説明

画像診断支援装置

【課題】患者情報やフィルムに追記された情報をフィルム上の記憶媒体に記憶させることでフィルム上にはそれらの情報を写し込まないようにするが、読影や診察の際にはそれらの情報にもアクセスできるようにすることで、効率的な読影や診察を行うことを妨げることなく十分な患者情報の保護を図ることを可能とする画像診断支援装置を提供する。
【解決手段】診断対象となる現像された画像と現像された画像の情報と患者情報が記憶された記憶媒体C備えるフィルムFを前面に保持するとともに、フィルムFの背面から照明を当てる照明手段1lと、照明手段1lの前面に設置され、記憶媒体Cに記憶された画像情報と患者情報を表示するとともに、透過して見える照明手段1lの前面に保持されたフィルムFの画像に合わせて画像を書き込むことができるパネル13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに印刷された画像に基づいて患者を診断する際に用いられる画像診断支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりX線診断装置やCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置、超音波診断装置、磁気共鳴診断装置、及びガンマカメラやPET(Positron-Emission Tomography:ポジトロン放出断層撮影)等の医用診断装置によって取得された画像情報は、イメージャを用いてフィルムに印刷され、当該フィルムに印刷された画像に基づいて読影が行われ、患者を診断することが行われてきた。
【0003】
例えば、X線診断装置によって胸の写真が撮影された場合、イメージャによって透過式のフィルムに印刷される。読影医や診察医、検査技師等(以下、適宜「医師等」という。)はフィルムの後ろから照明を当てる器具、すなわちシャウカステンにこのフィルムをかざして読影、或いは診察を行う。フィルムにはその余白を利用して診療情報の記入、関心領域の指示等、手書きの情報が追加して記入されることもある。
【0004】
また、同一の患者についての過去の画像を参照することも行われるが、この参照をより効率的に行うことができる医用画像診断支援装置についての発明が以下の特許文献1に提示されている。すなわち、この発明によれば、診断すべきフィルムを照明器に装着するだけで、当該患者の過去画像がフィルムの隣に、照明器の照明をバックライトとした表示パネルに表示されるので、参照すべき過去画像の検索作業を効率化できると共に、フィルムと過去画像との間の視線移動が少なくまたフィルムと過去画像とが同じ明るさで表示されるので読影医の疲労を軽減することができるとされている。
【特許文献1】特開平7−275209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1において提示された医用画像診断支援装置において使用されるフィルムには、撮影された患部を保つ患者の氏名や患者ID等の個人情報(以下、「患者情報」という。)が患部とともに印刷されている。このフィルムをシャウカステンにかざすと患部はもちろんのこと、患者情報までもが第三者に明瞭に見えてしまう。また、シャウカステンがなくとも光源にフィルムをかざすことによって印刷された患部及び患者情報を読み取ることができる。
【0006】
近年の個人情報保護法の成立やアメリカにおけるHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の存在に鑑みると、病院内においても患者情報の保護には十分注意しなければならず、その対象は、X線フィルム等にまで及ぶ。上述のように、フィルムにはそのフィルムがどの患者の患部を現像したものであるかを識別するために患者情報が印刷されることも多く、このようなフィルムが例えば、シャウカステンにかざした状態のまま置かれたり、置き忘れられたり紛失されると個人情報が流出することも考えられる。
【0007】
また、フィルムに追記された内容を含めて現像されてフィルム上に表わされた内容は、時間が経つにつれて汚れ等によって判読性が低くなり、診断能の低下につながる可能性もある。
【0008】
一方で、個人情報の流出防止を考えて患者情報をフィルムに写し込まないとすると、今度はそのフィルムに現像された患部を有する患者の特定が困難となり、患者の取り違えを誘発する等の深刻な問題が生ずることにもなりかねない。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、患者情報やフィルムに追記された情報をフィルム上の記憶媒体に記憶させることでフィルム上にはそれらの情報を写し込まないようにするが、読影や診察の際にはそれらの情報にもアクセスできるようにすることで、効率的な読影や診察を行うことを妨げることなく十分な患者情報の保護を図ることを可能とする画像診断支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る特徴は、画像診断支援装置において、診断対象となる現像された画像と現像された画像の情報と患者情報が記憶された記憶媒体を備えるフィルムを前面に保持するとともに、フィルムの背面から照明を当てる照明手段と、照明手段の前面に設置され、記憶媒体に記憶された画像情報と患者情報を表示するとともに、透過して見える照明手段の前面に保持されたフィルムの画像に合わせて画像を書き込むことができるパネルとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、患者情報やフィルムに追記された情報をフィルム上の記憶媒体に記憶させることでフィルム上にはそれらの情報を写し込まないようにするが、読影や診察の際にはそれらの情報にもアクセスできるようにすることで、効率的な読影や診察を行うことを妨げることなく十分な患者情報の保護を図ることを可能とする画像診断支援装置を提供することができる。また、記憶媒体に画像情報が記憶されていることから、フィルムを再印刷する場合であっても容易に印刷することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、画像診断支援装置(シャウカステン)1がネットワーク2に接続されて病院内において画像診断システムを構成していることを示す説明図である。この画像診断システムにおいては、画像診断支援装置(シャウカステン)1以外に、患者の患部を撮影するX線診断装置やCT装置を示す医用診断装置3と、撮影された画像情報から透過性のフィルム上に画像を印刷するイメージャ4と、この画像情報を記憶しておく画像サーバ5がネットワーク2に接続されている。
【0014】
画像診断支援装置1は、本発明の実施の形態においては、いわゆるシャウカステンのことである(以下、この画像診断支援装置1のことを「シャウカステン1」と表わす。)。シャウカステン1は、フィルムを発光面である前面に保持するとともに、フィルムの背面から照明を当ててフィルム上に現像された患部の画像を映し出すための照明器である。従って、ここでいうフィルムは、透過性のフィルムである。
【0015】
ネットワーク2は、病院内に張り巡らされた通信ネットワークのことであり、例えば、LAN(Local Area Network)である。さらに、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等の特定の通信規格をもつネットワークであっても良い。
【0016】
なお、図1においてはシャウカステン1、イメージャ4及び画像サーバ5はそれぞれ1台ずつ、医用診断装置3は3台、ネットワーク2に接続されているが、その接続される台数は単数、複数のいずれであってもかまわない。
【0017】
図2は、シャウカステン1の全体を示す斜視図である。シャウカステン1は、その筐体10の内部に図2では図示しない光源を有し、透過性のある素材で作られた発光面11を内部から照らすことで、この発光面11が発光する。筐体10の上部には、左右にわたって保持部12が設けられており、この保持部12にフィルムFが挟み込まれることにより、フィルムF上に現像された画像Gは背後にある発光面11からの光によって鮮明に映し出される。フィルムFが挟み込まれる位置は保持部12のいずれの位置であっても良いが、後述するパネル13との位置合わせを行うことからすれば、発光面11の特定の位置に置かれるように保持部12に挟み込まれることが望ましい。なお、図2では、移動架台型のシャウカステンの図を示しているが、本発明は、壁掛型等、その形状を問わずどのようなシャウカステンについても適用させることができる。
【0018】
本発明の実施の形態において用いられるフィルムFは、上述のように透過性のフィルムであり、図3に示すように、画像GがそのフィルムF上の中央部に印刷される。このフィルムFに背面から光が当たることで、その光がフィルムFを透過して画像Gを映し出す。また、このフィルムFに撮影された患部を有する患者情報は、図3に示す記憶媒体Cに記憶される。このように患者情報をフィルムF上に印刷するのではなく、記憶媒体C内に患者情報を記憶させることにより、フィルムFを見た何人にも個人情報が明らかになることを防いでいる。記憶媒体C内には、この患者情報以外に、フィルムFに現像された画像Gの情報及び後述するパネル13に記載された追加の画像の情報も記憶されている。記憶媒体Cは、例えば、記憶素子とアンテナから構成されるICチップ等を用いることができる。また、記憶媒体Cは、フィルムF上において患部の画像Gが印刷される領域以外の領域であればいずれに設けられていてもよい。
【0019】
さらに、フィルムFの各辺の中央には、例えば「+」の形をしたキャリブレーションが設けられている。この位置に設けられたのは、画像Gの情報に一番影響の少ない位置だからである。パネル13とフィルムFとの間の位置合わせは、後述するようにこのキャリブレーションを用いて行われる。
【0020】
図2に示すシャウカステン1の発光面11の前面にはパネル13が設けられている。図2では、パネル13を点線で表わしており、フィルムFの大きさに合わせて発光面11の一部を覆うような位置に設けられている。但し、パネル13の大きさは任意に定めることができ、例えば、発光面11の前面の全領域を覆うようにされていても良い。
【0021】
このパネル13は、いわゆるタッチパネルであり、このパネル13に接触した部分のX座標及びY座標を検出することで接触位置の検出を行う。また、パネル13は透明であり、医師等や患者(以下、適宜「観察者」という。)がパネル13を通して保持部12に挟み込まれたフィルムFの画像Gを見ることができる。このため、パネル13を介してフィルムFを見ながらパネル13上に例えば、文字や矢印等を書き込むことができるようにされている。
【0022】
また、フィルムFに設けられた記憶媒体Cの取り付け位置に合わせて、この記憶媒体C内に記憶されている患者情報等を読み取り、また、パネル13上で記載した画像情報を記憶媒体Cに記憶させるためのメモリリーダライタ14が設けられている。このメモリリーダライタ14は記憶媒体Cとの間で非接触で情報のやり取りを行う。また、このメモリリーダライタ14は、フィルムFの記憶媒体Cとの間で情報のやり取りを行うことができれば、パネル13のいずれの位置に設けられていても良い。
【0023】
パネル13、フィルムFとシャウカステン1の筐体10との位置関係は、図4に示す通りである。図4は、図2に示すシャウカステン1を右側面から見た図である。すなわち、フィルムFは保持部12に挟まれることにより発光面11に接触するような位置で固定される。そして、このフィルムFの前面にパネル13が位置し、記憶媒体Cとメモリリーダライタ14が対向する。従って、観察者は透明なパネル13を通して発光面11からの光によって映し出されたフィルムF上の画像Gを見ることになる。
【0024】
本発明の実施の形態において用いられるパネル13は、シャウカステン1の上部から発光面11の一部を覆うようにして発光面11の前面に位置するようにされている。しかし、発光面11の前面にパネル13が位置するようにされていれば、このパネル13はシャウカステン1の下部からせり上がり、或いは横方向からスライドするようにされていても良く、その設置の方法は問わない。また、パネル13とフィルムFとの間隔は任意に設定することができる。
【0025】
図5に示すシャウカステン1は、CPU(Central Processing Unit)1aと、ROM(Read Only Memory)1bと、RAM(Random Access Memory)1c及び入出力インターフェイス1dがバス1eを介して接続されている。入出力インターフェイス1dには、入力手段1fと、表示手段1gと、通信制御手段1hと、記憶手段1iと、権限判定手段1jと、駆動部制御手段1kと、照明手段1lとが接続されている。駆動部制御手段1kは、例えばパネル13を発光面11の前面に配置するために設けられている駆動部の駆動を制御する。また、照明手段1lは図2で示す発光面11の光源となる。さらに入出力インターフェイス1dを介してパネル13と、メモリリーダライタ14も接続されている。
【0026】
CPU1aは、入力手段1fからの入力信号に基づいてROM1bからシャウカステン1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶手段1iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。さらにCPU1aは、入力手段1fや入出力インターフェイス1dを介して、図5においては図示していない外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行ったり、RAM1cや記憶手段1i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM1cにロードするとともに、RAM1cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、パネル13とフィルムFとの位置合わせを行ったりデータの計算または加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0027】
入力手段1fは、シャウカステン1を使用する医師等が各種の操作を入力するキー、スイッチ等の入力デバイスによって構成されており、医師等の操作に基づいて入力信号を作成しバス1eを介してCPU1aに送信される。本発明の実施の形態においては特にキーボード等の入力手段は設けられていないが、必要に応じて適宜シャウカステン1に接続することができる。表示手段1gは、例えば液晶ディスプレイであり、例えばメモリリーダライタ14からバス1eを介して出力信号を受信し、メモリリーダライタ14がフィルムFの記憶媒体Cから読み出した患者情報を表示する手段である。なお、本発明の実施の形態においては、シャウカステン1に表示手段1gを別途設けているが、この表示手段1gの機能をパネル13に持たせて、患者情報をパネル13に表示させることも可能である。
【0028】
通信制御手段1hは、LANカードやモデム等の手段であり、シャウカステン1をネットワーク2やインターネット等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御手段1hを介してネットワーク2等と送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
【0029】
記憶手段1iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU1aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。権限判定手段1jは、入力手段1fから入力された医師等のIDの信号を受信して、フィルムFを観察する医師等がシャウカステン1の保持部12に挟み込まれたフィルムFに関する患者情報を見ることができる権限を有しているか否かを判断する。
【0030】
本発明の実施の形態におけるシャウカステン1の記憶手段1iには、例えば、パネル13とフィルムFとの位置を合わせるための処理やパネル13に書き込まれた画像情報がフィルムFのどの位置に該当するのかの位置合わせ処理を行うためプログラムやデータが記憶される。また、位置合わせプログラム等がシャウカステン1のCPU1aに読み込まれ実行されることにより、位置合わせ手段30がシャウカステン1に実装される。
【0031】
位置合わせ手段30は、図6に示すように、受信手段31と、読み取り手段32と、手書位置情報判定手段33と、位置更正手段34と、送信手段35とから構成される。これら各手段の働きについては、図7に示すシャウカステン1を使用しての読影の流れを示したフローチャートを用いつつ以下に説明する。なお、前提としてフィルムFには次のようにして画像Gが印刷される。すなわち、医用診断装置3によって撮影された患者の画像情報は、ネットワーク2を介してイメージャ4に送られる。イメージャ4では、送信されてきた画像情報から画像を再構成し、フィルムFに印刷する。
【0032】
イメージャ4によって印刷されたフィルムFをシャウカステン1を使用して見る場合には、まず、医師等によってフィルムFがシャウカステン1の保持部12に挟まれる必要がある。このフィルムFには、上述のようにその中央部に患部の画像Gが印刷され、この印刷領域にかからない領域に記憶媒体Cが設けられている。
【0033】
フィルムFが保持部12に挟まれると、パネル13がシャウカステン1の発光面11の前面へ移動する(ST1)とともに、フィルムFとパネル13との位置合わせが行われる(ST2)。パネル13上には、例えば、記憶媒体C内の患者情報等が表示されるとともに、フィルムF上の画像Gにおける関心領域について矢印や丸で囲む等、手書きの画像情報が追記されるが、パネル13上に追記された画像の位置とフィルムF上の画像Gの位置がずれると誤診を招くことになりかねない。一方で、通常、パネルとフィルムの大きさは違う。従って、パネルとフィルムとの間で座標等を用いて位置合わせをしておかなければフィルムF上の画像Gに対する追記された画像の位置がずれてしまうことになる。
【0034】
具体的に位置合わせの方法について一例を挙げると、パネル13が発光面11の前面に設置された後、まずパネル13の特定の位置が医師等によって押される。この特定の位置は、フィルムFに予め単数または複数設けられている、上述したキャリブレーションをパネル13を通して見た位置である。パネル13から入力されたこの特定の位置情報は受信手段31によって受信される。一方、フィルムFの記憶媒体Cには、当該フィルムFのキャリブレーションの位置情報が記憶されており、この情報がメモリリーダライタ14を介して同じく受信手段31に入力される。パネル13における特定の位置情報とフィルムFのキャリブレーションの位置情報は受信手段31から位置更正手段34へ送られる。この位置更正手段34において、フィルムFの位置を基準としてパネル13がどのような位置関係にあるかを把握し、その修正値を記憶しておく。この修正値は、横方向と縦方向とをそれぞれ表わす2つの値から構成され、複数の「+」マークを使用してキャリブレーションが実施された場合には、その平均値を修正値とする。このようにすることで、パネル13はとフィルムFとの位置関係が確定される。この位置関係が確定されると、記憶媒体Cに記憶されている矢印や手書きの情報は、この修正値に従ってその位置が修正されて表示される。
【0035】
パネル13とフィルムFとの位置合わせが終了すると、記憶媒体C内の患者情報を表示するにあたって、当該フィルムFを見る医師等が閲覧の権限を有しているかの判定を行う(ST3)。医師等は入力手段1fを用いて、例えば、自己のID等を入力し、その入力信号が権限判定手段1jに送信され、患者情報及び追記された画像情報を見ることができるか否かが判定される。
【0036】
なお、本発明の実施の形態においては、権限判定手段1jをシャウカステン1内に設けているが、シャウカステン1内に設けられていない場合には、通信制御手段1hを介して外部に設けられた権限判定手段において権限の有無が判定されるようにされても良い。
【0037】
権限がない場合は(ST4のN)、個人情報の中でも最も公開に適さない情報の一つである患者情報等を権限のない第三者に公開することはできない。この場合、フィルムFに印刷された患部の画像Gは見ることができるが、この患部を持つ患者を特定することはできないことから、読影或いは診察を行うことはできない。このようにすることで、患者情報等の個人情報が無用に第三者に開示されることを防ぐことができる。
【0038】
一方、医師等に権限があると判定された場合は(ST4のY)、メモリリーダライタ14がフィルムFの記憶媒体Cから患者情報等を取得し(ST5)、取得された患者情報等がパネル13に表示される(ST6)。
【0039】
パネル13には患者情報が表示されるが、このパネル13を通して発光面11からの光を受けてフィルムFに印刷された患部が見える。医師等はこの患部を見ながら読影、或いは診察を行い、関心領域に印を付けたり気づいた点等をメモする。つまり、フィルムFに直接書き込んでいるわけではなく、実際にはパネル13に書き込んでいることになるが、医師等はパネル13ごしにフィルムFを見ているので、あたかもフィルムFに直接書き込んでいるように見える。
【0040】
パネル13に追記された画像情報は、受信手段31を介して読み取り手段32で検出される(ST7)。この画像情報を検出する方法は、例えば、抵抗膜方式等、既に知られている技術を用いることができる。
【0041】
検出されたパネル13において追記された画像の位置情報は、手書位置情報特定手段33においてその位置が特定される(ST8)。そして、この追記された画像がフィルムFに印刷されている画像Gのどの位置に当たるのかを合わせて特定する(ST9)。すなわち、追記された画像の情報は、フィルムFに反映されることになるが、その際画像Gと追記の画像情報の位置がずれてしまうと誤診にもつながりかねない。そのため、位置更正手段34には、フィルムFとパネル13の位置関係に関する修正値が記憶されていることから、この修正値を基にパネル13上に追記された画像の実際のフィルムFの画像G上における位置を特定する。
【0042】
追記された画像の位置がフィルムFの画像G上において特定されると、このパネル13に追記された画像の情報を含む全ての画像情報が送信手段35を介してメモリリーダライタ14に送信され、さらにフィルムFの記憶媒体Cに記憶される(ST10)。
【0043】
そして、シャウカステン1を使用したフィルムFの観察を終了するか否かの判断がなされる(ST11)。この後も観察を重ねる場合には、パネル13上の画像はそのまま表示したままでさらに書き込まれた画像情報を読み取り手段32で検出し(ST7)、これまでの手順を繰り返す。
【0044】
なお、記憶媒体Cへは、元の画像Gの上に追記された画像を重ねて記憶するようにしても良い。また、元の画像Gとは別に、追記された画像ごとに記憶するようにし、今後このフィルムF上の画像Gを見る場合に追記された画像を順に画像G上に重ねて表示させるようにしても良い。さらに、記憶媒体C内の追記された画像を表示または非表示と選択的にパネル13に表示させるようにしても良い。この場合は、画像情報とともに記憶媒体Cに追記された画像のリストが記憶され、例えば、このリストの内容を表示手段1gに表示させることも可能である。
【0045】
一方、観察が終了とされる場合は(ST11のN)、シャウカステン1の電源がOFFされて観察が終了する。なお、パネル13を元の格納位置に戻すか否かは任意に設定することができる。
【0046】
また、観察の終了前に記憶媒体Cに記憶された画像情報を、例えば、画像転送指示手段(ボタン)を用いて画像サーバに転送して保存することも可能である。このように画像サーバに保存するようにすれば、記憶媒体Cの記憶容量を気にすることなく患者の全ての画像情報を一括して管理することができる。さらに、イメージャ4に対して追記された画像情報も含めて、再度フィルムを印刷するように指示を出す、例えば、画像印刷指示手段(ボタン)を設けることも可能である。このようにすれば、常に追記された画像情報が印刷された最新のフィルムを保管しておくことができる。
【0047】
このように患者情報やフィルムに追記された情報をフィルム上の記憶媒体に記憶させることでフィルム上にはそれらの情報を直接追記したり写し込まないようにするが、読影や診察の際にはそれらの情報にもアクセスできるようにすることで、効率的な読影や診察を行うことを妨げることなく十分な患者情報の保護を図ることを可能とする画像診断支援装置を提供することができる。
【0048】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、本発明の実施の形態において用いられるフィルムFには記憶媒体Cが設けられているが、この記憶媒体Cが持つアンテナを利用して、棚に並べられたフィルムFの検索を行うようにしても良い。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態における画像診断装置(シャウカステン)のネットワークへの接続を示すネットワーク構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像診断装置(シャウカステン)の全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるフィルムを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態における画像診断装置(シャウカステン)を側面から見た側面図である。
【図5】本発明の実施の形態における画像診断装置(シャウカステン)の内部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態における位置合わせ手段の内部構成を示すブロック図である。
【図7】画像診断支援装置(シャウカステン)を使用しての読影手順の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 画像診断支援装置(シャウカステン)
10 筐体
13 パネル
14 メモリリーダライタ
C 記憶媒体
F フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象となる現像された画像と前記現像された画像の情報と患者情報が記憶された記憶媒体を備えるフィルムを前面に保持するとともに、前記フィルムの背面から照明を当てる照明手段と、
前記照明手段の前面に設置され、前記記憶媒体に記憶された前記画像情報と前記患者情報を表示するとともに、透過して見える前記照明手段の前面に保持された前記フィルムの画像に合わせて画像を書き込むことができるパネルと、
を備えることを特徴とする画像診断支援装置。
【請求項2】
前記パネルには、前記フィルムの前記記憶媒体に記憶されている情報を読み出し、前記パネルに書き込まれた画像の情報を前記記憶媒体に書き込むメモリリーダライタを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記記憶媒体と前記メモリリーダライタは非接触で情報の読み出し、書き込みを行うことができるようにされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
前記パネルは、少なくとも1枚の前記フィルムを覆うことのできる大きさを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像診断支援装置。
【請求項5】
前記フィルムの観察者が前記記憶媒体に記憶されている情報を見るための権限を有する者であるかを判定するための権限判定手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像診断支援装置。
【請求項6】
前記記憶媒体に記憶された前記パネルに書き込まれた画像の情報を前記フィルムの画像情報を格納する画像サーバへ転送する画像転送指示手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像診断支援装置。
【請求項7】
前記記憶媒体に記憶された前記パネルに書き込まれた画像の情報を含めて、改めてイメージャに対してフィルムに印刷する指示を出す画像印刷指示手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像診断支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−54806(P2008−54806A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233488(P2006−233488)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】