説明

画像評価装置および画像評価方法

【課題】 評価すべきグラデーション画像がカラー画像からなる場合であっても、客観的評価を正しく行うことができ、しかもその評価結果が人間の主観的判断と十分に対応するようにする。
【解決手段】 グラデーション画像から画像データを取得する画像入力手段1と、取得した画像データを色彩情報に変換する色彩情報変換手段2と、変換した色彩情報を人間の視覚特性に応じて定められた識別閾に基づいて分割する識別閾領域分割手段3と、分割後の各部分領域における画像特徴量を求める画像特徴量算出手段4と、求めた画像特徴量に基づいて前記グラデーション画像についての評価値を算出するグラデーション評価手段5とを備えた画像評価装置により、従来よりも信頼性が高く、より人間の感覚に近い評価結果が得られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラデーション画像の客観的評価を行う画像評価装置および画像評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、プリンタ、複写機等の画像形成装置において、階調再現性は、グラデーション画像の出力および解析を通じて評価されることが多い。ここで、グラデーション画像とは、明度、彩度、色相といった色彩情報のうちの少なくとも一つが一次元方向に単調に変化しているパターン画像のことをいう。本来、このようなグラデーション画像を理想的なプリンタに出力させた場合、その出力結果は、階調が滑らか(直線的または曲線的)に再現されるはずである。ところが、実際のプリンタでは、階調の飛びや筋状のムラ等が発生するといったように、グラデーション部分が乱れた状態の画像が出力されることもある。この乱れは、自然画(通常の使用状態における出力画像)を出力したときにも同様に発生し、プリンタの性能を著しく低下させる要因となってしまう。そのため、グラデーション画像の乱れを定量的に評価することは、画像形成装置の描画性能を評価する上で非常に重要な項目とされている。これは、CRT(Cathode Ray Tube)等の視覚表示端末装置においても全く同様である。
【0003】従来、グラデーション画像を解析、評価する手法としては、例えば人間による視比較評価が広く知られている。この手法は、いわゆる主観的評価と呼ばれるもので、グラデーション画像の良否や損傷の度合い等を、人間の視覚を通して主観的な判断によって評価するものである。ただし、このような主観的評価には、評価者により評価結果がばらついてしまったり、人為的な手間が必要になってしまう、といった欠点がある。
【0004】これらの欠点を補うために、近年では、画像形成装置等で出力されたグラデーション画像に対し、人間の主観的な判断に依存しない、いわゆる客観的評価を行うことが提案されている。その一例として、例えば特開平11−25274号公報には、出力された画像の明度情報あるいは濃度情報のうち少なくとも一つの光学情報を用い、隣接する階調レベル間の光学情報の差を算出することで、人間の視覚評価によらずに、出力された画像の階調特性を客観的に評価する画像評価方法が開示されている。ただし、客観的評価を行う場合であっても、その評価結果は、人間による主観的判断と対応の取れたものでなければならない。そのため、上述した特開平11−25274号公報に開示された画像評価方法においては、人間が知覚する階調特性(階調飛び、階調つぶれ)の大きさを定量化することで、人間の視覚特性に合った評価を実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来技術による客観的評価では、最近普及が著しいカラー画像について正しく評価することができないおそれがある。例えば、特開平11−25274号公報に開示された画像評価方法では、明度情報あるいは濃度情報のうち少なくとも一つの光学情報を用いて評価を行っている。ところが、カラー画像は、明度(濃度)、彩度および色相といった色の三属性で表現されるものであり、その色の階調(色調も含む)の変化には明度(濃度)の変化だけではなく、彩度および色相の変化も重要な因子であることは周知の通りである。そのため、明度情報と濃度情報とのいずれかしか用いておらず、色の三属性を構成する彩度および色相に関する情報が欠落していると、特にカラー画像の色調変化には十分な対応がとれない。具体例を挙げると、例えば「青色」から「赤色」への変化が表現されたグラデーション画像については、彩度および色相に関する情報が欠落していると、これを正しく評価することができないのは明らかである。また、グラデーション画像の客観的評価は人間による主観的判断との対応が不可欠であるが、それゆえカラー画像については、濃淡の階調特性のみならず色調特性をも加味して評価すべきである。すなわち、明度、彩度および色相の三属性は人間の視覚特性により適合しているため、カラー画像の場合は、これら三属性を利用して始めて、十分に主観的判断との対応が取れたグラデーション評価が可能になるといえる。
【0006】そこで、本発明は、評価すべきグラデーション画像がカラー画像により構成されている場合であっても、これに対する客観的評価を正しく行うことができ、しかもその評価結果が人間の主観的判断と十分に対応している画像評価装置および画像評価方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために案出された画像評価装置で、グラデーション画像から画像データを取得する画像入力手段と、前記画像入力手段が取得した画像データを色彩情報に変換する色彩情報変換手段と、前記色彩情報変換手段が変換した色彩情報を人間の視覚特性に応じて定められた識別閾に基づいて分割する識別閾領域分割手段と、前記識別閾領域分割手段による分割後の各部分領域における画像特徴量を求める画像特徴量算出手段と、前記画像特徴量算出手段が求めた画像特徴量に基づいて前記グラデーション画像についての評価値を算出するグラデーション評価手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】また、本発明は、上記目的を達成するために案出された画像評価方法で、グラデーション画像に対する客観的評価を行うために、前記グラデーション画像から画像データを取得し、前記画像データを取得するとこれを色彩情報に変換し、当該変換後の色彩情報を人間の視覚特性に応じて定められた識別閾に基づいて分割し、当該分割後の各部分領域における画像特徴量を求め、前記画像特徴量に基づいて前記グラデーション画像についての評価値を算出することを特徴とする。
【0009】上記構成の画像評価装置および上記手順の画像評価方法では、グラデーション画像に対する客観的評価を行うのにあたって、先ず、そのグラデーション画像から画像データを取得し、これを色彩情報に変換する。色彩情報とは、例えば彩度または色相といった色の属性に関する情報を含んだものをいう。そして、この色彩情報に対し、これを所定の識別閾に基づいて分割する。これにより、色彩情報は、人間が識別し得る階調または色調の差に応じて複数の部分領域に分割されることになる。色彩情報を複数の部分領域に分割すると、その後、これら各部分領域について、それぞれの画像特徴量を求める。画像特徴量とは、例えば各部分領域における色の属性に関する値といったように、各部分領域毎の固有量のことをいう。したがって、各部分領域の画像特徴量を基にすれば、色の属性に関する情報を加味しつつ、グラデーション画像についての評価値を算出し得るようになる。しかも、各部分領域は人間が識別し得る階調または色調の差に応じて分割されたものであるから、各部分領域毎の固有量である画像特徴量を基にすれば、評価値を算出結果も人間の視覚特性が反映されたものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明に係る画像評価装置および画像評価方法について説明する。図1は、本発明に係る画像評価装置の実施形態の一例の概略構成を示すブロック図である。
【0011】本実施形態の画像評価装置は、プリンタや複写機等の画像形成装置が用紙上に出力したグラデーション画像またはCRT等の視覚表示端末装置が画面上に出力したグラデーション画像の解析を行い、その解析結果からグラデーション画像に対する評価を行い、これを通じて画像形成装置または視覚表示端末装置が有する描画性能を評価するためのものである。そのために、本実施形態の画像評価装置は、図1に示すように、画像入力手段1と、色彩情報変換手段2と、識別閾領域分割手段3と、画像特徴量算出手段4と、グラデーション評価手段5と、を備えている。
【0012】画像入力手段1は、評価対象となるグラデーション画像を光学的に読み取って、そのグラデーション画像から画像データを取得するものである。ここで取得する画像データは、R(Red),G(Green),B(Blue)の各色成分信号からなるものとする。このような画像データの取得を、画像入力手段1では、例えば走査型濃度計を用いて行うようになっている。
【0013】ここで、画像入力手段1が用いる走査型濃度計について説明する。図2は、走査型濃度計による画像データの読み取り構成の具体例を示す模式図である。図例のように、走査型濃度計は、10μm×500μmのスリット状の読み取り面(以下「アパチャー」と称す)を有しており、そのアパチャーの向きが走査方向(グラデーション画像の階調変化方向)に対して略直交するように構成されたものである。つまり、走査型濃度計は、評価対象となるグラデーション画像の全領域について、10μm幅のアパチャーサイズ領域S1,S2,S3…毎にRGB三色分解フィルタを切り替えながらR,G,Bの各色成分の濃度値を取得し、これを画像データ値とするものである。
【0014】ただし、画像入力手段1は、上述したような走査型濃度計ではなく、高解像度のスキャナーやCCD(Charge Coupled Device)カメラ等を用いて、画像データの取得を行うものであってもよい。また、評価対象となるグラデーション画像が視覚表示端末装置によって画面上に出力されたものである場合には、例えば輝度計を用いて画像データを取得することも考えられる。
【0015】また図1において、色彩情報変換手段2は、画像入力手段1が取得した各アパチャーサイズ領域S1,S2,S3…毎の画像データを、詳細を後述するようにして、色彩情報に変換するものである。なお、ここでいう色彩情報とは、色の三属性を構成する明度情報、彩度情報および色相情報からなるものとする。
【0016】識別閾領域分割手段3は、色彩情報変換手段2が変換した色彩情報を、人間の視覚特性に応じて予め定められている識別閾を基にすることで、複数の部分領域(以下「識別閾領域」という)に分割するものである。この分割によって、グラデーション画像の全領域から得られた色彩情報は、詳細を後述するように、走査型濃度計の各アパチャーサイズ領域毎ではなく、複数の識別閾領域のいずれかに属するように再編されることになる。
【0017】また、識別閾領域分割手段3は、分割後の各識別閾領域について、それぞれの領域幅を演算によって求める領域幅算出手段としての機能も有しているものとする。ただし、領域幅算出手段としての機能は、次に述べる画像特徴量算出手段4が有していてもよい。。
【0018】画像特徴量算出手段4は、識別閾領域分割手段3による分割後の各識別閾領域に関する情報を用いて所定の演算を行うものである。この画像特徴量算出手段4が行う所定の演算としては、例えば各識別閾領域における画像特徴量の算出がある。画像特徴量とは、各識別閾領域毎の固有量のことをいい、詳細を後述するように、識別閾領域毎の色の属性に関する値(例えば各識別閾領域における色彩情報の平均値)がこれに該当する。
【0019】グラデーション評価手段5は、画像特徴量算出手段4求めた画像特徴量に基づいて、画像入力手段1が読み取ったグラデーション画像についての評価値を、詳細を後述するようにして、算出するものである。
【0020】なお、これら色彩情報変換手段2、識別閾領域分割手段3、画像特徴量算出手段4およびグラデーション評価手段5は、例えば所定プログラムを実行するコンピュータ等によって実現されているものとする。ただし、走査型濃度計に付属して設けられた計算機能を用いて実現するようにしてもよい。
【0021】次に、以上のように構成された画像評価装置がグラデーション画像の評価を行う場合の処理動作例、すなわち本実施形態における画像評価方法について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は本発明に係る画像評価方法の実施形態の一例を示す流れ図であり、図4は走査型濃度計で採取した画像データ値の具体例を示す説明図であり、図5は識別閾領域への分割状態の具体例を示す模式図である。
【0022】本実施形態では、グラデーション画像の評価にあたって、図3に示すように、先ず、画像入力手段1が走査型濃度計を用いてグラデーション画像上をその階調変化方向に沿ってRGB三色分解フィルタを切り替えながら走査する(ステップ1)。これにより、画像入力手段1では、評価対象となるグラデーション画像から、例えば図4に示すようなR,G,Bの各色成分毎に異なる濃度プロファイルを有した画像データ(以下「RGBデータ」という)を取得することになる。
【0023】このRGBデータは、画像入力手段1から色彩情報変換手段2へ送られ、その色彩情報変換手段2で色彩情報に変換される(ステップ2)。このとき、色彩情報変換手段2は、以下のようにして色彩情報への変換を行う。すなわち、画像入力手段1からRGBデータを受け取ると、これを一旦機器非依存の信号である三刺激値x,y,zに変換した後、その三刺激値x,y,zを均等色空間であるCIE1976L* * * 色空間における表色値L* ,a*,b* に変換する。そして、さらに、その表色値L* ,a* ,b* から色の三属性を構成する明度情報L* 、彩度情報C* および色相情報h°を導き出して、これらを色彩情報への変換結果とする。
【0024】このようにして変換された後の色彩情報L* ,C* ,h°は、画像評価装置が有するメモリ内の所定領域に格納され保持される(ステップ3)。メモリが各アパチャーサイズ領域S1,S2,S3…毎の色彩情報L* ,C*,h°を格納すると、続いて、識別閾領域分割手段3は、これら色彩情報L* ,C* ,h°の識別閾領域への分割を開始する(ステップ4)。
【0025】そのために、識別閾領域分割手段3は、先ず、グラデーション画像の最端部に位置するアパチャサイズ領域S1についての色彩情報L* 1 ,C* 1 ,h°1 と、そのアパチャサイズ領域S1に隣接するアパチャサイズ領域S2についての色彩情報L* 2 ,C* 2 ,h°2 とを、それぞれメモリ内から読み出して、これらの間の差、具体的には色差ΔE1 を算出する。色差ΔE1 の算出は、周知の手法を用いて行えばよい。その一例としては、次に示す(1)式を用いて算出することが考えられる。
【0026】
【数1】


【0027】この(1)式は、明度情報同士の差ΔL *(例えばL* 1 とL* 2 との差)、彩度情報同士の差ΔC *(例えばC* 1 とC* 2 との差)および色相情報同士の差Δh°(例えばh°1 とh°2 との差)に対し、既知の値として提案されている所定の重み付けα,β,γを施して、色差ΔEを算出するものである。
【0028】色差ΔE1 を算出すると、識別閾領域分割手段3は、その算出結果を識別閾と比較する。識別閾とは、人間が知覚し得る色彩情報の差に相当する値であり、経験的あるいは実験的に予め定められ、画像評価装置が有するメモリ内等に格納されているものである。
【0029】この比較の結果、色差ΔE1 の算出結果が、これに対応する識別閾より小さい値であれば、次いで、識別閾領域分割手段3は、色差ΔE1 の場合と同様の手法により、アパチャサイズ領域S1についての色彩情報L* 1 ,C* 1 ,h°1 と、アパチャサイズ領域S2に隣接するアパチャサイズ領域S3についての色彩情報L* 3 ,C* 3 ,h°3 とから、これらの間の色差ΔE2 を算出する。そして、この色差ΔE2 についても、これに対応する識別閾との比較を行う。
【0030】その結果、色差ΔE2 の算出結果が識別閾より小さい値であれば、さらに、識別閾領域分割手段3は、アパチャサイズ領域S1についての色彩情報L* 1 ,C* 1 ,h°1 と、アパチャサイズ領域S3に隣接するアパチャサイズ領域S4についての色彩情報L* 4 ,C* 4 ,h°4 とから、これらの間の色差ΔE3 を算出する。そして、この色差ΔE3 についても、これに対応する識別閾との比較を行う。
【0031】その結果、色差ΔE3 の算出結果が識別閾を超える値であれば、識別閾領域分割手段3は、アパチャサイズ領域S1とアパチャサイズ領域S3との間に位置する全ての領域についての色彩情報L* 1,2,3 ,C* 1,2,3 ,h°1,2,3 が同一の識別閾領域p1に属すると判断し、これを画像評価装置が有するメモリ内に格納しておく(ステップ3)。
【0032】そして、識別閾領域分割手段3は、引き続き、アパチャサイズ領域S3に隣接するアパチャサイズ領域S4についての色彩情報L* 4 ,C* 4 ,h°4 と、そのアパチャサイズ領域S4に隣接するアパチャサイズ領域S5についての色彩情報L* 5 ,C* 5 ,h°5 との間の色差ΔE4 を算出し、その算出結果をこれに対応する識別閾と比較する。
【0033】この結果、色差ΔE4 の算出結果が識別閾を超える値であれば、識別閾領域分割手段3は、アパチャサイズ領域S4についての色彩情報L* 4 ,C* 4 ,h°4 が同一の識別閾領域p2に属すると判断し、これを画像評価装置が有するメモリ内に格納しておく(ステップ3)。
【0034】このように、識別閾領域分割手段3は、各アパチャサイズ領域S1,S2,S3…の間の色差ΔEを順次算出し、その算出結果がこれに対応した識別閾を超える値となるようなアパチャサイズ領域を検出することで、各アパチャサイズ領域S1,S2,S3…についての色彩情報L* ,C* ,h°が色差ΔEを基にした識別閾を単位とする識別閾領域p1,p2,p3…のいずれかに属するように再編する。これにより、本実施形態でおいては、例えば図5に示すように、8つの識別閾領域p1〜p8が得られる。
【0035】また、識別閾領域分割手段3は、識別閾領域p1〜p8への分割に併せて、領域幅算出手段としての機能により、各識別閾領域p1〜p8の領域幅w1〜w8を算出し(ステップ5)、その算出結果を画像評価装置が有するメモリ内に格納しておく(ステップ3)。なお、各領域幅p1〜p8の算出は、例えば、それぞれの識別閾領域に属することになるアパチャーサイズ領域の数とその幅から求めるようにすればよい。
【0036】識別閾領域分割手段3が各識別閾領域p1〜p8への分割を行うと、その後、画像特徴量算出手段4は、分割後の各識別閾領域p1〜p8に関する値についての各種演算を開始する。
【0037】先ず、識別閾領域分割手段3は、各識別閾領域p1〜p8の領域幅w1〜w8をメモリ内から読み出して、その分散値σW を算出する(ステップ6)。分散値σW は、領域幅w1〜w8のばらつきを表す値であり、例えば標準偏差を求める場合と同様にして算出すればよい。なお、この算出結果は、画像評価装置が有するメモリ内に格納されるものとする(ステップ3)。
【0038】また、識別閾領域分割手段3は、各識別閾領域p1〜p8における画像特徴量を算出する(ステップ7)。具体的には、各アパチャーサイズ領域S1,S2,S3…の色彩情報L* ,C* ,h°をメモリ内から読み出して、各識別閾領域p1〜p8毎に、それぞれに属している色彩情報L* ,C* ,h°の平均値を算出し、その算出結果を各識別閾領域p1〜p8における画像特徴量ave.L* 1 〜ave.L* 8 ,ave.C* 1 〜ave.C* 8 ,ave.h°1 〜ave.h°8 とする。
【0039】そして、識別閾領域分割手段3は、その画像特徴量ave.L* 1 〜ave.L* 8 ,ave.C* 1 〜ave.C* 8 ,ave.h°1 〜ave.h°8 を用いて、互いに隣接する識別閾領域同士の間の色彩情報の差、具体的には色差ΔeE1 〜ΔeE7 を算出する(ステップ8)。色差ΔeEの算出は、上述した識別閾領域分割手段3における場合と同様に、例えば(1)式を用いて行うようにすればよい。
【0040】さらに、識別閾領域分割手段3は、算出した色差ΔeE1 〜ΔeE7 を基に、これらの平均値ave.Eおよび分散値σE を算出する(ステップ9)。この分散値σE は、色差ΔeE1 〜ΔeE7 のばらつきを表す値であり、分散値σW の場合と同様に算出すればよい。なお、これらの算出結果も、画像評価装置が有するメモリ内に格納されるものとする(ステップ3)。
【0041】識別閾領域分割手段3によるこれらの演算処理を行うと、その後、グラデーション評価手段5は、識別閾領域分割手段3による演算結果を基に、評価対象となるグラデーション画像についての評価値を算出する(ステップ10)。そのために、グラデーション評価手段5は、分散値σW をメモリ内から読み出して、これを変量x1 に対応させ、また平均値ave.Eをメモリ内から読み出して、これを変量x2 に対応させ、さらに分散値σE をメモリ内から読み出して、これを変量x3 に対応させる。そして、次に示す(2)式を用いて、グラデーション評価値yを算出する。
【0042】
【数2】


【0043】この(2)式は、グラデーション評価値をyとした場合の重回帰式である。なお、式中におけるψ1,ψ2,ψ3 は、それぞれ分散値σW 、平均値ave.E、分散値σE に対応する重み係数であり、人間の視覚特性を基にしつつ、経験的あるいは実験的に予め定められた値であるものとする。
【0044】このようにして求めたグラデーション評価値yと人間による主観的評価の結果との相関関係の一例を図6に示す。図例は、重み係数ψ1 を「2.0」、重み係数ψ2 を「1.0」、重み係数ψ3 を「1.5」と設定した場合に、10種のグラデーション画像に対して行ったグラデーション評価値yと主観的評価値との相関を表している。図からも明らかなように、本実施形態によるグラデーション評価値yと主観的評価値との相関は非常に高く、相関係数が「0.952」を示している。したがって、本実施形態において説明したように、グラデーション画像から読み取った画像データを色彩情報に基づいた識別閾で領域分割することでグラデーション評価値yを算出すれば、グラデーション画像がカラー画像により構成されている場合であっても、人間の主観的判断に十分に対応した信頼性の高い客観的評価の結果が得られることが分かる。
【0045】つまり、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法によれば、本発明の請求項1または請求項6に記載したように、評価対象となるグラデーション画像から得た色彩情報L* ,C* ,h°を人間の視覚特性に応じた識別閾に基づいて分割し、その分割後の各識別閾領域p1〜p8毎の画像特徴量を基にグラデーション評価値yを算出するようになっているので、色の属性に関する情報を加味しつつ、しかも人間の視覚特性を反映させながら、そのグラデーション画像についての客観的評価を行うことが可能となる。そのため、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法を用いれば、評価対象となるグラデーション画像がカラー画像により構成されている場合であっても、従来よりも信頼性が高く、より人間の感覚に近い評価結果を得ることができる。
【0046】特に、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法では、本発明の請求項2または請求項7に記載したように、グラデーション画像から読み取ったRGBデータを、色の三属性を構成する明度情報L* 、彩度情報C* および色相情報h°に変換し、これらを基にグラデーション評価値yの算出処理を行っているので、カラー画像の濃淡の階調変化のみならず色調変化にも十分に対応することができ、結果としてカラー画像に対する客観的評価を従来よりも正確に行うことができる。具体的には、例えば「薄い赤色」から「濃い赤色」への変化が表現されたグラデーション画像であっても、あるいは「青色」から「赤色」への変化が表現されたグラデーション画像であっても、いずれの場合もその評価を正しく行うことできる。
【0047】また、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法では、本発明の請求項3または請求項8に記載したように、グラデーション評価値yの算出にあたって、隣接する各識別閾領域p1〜p8の画像特徴量の差、具体的には色差ΔeE1 〜ΔeE7 を基にしているので、人間の視覚特性を反映させた評価結果を容易に得ることができる。これは、例えばこれらの色差ΔeE1 〜ΔeE7 が均一でその変化が直線的であれば、人間の視覚にもカラー画像の色調変化等が滑らかと映るからである。したがって、かかる場合に、良好なグラデーション画像であると評価すれば、その評価結果は、より人間の感覚に近いものとなる。
【0048】また、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法では、本発明の請求項4または請求項9に記載したように、グラデーション評価値yの算出にあたって、各識別閾領域p1〜p8の画像特徴量ave.L* 1 〜ave.L* 8 ,ave.C* 1 〜ave.C* 8 ,ave.h°1 〜ave.h°8 のみならず、各識別閾領域p1〜p8の領域幅w1〜w8をも基にしているので、より一層人間の視覚特性を反映させた評価結果を得ることができる。これは、例えば各識別閾領域p1〜p8の領域幅w1〜w8が均一で、極端に大きい幅の識別閾領域が存在していなければ、人間の視覚にもカラー画像の色調変化等が滑らかと映るからである。
【0049】ただし、グラデーション評価値yは、必ずしも画像特徴量ave.L* 1 〜ave.L* 8 ,ave.C* 1 〜ave.C* 8 ,ave.h°1 〜ave.h°8 と領域幅w1〜w8との双方を基にして算出する必要は無く、画像特徴量ave.L* 1 〜ave.L* 8 ,ave.C* 1 〜ave.C* 8 ,ave.h°1 〜ave.h°8 のみを基にした場合であっても、従来よりも信頼性が高く、より人間の感覚に近い算出結果を得ることが可能である。
【0050】また、本実施形態における画像評価装置または画像評価方法では、本発明の請求項5または請求項10に記載したように、所定の重み係数ψ1,ψ2,ψ3 によって、重み付けを施してグラデーション評価値yを算出するようになっている。そのため、例えば、人間の視覚特性に大きく影響を及ぼす因子(パラメータ)に対しては重み係数の値を大きくするといったことが可能となり、結果としてより一層人間の感覚に近い算出結果が得られるようになる。
【0051】なお、本実施形態では、重み係数ψ1,ψ2,ψ3 がそれぞれ「2.0」、「1.0」、「1.5」である場合を例に挙げたが、重み係数の値はこれらに限定されないことは勿論である。
【0052】また、本実施形態では、識別閾に基づいた分割に際して、色彩情報L* ,C*,h°から求めた色差ΔEを用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色差ΔEではなく、明度情報の差ΔL* 、彩度情報の差ΔC* および色相情報の差Δh °のそれぞれを用いて、識別閾に基づいく分割を行うようにしてもよい。かかる場合は、図7に示すように、明度情報の差ΔL* を用いて分割された識別閾領域pL 1〜pL 8(図7(a)参照)、彩度情報の差ΔC* を用いて分割された識別閾領域pC 1〜pC 6(図7(b)参照)、色相情報の差Δh °を用いて分割された識別閾領域ph 1〜ph 9(図7(c)参照)が、それぞれ個別に得られることになる。したがって、かかる場合には、それぞれの識別閾領域pL 1〜pL 8,pC 1〜pC 6,ph 1〜ph 9について、本実施形態で説明した場合と同様にしてグラデーション評価値yL,C,h を算出した後に、それぞれのグラデーション評価値yL,C,h に所定の重み付けを施して一つのグラデーション評価値yを求めるようにすればよい。
【0053】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明に係る画像評価装置および画像評価方法によれば、評価対象となるグラデーション画像から得た色彩情報を人間の視覚特性に応じた識別閾に基づいて分割し、その分割後の各部分領域毎の画像特徴量を基に当該グラデーション画像についての評価値を算出するようになっているので、色の属性に関する情報を加味しつつ、しかも人間の視覚特性を反映させながら、当該グラデーション画像についての客観的評価を行うことが可能となる。そのため、本発明に係る画像評価装置または画像評価方法を用いれば、評価対象となるグラデーション画像がカラー画像により構成されている場合であっても、従来よりも信頼性が高く、より人間の感覚に近い評価結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る画像評価装置の実施形態の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 走査型濃度計による画像データの読み取り構成の具体例を示す模式図である。
【図3】 本発明に係る画像評価方法の実施形態の一例を示す流れ図である。
【図4】 走査型濃度計で採取した画像データ値の具体例を示す説明図である。
【図5】 色差を基にした場合の識別閾領域への分割状態の具体例を示す模式図である。
【図6】 本発明を用いた評価結果と人間による評価結果との相関関係の具体例を示す説明図である。
【図7】 識別閾領域への分割状態の他の具体例を示す模式図であり、(a)は明度情報を基にした場合の図、(b)は彩度情報を基にした場合の図、(c)は色相情報を基にした場合の図である。
【符号の説明】
1…画像入力手段、2…色彩情報変換手段、3…識別閾領域分割手段、4…画像特徴量算出手段、5…グラデーション評価手段、p1〜p8,pL 1〜pL 8,pC 1〜pC 6,ph 1〜ph 9…識別閾領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グラデーション画像から画像データを取得する画像入力手段と、前記画像入力手段が取得した画像データを色彩情報に変換する色彩情報変換手段と、前記色彩情報変換手段が変換した色彩情報を人間の視覚特性に応じて定められた識別閾に基づいて分割する識別閾領域分割手段と、前記識別閾領域分割手段による分割後の各部分領域における画像特徴量を求める画像特徴量算出手段と、前記画像特徴量算出手段が求めた画像特徴量に基づいて前記グラデーション画像についての評価値を算出するグラデーション評価手段とを備えることを特徴とする画像評価装置。
【請求項2】 前記色彩情報変換手段が変換する色彩情報は、明度情報、彩度情報および色相情報からなることを特徴とする請求項1記載の画像評価装置。
【請求項3】 前記グラデーション評価手段は、隣接する部分領域間の画像特徴量の差に基づいて前記評価値を算出するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像評価装置。
【請求項4】 前記識別閾領域分割手段による分割後の各部分領域の領域幅を求める領域幅算出手段を備えるとともに、前記グラデーション評価手段は、前記画像特徴量算出手段が求めた画像特徴量および前記領域幅算出手段が求めた領域幅に基づいて前記評価値を算出するものであることを特徴とする請求項1,2または3記載の画像評価装置。
【請求項5】 前記グラデーション評価手段は、前記評価値の算出にあたって、所定の重み付けを行うものであることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の画像評価装置。
【請求項6】 グラデーション画像に対する客観的評価を行うための画像評価方法であって、前記グラデーション画像から画像データを取得し、前記画像データを取得するとこれを色彩情報に変換し、当該変換後の色彩情報を人間の視覚特性に応じて定められた識別閾に基づいて分割し、当該分割後の各部分領域における画像特徴量を求め、前記画像特徴量に基づいて前記グラデーション画像についての評価値を算出することを特徴とする画像評価方法。
【請求項7】 前記色彩情報は、明度情報、彩度情報および色相情報からなることを特徴とする請求項6記載の画像評価方法。
【請求項8】 前記評価値の算出にあたって、隣接する部分領域間の画像特徴量の差を基にすることを特徴とする請求項6または7記載の画像評価方法。
【請求項9】 前記分割後の各部分領域の領域幅を求めるとともに、前記評価値の算出にあたって、前記画像特徴量および前記領域幅を基にすることを特徴とする請求項6,7または8記載の画像評価方法。
【請求項10】 前記評価値の算出にあたって、所定の重み付けを行うことを特徴とする請求項6,7,8または9記載の画像評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−128017(P2001−128017A)
【公開日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−304922
【出願日】平成11年10月27日(1999.10.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】