説明

画像記録装置

【課題】ユーザが記録終了前に誤って記録媒体を抜き取ることを防止する。
【解決手段】給紙トレイ25から給紙ローラ対22によって搬送機構21へ送られてきた用紙70は、その一方の面に画像の記録が行われ、保持トレイ28に一時的に保持される。保持トレイ28から反転経路32に搬送された用紙70は、表裏が反転された状態で、搬送機構21へ送り出される。搬送機構21へ送り出された用紙70は、その他方の面に画像の記録が行われ、排紙トレイ24に排出される。このとき、保持トレイ28は、鉛直方向に沿って排紙トレイ24と重なり、排紙トレイ24の下側に配置されている。また、保持トレイ28は、排紙トレイ24の延在方向に沿って平行に近接して配置されている。この排紙トレイ24の下面24aは、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70の上面を覆う上面遮蔽部を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の両面に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、記録媒体の両面に画像を記録する画像記録装置が知られている。特許文献1に開示された画像記録装置では、記録媒体をその一方の面が画像の記録を行う記録部に面するようにしつつ一方向に搬送し、当該記録媒体の一方の面に画像を記録した後、記録媒体を排紙トレイ(排出部)と中間トレイ(保持部)を兼ねる共用トレイに一時的に収容する。そして、共用トレイに収容された記録媒体をローラ対によって搬送方向の逆方向に搬送するとともに、反転搬送路を通過させることによって記録媒体の表裏を反転させ、他方の面への画像の記録を行い、共用トレイに排紙する。
【0003】
【特許文献1】特開平7−144838号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の画像記録装置においては、排紙トレイと記録媒体の表裏を反転させるために一時的に収容する中間トレイとを兼ねているため、ユーザが記録媒体の表裏を反転させるために共用トレイに一時的に排出された記録媒体を、記録媒体への記録が終了して排出されたと誤って抜き取ってしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ユーザが記録終了前に誤って記録媒体を抜き取ることを防止する画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、筐体と、記録媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送されている記録媒体に対して画像を記録する記録部と、記録媒体の一方の面が前記記録部と対向するように記録媒体を前記搬送機構に送り出す供給部と、前記記録部によって記録された記録媒体が前記搬送機構から排出される排出部と、前記搬送機構によって搬送された記録媒体を一時的に保持する保持部と、前記保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部と、前記搬送機構によって搬送された記録媒体を、前記排出部及び前記保持部のいずれかに選択的に送り出す経路切換機構と、前記保持部に保持された記録媒体を、その他方の面が前記記録部と対向するように反転させて前記搬送機構に送り出す反転経路と、を備えている。前記搬送機構、前記記録部、前記経路切換機構及び前記反転経路は、前記筐体内に配置され、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部は、前記筐体から外部に突出し、且つ、鉛直方向に沿って重なるように配置され、前記保持部は、前記上面遮蔽部の下側に前記上面遮蔽部に沿って近接して配置されている。
【0007】
本発明の画像記録装置によると、保持部が上面遮蔽部の下側に上面遮蔽部に沿って近接して設けられているので、保持部に送り出された記録媒体は、上面遮蔽部の下側に上面遮蔽部に沿って近接して一時的に保持される。したがって、ユーザが誤って保持部に搬送された記録媒体を抜き取ることを防止することができる。また、記録媒体を一時的に保持する保持部と、保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部を、デッドスペースである排出部と鉛直方向に沿って重なる位置に設けているので、筐体内に別個に保持部と上面遮蔽部を設けるスペースを確保する必要がない。したがって、筐体を小型化することができる。
【0008】
また、前記保持部が、前記上面遮蔽部と平行に配置されていることが好ましい。これによると、保持部に一時的に保持された記録媒体と上面遮蔽部との間隔が狭く一定であるため、ユーザが誤って保持部に搬送された記録媒体を抜き取ることをさらに防止することができる。
【0009】
さらに、前記保持部と前記上面遮蔽部との間に、前記保持部に保持された記録媒体の側方を覆う側方遮蔽部が設けられていることが好ましい。これによると、保持部に一時的に保持された記録媒体を側方遮蔽部によって遮蔽しているため、ユーザが誤って保持部に搬送された記録媒体を抜き取ることを一層防止することができる。
【0010】
加えて、前記側方遮蔽部が、前記保持部と前記上面遮蔽部との間に亘って形成されていることが好ましい。これによると、側方遮蔽部が保持部と上面遮蔽部との間に亘って形成されているため、ユーザが誤って保持部に搬送された記録媒体を抜き取ることをより一層防止することができる。
【0011】
また、前記筐体に対して、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が着脱可能であることが好ましい。これによると、画像記録装置の不使用時や梱包時に、排出部、保持部及び上面遮蔽部を取り外すことで装置をコンパクト化することができる。
【0012】
また、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が、前記筐体内に収容可能であってもよい。これによると、画像記録装置の不使用時や梱包時に、筐体内に排出部、保持部及び上面遮蔽部を収容することで装置をコンパクト化することができる。
【0013】
さらに、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が、一体的に形成されていることが好ましい。これによると、排出部、保持部及び上面遮蔽部の着脱または収容作業が容易になる。
【0014】
加えて、前記排出部の下部が前記上面遮蔽部であることが好ましい。これによると、部品点数を減少させることができる。
【0015】
また、別の観点では、本発明の画像記録装置は、筐体と、記録媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送されている記録媒体に対して画像を記録する記録部と、記録媒体の一方の面が前記記録部と対向するように記録媒体を前記搬送機構に送り出す供給部と、前記記録部によって記録された記録媒体が前記搬送機構から排出される排出部と、前記搬送機構によって搬送された記録媒体を一時的に保持する保持部と、前記保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部と、前記保持部に保持された記録媒体の側方を覆う側方遮蔽部と、前記搬送機構によって搬送された記録媒体を、前記排出部及び前記保持部のいずれかに選択的に送り出す経路切換機構と、前記保持部に保持された記録媒体を、その他方の面が前記記録部と対向するように反転させて前記搬送機構に送り出す反転経路と、を備えている。前記搬送機構、前記記録部、前記経路切換機構及び前記反転経路は、前記筐体内に配置され、前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部は、前記筐体から外部に突出するように配置され、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部は、鉛直方向に沿って重なるように配置されている。
【0016】
本発明の画像記録装置によると、保持部に送り出された記録媒体は、上面遮蔽部及び側方遮蔽部によって覆われた状態で一時的に保持される。したがって、ユーザが誤って保持部に搬送された記録媒体を抜き取ることを防止することができる。また、記録媒体を一時的に保持する保持部と、保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部とを、デッドスペースである排出部と鉛直方向に沿って重なる位置に設けているので、筐体内に別個に保持部と上面遮蔽部を設けるスペースを確保する必要がない。したがって、筐体を小型化することができる。
【0017】
また、前記筐体に対して、前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が着脱可能であることが好ましい。これによると、画像記録装置の不使用時や梱包時に、排出部、保持部、上面遮蔽部及び側方遮蔽部を取り外すことで装置をコンパクト化することができる。
【0018】
また、前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が、前記筐体内に収容可能であってもよい。これによると、画像記録装置の不使用時や梱包時に、筐体内に排出部、保持部、上面遮蔽部及び側方遮蔽部を収容することで装置をコンパクト化することができる。
【0019】
さらに、前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が、一体的に形成されていることが好ましい。これによると、排出部、保持部、上面遮蔽部及び側方遮蔽部の着脱または収容作業が容易になる。
【0020】
加えて、前記排出部の下部が前記上面遮蔽部であることが好ましい。これによると、部品点数を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、記録用紙にインクを吐出して文字や画像などを記録するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、図1に描かれたインクジェットプリンタを用紙の排出側から見たときの概略平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1には、いずれもインク滴を吐出する複数のノズル(図示せず)が形成された吐出面2aを有しており、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)にそれぞれ対応する4つのインクジェットヘッド2(記録部)が備えられている。すなわち、インクジェットプリンタ1はカラーインクジェットプリンタである。
【0023】
インクジェットヘッド2の下方には、用紙70をインクジェットヘッド2の吐出面2aと対向させつつ一方向(図1の右方向:以降「搬送方向」と称する)に搬送する搬送機構21が配置されている。なお、4つのインクジェットヘッド2は、図1に示すように、搬送方向に沿って互いに隣接された状態で、枠状のフレーム3に固定されている。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。
【0024】
搬送機構21は、互いに平行な回転軸を有する2つのベルトローラ6、7と、両ベルトローラ6、7間に架け渡されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。搬送ベルト8は、エチレンプロピレンゴム(EDPM)などのゴム素材でできた基材の表面にシリコン処理を施すことによって形成されており、当該シリコン処理が施され粘着性を有する面が外周面、すなわち搬送面8aとなっている。
【0025】
ベルトローラ6、7のうち、搬送方向の上流側、すなわち図1の左側に位置するベルトローラ6の上方には、その回転軸がベルトローラ6の回転軸と平行となっているニップローラ4が、搬送ベルト8を挟んでベルトローラ6と対向するように配置されている。ニップローラ4は、搬送機構21に送られてきた用紙70を搬送ベルト8との間で挟持し、粘着性を有する搬送面8aに対して押さえ付ける。押さえ付けられた用紙70は、搬送面8a上に保持されたまま搬送される。
【0026】
一方、搬送方向の下流側、すなわち図1の右側に位置するベルトローラ7は、駆動モータ17により、図1中時計回りに回転駆動される。ベルトローラ7の上方には、その回転軸がベルトローラ7の回転軸と平行となっている拍車ローラ5が、搬送ベルト8を挟んでベルトローラ7と対向するように配置されている。搬送ベルト8の搬送面8a上を搬送されてきた用紙70は、拍車ローラ5と搬送ベルト8との間に挟持されることによって更に搬送力が付与され、搬送機構21から排出される。
【0027】
また、搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、搬送ベルト8のインクジェットヘッド2と対向する部分を内周面側から支持する略直方体形状のプラテン19が配置されている。さらに、搬送ベルト8によって囲まれた領域内におけるプラテン19と対向する位置には、プラテン19から遠ざかる方向(図1中下方向)に付勢された張力ローラ10が配置されている。これにより、搬送ベルト8に所定の大きさの張力が発生する。
【0028】
ここで、図1に示すように、インクジェットヘッド2及び搬送機構21は、筐体90内に収容されている。筐体90には、互いに対向する開口92、94が形成されており、搬送機構21の搬送方向に関する両側(図1の左右両側)の空間が、当該開口92、94を介してそれぞれ外部と連通している。
【0029】
開口92、94のうち、搬送方向の上流側に形成されている開口92には、給紙トレイ25が差し込まれている。給紙トレイ25は、内部に収容された複数の用紙70のうち、最も上方に位置する用紙70を開口92を介して筐体90内に送り出すピックアップローラ26を有している。また、開口92の近傍には、ピックアップローラ26によって送り出された用紙70を、搬送機構21に向かって送る給紙ローラ対22が配置されている。給紙ローラ対22によって搬送機構21へ送られてきた用紙70は、その一方の面がインクジェットヘッド2の吐出面2aに面するように搬送方向に沿って搬送される。つまり、給紙トレイ25及びピックアップローラ26は、用紙70の一方の面がインクジェットヘッド2の吐出面2aと対向するように用紙70を搬送機構21に送り出す供給部を構成している。
【0030】
一方、図1及び図2に示すように、搬送方向の下流側に形成されている開口94には、開口94を介して筐体90内から搬送機構21によって排出された用紙70を一時的に保持する保持トレイ28、及び、インクジェットヘッド2によって記録された用紙70が搬送機構21から排出される排紙トレイ24が差し込まれており、これらは筐体90から外部に突出している。
【0031】
保持トレイ28は、鉛直方向(図1の上下方向)に沿って排紙トレイ24と重なり、用紙70を載置可能であって、ユーザの指は入り込まないような間隙(例えば、1cm)をあけて排紙トレイ24の下側に配置されている。また、保持トレイ28は、排紙トレイ24の延在方向に沿って平行に近接して配置されている。これにより、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70をユーザが抜き取ろうとしても指が入り込まず、用紙70をつかめないため、ユーザが誤って用紙70を抜き取ることを防止することができる。つまり、排紙トレイ24の下面24aは、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70の上面を覆う上面遮蔽部を構成している。
【0032】
また、用紙70の搬送面内に関して保持トレイ28の搬送方向に直交する方向(図1の紙面に垂直な方向)の両側には、排紙トレイ24の下面まで鉛直方向に沿って突出した側壁(側方遮蔽部)30が形成されている。側壁30は、保持トレイ28に保持された用紙70の側方を覆う。
【0033】
ここで、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30は、一体的に形成されている。つまり、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30で中空の筒を形成している。図2に示すように、側壁30は、搬送方向に直交する方向(図2の左右方向)に沿った軸51を介して回転可能に筐体90に支持されている。排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30は、軸51を中心に回転することによって図1の実線で描かれた位置と図1の破線で描かれた位置とに亘って配置可能となっている。つまり、開口94を覆う扉体95を開いて、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30を図1の破線で描かれた位置に配置して扉体95を閉じることで、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30は筐体90内に収容可能となっている。これにより、インクジェットプリンタ1の不使用時や梱包時に、筐体90内に排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30を収容することでインクジェットプリンタ1をコンパクト化することができる。
【0034】
また、側壁30に固定された軸51は、筐体90から取り外し可能となっている。つまり、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30は、筐体90に対して着脱可能となっている。これにより、インクジェットプリンタ1の不使用時や梱包時に、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30を取り外すことでインクジェットプリンタ1をコンパクト化することができる。
【0035】
図1に戻って、筐体90内における搬送機構21の下流側であって、搬送機構21と開口94との間には、搬送機構21によって搬送方向に搬送された用紙70を排紙トレイ24または保持トレイ28に選択的に送り出す経路切換ガイド33が配置されている。経路切換ガイド33は、その途中部から折り曲げ可能となっている。経路切換ガイド33が折り曲げられず、搬送方向(水平方向)に沿って延在している場合(図1の実線で示す位置)には、搬送機構21によって搬送された用紙70は、排紙トレイ24に排出される。また、経路切換ガイド33が折り曲げられた場合(図1の破線で示す位置)には、搬送機構21によって搬送された用紙70は、保持トレイ28に排出される。
【0036】
また、筐体90内における搬送機構21の下流側であって、搬送機構21と開口94との間の経路切換ガイド33の下方には、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70の向きを下方に切り換える案内ガイド52が配置されている。案内ガイド52は、搬送方向に沿って延在したスライド軸53に沿って搬送方向にスライド可能となっている。案内ガイド52は、保持トレイ28に用紙70が保持された場合、スライド軸53に沿って搬送方向(図1の右方向)に移動し、図1の実線で示す位置で降下ガイド34とともに連続した経路を形成する。また、案内ガイド52は、保持トレイ28に用紙70が保持されていない場合や、経路切換ガイド33が折り曲げられている場合、スライド軸53に沿って搬送方向の逆方向に移動し、図1の破線で示す位置で停止する。
【0037】
筐体90内における案内ガイド52と保持トレイ28との間には、経路切換ガイド33が折り曲げられることで、搬送機構21によって搬送されてきた用紙70を挟持し、用紙70を保持トレイ28へ送り出す方向(図1の右方向)、及び、その反対の保持トレイ28に保持された用紙70を送り出す方向(図1の左方向)の2つの方向に送ることができるスイッチバックローラ対23が配置されている。
【0038】
スイッチバックローラ対23は、互いに回転軸が平行となるように対向して配置された駆動ローラ23a及び従動ローラ23bからなる。駆動ローラ23aは、正逆回転可能な駆動モータ29により、図1中時計回り及び反時計回りの2つの方向に回転駆動可能となっている。従動ローラ23bは、駆動ローラ23aに下方から圧接しており、駆動ローラ23aの回転駆動に伴って従動回転するようになっている。
【0039】
さらに、インクジェットプリンタ1には、案内ガイド52によって搬送方向が下方に切り換えられた用紙70を下方に案内する降下ガイド34と、降下ガイド34によって案内されてきた用紙70を搬送方向とは逆方向に搬送する再搬送機構35と、再搬送機構35によって搬送されてきた用紙70を挟持しつつ上方に搬送し、搬送機構21と給紙ローラ対22との間に送る複数の再給紙ローラ対36と、再給紙ローラ対36によって搬送される用紙70を案内する上昇ガイド37とを備えている。なお、再搬送機構35は、用紙70の幅方向の一方側が逆搬送方向に沿って延びる基準面(図示せず)と当接するように、用紙70をその幅方向一方側に寄せる斜行ローラ(図示せず)を備えており、いわゆるサイドレジ送りによって用紙70を搬送する。
【0040】
つまり、インクジェットプリンタ1には、搬送機構21の下方において、搬送機構21とスイッチバックローラ対23との間から、搬送機構21と給紙ローラ対22との間まで延びる反転経路32が形成される。かかる反転経路32により、スイッチバックローラ対23によって搬送方向の逆方向に送られてきた用紙70は、表裏が反転された状態、すなわち給紙ローラ対22によって送り出された際に上方を向いていた一方の面とは反対の他方の面が上方を向いた状態で、搬送機構21へと送り出される。
【0041】
上述のような構成において、給紙トレイ25から給紙ローラ対22によって搬送機構21へ送られてきた用紙70は、その一方の面がインクジェットヘッド2の吐出面2aに面するように搬送方向に沿って搬送される。すると、用紙70の一方の面に画像の記録が行われる。用紙70の片面のみに画像の記録を行う場合には、経路切換ガイド33を折り曲げず、搬送方向(水平方向)に沿って延在させて(図1の実線で示す位置)、搬送機構21によって搬送された用紙70を排紙トレイ24に排出する。
【0042】
また、両面に画像の記録を行う場合には、経路切換ガイド33を折り曲げて(図1の破線で示す位置)、搬送機構21によって搬送された用紙70を、スイッチバックローラ対23を正回転させて保持トレイ28に一時的に保持する。このとき、用紙70の後端は、スイッチバックローラ対23に挟まれた状態にしておく。そして、案内ガイド52を図1の実線で示す位置に移動した後、スイッチバックローラ対23を逆回転させることで、用紙70を反転経路32に搬送する。反転経路32により搬送方向の逆方向に送られてきた用紙70は、表裏が反転された状態、すなわち給紙ローラ対22によって送り出された際に上方を向いていた一方の面とは反対の他方の面が上方を向いた状態で、搬送機構21へと送り出される。搬送機構21へ送られてきた用紙70は、その他方の面がインクジェットヘッド2の吐出面2aに面するように搬送方向に沿って搬送され、用紙70の他方の面に画像の記録が行われる。このようにして、用紙70の両面に画像の記録が行われる。
【0043】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、保持トレイ28をデッドスペースである排紙トレイ24と鉛直方向に沿って重なる位置に設けているので、筐体90内に別個に保持トレイ28を設けるスペースを確保する必要がない。したがって、筐体90を小型化することができる。このとき、排紙トレイ24の下面24aを保持トレイ28に保持された用紙70の上面を覆う上壁として兼用していることで、別個に上壁が必要なく、部品点数を減少させることができる。また、用紙70は、排紙トレイ24及び側壁30によって覆われた状態で一時的に保持トレイ28に保持される。したがって、ユーザが誤って保持トレイ28に搬送された用紙70を抜き取ることを防止することができる。
【0044】
また、保持トレイ28が、排紙トレイ24と平行に配置されていることで、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70と排紙トレイ24との間隔が狭く一定であるため、ユーザが誤って保持トレイ28に搬送された用紙70を抜き取ることをさらに防止することができる。
【0045】
さらに、側壁30が、保持トレイ28と排紙トレイ24との間に亘って形成されていることで、ユーザが誤って保持トレイ28に搬送された用紙70を抜き取ることをより一層防止することができる。
【0046】
このとき、排紙トレイ24、保持トレイ28及び側壁30が、一体的に形成されていることで、排紙トレイ24及び保持トレイ28の着脱または収容作業が容易になる。
【0047】
次に、上述した本実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。但し、上述した本実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0048】
上述した実施形態においては、排紙トレイ24の下面24aを保持トレイ28に保持された用紙70の上面を覆う上壁として兼用していたが、図3に示すように、保持トレイ128に保持された用紙70の上面を覆う上壁124を、鉛直方向(図3の上下方向)に沿って保持トレイ128と重なり、保持トレイ128の上側に、ユーザの指が入り込まないような間隙をあけて、保持トレイ128の延在方向に沿って平行に近接して配置してもよい。このように、排紙トレイ24と別個に上壁124を設けることで、保持トレイ128が排紙トレイ24の下側に限らず、排紙トレイ24の上方など任意のデッドスペースに配置可能となる。また、このように、上壁124を鉛直方向(図3の上下方向)に沿って保持トレイ128と重なり、保持トレイ128の上側にユーザの指が入り込まないような間隙をあけて、保持トレイ128の延在方向に沿って近接して配置していれば、側壁を設けなくてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態においては、保持トレイ28と保持トレイ28に保持された用紙70の上面を覆う上壁を構成する下面24aを有する排紙トレイ24とを近接して配置していたが、図4に示すように、保持トレイ28に保持された用紙70の側方を覆う側壁129が形成されていれば、保持トレイ28と排紙トレイ24とを近接して配置しなくてもよい。
【0050】
さらに、上述した実施形態においては、側壁30は、保持トレイ28から排紙トレイ24に亘って形成されていたが、保持トレイ28もしくは排紙トレイ24から突出して設けられているだけでもよい。
【0051】
さらに、保持トレイ28は、壁に限らず、用紙70を載置可能な面を形成できればワイヤなどにより形成されていてもよい。また、側壁30は、壁に限らず、ユーザの指が入り込まないような網目状であってもよい。
【0052】
また、上述した実施形態においては、反転経路32を筐体90内における搬送機構21の下方に配置していたが、反転経路は筐体90内におけるいかなる位置に配置されてもよい。例えば、反転経路は、インクジェットヘッド2よりも搬送方向上流側のベルトローラ6の上方のデッドスペースに設けられてもよい。このとき、保持トレイ28に一時的に保持された用紙70は、ベルトローラ7を逆方向に回転させて搬送ベルト8を搬送方向とは逆方向に走行させることで、搬送方向とは逆方向に走行して反転経路に送り出されて、反転して再度搬送機構21に送り出される。
【0053】
さらに、給紙トレイ25は、筐体90内の搬送機構21の下方など、筐体90内外に限らず、いかなる位置に配置されてもよい。
【0054】
加えて、上述した実施形態においては、ピックアップローラ26から送り出された用紙70に1枚ずつ両面記録を行っていたが、スイッチバックローラ対23ではなく、正逆回転可能なピックアップローラを用いて、複数の用紙70の一方の面に連続して記録を行い、保持トレイに積層しておいて、まとめて他方の面に記録を行ってもよい。
【0055】
また、上述の実施形態のようなインクジェットプリンタに限定されず、レーザなどによって用紙70に画像を記録する記録ヘッドを有した画像記録装置など、様々な画像記録装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略側断面図である。
【図2】図1に描かれたインクジェットプリンタを用紙の排出側から見たときの概略平面図である。
【図3】保持トレイが排紙トレイの上方に位置するときの変形例を示す図である。
【図4】保持トレイが排紙トレイから離れているときの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 インクジェットプリンタ
2 インクジェットヘッド
21 搬送機構
24 排紙トレイ
25 給紙トレイ
28 保持トレイ
30 側壁
32 反転経路
33 経路切換ガイド
90 筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されている記録媒体に対して画像を記録する記録部と、
記録媒体の一方の面が前記記録部と対向するように記録媒体を前記搬送機構に送り出す供給部と、
前記記録部によって記録された記録媒体が前記搬送機構から排出される排出部と、
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を一時的に保持する保持部と、
前記保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部と、
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を、前記排出部及び前記保持部のいずれかに選択的に送り出す経路切換機構と、
前記保持部に保持された記録媒体を、その他方の面が前記記録部と対向するように反転させて前記搬送機構に送り出す反転経路と、を備えており、
前記搬送機構、前記記録部、前記経路切換機構及び前記反転経路は、前記筐体内に配置され、
前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部は、前記筐体から外部に突出し、且つ、鉛直方向に沿って重なるように配置され、
前記保持部は、前記上面遮蔽部の下側に前記上面遮蔽部に沿って近接して配置されていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記保持部が、前記上面遮蔽部と平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記保持部と前記上面遮蔽部との間に、前記保持部に保持された記録媒体の側方を覆う側方遮蔽部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記側方遮蔽部が、前記保持部と前記上面遮蔽部との間に亘って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記筐体に対して、前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が着脱可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が、前記筐体内に収容可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部が、一体的に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記排出部の下部が前記上面遮蔽部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
筐体と、
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されている記録媒体に対して画像を記録する記録部と、
記録媒体の一方の面が前記記録部と対向するように記録媒体を前記搬送機構に送り出す供給部と、
前記記録部によって記録された記録媒体が前記搬送機構から排出される排出部と、
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を一時的に保持する保持部と、
前記保持部に保持された記録媒体の上面を覆う上面遮蔽部と、
前記保持部に保持された記録媒体の側方を覆う側方遮蔽部と、
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を、前記排出部及び前記保持部のいずれかに選択的に送り出す経路切換機構と、
前記保持部に保持された記録媒体を、その他方の面が前記記録部と対向するように反転させて前記搬送機構に送り出す反転経路と、を備えており、
前記搬送機構、前記記録部、前記経路切換機構及び前記反転経路は、前記筐体内に配置され、
前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部は、前記筐体から外部に突出するように配置され、
前記排出部、前記保持部及び前記上面遮蔽部は、鉛直方向に沿って重なるように配置されていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項10】
前記筐体に対して、前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が着脱可能であることを特徴とする請求項9に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が、前記筐体内に収容可能であることを特徴とする請求項9または10に記載の画像記録装置。
【請求項12】
前記排出部、前記保持部、前記上面遮蔽部及び前記側方遮蔽部が、一体的に形成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の画像記録装置。
【請求項13】
前記排出部の下部が前記上面遮蔽部であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154369(P2009−154369A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334267(P2007−334267)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】