紙に対して、下地画像と白色インク組成物による画像とを同時に記録した後、さらに白色インク組成物の上に重ねてカラーインク組成物を記録した。したがって、記録紙の一領域には直接記録された白色インク組成物にカラーインク組成物がさらに重ねて記録される。その後、白色インク組成物に重ねてカラーインク組成物が記録された一領域の光沢度を測定した。
【0067】
実施例5は、下地画像が記録されていない無記録の記録紙に対して、カラーインク組成物によって下地画像を記録した後、下地画像が記録された記録紙の一領域に対して、白色インク組成物による画像を記録し、さらに白色インク組成物の上に重ねてカラーインク組成物を記録した。この場合、記録紙の一領域には下地画像の上に白色インク組成物による画像が重ねられ、さらにカラーインク組成物による画像が重ねて記録される。その後、白色インク組成物に重ねてカラーインク組成物が記録された一領域の光沢度を測定した。
【0068】
インク組成物1によって記録した場合の測定結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
インク組成物2によって記録した場合の測定結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
比較例1は、記録紙になにも記録しない状態であり、記録紙自体の光沢度を示している。
比較例2は、記録紙にカラーインク組成物による下地画像のみを記録したときの、光沢度を示している。比較例2によれば、記録紙の光沢度は通常のカラーインク組成物による下地画像を記録するだけで、低減することがわかる。
【0073】
表2及び表3に示すように本実施例1〜5で得られた光沢度は、比較例1及び2の何れよりも光沢度が低減される結果となった。また、表2の実施例1及び3のように、下地画像にインク組成物1を重ねて記録した場合は、より記録紙の光沢度を低減させることができる。さらに表2に示すインク組成物1の場合は、実施例1及び3のように、写真紙<光沢>やPETフィルムに記録した場合の光沢度は3.0であり、普通紙の光沢度(4.0)よりも低減させることができる。
【0074】
また表2に示すインク組成物1の場合は、実施例1〜3のようにインク組成物1を記録した一領域の光沢度と、比較例2のように記録紙にカラーインク組成物による画像のみを記録した光沢度と、の差が何れの記録紙においても顕著である。すなわち、記録紙の一領域だけにマット調の記録ができ、マット調の部分だけを他の部分よりも特徴的に表現することができる。このため、ポスターや、パッケージ印刷等の特殊印刷の他の方法として採用することができる。
【0075】
また、表2及び表3の実施例4及び5に示すように、白色インク組成物の上にさらにカラーインク組成物による画像を記録することによって、部分的に光沢度を低減したマット調のカラー画像を形成することができる。これにより、特殊印刷のバリエーションを増やすことができ、さらに表現効果の高い記録物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢を有する被記録媒体の少なくとも一領域に、金属化合物または中空樹脂粒子を含有するインク組成物で画像を記録することによって、前記インク組成物が記録された領域の光沢を低減させることを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記被記録媒体の一領域には、カラーインク組成物によって予め下地画像が記録されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記被記録媒体の一領域の前記インク組成物による画像と、前記一領域以外の領域の画像と、が同時に記録されることを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記インク組成物が記録された一領域に、カラーインク組成物を重ねて記録することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の画像記録方法により得られることを特徴とする記録物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の画像記録方法により画像を記録する記録装置。

【公開番号】特開2010−115920(P2010−115920A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237990(P2009−237990)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】